説明

導電性微粒子の製造方法

【課題】高い導電性を有し、経時的な導電性の変化が少なく、かつ、圧縮荷重をかけても樹脂微粒子から被覆層が剥離、破壊されない耐圧縮性に優れた信頼性の高い導電性微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子を製造する方法であって、少なくとも、還元剤としてホウ素化合物及び次亜リン酸化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程を有することを特徴とする導電性微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い導電性を有し、経時的な導電性の変化が少なく、かつ、圧縮荷重をかけても樹脂微粒子から被覆層が剥離、破壊されない耐圧縮性に優れた信頼性の高い導電性微粒子、導電性微粒子の製造方法及び異方性導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性微粒子は、一般にバインダー樹脂等に混合され、導電性接着剤、導電性粘着剤等の導電材料の構成材料として用いられるものであり、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト等の異方性導電材料においても主要な構成材料として広く用いられている。これらの異方性導電材料は、例えば、液晶表示ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品と基板とを電気的に接続したりするために、相対向する基板や電極端子の間に挟み込んで使用されている。
【0003】
従来、導電性微粒子としては、金、銀、ニッケル等の金属粒子が用いられてきたが、比重が大きく、形状も一定でないため、バインダー樹脂中に均一に分散しないことがあり、導電材料の導電性にムラを生じさせる原因となっていた。
【0004】
これに対して、下記の特許文献1には、粒子径の均一なガラスビーズ、グラスファイバー、プラスチックボール等の非導電性粒子の表面にニッケル等の金属によるメッキを施した導電性微粒子が開示されている。これらの導電性微粒子のうち、ニッケルをメッキした導電性微粒子は安価に得られるが、経時的にメッキ層が腐食して電気抵抗が増大するという問題があった。
【0005】
また、下記の特許文献2には、ニッケル及び/又はコバルトからなり、1.5〜4重量%のリンを含有する金属被覆層を樹脂微粒子の表面に設けた導電性微粒子が開示されている。この導電性微粒子は導電性に優れているが、金属被覆層の可とう性が充分でなく樹脂微粒子との密着性が不充分であることから、近年の電子機器の急速な進歩に伴う電気的接続の更なる信頼性向上に対応できないという問題があった。
【0006】
更に、下記の特許文献3には、7〜15重量%のリンを含有するニッケルメッキ被覆層を芯材粒子の表面に設けた導電性微粒子が開示されている。この導電性微粒子は被覆層と芯材粒子との密着性に優れているが、リンの含有率が高いため導電性においてやや劣るという問題があった。
【特許文献1】特公平2−25431号公報
【特許文献2】特許第2507381号公報
【特許文献3】特開平7−118866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、高い導電性を有し、経時的な導電性の変化が少なく、かつ、圧縮荷重をかけても樹脂微粒子から被覆層が剥離、破壊されない耐圧縮性に優れた信頼性の高い導電性微粒子、導電性微粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明1は、樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子であって、前記金属被覆層は、ニッケルを主成分としホウ素とリンとを含有する層を有するものである導電性微粒子である。
【0009】
本発明2は、樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子であって、前記金属被覆層は、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層と、ニッケルを主成分としリンを含有する層とを有するものである導電性微粒子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い導電性を有し、経時的な導電性の変化が少なく、かつ、圧縮荷重をかけても樹脂微粒子から被覆層が剥離、破壊されない耐圧縮性に優れた信頼性の高い導電性微粒子、導電性微粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明の導電性微粒子は、樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなるものである。
【0013】
上記樹脂微粒子としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等からなるものが挙げられる。これらの樹脂微粒子は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記樹脂微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、上限は100μmである。0.5μm未満であると、金属被覆層を形成する際に凝集が生じやすく、凝集を生じた樹脂微粒子から製造された導電性微粒子は隣接電極間の短絡を引き起こすことがある。100μmを超えると、樹脂微粒子から製造された導電性微粒子の金属被覆層が剥がれやすくなり信頼性が低下することがある。より好ましい下限は1μm、上限は20μmである。
【0015】
上記樹脂微粒子は、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。10%を超えると、樹脂微粒子から製造された導電性微粒子が相対向する電極間隔を任意に制御することが困難になる。
【0016】
