説明

導電性液状シリコーンゴム組成物

【課題】導電性材料としてカーボンブラックを含有する導電性液状シリコーンゴム組成物において、良好な導電性を付与した上で、液状ゴム組成物としての低粘度を維持することを可能にする。
【解決手段】導電性液状シリコーンゴム組成物は、(A)重合度が100〜2000の範囲のポリオルガノシロキサン100質量部と、(B)アリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基(R基)を有すると共に、R基がアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を側鎖基として有し、かつ重合度が5〜1000の範囲で、R基を有するSiO単位を少なくとも5mol%含有するシリコーンオイル0.5〜30質量部と、(C)カーボンブラック5〜100質量部と、(D)必要量の硬化剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性液状シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁性を示すゴム状物質にカーボンブラックなどの導電性材料を配合した導電性ゴムは従来から種々知られており、ゴム状物質としての特性と導電性とを利用して各種分野で応用されている。一方、電気絶縁性ゴム状物質の一つであるシリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、耐候性などに優れ、電気絶縁性ゴムとして幅広く利用されているが、他のゴム状物質と同様にカーボンブラックなどの導電性材料を添加することで、導電性シリコーンゴムとしても実用化されている。
【0003】
シリコーンゴム組成物に添加する導電性材料としては、例えばカーボンブラックやグラファイト、銀、銅、ニッケルのような各種金属粉末などが挙げられる。これらのうちでも、カーボンブラックは低コストであることに加えて、シリコーンゴムに良好な導電性を付与し得ることから、導電性材料として多用されているが、例えばシリコーンゴムに10Ω・m以下というような高導電性を付与する場合には、比較的多量のカーボンブラックを配合する必要がある。
【0004】
このように、シリコーンゴム組成物に比較的多量のカーボンブラックを配合した場合、シリコーンゴムのベースポリマーとなるポリオルガノシロキサンとカーボンブラックとは本来親和性がないため、均一な混合状態が得られにくいと共に、シリコーンゴム組成物の流動性が低下して成形・加工性などに悪影響を与えるというような問題がある。このような点に対して、例えば特許文献1にはシリコーンベースポリマーとカーボンブラックに加えて、フェニル基含有有機ケイ素化合物を配合した導電性シリコーンゴム組成物が記載されている。
【0005】
上記したフェニル基含有の有機ケイ素化合物は、シリコーンベースポリマーとカーボンブラックとの混合状態の改善などに対しては効果を示すものの、カーボンブラックの配合による導電性シリコーンゴム組成物の粘度上昇は避けられず、この粘度上昇が成形性の低下などを招いている。特に、流し込み成形などに使用する導電性液状シリコーンゴム組成物においては、低粘度を維持することが重要となるが、従来のフェニル基含有有機ケイ素化合物では導電性シリコーンゴム組成物の粘度を低く保つ効果が不十分であるという問題がある。また、混合当初の導電性シリコーンゴム組成物の粘度が多少低くても、保存時などにおける経時的な粘度上昇は避けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−47663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の導電性液状シリコーンゴム組成物は、カーボンブラックのシリコーンベースポリマーに対する分散性が悪いことなどに起因して、粘度上昇が避けられないという問題を有していた。このような問題は従来の有機ケイ素化合物系処理剤を用いた導電性シリコーンゴム組成物でも十分には改善されてはいない。また、たとえ混合当初の粘度が多少低くても、経時的な粘度上昇は避けられないのが現状である。そこで、比較的多量のカーボンブラックを配合して低抵抗を付与した上で、例えば流し込み成形を適用し得る程度の流動性、すなわち低粘度を維持することを可能にした導電性液状シリコーンゴム組成物が求められている。
【0008】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、シリコーンベースポリマーとカーボンブラックとの親和性などをより一層高めることによって、低抵抗と低粘度を両立させた導電性液状シリコーンゴム組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流し込み成形用導電性液状シリコーンゴム組成物は、(A)重合度が100〜2000の範囲であり、かつ側鎖基の90mol%以上がメチル基である付加反応型ポリオルガノシロキサン100質量部と、(B)
【化1】

(式中、Rは同一または異種の非置換または置換の一価炭化水素基を、Rはアリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基を、Rは非置換または置換の一価炭化水素基であって、Rがアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を示し、nおよびmはn+mが5〜1000の範囲の数である)で表され、かつ前記R基を含むSiO単位を少なくとも5mol%含有するシリコーンオイル0.5〜30質量部と、(C)比表面積が500m/g以下で、かつDBP吸油量が200ml/100g以下であるカーボンブラック5〜100質量部と、(D)必要量の硬化剤とを含有することを特徴としている。
また、本発明の流し込み成形用導電性液状シリコーンゴム組成物において、硬化剤としては、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金系触媒との組み合わせである。
