説明

導電性ゴム部材

【課題】加工性に優れると共に感光体に当接させて用いても感光体表面を傷つけたり、逆にゴム部材表面が磨耗したりすることなく、低コストで、良好な特性を長期間にわたって維持できる導電性ロールやブレード等に特に好適な導電性ゴム部材を提供する。
【解決手段】少なくとも一層の導電性弾性層を有する導電性ゴム部材において、使用時に相手部材に当接する側の少なくとも最外層の導電性弾性層12がクロロプレンゴムを含むゴム基材に導電性付与材を含有させたゴム組成物を加硫したものであり且つ当該導電性弾性層12の表層部が、少なくともイソシアネート成分及び有機溶剤を含有する表面処理液を含浸させて形成した表面処理層12aとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンター等の画像形成装置の感光体等に一様な帯電を付与するために用いられる導電性ロールやブレード等に特に好適な導電性ゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の導電性ロールには、感光体等への非汚染性、導電性等が要求される。そこで、従来、ポリウレタン、シリコーンゴム製のものが用いられていたが、感光体等への汚染性、帯電性等の理由から、各種弾性層表面に各種コーティング層、表面処理層又は被覆チューブを設けたものが提案されている(例えば特許文献1〜特許文献4等参照)。
【0003】
このうち特許文献4には、低コストで、良好な特性を長期間に亘って維持することができる帯電部材として本出願人が出願した、エピクロルヒドリン系ゴム基材からなる弾性層を有する帯電部材であって、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーと、導電性付与剤と、イソシアネート成分とを含有する表面処理液で表面処理することにより形成された表面処理層を有する帯電部材が開示されている。
【0004】
また、帯電ロールとしての特性を改良するために、出願人は、エピクロルヒドリンゴムからなるゴム層にイソシアネート化合物を含む表面処理液で表面処理することにより得られる表面処理層を有する帯電ロールを提案した(特許文献5参照)。
【0005】
しかしながら、エピクロルヒドリンゴムは、加工性に劣るという欠点があるため、生産性の向上やコスト削減に繋がる押出し成形やインジェクション成形などを行うことは難しく、仮に可塑剤や加工助剤(サブ)などを大量に添加しても高度な成形技術や様々な工夫が要求され、また、その結果、優れたロール特性(耐汚染性、表面性、圧縮永久歪み)を得るのにはかなりの高度な工夫が必要であった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−175470号公報(請求項等)
【特許文献2】特開平5−281831号公報(請求項等)
【特許文献3】特開平4−214579号公報(請求項2、[0022]等)
【特許文献4】特開2002−040760号公報(請求項等)
【特許文献5】特許第3444391号公報(請求項等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、加工性に優れると共に感光体に当接させて用いても感光体表面を傷つけたり、逆にゴム部材表面が磨耗したりすることなく、低コストで、良好な特性を長期間にわたって維持できる導電性ロールやブレード等に特に好適な導電性ゴム部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、少なくとも一層の導電性弾性層を有する導電性ゴム部材において、使用時に相手部材に当接する側の少なくとも最外層の導電性弾性層がクロロプレンゴムを含むゴム基材に導電性付与材を含有させたゴム組成物を加硫したものであり且つ当該導電性弾性層の表層部が、少なくともイソシアネート成分及び有機溶剤を含有する表面処理液を含浸させて形成した表面処理層となっていることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記クロロプレンゴムにエピクロルヒドリンゴムをブレンドしていることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の何れかの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液が、さらにカーボンブラックと、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーとの少なくとも一方を含有したものであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液が、さらにポリエーテル系ポリマーを含有したものであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0012】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載のポリエーテル系ポリマーが活性水素を有することを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0013】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載のポリエーテル系ポリマーがエピクロルヒドリンゴムであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性付与材が、電子導電性付与材及びイオン導電性付与材の少なくとも一方であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0015】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様に記載の導電性ゴム部材がロール形状又はブレード形状であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、加工性に優れ、且つ表層に一体化した表面処理層を有し、特に、感光体に当接する部材として使用した場合でも、感光体表面を汚染したり、ロール表面やブレード先端が磨耗したりすることなく、低コストで、良好な特性を長期間にわたって維持できる導電性ゴム部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を、本発明の導電性ゴム部材の一例としての導電性ロールを例示しながら詳細に説明する。
