説明

導電性粘着テープ

【課題】耐腐食性に優れ、長期にわたって安定した電気伝導性を確保できる導電性粘着テープを提供する。
【解決手段】アクリル系粘着剤層を少なくとも一層有する粘着テープであって、体積抵抗値が1×101Ωであり、イオンクロマトグラフ法で測定される該粘着テープより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量が、前記アクリル系粘着剤層の単位面積あたり20ng/cm2以下である導電性粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粘着テープに関する。より詳しくは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途等に使用するための導電性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着テープは電気伝導性(特に、厚み方向の電気伝導性)を有し、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電磁波シールド用途等に利用されている。このような導電性粘着テープとしては、従来、例えば、金属箔と該金属箔の片面に設けた粘着剤層(感圧性接着剤層)とからなり、前記金属箔の粘着剤層被覆側には前記粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を持つ導通部が設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献1〜3参照)や、ニッケル粉などの導電性フィラーを粘着性物質中に分散させた導電性粘着剤からなる粘着剤層が金属箔上に設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献4〜5参照)などが知られている。
【0003】
上記導電性粘着テープは、電気的導通を目的とする場合、電子機器等において金属製の被着体に対して直接貼り付けて用いることが多い。かかる場合、被着体の導電性粘着テープ貼着部分が徐々に腐食したり、さらには、導電性粘着テープが有する導電性基材(金属箔)が腐食してしまうことがあった。このような金属製の被着体や金属箔の腐食が進行すると、電気抵抗(導電性粘着テープの粘着剤層と、被着体や金属箔との界面抵抗)が上昇し、安定した電気伝導性(導電性)が確保できないという問題が生じていた。
【0004】
従って、上記のような導電性粘着テープにおいて、金属(特に、金属製の被着体)に対する耐腐食性(以下、単に「耐腐食性」と称する場合がある)を満足する導電性粘着テープは得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−185714号公報
【特許文献2】特開平10−292155号公報
【特許文献3】特開平11−302615号公報
【特許文献4】特開2004−263030号公報
【特許文献5】特開2005−277145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐腐食性に優れ、安定した電気伝導性を確保できる導電性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、粘着テープの体積抵抗値を特定範囲に制御し、なおかつ、該粘着テープから煮沸抽出した際に抽出されるアクリル酸及びメタクリル酸イオンの合計量、即ち、アクリル系粘着剤層中に含まれ水分で遊離してくるアクリル酸及びメタクリル酸イオン成分を一定量以下に制御することによって、耐腐食性に優れた導電性粘着テープが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、アクリル系粘着剤層を少なくとも一層有する粘着テープであって、体積抵抗値が1×101Ω以下であり、イオンクロマトグラフ法で測定される、該粘着テープより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量が、前記アクリル系粘着剤層の単位面積あたり20ng/cm2以下である導電性粘着テープを提供する。
【0009】
さらに、前記導電性粘着テープが、金属箔の片面側に前記アクリル系粘着剤層を有し、該金属箔に該アクリル系粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を有する導通部が形成された前記の導電性粘着テープを提供する。
【0010】
さらに、前記アクリル系粘着剤層が、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して導電性フィラーを10〜500重量部含有する前記の導電性粘着テープを提供する。
【0011】
さらに、金属箔の少なくとも片面側に前記アクリル系粘着剤層を有する前記の導電性粘着テープを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電性粘着テープは耐腐食性に優れるため、金属製の被着体や該導電性粘着テープが導電性基材として有する金属箔に対して腐食を生じさせない。従って、安定した電気伝導性を発揮することが可能である。特に、本発明の導電性粘着テープは長期の耐腐食性に優れるため、長期にわたって安定な電気伝導性が要求される電子機器等に対して好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の導電性粘着テープの一例(導電性粘着テープT1)を示す概略図(平面図)である。
【図2】図2は、本発明の導電性粘着テープの一例(導電性粘着テープT1)を示す概略図(図1におけるA−A断面図)である。
【図3】図3は、実施例における耐腐食性(抵抗値変化率)の評価に用いた、試験サンプルを示す概略図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電性粘着テープは、アクリル系粘着剤層を少なくとも一層有する導電性粘着テープである。本発明の導電性粘着テープは、テープの両面が粘着面となっている両面粘着テープであってもよいし、テープの片面のみが粘着面となっている片面粘着テープであってもよい。なお、本明細書において、「導電性粘着テープ」という場合には、シート状のもの、即ち「導電性粘着シート」も含まれるものとする。また、本明細書においては、粘着剤層表面のことを「粘着面」と称する場合がある。
【0015】
本発明の導電性粘着テープは、基材(基材層)を有しない、いわゆる「基材レスタイプ」の導電性粘着テープ(以下、「基材レス導電性粘着テープ」と称する場合がある)であってもよいし、基材を有するタイプの導電性粘着テープであってもよい。上記基材レス導電性粘着テープとしては、例えば、上記アクリル系粘着剤層のみからなる両面粘着テープ等が挙げられる。基材を有するタイプの導電性粘着テープとしては、基材の片面側に上記アクリル系粘着剤層を有する片面粘着テープや、基材の両面側に上記アクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープ等が挙げられる。
【0016】
本発明の導電性粘着テープの体積抵抗値は1×101Ω以下であり、より好ましくは1×100Ω(1Ω)以下、さらに好ましくは1×10-1Ω以下である。体積抵抗値が1×101Ωを超えると、電気伝導性が不足する。なお、上記体積抵抗値は、四端子法により測定することができる。具体的には、上記体積抵抗値は、例えば、図3に示す試験サンプルを用いて、後述の[評価]の「(2)体積抵抗値」に示す方法によって求めることができる。なお、本明細書において「電気伝導性(導電性)を有する」とは、体積抵抗値が上記範囲を満たすことを意味する。
【0017】
