説明

導電性ローラ

【課題】感光体汚染や通電耐久性の悪化といった問題が発生せず、ゴム材料の混練条件の差による導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが小さく、安定して製造できる導電性ローラを提供する。
【解決手段】導電性弾性層が導電性フィラーを含有するゴム組成物であり、導電性フィラーが、ゴム成分100質量部に対して、下記のDBP吸油量が450ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が60nm以下であるカーボンブラック(A)2質量部以上10質量部以下およびDBP吸油量が80ml/100g以上150ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が30nm以上60nm以下であるカーボンブラック(B)5質量部以上40質量部以下を含有し、かつ、可塑剤成分が導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、20質量部以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラに関し、特に電子写真複写機などの感光体まわりの帯電ローラ、転写ローラ等に好適な導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機および電子写真印刷機などの電子写真装置は、感光体表面上を均一に帯電させ、次に感光体表面上に印刷パターンの静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、これを記録用紙上に転写し、熱固定する方式のものが知られている。この方式の中で、感光体表面上の帯電方法としては一般的にコロナ放電方式が用いられている。しかし、コロナ放電方式は人体に有害なオゾンが多量に発生する他、装置の小型化が難しいという問題を有している。
【0003】
近年、コロナ放電方式よりも小型化が容易で人体に有毒なオゾンを発生させない接触帯電方式が検討され、実用化されている。この接触帯電方式は、感光体表面に導電性を有する弾性ローラを所定の押圧力で当接させるものであり、帯電部材は感光体との均一密着性が必要なために、適度な弾性が求められる。従って、該帯電部材にはゴム弾性を有する弾性層が使用され、更には該弾性層には非感光体汚染性、耐熱性および表面平滑性などが要求される。
【0004】
しかし、これを単一の材料、つまり単層のゴムローラで種々の要求特性を同時に満たすことは困難な場合があり、それぞれの機能を導電性弾性層と導電性表面層に分担させた複数の層を組み合せた多層構成ローラを採用して、各種の要求特性を複合的に満たす方法も知られている。
【0005】
帯電部材の重要な特性として、体積固有抵抗が挙げられ、1×104Ω・cmから1×1010Ω・cmの半導電性領域の導電性が必要であり、通常、導電性弾性層と導電性表面層との異なる体積固有抵抗の組み合わせにより該範囲に調整している。また、導電性弾性層を低体積固有抵抗に、導電性表面層を高体積固有抵抗にすることにより、良好な画像が得られることも知られている。ここでは、導電性弾性層を1×106Ω・cm未満の低体積固有抵抗領域に調整することが望まれている。
【0006】
導電性弾性層を低体積固有抵抗に調整するには、帯電部材のゴム組成物にエピクロルヒドリン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム等の極性ゴムを用い、ゴム中にイオン導電付与剤を添加することでゴムマトリックス中のイオンキャリアー濃度を増加させ電気抵抗を下げる方法が知られている。
【0007】
これまでにLi塩などの有機金属塩をイオン導電付与剤として極性ゴムに含有する方法が検討されてきた。この場合、半導電性ゴムとしての抵抗値は低下するが、体積固有抵抗の環境変動の増加、また、有機金属塩は極性ゴムとの相溶性が悪く、多量添加するとローラ表面に染み出し、感光体汚染、通電耐久性悪化が生じる場合がある。そこで、これを解決するために、イオン導電付与剤として第4級アンモニウム塩(特許文献1)や第4級ホスホニウム塩(特許文献2)を使用する方法が提案されている。この方法では、体積固有抵抗の環境条件による変化が小さく、かつゴム成分100質量部に対し10質量部以上添加すると体積固有抵抗も1×107Ω・cm未満が達成されるが、ローラ表面に染み出しなどが発生し、感光体を汚染する問題は解決されていない。
【0008】
このようなイオン導電付与剤による染み出し問題を解決するための手段として、ゴム材料にフィラー系の導電性充填剤を添加して体積固有抵抗を下げる方法が知られている。フィラー系の導電性充填剤として、一般的には導電性カーボンブラックが用いられている。
【0009】
しかしながら、このような導電性カーボンブラックが用いられた導電性弾性層を有する導電性ローラにおいては、製造ロット間で体積固有抵抗が大きくばらつき、所望の抵抗値を安定して得ることができない。また、導電性ローラ内においても局所的抵抗にバラツキが生じるという問題がある。これらの問題は、カーボンブラックをゴム材料中に均一に分散させることが難しく、カーボンブラック配合量のわずかな差異や、温度や時間といったゴム材料の混練条件のわずかな差によって、ゴムの分散状態が微妙に異なることにより引き起こされるものである。
