説明

導波管レーザ発振装置

【課題】導波管を多段配置した構成において、半透鏡、反射鏡及び全反射鏡による反射損失を低減してレーザ光の出力効率を向上する。また、装置自体を小型化する。
【解決手段】導波管を複数の分割導波管とする。各分割導波管は、互いに連続するように一方の端部を近接させて折り返し状となるように傾斜配置する。分割導波管相互の接続箇所に、互いの光軸が一致するようにレーザ光を反射する中間反射鏡を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導波管を使用してレーザ媒質としての気体分子を励起して所定のレーザ利得で増幅されたレーザ光を発振する導波管レーザ発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管型レーザ発振装置にあっては、例えばレーザ媒質としてのCO2ガスを含む混合気体が封入され、レーザ利得に応じた長さの導波管の一方端部に半透鏡を、また他方端部に全反射鏡を配置し、印加される電場により気体分子を励起して放出される放出光を半透鏡及び反射鏡間にて共振させることにより混合気体分子からレーザ光を誘導放出させて導波管の長さに応じたレーザ利得で増幅されたレーザ光を発振している。この種の導波管型レーザ発振装置にあっては、レーザ利得が低く、所望の出力を得るには、装置自体が大型化する。
【0003】
この欠点を解決するため、例えば特許文献1の図2に示すレーザ装置(但し、特許分計1に示すレーザ装置は、導波管を放電励起室としている。)においては、レーザ媒質としての気体がそれぞれ封入された第1放電励起室46aと第2放電励起室46bを平行に多段配置し、第1放電励起室46aの出力側に半透鏡22を配置すると共に第2放電励起室46bの終端側に全反射鏡23を配置し、半透鏡22の反対側に位置する第1放電励起室46aの端部側及び全反射鏡23の反対側に位置する第2放電励起室46bの端部側に中間反射鏡29・28を光軸に対して45°の角度を設けてそれぞれ配置し、放電励起室の長さを短くして装置を小型化している。
【0004】
そして該レーザ装置は、第1及第2放電励起室46a・46bにそれぞれ配置された電極間にて高周波電圧を印加して電場を作用させることにより混合気体分子を励起して放出される光を、半透鏡22、2個の中間反射鏡29・28及び全反射鏡23により第1及第2放電励起室46a・46b内で共振させることにより、混合気体分子からレーザ光を誘導放出させることにより所望のレーザ利得で増幅されたレーザ光を、半透鏡を介して出力するように構成している。
【0005】
上記したレーザ装置にあっては、短い長さの放電励起室46a・46bを多段配置して導波管の導波距離を実質的に長くすることにより所望のレーザ利得で増幅可能にし、装置自体を小型化することができるが、2個の中間半透鏡による反射損失を考慮すると、レーザ光の出力効率が悪かった。
【0006】
即ち、例えば、半透鏡のレーザ光透過率が8%、中間反射鏡のレーザ光反射率が99.5〜99.7%、従って反射損失が0.3〜0.5%で、第1及び第2放電励起室内を1回、共振してレーザ光が出力される場合、半透鏡を透過するレーザ光が8%であるのに対し、2個の中間反射鏡による反射損失が最大で2%、従って出力の1/4が中間反射鏡により損失されることになり、レーザ光の出力効率が極めて悪い。
【0007】
このため、中間反射鏡の反射損失を考慮しながらレーザ光を高出力化するには、各導波管を長くしたり、大容量の電源を使用して電極に印加される電流を増大する必要があり、装置自体を小型化するという所期の目的を達成できない。特に、電源を大型化した場合には、電源の発熱を抑えるため、大型の冷却ファンを設ける必要があり、装置を小型化するのに障害になっている。
【特許文献1】特開平11−68214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、半透鏡を透過するレーザ光の割合に対し、中間反射鏡による反射損失が高く、レーザ光の出力効率が悪い点にある。また、上記の問題点から、所望の出力を得るには、導波管をある程度、長くすると共に電源を大容量化する必要があり、装置自体を小型化するという所期の目的を達成できない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定のレーザ利得に応じた長さで、内部に気体レーザ媒質が充填される導波管と、導波管内の気体レーザ媒質に電場を作用して励起する電極と、導波管の出力側に配置され、導波管内を伝搬するレーザ光を反射すると共に所定の割合で透過する半透鏡と、導波管の終端側に配置され、伝搬するレーザ光を全反射する全反射鏡とからなり、導波管内を伝搬するレーザ光を半透鏡及び全反射鏡により共振させて所定のレーザ利得で増幅して出力する導波管レーザ発振装置において、導波管は、複数の分割導波管とし、各分割導波管は、互いに連続するように一方の端部を近接させて折り返し状となるように傾斜配置すると共に分割導波管相互の接続箇所に、互いの光軸が一致するようにレーザ光を反射する中間反射鏡を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、導波管を多段配置した構成において、半透鏡、反射鏡及び全反射鏡による反射損失を低減してレーザ光の出力効率を向上することができる。また、装置自体を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、導波管を複数の分割導波管とし、各分割導波管は、互いに連続するように一方の端部を近接させて折り返し状となるように傾斜配置すると共に分割導波管相互の接続箇所に、互いの光軸が一致するようにレーザ光を反射する中間反射鏡を設けたことを最良の形態とする。
