説明

導電性コーティングおよび通信ウィンドウを有する基板

本発明は、導電性且つ加熱可能なコーティング(2)と、上記コーティングの中断部の形態でコーティングの中に作られており、波長がコーティング(2)によって反射または吸収され得る波長の範囲にある情報搬送信号の形態で通信放射を通すことができる、少なくとも一つの通信ウィンドウ(5)と、ウィンドウ(5)の縁の少なくとも一部およびコーティングに接触することができる他の導電性要素とを備える、基板、特に窓ガラス(1)に関する。本発明は、通信ウィンドウ(5)が導電性カバー(6)を備えると共に、それに電気的に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ウィンドウを有する、好ましくは透明なコーティング基板であって、請求項1のプリアンブルの特徴を示すコーティング基板に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許第19503892号明細書は、情報を送信するマイクロ波放射線に関するコーティング窓ガラスの遮蔽を低減する手段を開示する。導電性且つ光透過性コーティングを有する上記窓ガラスの用途は、赤外線(IR)を反射する断熱窓ガラスおよび/またはビルのガラス取り付け工事や車両のガラス取り付け工事のための電気加熱式窓ガラスとして見いだされた。
【0003】
車両において、それらは、金属製の車体構造と共に、車両の内部空間を電磁場から保護するファラデー箱を形成する。構造空間においてもまた、設備は、導電性コーティングを有する窓ガラスおよび他の壁の対応する導電性構造を使用して、電気的に保護されることができる。この種類の遮蔽によって、制御用コンピュータのような感知機器が、構造領域において、無線電話の送信機または大容量のレーダ装置による憂慮すべき影響から保護され得る。
【0004】
さらに、遮蔽は、情報の搬送波として使用されるマイクロ波領域の電磁波放射線もまた通さない。送信機および/または受信機が保護(車両)空間内においてアンテナの側に位置しているとき、伝送問題が発生する。例えば、車両の位置を決定するシステム、遠隔制御システム、識別システム、通行料金確定システム等が混乱する。
【0005】
最初に連続的に堆積されたいくつかの層の列を取り除くことにより、層のシステムが事後的に、機械的に、または熱的に構造化されることが知られている。特に、レーザ光線によって特別に狭いスロットが層の中に作成され得る。上記最先端の技術では、導電層における改善策として、マイクロ波放射線の波長に調整された長さと大変小さな自由表面領域を有する放射スロットを形成する、少なくとも一つのスロットが考案されている。このスロットを通って、導電層によって取り出されたマイクロ波領域に放射するエネルギーが再び分断されることができる。いわゆる通信ウィンドウはこのように形成される。
【0006】
自動車道路における通行料金の自動確定に関して想定されるように(「遠隔支払い」)(円偏向の平均周波数5.8GHzを有するDSRC基準)、情報の伝送のための使用周波数が例えば5.8GHzであるとき、且つ、主としてこの周波数のマイクロ波の伝送のためにスロットが設けられたとき、それらは、ガラスの誘電率を考慮して、λ/2の共振波長に対して適切に設計される。
【0007】
情報が円偏向マイクロ波で伝送される(すなわち、波の瞬間的な振動面がその伝播軸の周りに回転し、波が円包絡線の中で振動する)とすると、層の中の十字形の形態で隙間が適切に設けられる。二つのスロットの長さは、ガラスの誘電率への対応を考慮して、使用マイクロ波の波長に適切に再び調整されると共に、使用マイクロ波の値λ/2に対応する。
【0008】
この最新の技術において、周波数5.8GHzのマイクロ波放射線の減衰の比較測定により、コーティングの中に放射スロットを呈示する合わせガラスでは、十分にコーティングした合わせガラスにおけるよりも高周波放射線に対して伝送の減衰がかなり弱くなり、しかも、コーティングされていない合わせガラスの減衰に近くなることが分かる。
【0009】
独国特許第19817712号明細書は、コーティングの表面の限られた部分における精細な線または精細なパターンの形態の構造の作成により作られると共に、視覚的に大変目立たないコーティングにおける、通信ウィンドウを有する同様の基板を記載している。
【0010】
