導電性織物及び金属製織物
【課題】 導電性織物において表面に露出する導電性金属線材の面積の割合を大きくして大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織れること。
【解決手段】 導電性織物1を構成する混合糸2は複数本のナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3にニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。これによって、ニッケルメッキ銅線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3ができるだけニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。この導電性織物1の電磁波遮蔽性能を測定したところ、周波数100MHzにおいて65dB〜70dBという高い値を示した。
【解決手段】 導電性織物1を構成する混合糸2は複数本のナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3にニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。これによって、ニッケルメッキ銅線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3ができるだけニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。この導電性織物1の電磁波遮蔽性能を測定したところ、周波数100MHzにおいて65dB〜70dBという高い値を示した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電磁波遮蔽材として用いることができる導電性織物及び金属製織物に関するもので、特に電磁波遮蔽性能の大幅な向上を可能とする導電性織物及び容易に作ることができる金属製織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(情報技術)の発達によって、パーソナル・コンピュータを始めとするIT機器・OA機器が急速に普及し、通常の家庭環境や職場環境においても、これらのIT機器・OA機器から放射される電磁波が人体にもたらす影響が問題にされるようになってきた。そこで、特許文献1に記載の考案においては、上記機器類の電磁波遮蔽用キャビネット等への応用を目的として、弾性繊維の周囲に金属繊維を螺旋状に巻き付けた複合弾性糸で構成された織布を熱可塑性合成樹脂シートで挟んだ電磁波遮蔽用合成樹脂板について提案している。
【0003】
また、特許文献2に記載の考案においては、より広い範囲で電磁波を遮蔽できるようにするために、アルミ箔をステープル繊維状に微細に裁断して得られたアルミニウム繊維と通常の可紡性繊維との混紡糸を用いて織成された織地により形成された電磁波シールド用カーテンについて提案している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、人体をより確実に電磁波から守ることを目的として、電磁波遮蔽作業服等を縫製するために、導電性金属線材と撚り糸またはフィラメント糸とを平行に引き揃えて芯糸を形成し、この芯糸の周囲に撚り糸またはフィラメント糸をZ撚り、S撚りして導電性金属線材が露出しないようにして、電磁波遮蔽編織用複合糸を形成している。
【特許文献1】実公平3−40595号公報
【特許文献2】実公平3−36538号公報
【特許文献3】特開2004−11033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性金属材料とそれ以外のものとの混合物からなる電磁波遮蔽体の遮蔽性能は、表面に露出している導電性金属材料の面積の割合が多いほど向上する。これに対して、上記特許文献1に記載の電磁波遮蔽用合成樹脂板においては、熱可塑性合成樹脂シートの間に金属繊維を用いて構成した織布を挟んでおり、表面には導電性金属材料が露出していない。その結果、電磁波遮蔽性能も周波数30MHzで57dB、1000MHzで42dBと大きな値は得られていない。また、上記特許文献2に記載の電磁波シールド用カーテンにおいても、アルミニウム繊維の表面露出比率が少ないため、電磁波遮蔽性能も周波数10〜500MHzの電磁波に対して30〜50dBに留まっている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の電磁波遮蔽編織用複合糸においては、着心地の良さを重視しているために導電性金属線材が露出しないようにしていることから、具体的な測定データは記載されていないが、電磁波遮蔽性能はさらに小さいものと考えられる。
【0007】
電磁波遮蔽用織物の電磁波遮蔽性能を最も容易に向上させるには、導電性金属線材のみで織物を織るのが理想的であるが、金属線材は強度に劣るために織機でそのまま織ろうとしても切れてしまったり、絡まってしまったりという不具合が起こる。そのため、導電性金属線材に限らず、金属フィルター等への応用を目的とした金属線材のみからなる金属製織物を織成することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物の提供を課題とするものである。また、本発明は同時に用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる金属線材のみからなる金属製織物の提供をも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなるものである。
【0010】
ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。また、「少なくとも導電性の金属線材」とは、導電性を持つことを要件とし、良好な導電体であることが望ましいが、磁気的遮蔽を行う場合には、磁性体であることも必要であり、好ましくは、強磁性体であることが必要である。しかし、本発明を実施する場合には、少なくとも導電性の金属線材であれば静電的なシールド及び電磁波のシールド効果が確認される。
【0011】
請求項2の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に2本以上の少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして前記通常の可紡性繊維の大部分が前記導電性の金属線材で覆われるように形成した混合糸を織成してなるものである。
【0012】
ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。また、「少なくとも導電性の金属線材」とは、導電性を持つことを要件とし、良好な導電体であることが望ましいが、磁気的遮蔽を行う場合には、磁性体であることも必要であり、好ましくは、強磁性体であることが必要である。しかし、本発明を実施する場合には、少なくとも導電性の金属線材であれば静電的なシールド及び電磁波のシールド効果が確認される。
【0013】
請求項3の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の水溶性繊維及び1本または複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。
【0014】
ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。また、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0015】
請求項4の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の伸縮性を有する繊維に1本または複数本の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸にさらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0016】
請求項5の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを縦方向及び横方向ともに交互に配置されるように織成してなる伸縮性を有するものである。
【0017】
請求項6の発明にかかる導電性織物は、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦糸または横糸にし、少なくとも導電性の金属線材を横糸または縦糸にして織成してなる伸縮性を有するものである。
【0018】
請求項7の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は約50μm〜約500μmの太さを有するものである。
【0019】
請求項8の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は銅線材であるものである。
【0020】
請求項9の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は導電性を有する磁性体である。例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【0021】
請求項10の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを多重織りしてなるものである。
【0022】
請求項11の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを3次元構造に織成してなるものである。
【0023】