【0010】
この導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキを低減する手段として、高ストラクチャーの導電性カーボンブラックではなく、低ストラクチャー、大粒径のカーボンブラックを用いる方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この方法の場合、比較的体積固有抵抗の制御が容易になるものの、導電性の付与が不足し、所望の低体積固有抵抗が得られない。さらに、体積固有抵抗のバラツキ低減も不十分であり、所望の体積固有抵抗値を有する導電性弾性層を安定して製造することは困難である。
【0011】
また、強導電性カーボンブラックと弱導電性カーボンブラックを組み合わせることで体積固有抵抗のバラツキを低減させる方法も提案されている(特許文献4)。しかしながら、この方法の場合、弱導電性カーボンブラックとして、ISAF、HAF、MAF、FEFのどのタイプのカーボンブラックでも良いとしているが、ISAF、HAFのカーボンブラックを用いた場合には、体積固有抵抗のバラツキ低減は不十分である。また、弱導電性カーボンブラックを大量に添加することによるローラの硬さの増加を抑えるため、大量の可塑剤が油展された油展ゴム材料を用いており、可塑剤成分によるローラ表面への染み出しなどが発生し、感光体汚染を起こす問題は解決されていない。
【特許文献1】特開平11−209633号公報
【特許文献2】特開平09−101652号公報
【特許文献3】特開2000−038512号公報
【特許文献4】特開平09−090714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、感光体汚染や通電耐久性の悪化といった問題が発生せず、ゴム材料の混練条件の差による導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが小さく、安定して製造できる導電性ローラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、下記構成により達成される。
【0014】
(1)導電性軸体の外周上に少なくとも一層の導電性弾性層を有する導電性ローラにおいて、該導電性弾性層が導電性フィラーを含有するゴム組成物であり、該導電性フィラーが、ゴム成分100質量部に対して、下記のカーボンブラック(A)2質量部以上10質量部以下およびカーボンブラック(B)5質量部以上40質量部以下を含有し、かつ、該導電性弾性層に含有される可塑剤成分が、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、20質量部以下であることを特徴とする導電性ローラ。
(A)DBP吸油量が450ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が60nm以下であるカーボンブラック。
(B)DBP吸油量が80ml/100g以上150ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が30nm以上60nm以下であるカーボンブラック。
【0015】
(2)導電性弾性層が、さらに、DBP吸油量が50ml/100g以下で、かつ、平均粒子径が100nm以上300nm以下であるカーボンブラック(C)を、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下含有してなることを特徴とする上記(1)の導電性ローラ。
【0016】
(3)導電性弾性層が非発泡体ゴムであることを特徴とする上記(1)または(2)の導電性ローラ。
【0017】
(4)導電性弾性層のゴム成分がエピハロヒドリン系ゴムおよび/またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムであることを特徴とする上記(1)〜(3)の導電性ローラ。
【0018】
(5)導電性弾性層が、マイクロゴム硬さ50以上80以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)の導電性ローラ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば感光体汚染や、通電耐久性の悪化といった問題が発生せず、ゴム材料の混練条件の差による導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが小さく、安定して製造できる導電性ローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明の導電性ローラは、少なくとも表面が導電性である軸体の外周に少なくとも一層の導電性弾性層が形成されたものであり、表面にさらに機能表面層が設けられていることもある。
【0022】