イオンクロマトグラフ法で測定される、本発明の導電性粘着テープより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量[抽出(メタ)アクリル酸イオン量]は、本発明の導電性粘着テープにおけるアクリル系粘着剤層の単位面積あたり、20ng/cm2以下(例えば、0〜20ng/cm2)であり、好ましくは10ng/cm2以下(例えば、0〜10ng/cm2)、より好ましくは5ng/cm2以下(例えば、0〜5ng/cm2)である。特に、上記抽出(メタ)アクリル酸イオン量が5ng/cm2以下であると、長期にわたる耐腐食性や、より高温高湿の環境下での耐腐食性に優れるため、好ましい。上記の抽出(メタ)アクリル酸イオン量は、導電性粘着テープを加湿環境下などにおいた場合の、アクリル系粘着剤層からのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの水分での遊離しやすさの度合いを表す。上記抽出(メタ)アクリル酸イオン量が20ng/cm2を超えると、加湿環境下などの水分の存在下で保存する際に、アクリル系粘着剤層から遊離した(メタ)アクリル酸イオンの影響で、金属(金属製の被着体や金属箔(導電性基材)等)に腐食を生じやすくなり、耐腐食性が低下する。
【0018】
上記の「イオンクロマトグラフ法で測定される、本発明の導電性粘着テープより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量」は、以下の方法で測定することができる。
まず、導電性粘着テープを適切な大きさに切り出し、セパレータが設けられている場合にはセパレータを剥離して、粘着面を露出させ試験片とする。両面粘着テープの場合には、一方の粘着面上にはPETフィルム(厚さ25〜50μm)を貼付して、片方の粘着面のみを露出させた形態とする。なお、この際、アクリル系粘着剤層(本発明の導電性粘着テープが少なくとも有するアクリル系粘着剤層)側の表面を露出させる。試験片の大きさ(粘着面の露出面積)は100cm2が好ましい。
次いで、上記試験片を、温度100℃の純水中に入れ、45分間煮沸し、アクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの煮沸抽出を行う。
次いで、イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)により、上記で得られた抽出液中のアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng)を測定し、試験片の粘着面(露出した粘着面)の単位面積あたりのアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng/cm2)を算出する。イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)の測定条件は、特に限定されないが、例えば、下記の条件で測定することができる。
[イオンクロマトグラフ法の測定条件]
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
【0019】
導電性粘着テープから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンは、一般的に、アクリル系粘着剤層中に存在する(メタ)アクリル酸に起因する。上記(メタ)アクリル酸イオンは、高温高湿条件下で水分により金属中に侵入して導通を妨げるためと推定されるが、金属(金属製の被着体や金属箔(導電性基材)等)の腐食を引き起こし、その結果、電気的導通が妨げられる。一般的に、導電性粘着テープの接着性向上を目的として、(メタ)アクリル酸(特に、アクリル酸)をアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として多量(例えば、10重量%以上)に使用した場合には、アクリル系粘着剤層中に未反応の(メタ)アクリル酸が残留しやすくなり、導電性粘着テープから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンも増加する傾向がある。本発明においては、(メタ)アクリル酸をモノマー成分として少量の使用に抑えることにより、導電性粘着テープから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンが少なく、これに起因する金属製の被着体や金属箔(導電性基材)等の腐食、電気伝導性(抵抗値)の変化が抑制される。
【0020】
上述のように、本発明の導電性粘着テープは優れた電気伝導性を有し、なおかつ、耐腐食性にも優れる。従って、本発明の導電性粘着テープは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等に好適に使用される。特に、長期の耐腐食性に優れるため、長期間安定な電気伝導性が要求される用途、具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用のアース取り、電源装置や電子機器等の内部配線等に使用することができる。
【0021】
本発明の導電性粘着テープにおけるアクリル系粘着剤層は、アクリル系モノマーを必須の単量体(モノマー)成分として構成されたアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤層であればよく、特に限定されないが、例えば、後述の本発明の導電性粘着テープの具体的態様におけるアクリル系粘着剤層等を挙げることができる。上記アクリル系粘着剤層(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、10重量%以上(例えば、10〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは20〜99.999重量%である。
【0022】
上記アクリル系粘着剤層を形成するためのアクリル系粘着剤は、いずれの形態を有していてもよく、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが使用できる。
【0023】
上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の形成方法によっても異なり、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物、または、アクリル系ポリマーを構成する単量体(モノマー)の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)又はその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物から形成される。特に限定されないが、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型の粘着剤組成物などが挙げられ、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物などが挙げられる。上記粘着剤組成物には、さらに必要に応じて、架橋剤やその他の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0024】
上記「粘着剤組成物」には「粘着剤層を形成するための組成物」という意味も含むものとする。また、上記「モノマー混合物」とは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のみからなる混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0025】
