説明

導電性材料

【課題】広範な温度範囲において、他部材との密着性を保持し、良好な電気的接合を実現することが可能な導電性材料を提供する。
【解決手段】表面に凹部及び凸部の少なくとも一方が形成されるとともに、前記表面の、少なくとも、前記凹部及び凸部の少なくとも一方を含む領域に形成された導電層を有する複数の骨格粒子と、前記複数の骨格粒子それぞれを、前記導電層が接触するようにして連結する複数の連結粒子とを具え、前記骨格粒子の、互いに隣接する前記凹部及び凸部の少なくとも一方を含む領域に形成された前記導電層の少なくとも一部が接触するようにして、導電性材料を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多孔質材料が流体を自由に流通させることができることに注目して、固体酸化物型燃料電池や水蒸気電解セルなどの給電又は集電材料として用いられている。例えば、特許文献1には積層構造型の固体酸化物型燃料電池の技術が開示されており、その集電体としてAg基合金やNi合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板(発泡金属板)を用いた技術が開示されている。また、特許文献2には、円筒形の固体酸化物型燃料電池の技術が開示されており、その集電体として、中心部に設けた多孔質の導電性チューブが開示されている。
【0003】
集電体は、発電セル内で進行する化学反応の結果生成した電気を外部に取り出すための重要な役割を担うものであるが、上記特許文献1にも記載されているように、一般的には金属製の多孔質材料が用いられている。一方、この集電体と接する燃料極層や空気極層はセラミックスやサーメットからなり、熱膨張率においては金属と大きく異なる。したがって、それらの接合は、一般的には両者を機械的に圧接した圧接構造とする。
【0004】
しかしながら、繰り返しの使用(運転)による集電体と燃料極層や空気極層との熱膨張差に起因して、それら接合部における密着度合いが低下し、前記接合部における電気的な抵抗が増大してしまうという問題が生じ、電池性能の低下や信頼性が低下してしまうという問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−203258号
【特許文献2】特開平07−263001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、広範な温度範囲において、他部材との密着性を保持し、良好な電気的接合を実現することが可能な導電性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様は、表面に凹部及び凸部の少なくとも一方が形成されるとともに、前記表面の、少なくとも、前記凹部及び凸部の少なくとも一方を含む領域に形成された導電層を有する複数の骨格粒子と、前記複数の骨格粒子それぞれを、前記導電層が接触するようにして連結する複数の連結粒子とを具え、前記骨格粒子の、互いに隣接する前記凹部及び凸部の少なくとも一方を含む領域に形成された前記導電層の少なくとも一部が接触していることを特徴とする、導電性材料に関する。
【0008】
本態様の導電性材料によれば、表面に導電層が形成された複数の骨格粒子が、連結粒子によって前記導電層が互いに接触するようにして連結されている。したがって、前記導電性材料を他部材、例えば固体酸化物型燃料電池の燃料極層や空気極層に圧接して接合した場合に、前記燃料電池を繰り返し使用しても、前記導電性材料が、それらの材料間の熱膨張差を吸収してしまう。したがって、接合部における密着度合いが低下し、前記接合部における電気的な抵抗が増大してしまうという問題が生じ、電池性能の低下や信頼性が低下してしまうという問題を生じるという問題を回避することができる。
【0009】
一方、平滑な表面を有する骨格粒子に対して、その表面に導電層を形成してなる従来構成の導電性材料の場合は、この導電性材料を特に高温、例えば900℃程度の温度下で使用すると、導電層がその構成材料の融点以下においても溶融して凝集し、局在してしまう傾向がある。このため、骨格粒子を連結粒子で連結した場合において、互いに隣接する骨格粒子の表面に形成された導電層同士が接触しない割合が増大し、上記導電性材料の電気的導電性が劣化してしまう場合が生じてしまう。この結果、前記導電性材料を、特に固体酸化物形燃料電池用及び水蒸気電解セル用の集電材料、すなわち電極として使用できない場合があった。
【0010】
一方、上記態様によれば、骨格粒子の表面に凹部及び凸部の少なくとも一方を形成するようにしている。したがって、導電層が溶融した場合においても、前記導電層の凝縮は前記凹部及び凸部の少なくとも一方において阻害され、前記凹部及び凸部を中心として延在するようになる。その結果、互いに隣接する凹部及び凸部においては、各凹部及び凸部を中心として延在した導電層の少なくとも一部が接触し、導電性材料の導電性が十分に確保されるようになる。
【0011】