導電性軸体(芯金)としては、例えば、鉄、銅およびステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等が用いられ、その形状としては、棒状、筒状、板状等いずれでもよい。本発明における導電性軸体としては、ステンレススチール、めっき処理した鉄、黄銅および導電性プラスチック、アルミニウム、銅、鉄、またはこれらを含む合金等の良導体が好適に用いられる。0.1〜1.5mm程度の厚さを有する金属管であっても、また円柱であってもよい。
【0023】
導電性弾性層のゴム成分としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エピハロヒドリン系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムなどが挙げられ、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムおよびエピハロヒドリン系ゴムが好ましく、低コストで得られるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムが特に好ましい。
【0024】
導電性弾性層に含有されるフィラー系の導電性充填材として、DBP吸油量および平均粒子径の異なる少なくとも2種類のカーボンブラックが用いられ、好ましくはDBP吸油量および平均粒子径の異なる3種類のカーボンブラックが用いられる。
【0025】
これにより、高ストラクチャーかつ小粒径の高導電性カーボンブラック(A)によりある程度導電性弾性層の体積固有抵抗を低下させ、小粒径かつ中程度のストラクチャーのカーボンブラック(B)により体積固有抵抗の微妙な制御を行うことが可能になる。
【0026】
さらに、大粒径かつ低ストラクチャーのカーボンブラック(C)を同時に用いることにより、体積固有抵抗値を低下させることが容易となり、導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキを低減させることができる。
【0027】
カーボンブラック(A)のみの使用では、わずかな配合量の差や分散状態の違いによって体積固有抵抗が大きく変動してしまうため、所望の体積固有抵抗値を有する導電性弾性層を安定して製造することが困難である。
【0028】
また、カーボンブラック(B)のみの使用では、導電性弾性層を所望の体積固有抵抗値まで低下させるために多量のカーボンブラックを添加する必要があり、導電性ローラの硬さが高くなりすぎるという問題がある。
【0029】
ここで使用するカーボンブラック(A)は、DBP吸油量が450ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ、平均粒子径が60nm以下好ましくは50nm以下であるカーボンブラックである。DBP吸油量が450ml/100gより小さい、もしくは平均粒子径が60nmより大きいカーボンブラックを用いると、導電性弾性層への導電性の付与が十分ではなく、所望の体積固有抵抗値が得られない。また、DBP吸油量が600ml以下であれば、平均粒子径は小さいほうが好ましいが、DBP吸油量が600ml/100gを超えると均一に分散することが困難になる。カーボンブラック(A)として、市販品では、例えば、ケッチェンブラックEC600JD(商品名)がある。
【0030】
カーボンブラック(A)の配合量は、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下であり、2質量部以上7質量部以下が好ましい。配合量が2質量部未満では体積固有抵抗を所望の値まで低下させることが困難であり、10質量部超ではカーボンブラック(A)のわずかな配合量の差や分散状態の差異によって体積固有抵抗が大きく変動してしまい、導電性ローラを安定して製造することが困難となる恐れがある。
【0031】
ここで使用するカーボンブラック(B)は、DBP吸油量が80ml/100g以上150ml/100g以下であり、かつ、平均粒子径が30nm以上60nm以下であるカーボンブラックである。DBP吸油量が80ml/100gより小さい、もしくは平均粒子径が60nmより大きいカーボンブラックを用いると、該導電性弾性層への導電性の付与能力が低くなり過ぎ、体積固有抵抗値の制御ができない。DBP吸油量が150ml/100gより大きい、もしくは平均粒子径が30nmより小さいカーボンブラックを用いると、該導電性弾性層への導電性の付与能力が高くなり過ぎ、カーボンブラック(B)のわずかな配合量の差や分散状態の差異によって体積固有抵抗が大きく変動してしまい、該導電性ローラを安定して製造することが困難となる恐れがある。カーボンブラック(B)として、具体的には、MAF(medium ab−rasion furnace)級やFEF(fast extruding furnace)級に分類されるカーボンブラックを挙げることができる。
【0032】
カーボンブラック(B)の配合量は、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下であり、好ましくは10質量部以上30質量部以下である。配合量が5質量部未満では該導電性弾性層への導電性の付与能力が低くなり過ぎ、体積固有抵抗を制御することが困難であり、40質量部超では該導電性弾性層の硬さが高くなり過ぎてしまう恐れがある。