なお、上記変動係数は、粒子径分布から得られる標準偏差を平均粒子径で除することにより求められるものである。
【0017】
上記樹脂微粒子の機械的強度の指標である10%K値の好ましい下限は1000MPa、上限は15000MPaである。1000MPa未満であると、樹脂微粒子は圧縮変形により破壊されやすく、この樹脂微粒子から製造された導電性微粒子を導電材料として用いたときに機能を果たさなくなることがある。15000MPaを超えると、樹脂微粒子から製造された導電性微粒子を導電材料として用いたときに電極端子等を傷つけることがある。より好ましい下限は2000MPa、上限は1万MPaである。
【0018】
なお、上記10%K値とは、下記式(1)より求められるものであり、具体的には、微小圧縮試験器(島津製作所社製、PCT−200)を用い、圧縮速度2.6mN/秒、最大試験荷重98mNの条件下で、直径50μmのダイアモンド製円柱からなる平滑圧子端面により粒子を圧縮して測定される。
【0019】
10%K=2.1×10・F・S−3/2・R−1/2 (1)
式中、Fは粒子を10%圧縮変形したときの荷重値(N)、Sは粒子を10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)、Rは粒子の半径(mm)を表すものである。
【0020】
上記樹脂微粒子は、9.8mNの荷重を負荷して圧縮変形させたときの変形後の回復率が20%以上であることが好ましい。20%未満であると、樹脂微粒子から製造された導電性微粒子を圧縮したときに導電性微粒子が変形して元に戻らないため接続不良をおこすことがある。より好ましくは40%以上である。
【0021】
上記樹脂微粒子を得る方法としては特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマーを公知の方法を用いて1種又は2種以上重合させることにより、任意の粒子物性を有する樹脂微粒子を得ることができる。なお、上記公知の方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、種粒子にラジカル重合開始剤とともにモノマーを吸収させて重合する方法等が挙げられる。
【0022】
上記エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、非架橋性のモノマーと架橋性のモノマーとがあり、変動係数等の前述した樹脂微粒子の物性を好適なものとするために、樹脂微粒子全体に対して架橋性モノマーが5重量%以上であることが好ましい。より好ましくは20重量%以上である。
【0023】
上記非架橋性のモノマーとしては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有モノマー等が挙げられる。
【0024】
上記架橋性のモノマーとしては特に限定されず、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有モノマー等;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル等が挙げられる。
【0025】
本発明の導電性微粒子は、上記樹脂微粒子の表面に金属被覆層が形成されてなるものである。
【0026】
本発明1の導電性微粒子における上記金属被覆層は、ニッケルを主成分としホウ素とリンとを含有する層を有するものである。
【0027】
また、本発明2の導電性微粒子における上記金属被覆層は、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層と、ニッケルを主成分としリンを含有する層とを有するものである。
【0028】
本発明の導電性微粒子における上記金属被覆層において、ニッケル−ホウ素合金は高い導電性に寄与し、ニッケル−リン合金は樹脂微粒子への優れた密着性及び可とう性に寄与している。
【0029】
本発明2の導電性微粒子では、更に、これらの合金を含有する層同士による相乗的な効果が発現されることにより、高い導電性、優れた密着性及び耐圧縮性に寄与する可とう性を得られるものと考えられる。
【0030】
本発明1の導電性微粒子では、更に、ニッケル−ホウ素−リン合金が、ニッケル−ホウ素合金とニッケル−リン合金の有するそれぞれの長所を合わせ持ち、かつ、それらの相乗的な効果を発現することにより、高い導電性、優れた密着性及び耐圧縮性に寄与する可とう性を得られるものと考えられる。
【0031】
上記ニッケルを主成分とする層は、ホウ素やリン以外に、ニッケルと共に共析する他の金属を含有していてもよい。上記ニッケルと共に共析する他の金属としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、モリブデン、パラジウム、錫、タングステン、レニウム等が挙げられる。
【0032】
上記ニッケルを主成分とする層全体におけるホウ素及びリンの含有率の好ましい下限はホウ素が0.05重量%、かつ、リンが0.5重量%であり、上限はホウ素が4重量%、かつ、リンが10重量%である。ホウ素の含有率が0.05重量%未満又はリンの含有率が0.5重量%未満であると、導電性は向上するものの可とう性が損なわれ、金属被覆層の剥離、破壊による劣化が起こりやすくなる。ホウ素の含有率が4重量%又はリンの含有率が10重量%を超えると、可とう性は向上するものの導電性が低下することがある。より好ましい下限は、ホウ素が0.1重量%、かつ、リンが1重量%であり、上限はホウ素が2重量%、かつ、リンが5重量%であり、この範囲においてホウ素とリンとの相乗効果が最も効果的に発現する。
【0033】
本発明1の導電性微粒子において、ニッケルを主成分としホウ素とリンとを含有する層は、例えば、図1の形態をとることができる。
【0034】
本発明2の導電性微粒子において、上記ニッケルを主成分としホウ素を含有する層と、ニッケルを主成分としリンを含有する層とは、どちらの層が外層とされてもよく、例えば、図2や図3の形態をとることができる。ニッケルを主成分としホウ素を含有する層を外層とした場合には、特に優れた導電性が得られ、ニッケルを主成分としリンを含有する層を外層とした場合には、特に優れた可とう性が得られるので、用いられる導電材料において要求される仕様に合わせて設計することができる。