【0018】
図1に本発明の導電性ゴム部材の一例としての導電性ロールの断面図を示す。図1(a)に示すように導電性ロール10は、芯金11上にクロロプレンゴムを含むマトリックスからなる弾性層12を有するものであり、弾性層12の表層部は表面処理層12aとなっている。また、図1(b)に示すように、導電性ロール10は、芯金11とクロロプレンゴムを含むマトリックスからなる弾性層12と芯金11の間に、例えば発泡層13を有していてもよい。ここで、マトリックスからなる弾性層12と芯金11の間に任意に設けられる層は、発泡層でも無発泡層でもよく、さらに1層以上の構造であってもよい。この場合には、最上層の弾性層が下記の条件を有していればよい。また、弾性層12は、ソリッド(無発泡)でもスポンジ(発泡体)でもよいことはいうまでもない。
【0019】
本発明の導電性ロール10の弾性層12は、上述したように、クロロプレンゴムを含むマトリックスからなるが、このマトリックスはクロロプレンゴムを含むゴム基材を加硫したものである。ここで、ゴム基材としては、クロロプレンを主体とするものであれば、適宜、他のゴム材料をブレンドしてもよい。ブレンドできるゴム基材としては、ポリウレタン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)等を挙げることができるが、特にエピクロルヒドリン系ゴムが好ましい。弾性層に導電性を付与するために好ましいからである。なお、エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体などを挙げることができる。
【0020】
また、弾性層12には導電性付与材が添加されている必要がある。すなわち、マトリックス(弾性層12)は、ゴム基材に導電性付与材を添加したゴム組成物を加硫したものである。導電性付与材としては、カーボンブラック、金属粉などの電子導電性付与材や、イオン導電付与材、又はこれらの両者を混合して用いることができる。イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたものを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0021】
このような弾性層12は、クロロプレンを含むマトリックスの加工性が良好なため、インジェクション成形、押出成形などにより容易に成形される。
【0022】
なお、弾性層12は、成形された後、外表面が研磨されていても研磨されていなくてもよい。
【0023】
表面処理層12aは、弾性層12を表面処理液に浸漬させる又は表面処理液をスプレー塗布などにより塗布し、乾燥硬化させることにより形成することができ、表面処理液は弾性層12の表層部に含浸されて表面処理層12aとなる。
【0024】
ここで、表面処理液は、有機溶剤に、少なくともイソシアネート成分を溶解させたものである。
【0025】
表面処理液に含まれるイソシアネート成分としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)などのイソシアネート化合物、および前記の多量体および変性体などを挙げることができる。さらに、ポリオールとイソシアネートからなるプレポリマーを挙げることができる。
【0026】
また、表面処理液には、ポリエーテル系ポリマーを含有させてもよい。ここで、ポリエーテル系ポリマーは、有機溶剤に可溶であるのが好ましく、また、活性水素を有して、イソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものが好ましい。
【0027】
活性水素を有する好適なポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、エピクロルヒドリンゴムが挙げられる。ここでいうエピクロルヒドリンゴムは未加硫状態のものを指す。エピクロルヒドリンゴムは、表面処理層に導電性と共に弾性を付与することができるため好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムは、末端に活性水素(水酸基)を有しているが、ユニットに水酸基、アリル基などの活性水素を有しているものも好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。
【0028】
活性水素を有する他の好適なポリエーテル系ポリマーとしては、水酸基又はアリル基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリオール、グリコール等が挙げられる。このようなポリエーテル系ポリマーは活性水素を有する基を両末端に備えたものよりも片末端にのみ備えたものが好ましい。また、数平均分子量が300〜1000であることが好ましい。表面処理層に弾性を付与することができるためである。このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル、アリル化ポリエーテル、ポリアルキレングリコールジオール、ポリアルキレングリコールトリオール等を挙げることができる。
【0029】
このように表面処理液にポリエーテル系ポリマーを添加することで、表面処理層の柔軟性や強度が向上し、その結果、所望のロールの表面が磨耗したり、当接する感光体表面を傷つけたりする虞がなくなる。
【0030】