本発明の導電性粘着テープが基材を有する場合には、基材としては特に限定されないが、電気伝導性の観点で、金属箔であることが好ましい。金属箔の材質としては、特に限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄やこれらの合金が挙げられ、上記の中でも、コストや加工性などの観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましい。なお、上記金属箔は、スズめっき等の表面処理が施されているものであってもよい。
【0026】
本発明の導電性粘着テープは、上記アクリル系粘着剤層を少なくとも一層有し、体積抵抗値及び抽出(メタ)アクリル酸イオン量が上記範囲に制御されていればよく、特に限定されない。本発明の導電性粘着テープは、体積抵抗値を上記範囲に制御するための導電パス(電流が流れるための経路)が形成された構成を有する。このような構成を有する導電性粘着テープとしては、特に限定されないが、例えば、後述の本発明の導電性粘着テープの「第1の具体的態様」や「第2の具体的態様」等が挙げられる。本発明の導電性粘着テープの「第1の具体的態様」は、金属箔の片面側に前記アクリル系粘着剤層を有し、該金属箔に該アクリル系粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を有する導通部が形成された導電性粘着テープ(「導電性粘着テープT1」と称する場合がある)である。また、本発明の導電性粘着テープの「第2の具体的態様」は、上記アクリル系粘着剤層が、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して導電性フィラーを10〜500重量部含有する導電性粘着テープ(「導電性粘着テープT2」と称する場合がある)である。以下に、これら本発明の導電性粘着テープの具体的態様を、必要に応じて図面を参照して具体的に説明する。ただし、これに限定されるものではない。
【0027】
[導電性粘着テープT1(第1の具体的態様)]
本発明の導電性粘着テープの第1の具体的態様(導電性粘着テープT1)は、金属箔の片面側にアクリル系粘着剤層を有し、前記金属箔に前記アクリル系粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を有する導通部が形成された構成を有する片面粘着テープである。このような導通部の存在により、金属箔とアクリル系粘着剤層の被着体との貼着面との間で電気伝導性(厚み方向の電気伝導性)が確保される。図1及び図2は、導電性粘着テープT1を模式的に示す概略図である。図1(導電性粘着テープT1の平面図)において、11は導電性粘着テープT1を、12は導通部を示し、該導通部12は先端に端子部13を有する。導通部12(端子部13)の位置パターンは、いわゆる、散点パターンであり、例えば、図1に示すように、長手方向の配置間隔がaの列を間隔bで配列し、かつ互いに隣り合う列間において半ピッチずらし、例えば、aとbとをほぼ等しくしたものを使用できる。図2は、図1の導電性粘着テープT1のA−A断面図である。この例では、導電性粘着テープT111は、金属箔111の片面側にアクリル系粘着剤層112を有し、該金属箔111には、アクリル系粘着剤層112を貫通し、かつその先端に端子部13を有する導通部12が形成された構成を有している。
【0028】
(金属箔)
上記金属箔としては、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などの金属箔が使用される。上記の中でも、コストや加工性の観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましい。なお、上記金属箔は、スズめっき等の表面処理が施されているものであってもよい。上記金属箔の厚さは、特に限定されず、5〜500μm程度の範囲から選択できるが、強度と可撓性とのバランスの観点から、8〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜150μmである。
【0029】
(アクリル系粘着剤層)
上記アクリル系粘着剤層は、アクリル系モノマーを必須の単量体(モノマー)成分として構成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤層である。上記アクリル系粘着剤層(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、60重量%以上(例えば、60〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは65〜99.999重量%である。
【0030】
上記アクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0031】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記の中でも、アルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MMA)である。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜99.9重量%である。
【0033】
また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の共重合性単量体が共重合モノマー成分として含まれていてもよい。これらの共重合モノマー成分を用いることにより、たとえば、被着体への接着力を向上させたり、アクリル系粘着剤層の凝集力を高めたりすることができる。上記共重合モノマー成分は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
上記の極性基含有単量体としては、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマーも含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。上記の中でも、極性基含有単量体としては、接着性向上の観点から、カルボキシル基含有単量体やヒドロキシル基含有単量体が好ましく、より好ましくは、アクリル酸(AA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)である。なお、上記の極性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記の極性基含有単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0〜30重量%が好ましく、より好ましくは0〜20重量%である。極性基含有単量体の含有量が30重量%を超えると、アクリル系粘着剤層の凝集力が高くなりすぎて粘着性が低下する場合がある。
【0036】
中でも、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分中に(メタ)アクリル酸が含まれる場合、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対する、(メタ)アクリル酸の合計含有量は、10重量%以下(例えば、0〜10重量%)が好ましく、より好ましくは0〜5重量%、さらに好ましくは0〜3重量%である。(メタ)アクリル酸の含有量が10重量%を超えると、本発明の粘着シートより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量を20ng/cm2以下に制御できない場合がある。