【0035】
上記ニッケルを主成分とする層全体の厚さの好ましい下限は0.005μm、上限は1μmである。0.005μm未満であると、ニッケルを主成分とする層としての充分な効果が得られないことがある。1μmを超えると、得られる導電性微粒子の比重が高くなりすぎたり、機械的強度や回復率等の物性が悪化することがある。より好ましい下限は0.01μm、より好ましい上限は0.3μmである。
【0036】
上記ニッケルを主成分とする層が、上記ニッケルを主成分としホウ素を含有する層と、ニッケルを主成分としリンを含有する層とを有するものである場合、その厚さの比率は10:90〜90:10であることが好ましい。この範囲外であると、それぞれの層の有する長所を発揮しにくく、かつ、その相乗的な効果も出にくい。より好ましくは30:70〜70:30であり、この範囲において、それぞれの層の有する長所の相乗的な効果が最も発現する。
【0037】
上記金属被覆層は、ニッケルを主成分とする層以外の層を有していてもよいが、導電性や耐食性をより向上させるためには、最外層が貴金属からなることが好ましく、最外層が金からなることがより好ましい。具体的には、例えば、図4、図5及び図6の形態等が挙げられる。
【0038】
金からなる被覆層は、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、スパッタリング等の公知の方法により形成することができる。
【0039】
上記貴金属からなる層の厚さの好ましい下限は0.005μm、上限は1μmである。0.005μm未満であると、被覆ムラが生じ、被覆による効果が充分に得られないことがある。1μmを超えると、粒子比重が大きくなりすぎるためバインダー樹脂等に分散する際に沈降や凝集を生じることがある。より好ましい下限は0.01μm、上限は0.5μmである。
【0040】
本発明1、2の導電性微粒子を作製する方法としては特に限定されないが、ニッケルを主成分とする層の形成には、無電解ニッケルメッキを好適に用いることができる。
【0041】
上記無電解ニッケルメッキは、その前処理工程として、一般にエッチング工程、触媒化工程を有する。
【0042】
上記エッチング工程は、樹脂微粒子の表面に微小な凹凸を形成するものであり、メッキにより形成されるニッケルを主成分とする層の密着をよくするために行われる。
【0043】
上記エッチングを行う方法としては特に限定されず、例えば、濃塩酸、濃硫酸、クロム酸、硫酸一クロム酸混液、過マンガン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等を用いる方法等が挙げられる。
【0044】
上記触媒化工程は、エッチング工程でエッチングされた樹脂微粒子の表面に、パラジウム等からなる触媒層を形成するものであり、この触媒層は無電解ニッケルメッキの起点に用いられるものである。
【0045】
上記触媒化を行う方法としては特に限定されず、無電解メッキ用として市販されている触媒化試薬を用いる方法等が挙げられる。具体的には、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとの混合溶液にエッチングされた樹脂微粒子を浸漬した後、硫酸や塩酸等の酸又は水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液で樹脂微粒子表面を活性化してパラジウムを析出させる方法、硫酸パラジウム溶液にエッチングした樹脂微粒子を浸漬した後、ジメチルアミンボラン等の還元剤を含有する溶液で樹脂微粒子表面を活性化してパラジウムを析出させる方法等が挙げられる。
【0046】
上記無電解ニッケルメッキは、触媒化工程において触媒が付与された樹脂微粒子を、還元剤の存在下でニッケルイオンを含有する溶液中に浸漬し、触媒を起点として樹脂微粒子の表面にニッケルを析出させるものである。
【0047】
樹脂微粒子と上記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子を製造する方法であって、少なくとも、還元剤としてホウ素化合物及び次亜リン酸化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程を有する導電性微粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0048】
本発明1の導電性微粒子を作製する場合、上記無電解ニッケルメッキを行う方法としては特に限定されないが、還元剤としてホウ素化合物及び次亜リン酸化合物を同時に併用することが好ましく、より具体的には、例えば、ホウ素化合物、次亜リン酸化合物及びニッケル塩を溶解させたメッキ液に樹脂微粒子の懸濁液を添加する方法;樹脂微粒子を予め分散させておいた懸濁液にホウ素化合物、次亜リン酸化合物及びニッケル塩を溶解させたメッキ液を添加する方法;ニッケル塩を予め溶かした溶液に樹脂微粒子を分散させた後、ホウ素化合物及び次亜リン酸化合物を溶解した溶液を添加する方法等が挙げられる。
【0049】
樹脂微粒子と上記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子を製造する方法であって、少なくとも、還元剤としてホウ素化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程と、還元剤として次亜リン酸化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程とを有する導電性微粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0050】