【0033】
カーボンブラック(A)及び(B)と共に使用するカーボンブラック(C)は、DBP吸油量が50ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が100nm以上300nm以下の範囲であるカーボンブラックである。DBP吸油量が50ml/100gより大きい、もしくは平均粒子径が100nmより小さいカーボンブラックを用いると、導電性弾性層への導電性の付与能力が高くなり過ぎ、導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが大きくなる恐れがある。また、平均粒子径が300nmを超えるときには、工業的に入手が困難であり、好ましくない。カーボンブラック(C)として、具体的には、FT(Fine Thermal)級やMT(Medium Thermal)級に分類されるカーボンブラックを挙げることができる。
【0034】
カーボンブラック(C)の配合量は、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下であることが好ましい。配合量が10質量部未満では体積固有抵抗値の低下を容易にする効果が発現せず、60質量部超では導電性弾性層の硬さが高くなり過ぎてしまう恐れがある。
【0035】
本発明の導電性弾性層には、可塑剤が配されていることがあるが、その場合は導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して20質量部以下であることが必須である。20質量部を超える可塑剤を配合した場合、上記したカーボンブラック(A)及び(B)を上記する量配合しても、導電性ローラ表面に可塑剤が染み出るので好ましくない。
【0036】
使用できる可塑剤として、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、セパジン酸エステル系可塑剤、アクリル系高分子可塑剤などが挙げられる。これらは、一種でも2種以上を混合して用いてもよい。染み出しなどが発生し難いことから反応性可塑剤が好ましい。
【0037】
導電性弾性層には、上記ゴム材料及びカーボンブラックの他、加硫剤および必要に応じて加硫促進剤、可塑剤が配され、さらに、炭化カルシウムなどの充填剤、界面活性剤、難燃剤、老化防止剤、シランカップリング剤等が適宜配される。
【0038】
本発明の導電性ローラを電子写真複写機および電子写真印刷機などの電子写真装置における帯電部材や転写部材として使用する場合、導電性ローラは、回転しつつ被帯電体表面や記録媒体に当接するため、適切な硬さである弾性ローラとする必要があり、その硬さとしては、マイクロゴム硬さで50以上80以下であることが好ましい。なお、マイクロゴム硬さは、高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計MD−1(商品名)により容易に測定される。
【0039】
また、上記のローラ硬さにおいて、ローラの圧縮永久歪を小さくできることから、該導電性弾性層は非発泡体ゴムであることが好ましい。
【0040】
本発明の導電性ローラに導電性弾性層の表面には表面層を設けても良い。表面層の形成方法としてはバインダー高分子を溶剤に溶解または分散し、これに導電フィラーを分散させた液を、ディッピング、ビーム塗工、ロールコーター、スプレー等の塗工法によって、弾性体層表面にコーティングして、乾燥・硬化する方法が採られる。
【0041】
表面層は、感光体上にピンホール等の欠陥が生じた場合に、ここに帯電電流が集中して、帯電部材、感光体が破損することを防止するためのものであり、1×106Ωから1×1010Ωの範囲の電気抵抗が要求され、一般的には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等のバインダー高分子に、カーボンブラック、グラファイト等の導電性カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属、酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子;LiClO4、KSCN、NaSCN、LiCF3SO3等のイオン性電解質等を適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値としたものが用いられる。
【0042】
本発明の導電性ローラは、導電性弾性層を構成する各成分を所定量配合し、加圧ニーダーにて混練りしてゴム組成物を製造した後、ゴム組成物と導電性軸体(芯金)を、クロスヘッドを備えた押出し成型機を用いて共押出し成形し、次いで加硫する。加硫方法は蒸気加硫、オーブン加熱加硫、熱風加熱およびプレス加硫などが使用可能であり、その他の加硫方法であってもよい。加硫条件は使用する原料ゴムや各成分に応じて適宜選択し、通常、加硫温度は120℃から180℃で、20分から120分の間で加硫するが、特に制限されるものではない。加硫後、ゴム層の表面は研削されるのが一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0043】