請求項12の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記導電性織物または前記導電性織物をテープ状に裁断したものを巻き付けることによって、巻き付けられた人体または物体或いはその一部を静電的にシールドするとともに電磁波からシールドするものである。
【0024】
請求項13の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の水溶性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0025】
ここで、「水溶性繊維」としては、例えば、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。これによって、必要な太さの水溶性繊維を中心とした混合糸は充分な強度を有するので通常の織機で織ることができ、水溶性繊維を溶解・除去することによって金属線材のみからなる織物を製造することができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして細い金属線から形成される製品への応用が可能になる。金属製織物の目の細かさや金属線材の太さは、混合糸を形成するときの水溶性繊維の太さと金属線材の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。なお、金属製織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0026】
請求項14の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の溶融性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0027】
前述のように、「水溶性繊維」では、少なくとも導電性の金属線材に錆がくる可能性がある。しかし、本発明では、織物を形成する場合の芯材を溶融できればよいことから、「溶融性繊維」の使用が望ましい。
【0028】
請求項15の発明にかかる金属製織物は、請求項13または請求項14の構成において、前記混合糸を多重織りしてなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0029】
請求項16の発明にかかる金属製織物は、請求項13または請求項14の構成において、前記混合糸を3次元構造に織成してなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0030】
請求項17の発明にかかる金属製織物は、請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の導電性織物若しくは請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の混合糸織物を加熱することによって前記通常の可紡性繊維、前記伸縮性を有する繊維、前記水溶性繊維または前記溶融性繊維のみを融解・除去または燃焼・除去してなるものである。
【0031】
請求項18の発明にかかる金属製織物は、請求項13乃至請求項16のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は導電性を有する磁性体である。例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなるものである。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。これによって、金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、金属線材を太くしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、周囲に導電性金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されているので、織成された織物は表面に露出している金属の割合が際立って多くなり、したがって、より電磁波遮蔽性に優れた導電性織物となる。
【0033】
よって、優れた電磁波遮蔽材として電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0034】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0035】
請求項2の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に2本以上の少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして通常の可紡性繊維の大部分が導電性金属線材で覆われるように形成した混合糸を織成してなるものである。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。これによって、導電性金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、通常の可紡性繊維の大部分が導電性金属線材で覆われるようにしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0036】
そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、その大部分が導電性金属線材で覆われるように周囲に2本以上の導電性金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されているので、織成された織物の表面には殆ど金属のみが露出していることになり、したがってさらに電磁波遮蔽性に優れた導電性織物となる。
【0037】
よって、より優れた電磁波遮蔽材として電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0038】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合を最大限に大きくすることによってさらに大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0039】
請求項3の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の水溶性繊維及び1本または複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。
【0040】
ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。また、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0041】
伸縮性を有する導電性織物を得るためには、混合糸の中心に配置される通常の可紡性繊維を単に伸縮性を有する繊維に置き換えるだけではうまく行かない。そこで、本発明者が鋭意実験研究を繰り返した結果、中心に配置される伸縮性を有する繊維と少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成される金属線材部分との間に隙間を設けることによって、織り上げられた導電性織物に顕著な伸縮性が得られることを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。
【0042】
即ち、1本以上の水溶性繊維及び1本以上の伸縮性を有する繊維を束にして少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を、織成して混合糸織物とした後に所定温度の水中に浸して水溶性繊維のみを溶解・除去することによって、伸縮性を有する繊維と金属線材部分との間に隙間が生ずるため、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0043】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0044】
請求項4の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の伸縮性を有する繊維に1本または複数本の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸にさらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。
【0045】
ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。また、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0046】
即ち、1本以上の伸縮性を有する繊維に1本以上の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸に、さらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成し、この混合糸を織成して混合糸織物とした後に所定温度の水中に浸して水溶性繊維のみを溶解・除去することによって、伸縮性を有する繊維と金属線材部分との間に隙間が生ずるため、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0047】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0048】
請求項5の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを縦方向及び横方向ともに交互に配置されるように織成してなる伸縮性を有するものである。
【0049】
ここで、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0050】