本発明2の導電性微粒子を作製する場合、上記無電解ニッケルメッキを行う方法としては特に限定されないが、還元剤としてホウ素化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程と、還元剤として次亜リン酸化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程とにより行うことが好ましく、より具体的には、例えば、樹脂微粒子を予め分散させた懸濁液に、ホウ素化合物及びニッケル塩を溶解させたメッキ液を添加して樹脂微粒子の表面にニッケルを主成分としホウ素を含有する層を形成し、ホウ素化合物が消費された後に、次亜リン酸化合物及びニッケル塩を溶解したメッキ液を添加して、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層上に、ニッケルを主成分としリンを含有する層を形成させる方法;ホウ素化合物及びニッケル塩を溶解させたメッキ液に、樹脂微粒子の懸濁液を添加して樹脂微粒子の表面にニッケルを主成分としホウ素を含有する層を形成し、ホウ素化合物が消費された後、次亜リン酸化合物を溶解した溶液を添加して、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層上に、ニッケルを主成分としリンを含有する層を形成させる方法;ニッケル塩を予め溶かしたメッキ液に樹脂微粒子を分散させた後、ホウ素化合物を溶解した溶液を添加してニッケルを主成分としホウ素を含有する層を形成し、ホウ素化合物が消費された後、次亜リン酸化合物を溶解した溶液を添加して、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層上に、ニッケルを主成分としリンを含有する層を形成させる方法等が挙げられる。
【0051】
また、ホウ素化合物と次亜リン酸化合物について添加する順序を入れ換えることで、ニッケルを主成分としリンを含有する層を、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層よりも先に形成できる。
【0052】
上記ニッケルを主成分とする層の厚さは、メッキ浴へのニッケル塩の添加量等により任意に調整できる。また、上記ニッケルを主成分とする層におけるホウ素及びリンの含有量は、メッキ浴の建浴条件により任意に調整でき、例えば、ニッケル塩、ホウ素化合物、次亜リン酸化合物及び錯化剤の添加量や種類、pHや温度等により調整できる。
【0053】
上記ニッケル塩としては特に限定されず、例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。メッキ浴全体に対するニッケル塩の濃度は、他の建浴条件に応じて変更されるが、通常、ニッケルに換算したときの濃度として好ましい下限は1g/L、上限は100g/Lである。
【0054】
ニッケル塩に加えて、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、モリブデン、パラジウム、錫、タングステン、レニウム等の塩をメッキ浴に含有させることによりニッケル合金をメッキすることもできる。
【0055】
上記ホウ素化合物としては、ニッケルを還元しうる還元力を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等が好適である。
【0056】
上記次亜リン酸化合物としては、ニッケルを還元しうる還元力を有するものであれば特に限定されないが、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸アンモニウム等の次亜リン酸塩類が好適である。
【0057】
上記ホウ素化合物及び次亜リン酸化合物といった還元剤のメッキ浴全体に対する濃度は、所望の被覆層の厚さ、使用する還元剤の種類及びメッキ浴へのニッケル塩や樹脂微粒子の添加量等に応じて変更されるが、一般に、ホウ素化合物であればホウ素に換算したときの濃度として好ましい下限は0.01g/L、上限は50g/Lであり、より好ましい下限は0.1g/L、上限は20g/Lであり、次亜リン酸化合物であれば次亜リン酸に換算したときの濃度として好ましい下限は0.01g/L、上限は100g/Lであり、より好ましい下限は1g/L、上限は50g/Lである。還元剤の量が不足すると、還元反応が起こらずニッケルを主成分とする層が充分に形成されないことがある。還元剤の量が多すぎると、メッキ液の異常分解が生じたり、ニッケルを主成分とする層におけるホウ素及び/又はリンの含有量が多くなりすぎたりして充分な導電性を示さないことがある。
【0058】
上記ニッケルを主成分とする層を均一に形成するためには、樹脂微粒子を充分に分散して単粒子化する必要がある。
【0059】
上記樹脂微粒子を分散させる方法としては、攪拌、超音波処理、ホモジナイザー及びこれらの併用によるもの等が挙げられる。
【0060】
メッキ浴全体に対する樹脂微粒子の濃度は、他の建浴条件に応じて変更されるが、一般に好ましい下限は0.1g/L、上限は300g/Lである。0.1g/L未満であると、メッキ浴全体に対するメッキ出来高が低くなり過ぎコスト面から有利でない。300g/Lを超えると、メッキの生成反応中に粒子同士の凝集が起こり、メッキ層の厚さが不均一となることがある。より好ましい下限は1g/L、上限は100g/Lである。
【0061】
メッキ浴には、水酸化ニッケル等の生成を防止するために、錯化剤を含有させてもよい。
【0062】
上記錯化剤としては、ニッケルと結合しうるものであれば特に限定されず、例えば、酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、サリチル酸、チオグリコール酸、EDTA等のカルボン酸;ピロリン酸、ポリリン酸等の縮合リン酸;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸;アンモニア、ヒドラジン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。これらは単独でも用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
