説明

導電性合成樹脂成形体及びこれを用いた導電性ロール

【課題】導電性ロールの導電性シャフトとの接触性に優れた導電性成形体を提供すると共に、この導電性成形体を用いた導電性ロールを提供する。
【解決手段】棒状の合成樹脂基材1の外周表面に外周導電層2を形成し、更に、該外周導電層2から棒状基材1の中心部を通って反対側まで横断する内部導電層3を形成した棒状導電性成形体となす。そして、この導電性成形体の中心部に導電性シャフト7を貫通させると、この導電性成形体の内部導電層3と前記シャフト7の外周表面とが、導電性成形体の全長に亘って接触するので、該接触が確実に行なわせることができた導電性ロールR1となる。導電層に含有させる導電性フィラーとして極細導電繊維を用いると、これが表面に露出したり、表面から突出したり、表面から100nm未満の内部に含有して、導電性能を良好に発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性合成樹脂成形体及びこれを用いた導電性ロールに関し、更に詳しくは、電子機器搬送装置、静電気記録装置、半導体製造装置、液晶製造装置、液晶ディスプレイ搬送装置、ガラス基板搬送装置などに用いられる導電性合成樹脂成形体及び導電性ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリー、スキャナー等の電子写真機器や静電気記録機器、自動改札機、券売機、ATM、医療機器などの装置には導電性ロールが使用されていて、紙やフィルムなどを搬送する際に静電気による障害が発生しないようになされている。一方、半導体部品や液晶部品などの搬送装置にも導電性ロールや制電性パレットが使用されていて、静電気による部品などの損傷をなくすようになされている。
このような従来の導電性ロールは、金属製シャフトにカーボンブラックなどの導電性フィラーを含有させた導電体を取り付けたものが知られていて、例えば、芯金にカーボンナノチューブを配合したフォームラバーからなる弾性層を形成した導電性部材(特許文献1)が、また、導電性シャフトを弾性ロール本体で被覆し、このロール本体の外周面に外周導電性弾性層を設けると共に両端面に端面導電性弾性層を設けて、外周導電性弾性層と導電性シャフトとが導通するようになされている導電性ロール(特許文献2)などが知られている。一方、制電性パレットとしては、基材の表面全体に表面抵抗率が10〜1012Ω/cmである耐静電性樹脂からなる層を設けた成形体(特許文献3)が知られている。
【特許文献1】特開2004−101958号公報
【特許文献2】特開2004−78071号公報
【特許文献3】特開2005−81827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の導電性部材は、弾性層の全体にカーボンナノチューブが分散して含有されているのでカーボンナノチューブの含有量が多くなって価格が高くなるし、フォームラバーなどのゴム中へ分散させているのでカーボンナノチューブの均一分散性が悪くなって均一な導電性能が得られ難いという問題がある。また、その製法も、カーボンナノチューブ含有ゴムラテックスと気体との混合−発泡−真空吸引−高発泡化−冷却−凝固−加熱硫化という各工程を必要として、製造が困難で生産効率に劣るものであった。
また、特許文献2の導電性ロールは、ロール本体の表面及び端面に導電性樹脂組成物を塗着させて導電層を形成しているので、その塗着形成が困難であるし、端面導電性弾性層と導電性シャフトとの接触が該導電層の塗着厚さでしか行なわれないので接触を確実に行なわせるのが困難であった。
さらに、特許文献3の成形体は、射出成形にて基材の全表面のみに制電層を成形しているので、該成形体を切断したり、切削したりすると表裏制電層との接触が保たれずに、性能が発揮できなくなる恐れがあった。さらに、その大きさも一定であり、用途に応じた成形体を得るには成形金型から変更をする必要があった。また、軸芯とのアースが取れないため表面に生じた静電気を瞬時に逃がしにくいという問題もあった。
【0004】
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、その目的とするところは、導電性合成樹成形体の中心部に導電性シャフトを貫通させることにより、該シャフト表面と導電経路を形成できる導電性合成樹脂成形体、及びこれを用いた導電性ロールを提供することにある。さらに、成形体を切断しても表裏間に導通経路が保たれる導電性合成樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る第1の導電性合成樹脂成形体は、合成樹脂棒状基材の外周表面に外周導電層が形成されていると共に、該外周導電層から前記棒状基材の少なくとも中心部に至る内部導電層が形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
この棒状の導電性合成樹脂成形体において、内部導電層が棒状基材の中心部を通って横断し反対側の外周導電層にも接触していることが好ましい。また、外周導電層の表面が切削された切削表面となされていることも好ましい。
【0007】
また、本発明の他の導電性合成樹脂成形体は、合成樹脂板状基材の表裏両面に表裏導電層が形成されていると共に、該表裏導電層間に内部導電層が形成され表裏導電層と接触していることを特徴とするものである。
【0008】