【0010】
本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物においては、(A)成分のポリオルガノシロキサン、(C)成分のカーボンブラック、および(D)成分の硬化剤に加えて、(B)成分として上記(1)式で表され、かつR基を含むSiO単位を少なくとも5mol%含有するシリコーンオイルを配合している。(B)成分のシリコーンオイルは、シリコーンベースポリマーとカーボンブラックとの親和性を向上させ、さらにこの親和性の向上力の持続性に優れることから、導電性液状シリコーンゴム組成物の流動性、すなわち液状組成物としての特性を発揮し得る低粘度を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によればカーボンブラックで良好な導電性を付与した上で、例えば液状体としての流動性を損なわない低粘度を長期間にわたって維持することが可能な導電性液状シリコーンゴム組成物を安定して提供することができる。これは導電性液状シリコーンゴム組成物の成形性、信頼性、保存性、取扱い性、実用性などの向上に大きく寄与するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物は、(A)成分のポリオルガノシロキサン(シリコーンベースポリマー)、(B)成分のシリコーンオイル(シリコーン系処理剤)、(C)成分の導電性カーボンブラック、および(D)成分の硬化剤を必須成分として含有するものである。
【0013】
(A)成分のポリオルガノシロキサンは、本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物のベースポリマーとなるものであって、100〜2000の範囲の重合度を有している。シリコーンベースポリマーの重合度が2000を超えると粘度が上昇し、液状シリコーンゴム組成物に求められる流動性、すなわち低粘度を得ることができない。一方、シリコーンベースポリマーの重合度が100未満の場合には、導電性液状シリコーンゴム組成物を硬化させた際の特性が低下し、シリコーン硬化物本来の物理的特性などを得ることができない。(A)成分のシリコーンベースポリマーの重合度は200〜1000の範囲であることがより好ましい。
【0014】
上記した(A)成分のポリオルガノシロキサンは、その主骨格を成すケイ素原子に結合する側鎖基の90mol%以上がメチル基とされている。このようなポリオルガノシロキサンは、液状体としての低粘度の維持に寄与するものである。なお、メチル基以外の側鎖基には各種の非置換または置換の一価炭化水素基を適用することができる。また、ポリオルガノシロキサンの分子鎖末端は一般的なシリコーンベースポリマーと同様に、加水分解性基や水酸基などで封鎖した構造、また適用する硬化反応によってはビニル基などのアルケニル基で封鎖した構造などが適用される。アルケニル基は側鎖基の一部として用いてもよい。
【0015】
(B)成分のシリコーンオイルは、(A)成分のシリコーンベースポリマーと(C)成分のカーボンブラックとの親和性を高める処理剤であって、
【化2】

(式中、Rは同一または異種の非置換または置換の一価炭化水素基を、Rはアリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基を、Rは非置換または置換の一価炭化水素基であって、Rがアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を示し、nおよびmはn+mが5〜1000の範囲の数である)
で実質的に表される組成を有し、かつ側鎖基としてR基を有するSiO単位を5mol%以上含有するものである。
【0016】
(1)式中のR基としては、メチル基、エチル基、プロピル基のようなアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基などの非置換の一価炭化水素基、およびこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子やシアノ基などで置換した、クロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基などの置換一価炭化水素基が用いられる。これら側鎖基は同種または異種のいずれであってもよい。
【0017】
基は(B)成分を特徴付けるものであって、フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基、およびベンジル基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基、γ−フェニルプロピル基、スチリル基、α−メチルスチリル基、γ−フェニルプロペニル基などのアラルキル基から選ばれる一価基である。これらのうちでも、上述した親和性の向上効果やその持続性などの点からアラルキル基を適用することが好ましい。
【0018】
基には、R基と同様な非置換または置換の一価炭化水素基を適用することできるが、R基がアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を使用する。炭素数が2以上のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。これのうちでも、特に炭素数が6以上のアルキル基を使用することが好ましい。ただし、炭素数が多すぎるとシリコーンオイルの合成が困難になってコストが増加すると共に、取扱い性なども低下することから、炭素数が20以下のアルキル基が好ましい。
【0019】
(B)成分のシリコーンオイルには、上記した(1)式におけるn+mが5〜1000の範囲のオルガノシロキサンを適用する。シリコーンオイルの重合度を示すn+mの値が5未満の場合には分子が小さすぎて、カーボンブラックのシリコーンベースポリマーに対する親和性を十分に高めることができない。一方、n+mの値が1000を超える場合には分子が大きくなりすぎて、カーボンブラックに対する処理剤としての特性が低下する。n+mの値は10〜500の範囲とすることがより好ましい。