【0037】
上記の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0038】
上記の多官能性単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは、0〜0.3重量%以下である。含有量が0.5重量%を超えると、アクリル系粘着剤層の凝集力が高くなりすぎて粘着性が低下する場合がある。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の含有量は0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0039】
また、上記の極性基含有単量体や多官能性単量体以外のその他の共重合性単量体としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0040】
上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。上記の中でも透明性、耐水性などの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、コスト面で溶液重合方法がより好ましい。
【0041】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
上記の活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に限定されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0043】
上記アクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤が好ましく例示される。上記熱重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、熱重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.01〜1重量部程度の範囲から選択することができる。
【0045】
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。上記光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して0.01〜0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15重量部である。
【0046】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、30万〜120万が好ましく、より好ましくは35万〜100万、さらに好ましくは40万〜90万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量が30万より小さいと、良好な粘着特性を発揮することができない場合があり、一方、120万より大きいと、塗工性に問題が生じる場合がある。上記重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0047】
導電性粘着テープT1におけるアクリル系粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。また、上記アクリル系粘着剤層を形成する際には、各種の一般的な溶剤を用いることもできる。溶剤の種類としては、特に限定されず、前述の溶液重合に際して用いられる溶剤として例示されたものなどを用いることができる。
【0048】
上記架橋剤は、アクリル系粘着剤層のベースポリマー(アクリル系ポリマー)を架橋させ、アクリル系粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができ、ゲル分率をコントロールすることができる。架橋剤としては、特に限定されず、公知慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく使用される。上記の中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。架橋剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0049】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]などを用いることもできる。
【0050】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0051】
上記粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0〜10重量部が好ましく、より好ましくは0〜5重量部である。
【0052】
上記アクリル系粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、5〜120μmが好ましく、より好ましくは10〜90μmである。厚さが120μmを超えると、製品の薄膜化に不利となったり、端子部の形成が困難となる場合がある。厚さが10μm未満では、アクリル系粘着剤層が薄いために応力分散できなくなり、剥がれが生じやすくなってしまう場合がある。
【0053】
上記アクリル系粘着剤層の形成方法は、公知慣用の粘着剤層の形成方法を用いることが可能であり、またアクリル系ポリマーの重合方法などによっても異なり、特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(3)などの方法が挙げられる。(1)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物及び必要に応じて光重合開始剤や架橋剤などの添加剤を含む組成物を、セパレータまたは金属箔上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線(特に、紫外線が好ましい)を照射して、アクリル系粘着剤層を形成する。(2)アクリル系ポリマー、溶剤、必要に応じて架橋剤などの添加剤を含む組成物(溶液)を、セパレータまたは金属箔上に塗布(塗工)し、乾燥及び/又は硬化してアクリル系粘着剤層を形成する。(3)上記(1)で形成したアクリル系粘着剤層をさらに乾燥させる。
【0054】
なお、上記アクリル系粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0055】
導電性粘着テープT1は、上記の金属箔、アクリル系粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0056】
導電性粘着テープT1の厚さは、特に限定されないが、25〜200μmが好ましく、より好ましくは40〜140μmである。厚さが200μmを超えると、製品の薄膜化に不利となる場合がある。厚さが25μm未満では、作業性が悪くなる場合がある。なお、上記「導電性粘着テープT1の厚さ」とは、金属箔のアクリル系粘着剤層を有しない側の表面から、アクリル系粘着剤層の表面までの厚さを意味する。
【0057】
導電性粘着テープT1の粘着剤層表面(粘着面)には、使用時までセパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレータはアクリル系粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼付する際に剥がされる。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。上記の中でも、セパレータの浮きを抑制する観点で、ポリエチレン又はポリプロピレンからなるセパレータを用いることが好ましい。なお、セパレータは公知慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に限定されない。
