説明

導光シートおよびそれを用いた導光シート付き可動接点体

【課題】各種電子機器の入力操作部に用いられる導光シートおよびそれを用いた導光シート付き可動接点体に関し、導光シートのフィルム基材内で伝播される光を簡素な構成でさらに有効活用して上方を明るく照光できるものを提供する。
【解決手段】入射された光をフィルム基材15内で導光させ、その伝播される光が凹凸領域部18で上方に向けて散乱反射されて上方位置を照光する導光シート31であって、フィルム基材15に幅のないスリット33を切り込み、スリット33位置からの反射光がフィルム基材15内で凹凸領域部18側へ戻るように構成した。また、この導光シート31を用いて導光シート31付きの可動接点体9に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に用いられる導光シートおよびそれを用いた導光シート付き可動接点体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの各種電子機器は、夜間などにも所定操作が良好に行えるように操作部などが照光される機能を備えたものが増えている。そして、その照光手段としても、フィルム基材に入射された光がフィルム基材内で導光されて、その伝播する光が凹凸領域部で上方に向けて散乱反射されることによって凹凸領域部上の位置を照光する導光シートを用いた構成のものが多くなっている。
【0003】
以下に、図4〜図5を用いて、従来の導光シートを用いて構成された照光機能付き入力操作部について説明する。
【0004】
図4は従来の導光シートを用いて構成された照光機能付き入力操作部の部分断面図、図5は同導光シート付きの可動接点体の上面図である。
【0005】
同図において、1は可撓性を有する絶縁フィルム製のベースシートであり、その下面に形成された粘着層2によって、上方凸形でドーム状に形成された弾性薄板金属製の可動接点4を所定箇所に保持している。また、ベースシート1の下面には、粘着層2を介して、貫通孔部が設けられたPETなどの絶縁フィルムからなるスペーサシート6が重ねて貼り合わせられており、可動接点4は対応する貫通孔部内に位置されている。スペーサシート6の下面には、装着用の粘着層7が形成されている。これらで、可動接点体9が構成されている。
【0006】
この可動接点体9上には、導光シート10が配されており、その周囲位置が粘着層12を介してベースシート1の上面に固定されている。
【0007】
導光シート10は、光透過性を有するTPU樹脂などの絶縁フィルム製で可撓性を有したフィルム基材15と、その下面の所定箇所に構成された凹凸領域部18とからなっており、凹凸領域部18は、可動接点4の配置位置に合わせて設けられている。そして、その凹凸領域部18は、小突起17が点在した集合状態に印刷形成されて構成されている。また、フィルム基材15への光の入射箇所となる側端面位置を除くフィルム基材15外縁箇所には、フィルム基材15内に染料を浸透させて形成された暗色の遮光部15Aが厚み全体で設けられており、その外縁部分からの光漏れが防止される構成になっている。なお、遮光部15Aの代わりに、フィルム基材15の側端面に黒インキを塗布したり、黒テープで覆ったりすることもある。
【0008】
上記導光シート10付きの可動接点体9は、対応する配線基板20上にスペーサシート6下面の粘着層7で貼り付け装着されて搭載される。
【0009】
配線基板20は、可動接点4位置に対応する上面箇所に外側接点22と中央接点23とからなる固定接点を有しており、上記導光シート10付きの可動接点体9は、可動接点4の外周下端が、対応する外側接点22上に載せられるようにして配線基板20上に貼り付けられている。
【0010】
また、配線基板20にはLED25が実装されており、そのLED25の発光面に対し、フィルム基材15は、遮光部15Aが設けられていない側端面位置が近接した対向状態になっている。つまり、この対向するフィルム基材15の側端面位置が導光シート10への光の入射箇所となっている。
【0011】
導光シート10上には、ゴム製などの弾性を有するキーマット27が配されている。そして、可動接点4上のキーマット27位置が、上下方向に光を透過させる透光部(図示せず)を備えた操作部27Aとなっている。以上のように、従来の導光シート10を用いて照光機能付き入力操作部が構成されている。
【0012】
この照光機能付き入力操作部の動作は、操作部27A位置を押し下げると、押圧力が導光シート10およびベースシート1を介して可動接点4に伝わり、その力が所定の大きさを超えると、可動接点4が節度を持って反転動作して中央部下面が中央接点23に接触する。これによって、外側接点22と中央接点23とが導通したスイッチオン状態になる。上記押圧力を除くと、可動接点4が元の上方凸形に自己復元し、可動接点4の中央部下面が中央接点23から離れ、図4に示した元のスイッチオフ状態に戻る。
【0013】