メッキ浴全体に対する上記錯化剤の濃度としては、他の建浴条件に応じて変更されるが、一般に、好ましい下限は1g/L、上限は100g/Lである。
【0064】
メッキ浴には、安定性を向上させたり、メッキの生成反応の速度を調整するために、微量の安定剤を含有させてもよい。
【0065】
上記安定剤としては、ニッケルの析出を阻害しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、チオ尿素やチオグリコール酸等の硫黄化合物や鉛等の触媒毒を用いることができる。
【0066】
上記メッキ浴のpHとしては、好ましい下限は3、上限は14である。上記メッキ浴のpHが、3未満であるか又は14を超えると、ニッケルからなる層中のホウ素及び/又はリンの含有率が充分な導電性と可とう性とを示す好ましい範囲から外れることがある。より好ましい下限は4、より好ましい上限は11である。
【0067】
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料の構成材料として好適である。上記異方性導電材料としては本発明の導電性微粒子を用いてなるものであれば特に限定されず、さまざまな形態により相対向する基板同士や電極端子同士を電気的に接続するものである。かかる本発明の導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料もまた本発明の1つである。
【0068】
本発明の異方性導電材料を用いて電極同士を電気的に接続する方法としては、例えば、絶縁性のバインダー樹脂中に本発明の導電性微粒子を分散させて異方性導電接着剤を作製したうえで、この異方性導電接着剤により接続する方法;絶縁性のバインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用して接続する方法等が挙げられる。
【0069】
上記バインダー樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマー及びイソシアネート等の硬化剤との反応により得られる硬化性樹脂組成物等の光や熱による硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0070】
上記異方性導電接着剤としては特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電インク等が挙げられる。
【0071】
上記異方性導電フィルムは、例えば、異方性導電接着剤に溶媒を加えて溶液状にし、この溶液を離型フィルム上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させて異方性導電接着剤を被膜状にすることにより得られる。得られた異方性導電フィルムは、例えば、接着すべき電極上に配置され、配置された異方性導電膜上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0072】
上記異方性導電ペーストは、例えば、異方性導電接着剤をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さに塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱するとともに加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。
【0073】
上記異方性導電インクは、例えば、異方性導電接着剤に溶媒を加えて印刷に適した粘度にすることにより得られる。得られた異方性導電インクは、例えば、接着すべき電極上にスクリーン印刷し、その溶媒を蒸発させた後、印刷された異方性導電インクの上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0074】
上記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、塗工膜厚及び印刷膜厚は、含有する導電性微粒子の平均粒子径と接続すべき電極の仕様とから計算し、接続すべき電極間に導電性微粒子が挟持され、接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるよう設定することが好ましい。
【0075】
本発明の異方性導電材料は、高い導電性を示すばかりでなく、加熱圧縮した際にも導電被膜層が剥離、破壊されず、相対向する電極基板間の電気的な接続を確保することができる。また、経時安定性にも優れるので、長期間の使用においても導電性の低下を来すことなく、電極基板間の電気的な接続を堅持し信頼性の向上を図ることができる。
【0076】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
平均粒子径が5.0μm、粒子径の変動係数が4.9%、10%K値が4900MPa、回復率が60%であるジビニルベンゼンを主成分とする樹脂微粒子(積水化学工業社製、ミクロパールSP−205)10gを粉末メッキ用プレディップ液(奥野製薬社製)に分散させ、30℃で30分間攪拌することによりエッチングした。
【0078】
続いて、エッチングされた樹脂微粒子を水洗して、パラジウム触媒(アトテックジャパン社製、ネオガント834)を8重量%含有するパラジウム触媒化液100mL中に添加し30℃で30分間攪拌した後、樹脂微粒子を濾取し、水洗した。この樹脂微粒子をpH6.0に調整された0.5重量%のジメチルアミンボラン液に添加し、パラジウムにより活性化された樹脂微粒子を得た。
【0079】
パラジウムにより活性化された樹脂微粒子に蒸留水500mLを加え、超音波処理機を用いて充分に分散させて懸濁液とした。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物20g/L、ジメチルアミンボラン2.5g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Aを徐々に添加し、樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを行った。この際、無電解ニッケルメッキ中の樹脂微粒子を経時的にサンプリングしてニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが0.10μmになった時点で無電解メッキ液Aの添加を止め、樹脂微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後、真空乾燥し、導電性微粒子1を得た。なお、ニッケルを主成分とする層の厚さtNiは下記式(2)にて計算した。