しかしながら、導電性コーティングにおける共振構造の形成は問題をもたらす。試行の結果から、誘電性基板および導電性コーティングによって形成された全体のシステムにおいて、高い表面抵抗または通常の導電性コーティングの損失のために、補償に必要な高周波数電流が流れることができないことが分かった。
【0011】
国際公開第00/72635号パンフレットは、赤外線を反射するコーティングと、表面除去またはコーティングの取り除きによって作られた通信ウィンドウとを有する、透明基板を記載する。導入部で検討された、精細な線の形態で単独で作られた通信ウィンドウと対比して、この変形例は、コーティングの境界での色の差により目に顕著に知覚されるコーティングの障害を形成する。
【0012】
この障害は、特に、コーティングが基板の電気加熱と同時に使用されるとき問題をもたらす。このため、(バンドの形態の)少なくとも一対の電極を用いてコーティングに電圧が印加され、その電流は、層の表面にできる限り一様に導入されると共に分配されなければならない。高さに比べてかなり幅広の車両用窓ガラスとしては、ほとんどの場合、バンド状の電極は、窓ガラスの長辺側に沿って位置しており、その結果、加熱電流が、窓ガラスの高さに亘って最短の経路で流れることができる。同時に、通信ウィンドウは、窓ガラスの上部枠上に位置しており、この例では、数センチメートルの幅に亘って延びている。
【0013】
明白に、コーティングの均質性に影響を与える各通信ウィンドウは、電流の流れを混乱させる。局部の温度の急上昇(「温点」)が現出し、これにより、基板(熱応力)とコーティング自体に損傷をもたらす場合がある。これは、コーティングが大きな範囲に亘るときに事実であるばかりでなく、通信ウィンドウが多かれ少なかれ不連続な個々のスロットによって形成されるときもそうである。後者はまた、考慮すべき表面の区域内において、層の抵抗がかなり増加し、加えて、上述の温点の現出をもたらす。
【0014】
先に提案された文献は、大きな通信ウィンドウの障害作用を低減することを目的とした手段として、この通信ウィンドウの縁上に、加熱層よりもかなり小さな単位面積当たりのオーム抵抗を示す導電性バンドを設けることを提案している。これにより、電流がカットアウトをバイパスするはずである。好ましくは、通信ウィンドウは、完全にそのようなバンドに縁取られている。バンドは、銀を含む導電性シルクスクリーン印刷ペーストを印刷し且つ焼き固めることによって、組み立てられることができる。しかしながら、それは、導電性ラッカーを堆積することにより、または金属製バンドを置くことにより塗布されてもよい。すべての場合において、バンドとコーティングの間に導電機能の接着剤が必要であることはいうまでもない。
【0015】
バンドは、例えば黒のエナメル製の不透明の非導電性マスキングバンドを重ねることによってマスキングされ得る。そのようなマスキングバンドは、原則として、焼き固められ得る色が黒の非導電性の物質(シルクスクリーン印刷ペースト)から成る。この物質では、赤外線は反射せずに吸収される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明に内在する問題は、加熱可能なコーティングおよびこれで作られた通信ウィンドウを有するさらに改良された基板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため、本発明は、導電性且つ加熱可能なコーティングと、このコーティングの中断部の形態で前記コーティングの中に作られ、送信すべき情報を搬送すると共に、波長がコーティングによって反射または吸収され得る波長の範囲にある、信号として使用されるいわゆる通信放射を通すことができる少なくとも一つの通信ウィンドウと、ウィンドウの縁の少なくとも一部およびコーティングに接触した他の導電性要素と、導電性カバーを備えると共に、上記他の導電性要素に電気的に連結されている通信ウィンドウとを備える基板、特に窓ガラスを提案する。
【0018】
通信ウィンドウ、ひいては、好ましくは赤外線を反射する加熱可能なコーティングでコーティングされていない表面区域が、それ自体導電性であり(直流を透過する)、その結果、直接または他の導電性要素を通ってコーティングに導電的に結合する本発明によるカバーを備えるという事実のために、(加熱用の)電流がこの区域に流れることができる。このカバーは、電気的なバイパスまたはブリッジを形成する。
