説明

導電性炭化ケイ素セラミックス及びその製造方法

【目的】炭化ケイ素セラミックス中に分散溶液を用い気相法炭素繊維を高分散させることにより、従来と比して製造工程を簡略化し、破壊靭性、強度に優れさらに導電性を付与させたセラミックス複合材料を提供する。
【構成】本発明では、上記目的を達成するため、混合機もしくは粉砕機を使用し、特定の分散溶媒中で、セラミックス、炭素繊維、及び焼結助剤を混合し、炭素繊維をセラミックス中に均一に分散させ、脱有機処理を行った後焼結させることにより破壊靭性及び強度に優れた導電性セラミックス複合材料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス複合材料用組成物に関し、特に気相法炭素繊維を炭化ケイ素セラミックス中に高分散させることにより、破壊靭性及び強度に優れ、さらに導電性を付与した炭化ケイ素セラミックス複合材料用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素は結晶構造の違いにより、立方晶系のβ型と、六方晶系(三方晶系、菱面体晶系)のα型とがある。α型は高温域(1800℃〜2600℃)で安定しているといわれている。一方β型のSiCは約1600℃までが安定域で、より高温域では不可逆的にα型に転位することが認められている。このため、セラミックスの中でも炭化ケイ素は広い温度範囲にわたって耐摩耗性、耐熱衝撃抵抗性、耐酸化性等の優れた特性を持っており、ファインセラミックス分野への利用が期待されている。これら特性を利用し、航空宇宙、エネルギー、環境、産業機械、素材などの分野における高温機器、原動機などの部品材料への適用が期待されている。
【0003】
しかし、この様なファインセラミックス分野への利用の拡大が期待されている炭化ケイ素であっても、金属の中でも比較的脆い鋳鉄と比較しても耐衝撃性が低く、静的な強度の改善が図れても衝撃応力には脆くて破壊靭性を改善することは出来ていない。この点が部品材料としての大きな制約になっており、セラミックスの適応範囲を狭める要因となっている。
【0004】
そこで、この破壊靭性を改善するためにこれまで様々な研究がなされている。
特開平9−67165号公報(特許文献1)には、炭化ケイ素の結晶粒界にAl−Si−Oの化合物、Zr−Si−Oの化合物、Ln−Si−O(Lnはランタン系列及びアクチニウム系列の元素並びにYを表す)の化合物の少なくとも1種と炭素繊維を含ませることにより、炭化ケイ素セラミックスの破壊靭性を向上させる製造方法が報告されている。この公報でによれば破壊靭性は向上しているが、事前に炭素繊維を特定の形状に織り込む必要があり、また織り込んだ炭素繊維に炭化ケイ素等の化合物を含浸させる必要がある。一般的な含浸方法としては、スラリー含浸法、ポリマー含浸法、気相含浸法があるが、いずれの方法でも、一度の含浸では微小な空孔まで含浸させることが出来ず、含浸工程を何度も繰返し緻密化を図る必要がある。前記公報においてもスラリー含浸法を用いて、加圧含浸により直交組織3次元織物構造体に含浸させており、緻密化のためには含浸工程を繰返さなければならず、また微細加工も困難である。
【0005】
特開平5−85839号公報(特許文献2)には、セラミックスに炭素繊維を添加し導電性セラミックスを得ることが報告されている。この公報では、窒化ケイ素や窒化チタニウムなどのセラミクスに、気相成長炭素繊維を、粉体の混合に常用される混合機を用いて混合した後、成形、焼結させ導電性セラミックスを得ている。この処理で得られるセラミックスは、窒化チタニウムに気相法炭素繊維を20質量%添加し、1.8×10-3Ωcmの成形体が得られている。この結果のように前記公報では元来高導電性セラミックスである窒化チタニウムに気相法炭素繊維を添加しても導電性の顕著な向上がみらない。これは気相法炭素繊維の混合が充分でなく、均一に分散していないことによると類推される。さらに20質量%添加すると流動性が著しく悪化し成形が困難となる。
【0006】
【特許文献1】特開平9−67165号公報
【特許文献2】特開平5−85839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セラミックス中に気相法炭素繊維を少量添加し、分散溶液を用いることにより気相法炭素繊維を容易に高分散させ、セラミックスの問題点である破壊靭性及び強度を向上させ、さらに導電性を付与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高温下において炭素に対して化学的に安定しており、セラミックスの中で高い強度を有するα型炭化ケイ素内に、α型炭化ケイ素よりも高い耐熱温度を有する気相法炭素繊維を一様に分散させ焼結することにより上記課題を解決したものである。炭化ケイ素(SiC)セラミックスに気相法炭素繊維を複合化するこの本発明によりSiCセラミックスの強化が可能となる。
【0009】
1.混合機もしくは粉砕機を用いて、セラミックス、炭素繊維、分散溶液、及び焼結助剤を混合し、炭素繊維をセラミックス中に均一に分散させ、脱有機処理を行った後焼結させて得られるセラミックス複合材料用組成物。