【0020】
そして、(B)成分としてのシリコーンオイルは、上述したようなR基を有するSiO単位を少なくとも5mol%以上の範囲で含有するものとする。R基を有するSiO単位の含有量が5mol%未満であると、(A)成分のシリコーンベースポリマーと(C)成分のカーボンブラックとの親和性が十分に高められず、導電性液状シリコーンゴム組成物の低粘度を維持することができない。R基を有するSiO単位は親和性の向上効果やその持続性などの点から、(B)成分としてのシリコーンオイル中に10mol%以上の範囲で含有させることがより好ましい。ただし、その含有量があまり多すぎるとそれ以上効果が得られないだけでなく、工業的に合成が難しくなってコストの上昇を招くことから、R基を有するSiO単位の含有量は80mol%未満とすることが好ましい。
【0021】
上述したように、(B)成分のシリコーンオイルは(C)成分のカーボンブラックと(A)成分のシリコーンベースポリマーとの親和性を高める成分である。
このような(B)成分のシリコーンオイルを、カーボンブラックを含む導電性液状シリコーンゴム組成物に配合することによって、均一な混合状態を安定的に得ることができる。さらに、(B)成分のシリコーンオイルはカーボンブラックの表面改質効果が高く、さらにその持続性に優れることから、導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度を低く維持することができると共に、保存時などにおける導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度上昇を抑制することが可能となる。
【0022】
ここで、(B)成分のシリコーンオイルによるカーボンブラックの表面改質効果は、主としてR基(アリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基)に基づいて得られるものである。ただし、R基がアリール基の場合には、導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度維持効果や粘度上昇の抑制効果が不十分であることから、R基として炭素数が2以上のアルキル基、特に炭素数が6以上のアルキル基を適用する。これによって、上述したように導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度を低く維持することができると共に。経時的な粘度上昇を再現性よく抑制することが可能となる。なお、R基としてアラルキル基を適用する場合、R基にはメチル基を始めとするR基と同様な非置換または置換の一価炭化水素基を使用することができる。
【0023】
このような(B)成分のシリコーンオイルの配合量は、(A)成分のシリコーンベースポリマー100質量部に対して0.5〜30質量部の範囲とする。(B)成分のシリコーンオイルの配合量が0.5質量部未満であると、上述した親和性の向上効果を十分に得ることができない。一方、(B)成分の配合量が30質量部を超えると、導電性液状シリコーンゴム組成物を硬化させた硬化物の特性(例えば機械的特性など)が低下するおそれがある。(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して1〜10質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0024】
(C)成分のカーボンブラックは、導電性液状シリコーンゴム組成物およびそれを硬化させたゴム状弾性体に導電性を付与する成分である。この(C)成分には比表面積が500m/g以下で、かつDBP吸油量が200ml/100g以下であるカーボンブラックを適用する。カーボンブラックの比表面積が500m/gを超えると、シリコーンベースポリマーへの分散性が低下し、導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度上昇などを招くことになる。(C)成分としてのカーボンブラックの比表面積は300m/g以下であることがより好ましい。
【0025】
また、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量はJIS K 8221(ゴム用カーボンブラック試験方法)に規定されている特性値であり、カーボンストラクチャーの発達の程度を示す指標である。このようなDBP吸油量が200ml/100gを超えると、シリコーンベースポリマーへの分散性が低下する。(C)成分としてのカーボンブラックのDBP吸油量は150ml/100g以下であることがより好ましい。すなわち、比表面積が500m/g以下で、かつDBP吸油量が200ml/100g以下のカーボンブラックは、シリコーンベースポリマーへの分散性に優れるため、導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度上昇の抑制に寄与する。このようなカーボンブラックの具体例としては、アセチレンブラックが挙げられる。
【0026】
上記した(C)成分のカーボンブラックの配合量は、(A)成分のポリオルガノシロキサン100質量部に対して5〜100質量部の範囲とする。カーボンブラックの配合量が5質量部未満であると、十分な導電性を得ることができないおそれがある。一方、100質量部を超えると(B)成分のシリコーンオイルを配合した場合においても導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度が上昇しやすくなったり、また得られるシリコーンゴムの機械的特性などが劣化するおそれがある。カーボンブラックの配合量は10〜80質量部の範囲とすることが、特に導電性と機械的特性との兼合いからより好ましい。
【0027】