なお、上記凸部は、以下に説明する製造方法等に起因して上記凹部に形成することができる。すなわち、前記凸部を前記凹部で固定支持することができ、前記凸部を安定に存在させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、広範な温度範囲において、他部材との密着性を保持し、良好な電気的接合を実現することが可能な導電性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の導電性材料の一部を拡大して示す断面図である。
【図2】図1に示す導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す図である。
【図3】図1に示す導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す図である。
【図4】図1に示す導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す図である。
【図5】図1に示す導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す図である。
【図6】第2の実施形態の導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す平面図である。
【図7】第2の実施形態の導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、図面を参照しながら実施形態に基づいて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の導電性材料の一部を拡大して示す断面図であり、図2〜図5は、図1に示す導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す図である。図2は、導電層が溶融する温度に加熱する以前の骨格材料の断面構成図であり、図3は、導電層が溶融する温度に加熱する以前の骨格材料の平面図である。図4は、導電層が溶融する温度以上に加熱した場合の骨格材料の断面構成図であり、図5は、導電層が溶融する温度以上に加熱した場合の平面図である。
【0016】
なお、図1においては、本実施形態の導電性材料の概略構成の理解を高めるべく、その骨格粒子の構成に関しては簡略化して描いている。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の導電性材料10は、表面に導電層12が形成された複数の骨格粒子11が、連結粒子13を介して互いの骨格粒子11の表面上に形成された導電層12の少なくとも一部が接触するようにして連結してなる。なお、骨格粒子11の大きさ、すなわち直径は例えば5μm〜100μmであり、連結粒子13の大きさ、すなわち直径は例えば0.2μm〜10μmであるので、隣接する骨格粒子11の間には隙間10Aが生じる。
【0018】
したがって、本実施形態の導電性材料10を、例えば固体酸化物型燃料電池用の集電材料、すなわち電極として使用した場合において、燃料である水素及び空気は、隙間10Aを介して固体電解質に供給するようになるので、前記固体電解質に対する燃料の供給抵抗が減少し、前記燃料を比較的多量かつ容易に供給することができるようになる。その結果、上記固体酸化物型燃料電池の発電量を向上させることができるようになる。なお、以下に説明するように、導電性材料10は、十分な電気伝導性を有するので、前記固体酸化物型燃料電池で発電した電流は、導電性材料10からなる電極を介して取り出すことができる。
【0019】
また、本実施形態の導電性材料10を、水蒸気電解セル用の集電材料、すなわち電極として使用した場合においても、燃料である水は、隙間10Aを介して固体電解質に供給するようになるので、前記固体電解質に対する燃料の供給抵抗が減少し、前記燃料を比較的多量かつ容易に供給することができるようになる。その結果、上記固体酸化物水蒸気電解セルでの水素及び酸素の発生量を増大させることができるようになる。
【0020】
本実施形態において、骨格粒子11は、例えば、Zr、Ce、Y、Sc、Sm、Yb、Gd、Eu、及びNdからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸化物セラミックスから構成することができる。このような酸化物セラミックスは、耐熱性及び耐食性に優れるとともに、強度的にも優れるので骨格粒子11を構成する材料として好適である。
【0021】
導電層12は、Al、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、及びZrの少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの材料は導電性に優れるので、導電層12を構成する材料として好適である。
【0022】