【0019】
カバーは、基板の上にコーティングを堆積する前または後に作製してもよい。
【0020】
簡単に具体化できる有利な実施形態では、カバーは、通信ウィンドウの縁のすべての側部をコーティングすることなくカバーするようにコーティング上に堆積されており、さらに、上記他の導電性要素を備える。
【0021】
好ましくは、カバーは、上記コーティングの単位表面積当たりのオーム抵抗よりも低い単位表面積当たりのオーム抵抗を呈する。
【0022】
コーティングは、少なくとも二つの電極を用いて電圧によって励起されて加熱されることができ、導電性カバーは、電極間の電流の流れの中に位置づけられている。
【0023】
カバーはまた、抵抗加熱の形態で加熱されることができる。
【0024】
コーティングは、通信ウィンドウを通る伝送すべき通信放射を通すことができるか、または上記放射線を辛うじて減衰させる。
【0025】
カバーの中に、通信ウィンドウを通る上記通信放射に対する透過性を増加させるが、カバーを通る電流を阻止しない中断部が、有利に作られている。
【0026】
本発明の好ましい改良によれば、適切な共振構造が、開口または中断部の形態でカバーの中に生成され、その寸法は、それ自体知られた方法で、通信放射(周波数、波長、極性等)の特性に対して調整することができる。
【0027】
非常に弱い補償電流に関して導入部で言及した問題は、特に、カバーがコーティングの物質よりも実質的に良好な導電性(表面抵抗ほどに大きくない)を有するとき、本発明に従うカバーについて、著しく明白でない方法で明らかになる。
【0028】
カバー内の開口または中断部ができる限り小さな表面積で作られるとき、ここで考慮されている波長の伝送に対する証明された良好な影響にもかかわらず、感知できるほどの限定も、カバー内の電流路における中断部も認められない。なぜならば、中断部間の「不感」帯が回避され得、完全に除去され得るからである。実験サンプルの自己温度計を用いてこの状況を確認することができた。
【0029】
非常に好ましい方法において、カバーにおける開口の寸法は、通信放射の波長に対して同調される。
【0030】
カバーが、その一般的な導電性を混乱させないように局部的にのみ遮断されるのが好ましいとすると、スロットだけが開口構造として評価される。これらのスロット構造は、コーティングの区域の中に場として配置される。
【0031】
中断部は、好ましくは、特に円偏光を呈する通信放射が伝送されるとき、特に互いに垂直な種々の方向に形成されている。
【0032】
十字ばかりでなく、多角形、楕円、および円のような構成が選択され得る。しかしながら、本来的に閉じた多角形または楕円構造は、カバー内で受動的な「小島」の表面を形成することができ、その縁の上に温点が再び形成される。
【0033】
より有利な実施形態は、考慮されている放射線の波長の1/4に対応する波長(λ/4)を有する四つの等しい分岐から成る十字形である。四つのスロットの各々は、スロットアンテナを形成する。それは、一方の側では開放していると共に、垂直なスロットの長さの半分だけ短い。さらにそれは、垂直なスロット内に分散場を介して容量的負荷を受容する、すなわち伸長される。
【0034】
これにより、個々のスロットの長さについて、最初の近似に対して、スロットの幅の半分だけ短い共振器をもたらす。従って、十字形スロットの共振周波数は、それ自体の幅の半分だけ短い簡単なスロットの共振周波数と等しい。
【0035】
個々の構造の互いに対する水平および垂直な距離が、好ましくは波長λより短い。スロットの幅は、好ましくはλ/10であってもよい。
【0036】
例えば、合わせガラスのガラス材料と接着フィルムの材料(例えばPVB)の誘電率および損失率のような材料のパラメータを考慮すると、理論的に最適な寸法は、十字の高さおよび幅が11.5mm、スロットの幅が0.5mm、十字の中心間距離が15mmとなる。しかしながら、この十字を列に並べたように密接な配置により、約3.5mm幅のカバー部分だけが十字の二つのアームの先端間に残る。これらの部分は、再び、電流の流れに対して収縮することができ、温点が再び現れることがある。
【0037】