LED25が発光すると、その光が、LED25の発光面に対向するフィルム基材15の側端面位置からフィルム基材15内に入射されてフィルム基材15内で導光されていく。そして、その伝播する光が、凹凸領域部18で上方に向けて散乱反射され、その上方位置に配された操作部27Aの透光部が照光されるものであった。
【0014】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−29156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記従来の導光シート10を用いて構成された照光機能付き入力操作部では、操作部27Aの透光部が明るく光るものを求められることが多い。それを実現するために、導光シート10付き可動接点体9を生産する部品メーカとしては、機器側で決定されたLED25の配置位置や使用個数の中で、導光シート10の小突起17の配設状態を調整して凹凸領域部18での上方に向く光量を多くするように対応していたが、従来の導光シート10の構成のままでは、それにも限界があった。
【0017】
本発明はこのような課題を解決するものであり、導光シートのフィルム基材内で伝播される光を簡素な構成でさらに有効活用して上方を明るく照光できる構成とした導光シートおよびそれを用いた導光シート付き可動接点体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
請求項1に記載の発明は、フィルム基材に入射された光をフィルム基材内で導光させていき、その伝播する光を凹凸領域部で散乱反射させて上方位置を照光する導光シートであって、上記フィルム基材に切り込まれた幅のないスリットで上記フィルム基材内に導光される光の伝播状態を制御し、上記フィルム基材内で上記凹凸領域部に至る光が増すように構成されていることを特徴とする導光シートである。
【0020】
当該構成であれば、フィルム基材に設けた幅のないスリット位置で生じる光の反射光を用いて、上記フィルム基材内での凹凸領域部に至る光の量を多くすることができ、それによって上方への照光状態が明るいものに実現できるという作用を有する。つまり、上記反射光が凹凸領域部に戻るような位置に、その幅のないスリットを形成するのみの簡素な構成で、フィルム基材内で伝播される光をさらに有効活用したものに構成することができる。また、この幅のないスリットであれば、打ち抜きカスの処理なども不要で、製造時にカス抜け不良も発生することもなく、簡単な設備で製造工数や管理工数など少なく高品質のものを容易に提供することができるという作用も有する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の導光シートが用いられ、その凹凸領域部に応じた下方位置に、上方凸形でドーム状の可動接点が配されて構成された導光シート付き可動接点体であり、可動接点上の位置が明るく照光される構成の導光シート付き可動接点体を安価に提供することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、導光シートのフィルム基材内で伝播される光を簡素な構成でさらに有効活用して上方を明るく照光できる構成とした導光シートおよびそれを用いた導光シート付き可動接点体を提供できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態による導光シートを用いて構成した照光機能付き入力操作部の部分断面図
【図2】同導光シート付きの可動接点体の上面図
【図3】同導光シートでのスリット位置を含む部分断面図
【図4】従来の導光シートを用いて構成された照光機能付き入力操作部の部分断面図
【図5】同導光シート付きの可動接点体の上面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0025】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による導光シートを用いて構成した照光機能付き入力操作部の部分断面図、図2は同導光シート付きの可動接点体の上面図、図3は同導光シートでのスリット位置を含む部分断面図である。
【0026】
同図からも判るように、本実施の形態による照光機能付き入力操作部は、従来の照光機能付き入力操作部に対して、可動接点体9や配線基板20、キーマット27の操作部27Aは同一構成であるが、可動接点体9の上に配した導光シート31が異なっている。
【0027】
まず、この導光シート31について説明すると、この導光シート31は、光透過性を有するTPU樹脂などの絶縁フィルム製で可撓性を有したフィルム基材15と、その下面の所定箇所に構成された凹凸領域部18とからなり、そして、フィルム基材15の所定の外縁箇所には、光漏れ防止のために、暗色の遮光部15Aが基材厚み方向に設けられている点、また、上記凹凸領域部18は小突起17が点在した集合状態に印刷形成されて構成されている点は従来同様である。
【0028】