即ち、縦糸及び横糸として、可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを交互に用いることによって、伸縮性を有さない混合糸の間に伸縮性を有する繊維を束にしたものが挟まれた構造の織物を形成することによって、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。したがって、請求項3,4に記載の発明の作用効果に加えて、水中に浸す必要がないため工数が省けるとともに、金属線材として材料を選ばないという作用効果が得られる。
【0051】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0052】
請求項6の発明にかかる導電性織物は、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦糸または横糸にし、少なくとも導電性の金属線材を横糸または縦糸にして織成してなる伸縮性を有するものである。
【0053】
ここで、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0054】
即ち、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦方向または横方向にのみ並べ、少なくとも導電性の金属線材を横方向または縦方向にのみ並べることによって、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものの方向には、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。したがって、請求項3,4に記載の発明の作用効果に加えて、水中に浸す必要がないため工数が省けるとともに、金属線材として材料を選ばないという作用効果が得られる。
【0055】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0056】
請求項7の発明にかかる導電性織物は、導電性金属線材が約50μm〜約500μmの太さを有するものである。本発明者は、本発明にかかる導電性織物を構成する導電性金属線材として、どの程度の太さを有するものが最も適しているか鋭意実験研究の結果、約50μm〜約500μmの太さを有するものが最も適していることを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。
【0057】
即ち、導電性金属線材の太さが約50μm未満であると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに切れる可能性が高くなり、また導電性織物としたときに表面に露出する導電性金属線材の割合が小さくなるため、大きな電磁波遮蔽性能が得られない。一方、導電性金属線材の太さが約500μmを超えると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに柔軟性が不足してうまく混合糸を紡糸することができない。したがって、導電性金属線材の太さを約50μm〜約500μmの範囲内とすることによって、容易に混合糸を紡糸することができ、また導電性織物としたときに表面に露出する導電性金属線材の割合が大きくなるため、大きな電磁波遮蔽性能を得ることができる。
【0058】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0059】
請求項8の発明にかかる導電性織物においては、少なくとも導電性の金属線材として銅線材を用いているから、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの効果に加えて、銅線材は導電性に優れ、柔軟性も兼ね備えており、任意の太さのものが容易に入手できるので、本発明の導電性織物における導電性の金属線材として適している。銅線材がニッケル等でメッキされていれば、耐候性にも優れるのでより好ましい。
【0060】
このようにして、表面に露出する導電性の金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0061】
請求項9の発明にかかる導電性織物においては、前記導電性の金属線材を導電性を有する磁性体としたものであるから、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの効果に加えて、磁性体としての機能を合わせ持つから、電磁波の遮蔽として良好な特性を持たせることができる。
【0062】
請求項10の発明にかかる導電性織物は、混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと混合糸または導電性金属線材とを多重織りしてなるものであり、混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものが強度と柔軟性を充分に有するため、二重織り・三重織りはもとより、四重織り・五重織りも可能である。このように、少なくとも導電性の金属線材または導電性を有する磁性体の金属線材を撚り込んだ混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと混合糸または導電性金属線材とを多重織りすることによって、導電性織物に含まれる金属線材の絶対量が益々増加するため、より優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物を得ることができる。
【0063】
請求項11の発明にかかる導電性織物は、混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと混合糸または導電性金属線材とを3次元構造に織成してなるものである。ここで、「3次元構造」とは、例えば段ボールのように3次元的な膨らみを有する構造をいう。このように、少なくとも導電性の金属線材または導電性を有する磁性体の金属線材を撚り込んだ混合糸で立体的な構造を形成することによって、多重織りの効果とともに内部に適当な空間ができることから、さらに優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物を得ることができる。
【0064】
請求項12の発明にかかる導電性織物は、導電性織物または導電性織物をテープ状に裁断したものを巻き付けることによって、巻き付けられた人体または物体或いはその一部を静電的にシールドするとともに電磁波からシールドするものである。このように、導電性織物または導電性織物をテープ状に裁断したものは可撓性に優れ、どんなものにもどのような巻き方でも(螺旋状にも、帯状にも)巻き付けることができることから、人体または物体或いはその一部を容易にシールドすることができる。特に、人体やその一部或いは長い物体等に巻き付ける場合には、螺旋状に巻き付けることによってシールドすることになる。
【0065】
請求項13の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の水溶性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して水溶性繊維を溶解・除去してなるものである。ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。これによって、必要な太さの水溶性繊維を中心とした混合糸は充分な強度を有するので通常の織機で織ることができ、水溶性繊維を溶解・除去することによって金属線材のみからなる織物を製造することができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして細い金属線から形成される製品への応用が可能になる。金属製織物の目の細かさや金属線材の太さは、混合糸を形成するときの水溶性繊維の太さと金属線材の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。なお、金属製織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0066】
このようにして、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる金属線材のみからなる金属製織物となる。
【0067】
請求項14の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の溶融性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものであるから、請求項13の効果に加えて、請求項13の「水溶性繊維」の問題点である導電性の金属線材に錆がくる可能性をなくすことができる。
【0068】
ここで、「溶融性繊維」としては、例えばポリエステル、羊毛等を用いることができ、「溶融性繊維」を溶解させるための「溶液」としては、例えばポリエステルに対してはフェノールと四塩化エタンの混合液を、また羊毛に対しては金属に影響を及ぼさない程度の弱アルカリ溶液を、それぞれ用いることができる。その他にも、ナイロン・ポリエステル・塩化ビニリデン等の有機合成繊維は、塩化エチル・酢酸エチル・アセトン・テトラヒドロフラン・クロロホルム・四塩化炭素等の有機溶剤に溶解する。
【0069】
請求項15の発明にかかる金属製織物は、混合糸を多重織りしてなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して水溶性繊維または溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。これによって、厚みを有する金属製織物を得ることができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして幅広い応用が可能になる。
【0070】