なお、本発明における帯電ローラには、必要に応じて、弾性層や表面層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【0044】
本発明の導電性ローラは、電子写真装置の帯電ローラ、現像ローラあるいは転写ローラとして使用可能である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0046】
実施例、比較例で使用したカーボンブラックを表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
また、実施例、比較例で使用した材料は以下の通りである。
NBR1:アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム「Nipol 1042」(商品名、日本ゼオン株式会社製)。
NBR2:重合段階で可塑剤が加えられた油展アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム「クライナック#34.38」(商品名、バイエル株式会社製、可塑剤量1/3)。
ZnO:酸化亜鉛2種(ハイテック株式会社製)。
StZn:ステアリン酸亜鉛「ジンクステアレート」(商品名、日本油脂株式会社製)。
Ca:炭酸カルシウム「シルバーW」(商品名、白石カルシウム株式会社製)。
可塑剤:可塑剤「ポリサイザーP202」(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)。
DM:加硫促進剤「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)。
TS:加硫促進剤「ノクセラーTS」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)。
加硫剤:硫黄「サルファックス200S」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)。
【0049】
実施例1〜7、比較例1〜9
表2から表4に示す加硫系以外の各成分を所定量配合し、加圧ニーダーDS3−10型(商品名、株式会社 モリヤマ製)にて、10分、20分または30分、回転数30rpmで混練した。次いで、ロールで加硫剤、加硫促進剤および架橋剤を練り込んだ後、クロスヘッドを備えた押出し成型機を用いて導電性軸体(径6mm、長さ260mm、化学ニッケルメッキをした鉄製)と共押出し成形した。次に、連続加硫炉にて170℃、30分加硫した後、両端を突き切り、表面研磨することで、導電性ゴム層の長さが230mmで、外径14mmの導電性ローラを作製した。
【0050】
得られた導電性ローラのマイクロゴム硬さ及び抵抗値を下記にて測定した。結果を表2から表4に示した。また、導電性ローラの混練り時間(横軸)と抵抗(縦軸)の関係を図1に示した。
【0051】
<マイクロゴム硬さ>
ローラのマイクロゴム硬さは、混練り20分の導電性ローラを用い、長手方向3ケ所、周方向4ヶ所の合計12ヶ所を、高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計MD−1(商品名)で測定し、それらの平均値を該導電性ローラのマイクロゴム硬さとした。
【0052】
<抵抗値>
N/N環境(23℃/50%RH)において、表面層を設ける前の導電性ローラを軸体の両端部に荷重500gを加えて、径30mmのアルミニウム製ドラムに当接し、アルミニウムドラムを回転させて、導電性ローラを回転速度30rpmで回転させる。この状態で軸体端部より200Vの直流電圧を印加し、1分間のローラの抵抗値を測定し、その最大値と最小値の平均値を求め、該導電性ローラの抵抗値とした。
【0053】
さらに、上記で作製した導電性ローラに下記により表面層を設け、感光体汚染の評価を行った。この結果も表2から表4に示した。
【0054】
<表面層の形成>
導電性酸化スズ粉体「SN−100P」(商品名、石原産業株式会社製)50質量部に、トリフルオロプロピルトリメトキシシランの1質量%イソプロピルアルコール溶液500質量部と平均粒径0.8mmのガラスビーズ300質量部を加え、ペイントシェーカで70時間分散した。その後、分散液を500メッシュの網で濾過してガラスビーズを除いた。得られた溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めて溶媒を飛ばして乾燥し、表面がシランカップリング処理された表面処理導電性酸化スズ粉体を得た。
【0055】
ラクトン変性アクリルポリオール「プラクセル DC2009」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)200質量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)500質量部に溶解し、固形分20質量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対して前記表面処理導電性酸化スズ粉体50質量部、シリコーンオイル「SH−28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)0.01質量部およびヘキサメチレンジシラザンで表面処理した微粒子シリカ(一次粒径0.02μm)1.2質量部を配合し、これに直径0.8mmのガラスビーズ200質量部を加えて、ペイントシェーカで10時間分散した。