これらの各導電性合成樹脂成形体において、各導電層に極細導電繊維が含有されていて、該極細導電繊維が外周導電層又は表裏導電層の表面に露出するか、又は表面から突出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有するかの、いずれかの状態で分散されていることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の導電性ロールは、これらの導電性合成樹脂成形体の中心部に導電性シャフトが貫通された導電性ロールであって、導電性シャフトと内部導電層とが接触していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の導電性合成樹脂成形体は、外周導電層から少なくとも中心部に至る内部導電層が形成されているので、その中心部に金属などからなる導電性シャフトを貫通させると、該導電性シャフトの長軸方向の表面と内部導電層とが全長に亘り接触されて、導電性シャフトと外周導電層との間に導電経路を確実に形成することができる。
【0011】
さらに、内部導電層が棒状基材の中心部を通って横断し反対側の外周導電層にも接触していると、内部導電層との接触が導電性シャフトの表面の2箇所にて行なわれるので、さらに導電経路が良好に形成される。また、外周導電層が切削された切削表面を有していると、切削しても外周面には導電層が形成されているので、例えば真円形状の導電性ロールとすることができて、静電気による障害などをなくすことができる。
【0012】
また、本発明の第2の導電性合成樹脂成形体は、表裏導電層に接触する内部導電層を形成しているので、例えば、該導電性合成樹脂成形体を制電性乃至指導電性パレットとして使用し、半導体部品などを載置して搬送中に静電気が発生しても、表導電層から内部導電層を経由して裏導電層に至って該静電気を逃がすことができるで、静電気による半導体部品などの損傷を防ぐことができる。また、導電性合成樹脂成形体の端部を切断して寸法を調整したとしても、内部導電層を全て切断除去しない限り表裏導電層間は該内部導電層により導通経路が保たれているので、任意の寸法に切断することができる。
【0013】
これらの導電性合成樹脂成形体の外周導電層又は表裏導電層に含有される極細導電繊維が、表面に露出するか又は表面から突出すると該極細導電繊維により直接導電経路が良好に形成されるし、極細導電繊維が表面から100nm未満の内部に含有されているとトンネル効果により静電気などが該極細導電繊維にまで達して導電経路が形成されて、表面抵抗率を10Ω/□以上1012Ω/□未満にすることが容易になされる。
【0014】
また、これらの導電性合成樹脂成形体の中心部に金属などからなる導電性シャフトを貫通させた導電性ロールであると、該導電性シャフトの長軸方向の表面と内部導電層とが全長に亘り接触するために、該接触が確実になされて、表面で発生した静電気が外周導電層又は表裏導電層と内部導電層とを経由して導電性シャフトまで導いて逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
図1は本発明の棒状の導電性合成樹脂成形体を示し、(1)は斜視図、(2)はそのX−X線断面図である。
【0017】
該棒状導電性合成樹脂成形体A(以下、棒状導電体Aとも記す)は、合成樹脂棒状基材1(以下、棒状基材1とも記す)の外周表面に、導電性能を発揮する外周導電層2が被覆形成され、更に、該外周導電層2の内面の一部から棒状基材1の中心を通って反対側まで横断し、外周導電層2に接触する内部導電層3(以下、横断内部導電層3とも記す)が形成されている。この棒状導電体Aの直径は特に限定されるものではないが、概ね1〜300mmとなされている。
【0018】
上記外周導電層2は棒状基材1の外周表面を0.05〜5mmの厚さで被覆され、横断内部導電層3は0.1〜3mm幅で外周導電層2、2間に設けられていて、外周導電層2と横断内部導電層3とはお互いに連続して一体化している。そして、外周導電層2と横断内部導電層3とは、その表面抵抗率を10Ω/□以上1012Ω/□未満の範囲となされて制電乃至導電性能を有している。該表面抵抗率は、外周導電層2と横断内部導電層3とでは同一でもよいし異なっていてもよいが、導電性棒体Aの性能又は/及び製造の容易性からすれば略同じ抵抗率であることが好ましい。表面抵抗率が10Ω/□以上1012Ω/□未満であると制電機能を発揮し、表面に帯電した静電気は外周導電層2、さらに横断内部導電層3を経由して、後述する導電性シャフトを通して逃がされる。また、表面抵抗率が10Ω/□以上10Ω/□未満であると導電体としての作用をなし、電気を流すことができるようになる。
なお、上記横断内部導電層3は、図1では、1層のみが外周導電層間に形成されているが、複数層形成されていてもよい。
【0019】
この棒状導電体Aにおいて、その棒状基材1は熱可塑性合成樹脂、必要なら押出成形に必要な公知の添加剤を加えた熱可塑性合成樹脂組成物から形成され、また、外周導電層2及び横断内部導電層3は熱可塑性合成樹脂に、必要なら押出成形に必要な公知の添加剤を加えた熱可塑性合成樹脂組成物に、更に導電性フィラーを添加して均一に分散させた導電性熱可塑性合成樹脂組成物から形成されていて、これらが一体化されてなるものである。上記棒状基材1に使用される樹脂と各導電層2、3に使用される樹脂とは、同一の樹脂であってもよいし異なる樹脂であってもよいが、一体化される必要であるので、これらは同一乃至相溶性のある樹脂を用いることが好ましい。このような棒状導電体Aは、例えば、各樹脂組成物を共押出成形法にて押出すことにより、容易に成形することができる。
【0020】