これらの収縮を制限するために、十字構造は、列をなして配置されると共に、互いに交互に垂直な個々のスロットから成る、周期構造によって交換されることができる。スロット構造を共振させる最適長さは、放射線の波長の半分(λel/2)に対応する。ここで、
【数1】

であり、周波数は5.8GHzであり、合わせガラスの誘電率εは約4.7に等しい。本例示的実施形態において、共振構造は約12mmの長さを有する。
【0038】
他の基板ばかりでなく、他の周波数および他の波長は異なる値をもたらす。
【0039】
好ましくは、コーティングは、導電性インクの印刷、特にシルクスクリーン印刷によって製造される。
【0040】
この製造手順は、考慮されている基板、特に車両のフロントガラスを製造する確立された工程に、できる限り統合することができる。その理由は、それらは、シルクスクリーン印刷によってパターンまたはバンドをほとんどすでに備えているからである。
【0041】
カバーとして使用される印刷媒体のシート抵抗は、好ましくは、2Ωsquare未満であってもよい。この値は、導電性透明コーティングの表面抵抗の典型的な値である。
【0042】
コーティングに加熱電圧を導入するために、印刷、特にシルクスクリーン印刷によって塗布されたバンドの形態の少なくとも二つの電極が設けられてもよい。
【0043】
カバーおよび電極は、同じ物質から成ってもよく、好ましくは、1回の工程で印刷されてもよい。
【0044】
1mmのスロット幅で、良好な伝送結果が得られた。
【0045】
スロットの互いに対する水平距離および垂直距離は、12.75mmに等しかった。カバーの実験的製造に対して、黒銀ペーストDR08−03が用いられた(フェロー(Ferro)によって製造された焼き固め用のガラス状のエナメル)。焼き固めの後で、このペーストは、約15mΩsquareのシート抵抗を有していた。その厚さは、好ましくは8μmから15μmの範囲内にある。
【0046】
自記温度計を用いることにより、注目すべき温点が発生しなかったこと、および注目すべき表面加熱力がカバーの区域に印加されなかったことが明らかである。局所的な過熱を避けるために、どのような場所でも十分に一定の幅を有する曲がりくねった電流路が形成される。
【0047】
本発明の有利な技術的な目的は、通信ウィンドウの区域において、通信放射に対しての通常の合わせガラス(2dBから4dBの減衰)に相当する伝送を達成することにあり、それは、このようにすでに達成されている。
【0048】
この目的は、カバーのために、とにかく透明でないか、または部分的に透明な通信ウィンドウの区域内で窓ガラスの加熱よりも高い優先度を有する。
【0049】
例えば基板における加熱をより均質に分配するために、なおカバーの領域が表面の加熱に寄与すると、カバーは、著しく大きな表面抵抗を有する。
【0050】
しかしながら、これは、堆積の厚さの減少、シルクスクリーン印刷インクにおける導電性顔料の含有量(例えば、銀の含有量)の減少、カバーを堆積する他の方法、構造のより密接な配置によって、得ることができる。この手段のリストは完全ではない。
【0051】
反対に、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、具体的な要求の機能としてカバーの抵抗を適用するために当業者に適していると思われる、あらゆる手段を適用してもよい。
【0052】
焼き固め工程がない適用の場合が予想され得るので、カバーに対して(高温に耐える)焼き固めタイプの印刷インクを必ずしも使用する必要はない。カバーが一般的に合わせガラスの中に保護される位置に定期的に置かれるとすると、それは、概ね、機械的な抵抗が小さい物質、例えば有機導電性インクから成る。
【0053】
車両窓ガラスのシート抵抗、電力、および最小の光透過率のような、本項および以下において示された電気的パラメータは実際の値である。それらは、本発明の適用を限定するものでないが、本発明は、透過率の他の限定値、作動電圧の他の値、および(より小さい)シート抵抗を呈する窓ガラスに使用されてもよいことはいうまでもない。
【0054】
カバーは、少なくとも部分的にサンバイザを形成し、好ましくは、二つの折りたたまれたサンバイザの間に位置している。
【0055】
基板は、コーティングおよびカバーを備えた第1の剛性窓ガラス、上記他の導電性要素、接着層および第2の剛性窓ガラスからなる、合わせガラスによって構成される。
【0056】