請求項16の発明にかかる金属製織物は、混合糸を3次元構造に織成してなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して水溶性繊維または溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。これによって、3次元構造を有する金属製織物が得られ、幅広い応用が可能になる。
【0071】
請求項17の発明にかかる金属製織物は、導電性織物若しくは混合糸織物を加熱することによって通常の可紡性繊維、伸縮性を有する繊維、水溶性繊維または溶融性繊維のみを融解・除去または燃焼・除去してなるものである。通常の可紡性繊維、伸縮性を有する繊維、水溶性繊維または溶融性繊維の融点または発火点に比べて金属の融点はずっと高いので、加熱してこれらの繊維を融解・除去または燃焼・除去することによって金属線材のみからなる織物を製造することができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして細い金属線から形成される製品への応用が可能になる。
【0072】
請求項18の発明にかかる金属製織物は、前記導電性の金属線材を導電性を有する磁性体としたものであるから、請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の効果に加えて、磁性体としての機能を合わせ持つから、電磁波の遮蔽として良好な特性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0074】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。そして、図5は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を製造する糸の状態を示す写真1としての図、図6は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真2としての図、図7は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真3としての図である。
【0075】
図1(a)に示されるように、本実施の形態1の導電性織物1を構成する混合糸2は、複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。これによって、ニッケルメッキ銅線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3ができるだけニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0076】
このようにして形成された混合糸2を織機で織って、図1(b)に示されるような導電性織物1を製造した。図1(b)に拡大して示されるように、この導電性織物1の表面にはニッケルメッキ銅線材4がかなりの割合で露出している。したがって、電磁波遮蔽性能も大きいものと期待される。そこで、この導電性織物1の電磁波遮蔽性能を測定したところ、周波数100MHzにおいて65dB〜70dBという高い値を示した。なお、かつ、この導電性織物1は薄いため二重にしても電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽作業着等に応用することができるので、二重にした場合の電磁波遮蔽性能を測定したところ、周波数100MHzにおいて140dBという大きな電磁波遮蔽性能を示した。
【0077】
このようにして、本実施の形態にかかる導電性織物1においては、表面に露出する導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。したがって、電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物1を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0078】
なお、写真2及び写真3は、図1に対応する実施物であり、Z撚り(4a)及びS撚り(4b)のピッチは、写真1に示すように比較的粗いものとしている。したがって、Z撚り(4a)及びS撚り(4b)のピッチを変化させるだけで、電磁波遮蔽材としての特性が大きく変化すると推定される。
【0079】
また、このようにして製造された導電性織物1は可撓性に優れているため、テープ状(包帯状)に裁断して、電磁波遮蔽したい部分または全体に巻き付け、ナイロン繊維3部分を溶融・固化させて止めることによって、様々な形状の部分または全体を容易に電磁波遮蔽することができる。
【0080】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図2を参照して説明する。図2(a)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0081】
図2(a)に示されるように、本実施の形態2の導電性織物6を構成する混合糸7は、中心に複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4を各3本ずつZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して、ナイロン繊維3の大部分が導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4で覆われるように形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、実施の形態1と同じく約80μmである。これによって、ニッケルメッキ銅線材4は必要電磁波遮蔽な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3の大部分がニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸7が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0082】
図2(b)に示されるように、この混合糸7によって織られた本実施の形態2の導電性織物6は、混合糸7が中心にナイロン繊維3を配置し、大部分がニッケルメッキ銅線材4で覆われるように周囲に各3本ずつのニッケルメッキ銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されているので、織成された織物6の表面には殆どニッケルメッキ銅線材4のみが露出していることになり、したがってさらに電磁波遮蔽性に優れた導電性織物となる。よって、より優れた電磁波遮蔽材として電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0083】
このようにして、本実施の形態2の導電性織物6においては、表面に露出する導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4の面積の割合を最大限に大きくすることによってさらに大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。
【0084】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について、図3及び図4を参照して説明する。図3(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。図4(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物の全体構成を示す斜視図である。
【0085】
図3(a)に示されるように、本実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物10を構成する混合糸12は、複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13を中心にして、この水溶性ビニロン繊維13に金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成されている。これによって、ステンレス線材14は必要な太さの水溶性ビニロン繊維13を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸12が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。このようにして形成された混合糸12を織機で織って、図3(b)に示されるような混合糸織物10を製造した。
【0086】
この混合糸織物10を約60℃の温水中に浸して、混合糸織物10の内部まで温水が行き渡るように充分に振盪させる。これによって、混合糸12を構成する水溶性ビニロン繊維13が約60℃の温水に溶解して、図4(a)に示されるように、ステンレス線材14のみが残された構造12Aとなる。したがって、図3(b)に示される混合糸織物10は、図4(b)に示されるように、ステンレス線材14のみによって構成される金属製織物11となり、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに金属製織物11を縫付けた電磁波遮蔽作業着、金属フィルターを始めとして細いステンレス線材14から形成される製品への応用が可能になる。金属製織物11の目の細かさやステンレス線材14の太さは、混合糸12を形成するときの水溶性ビニロン繊維13の太さとステンレス線材14の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。
【0087】
このようにして、本実施の形態3にかかる金属製織物11においては、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる金属線材のみからなる金属製織物となる。