上記熱可塑性合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、結晶性または非晶質ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル等のエステル系樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ボリスチレン、ポリアミド、結晶ポリマー、トリアセチルセルロース、これらの樹脂の共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂、或はこれらの樹脂が混合された混合樹脂などが用いられる。また、これらの樹脂に加えられる添加剤としては、抗酸化剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、抗菌剤、難燃剤、顔料、染料などの各樹脂に一般に添加されるものが使用される。
【0021】
また、導電層2、3内に均一に分散して含有されている導電性フィラーは、特に限定されるものではないが、導電層2、3の表面抵抗率を10Ω/□以上1012Ω/□未満となるように、その種類、含有量などを選択して使用される。具体的な導電性フィラーとしては、例えば、導電性カーボンブラックやグラファイトなどの炭素系フィラー、炭素や金属や金属酸化物などの極細導電繊維、銀やニッケルなどの金属粉、酸化錫や酸化チタンや酸化亜鉛やアンチモンドープ酸化錫などの金属酸化物、硫酸バリウムなどの粒子を金属酸化物で被覆した導電性粒子フィラー、導電性金属窒化物、導電性金属ホウ化物などから選ばれる1種又は複数種を組み合わせたものが用いられる。
【0022】
これらの中で、導電性カーボンブラックは安価で入手し易いので好ましく、10〜70質量%含有される。また、極細導電繊維は該繊維の脱落が抑制されるので長期に亘り安定した導電性を付与できて好ましく、0.01〜20.0質量%含有される。更に、導電性金属酸化物は導電性能が良好に発揮できるので好ましく、10〜80質量%含有される。これらの各導電性フィラーは均一に導電層2、3内に分散されて含有されることが好ましい。
【0023】
上記極細導電繊維の具体的な繊維としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、金属ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、金属酸化物ナノワイヤーなどの金属酸化物などの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで、長さが0.1〜20μmの各繊維が用いられる。これらの極細導電繊維は凝集することなく均一に分散されて、お互いに接触して各導電層2、3に含有されていると、少ない含有量で導電性能を良好に発揮させることができる。また、これらの繊維は細くて長いので、繊維の一部が表面に露出乃至突出しても他部は導電層内部に埋設されていて、その脱落が抑制される。
【0024】
これらの極細導電繊維のうちで、極細長炭素繊維が好ましく、特にカーボンナノチューブが最も好ましく用いられる。該カーボンナノチューブは、繊維直径が0.3〜80nmと細く、凝集することなく分散させて互いに接触させることにより導電性を良好に発揮させることができる。このカーボンナノチューブには、中心軸線の周りに直径が異なり円筒状に閉じた2層以上の複数のカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブと、中心軸線の周りに単層の円筒状に閉じたカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがあるが、いずれのカーボンナノチューブも好ましく用いられる。そして、多層カーボンナノチューブは1本ずつ分離して分散させることができるが、単層カーボンナノチューブは現時点では1本ずつ分離して分散させることが困難で複数本が集まって束になったものを1束ずつ分離して分散させることができる。なお、単層カーボンナノチューブが1本ずつ分離して分散したものを除外するものではない。
【0025】
これらの極細導電繊維は、上記の如く、各導電層2,3の中に0.01〜20.0質量%、好ましくは0.01〜10.0質量%、更に好ましくは0.1〜5.0質量%含有されて、均一に分散されている。極細導電繊維の含有量が多くなり過ぎると、成形性や機械的強度が悪くなり、またコストも高くなる。そのため、出来るだけ分散を良くして、少ない含有量で表面抵抗率を良好に発揮させることが好ましい。このため、極細導電繊維がカーボンナノチューブであれば、これを0.01〜10.0質量%含有させ、1本ずつ又は1束ずつに分離して分散させることが望ましいのである。特に、上記単層カーボンナノチューブであれば0.01〜8.0質量%、多層カーボンナノチューブであれば0.01〜10.0質量%含有させることが望ましい。
【0026】
また、上記極細導電繊維は、外周導電層2の表面及び/又は表面近傍では、図2(1)に示すように、その表面にランダムに露出しているか、又は/及び、図2(2)に示すように、その表面にランダムに突出しているか、又は/及び、図2(3)に示すように、その表面に露出も突出もしていないが表面から100nm未満の深さtの内部に、換言すれば表面から深さt(最大で100nm)までの間には極細導電繊維4が含有されずにいるか、の何れかの状態で均一に分散されて含有されている。即ち、表面及び/又は表面近傍の極細導電繊維4は、配列・配向することなく湾曲しながらランダムに三次元方向に分散して、表面に露出したり、表面から突出したり、100nm未満の内部に含有されている。なお、これらの各状態が混在した状態で外周導電層2に含有されていてもよいことは言うまでもない。