しかしながら、当該導光シート31では、フィルム基材15に幅のないスリット33を上面視で線状に切り込んでいるものとしている。なお、幅のないスリット33の幅とは、切り刃の厚みに相当する側であり、その幅のないスリット33は、上記切り刃がフィルム基材15表面から基材厚みに略垂直方向で入れられて基材厚みの全体に亘って設けられており、スリット33位置における対向する切断面どうしは、ほぼ当接状態となっている。
【0029】
そして、この幅のないスリット33は、フィルム基材15において、遮光部15Aよりも内側となる箇所に、複数、設けられている。
【0030】
なお、フィルム基材15にスリット33を幅のない切り込みで設けた当該構成であれば、打ち抜きカスの処理なども不要で、製造時にカス抜け不良も発生することもなく、簡単な設備で製造工数や管理工数など少なく高品質のものを容易に生産することができる。
【0031】
次に、この導光シート31を用いて構成した本実施の形態による照光機能付き入力操作部について簡単に説明する。
【0032】
可動接点体9は、ベースシート1下面の粘着層2でスペーサシート6が下面側から重ねて貼り合わせられると共に、上記粘着層2でベースシート1に保持された可動接点4が、スペーサシート6の対応する貫通孔部内に位置された構成となっている。そして、そのベースシート1の上に、当該導光シート31が配されており、導光シート31は、その周囲位置で粘着層12を介してベースシート1の上面に固定されている。
【0033】
そして、この導光シート31付きの可動接点体9が、対応する配線基板20上にスペーサシート6下面の粘着層7で貼り付け装着されており、可動接点4の外周下端が、対応する外側接点22上に載せられている。また、配線基板20に実装されたLED25の発光面は、導光シート31に対して、遮光部15Aが設けられていないフィルム基材15の側端面位置に近接した対向状態になっており、その側端面位置が導光シート31への光の入射箇所となることは従来の場合と同じである。
【0034】
さらに、導光シート31上には、ゴム製などの弾性を有するキーマット27が配され、可動接点4上のキーマット27位置が、上下方向に光を透過させる透光部(図示せず)を備えた操作部27Aとなっている。これらで本実施の形態による照光機能付き入力操作部は構成されている。
【0035】
ここで、当該導光シート31における幅のないスリット33の形成位置などについて図2を用いて説明すると、当該導光シート31では、幅のないスリット33(33A〜33C)の三つを上面視直線状でフィルム基材15に設けたものとしている。
【0036】
そして、幅のないスリット33は、フィルム基材15の光の入射箇所に対し、それとは反対側の位置となるような遮光部15Aと凹凸領域部18との間の位置に、上面視で見て導光シート31への光の入射箇所側が広がるように、その三つのスリット33A〜33Cを配したものとしている。つまり、スリット33Aは、上面視で見て、光の入射箇所からフィルム基材15の凹凸領域部18を越えた位置に、光の入射箇所に対して略平行な直線状で設けられ、そのスリット33Aを底として、光の入射箇所側が広がるようにスリット33B、33Cは、傾斜した直線状に設けたものとしている。
【0037】
以上のように、当該導光シート31には幅のないスリット33が形成されたものとなっており、続いて、それを用いて構成した本実施の形態による照光機能付き入力操作部の動作について説明する。
【0038】
操作部27A位置を押し下げると、従来同様に、押圧力が導光シート31およびベースシート1を介して可動接点4に伝わる。その力が所定の大きさを超えると、可動接点4は節度を持って反転動作して中央部下面が中央接点23に接触する。これによって、外側接点22と中央接点23とが導通したスイッチオン状態になる。上記押圧力を除くと、可動接点4が元の上方凸形に自己復元し、可動接点4の中央部下面が中央接点23から離れ、図1に示した元のスイッチオフ状態に戻る。
【0039】
LED25が発光すると、その光は、LED25の発光面に対向するフィルム基材15の側端面位置からフィルム基材15内に入射されてフィルム基材15内で導光されていく。そして、その伝播する光が、各凹凸領域部18で上方に向けて散乱反射されて上方位置に配された操作部27Aの透光部が照光される。
【0040】
ここに、フィルム基材15内で導光されていく光の中で、フィルム基材15の外縁に向かう光が幅のないスリット33位置に至ると、図3に示すように、そこから先へのフィルム基材15内での光の伝播が妨げられ、しかもそのスリット33位置で光の反射光が多く生じるようになる。
【0041】
そして、その反射光はフィルム基材15内で凹凸領域部18側へ戻るようになって従来品よりも多くの光が凹凸領域部18に至るようにでき、それに応じて従来品よりも上方が明るく照光されるようにできる。すなわち、従来品では、凹凸領域部18で使用されなかった光は、最終で、遮光部15Aにより吸収させるのみであったが、当該構成では、その光を、簡素な構成で凹凸領域部18に至る光となるように有効活用でき、それによって上方が明るく照光できる構成のものに実現できる。