【0058】
導電性粘着テープT1は、特に限定されないが、金属箔の片面側にアクリル系粘着剤層を形成し、次いで、該金属箔の多点を底無しの絞り出しによりアクリル系粘着剤層表面に出現させて、端子部とすることにより製造することができる。具体的には、例えば、実公昭63−46980号公報や特開平8−185714号公報に記載の方法により製造することができる。製造方法の一例を図2を参照して説明する。まず、前述のアクリル系粘着剤層の形成方法により、金属箔111の表面にアクリル系粘着剤層112を形成する。なお、この際、金属箔111の表面に上記アクリル系粘着剤層112を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上にアクリル系粘着剤層112を形成した後、金属箔111に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属箔111上にアクリル系粘着剤層112を設けてもよい(転写法)。次いで、必要に応じて、アクリル系粘着剤層112の表面上にセパレータ(工程セパレータ)を貼付し、アクリル系粘着剤層112を保護する。その後、ポンチ状のオス型とダイスメス型を用いて金属箔111を底無しの筒状に絞り出して(絞り成形して)導通部12を形成し、次いで、プレスによって筒状部の先端を外側に水平に折り曲げて鍔状の端子部13を形成することにより、導電性粘着テープT111を製造することができる。導通部12(端子部13)は、例えば、図1に示す散点パターンのように、通常、適宜な間隔をおいて複数個形成される。
【0059】
[導電性粘着テープT2(第2の具体的態様)]
本発明の導電性粘着テープの第2の具体的態様(導電性粘着テープT2)は、電気伝導性を有するアクリル系粘着剤層を少なくとも一層有する導電性粘着テープである。導電性粘着テープT2は、両面粘着テープであってもよいし、片面粘着テープであってもよい。
【0060】
導電性粘着テープT2は、基材(基材層)を有しない、基材レス導電性粘着テープであってもよいし、基材を有するタイプの導電性粘着テープであってもよい。上記基材レス導電性粘着テープとしては、例えば、上記アクリル系粘着剤層のみからなる両面粘着テープ等が挙げられる。基材を有するタイプの導電性粘着テープとしては、基材の少なくとも片面側に上記アクリル系粘着剤層を有する粘着テープ(基材の片面側に上記アクリル系粘着剤層を有する片面粘着テープ、基材の両面側に上記アクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープ等)が挙げられる。上記の中でも、電気伝導性の観点からは、基材として金属箔を有する導電性粘着テープ(即ち、金属箔の少なくとも片面側に上記アクリル系粘着剤層を有する導電性粘着テープ)が好ましく、より好ましくは金属箔の片面側に上記アクリル系粘着剤層を有する導電性粘着テープ(片面粘着テープ)である。なお、上記の「基材(基材層)」には、導電性粘着テープの使用(貼付)時に剥離されるセパレータは含まない。
【0061】
(アクリル系粘着剤層)
上記アクリル系粘着剤層は、アクリル系モノマーを必須の単量体(モノマー)成分として構成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤層であり、導電性フィラーを含有する。導電性フィラーを含有することにより、上記アクリル系粘着剤層中に導電パスが形成され、電気伝導性が付与される。上記アクリル系粘着剤層(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、10重量%以上(例えば、10〜95重量%)であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%である。
【0062】
上記アクリル系ポリマーとしては、上記の[導電性粘着テープT1(第1の具体的態様)]の項で例示したアクリル系ポリマーを好ましく使用することができる。
【0063】
上記導電性フィラーとしては、公知慣用のものを使用することができる。例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、アンチモン、モリブデン、銅、銀、白金、金などの金属、これらの合金若しくは酸化物、カーボンブラックなどのカーボンからなるフィラー、または、これらをポリマービーズ、樹脂などに被覆したフィラーが例示できる。上記の中でも、金属フィラー及び/又は金属被覆フィラーが好ましい。
【0064】
導電性フィラーの形状としては、特に限定されないが、球状及び/又はスパイク状が好ましく、より好ましくは球状である。球状及び/スパイク状の導電性フィラーを用いることにより、アクリル系粘着剤層中で均一分散しやすくなるため、導電性粘着テープの粘着性と電気伝導性とを両立しやすくなる場合がある。フィラメント状、フレーク状や樹脂状のフィラーを用いる場合には、分散性が低下して粗大凝集体となったり、フィラーがアクリル系粘着剤層中で粘着面と水平方向に並んでしまい、厚み方向の電気伝導性を発揮しにくくなるため、粘着性と電気伝導性を両立できない場合がある。また、外観不良となる場合がある。上記導電性フィラーのアスペクト比は特に限定されないが、1.0〜2.0が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。なお、上記アスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0065】
上記アクリル系粘着剤層中の導電性フィラーの含有量は、前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、10〜500重量部が好ましく、より好ましくは20〜400重量部である。導電性フィラーの含有量が500重量部を超えると、導電性フィラー同士が凝集したり、粘着面が粗くなるため、粘着性低下や外観不良を招く場合がある。また、コスト面で不利となる場合がある。一方、10重量部未満であると、電気伝導性が低下する場合がある。
【0066】
導電性粘着テープT2におけるアクリル系粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。また、上記アクリル系粘着剤層を形成する際には、各種の一般的な溶剤を用いることもできる。溶剤の種類としては、特に限定されず、上記の[導電性粘着テープT1(第1の具体的態様)]の項で溶液重合の際に用いられる溶剤として例示したもの等が挙げられる。
【0067】
上記架橋剤としては、上記の[導電性粘着テープT1(第1の具体的態様)]の項で例示した架橋剤等が挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。上記粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0〜10重量部が好ましく、より好ましくは0〜5重量部である。
【0068】
上記アクリル系粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、5〜120μmが好ましく、より好ましくは10〜90μmである。厚さが120μmを超えると、製品の薄膜化に不利となったり、端子部の形成が困難となる場合がある。厚さが5μm未満では、アクリル系粘着剤層が薄いために応力分散できなくなり、剥がれが生じやすくなったり、粘着性が不足する場合がある。
【0069】