【0088】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について、図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0089】
図8(a)に示されるように、本実施の形態4にかかる導電性織物21は、図1(a)に示される実施の形態1の混合糸2によって織成されている。即ち、混合糸2は複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。本実施の形態4にかかる導電性織物21が実施の形態1の導電性織物1と異なるのは、図8(a)に示されるように二重織りされている点である。
【0090】
ニッケルメッキ銅線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3ができるだけニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で一度に二重織りすることができる。これによって、導電性織物21に含まれるニッケルメッキ銅線材4の絶対量が増加するため、より優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物21を得ることができる。したがって、電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物21を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0091】
本実施の形態4においては、多重織りの導電性織物の一例として二重織りの導電性織物21について説明したが、混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、三重織り・四重織り・五重織りも可能である。また、混合糸2の代わりに、複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13を中心にして、この水溶性ビニロン繊維13に金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成された混合糸12を用いて多重織りの混合糸織物を織成し、約60℃の温水中に浸して混合糸12を構成する水溶性ビニロン繊維13を溶解させれば、多重織りの金属製織物を製造することもできる。
【0092】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について、図9を参照して説明する。図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0093】
図9(a)に示されるように、本実施の形態5にかかる導電性織物22も、図1(a)に示される実施の形態1の混合糸2によって織成されている。即ち、混合糸2は複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。本実施の形態5にかかる導電性織物22が実施の形態1の導電性織物1と異なるのは、図9(a)に示されるように、段ボールのような3次元構造を有する点である。この導電性織物22は襞織りという織り方で織られた物で、3枚の一重織りの織物を平行して織りながら中間の織物のみを遅らせたり進ませたりすることによって、上下の織物と接続させたものである。
【0094】
このように、ニッケルメッキされた銅線材4を撚り込んだ混合糸2で立体的な構造を形成することによって、多重織りの効果とともに内部に適当な空間ができることから、さらに優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物22を得ることができる。なお、混合糸2の代わりに、水溶性ビニロン繊維の束13を中心にしてステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成された混合糸12を用いて3次元構造を有する混合糸織物を織成し、約60℃の温水中に浸して混合糸12を構成する水溶性ビニロン繊維13を溶解させれば、3次元構造を有する金属製織物を製造することもできる。
【0095】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について、図10及び図11を参照して説明する。図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。図11(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0096】
図10(a)に示されるように、本実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物27を構成する混合糸25は、複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13と複数本の伸縮性を有する繊維としてのポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)(以下、「ポリエステル製FTY」ともいう。)の束26とを中心にして、この水溶性ビニロン繊維13及びポリエステル製FTY26の束に金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成されている。これによって、ステンレス線材14は必要な太さの水溶性ビニロン繊維13及びポリエステル製FTY26を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸25が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。このようにして形成された混合糸25を織機で織って、図10(b)に示されるような混合糸織物27を製造した。
【0097】
この混合糸織物27を約60℃の温水中に浸して、混合糸織物27の内部まで温水が行き渡るように充分に振盪させる。これによって、混合糸25を構成する水溶性ビニロン繊維13のみが約60℃の温水に溶解して、図11(a)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14が残され、しかも両者の間に溶解した水溶性ビニロン繊維13の分の隙間が形成された構造25Aとなる。したがって、図10(b)に示される混合糸織物27は、図11(b)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14によって構成される顕著な伸縮性を有する導電性織物28となる。
【0098】
具体的には、この導電性織物28は約24〜25%もの伸縮性を示し、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物28を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとして細いステンレス線材14から形成される製品への応用が可能になる。
【0099】
導電性織物28の目の細かさやステンレス線材14の太さは、混合糸25を形成するときの水溶性ビニロン繊維13の太さとステンレス線材14の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。
【0100】
このようにして、本実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物28においては、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる伸縮性を有する導電性織物となる。
【0101】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について、図12及び図13を参照して説明する。図12(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の芯となる元糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(c)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。図13(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0102】
図12(a)に示されるように、本実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物33を構成する混合糸32の芯となる元糸30は、複数本の伸縮性を有する繊維としてのポリエステル製FTYの束26を中心にして、このポリエステル製FTY26の束に複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13をZ撚り(13a)及びS撚り(13b)して形成されている。そして、図12(b)に示されるように、本実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物33を構成する混合糸32は、この元糸30を中心にして、金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成されている。
【0103】
これによって、ステンレス線材14は必要な太さの水溶性ビニロン繊維13及びポリエステル製FTY26からなる元糸30を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸32が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。このようにして形成された混合糸32を織機で織って、図12(c)に示されるような混合糸織物33を製造した。
【0104】