【0042】
なお、スリット33が所定幅を持つものであれば、光がその幅部分から上下に多く漏れる現象が発生するため、スリット33は幅のないものとするとよい。また、複数のスリット33(33A〜33C)を配する際にも、同様の理由で、フィルム基材15の一部が部分的に抜け落ちるような配置設定をすることも避けたほうがよい。
【0043】
さらに、フィルム基材15の厚み方向に対し、幅のないスリット33を斜めに入れた場合も上下に光漏れが多く発生することがあるため、スリット33は、フィルム基材15の表面から基材厚みに略垂直方向で切り刃を入れて形成することが好ましい。
【0044】
以上に説明したように、当該導光シート31であれば、簡素な構成でフィルム基材15内での凹凸領域部18に至る光の量を多くすることができ、それによって上方への照光状態が明るいものに実現することができる。また、これを用いた導光シート31付き可動接点体9においても、可動接点4上の位置が明るく照光されるものを安価に提供することができる。
【0045】
なお、上記には、フィルム基材15の遮光部15Aよりも内側位置に直線状のスリット33(33A〜33C)を設けた事例を説明したが、上面視でのスリット33形状は、必要に応じて曲線状などに設けてもよい。また、その形成位置についても、上述説明した位置に限定されることはないが、スリット33を設けると、そこから先のフィルム基材15箇所への光の伝播が大きく妨げられることにもなるため、その形成位置は、導光シート31のフィルム基材15における光の入射箇所から凹凸領域部18へのフィルム基材15内での導光経路を妨げることなく、しかもスリット33位置からの反射光が凹凸領域部18側へ戻る位置に適宜設定すればよい。
【0046】
さらに、幅のないスリット33は、フィルム基材15の厚み方向の全てが切断されている状態のものが好ましいが、部分的な切断状態となったもの、所謂ハーフカットされたものであってもよい。そのハーフカット状態のものの場合には、防塵性などを考慮するとフィルム基材15の上面側が繋がっている構成が好ましいが特に限定はされない。また、そのハーフカットの切り込み深さも適宜設定すればよい。
【0047】
なお、上記には、導光シート31の凹凸領域部18が、フィルム基材15下面に設けられた小突起17よりなる構成のものを説明したが、フィルム基材15の上面に小突起17よりなる凹凸領域部を有した形態の導光シートであってもよい。または、フィルム基材の表面をレーザ加工や金型などで粗らすことによって凹凸領域部が設けられた形態の導光シートに本発明の思想を適用してもよい。
【0048】
そして、本発明による導光シート31は、可動接点体9に装着する以外に、単体で使用されたり、可動接点体9以外に装着されて使用されてもよい。さらに、可動接点体9も複数の可動接点4を有するものであったり、または、上記構成の可動接点体9以外の構成とされている可動接点体であってもよい。また、操作部27Aや配線基板20などについても、上述説明したものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による導光シートおよびそれを用いた導光シート付き可動接点体は、導光シートのフィルム基材内で伝播される光を簡素な構成でさらに有効活用して上方を明るく照光できる構成としたものを提供することができるという有利な効果を有し、各種電子機器の入力操作部を構成する際などに有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 ベースシート
2、7、12 粘着層
4 可動接点
6 スペーサシート
9 可動接点体
15 フィルム基材
15A 遮光部
17 小突起
18 凹凸領域部
20 配線基板
22 外側接点
23 中央接点
25 LED
27 キーマット
27A 操作部
31 導光シート
33、33A〜33C スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材に入射された光をフィルム基材内で導光させていき、その伝播する光を凹凸領域部で散乱反射させて上方位置を照光する導光シートであって、上記フィルム基材に切り込まれた幅のないスリットで上記フィルム基材内に導光される光の伝播状態を制御し、上記フィルム基材内で上記凹凸領域部に至る光が増すように構成されていることを特徴とする導光シート。
【請求項2】
請求項1記載の導光シートが用いられ、その凹凸領域部に応じた下方位置に、上方凸形でドーム状の可動接点が配されて構成された導光シート付き可動接点体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37980(P2013−37980A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174732(P2011−174732)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】