上記アクリル系粘着剤層の形成方法は、公知慣用の粘着剤層の形成方法を用いることが可能であり、またアクリル系ポリマーの重合方法などによっても異なり、特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(3)などの方法が挙げられる。(1)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物、導電性フィラー及び必要に応じて光重合開始剤や架橋剤などの添加剤を含む組成物を、基材又はセパレータ上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線(特に、紫外線が好ましい)を照射して、アクリル系粘着剤層を形成する。(2)アクリル系ポリマー、導電性フィラー、溶剤、必要に応じて架橋剤などの添加剤を含む組成物(溶液)を、基材又はセパレータ上に塗布(塗工)し、乾燥及び/又は硬化してアクリル系粘着剤層を形成する。(3)上記(1)で形成したアクリル系粘着剤層をさらに乾燥させる。
【0070】
なお、上記アクリル系粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、例えば、上記の[導電性粘着テープT1(第1の具体的態様)]の項で例示したコーター等を用いることができる。
【0071】
(基材)
導電性粘着テープT2が基材を有する場合、基材としては、特に限定されないが、電気伝導性の観点で、金属箔であることが好ましい。金属箔の材質としては、特に限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄やこれらの合金が挙げられる。上記の中でも、コストや加工性などの観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましい。
【0072】
上記基材の厚さは、軽量、薄膜化、コスト、段差吸収性などの観点から、10〜100μmが好ましく、より好ましくは15〜75μmである。
【0073】
導電性粘着テープT2は、上記アクリル系粘着剤層や上記基材以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0074】
導電性粘着テープT2の厚さは、特に限定されないが、20〜200μmが好ましく、より好ましくは25〜140μmである。厚さが200μmを超えると、製品の薄膜化に不利となる場合があり、20μm未満では、剥がれが生じやすくなったり、粘着性が不足する場合がある。
【0075】
導電性粘着テープT2の粘着剤層表面(粘着面)には、使用時までセパレータが設けられていてもよい。セパレータはアクリル系粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼付する際に剥がされる。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。セパレータとしては、上記の[導電性粘着テープT1(第1の具体的態様)]の項で例示したセパレータ等が挙げられる。なお、セパレータは公知慣用の方法により形成することができ、セパレータの厚さ等も特に限定されない。
【0076】
導電性粘着テープT2は、公知慣用の製造方法に従って製造することができる。例えば、導電性粘着テープT2が基材を有しない場合には、セパレータ上に上記アクリル系粘着剤層を形成することにより製造することができる。一方、導電性粘着テープT2が基材(好ましくは、金属箔)を有する場合には、例えば、基材の表面に上記アクリル系粘着剤層を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上に上記アクリル系粘着剤層を形成した後、基材と転写する(貼り合わせる)ことにより、基材上に上記アクリル系粘着剤層を設けてもよい(転写法)。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、後述の実施例1〜4にて得られる導電性粘着テープは、上記「導電性粘着テープT1」(第1の具体的態様)と同様の構成を有する。また、実施例5〜8にて得られる導電性粘着テープは、上記「導電性粘着テープT2」(第2の具体的態様)と同様の構成を有する。
【0078】
アクリル系ポリマーAの製造例
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)70重量部、アクリル酸n−ブチル(BA)30重量部、アクリル酸(AA)3重量部が混合されたモノマー混合物を100重量部、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル186重量部をセパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、10時間反応させた後、トルエンを加えて濃度調整し、固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液A」と称する場合がある。)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Aにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーA」と称する場合がある)の重量平均分子量は52万であった。
【0079】
アクリル系ポリマーBの製造例
上記モノマー混合物を、2EHA98重量部、AA2重量部が混合されたモノマー混合物に変更した以外は上記(アクリル系ポリマーAの製造例)と同様にして、アクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液B」と称する場合がある)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Bにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーB」と称する場合がある)の重量平均分子量は60万であった。
【0080】
アクリル系ポリマーCの製造例
上記モノマー混合物を、2EHA46重量部、アクリル酸エチル(EA)46重量部、メタクリル酸メチル(MMA)4.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)3.5重量部が混合されたモノマー混合物に変更した以外は上記(アクリル系ポリマーAの製造例)と同様にして、アクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液C」と称する場合がある)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Cにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーC」と称する場合がある)の重量平均分子量は55万であった。
【0081】
アクリル系ポリマーDの製造例
上記モノマー混合物を、2EHA80重量部、AA20重量部が混合されたモノマー混合物に変更した以外は上記(アクリル系ポリマーAの製造例)と同様にして、アクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液D」と称する場合がある)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Dにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーD」と称する場合がある)の重量平均分子量は80万であった。
【0082】
アクリル系ポリマーEの製造例