この混合糸織物33を約60℃の温水中に浸して、混合糸織物33の内部まで温水が行き渡るように充分に振盪させる。これによって、混合糸32の芯をなす元糸30を構成する水溶性ビニロン繊維13のみが約60℃の温水に溶解して、図13(a)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14が残され、しかも両者の間に溶解した水溶性ビニロン繊維13の分の隙間が形成された構造32Aとなる。したがって、図12(c)に示される混合糸織物33は、図13(b)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14によって構成される顕著な伸縮性を有する導電性織物35となる。
【0105】
具体的には、この導電性織物35は約15%もの伸縮性を示し、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物35を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとして細いステンレス線材14から形成される製品への応用が可能になる。
【0106】
導電性織物35の目の細かさやステンレス線材14の太さは、混合糸32を形成するときの水溶性ビニロン繊維13の太さとステンレス線材14の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。
【0107】
このようにして、本実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物35においては、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる伸縮性を有する導電性織物となる。
【0108】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について、図14を参照して説明する。図14は本発明の実施の形態8にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0109】
図14に示されるように、本実施の形態8の伸縮性を有する導電性織物36は、上記実施の形態1にかかる混合糸2と、やや太めの伸縮性を有する繊維としての綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)(以下、「綿製CSY」ともいう。)の束37から織成されている。図1(a)に示されるように、混合糸2は、複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。
【0110】
ここで、図14に示されるように、伸縮性を有する導電性織物36においては、混合糸2と伸縮性を有する繊維としての綿製CSY37とが、縦方向にも横方向にも交互に配置されている。これによって、本実施の形態8にかかる導電性織物36は顕著な伸縮性を有する導電性織物となり、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物36を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとして細いニッケルメッキされた銅線材4から形成される製品への応用が可能になる。
【0111】
実施の形態9
次に、本発明の実施の形態9について、図15を参照して説明する。図15は本発明の実施の形態9にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0112】
図15に示されるように、本実施の形態9の伸縮性を有する導電性織物40は、上記実施の形態8にかかるやや太めの伸縮性を有する繊維としての綿製CSYの束37と、やや太めの柔軟性を有する導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材38から織成されている。
【0113】
ここで、図15に示されるように、伸縮性を有する導電性織物40においては、縦糸としてはニッケルメッキされた銅線材38のみが、横糸としては綿製CSY37のみが、それぞれ用いられている。これによって、本実施の形態9にかかる導電性織物40は横方向に顕著な伸縮性を有する導電性織物となり、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物40を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとしてやや太めのニッケルメッキされた銅線材38から形成される製品への応用が可能になる。
【0114】
上記各実施の形態においては、混合糸を形成する際に導電性金属線材をZ撚り及びS撚りしているが、1本または複数本の導電性金属線材をZ撚りのみまたはS撚りのみすることによって混合糸を形成しても良い。上記実施の形態7においても、元糸を形成する際に水溶性繊維をZ撚り及びS撚りしているが、1本または複数本の水溶性繊維をZ撚りのみまたはS撚りのみすることによって元糸を形成しても良い。
【0115】
また、上記実施の形態1,2,4,5,8,9においては、導電性金属線材としてニッケルメッキ銅線材4,38を使用しているが、これに限られるものではなく、その他の導電性金属線材を使用しても良い。勿論、導電性を有し、かつ、磁性体、特に、強磁性体であれば、静電及び磁気的に遮蔽に好適となる。
【0116】
さらに、上記実施の形態3,6,7においては水溶性繊維を用いているが、溶融性繊維を用いて、これに少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して溶融性繊維を溶解・除去して金属製織物を形成しても良い。これによって、水溶性繊維の問題点である導電性の金属線材に錆がくる可能性をなくすことができる。
【0117】
ここで、「溶融性繊維」としては、例えばポリエステル、羊毛等を用いることができ、「溶融性繊維」を溶解させるための「溶液」としては、例えばポリエステルに対してはフェノールと四塩化エタンの混合液を、また羊毛に対しては金属に影響を及ぼさない程度の弱アルカリ溶液を、それぞれ用いることができる。その他にも、ナイロン・ポリエステル・塩化ビニリデン等の有機合成繊維は、塩化エチル・酢酸エチル・アセトン・テトラヒドロフラン・クロロホルム・四塩化炭素等の有機溶剤に溶解する。
【0118】
したがって、上記実施の形態3における水溶性ビニロン繊維13の代わりにポリエステル繊維を用いて混合糸織物を製造し、この混合糸織物をフェノールと四塩化エタンの混合液中に浸して、混合糸織物の内部まで混合液が行き渡るように充分に振盪させれば、ポリエステル繊維がフェノールと四塩化エタンの混合液に溶解して、金属製織物を容易に製造することができる。
【0119】
また、上記各実施の形態にかかる導電性織物1,6,21,22、混合糸織物10,27,33を加熱することによって、通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維3、水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維13、伸縮性を有する繊維としてのポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)26や綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)37を融解・除去または燃焼・除去して金属製織物を形成することもできる。
【0120】
さらに、伸縮性を有する繊維として、上記実施の形態6,7においてはポリエステルからなるFTYを用いた例を示し、実施の形態8,9においては綿からなるCSYを用いた例を示したが、実施の形態6,7において綿製CSYを用いても良いし、実施の形態8,9においてポリエステル製FTYを用いることもでき、さらにその他の材質からなるFTY、CSYを始めとして、他の伸縮性を有する繊維を用いることもできる。
【0121】
そして、導電性織物及び金属製織物のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0122】
さらに、本発明の導電性織物及び金属製織物は、電池の電極としての使用、絨毯の基布として植毛された繊維に帯電した電荷を逃がすのにも使用できる。勿論、自動車等の乗物のシートに用いて繊維に帯電した電荷を逃がすこともできる。特に、金属製織物は、メタルラスまたはワイヤラス等と同様に建材にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物の全体構成を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を製造する糸の状態を示す写真1としての図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真2としての図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真3としての図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図9】図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図12】図12(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の芯となる元糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(c)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。
【図13】図13(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態8にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態9にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0124】
1,6,21,22 導電性織物