2.セラミックスが、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化チタン、及びホウ化ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記1に記載の複合材料用組成物。
3.セラミックスが、平均粒子径0.1〜5μm、比表面積が10〜25m2/gの粒子である前記1に記載の複合材料用組成物。
4.炭素繊維が、気相法炭素繊維またはカーボンナノチューブである前記1に記載の複合材料用組成物。
5.気相法炭素繊維が、比表面積10〜50m2/g、平均アスペクト比が65〜500、平均繊維径が50〜200nmである前記4に記載の複合材料。
6.分散溶液が、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、ワックス、及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分散溶質を蒸留水で希釈した溶液、またはエタノール、ブチラール、及びフルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記1に記載の複合材料用組成物。
7.焼結助剤が、窒化アルミ、炭化ホウ素、炭素、ホウ素、アルミナ、及び酸化ベリリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記1に記載の複合材料用組成物。
8.焼結助剤が、平均粒子径0.1〜5μm、比表面積2〜6m2/gの粒子である前記1に記載の複合材料用組成物。
9.セラミックスが炭化ケイ素であり、炭素繊維が気相法炭素繊維であり、焼結助剤が窒化アルミニウムであり、分散溶質が寒天である前記1に記載の複合材料用組成物。
10.セラミックスの配合量が、分散溶液の配合量の30〜70質量%である前記1〜9のいずれかに記載の複合材料用組成物。
11.気相法炭素繊維の配合量が、分散溶液の配合量の0.1〜5質量%である前記1〜10のいずれかに記載の複合材料用組成物。
12.焼結助剤の配合量が、分散溶液の配合量の0.1〜15質量%である前記1〜11のいずれかに記載の複合材料用組成物。
13.前記1〜12のいずれかに記載の複合材料組成物からなる成形体。
14.混合機もしくは粉砕機を用いてセラミックス、炭素繊維、分散溶液、及び焼結助剤を混合し、炭素繊維をセラミックス中に均一に分散させ、脱有機処理を行った後焼結させることを特徴とするセラミックス複合材料組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセラミックス複合材料によれば、セラミックスに比べ機械的強度及び電気伝導性を向上させることが出来る。特に、セラミックスの問題点である破壊靭性及び曲げ強度を向上させることが出きる。
【発明の詳細な説明】
【0011】
以下、本発明について詳細に記す。
本発明の一態様は、セラミックス及び炭素繊維を含む複合材料である。別の態様は、炭素繊維を分散溶媒中に分散させスラリーとし、セラミックスと共に焼結させたセラミックス複合材料である。分散溶媒に用いる分散溶質として、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、ワックス、デンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む水溶液、もしくは分散溶液として、エタノール、ブチラール、エタノール系解膠剤、フルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いればよい。
本発明により製造されるセラミックス複合材料は、例えば、ガスタービン用の翼、原子力プラント用耐摩耗部材、核融合炉用プラズマ対向部材の一部または全体に用いることが出来、高機械強度、高電気伝導性を要求される分野において幅広く応用することが可能である。
【0012】
本発明で用いるセラミックスは、焼結時の2000℃を超える高温下において炭素に対して化学的に安定であり、セラミックスそのものが高い強度を有する必要がある。例えば炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウムが挙げられる。さらに、2830℃までは炭素と反応せずに共存が可能であるα型炭化ケイ素を母材とすることが好ましい。
【0013】
本発明で用いる炭化ケイ素は、平均粒子径は0.01μm〜20μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜10μm、さらに好ましくは0.1〜5μmである。平均粒子径が0.1μm以上であれば、粉末の取扱いが簡便になり、5μm以下であれば、焼結時の反応性を高めることが可能である。また、BET比表面積は3〜40m2/gが好ましく、より好ましくは5〜30m2/g、さらに好ましくは10〜25m2/gである。BET比表面積が10m2/g以上であれば、反応性を高めることが出来、25m2/g以下であれば分散溶液との混練時の流動性を損なわない。