【0080】
Ni(μm)=(ρ×WNi×D)/{6×ρNi×(100−WNi)} (2)
ρ:樹脂微粒子の比重
ρNi:ニッケルを主成分とする層の比重
Ni:導電性微粒子中のニッケルの含有率(重量%)
D:樹脂微粒子の平均粒子径(μm)
【0081】
(定量分析)
得られた導電性微粒子1中に含有されるニッケル、ホウ素及びリンの量をIPC発光分析機にて分析し、ニッケルの含有量に対するホウ素の含有率(B/Ni)、ニッケルの含有量に対するリンの含有率(P/Ni)を算出し、結果を表1に示した。
【0082】
(導電性測定)
得られた導電性微粒子1をエポキシ系接着剤(古川化工社製、SE−4500)に5重量%の割合で混合し、ホモジナイザーで充分に分散させて異方性導電接着剤Xを作製した。この異方性導電接着剤Xにφ4.5μmのガラスファイバー(GF)を5重量%の割合で加え、ホモジナイザーで充分に分散させ、異方性導電接着剤Yを作製した。これら2種類の異方導電接着剤を幅300μmでITO電極が直角に交差するように重ね合わせた。これに2.9×10N/mの圧力を加えながら160℃で30分間加熱して圧着硬化させた後、ITO電極が交差する部分について接触抵抗値を4端子法により測定した。ITO電極が交差する部分に存在する導電性微粒子1の数を光学顕微鏡にて計数し、得られた接触抵抗値を導電性微粒子1の数で除したものを導電性微粒子1個当たりの接触抵抗値とした。接触抵抗値は小さいほど導電性が高いことを意味する。
【0083】
この測定を5つの試料について行い、平均値を算出し、結果を表1に示した。
【0084】
(密着性測定)
上記異方導電性接着剤X0.1gをITO電極が形成されていない平坦なガラス基板(5cm×5cm)上に量り取り、この上から別のITO電極が形成されていない平坦なガラス基板を重ね合わせ、9.8×10N/mの荷重をかけながらゆっくりと2cmすり動かした。その後、この異方導電性接着剤Xに含まれる導電性微粒子100個について光学顕微鏡により観察し、金属被覆層の半分以上が剥離又は破壊されている粒子数を計数し、剥離比率を求めた。剥離比率が小さいほど金属被覆層の密着性が高いことを意味する。
【0085】
この測定を5つの試料について行い、平均値を算出し、結果を表1に示した。
【0086】
(実施例2)
無電解メッキ液Aの次亜リン酸ナトリウム1水和物の濃度を10g/Lとし、ジメチルアミンボランの濃度を5g/Lとしたこと以外は実施例1と同様にして、ニッケルを主成分とする層の厚さが0.10μmである導電性微粒子2を得た。得られた導電性微粒子2につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0087】
(実施例3)
硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物20g/L、水素化ホウ素ナトリウム1g/L、クエン酸50g/LからなるpH7.5に調整した無電解メッキ液B200mLに、実施例1と同様にして得たパラジウムを活性化させた微粒子懸濁液500mLを添加し、50℃にて攪拌しながら無電解ニッケルメッキを行った。経時的に微粒子をサンプリングしてニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが0.10μmになった時点で蒸留水を加えて反応を止め、微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後、真空乾燥させ、導電性微粒子3を得た。
【0088】
得られた導電性微粒子3につき、実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0089】
(実施例4)
実施例1で作製したパラジウムにより活性化された樹脂微粒子に蒸留水500mlを加え、超音波処理機を用いて充分に分散させて懸濁液とした。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、ジメチルアミンボラン5g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Cを徐々に添加し、樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを行った。この際、無電解ニッケルメッキ中の樹脂微粒子を経時的にサンプリングしてニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが0.05μmになった時点で無電解メッキ液Cの添加を止め、代りに、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物40g/L、クエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解メッキ液Dを徐々に添加して樹脂微粒子の無電解ニッケルメッキを継続した。同様にニッケルを主成分とする層の厚さを測定し、厚さが合わせて0.10μmになった時点で無電解メッキ液Dの添加を止めた。続いて、無電解ニッケルメッキされた樹脂微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後、真空乾燥し、導電性微粒子4を得た。
【0090】
得られた導電性微粒子4につき、実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0091】
(実施例5)