【0027】
極細導電繊維4が外周導電層2の表面に露出したり、表面から突出したりすると、表面に帯電した静電気は、露出又は突出している極細導電繊維4に直接接触して、外周導電層2と内部導電層3を経由して導電性シャフトを通して逃がされる。また、極細導電繊維4が表面から100nm未満の内部に含有されていると、トンネル効果により静電気が該極細導電繊維4にまで達して、同様にして静電気が逃がされる。
【0028】
このような導電性棒体Aは、例えば次のようにして製造することができる。
まず予め、熱可塑性合成樹脂に、必要なら該樹脂の押出成形に必要な任意の上記添加剤を均一に混合した熱可塑性合成樹脂組成物を得る。一方、熱可塑性合成樹脂と導電性フィラーと、必要なら上記各添加剤とを、均一に混合して導電性フィラー含有熱可塑性合成樹脂組成物を得る。
そして、これらの熱可塑性合成樹脂組成物と導電性フィラー含有熱可塑性樹脂組成物とを用いて、共押出成形を行う。即ち、各樹脂組成物を主押出機と副押出機に供し、共押出成形金型から図1に示す断面形状を有する棒体に共押出し、サイジング金型にて整形しつつ冷却することにより、導電性フィラーが均一に分散した外周導電層2と横断内部導電層3とを具備した図1の導電性棒体Aを得ることができる。
【0029】
導電性フィラーが繊維状、例えば極細導電繊維である場合は、該繊維が均一に分散された層を有する押出棒体を共押出成形することはできても、押出時に、押出成形金型の押出流路の内面からの剪断力を受けて、極細導電繊維は押出方向に強制的に配列・配向させられて歪を有した状態で含有される。そのため、その含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと極細導電繊維同士の接触が余り得られずに、1012Ω/□以上の表面抵抗率を示すこととなり、導電性棒体を得ることができない。一方、極細導電繊維の含有量が多いか又は/及び分散がよいと、極細導電繊維が例え押出方向に強制的に配列・配向させられても繊維同士の接触がある程度得られて、1012Ω/□未満の表面抵抗率を示し、導電性棒体を得ることができる。しかし、極細導電繊維の含有量を余り多くすると、コストが高くなるし、分散不良の原因となる。
【0030】
そこで、極細導電繊維を用いた場合は、押出成形された棒体中の極細導電繊維の分散状態を変化させて、該棒体の表面抵抗率を低下させることが、導電性棒体Aを得るうえで好ましい。
この方法の1つは、この押出された極細導電繊維を一部に含む棒体(以下、押出棒体とも記す)がサイジング金型を通過中に、押出棒体の少なくとも表面を加熱・軟化させて低粘度となして、歪を有して配向・配列されている極細導電繊維が歪をなくそうと動くことができる状態となし、これをランダムに3次元方向に動かして無配向状態となし、近接して含有されていた極細導電繊維同士がお互いに接触する機会を著しく増加させることである。この際、押出棒体の外周表面では、極細導電繊維の該動きを抑制する軟化樹脂組成物量の少ない表面方向に動いて、図2(1)(3)に示すいずれかの状態になり、その後、冷却・固化されて、上記状態が固定されて表面抵抗率を低下させた外周導電層2となる。また、押出棒体の内部では、極細導電繊維が3次元方向にランダムに動いて均一に分散しお互いが接触した状態で固定されて表面抵抗率を低下させた横断内部導電層3となる。なお、押出棒体の内部は冷却され難くて、押出時の加熱状態から徐冷されて極細導電繊維が動いて上記状態に変化することができるので、必ずしも内部まで加熱する必要は必要ない。
【0031】
他の方法は、上記押出棒体を冷却して成形棒体となした後に、該押出成形棒体を加熱室などにて再度加熱して、押出成形棒体の少なくとも表面を軟化させて低粘度となすことにより、前記に記載のように、極細導電繊維を3次元的方向にランダムに動かして無配向状態となして、図2(1)(2)(3)に示すいずれかの状態となし、表面抵抗率を低下させた導電層2、3とする方法である。この再加熱の方法においては、表面方向に動いて表面に達した極細導電繊維は、この動きを抑制するサイジング金型などがないために更に動いて表面から突出する状態にまで変化して図2(2)の状態になることもある。
なお、押出成形棒体の成形時に、その内部は冷却され難くて押出時の加熱状態から徐冷され、既に極細導電繊維がランダムに動いて導電層を形成している場合は、内部まで加熱する必要ない。
【0032】
この極細導電繊維を一部に含有させた導電性棒体の前者の製造方法の一例を図3に示す。図3(1)は全体の工程を示す説明図、(2)はそのM−M線断面図、(3)はそのN−N線断面図である。
【0033】
図3(1)に示すように、一方の主押出機51に上記熱可塑性樹脂組成物を供すると共に、他方の副押出機52に上記極細導電繊維(導電性フィラー)含有熱可塑性樹脂組成物を供し、これを共押出成形金型53から断面丸形状に共押出して、図3(2)に示す、熱可塑性樹脂組成物から棒状基材1の外周表面に極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる外周層23が被覆されると共に、外周層23の一部内面より棒状基材1の中心部を通って横断し、反対側にまで到って外周層23と一体となった内部層33が形成された押出棒体5を押出す。
【0034】
続いて、この押出棒体5を引取りロールHで引取って、共押出成形金型53に接するように配置されたサイジング金型6に導く。