また、表面処理液には、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択されるポリマーを含有させてもよい。
【0031】
本発明の表面処理液に用いられるアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、所定の溶剤に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものである。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
【0032】
また、表面処理液には、導電性付与材としてさらにアセチレンブラック、ケッチェンブラック、トーカブラック等のカーボンブラックを添加してもよい。
【0033】
表面処理液に用いられるカーボンブラックは、イソシアネート成分に対して0〜40重量%であるのが好ましい。多すぎると脱落、物性低下等の問題が生じ好ましくないからである。
【0034】
また、表面処理液中のアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、イソシアネート成分に対し、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーの総量を10〜70重量%となるようにするのが好ましい。10重量%より少ないとカーボンブラック等を表面処理層中に保持する効果が小さくなる。一方、ポリマー量が多すぎると、帯電ロールの電気抵抗値が上昇し放電特性が低下するという問題や、相対的にイソシアネート成分が少なくなって有効な表面処理層が形成できないという問題がある。
【0035】
さらに、表面処理液は、イソシアネート成分、および必要に応じて含有されるこれらポリエーテル系ポリマー、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーを溶解する有機溶剤を含有する。有機溶剤としては特に限定されないが、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶剤を用いればよい。
【0036】
本発明においては、弾性層12の表層部に表面処理液を含浸・硬化させて表面処理層12aを設けたものであるので、表面処理層12aは、弾性層12表面層に含浸されて一体的に設けられている。このような表面処理層12aは、主にイソシアネート成分が硬化して形成されたもので、イソシアネート成分の密度が表面から内部に向かって漸次疎になるように一体的に形成される。従って、導電性ロール表面への可塑剤等汚染物質のブリードを防ぐことができるため、感光体への汚染性に優れた導電性ロールとなる。
【0037】
また、芯金11と弾性層12との間に任意に設けられる層としては、例えば、発泡体が挙げられ、ニトリル系ゴム発泡体、特に中高ニトリル又は高ニトリル系ゴムを挙げることができる。帯電ロールに求められる導電性を満たすためには発泡層に十分量の導電性付与材を添加する必要があるが、導電性付与材を添加すると硬度が高くなり十分なニップが得られなくなる。一方、低硬度とするために可塑剤の添加量を多くすると、可塑剤が帯電ロールの外表面に移行して、当接した感光体を汚染してしまい、また、低硬度とするための発泡を困難にする。従って、低ガス透過性であり高発泡とすることができるニトリル系ゴム発泡体とすることが好ましい。なお、発泡層は、独立気泡でも連通気泡でもよい。
【0038】
本発明にかかる導電性ゴム部材は、例えば、導電性ロールやブレード等に用いて好適なものである。
【実施例】
【0039】
以下本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
<ロールの製造>
クロロプレンゴム(スカイプレンE−33;東ソー社製)100重量部に、トーカブラック#5500(東海カーボン社製)10重量部、旭サーマル30重量部、亜鉛華5重量部、酸化マグネシウム4重量部、ステアリン酸2重量部、加硫剤(アクセル#22;川口化学社製)0.5重量部を、それぞれ添加してロールミキサーで混練りし、これをφ6のシャフトに押出し成形後、160℃×30分加硫を行い、内径φ6mm、外径φ10のゴムロールを形成した。
【0041】
<表面処理液の調製>
酢酸エチル100重量部に、イソシアネート化合物(MDI)10重量部を添加混合溶解させ、表面処理液を作製した。
【0042】
<ロールの表面処理>
表面処理液を23℃に保ったまま、前記ロールを60秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成したものを実施例1の導電性ロールとした。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様のゴムロールの弾性層表面に、酢酸エチル100重量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4重量部、及びアクリルシリコーンポリマー(モディパーFS700;日本油脂社製)2重量部をボールミルで3時間分散混合した後、イソシアネート化合物(MDI)20重量部を添加混合溶解させて作製した表面処理液を用いて表面処理層を形成したものを、実施例2の導電性ロールとした。
【0044】
(実施例3)
クロロプレンゴム(スカイプレンE−33;東ソー社製)100重量部に、アセチレンブラック(電気化学社製)5重量部、過塩素酸テトラエチルアンモニウム(関東化学社製)1重量部、サブ(黒サブ純種;天満サブ化工社製)5重量部、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)を5重量部、亜鉛華5重量部、酸化マグネシウム3重量部、ステアリン酸2重量部、加硫剤(アクセル♯22;川口化学社製)1.5重量部を、それぞれ添加してロールミキサーで混練りし、これをφ6mmのシャフトを予めセットしたパイプ金型でインジェクション成形し、160℃×30分加硫を行い、内径φ6mm、外径φ10mmのゴムロールを形成した。
【0045】