連結粒子13は、以下に説明する製造方法に起因して骨格粒子11と同様の材料から構成できる他、導電層12の形成に合わせて、その表面に別途導電層が形成されたような構成でもよい。さらに、連結粒子13は、金属単体から構成することもできる。
【0023】
また、骨格粒子11は、図2及び図3に示すように、その表面から内部にかけて気孔11Aが形成されており、多孔質となっている。なお、気孔11Aは骨格粒子11を貫通するような開気孔であってもよいし、非貫通の気孔であってもよい(図2に示す断面図では、総てが開気孔となっている)。但し、以下に説明する本実施形態の作用効果を効果的に達成するには、気孔率が30体積%以上であることが好ましい。
【0024】
なお、気孔率の上限は骨格粒子11が十分な強度を保持した状態で、その形態を保持できる観点から決定されるものであって、骨格粒子11を構成する材料にも依存する。一例として、50体積%とすることができる。
【0025】
また、気孔11Aの大きさは、平均径で0.01μm〜0.1μmの範囲である。
導電層12は、少なくとも骨格粒子11の表面11B上に形成されていることが必須の要件であるが、以下に説明する製造方法に起因して、気孔11Aの内表面の一部及び全部を覆うようにして形成されていてもよい。
【0026】
図1に示す導電性材料10を、比較的低温、すなわち導電層12が溶融しないような温度においては、図2及び図3に示すような骨格粒子11を連結粒子13で連結することによって、隣接する骨格粒子11の表面11B上に形成された導電層12の少なくとも一部が連結するようになる。したがって、導電性材料10は、全体として電気的導電性を呈し、固体酸化物型燃料電池用あるいは水蒸気電解セル用の集電材料、すなわち電極として使用することができる。
【0027】
一方、図1に示す導電性材料10を、導電層12が溶融するような温度下に配置すると、導電層12は溶融して凝縮してしまい、骨格粒子11の特定領域に極在してしまうようになる。しかしながら、本実施形態では、骨格粒子11を多孔質としているので、図4及び図5に示すように、溶融した導電層12は、凝縮する以前に、気孔11Aによって捕捉されるようになる。そして、気孔11A内に浸透するとともに、気孔11Aを中心として広がり延在するようになる。
【0028】
この結果、図4及び図5に示すように、互いに隣接する気孔11Aを含む領域に極在するようにして導電層14(以降、“極在導電層14”という場合がある)が形成されるとともに、これら極在導電層14の少なくとも一部が接触するようになるので、導電性材料10が、上述のような高温下に配置したような場合においても、全体として電気的導電性を呈し、固体酸化物型燃料電池用あるいは水蒸気電解セル用の集電材料、すなわち電極として使用することができる。
【0029】
なお、図2〜図4に示すいずれの態様においても、表面11Bに導電層12が形成された複数の骨格粒子11が、連結粒子13によって導電層12が互いに接触するようにして連結されている。したがって、導電性材料10を他部材に圧接して接合し、所定の装置を形成した場合に、この装置が繰り返しの温度履歴を受けた場合においても、導電性材料10が、それらの材料間の熱膨張差を吸収してしまう。したがって、接合部における密着度合いが低下し、前記接合部における電気的な抵抗が増大してしまうという問題が生じ、前記装置の性能の低下や信頼性の低下という問題を回避することができる。
【0030】
次に、本実施形態における導電性材料10の製造方法について説明する。一例として、骨格粒子11が、上述した酸化物セラミックスからなる場合について説明する。
【0031】
最初に、ポリエステル系樹脂等の比較的高い耐熱性及び耐食性を有する材料からなる、球状の多孔質ポリマーをテンプレートとし、このテンプレート中に前記酸化物セラミックスの前駆体を含浸、成形した後、乾燥させ、500℃以下の温度で数時間保持する。この段階で、前記前駆体中から上記酸化物セラミックスの粒子が析出するようになる。その後、例えば1000℃〜1200℃の温度で前記酸化物セラミックス粒子を焼成することによって、骨格粒子11を得る。
【0032】
前記前駆体は、例えば、酸化物セラッミクスを構成するZr等を含む金属アルコキシド化合物及びゾルを、ブタノール等の溶媒中で混合させて得ることができる。また、このような前駆体を用いることによって、上記のように、500℃以下の低温度で数時間保持した場合でも、前記前駆体中から上記酸化物セラミックスの粒子を析出させることができるものである。
【0033】
あるいは、酸化物セラミックス及びバインダー(例えば、PVA系のバインダー)を水あるいはエタノール等の溶媒中で混合してスラリーとし、このスラリーを噴霧乾燥器等から噴霧して球状の造粒粉を作製した後、この造粒粉を1000℃〜1200℃で焼成することによっても骨格粒子11を得ることができる。
【0034】
なお、いずれの方法においても、焼成は、酸化物セラミックスを焼き固めるだけでなく、テンプレート及びバインダー等を消失させる役割をも有している。