該サイジング金型6は、図3(2)及び図3(3)に示すように、そのサイジング通路61の周囲の前側部64に加熱媒体供給源(不図示)に接続された加熱流路62が設けられていて、その加熱流路62に加熱油、熱水、水蒸気、加圧水蒸気などの加熱媒体を循環させて、サイジング通路61の内表面を極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の温度から融点温度よりも30℃高い温度の温度範囲に、好ましくは融点よりも30℃低い温度から融点よりも30℃高い温度の温度範囲(以下、加熱温度範囲とも記す)に加熱するか、又は/及び、前記組成物の剪断速度1sec−1のときの粘度が5.0×10Pa・s以上1.0×10Pa・s未満の範囲となる温度範囲に、好ましくは1.0×10Pa・s以上から5.0×10Pa・s未満の範囲(以下、加熱粘度範囲とも記す)となる温度範囲になされている。そして、サイジング通路61の周囲の後側部65に冷却媒体供給源(不図示)に接続された冷却流路63が設けられていて、その冷却流路63に水、冷却水、冷却ガスなどの冷却媒体を循環させてサイジング通路61の内表面を冷却し、これに接した押出棒体5が冷却・固化されるようになされている。
なお、サイジング金型6は、共押出成形金型53に接して配置されているが、これらを離間して配置してもよい。
【0035】
このような構成のサイジング金型6に押出棒体5が導かれると、その加熱された前側部64により外周層23が加熱されて前記加熱温度範囲又は/及び前記加熱粘度範囲となされ、軟化して低粘度化する。また、内部層33は押出された加熱状態を維持しているので上記加熱温度範囲又は/及び加熱粘度範囲を保持している。
そのため、外周層23及び内部層33に歪を有して含有されていた極細導電繊維が、歪を解消しようとして該低粘度化した組成物中をランダムに三次元方向に動いて均一に分散した状態に変化し、外周層23の表面に露出したり、表面から100nm未満の内部に含有されるようになって表面抵抗率が低下し、また内部層33では極細導電繊維が同様に動いてお互いが接触して表面抵抗率が低下する。
【0036】
上記押出棒体5を、上記加熱温度範囲又は/及び上記加熱粘度範囲に曝しておく時間は、極細導電繊維が動いて上記状態になる必要があるので、1分以上、好ましくは1〜20分間、より好ましくは5〜15分間保っておくことが望ましい。
【0037】
続いて、押出棒体5をサイジング金型6の後側部65に導き、冷却流路63で冷却されたサイジング通路61の内面に接触させて冷却して保形・固化すると、前記極細導電繊維が上記状態を維持して固定された外周導電層2、横断内部導電層3となり、その後、切断機Kで切断されて、導電性棒体Aを製造することができる。
【0038】
この加熱による表面抵抗率の低下は、一般的には1桁乃至10桁の範囲でなされる。そのため、例えば、加熱前に1012Ω/□の表面抵抗率を示した押出棒体5は、加熱により1011Ω/□から10Ω/□の範囲の表面抵抗率を有する導電性棒体Aとなる。
【0039】
この導電性棒体Aは、例えば、電子機器搬送装置、静電気記録装置、半導体製造装置、液晶製造装置、液晶ディスプレイ搬送装置、ガラス基板搬送装置などの導電性ロールとして使用することができる。
【0040】
図4は上記導電性棒体Aを使用した本発明の導電性ロールの一部破断斜視図である。
図4に示す導電性ロールR1は、上記導電性棒体Aを必要な寸法に切断した棒状ロール本体8の軸中心部(径方向の中心部)に金属などからなる導電性シャフト7を貫通させたものであり、該導電性シャフト7の外周表面と横断内部導電層3とが接触して導通できるようになされている。前記導電性シャフト7は、導電性ロールR1の回転軸となるもので、用途に応じた径、長さになされている。そして、この導電性シャフト7は金属にて作製されていることが好ましいが、導電性合成樹脂又は合成樹脂表面に導電層を形成したものなどであっても良い。このような導電性ロールR1は、例えばプリンタや複写機などの紙やフィルム、又は半導体製造装置や液晶製造装置に使用されるガラス基板などの搬送用導電性ロールとして使用される。
【0041】
導電性ロールR1は、前記棒状ロール本体8の中心部を穿孔してシャフト挿入孔(不図示)を開設し、該シャフト挿入孔に導電性シャフト7を差込むことにより、横断内部導電層3と接触させている。この接触は、導電性シャフト7の中心を挟む両側のシャフト表面の2条箇所に、導電性シャフト7の長軸方向に、棒状ロール本体8の全長に亘り横断内部導電層3の幅で接触していて、該接触が確実になされている。そのため、棒状ロール本体8の外周導電層2と横断内部導電層3と導電性シャフト7との間に導電経路が形成されて、棒状ロール本体8の外周導電層2の表面が擦れて静電気が発生しても、前記導電経路を通して導電性シャフト7に達し、軸受等を通して流されるので、帯電して紙などの搬送に支障をきたすことをなくすことができるし、半導体部品などが破損することを防止できる。
【0042】
なお、導電性シャフト7と棒状ロール本体8の挿入孔とを導電性接着剤にて固定してもよい。また、棒状ロール本体8が真円形状でなかったり、導電性シャフト7が軸中心に挿入されなかった場合などには外周導電層の表面を切削して真円形状となしてスムーズな回転ができるようにすることが好ましい。
【0043】
図5は本発明の他の導電性ロールを示し、(1)はその斜視図、(2)はそのY−Y線断面図である。