無電解メッキ液Dの次亜リン酸ナトリウム1水和物の濃度を20g/Lとしたこと以外は実施例4と同様にして、ニッケルを主成分とする層の厚さが0.10μmである導電性微粒子5を得た。
【0092】
得られた導電性微粒子5につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0093】
(実施例6)
先に無電解メッキ液Dを添加し、その後から無電解メッキ液Cを添加したこと以外は実施例4と同様にして導電性微粒子6を得た。
【0094】
得られた導電性微粒子6につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0095】
(実施例7)
無電解メッキ液Dの次亜リン酸ナトリウム1水和物の濃度を20g/Lとしたこと以外は実施例6と同様にしてニッケルを主成分とする層の厚さが0.10μmである導電性微粒子7を得た。
【0096】
得られた導電性微粒子7につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0097】
(実施例8)
硫酸ニッケル6水和物50g/L、クエン酸50g/LからなるpH7.5に調整された無電解メッキ液E2000mLに、実施例1と同様にして得たパラジウムにより活性化された樹脂微粒子を加え、超音波処理機を用いて充分に分散させることにより懸濁液とした。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム5g/Lからなる還元剤水溶液を徐々に添加し無電解ニッケルメッキを行い、ニッケルを主成分とする層の厚みが0.05μmになった時点で還元剤溶液の添加を止め、代りに次亜リン酸ナトリウム1水和物80g/Lからなる還元剤水溶液を徐々に添加し、無電解ニッケルメッキを行い、ニッケルを主成分とする層の厚さの合計が0.10μmになった時点で還元剤溶液の添加を止め、樹脂微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後真空乾燥し、導電性微粒子8を得た。
【0098】
得られた導電性微粒子8につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0099】
(実施例9)
無電解メッキ液C1000mLに、実施例1で作製したパラジウムにより活性化された樹脂微粒子の懸濁液500mLを加え、50℃で攪拌しながら無電解ニッケルメッキを行い、ニッケルを主成分とする層が0.05μmになった時点で濾取し、水洗した。得られた微粒子に蒸留水500mLを加え、超音波処理機を用いて充分に分散させて再度懸濁液とした後、無電解メッキ液D1000mLに加え、50℃で攪拌しながら無電解ニッケルメッキを行い、ニッケルを主成分とする層の合計が0.10μmになった時点で濾取、水洗し、アルコール置換した後真空乾燥し、導電性微粒子9を得た。
【0100】
得られた導電性微粒子9につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0101】
(比較例1)
無電解メッキ液Aにおいて、次亜リン酸ナトリウム1水和物を加えずに、ジメチルアミンボランの濃度を5g/Lとした以外は実施例1と同様にして導電性微粒子10を得た。
得られた導電性微粒子10につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0102】
(比較例2)
無電解メッキ液Aにおいて、ジメチルアミンボランを加えずに、次亜リン酸ナトリウム1水和物の濃度を40g/Lとした以外は実施例1と同様にして導電性微粒子11を得た。得られた導電性微粒子11につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0103】
(比較例3)
無電解メッキ液Aの次亜リン酸ナトリウム1水和物の濃度を20g/Lにしたこと以外は比較例2と同様にして導電性微粒子12を得た。
【0104】
得られた導電性微粒子12につき実施例1と同様にして、定量分析、導電性測定、密着性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
(実施例10)
シアン化金カリウム5.9g(金に換算して4g)を含有する置換金メッキ液(日本高純度化学社製、IM−GoldST)2000mlに実施例1で得られた導電性微粒子1を10g添加して、攪拌しながら70℃にて30分間反応させた。反応終了後に置換金メッキ液における金の濃度を測定したところ10ppm以下であった。反応終了後の置換金メッキ液から微粒子を濾取、水洗し、アルコール置換した後、真空乾燥させ、金により被覆された導電性微粒子13を得た。この微粒子をエポキシ樹脂に混練し、硬化させた後マイクロトームでスライスし、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、金が均一に0.04μmの厚さで導電性微粒子1の表面を被覆していることが確認できた。
【0107】
(導電性測定及び密着性測定)
微小圧縮電気抵抗測定器(島津製作所社製、PCT−200改)を用いて導電性微粒子13を圧縮し、粒子径が10%圧縮された時点での接触抵抗値を測定した。この測定を試料20個について行い、その平均値を算出し、結果を表2に示した。
【0108】
また、引き続き粒子径の50%まで徐々に圧縮したところ、その過程において突然抵抗値が10Ω以上に増大する導電性微粒子が認められた。これらの導電性微粒子を光学顕微鏡にて観察すると、金属被覆層の剥離、破壊が生じていた。これらの金属被覆層の剥離、破壊が生じた導電性微粒子の発生比率を導電性破壊比率として表2に示した。この値が小さいほど金属被覆層の密着性が優れていることを意味する。
【0109】
(導電性変化の測定)
導電性微粒子13を85℃、相対湿度95%の雰囲気下で1週間放置した後、導電性測定と同様にして負荷後の接触抵抗値を測定し、その結果を表2に示した。先に測定した接触抵抗値との差が小さいほど、経時安定性に優れた導電性微粒子であることを意味する。
【0110】
(実施例11〜18)