【0035】
次いで、上述のようにして得た骨格粒子11と連結粒子13の構成成分を含むゾルとを混合し、例えば200℃に加熱保持することによって仮焼体を得、この仮焼体を粉砕、プレス成形した後、大気中、例えば1000℃〜1200℃で焼成することによって、図1に示すような、隣接する骨格粒子11を連結粒子13で連結したような状態の多孔質焼結体を得る(但し、この段階では、導電層12は形成されていない)。
【0036】
次いで、導電層12を構成するAl又はAg等を含む金属イオン電解液を準備し、上述のようにして得た多孔質焼結体を前記金属イオン電解液に浸漬し、メッキ法等によって膜形成を行い、上記多孔質焼結体の表面に導電層12を形成する。
【0037】
以上のような工程を経ることにより、図1に示すような導電性材料10を得ることができる。
【0038】
なお、上述した製造方法においては、骨格粒子11を連結粒子13で連結した後に導電層12を形成するものであるため、上述したように、連結粒子13の表面にも別途導電層が形成されることになる。
【0039】
また、骨格粒子11を形成した後に、骨格粒子11に対して金属粒子あるいは酸化物粒子を直接焼結して付着させることによって、前記金属粒子あるいは前記酸化物粒子が連結粒子13となる。前者の場合は、連結粒子13が金属単体から構成され、後者の場合は、連結粒子13が酸化物粒子から構成されて、導電性成分を含まない。
【0040】
(第2の実施形態)
図6及び図7は、本実施形態の導電性材料の骨格材料の一つを拡大して示す平面図である。図6は、導電層を形成する以前の状態を示し、図7は、導電層を形成した後に、前記導電層が溶融する温度以上に加熱した場合の平面図である。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態を通じて、同一あるいは類似の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いている。
【0041】
図6及び図7に示すように、本実施形態の導電性材料では、骨格粒子11の表面11B上に突起状の析出物21が形成されている。したがって、図6に示す骨格粒子11の表面11B上に導電層12を形成した場合、導電層12が溶融しないような温度においては、第1の実施形態における図2及び図3に示すような骨格粒子11を連結粒子13で連結することによって、隣接する骨格粒子11の表面11B上に形成された導電層12の少なくとも一部が連結するようになる。したがって、導電性材料10は、全体として電気的導電性を呈し、固体酸化物型燃料電池用あるいは固体酸化物型水蒸気電解セル用の集電材料、すなわち電極として使用することができる。
【0042】
しかしながら、導電層12が溶融するような温度では、導電層12は溶融して凝縮してしまい、骨格粒子11の特定領域に極在してしまうようになる。しかしながら、本実施形態では、骨格粒子11の表面11B上に突起状の析出物21を形成しているので、図7に示すように、溶融した導電層12は、凝縮する以前に、析出物21によって捕捉されるようになる。そして、析出物21を中心として広がり延在するようになる。
【0043】
なお、析出物21は、導電層12が溶融するような温度でも溶融することなく、その形態を維持した状態で安定して存在することが必要である。このような観点から、析出物21は、骨格粒子11を構成するような酸化物セラミックスから構成することが好ましい。
【0044】
この結果、図7に示すように、互いに隣接する析出物21を含む領域に極在するようにして極在導電層14が形成されるとともに、これら極在導電層14の少なくとも一部が接触するようになるので、導電性材料10が、上述のような高温下に配置したような場合においても、全体として電気的導電性を呈し、固体酸化物型燃料電池用あるいは固体酸化物型水蒸気電解セル用の集電材料、すなわち電極として使用することができる。
【0045】
本実施形態では、第1の実施形態のように、骨格粒子11を多孔質とする必要はなく、例えば通常のセラミック粒子から構成することができる。但し、骨格粒子11を多孔質とすることによって、突起状の析出物21を骨格粒子11に形成された気孔11Aで固定支持することができるので、析出物21を安定的に存在させることができる。
【0046】
なお、骨格粒子11の構成材料等、その他の条件及び態様、並びに作用効果等については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
次に、本実施形態における導電性材料10の製造方法について説明する。一例として、骨格粒子11及び析出物21がそれぞれ酸化物セラミックスからなる場合について説明する。
【0048】