図5に示す導電性ロールR2は、上記導電性棒体Aを切削して、大きな径の搬送部91と小さな径の固定部92とを連続して形成した切削ロール本体9となし、更にその軸中心部(径方向の中心部)に導電性シャフト7を貫通させたものである。上記切削によっても、搬送部91の外周表面には外周導電層1が残存した状態で真円形状に形成されている。そして、導電性シャフト7の中心を挟む両側のシャフト表面の2条箇所においては、前記の導電性ロールR1と同様に、そのシャフト表面と横断内部導電層3とが接触している。
【0044】
この導電性ロールR2を前記導電性シャフト7の長軸方向に1個乃至複数個併設して、導電性シャフト7の回転と共に回転させて、この導電性ロールR2の搬送部91に載置される物品を回転方向に搬送するものである。切削ロール本体9の大きさは用途に応じて適宜決定されるが、概ね、搬送部91は直径を10〜300mmに、幅を5〜100mm程度となされ、固定部92は直径を5〜150mmに、幅を3〜100mm程度になされる。このような導電性ロールR2は、例えば、半導体部品や液晶部品などの、静電気が発生することにより電気破壊を起こす物品の搬送装置に組み込まれたりして使用される。
【0045】
この切削ロール本体9は、前記導電性棒体Aを輪切りにした後に、外周導電層1が残存する範囲内にて搬送部91を切削して形成すると共に、これに隣接する部分を切削して小径となした固定部92を形成する。前記搬送部91の外周面は先端が鈍角の三角形状になされ、また前記固定部92の外周面は平坦になされている。さらに、これらの中心部にシャフト挿入孔(不図示)を穿孔して、該挿入孔に導電性シャフト7を差込んで横断内部導電層3と接触させ、固定部92の外周面から複数個のボルトなどで押して導電性シャフト7に固定する。導電性シャフト7の表面と切削ロール本体9の横断内部導電層3との接触は、前記導電性ロールR1と同様に、導電性シャフト7の長軸方向にて、切削ロール本体9の全長にて行なわれるので、導通が確実になされる。そのため、切削ロール本体9の搬送部91の外周導電層2と横断内部導電層3と導電性シャフト7との間に導電経路が形成されて、切削ロール本体9の表面が擦れて静電気が発生しても、前記導電経路を通して導電性シャフト7に達し、軸受等を通して流されるので、帯電して半導体部品などに悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0046】
なお、図5に示すように、搬送部91の外周面を三角形状になして、搬送物品との摩擦をできるだけ少なくして静電気の発生をなくすることが好ましい。また、導電性シャフト7と切削ロール本体9の挿入孔とを導電性接着剤にて固定して導電性を確実に確保してもよい。さらに、固定部92を設けずに、大径の搬送部91のみの切削ロール本体であってもよい。
【0047】
図6は本発明の他の棒状の導電性合成樹脂成形体を示す斜視図である。
該棒状導電性合成樹脂成形体B(以下、棒状導電体Bとも記す)は、合成樹脂棒状基材11(以下、棒状基材11とも記す)の外周表面に、制電乃至導電性能を発揮する外周導電層21が被覆形成され、更に、該外周導電層21の内面の一部から前記棒状基材11の中心部まで連続して至る内部導電層31(以下、半横断内部導電層31とも記す)が形成されていている。該棒状導電体Bの直径は限定されるものではないが、概ね1〜300mmとなされている。
なお、上記半横断内部導電層31は、図6においては1層のみが外周導電層21と中心部との間に形成されているが、複数層形成されていてもよい。また、半横断内部導電層31は、棒状基材11の中心にまで至らせる必要は必ずしもなく、後述する導電性シャフトを貫通させた時に接触する内部(中心部)まで設けていればよい。
【0048】
上記外周導電層21は、棒状基材11の外周表面を0.05〜5mmの厚さで被覆して棒状基材11と一体化している。また、上記半横断内部導電層31は、その幅を0.1〜3mmとなされて、その一端が半横断内部導電層31と連続して棒状基材11と一体化している。
その他の、外周導電層21と半横断内部導電層31の表面抵抗率、これらを形成する樹脂、これに含有される導電性フィラーの種類、含有量、分散状態などは、前記棒状導電体Aと同じであるので、説明を省略する。
【0049】
また、このような棒状導電材Bは、前記棒状導電材Aと同様に、例えば共押出成形により製造される。
即ち、前記の熱可塑性合成樹脂組成物と導電性フィラー含有熱可塑性樹脂組成物とを主押出機と副押出機に供し、共押出成形金型により図6に示す断面形状を有する丸形状棒体に共押出し、サイジング金型にて整形させながら冷却することにより、導電性フィラーが均一に分散した外周導電層21と半横断内部導電層31とを具備した図6の導電性棒体Bを押出成形することができる。そして、導電性フィラーが極細導電繊維である場合には、前記棒状導電体Aにおけると同様の図3に示すサイジング金型を用いた製法にて製造することができるし、再加熱による製法によっても製造することができる。
【0050】
この棒状導電体Bであっても、該棒状導電体Bを一定寸法に切断して棒状ロール本体となし、その軸中心部(径方向の中心部)に金属などからなる導電性シャフトを貫通させて、図4に示すと同様の形状の導電性ロールを作製すると、導電性シャフトの表面の1条箇所に、導電性シャフトの長軸方向に、棒状ロール本体の全長に亘り半横断内部導電層31が接触することとなる。また、棒状導電材Bを切削して、大径の搬送部と小径の固定部とを連続した形成した切削ロール本体となすと共に、その軸中心部(径方向の中心部)に導電性シャフトを貫通させて、図5に示すと同様の形状の導電性ロールを作製すると、該導電性シャフトの表面の1条箇所に、導電性シャフトの長軸方向に、切削ロール本体の全長に亘り半横断内部導電層31が接触することとなる。