実施例10と同様にして、実施例2〜9で得られた導電性微粒子2〜9に置換金メッキ処理を行い、それぞれ厚さ0.04μmの金による被覆層を有する導電性微粒子14〜21を得た。反応終了後の置換金メッキ液中に存在する金を測定したところ、いずれも10ppm以下であった。これらについても実施例10と同様にして導電性、密着性及び導電性の変化を測定し、その結果を表2に示した。
【0111】
(比較例4〜6)
実施例10と同様にして、比較例1〜3で得られた導電性微粒子10〜12に置換金メッキ処理を実施し、それぞれ厚さ0.04μmの金による被覆層を有する導電性微粒子22〜24を得た。反応終了後の置換金メッキ液中に存在する金を測定したところ、いずれも10ppm以下であった。これらについても実施例10と同様にして導電性、密着性及び導電性の変化を測定し、その結果を表2に示した。
【0112】
【表2】

【0113】
表1より、実施例1〜9で得られた導電性微粒子1〜9はいずれも比較例1〜3で得られた導電性微粒子10〜12に対して、接触抵抗値(GF無)において優れていた。これは、加熱圧縮しても金属被覆層が剥離、破壊を発生することなく導電性を維持していることを示している。
【0114】
一方、比較例1で得られた導電性微粒子10は、接触抵抗値(GF有)において実施例1〜9及び比較例1〜3で得られた導電性微粒子中で最も低い値を示したが、接触抵抗値(GF無)においては最も高い値を示した。これは、ガラスファイバーを加えないと加圧圧縮により金属被覆層が破壊されることを示し、高性能を要求される異方性導電材料に使用するうえで好ましくない。
【0115】
また、比較例2で得られた導電性微粒子11は、剥離比率において低い値を示したが接触導電性に劣るものであり、比較例3で得られた導電性微粒子12は、剥離比率及び接触導電性共に劣るものであったことから、異方性導電材料に使用するうえで好ましくないものであった。
【0116】
表2より、実施例10〜18で得られた導電性微粒子13〜21はいずれも比較例4で得られた導電性微粒子22〜24に対して、負荷後の接触抵抗値において優れていた。
【0117】
一方、比較例4〜6で得られた導電性微粒子22は、接触抵抗値において実施例10〜18で得られた導電性微粒子13〜21と同様に最も低い値を示したが、導電性破壊比率が極端に高かった。これは圧縮により金属被覆層の破壊が生じたことを示し、高性能を要求される異方性導電材料に使用するうえで好ましくない。
【0118】
また、比較例5で得られた導電性微粒子23は、導電性破壊比率において実施例10〜18で得られた導電性微粒子13〜21と同様に最も低い値を示したが接触導電性に劣るものであり、比較例6で得られた導電性微粒子24は、導電性破壊比率及び接触導電性共に劣るものであったことから、異方性導電材料に使用するうえで好ましくないものであった。
【0119】
以上より、導電性、密着性及び経時安定性を総合的に評価すると、実施例で作製された導電性微粒子は比較例で作製された導電性微粒子よりも優れており、これらの実施例で作製された導電性微粒子を用いることで、より高い性能及び信頼性を有する異方性導電材料が得られると考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明1に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
【図2】ニッケルを主成分としホウ素を含有する層を外層とした本発明2に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
【図3】ニッケルを主成分としリンを含有する層を外層とした本発明2に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
【図4】金からなる層を最外層とした本発明1に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
【図5】金からなる層を最外層とし、ニッケルを主成分としリンを含有する層を外層とした本発明2に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
【図6】金からなる層を最外層とし、ニッケルを主成分としホウ素を含有する層を外層とした本発明2に係る導電性微粒子の一実施形態を示した模式図である。
【符号の説明】
【0121】
1 樹脂微粒子
2 ニッケルを主成分としホウ素とリンとを含有する層
3 ニッケルを主成分としホウ素を含有する層
4 ニッケルを主成分としリンを含有する層
5 金からなる層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子を製造する方法であって、
少なくとも、還元剤としてホウ素化合物及び次亜リン酸化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程を有する
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。
【請求項2】
樹脂微粒子と前記樹脂微粒子の表面に形成された金属被覆層とからなる導電性微粒子を製造する方法であって、
少なくとも、
還元剤としてホウ素化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程と、
還元剤として次亜リン酸化合物を用いる無電解ニッケルメッキ工程とを有する
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−41671(P2008−41671A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233008(P2007−233008)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【分割の表示】特願2001−394798(P2001−394798)の分割
【原出願日】平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】