最初に、骨格粒子11を構成する酸化物セラミック粒子を準備し、この粒子表面に析出物21の酸化物セラミックスの構成材料、例えばNi−W等の金属材料からなる膜体をメッキ法等で形成する。次いで、前記膜体を、例えば大気中、1000℃〜1200℃で数時間加熱処理を行うことにより、酸化ニッケル、酸化タングステン、ニッケル・タングステン複合酸化物の混合酸化物セラミックスからなる突起状の析出物21を形成することができる。なお、膜体に対して上述のような加熱処理を行うことによって、突起状の析出物21が形成できる理由については未だ判明しておらず、現在検討中である。
【0049】
なお、骨格粒子11を多孔質とする場合は、第1の実施形態で述べたようにして骨格粒子11を形成した後、上記酸化物セラミックスの構成材料、例えばNi−W等の金属材料からなる膜体をメッキ法等で、骨格粒子11の表面11B上に形成する。次いで、前記膜体を、例えば大気中、1000℃〜1200℃で数時間加熱処理を行うことにより、酸化ニッケル、酸化タングステン、ニッケル・タングステン複合酸化物の混合酸化物セラミックスからなる突起状の析出物21を形成することができる。
【0050】
その後、第1の実施形態で述べたようにして、連結粒子13及び導電層12を形成することによって、本実施形態の導電性材料10を得ることができる。但し、骨格粒子11が気孔11Aの代わりに、あるいは気孔11Aに加えて突起状の析出物21を有する点で相違する。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
テンプレートとして平均粒径80μm、比表面積500(m/g)の球状ポーラスポリマー(ポリアクリレート樹脂)を用い、これにテトラ-n-ブトキシジルコニウム・ブタノール溶液とジルコニアゾルの混合体を含浸、乾燥後、大気中で500℃に加熱3時間保持し、その後引続き1200℃に加熱2時間保持して、ジルコニアの多孔質骨格粒子を作製した。
【0052】
次いで、多孔質骨格粒子80wt%にジルコニアゾルの固形成分が20wt%となるように混合し、200℃に加熱保持した。その後、この仮焼体を粉砕、プレス成形したものを大気中1000℃で2時間加熱して多孔質の焼結体を得た。その後、無電解メッキのプロセスを適用し、約0.2μmの厚さのAgメッキ層を多孔質体の表面(及び気孔の内表面)に形成した。
【0053】
得られた多孔質体の開気孔率は48vol%で、バルク材料として十分な導電性が得られた。なお、開気孔率は、水銀圧入法で測定した。また、大気中900℃で2時間加熱保持後、室温にて導電性を測定すると、加熱処理前の導電性がほぼ保たれており、十分な耐熱性を確認できた。
【0054】
(実施例2)
平均粒径0.5μmのジルコニア粒子のスラリーを噴霧乾燥機で球状の造粒粉に成形し、これを焼成することで、平均粒径50μmの多孔質焼結体(骨格粒子)を得た。実施例1と同様に、この粗大粒子80wt%に対しジルコニアゾルの固形成分が20wt%となるように混合し、200℃に加熱保持した。その後、この仮焼体を粉砕、プレス成形したものを大気中1000℃で2時間加熱して多孔質の焼結体を得た。その後、無電解メッキのプロセスを適用し、約0.2μmの厚さのAgメッキ層を多孔質層の開気孔内面に形成した。
【0055】
得られた多孔質体の開気孔率は44vol%で、バルク材料として十分な導電性が得られた。また、大気中900℃で2時間加熱保持後、室温にて導電性を測定すると、加熱処理前の導電性がほぼ保たれており、十分な耐熱性を確認できた。
【0056】
(実施例3)
平均粒径50μmの球形ジルコニア粒子(骨格粒子)に無電解メッキ法でニッケル−タングステン(Ni−W)の皮膜を0.4μmの厚さに形成した。これを大気中1000℃で5時間加熱したところ、酸化ニッケル、酸化タングステン、ニッケル・タングステン複合酸化物の混在した0.5μm径程度の突起状析出物が骨格粒子表面に形成された。実施例1と同様に、この粗大粒子80wt%に対しジルコニアゾルの固形成分が20wt%となるように混合し、200℃に加熱保持した。その後、この仮焼体を粉砕、プレス成形したものを大気中1000℃で2時間加熱して多孔質の焼結体を得た。その後、無電解メッキのプロセスを適用し、約0.2μmの厚さのAgメッキ層を多孔質層の開気孔内面に形成した。
【0057】
得られた多孔質体の開気孔率は40vol%で、バルク材料として十分な導電性が得られた。また、大気中900℃で2時間加熱保持後、室温にて導電性を測定すると、加熱処理前の導電性がほぼ保たれており、十分な耐熱性を確認できた。
【0058】
(実施例4)
本実施例では、実施例1に示す構造の多孔質体を水素極基体構造のSOFCセルの両電極上に約0.5mmの厚さに積層したものである。製造は以下の方法によった。実施例1に示した方法で、内部まで多孔質構造を有するジルコニアの骨格粒子を作製し、またこの骨格粒子80wt%にジルコニアゾルの固形成分が20wt%となるように混合し、200℃に加熱保持したものを粉砕して仮焼粉を準備した。その後、この仮焼粉62wt%、テトラ-n-ブトキシジルコニウム9wt%、ブタノール29wt%を秤量・混合し、作製したスラリーを水素極基体構造のSOFCセルの両電極上に塗布し、50℃に加温して加水分解反応させて固化した。さらに、無電解メッキのプロセスを適用し、約0.2μmの厚さのAgメッキ層を多孔質層の開気孔内面に形成した。