<表面処理液の調製>
酢酸エチル100重量部、アセチレンブラック(電気化学社製)2重量部、及びアクリルフッ素ポリマー(モディパーF600;日本油脂社製)1重量部をボールミルで3時間分散混合した後、イソシアネート化合物(MDI)10重量部を添加混合溶解させ、表面処理液を作製した。
【0046】
<ロールの表面処理>
表面処理液を23℃に保ったまま、スプレーによって前記ロールの表面に2回吹き付けて、表面処理液をロール(弾性層)に含浸させた。これを120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成したものを実施例3の導電性ロールとした。
【0047】
(実施例4)
実施例3において、クロロプレンゴム(スカイプレンE−33;東ソー社製)を70重量部とし、エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)を30重量部配合したものを、実施例4の導電性ロールとした。
【0048】
(実施例5)
実施例4において、表面処理液にさらにエピクロルヒドリンゴム(エピクロマーC;ダイソー社製)を3重量部配合したものを、実施例5の導電性ロールとした。
【0049】
(実施例6)
実施例5において、インジェクション成形後に外表面を研磨したものを、実施例6の導電性ロールとした。
【0050】
(比較例1)
実施例1において、イソシアネート溶液による表面処理を行わないものを、比較例1の導電性ロールとした。
【0051】
(比較例2)
実施例1のゴムロールの弾性層表面にウレタン塗料(ネオレッツR−940;楠本化成社製)を用いてコーティング層を形成したものを、比較例2の導電性ロールとした。
【0052】
(比較例3)
実施例1において、クロロプレンゴム100重量部の代わりに、エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)100重量部を用いたものを、比較例3の導電性ロールとした。
【0053】
(比較例4)
実施例3において、クロロプレンゴム100重量部の代わりに、エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)100重量部を用いたものを、比較例4の導電性ロールとした。
【0054】
(比較例5)
比較例4において、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)を20重量部としたものを、比較例5の導電性ロールとした。
【0055】
(試験例1)ロール表面評価
各実施例及び各比較例の導電性ロールの成形後のロール表面を肉眼にて観察した。結果を表1に示す。
【0056】
(試験例2)画像評価
実施例1〜2及び比較例1〜3の導電性ロールを帯電ロールとして、市販のプリンターに実装し、LL環境(10℃、30%RH)、NN環境(25℃、50%RH)、及びHH環境(35℃、85%RH)の下で印刷を行い、その印刷物の画像評価を行った。この結果を下記表1に示す。画像が良好なものを○、画像が普通なものを△、画像が不良なものを×とした。なお、「画像が普通」とは実機で使用するのに問題のない状態を指し、「画像が不良」とは濃度ムラや劣化などが見られる状態を指す。
【0057】
(試験例3)OPC汚染試験
各実施例及び各比較例の導電性ロールを帯電ロールとして、市販のレーザープリンターのトナーカートリッジに組付けて感光体に当接させ、カートリッジごと50℃、90%RHの環境に14日間保持した後、カートリッジ及び帯電ロールをプリンターに組付けて画像を出力した。このときの画像の比較ならびに当接させていたOPCと帯電ロールの表面を顕微鏡観察した。この結果は試験例1と同様、表1に示す。画像が良好なものを○、画像が普通なものを△、画像が不良なものを×とした。なお、「画像が普通」とは実機で使用するのに問題のない状態を指し、「画像が不良」とは濃度ムラや劣化が見られるなど状態を指す。
【0058】
(試験例4)連続印刷試験
実施例3〜6の導電性ロールを帯電ロールとして、市販のレーザープリンターに実装し、HH環境(35℃、85%RH)にて10000枚連続印刷後、LL環境下で印刷を行い、その印刷物の画像評価を行った。この結果を下記表2に示す。画像が良好なものを○、画像が普通なものを△、画像が不良なものを×とした。なお、「画像が普通」とは実機で使用するのに問題のない状態を指し、「画像が不良」とは濃度ムラや劣化などが見られる状態を指す。
【0059】
(結果のまとめ)
表1に示すように、押出し成形により成形した実施例1及び2の導電性ロールは、ロール表面は良好であった。実施例1及び2の導電性ロールを、帯電ロールとして用いて印刷した印刷物の画像は、それぞれの環境下で良好な評価が得られた。また、OPC汚染試験においては、OPCの汚染も、ロール表面に歪みも見られず、帯電ロールとして用いて印刷した印刷物の画像も良好な評価が得られた。
【0060】
これに対し、表面処理を行っていない比較例1の導電性ロールは、ロール表面は良好であり、比較例1の導電性ロールを帯電ロールとして用いて印刷した印刷物の画像は、いずれの環境下においても普通の評価が得られた。しかしながら、OPC汚染試験においては、OPCの汚染が見られ、ロール表面には、OPCに当接していた際の歪みが残っており、印刷物の画像は、不良の評価が得られた。
【0061】
コーティング層を設けた比較例2の導電性ロールは、ロール表面は良好であり、NN、HH環境下で印刷した印刷物の画像は良好な評価が得られ、LL環境下では普通の評価が得られた。また、OPC汚染試験においては、OPCの汚染は見られなかったものの、ロール表面には、OPCに当接していた際の歪みが残っていた。
【0062】
エピクロルヒドリンゴムからなる比較例3の導電性ロールは、シャフト上にゴムを押し出してゴムロールを形成したが、型流れ性が悪いためにロール表面が大きく波打っており、導電性ロールとして使用可能な表面を得ることができなかった。
【0063】