本発明の主題の他の詳細および効果は、例示的実施形態の図面により、また、それに従う詳細な説明により明らかとなるであろう。
【0057】
表示を簡単化したこれらの図面において、縮尺はあっていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
図1は、可視光に対して高透過性である導電性のコーティング2を備える合わせガラス1の縁領域の部分を示す。本例示的実施形態において、このコーティングは、図2でよりよく見ることができるように、二つの透明窓ガラス1.1および1.2、並びに、表面接着によってそれらを共に結合する接着フィルム3から成る複合材料の内部に位置する。本実施形態では、コーティング2は、複合材料の内部に配置された基板として機能する窓ガラス1.2上に直接的に堆積されている。図1の状況は、窓ガラス1.1および接着フィルム2が仮想的に取り除かれたときに得ることができる。車両のフロントガラスとしての装着位置については、窓ガラス1.2は外側窓ガラスを形成し、窓ガラス1.1は車両の内側スペースに面している。
【0059】
コーティング2は、好ましくは、低オーム抵抗の、好ましくは銀製の少なくとも一つの金属層と、高光学的屈折性(反射防止)、および、特に誘電特性を有する他の層と、適切であれば、遮蔽層とを備える、熱抵抗の高い層のシステムから成る。これらのような層の知られたシステムは、窓ガラス上に平坦に堆積すると共に、窓ガラスの続くキャンバリングに必要な650℃以上の温度に損傷することなく耐えることができる。完成した合わせガラスは、好ましくは、少なくとも70%の光透過性を提供する。
【0060】
完成した層のシステムは、約2Ωsquareから4Ωsquareの表面抵抗を有する。それは、加熱可能なコーティングとして使用され、好ましくは、熱線(赤外線)を反射する。このため、合わせガラス1は、それ自体知られているように、コーティング2の両側に少なくとも二つの集電ストリップを備え、ここでは、識別符号4で示されている上部ストリップのみが現れている。二つの集電ストリップは、装着位置における合わせガラスの上側および下側に沿って通常の手法で延びている。二つの集電ストリップは、特に、銀含有度の高いペーストをシルクスクリーン印刷によって、導電性インクを印刷して焼き固めることによって作製される。二つの集電ストリップに電圧(DC)が印加されたとき、それらの間に流れた直流がコーティングを抵抗加熱によって加熱する。
【0061】
集電ストリップ4が、集電ストリップの印刷の前にすでに堆積され得る、図中コーティング2の上に描かれている上側リムに沿って位置していることが分かる場合がある。また、集電ストリップをまず印刷し、次いでコーティングを堆積することも当然ながら可能である。
【0062】
コーティング2自体は、窓ガラス1.2の外部縁まで延びておらず、外部からの腐食浸食ができる限り回避される。窓ガラス1.2が、すでにコーティングされたブランクから切断されたとき、コーティングは、切断された縁に沿って狭い幅に亘る周囲で摩耗によって取り除かれる。図2では、右側に、接着フィルム3が外部に向かってコーティング2を封止していることが分かることができる。
【0063】
集電ストリップ4の下では、窓ガラスの表面の表面区域は、導入部で詳細に検討した種類の通信ウィンドウ5を得るためにコーティングされていない。コーティング2の枠2K(白破線によって示されている)によって囲まれたコーティングされていない表面区域は、例えば、コーティング工程中にマスキングすることにより、またはコーティングの後で、適宜な手段、例えば、レーザ処理または摩耗によってコーティング2の表面を局所的に取り除くことにより形成することができる。通信ウィンドウの高さ/幅比は、本例示的実施形態を示すだけに過ぎない。それは、実際には、程度の差はあるが窓ガラスの種類、装着位置、顧客要求により変化する。
【0064】
本発明によれば、通信ウィンドウ5は、本実施形態では、不透明(黒)のインクによって作られたカバー6を備える。このカバー6自体は導電性である。それは、集電ストリップ4と同じ物質、または他の適宜な物質で構成することができる。前者の場合、製造技術の観点から有利なように、集電ストリップおよびカバーをそれぞれ窓ガラス1.2およびコーティング2の上に、1回の工程でそれぞれ印刷することができる。各場合において、カバー6の表面オーム抵抗は、コーティング2の表面オーム抵抗よりも際だって低い。