(D)成分の硬化剤は、通常シリコーンゴム組成物の硬化に適用されるラジカル反応や付加反応などを利用して、(A)成分を加硫、硬化させることが可能な各種公知の硬化剤から適宜選択して用いることができ、特に硬化機構に限定されるものではない。このような硬化剤としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサンなどの有機過酸化物が挙げられる。また、付加反応型の硬化剤としては、1分子中に少なくともケイ素原子に結合した水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)と白金系触媒との組合せなどが例示される。さらに、縮合反応型の硬化剤としては、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランやトリメトキシシランなどの架橋剤と、錫化合物や有機チタネートなどの触媒との組合せなどが挙げられる。
【0028】
上述した硬化剤は、通常のシリコーンゴム組成物の場合と同様に、必要量を配合すればよい。具体的には、例えば有機過酸化物の場合には(A)成分のポリオルガノシロキサン100質量部に対して0.05〜15質量部程度配合することが好ましい。付加反応型硬化剤の場合には、白金系触媒を(A)成分のポリオルガノシロキサン100質量部に対して白金元素量で1〜1000ppmの範囲となる量、また架橋剤を(A)成分中のアルケニル基1個に対して架橋剤中のケイ基原子に結合した水素原子が0.5〜4.0個となるような量を配合することが好ましい。縮合反応型硬化剤の場合には、(A)成分のポリオルガノシロキサン100質量部に対して架橋剤を0.5〜20質量部、また触媒を0.01〜5質量部程度配合することが好ましい。
【0029】
なお、本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物には、必要に応じて上記(A)〜(D)成分以外の成分、すなわち通常シリコーンゴム組成物に用いられているシリカ系充填剤、石英粉末、溶融石英粉末、けいそう土、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどを添加してもよい。さらに、可塑剤、耐熱性向上剤、難燃性付与剤、加工助剤、分散剤、着色剤、溶剤などを配合することも可能である。
【0030】
本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物は、(A)〜(E)の各成分と必要に応じて配合される付加的成分を、常法により均質に分散・混合することにより得ることができる。例えば、(A)成分のシリコーンベースポリマーと(B)成分のシリコーンオイルとを万能混練機やニーダーなどに仕込み、次いで(C)成分の導電性カーボンブラックを添加、混合して均一に分散、混合させる。この際、導電性カーボンブラックは数回に分けて添加、混合を繰り返すようにしてもよい。また、これらの混合物を三本ロールに通したり、加熱混練することなども許容される。こうして得られた混合物に(D)成分の硬化剤を添加し、均一に混合することによって、本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物が得られる。
【0031】
本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度は、使用用途などに応じて設定されるものであるが、液状の導電性シリコーンゴム組成物としての取扱い性や実用性などを考慮すると、その粘度は1000P以下であることが好ましい。また、導電性液状シリコーンゴム組成物を硬化させた後の特性などを考慮して、導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度は10P以上とすることが好ましい。本発明は導電性材料としてカーボンブラックを配合した上で、上記したような液状体としての特性を発揮し得る粘度を維持することを可能にしたものである。
【0032】
なお、本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物の使用用途は特に限定されるものではないが、導電性シリコーンゴム組成物本来の各種特性と液状体としての性質を利用して、導電性が求められるシリコーンゴムの流し込み成形用材料などに好適に用いられるものである。流し込み成形用材料に適用される導電性液状シリコーンゴム組成物には、流し込み成形を適用し得る程度の流動性が求められることから、上述した10〜1000P程度の粘度を有していることが好ましい。ただし、本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物はその粘度に限定されるものではなく、具体的な粘度は使用目的に応じて適宜設定することができる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明の具体的な実施例とその評価結果について述べる。
【0034】
実施例1
まず、分子鎖末端が水酸基で閉塞され、重合度が760、粘度が80PのポリジメチルシロキサンベースポリマーAと、α−メチルスチリル基を50mol%含み、残りの基がメチル基であり、かつ重合度が60のシリコーンオイルAと、カーボンブラックとして比表面積が28m/g、DBP吸油量が130ml/100gのアセチレンブラック(デンカブラックNC−75(商品名、電気化学工業社製))とを用意した。
【0035】
上述したシロキサンベースポリマーA100質量部に対して、シリコーンオイルAを5質量部加え、これを常温で10分間均一に混合した後、アセチレンブラック20質量部を万能混合機に仕込み、常温で1時間均一に混練した。その後、硬化剤としてメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン15質量部およびジブチル錫ジラウレート0.05質量部を添加し、均一に混合して導電性液状シリコーンゴム組成物を得た。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0036】
実施例2〜7