これより、導電性弾性層がクロロプレンゴムを含むゴム組成物を加硫したものからなり、表層部が表面処理層となっている本発明の導電性ゴム部材は、押出し成形により良好に製造することができると共に感光体に当接させて用いても感光体表面を傷つけたり、逆にゴム部材表面が磨耗したりすることなく、いずれの環境でも良好な特性を維持できるものであることがわかった。
【0064】
【表1】

【0065】
一方、表2に示すように、インジェクション成形により形成した実施例3〜6の導電性ロールは、ロール表面が良好であった。
【0066】
実施例3の導電性ロールを帯電ロールとして用いて印刷した印刷物の画像は、LL環境下では普通、NN環境、HH環境では良好であった。また、OPC汚染試験においては、OPCの汚染も、ロール表面に歪みも見られず、帯電ロールとして用いて印刷した印刷物の画像も良好であった。連続印刷試験においてはOPCの状態には変化はみられず、印刷物の画像は普通であった。
【0067】
エピクロルヒドリンゴムを配合した実施例4の導電性ロールは、いずれの環境下においても印刷物の画像は良好であり、連続印刷試験においてはOPCの状態には変化はみられず、印刷物の画像は普通であった。
【0068】
表面処理液にもエピクロルヒドリンゴムを配合した実施例5の導電性ロールは、実施例4よりもLL環境下での抵抗値が低く、柔軟性が得られたためか、連続印刷試験において10000枚印刷後にLL環境下でも画像は良好であった。
【0069】
外表面を研磨した実施例6の導電性ロールは、帯電ロールとして用いて印刷した印刷物の画像はそれぞれの環境下で良好であり、OPC汚染試験においては、OPCの汚染もロール表面に歪みも見られず、印刷物の画像も良好であった。また、連続印刷試験において、印刷物の画像は良好であった。
【0070】
これに対し、エピクロルヒドリンゴムからなる比較例4の導電性ロールは、インジェクション成形によりゴムロールを形成したところ、型流れ性が悪いために表面には波紋のような模様がみられ、導電性ロールとして使用可能な表面を得ることができなかった。
【0071】
また、比較例5の導電性ロールは、比較例4よりも可塑剤を多く配合したことでロール表面を良好に形成できたが、OPC汚染試験においては、可塑剤のブリードによるOPCの汚染がみられ、ロール表面にはOPCに当接圧着していた際の歪みが残っており、印刷物の画像は不良であった。
【0072】
これより、本発明の導電性ゴム部材は、インジェクション成形により良好に形成することができると共に感光体に当接させて用いても感光体表面を傷つけたり、逆にゴム部材表面が磨耗したりすることなく、いずれの環境でも良好な特性を維持できるものであることがわかった。また、表面処理液にポリエーテル系ポリマーを用いることで、良好な特性をさらに長期間にわたって維持できるものであることがわかった。
【0073】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の導電性ロールの断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 導電性ロール
11 芯金
12 弾性層
12a 表面処理層
13 発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の導電性弾性層を有する導電性ゴム部材において、使用時に相手部材に当接する側の少なくとも最外層の導電性弾性層がクロロプレンゴムを含むゴム基材に導電性付与材を含有させたゴム組成物を加硫したものであり且つ当該導電性弾性層の表層部が、少なくともイソシアネート成分及び有機溶剤を含有する表面処理液を含浸させて形成した表面処理層となっていることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ゴム部材において、前記クロロプレンゴムにエピクロルヒドリンゴムをブレンドしていることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液が、さらにカーボンブラックと、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーとの少なくとも一方を含有したものであることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の導電性ゴム部材において、前記表面処理液が、さらにポリエーテル系ポリマーを含有したものであることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項5】
請求項4に記載のポリエーテル系ポリマーが活性水素を有することを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項6】
請求項5に記載のポリエーテル系ポリマーがエピクロルヒドリンゴムであることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の導電性ゴム部材において、前記導電性付与材が、電子導電性付与材及びイオン導電性付与材の少なくとも一方であることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の導電性ゴム部材がロール形状又はブレード形状であることを特徴とする導電性ゴム部材。

【図1】
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【公開番号】特開2007−148379(P2007−148379A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282167(P2006−282167)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000242426)北辰工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】