2,7,12,25,32 混合糸
3 通常の可紡性繊維
4,38 導電性金属線材
10,27,33 混合糸織物
11 金属製織物
13 水溶性繊維
14 金属線材
26,37 伸縮性を有する繊維
28,35,36,40 伸縮性を有する導電性織物
30 元糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電磁波遮蔽材として用いることができる導電性織物及び金属製織物に関するもので、特に電磁波遮蔽性能の大幅な向上を可能とする導電性織物及び容易に作ることができる金属製織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(情報技術)の発達によって、パーソナル・コンピュータを始めとするIT機器・OA機器が急速に普及し、通常の家庭環境や職場環境においても、これらのIT機器・OA機器から放射される電磁波が人体にもたらす影響が問題にされるようになってきた。そこで、特許文献1に記載の考案においては、上記機器類の電磁波遮蔽用キャビネット等への応用を目的として、弾性繊維の周囲に金属繊維を螺旋状に巻き付けた複合弾性糸で構成された織布を熱可塑性合成樹脂シートで挟んだ電磁波遮蔽用合成樹脂板について提案している。
【0003】
また、特許文献2に記載の考案においては、より広い範囲で電磁波を遮蔽できるようにするために、アルミ箔をステープル繊維状に微細に裁断して得られたアルミニウム繊維と通常の可紡性繊維との混紡糸を用いて織成された織地により形成された電磁波シールド用カーテンについて提案している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、人体をより確実に電磁波から守ることを目的として、電磁波遮蔽作業服等を縫製するために、導電性金属線材と撚り糸またはフィラメント糸とを平行に引き揃えて芯糸を形成し、この芯糸の周囲に撚り糸またはフィラメント糸をZ撚り、S撚りして導電性金属線材が露出しないようにして、電磁波遮蔽編織用複合糸を形成している。
【特許文献1】実公平3−40595号公報
【特許文献2】実公平3−36538号公報
【特許文献3】特開2004−11033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性金属材料とそれ以外のものとの混合物からなる電磁波遮蔽体の遮蔽性能は、表面に露出している導電性金属材料の面積の割合が多いほど向上する。これに対して、上記特許文献1に記載の電磁波遮蔽用合成樹脂板においては、熱可塑性合成樹脂シートの間に金属繊維を用いて構成した織布を挟んでおり、表面には導電性金属材料が露出していない。その結果、電磁波遮蔽性能も周波数30MHzで57dB、1000MHzで42dBと大きな値は得られていない。また、上記特許文献2に記載の電磁波シールド用カーテンにおいても、アルミニウム繊維の表面露出比率が少ないため、電磁波遮蔽性能も周波数10〜500MHzの電磁波に対して30〜50dBに留まっている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の電磁波遮蔽編織用複合糸においては、着心地の良さを重視しているために導電性金属線材が露出しないようにしていることから、具体的な測定データは記載されていないが、電磁波遮蔽性能はさらに小さいものと考えられる。
【0007】
電磁波遮蔽用織物の電磁波遮蔽性能を最も容易に向上させるには、導電性金属線材のみで織物を織るのが理想的であるが、金属線材は強度に劣るために織機でそのまま織ろうとしても切れてしまったり、絡まってしまったりという不具合が起こる。そのため、導電性金属線材に限らず、金属フィルター等への応用を目的とした金属線材のみからなる金属製織物を織成することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物の提供を課題とするものである。また、本発明は同時に用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる金属線材のみからなる金属製織物の提供をも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなるものである。
【0010】
ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。また、「少なくとも導電性の金属線材」とは、導電性を持つことを要件とし、良好な導電体であることが望ましいが、磁気的遮蔽を行う場合には、磁性体であることも必要であり、好ましくは、強磁性体であることが必要である。しかし、本発明を実施する場合には、少なくとも導電性の金属線材であれば静電的なシールド及び電磁波のシールド効果が確認される。
【0011】
請求項2の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に2本以上の少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして前記通常の可紡性繊維の大部分が前記導電性の金属線材で覆われるように形成した混合糸を織成してなるものである。
【0012】
ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。また、「少なくとも導電性の金属線材」とは、導電性を持つことを要件とし、良好な導電体であることが望ましいが、磁気的遮蔽を行う場合には、磁性体であることも必要であり、好ましくは、強磁性体であることが必要である。しかし、本発明を実施する場合には、少なくとも導電性の金属線材であれば静電的なシールド及び電磁波のシールド効果が確認される。
【0013】
請求項3の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の水溶性繊維及び1本または複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。
【0014】
ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。また、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0015】
請求項4の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の伸縮性を有する繊維に1本または複数本の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸にさらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0016】
請求項5の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを縦方向及び横方向ともに交互に配置されるように織成してなる伸縮性を有するものである。
【0017】
請求項6の発明にかかる導電性織物は、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦糸または横糸にし、少なくとも導電性の金属線材を横糸または縦糸にして織成してなる伸縮性を有するものである。
【0018】
請求項7の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は約50μm〜約500μmの太さを有するものである。
【0019】
請求項8の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は銅線材であるものである。
【0020】
請求項9の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は導電性を有する磁性体である。例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【0021】
請求項10の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを多重織りしてなるものである。
【0022】
請求項11の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを3次元構造に織成してなるものである。
【0023】
請求項12の発明にかかる導電性織物は、請求項1乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記導電性織物または前記導電性織物をテープ状に裁断したものを巻き付けることによって、巻き付けられた人体または物体或いはその一部を静電的にシールドするとともに電磁波からシールドするものである。
【0024】
請求項13の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の水溶性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0025】
ここで、「水溶性繊維」としては、例えば、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。これによって、必要な太さの水溶性繊維を中心とした混合糸は充分な強度を有するので通常の織機で織ることができ、水溶性繊維を溶解・除去することによって金属線材のみからなる織物を製造することができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして細い金属線から形成される製品への応用が可能になる。金属製織物の目の細かさや金属線材の太さは、混合糸を形成するときの水溶性繊維の太さと金属線材の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。なお、金属製織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0026】