【0014】
本発明で用いる炭素繊維は、気相法炭素繊維及びカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種用いれば良い。複合材料とする際、分散溶液中に均一に分散させる観点からは、比表面積の小さい気相法炭素繊維がより好ましい(気相法炭素繊維の比表面積10〜50m2/g、カーボンナノチューブの比表面積200〜300m2/g)。
【0015】
本発明で用いる気相法炭素繊維の平均繊維径は50〜500nmであり、平均アスペクト比は15〜1000が好ましく、より好ましくは30〜800、さらに好ましくは65〜500である。気相法炭素繊維のアスペクト比が65以上であれば、繊維特性が発現し易く、アスペクト比が500以下であればハンドリング性が良好である。
【0016】
気相法炭素繊維の製造方法は、原料としてベンゼン等の有機化合物を、触媒としてフェロセン等の有機遷移金属化合物とともに、キャリアーガスを用いて高温の反応炉に導入し、気相熱分解することにより熱分解炭素繊維を製造する。例えば、この製造方法としては、基板上に熱分解炭素繊維を生成させる方法(特開昭60−27700号公報)、浮遊状態で熱分解炭素繊維を生成させる方法(特開昭60−54998号公報)、あるいは反応炉壁に熱分解炭素繊維を成長させる方法(特許2778434号公報)等があり、本発明で使用する炭素繊維はこれらのいずれの方法により製造したものでもよい。
【0017】
このようにして製造された熱分解炭素繊維は、このまま原料としてもかまわないが、この段階では、その表面に原料の有機化合物等に由来する熱分解物が付着していることやあるいは炭素繊維を形成する繊維構造の結晶性が不十分である。従ってそれら熱分解物などの不純物を除いたり、炭素繊維としての結晶構造を向上させるために、通常は不活性ガス雰囲気下で熱処理したものを原料としてもよい。原料に由来する熱分解物等の不純物を処理するためには、約800〜1500℃、アルゴン等の不活性ガス中で熱処理を行う。また、炭素構造の結晶性を向上させるためには、約2000〜3000℃でアルゴン等の不活性ガス中で熱処理を行う。この様な炭素繊維はVGCF(Vapor Grown Carbon Fiber:昭和電工(株)製)として市販されている。
【0018】
本発明で用いる分散溶液は、分散溶質として、寒天、ゼラチン、デンプン、ワックス、及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を蒸留水で希釈した分散溶液、もしくは、分散溶液としてエタノール、メタノール、フリフリルアルコール、ブチルアルコール及びトリクロロエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用すると良い。特に好ましくは、分散溶液中にフィラーを添加して24時間静置してもフィラー及び分散溶液が分離することがない、寒天、ゼラチン、ブチルアルコールが適している。
【0019】
セラミックス、気相法炭素繊維、分散溶液、及び焼結助剤の混合方法は特に限定されないが、ヘンシェルミキサー、ボールミル、振動ミル等を用いて剪断力をかけて混合することが好ましい。剪断力をかけて混合することにより、セラミックス中への均一な高分散が可能となる。
【実施例】
【0020】
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
実施例及び比較例では、α型炭化ケイ素は平均粒子径0.47μm(昭和電工(株)製、ウルトラデンシックDU A−1)のものを用いた。窒化アルミは平均粒子径0.6μmのもの((株)クヤマ、シェイパルグレードF)を使用した。気相法炭素繊維は、平均繊維径150nm、平均アスペクト比60程度(昭和電工(株)VGCF)のものを使用した。
【0021】
実施例及び比較例で実施した各種物性の測定方法は以下の通りである。
曲げ強度:
JISR 1601の規格に沿って3点曲げ強さについて測定を行った。試験片を一定距離(17.9mm)に配置された2支点上に置き、支点間の中央の1点に荷重を加えて折れたときの最大曲げ応力から曲げ強度を求めた。試験片は幅4(mm)×厚さ3(mm)、試験機のクロスヘッドの送り速度を規定値である0.5(mm/min)として荷重を加えていき、試験片が破壊するまでの最大荷重を測定し曲げ強度を求めた。
【0022】
破壊靭性:
SENB(Single Edge Notched Beam)法を用いた。試験片の(幅4(mm)×厚さ3(mm))の中央に幅0.15mmのダイヤモンドカッターで溝を削り、3点曲げ試験をおこなった。この測定では支持具の下部支点間距離は15.05mmとした。また、その他の条件は曲げ試験と同様として、試験片が破壊するまでの最大荷重を測定した。この測定値から破壊靭性を求めた。
電気伝導度:
端子間距離を17.13mmとし4端子法を用いて評価した。
【0023】
実施例1:
α型炭化ケイ素粉58.16g及び、窒化アルミニウム1.84g(計96.77質量%)に気相法炭素繊維を2g(3.23質量%)及び、分散溶液として濃度1質量%の寒天水溶液100gを混合した。さらに、ナイロンボールを入れてボールミルにて24時間混合処理を行いスラリーを作成した。