上記した実施例1で用いた各成分に加えて、分子鎖末端がビニル基で閉塞され、重合度が810、粘度が100PのポリジメチルシロキサンベースポリマーBと、フェニル基を30mol%、ヘキシル基を30mol%含み、残りの基がメチル基であり、かつ重合度が35のシリコーンオイルBと、カーボンブラックとして比表面積が29m/g、DBP吸油量が130ml/100gの#3030B(商品名、三菱化学社製)とを用意した。
【0037】
上述した各成分を表1に示す配合比で混合する以外は、実施例1と同様にして、それぞれ導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。これら導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。なお、実施例6、7はポリジメチルシロキサンベースポリマーBを適用し、かつ硬化剤としてメチルハイドロジェンポリシロキサンと硬化触媒として塩化白金酸とを配合したものである。
【0038】
比較例1
(B)成分のシリコーンオイルを用いない以外は、実施例1と同様にして導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0039】
比較例2
カーボンブラックとして比表面積が1270m/g、DBP吸油量が495ml/100gのファーネスブラック(ケッチェンブラックEC−600JD(商品名、ケッチェンブラックインターナショナル社製))を10質量部の配合比で用いる以外は、実施例1と同様にして導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0040】
比較例3
(B)成分としてのシリコーンオイルAの配合量を本発明の範囲外(シリコーンベースポリマー100質量部に対して0.2質量部)とする以外は、実施例1と同様にして導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0041】
比較例4
(B)成分としてのシリコーンオイルに代えて、フェニル基を30mol%含み、残りの基がメチル基であり、かつ重合度が35のシリコーンオイルC(本発明の(B)成分には該当しないシリコーンオイル)を用いる以外は、実施例1と同様にして導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0042】
比較例5
(B)成分としてのシリコーンオイルに代えて、α−メチルスチリル基を3mol%含み、残りの基がメチル基であり、かつ重合度が65のシリコーンオイルD(本発明の(B)成分には該当しないシリコーンオイル)を用いる以外は、実施例1と同様にして導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0043】
比較例6
(B)成分のシリコーンオイルを用いない以外は、実施例6と同様にして導電性液状シリコーンゴム組成物を作製した。この導電性液状シリコーンゴム組成物を後述する特性評価に供した。
【0044】
上述した実施例1〜7および比較例1〜6の各導電性液状シリコーンゴム組成物の特性を以下のようにして評価した。まず、各導電性液状シリコーンゴム組成物の作製当初の粘度(初期粘度)を測定した。次いで、70℃×5日間の条件で促進試験を実施した後に、各導電性液状シリコーンゴム組成物の粘度を測定した。また、各導電性液状シリコーンゴム組成物を、縮合硬化型組成物については23℃,50%RH×7日間、付加硬化型組成物については150℃×1時間の条件で硬化させ、各シリコーンゴムの体積抵抗率を測定した。なお、体積抵抗率の測定に関しては、作製当初の組成物と促進試験後の組成物を用いてシリコーンゴムをそれぞれ作製し、これら各シリコーンゴムの体積抵抗率を測定した。これらの測定結果を表1に併せて示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、実施例1〜7による導電性液状シリコーンゴム組成物はいずれも初期粘度が低いことに加えて、長期間放置後においても粘度上昇が極めて少ないことが分かる。このように、本発明の導電性液状シリコーンゴム組成物は低抵抗と低粘度を両立させたものであり、さらに液状体としての保存安定性などに優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合度が100〜2000の範囲であり、かつ側鎖基の90mol%以上がメチル基である付加反応型ポリオルガノシロキサン100質量部と、
(B)
【化3】

(式中、Rは同一または異種の非置換または置換の一価炭化水素基を、Rはアリール基およびアラルキル基から選ばれる一価基を、Rは非置換または置換の一価炭化水素基であって、Rがアリール基の場合には炭素数が2以上のアルキル基を示し、nおよびmはn+mが5〜1000の範囲の数である)
で表され、かつ前記R基を含むSiO単位を少なくとも5mol%含有するシリコーンオイル0.5〜30質量部と、
(C)比表面積が500m/g以下で、かつDBP吸油量が200ml/100g以下であるカーボンブラック5〜100質量部と、
(D)必要量の硬化剤と、
を含有することを特徴とする流し込み成形用導電性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記硬化剤がオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金系触媒との組み合わせである
ことを特徴とする請求項1記載の流し込み成形用導電性液状シリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2010−43282(P2010−43282A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255904(P2009−255904)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2003−176021(P2003−176021)の分割
【原出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】