【0051】
このような導電性ロールであると、棒状ロール本体又は切削ロール本体の外周導電層21と半横断内部導電層31と導電性シャフトとの間に導電経路が形成されて、導電性ロールの表面が擦れて静電気が発生しても、前記導電経路を通して導電性シャフトに達し軸受等を通して流されるので、帯電して紙などの搬送に支障をきたすことがないし、半導体部品などにも悪影響を及ぼすことがない。
【0052】
図7は本発明の板状の導電性合成樹脂成形体を示す斜視図である。
該板状導電性合成樹脂成形体C(以下、板状導電体Cとも記す)は、合成樹脂板状基材12(以下、板状基材12とも記す)の表面に制電乃至導電性能を発揮する表導電層221(表裏導電層22)が被覆形成され、裏面にも制電乃至導電性能を発揮する裏導電層222(表裏導電層22)が被覆形成され、更に、表導電層221から裏導電層222に連続して至る複数の内部導電層32(以下、連結内部導電層32とも記す)が形成されて、表裏導電層22と連結内部導電層32とはお互いに接触して導通経路を形成している。
【0053】
この板状導電体Cは、その厚さが3〜200mmとなされ、連結内部導電層32間は50〜500mmと離間して形成されている。また、上記表裏導電層22は板状基材12の表面及び裏面を0.05〜5mmの厚さで被覆し、連結内部導電層32は前記表導電層221から裏導電層222に幅0.1〜3mmにて直線状に形成され、各導電層22、32は板状基材12と一体化されている。従って、表裏導電層22と内部導電層32との間には導電経路が形成されている。
その他の、表裏導電層22と内部導電層32の表面抵抗率、これらを形成する樹脂、これに含有される導電性フィラーの種類、含有量、分散状態などは、前記棒状導電体Aと同じであるので、説明を省略する。
【0054】
この板状導電材Cは、前記棒状導電材Aと同様に、例えば共押出成形により製造される。
即ち、前記の熱可塑性合成樹脂組成物と導電性フィラー含有熱可塑性樹脂組成物とを主押出機と副押出機に供し、共押出成形金型により図7に示す断面形状を有する平板状の板体に共押出し、サイジング金型にて整形しながら冷却することにより、導電性フィラーが均一に分散した表裏導電層22と連結内部導電層32とを具備した図7の板状導電体Cを押出成形することができる。そして、導電性フィラーが極細導電繊維である場合には、前記棒状導電体Aにおけると同様のサイジング金型(但し、サイジング通路は矩形状をなす)を用いた製法にて製造することができるし、再加熱による製法によっても製造することができる。
【0055】
この板状導電体Cは、制電性乃至導電性搬送用パレット、又は金属製搬送パレットの上に配置する導電性上板材などとして使用される。そして、半導体などを該導電性搬送パレットに載置して搬送中に静電気が発生しても、該静電気が表導電層221、連結内部導電層32、裏導電層222と流れて金属製運搬機や金属製搬送ローラを通して流れて除電され、半導体などに破壊などの悪影響を与えるのを防止できる。
【0056】
次に、本発明の更に具体的な実施例を説明する。
【0057】
(実施例1)、
市販のポリプロピレン樹脂を準備した。また、このポリプロピレン樹脂と、直径が10〜20nmである多層カーボンナノチューブ(CNT社製)とを均一に混合して、多層カーボンナノチューブが3.5質量%含有された多層カーボンナノチューブ含有ポリプロピレン樹脂組成物を作製した。このポリプロピレン樹脂組成物の融点温度は172℃であった。
【0058】
上記ポリプロピレン樹脂と上記組成物を共押出成形金型を具備した丸棒押出成形機に供し、ポリプロピレン樹脂からなる棒状基材の外周表面に多層カーボンナノチューブ含有ポリプロピレン樹脂組成物からなる厚さ1.0mmの外周層が被覆され、該外周層の一部内面から棒状基材の中心部を通って反対側の外周層に至る幅1.0mmの内部層とが形成された、直径が80mmである断面丸形状の押出棒体を押出しし、サイジング金型に導いた。該サイジング金型は、そのサイジング通路の外周面の前側部に加熱流路を、後側部に冷却流路が設けられていて、その前側部を210℃に加熱し、後側部を50℃に冷却した。前記押出棒体を該サイジング金型の前側部にて約9分間接触加熱させた後に、後側部で約5分間接触冷却させた後、切断機で切断することにより、実施例1の導電性棒体を得た。
【0059】
この多層カーボンナノチューブ含有ポリプロピレン樹脂組成物の200℃における粘度を、動的粘弾性測定装置(Pear社製Modular Compact Rheameter MCR300)にて測定したところ、剪断速度1sec−1のとき、5.5×10Pa・sであった。
【0060】
(比較例1)
上記組成物を、前側部も後側部も冷却された実施例1と同じサイジング金型を用いて押出棒体を冷却した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の押出成形棒体を得た。
【0061】
これらの実施例1と比較例1との各棒体について、それぞれ表面抵抗率を測定した。その結果、実施例1の導電性棒体は1.2×10Ω/□の表面抵抗率を示したが、比較例1の押出成形棒体は1.0×1014Ω/□以上の表面抵抗率しか示さなかった。この結果より、実施例1の外周層は、サイジング金型にて加熱されることにより、導電性を発揮する外周導電層に変化していることがわかった。
【0062】