得られたスラリーをサランラップのシートを敷いておいたステンレス製バットに流し、数日間空気中で自然乾燥させた。乾燥させたスラリーを磁性容器にいれ、350℃まで4時間で昇温させ1時間保持し、有機物を除去した。
【0024】
有機物を除去したスラリーを1mm程度の顆粒に粉砕し、ホットプレス電気炉を用いて、高純度Ar雰囲気中(1.2atm)、1950℃で1時間、ホットプレス圧28.2MPa(全圧4ton)の条件でホットプレス焼結を実施した。
以上の工程により作成した焼結体をダイヤモンドカッターにて切りだし、試験片を作成し、曲げ強度、破壊靭性、電気伝導度を測定した。
【0025】
実施例2:
α型炭化ケイ素粉58.16g及び、窒化アルミニウム1.84g(計96.77質量%)に気相法炭素繊維を2g(3.23質量%)及び分散溶液として濃度5質量%のワックス((株)中京油脂製、セルナE−503)エタノール溶液を100g添加した。さらに、ナイロンボールを入れてボールミルにて24時間混合処理を行いスラリーを作成した。
得られたスラリーをサランラップのシートを敷いておいたステンレス製バットに流し、数日間空気中で自然乾燥させた。乾燥させたスラリーを磁性容器にいれ、350℃まで4時間で昇温させ1時間保持し、有機物を除去した。
【0026】
有機物を除去したスラリーを1mm程度の顆粒に粉砕し、ホットプレス電気炉を用いて、高純度Ar雰囲気中(1.2atm)、1950℃で1時間、ホットプレス圧28.2MPa(全圧4ton)の条件でホットプレス焼結を実施した。
以上の工程により作成した焼結体をダイヤモンドカッターにて切りだし、試験片を作成し、曲げ強度、破壊靭性、電気伝導度を測定した。評価結果を表1に記す。
【0027】
実施例3:
α型炭化ケイ素粉58.16g及び窒化アルミニウム1.84g(計96.77質量%)に気相法炭素繊維を2g(3.23質量%)及び分散溶液として濃度1質量%のゼラチン水溶液を100g添加した。さらに、ナイロンボールを入れてボールミルにて24時間混合処理を行いスラリーを作成した。
得られたスラリーをサランラップのシートを敷いておいたステンレス製バットに流し、数日間空気中で自然乾燥させた。乾燥させたスラリーを磁性容器にいれ、350℃まで4時間で昇温させ1時間保持し、有機物を除去した。
【0028】
有機物を除去したスラリーを1mm程度の顆粒に粉砕し、ホットプレス電気炉を用いて、高純度Ar雰囲気中(1.2atm)、1950℃で1時間、ホットプレス圧28.2MPa(全圧4ton)の条件でホットプレス焼結を実施した。
以上の工程により作成した焼結体をダイヤモンドカッターにて切りだし、試験片を作成し、曲げ強度、破壊靭性、電気伝導度を測定した。評価結果を表1に記す。
【0029】
実施例4:
α型炭化ケイ素粉58.16g及び、窒化アルミニウム1.84g(計96.77質量%)に気相法炭素繊維を2g(3.23質量%)及び、分散溶液としてエタノールと濃度20質量%のフルフリルアルコール混合液を100g添加した。さらに、ナイロンボールを入れてボールミルにて24時間混合処理を行いスラリーを作成した。
得られたスラリーをサランラップのシートを敷いておいたステンレス製バットに流し、数日間空気中で自然乾燥させた。乾燥させたスラリーを磁性容器にいれ、350℃まで4時間で昇温させ1時間保持し、有機物を除去した。
【0030】
有機物を除去したスラリーを1mm程度の顆粒に粉砕し、ホットプレス電気炉を用いて、高純度Ar雰囲気中(1.2atm)、1950℃で1時間、ホットプレス圧28.2MPa(全圧4ton)の条件でホットプレス焼結を実施した。
以上の工程により作成した焼結体をダイヤモンドカッターにて切りだし、試験片を作成し、曲げ強度、破壊靭性、電気伝導度を測定した。評価結果を表1に記す。
【0031】
実施例5:
α型炭化ケイ素粉58.16g及び、窒化アルミニウム1.84g(計96.77質量%)に気相法炭素繊維を2g(3.23質量%)及び溶媒として蒸留水を100g加え、ナイロンボールを入れてボールミルにて24時間混合処理を行いスラリーを作成した。
得られたスラリーをサランラップのシートを敷いておいたステンレス製バットに流し、数日間空気中で自然乾燥させた。乾燥させたスラリーを磁性容器にいれ、350℃まで4時間で昇温させ1時間保持し、脱有機物処理と同様な処理をほどこした。
【0032】
得られたスラリーを1mm程度の顆粒に粉砕し、ホットプレス電気炉を用いて、高純度Ar雰囲気中(1.2atm)、1950℃で1時間、ホットプレス圧28.2MPa(全圧4ton)の条件でホットプレス焼結を実施した。
以上の工程により作成した焼結体をダイヤモンドカッターにて切りだし、試験片を作成し、曲げ強度、破壊靭性、電気伝導度を測定した。評価結果を表1に記す。
【0033】
比較例1:
α型炭化ケイ素粉58.16g及び、窒化アルミニウム1.84g(計96.77質量%)及び、分散溶液として濃度1質量%の寒天水溶液100gを混合した。さらに、ナイロンボールを入れてボールミルにて24時間混合処理を行いスラリーを作成した。