【0065】
そのようなカバーは、一般的に、通信ウィンドウ5を通る赤外線を吸収する。
【0066】
その上で、カバー6内には開口7から成るパターンが作られている。これらは、概ね、その表面の上に最初の連続カバーを堆積した後で事後的に作られている。しかしながら、カバーがシルクスクリーン印刷によってなされるとき、シルクスクリーン印刷の型板は、開口7が印刷工程と同時にカバー6内に作製されるように製造される。
【0067】
本例では、開口7は、導入部で説明されたように、(互いに垂直な)水平方向および垂直方向に交互に配向した同じ長さおよび同じ幅のスロットから成る、規則的なパターンの形態をとる。この配置は、通信ウィンドウの区域内で円形偏向波の通路に対してそれ自体よく役立つ。
【0068】
もちろん、他の種類の波、すなわち放射線に対しては、他のスロット配置がより有利であり得る。
【0069】
本例示的実施形態において、スロットは、互いに直交しているならば、水平および垂直ではなく斜めであってよく、その場合も同様の効果を有する。スロットの幅および長さは、縮尺があっておらず、特に、実際のスロットアンテナは、通信ウィンドウ5の全表面積に対して極端に狭い。
【0070】
いかなる場合でも、開口7は、集電ストリップ4とコーティング2/枠2Kとの間に、コーティング2と比較して低オーム抵抗を有するカバー6を通る直流通路が未だにあるように配置されている。切断線II−IIの領域において、矢印は、スロット7の周りで蛇行している曲がりくねった電流路Cを記号的に示すのに使用されている。これは、実際の電流の流れを再現してはいないことはいうまでもない。
【0071】
加えて、数多くの車両のフロントガラスにおいて、ドットのモチーフを有する不透明のカバーの形態の「第3のサンバイザ」が、折り畳まれたサンバイザの間に位置する領域に設けられている(独国特許出願公開第4033188号明細書参照)。このカバーは、一般的に、車両の内部空間に面するこれらの窓ガラスの表面上に位置しており、電気的な役目を全く有していない。
【0072】
通信ウィンドウ5は、(最新の車両に広まっているように)上側枠の中央付近において車両のフロントガラスに設けられてもよく、そのとき、カバー6は「第3のサンバイザ」の追加的機能を提供してもよい。いずれの場合も、それは、前述の解決策と対比して、電流が流れる連続構造を呈すると共に、合わせガラスの他の面内にさらに設けられる。
【0073】
図2において、コーティング2の厚さ(実際は、数ナノメートル)、接着フィルム3の厚さ(例えば、0.38mm)、およびカバー6の厚さ(数μm)は、明瞭化のために、剛性の窓ガラス1.1および1.2の厚さに対して大変誇張されていて、縮尺があっていない。
【0074】
集電ストリップ4がコーティング2の上に設けられていると共に、カバー6がその部分に対して通信ウィンドウを形成するコーティング内の隙間の縁を覆っていることが分かる場合がある。カバー6は、コーティング2内の隙間を電気的に橋絡している。これにより、温点はもはや生じない。
【0075】
二つの剛性窓ガラスを組み立てる工程中に溶ける接着フィルム3は、表示とは異なり、多かれ少なかれスロット7内を満たす。コーティングおよび集電ストリップの物質と同じようにカバーに使用される物質は接着層の物質と互換性があるのが好ましいと共に、これらの層のすべての表面に対する接着フィルムの良好な接着性が保証されるのが好ましいことは言うまでもない。
【0076】
窓ガラスの中央に向かって習慣的に、それ自体をドットのモチーフに変換する不透明のインクのバンド8が、剛性の窓ガラス1.1の上部の外部表面上に、縁に平行して設けられ得る。それは、それ自体知られているように、視界から集電ストリップ4をマスキングするように、この場所、および/または複合材料の内側または外側に位置する剛性の窓ガラスの他の表面の一つ以上に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ウィンドウの頂部上のコーティングおよび導電カバーに設けられた通信ウィンドウにコーティングされた、車両のフロントガラスの部分図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性且つ加熱可能なコーティング(2)と、前記コーティングの中断部の形態で前記コーティングの中に作られ、送信すべき情報を搬送すると共に、波長がコーティング(2)によって反射または吸収され得る波長の範囲にある、信号として使用されるいわゆる通信放射を通すことができる少なくとも一つの通信ウィンドウ(5)と、ウィンドウ(5)の縁の少なくとも一部およびコーティングに接触した他の導電性要素とを備える基板、特に窓ガラス(1)であって、通信ウィンドウ(5)は、導電性カバー(6)を備えると共に、前記他の導電性要素に電気的に連結されていることを特徴とする、基板。