上記モノマー混合物を、2EHA90重量部、AA10重量部が混合されたモノマー混合物に変更した以外は上記(アクリル系ポリマーAの製造例)と同様にして、アクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液E」と称する場合がある)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Eにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーE」と称する場合がある)の重量平均分子量は75万であった。
【0083】
アクリル系ポリマーFの製造例
上記モノマー混合物を、BA95重量部、AA5重量部が混合されたモノマー混合物に変更した以外は上記(アクリル系ポリマーAの製造例)と同様にして、アクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液F」と称する場合がある)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Fにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーF」と称する場合がある)の重量平均分子量は90万であった。
【0084】
実施例1
アクリル系ポリマー溶液Aに、アクリル系ポリマーA:100重量部に対して、架橋剤として「コロネートL」(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート系架橋剤)2重量部を添加し、混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。なお、コロネートLの配合量(添加量)については、固形分換算の添加量(重量部)で表しており、以下の記載においても同様である。
上記で得られた粘着剤組成物溶液を、厚さ163μmの剥離紙(セパレータ)(王子製紙(株)製、「110EPS(P)ブルー」)上に、乾燥後の厚さが40μmとなるように流延塗布し、常圧下、120℃で5分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層表面に厚さ35μmのタフピッチ銅箔を貼り合わせ、40℃で1日間エージングした。
次いで、110EPS(P)ブルーを剥離し、「金属箔/粘着剤層」の構成を有する積層体を作製し、図1における間隔a、bが5mmで、ポンチ外径が0.425mm、ダイス内径が0.5mmである絞り金型とプレスを用いて、前記積層体を成形し、図2に示す形状の導通部および端子部が形成された導電性粘着テープを得た。
さらに、該導電性粘着テープの粘着面に、セパレータとしてポリエチレンフィルム(厚さ80μm)の片面に離型処理を施した、ポリオレフィン系セパレータを貼り合わせた。
【0085】
実施例2
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Bを用いた以外は実施例1と同様にして、導通経路(導通部および端子部)が形成された導電性粘着テープを得た。
【0086】
実施例3
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Cを用いた以外は実施例1と同様にして、導通経路が形成された導電性粘着テープを得た。
【0087】
実施例4
アクリル系ポリマー溶液Aに、アクリル系ポリマーA:100重量部に対して、粘着付与樹脂として重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学(株)製、「ペンセル D−125」)30重量部を配合し、次いで、架橋剤として「コロネートL」(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート系架橋剤)2重量部を添加し、混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
上記で得られた粘着剤組成物溶液を用いて実施例1と同様にして、導通経路が形成された導電性粘着テープを得た。
【0088】
実施例5
アクリル系ポリマー溶液Aに、アクリル系ポリマーA:100重量部に対して、架橋剤として「コロネートL」(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート系架橋剤)2重量部、導電性フィラーとして「4SP−400」(NOVAMET社製、フィラー径d50:12.0μm、フィラー径d85:26.2μm、球状)35重量部を配合し、攪拌機で10分間混合して、粘着剤組成物溶液(導電性粘着剤溶液)を得た。
上記で得られた粘着剤組成物溶液を、厚さ163μmの剥離紙(セパレータ)(王子製紙(株)製、「110EPS(P)ブルー」)上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように流延塗布し、常圧下、120℃で5分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層表面に厚さ40μmのアルミニウム箔(アルミ箔)(住軽アルミ箔(株)製、商品名「べスパ」)を貼り合わせ、40℃で1日間エージングして、導電性粘着テープを得た。
【0089】
実施例6
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Bを用いた以外は実施例5と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0090】
実施例7
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Cを用いた以外は実施例5と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0091】
実施例8
アクリル系ポリマー溶液Aに、アクリル系ポリマーA:100重量部に対して、粘着付与樹脂として重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学(株)製、「ペンセル D−125」)30重量部を配合し、次いで、架橋剤として「コロネートL」(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート系架橋剤)2重量部、導電性フィラーとして「4SP−400」(NOVAMET社製、フィラー径d50:12.0μm、フィラー径d85:26.2μm、球状)35重量部を配合し、攪拌機で10分間混合して、粘着剤組成物溶液(導電性粘着剤溶液)を得た。
上記で得られた粘着剤組成物溶液を用いて実施例5と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0092】
比較例1
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Dを用いた以外は実施例1と同様にして、導通経路が形成された導電性粘着テープを得た。
【0093】
比較例2
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Eを用いた以外は実施例1と同様にして、導通経路が形成された導電性粘着テープを得た。
【0094】
比較例3
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Fを用いた以外は実施例1と同様にして、導通経路が形成された導電性粘着テープを得た。
【0095】
比較例4
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Dを用いた以外は実施例5と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0096】