また、各棒体の端面に露出している内部層の中心部の表面抵抗率についても、それぞれ表面抵抗率を測定した。その結果、実施例1の導電性棒体は2.0×10Ω/□の表面抵抗率を示したが、比較例1の押出成形棒体は1.1×1010Ω/□の表面抵抗率を示した。この結果より、実施例1の内部層は、サイジング金型にて表面が加熱される間は押出された温度を保持して、その後に徐冷されることにより、導電性を良好に発揮する内部導電層に変化していることがわかった。一方、比較例1の押出成形棒体は、押出し後、直ちにサイジング金型で冷却されるが、押出成形棒体の中心部は直径が大きいため冷却され難くて徐冷されることになり、内部層も導電性が向上し内部導電層に変化しているが、その変化の割合が少なく実施例1よりも抵抗率が悪くなっている。このように、比較例1は内部導電層を形成されるが、押出成形棒体の外周面の表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以上であるため、目的とする機能を果たさない。
【0063】
この結果より、実施例1の押出棒体は、棒状基材の外周表面に外周導電層が被覆され、且つ該外周導電層から中心部を通って反対側の外周導電層に横断して至る内部導電層を具備した棒状導電性成形体であることがわかる。
【0064】
尚、表面抵抗率は三菱化学(株)製の低抵抗測定器とロレスタGPと高抵抗測定器ハイレスタUPで測定した値である。ロレスタGPは10−2〜10Ω/□の、ハイレスタUPは10〜1014の範囲の表面抵抗率の測定に用いる測定器であり、それぞれの表面抵抗率に応じて使い分けた。
【0065】
(実施例2)
実施例1の導電性棒体の外周面を0.2mm切削して、厚さ0.8mmの外周導電層となした真円状の切削棒状ロール本体を作製し、該切削棒状ロール本体の中心部に直径15mmの孔を穿孔した。そして、この穿孔された孔に直径15mmのステンレスシャフトを押込み、導電性ロールを作製した。
【0066】
この導電性ロールの外周導電層の表面抵抗率を測定したところ、1.8×10Ω/□であった。このことより、導電層を切削しても導電性を維持することがわかった。
さらに、この導電性ロールの外周導電層とステンレスシャフトとの間の抵抗をマルチメーターで測定したところ、2.9×10Ωであった。このことより、ステンレスシャフトと内部導電層とは接触していて、外周導電層と内部導電層とステンレスシャフトとの間は導電経路が形成されていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る導電性合成樹脂成形体を示し、(1)は斜視図、(2)はそのX−X線断面図である。
【図2】導電性合成樹脂成形体内における極細導電繊維の分散状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る導電性合成樹脂成形体の製造方法を示し、(1)は全体の工程を示す説明図、(2)はそのM−M線断面図、(3)はそのN−N線断面図である。
【図4】本発明に係る導電性ローラを示す一部破断斜視図である。
【図5】本発明に係る他の導電性ローラを示し、(1)は斜視図、(2)はそのY−Y線断面図である。
【図6】本発明に係る他の導電性合成樹脂成形体の斜視図である。
【図7】本発明に係る更に他の導電性合成樹脂製成形体の斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
A、B、C 導電性合成樹脂成形体
R1、R2 導電性ロール
1、11 棒状基材
12 板状基材
2、21 外周導電層
22 表裏導電層
3、31、32 内部導電層
4 極細導電繊維
5 押出棒体
6 サイジング金型
7 導電性シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂棒状基材の外周表面に外周導電層が形成されていると共に、該外周導電層から前記棒状基材の少なくとも中心部に至る内部導電層が形成されていることを特徴とする導電性合成樹脂成形体。
【請求項2】
内部導電層が棒状基材の中心部を通って横断し、反対側の外周導電層にも接触していることを特徴とする請求項1に記載の導電性合成樹脂成形体。
【請求項3】
外周導電層の表面が、切削された切削表面となされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性合成樹脂成形体。
【請求項4】
合成樹脂板状基材の表裏両面に表裏導電層が形成されていると共に、該表裏導電層間に内部導電層が形成され表裏導電層と接触していることを特徴とする導電性合成樹脂成形体。
【請求項5】
各導電層に極細導電繊維が含有されていて、該極細導電繊維が外周導電層又は表裏導電層の表面に露出するか、又は表面から突出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有するかの、いずれかの状態で分散されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性合成樹脂成形体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかの導電性合成樹脂成形体の中心部に導電性シャフトが貫通された導電性ロールであって、導電性シャフトと内部導電層とが接触していることを特徴とする導電性ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−51241(P2008−51241A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228916(P2006−228916)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】