【0059】
さらに、上述の操作を再度行うことによって、同様の特性を有する多孔質体を積層し、上述のように、多孔質体全体の厚さを約0.5mmまで厚くした。
【0060】
得られた積層構造多孔質材料は、層間の結合、多孔質体の構造とも堅牢で良好なものであった。また、多孔質体の部分は、実施例1で得られたものとほぼ同等の開気孔率、導電性、耐熱性を確認できた。
【0061】
(比較例)
骨格粒子を平均粒径50μmの緻密な球状ジルコニア粒子とした他は、実施例1と同様とした。
【0062】
得られた多孔質体の開気孔率は47vol%で、バルク材料として十分な導電性が得られた。しかしながら、大気中900℃で2時間加熱保持後、室温にて導電性を測定すると、加熱処理前の導電性が失われ、絶縁性を示した。微細構造を観察すると、導電性の皮膜が加熱凝集により途切れた様子が認められ、導電パスを形成していなかった。
【0063】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態では、骨格粒子11の表面に形成すべき凹部を気孔から構成し、凸部を突起状の析出物から構成している。しかしながら、当然にこれら以外の方法を用いることもできる。例えば、機械加工や化学的処理によって凹部や凸部を形成することもできる。
【0065】
また、上記実施形態では、導電層12を有しているため、導電性材料10は静電付着を回避できるようなフィルターの構成材料として用いることもできる。さらに、導電性12を抵抗発熱層として利用することにより、導電性材料10は熱交換器の構成材料として使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 導電性材料
11 骨格粒子
12 導電層
13 連結粒子
21 突起状の析出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部及び凸部の少なくとも一方が形成されるとともに、前記表面の、少なくとも、前記凹部及び凸部の少なくとも一方を含む領域に形成された導電層を有する複数の骨格粒子と、
前記複数の骨格粒子それぞれを、前記導電層が接触するようにして連結する複数の連結粒子とを具え、
前記骨格粒子の、互いに隣接する前記凹部及び凸部の少なくとも一方を含む領域に形成された前記導電層の少なくとも一部が接触していることを特徴とする、導電性材料。
【請求項2】
前記凸部は前記凹部に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の導電性材料。
【請求項3】
前記凹部は、前記骨格粒子中に形成された気孔からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電性材料。
【請求項4】
前記凸部は、前記骨格粒子の前記表面に形成された突起状の析出物からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の導電性材料。
【請求項5】
前記析出物は、第1の酸化物セラミックスを含むことを特徴とする、請求項4に記載の導電性材料。
【請求項6】
前記析出物は、前記第1の酸化物セラミックスの構成材料を含む膜体を形成した後、この膜体に加熱処理を施して形成することを特徴とする、請求項5に記載の導電性材料。
【請求項7】
前記骨格粒子は、第2の酸化物セラミックスからなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の導電性材料。
【請求項8】
前記骨格粒子は、球状の多孔質ポリマーからなるテンプレートに前記第2の酸化物セラミックスの前駆体を含浸、成形した後、加熱状態で保持して前記第2の酸化物セラミックスからなる粒子を析出させた後、この粒子を焼成して製造することを特徴とする、請求項7に記載の導電性材料。
【請求項9】
前記骨格粒子は、前記第2の酸化物セラミックスを含むスラリーを噴霧して造粒粉を得た後、焼成して製造することを特徴とする、請求項7に記載の導電性材料。
【請求項10】
前記導電性材料を含むことを特徴とする、固体酸化物型燃料電池用集電材。
【請求項11】
前記導電性材料を含むことを特徴とする、固体酸化物型水蒸気電解セル用集電材。
【請求項12】
前記導電性材料を含むことを特徴とする、フィルター。
【請求項13】
前記導電性材料を含むことを特徴とする、熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−244816(P2010−244816A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91577(P2009−91577)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】