比較例5
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Eを用いた以外は実施例5と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0097】
比較例6
アクリル系ポリマー溶液として、アクリル系ポリマー溶液Fを用いた以外は実施例5と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0098】
[評価]
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープについて、以下の評価を行った。結果は表1に示した。
【0099】
(1)抽出(メタ)アクリル酸イオン量
(試験片の作製)
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープから、サイズ:幅10cm×長さ10cmのテープ片を切り出した。その後、このテープ片からセパレータを剥離し、粘着面を露出させた試験片を作製した(粘着面の露出面積:100cm2)。
((メタ)アクリル酸イオンの煮沸抽出)
次いで、上記試験片を、温度100℃の純水(50ml)中に入れ、45分間煮沸し、煮沸抽出を行い、抽出液を得た。
次いで、イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)により、上記で得られた抽出液中のアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng)を測定し、試験片の粘着面(露出した粘着面)の単位面積あたりのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng/cm2)を算出した。なお、測定結果は、表1の「抽出(メタ)アクリル酸イオン量」の欄に示した。
[イオンクロマトグラフ法の測定条件]
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
【0100】
(2)体積抵抗値
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープ(片面粘着テープ)から、サイズ:幅10mm×長さ100mmのテープ片を切り出し、セパレータを剥離して、粘着面を露出させた導電性粘着テープ片23を得た。
次いで、図3に示すように、ガラス板21(ソーダライムガラス、サイズ:幅80mm×長さ80mm、厚さ3.2mm)上に銅箔22(サイズ:幅10mm×長さ100mm、厚さ35μm)を固定し、上記で得た導電性粘着テープ片23を銅箔22及びガラス板21上に貼付した。次いで、2kgローラーを1往復させて導電性粘着テープ片23を圧着し、これを試験サンプルとした(銅箔22と導電性粘着テープ片23との接触面積:100mm2)。
上記試験サンプルを室温(23℃、50%RHの雰囲気下)で、少なくとも12時間放置した後、図3に示すように、直流電源24、直流電流計25、直流電圧計26及び導線27a、27bを接続して回路を組み、抵抗値(体積抵抗)を測定して、これを「体積抵抗値」とした。評価結果は、表1の「体積抵抗値」の欄に示した。なお、抵抗値(Ω)は、直流電圧計26で読み取った電圧値(V)を、直流電流計25で読み取った電流値(A)により除することによって算出した。
【0101】
(3)耐腐食性(銅箔の変色)
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープから、サイズ:幅1cm×長さ15cmのテープ片を切り出した。その後、このテープ片からセパレータを剥離し、粘着面を銅箔(サイズ:幅40cm×長さ50cm、厚さ35μm)に貼り付けて、試験サンプルを作製した。
上記試験サンプルを60℃、95%RHの雰囲気下に250時間保持した後、23℃、50%RHの雰囲気下に取り出し、次いで、銅箔から導電性粘着テープを剥離し、該試験サンプルの導電性粘着テープが貼り合わされていた箇所の銅箔表面を目視で観察した。表面が変色していた場合を銅箔が腐食されているものとして耐腐食性「不良」、表面が変色していない場合を銅箔が腐食されていないものとして耐腐食性「良好」と判定した。なお、評価結果は、表1の「耐腐食性(銅箔の変色)」の欄に示した。
【0102】
(4)耐腐食性(抵抗値変化率)
上記「(2)体積抵抗値」にて測定した体積抵抗値を「初期抵抗値」とした。続いて、初期抵抗値を測定した後の試験サンプルを60℃、95%RHの雰囲気下に250時間保持し、室温(23℃、50%RH)の雰囲気下に戻した後、上記「(2)体積抵抗値」と同様に体積抵抗値を測定し、これを「湿熱後の抵抗値」とした。
湿熱環境に暴露することによる抵抗値変化(「湿熱後の抵抗値」から「初期抵抗値」を引いた値)の、「初期抵抗値」に対する割合を、[(湿熱後の抵抗値−初期抵抗値)/初期抵抗値 × 100]により算出し、これを「抵抗値変化率」とした。上記で算出された抵抗値変化率が100%以下であれば耐腐食性「良好」、100%を超えた場合は耐腐食性「不良」と判定した。なお、評価結果は、表1の「耐腐食性(抵抗値)」の欄に示した。
【0103】
【表1】

【0104】
表1の結果から明らかなように、本発明の導電性粘着テープ(実施例)は、金属(銅箔)に対する優れた耐腐食性を有しており、安定した電気伝導性を発揮した。一方、導電性粘着テープからの抽出(メタ)アクリル酸イオン量が多すぎる場合(比較例)には、金属(銅箔)に対する耐腐食性が不良であり、湿熱環境(60℃、95%RH)に置くことにより抵抗値が上昇して、電気伝導性が大きく低下した。
【符号の説明】
【0105】
11 導電性粘着テープT1
111 金属箔
112 アクリル系粘着剤層
12 導通部
13 端子部
21 ガラス板
22 銅箔
23 導電性粘着テープ片
24 直流電源
25 直流電流計
26 直流電圧計
27a、27b 導線
28a〜d つまみクリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤層を少なくとも一層有する粘着テープであって、体積抵抗値が1×101Ω以下であり、イオンクロマトグラフ法で測定される、該粘着テープより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量が、前記アクリル系粘着剤層の単位面積あたり20ng/cm2以下であることを特徴とする導電性粘着テープ。
【請求項2】
前記導電性粘着テープが、金属箔の片面側に前記アクリル系粘着剤層を有し、前記金属箔に前記アクリル系粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を有する導通部が形成された請求項1に記載の導電性粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤層が、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、導電性フィラーを10〜500重量部含有するアクリル系粘着剤層である請求項1に記載の導電性粘着テープ。
【請求項4】
金属箔の少なくとも片面側に前記アクリル系粘着剤層を有する請求項3に記載の導電性粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153190(P2011−153190A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14728(P2010−14728)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】