【実施例】
【0012】
以下に実施形態を示す図に従って本発明を説明する。
図1及び図2において、導波管レーザ発振装置1のハウジング3内には、2本の分割導波管5・7を、一方の端部が近接するように、所要の角度で傾斜した状態で配置する。各分割導波管5・7は、例えばアルミナ(AL2O3)、強化ガラス(SiO2基材)、失透ガラス(ガラスセラミックス)、酸化金属(BeO、TiO2等)のようにガス不透過性の誘電体材料で、内部にレーザ媒質としてのCO2を含む混合気体が封入される中空部を有している。これら分割導波管5・7は、その断面形状が円形状、矩形状のいずれであってもよい。
【0013】
今、1本の導波管により構成されるレーザ発振装置の長さを、例えば1000mmとして所定の出力のレーザ光を発振する場合、本実施例の分割導波管5・7にあっては、同様のレーザ光出力条件において、長さを、約半分の550mmとする。ちなみに、平行2段分割導波管型のレーザ発振装置にあっては、上記した単段導波管型のレーザ発振装置と同等出力のレーザ光を発振するには、分割導波管長さを、約620mmに設定する必要がある。
【0014】
各分割導波管5・7の中空部内には、レーザ媒質としての混合気体が所定のガス圧力で封入される。混合気体の封入態様としては、封じ切り態様、又は端部間にバイパス流路を設けると共に該バイパス流路内に循環ポンプを設けて循環封じ切り態様、更に一方端部に補充タンクを接続し、混合気体を補充可能にした態様のいずれであってもよい。
【0015】
また、各分割導波管5・7の外周には、軸線方向の全体に亘って延びる一対のRF電極9・11が互いに電気的絶縁状態で設けられる。これらRF電極9・11は、印加される高周波電流により封入された混合気体を高周波励起してプラズマ化して発光させる。
【0016】
図示する上方に位置する分割導波管5の出力側(図示する右側)には、半透鏡13が配置される。該半透鏡13は、ZnSe等の基材表面に反射膜がコーティングされ、所定波長を部分反射(反射率:約92%)、従って8%の割合で透過させる特性を有している。
【0017】
又、互いに近接する各分割導波管5・7の図示する左側端部側には、中間反射鏡15が配置される。また、図示する下方に位置する分割導波管7の右側端部側には、全反射鏡17が配置される。これら中間反射鏡15及び全反射鏡17は、銅、シリコン等の基材表面にAu等の反射膜がコーティングされ、反射率:99.5〜99.7%で全反射する。
【0018】
中間反射鏡15は、一方の分割導波管5における光軸と、他方の分割導波管7における光軸とが一致する所定の反射角度で反射するように配置される。また、全反射鏡17は、平面鏡又は凹面鏡で、他方の分割導波管7における光軸からの入射光を、該光軸と一致する方向へ全反射するように配置される。
【0019】
次に、導波管レーザ発振装置1によるレーザ光の増幅発振作用及び方法を説明する。
図1に示すように、各分割導波管5・7のRF電極9・11に高周波電圧を印加して内部に封入された混合気体に高周波電場を作用して励起して自然放出光を放出させると、該自然放出光は、例えば半透鏡13の反射面により反射されて1段目の分割導波管5内を図示する左方向へ伝搬して中間反射鏡15により反射させられて2段目の分割導波管7内に入射されて図示する右側に向かって伝搬した後に、全反射鏡17により全反射させられて分割導波管5・7内にて共振させられる。
【0020】
その際に、高周波電場により高準位に励起された混合気体分子に特定波長の光が吸収されてコヒーレントなレーザ光を誘導放出させながら各分割導波管5・7内を伝搬することによりレーザ光を、分割導波管5・7の導波長さに応じたレーザ利得で増幅させる。そして所定のレーザ利得で増幅されたレーザ光は、半透鏡13を所定の透過率で透過して外部に出力される。
【0021】
上記した各分割導波管5・7内を共振する際に、各分割導波管5・7が、1個の中間反射鏡15により連続するように構成されるため、各分割導波管5・7を2個の中間反射鏡で接続する従来の導波管レーザ発振装置に比べて中間反射鏡による反射損失を1/2に低減することができ、従来に比べて短い長さの分割導波管5・7を使用して所定出力のレーザ光を効率的に出力させることができる。
【0022】
今、例えば長さ1000mmの導波管を使用して所定出力のレーザ光を出力する1段構成の導波管レーザ発振装置を基準とすると、図3に示すように平行2段配置された2個の分割導波管を、2個の中間反射鏡で接続する従来型の導波管レーザ発振装置にあっては、各分割導波管の長さを625mmとして長さを37.5%、短くすることができるが、本実施例の導波管レーザ発振装置1にあっては、中間反射鏡15を1個とすることにより各分割導波管5・7の長さを555mmとして長さを44.5%、短くすることができる。
【0023】
これによりRF電極9・11に高周波電圧を供給する電源容量を増大することなく、短い長さの分割導波管5・7を使用して所定のレーザ出力に増幅することができ、装置自体を小型化することができる。また、電源の発熱を抑えることができ、大型の冷却ファンを使用する必要がないため、装置自体を低コスト化及び小型化することができる。