得られたスラリーをサランラップのシートを敷いておいたステンレス製バットに流し、数日間空気中で自然乾燥させた。乾燥させたスラリーを磁性容器にいれ、350℃まで4時間で昇温させ1時間保持し、有機物を除去した。
【0034】
有機物を除去したスラリーを1mm程度の顆粒に粉砕し、ホットプレス電気炉を用いて、高純度Ar雰囲気中(1.2atm)、1950℃で1時間、ホットプレス圧28.2MPa(全圧4ton)の条件でホットプレス焼結を実施した。
以上の工程により作成した焼結体をダイヤモンドカッターにて切りだし、試験片を作成し、曲げ強度、破壊靭性、電気伝導度を測定した。評価結果を表1に記す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、VGCFを複合化した系ではいずれも少量で導電性が付与されているが、その中でも分散溶液として寒天を使用することにより導電性が大幅に向上させることが可能である。さらに分散溶液として寒天を使用したものは、曲げ強度及び破壊靭性においても極めて良好な値を示している。
このことより、分散溶液として寒天を使用することにより、セラミックスの欠点である破壊靭性を改善することができ、さらに曲げ強度も向上させ高導電性も付与することが出来る観点から、本発明は工業的にも極めて効果が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合機もしくは粉砕機を用いて、セラミックス、炭素繊維、分散溶液、及び焼結助剤を混合し、炭素繊維をセラミックス中に均一に分散させ、脱有機処理を行った後焼結させて得られるセラミックス複合材料用組成物。
【請求項2】
セラミックスが、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化チタン、及びホウ化ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項3】
セラミックスが、平均粒子径0.1〜5μm、比表面積が10〜25m2/gの粒子である請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項4】
炭素繊維が、気相法炭素繊維またはカーボンナノチューブである請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項5】
気相法炭素繊維が、比表面積10〜50m2/g、平均アスペクト比が65〜500、平均繊維径が50〜200nmである請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
分散溶液が、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、ワックス、及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の分散溶質を蒸留水で希釈した溶液、またはエタノール、ブチラール、及びフルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項7】
焼結助剤が、窒化アルミ、炭化ホウ素、炭素、ホウ素、アルミナ、及び酸化ベリリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項8】
焼結助剤が、平均粒子径0.1〜5μm、比表面積2〜6m2/gの粒子である請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項9】
セラミックスが炭化ケイ素であり、炭素繊維が気相法炭素繊維であり、焼結助剤が窒化アルミニウムであり、分散溶質が寒天である請求項1に記載の複合材料用組成物。
【請求項10】
セラミックスの配合量が、分散溶液の配合量の30〜70質量%である請求項1〜9のいずれかに記載の複合材料用組成物。
【請求項11】
気相法炭素繊維の配合量が、分散溶液の配合量の0.1〜5質量%である請求項1〜10のいずれかに記載の複合材料用組成物。
【請求項12】
焼結助剤の配合量が、分散溶液の配合量の0.1〜15質量%である請求項1〜11のいずれかに記載の複合材料用組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の複合材料組成物からなる成形体。
【請求項14】
混合機もしくは粉砕機を用いてセラミックス、炭素繊維、分散溶液、及び焼結助剤を混合し、炭素繊維をセラミックス中に均一に分散させ、脱有機処理を行った後焼結させることを特徴とするセラミックス複合材料組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−240957(P2006−240957A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62405(P2005−62405)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】