【請求項2】
カバー(6)は、通信ウィンドウ(5)の縁のすべての側部をコーティングすることなくカバーするようにコーティング(2)上に堆積されており、前記他の導電性要素をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
カバー(6)は、前記コーティング(2)の単位表面積当たりのオーム抵抗よりも低い、単位表面積当たりのオーム抵抗を呈することを特徴とする、請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
コーティングは、少なくとも二つの電極(4)を用いて電圧によって励起されて加熱されることができ、導電性カバー(6)は、電極間の電流の流れの中に位置づけられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
カバー(6)はまた、抵抗加熱の形態で加熱され得ることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
カバー(6)の中に、通信ウィンドウを通る前記通信放射に対する透過性を増加させるが、カバー(6)を通る電流を阻止しない中断部(7)が作られていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
カバー(6)内の中断部(7)は、通信ウィンドウ(5)を通る前記通信放射に同調されたスロットアンテナから成ることを特徴とする、請求項6に記載の基板。
【請求項8】
中断部(7)は、特に互いに垂直な種々の方向に形成されていることを特徴とする、請求項6または7に記載の基板。
【請求項9】
中断部(7)は、十字形スロットおよび/または交互に垂直に配向した直交スロットの形態をとることを特徴とする、請求項8に記載の基板。
【請求項10】
カバー(6)は、導電性インクの印刷、特にシルクスクリーン印刷によって製造されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の基板。
【請求項11】
加熱電圧をカバー(2)に導入するように、印刷、特にシルクスクリーン印刷によって塗布された、バンドの形態の少なくとも二つの電極(4)が設けられたことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の基板。
【請求項12】
カバー(6)および電極(4)は同じ物質から成り、好ましくは1回の工程で印刷されることを特徴とする、請求項11に記載の基板。
【請求項13】
前記カバーは、少なくとも部分的にサンバイザを形成し、好ましくは、二つの折りたたまれたサンバイザの間に位置していることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の基板。
【請求項14】
コーティング(2)およびカバー(6)を備える第1の剛性窓ガラス(1.2)、前記他の導電性要素、接着層(3)、および第2の剛性窓ガラス(1.1)から成る合わせガラス(1)によって構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−528850(P2006−528850A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520869(P2006−520869)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001978
【国際公開番号】WO2005/011052
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(399052888)サン−ゴバン グラス フランス (23)
【Fターム(参考)】