【0056】
この分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体「ベスタナート B1370」(商品名、デグサ・ヒュルス社製)33.5質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体「デュラネートTPA−B80E」(商品名、旭化成工業株式会社製)21.5質量部を混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に500メッシュの網で溶液を濾過して表面層用塗料を得た。
【0057】
この表面層用塗料をディッピンク法により上記導電性ローラの表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥して、導電性ローラに表面層を形成した。
【0058】
<感光体汚染の評価>
上記で作製した表面層を設けた導電性ローラを、電子写真方式の画像形成装置「LBP−2510」(商品名、キヤノン株式会社製)のカートリッジの帯電ローラと取り替え、40℃、95%湿度の環境で1月間保存した。その後、カートリッジに黒色トナーを詰め、画像形成装置「LBP−2510」に組み込んで白黒の標準パターンを出力し、得られた出力画を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:画像不良が全く見られなかった。
×:可塑剤成分による感光体汚染と見られる画像不良が見られた。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
図1にゴム材料の混練時間と得られた導電性ローラの抵抗値をグラフにして示した。なお、比較例1および9に関しては、抵抗値が高すぎて測定不能であった(2.0×108Ω以上)。また、比較例5に関しては、導電性弾性層の硬さが規格外であったため、比較例7および8に関しては、感光体汚染による画像不良が顕著であったため、いずれもローラ抵抗は測定していない。
【0063】
図1に見られるように、本発明の導電性ローラはゴム材料の混練時間が変化しても抵抗値の変化が緩やかであり、混練条件の差による導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが小さく、安定して製造できる。また、感光体汚染や、通電耐久性の悪化といった問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】ゴム材料の混練時間と導電性ローラの抵抗値の変動を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体の外周上に少なくとも一層の導電性弾性層を有する導電性ローラにおいて、
該導電性弾性層が導電性フィラーを含有するゴム組成物であり、
該導電性フィラーが、ゴム成分100質量部に対して、下記のカーボンブラック(A)2質量部以上10質量部以下およびカーボンブラック(B)5質量部以上40質量部以下を含有し、
かつ、該導電性弾性層に含有される可塑剤成分が、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、20質量部以下である
ことを特徴とする導電性ローラ。
(A)DBP吸油量が450ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が60nm以下であるカーボンブラック。
(B)DBP吸油量が80ml/100g以上150ml/100g以下であり、かつ平均粒子径が30nm以上60nm以下であるカーボンブラック。
【請求項2】
導電性弾性層が、さらに、DBP吸油量が50ml/100g以下で、かつ、平均粒子径が100nm以上300nm以下であるカーボンブラック(C)を、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下含有してなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
導電性弾性層が非発泡体ゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
導電性弾性層のゴム成分がエピハロヒドリン系ゴムおよび/またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
導電性弾性層が、マイクロゴム硬さ50以上80以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−286498(P2007−286498A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115753(P2006−115753)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】