【0024】
上記説明は、2本の分割導波管を使用した導波管レーザ発振装置1に付いて説明したが、3本以上の分割導波管を使用し、分割導波管本数より1個、少ない個数の中間反射鏡を使用して各分割導波管を連続させてもよい。尚、上記説明と同一の部材に付いては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0025】
即ち、図4(図4は、3本の分割導波管を使用した例を示すが、本発明においては、2本以上の分割導波管を使用する場合であればよい。)に示すように、導波管レーザ発振装置51は、3本の分割導波管53・55・57を使用して構成され、図示する上方に位置する分割導波管53の出力端と反対側の端部側に、2段目の分割導波管55の端部を近接した状態で、傾斜配置すると共に2段目の分割導波管55の他方端部に3段目の分割導波管57の端部を、近接した状態で傾斜配置する。
【0026】
そして1段目の分割導波管53の出力側に半透鏡13を配置する。また、互いに近接する1段目の分割導波管53端部と2段目の分割導波管55端部及び2段目の分割導波管55端部と3段目の分割導波管57端部に中間反射鏡59・61をそれぞれ配置すると共に3段目の分割導波管57の他方端部に全反射鏡63を配置する。
【0027】
一方の中間反射鏡59は、1段目の分割導波管53における光軸と、2段目の分割導波管55における光軸とが一致する所定の反射角度で反射するように配置される。また、他方の中間反射鏡61は、2段目の分割導波管55における光軸と、3段目の分割導波管57における光軸とが一致する所定の反射角度で反射するように配置される。更に、全反射鏡63は、3段目の分割導波管57における光軸からの入射光を、該光軸と一致する方向へ全反射するように配置される。
【0028】
この導波管レーザ発振装置51にあっては、短い導波長さの分割導波管55・55・57を使用して所望のレーザ利得に応じて増幅されたレーザ光を出力させることができる。その際に、各分割導波管53・55・57を連続させる中間反射鏡の個数を、複数の分割導波管を平行多段配置する場合に比べて少なくすることができ、その分、中間反射鏡による反射損失を低減することができる。
【0029】
これにより中間反射鏡59・61による反射損失を低減して所望のレーザ利得で増幅された所定出力レーザ光を、効率的に出力させることができる。また、短い長さの分割導波管53・55・57を使用することができ。装置を小型化することができる。
【0030】
上記と同様に、例えば長さ1000mmの導波管を使用して所定出力のレーザ光を出力する1段構成の導波管レーザ発振装置を基準とすると、図5に示す導波管レーザ発振装置51にあっては、各分割導波管53・55・57の長さを454mmとして長さを54.6%、短くすることができる。
【0031】
また、上記説明においては、複数本の分割導波管を、図示する上下方向に折り返し状に多段配置する構成としたが、複数本の分割導波管を、水平方向に折り返し状に多段配置する構成、上下方向へ多段に折り返し配置された複数本の分割導波管と水平方向へ多段に折り返し配置された複数本の分割導波管を組合わせた構成であってもよい。この場合にあっては、多数本の分割導波管を使用して導波距離を長くしながら装置の体積を低減して小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を具体化した実施例の導波管レーザ発振装置を示す平面ブロック図である。
【図2】図1のA−A線縦断面図である。
【図3】導波管長さの比較例を示す説明図である。
【図4】導波管レーザ発振装置の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 導波管レーザ発振装置
3 ハウジング
5・7 分割導波管
9・11 RF電極
13 半透鏡
15 中間鏡
17 全反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のレーザ利得に応じた長さで、内部に気体レーザ媒質が充填される導波管と、導波管内の気体レーザ媒質に電場を作用して励起する電極と、導波管の出力側に配置され、導波管内を伝搬するレーザ光を反射すると共に所定の割合で透過する半透鏡と、導波管の終端側に配置され、伝搬するレーザ光を全反射する全反射鏡とからなり、導波管内を伝搬するレーザ光を半透鏡及び全反射鏡により共振させて所定のレーザ利得で増幅して出力する導波管レーザ発振装置において、
導波管は、複数の分割導波管とし、
各分割導波管は、互いに連続するように一方の端部を近接させて折り返し状となるように傾斜配置すると共に分割導波管相互の接続箇所に、互いの光軸が一致するようにレーザ光を反射する中間反射鏡を設けた導波管レーザ発振装置。
【請求項2】
請求項1の分割導波管は、ガス不透過性の誘電体材料で、内部にレーザ媒質気体が充填される中空部を有した軸線直交方向断面が円形状及び矩形状のいずれかとした導波管レーザ発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−71203(P2009−71203A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240378(P2007−240378)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(390033824)
【Fターム(参考)】