請求項14の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の溶融性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0027】
前述のように、「水溶性繊維」では、少なくとも導電性の金属線材に錆がくる可能性がある。しかし、本発明では、織物を形成する場合の芯材を溶融できればよいことから、「溶融性繊維」の使用が望ましい。
【0028】
請求項15の発明にかかる金属製織物は、請求項13または請求項14の構成において、前記混合糸を多重織りしてなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0029】
請求項16の発明にかかる金属製織物は、請求項13または請求項14の構成において、前記混合糸を3次元構造に織成してなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。
【0030】
請求項17の発明にかかる金属製織物は、請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の導電性織物若しくは請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の混合糸織物を加熱することによって前記通常の可紡性繊維、前記伸縮性を有する繊維、前記水溶性繊維または前記溶融性繊維のみを融解・除去または燃焼・除去してなるものである。
【0031】
請求項18の発明にかかる金属製織物は、請求項13乃至請求項16のいずれか1つの構成において、前記導電性の金属線材は導電性を有する磁性体である。例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなるものである。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。これによって、金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、金属線材を太くしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、周囲に導電性金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されているので、織成された織物は表面に露出している金属の割合が際立って多くなり、したがって、より電磁波遮蔽性に優れた導電性織物となる。
【0033】
よって、優れた電磁波遮蔽材として電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0034】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0035】
請求項2の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に2本以上の少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして通常の可紡性繊維の大部分が導電性金属線材で覆われるように形成した混合糸を織成してなるものである。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。これによって、導電性金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、通常の可紡性繊維の大部分が導電性金属線材で覆われるようにしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0036】
そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、その大部分が導電性金属線材で覆われるように周囲に2本以上の導電性金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されているので、織成された織物の表面には殆ど金属のみが露出していることになり、したがってさらに電磁波遮蔽性に優れた導電性織物となる。
【0037】
よって、より優れた電磁波遮蔽材として電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0038】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合を最大限に大きくすることによってさらに大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0039】
請求項3の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の水溶性繊維及び1本または複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。
【0040】
ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。また、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0041】
伸縮性を有する導電性織物を得るためには、混合糸の中心に配置される通常の可紡性繊維を単に伸縮性を有する繊維に置き換えるだけではうまく行かない。そこで、本発明者が鋭意実験研究を繰り返した結果、中心に配置される伸縮性を有する繊維と少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成される金属線材部分との間に隙間を設けることによって、織り上げられた導電性織物に顕著な伸縮性が得られることを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。
【0042】
即ち、1本以上の水溶性繊維及び1本以上の伸縮性を有する繊維を束にして少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を、織成して混合糸織物とした後に所定温度の水中に浸して水溶性繊維のみを溶解・除去することによって、伸縮性を有する繊維と金属線材部分との間に隙間が生ずるため、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0043】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0044】
請求項4の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の伸縮性を有する繊維に1本または複数本の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸にさらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有するものである。
【0045】
ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。また、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0046】
即ち、1本以上の伸縮性を有する繊維に1本以上の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸に、さらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成し、この混合糸を織成して混合糸織物とした後に所定温度の水中に浸して水溶性繊維のみを溶解・除去することによって、伸縮性を有する繊維と金属線材部分との間に隙間が生ずるため、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。なお、導電性織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0047】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0048】
請求項5の発明にかかる導電性織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを縦方向及び横方向ともに交互に配置されるように織成してなる伸縮性を有するものである。
【0049】
ここで、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0050】
即ち、縦糸及び横糸として、可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを交互に用いることによって、伸縮性を有さない混合糸の間に伸縮性を有する繊維を束にしたものが挟まれた構造の織物を形成することによって、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。したがって、請求項3,4に記載の発明の作用効果に加えて、水中に浸す必要がないため工数が省けるとともに、金属線材として材料を選ばないという作用効果が得られる。
【0051】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0052】
請求項6の発明にかかる導電性織物は、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦糸または横糸にし、少なくとも導電性の金属線材を横糸または縦糸にして織成してなる伸縮性を有するものである。
【0053】
ここで、「伸縮性を有する繊維」としては、ポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)や、綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)等がある。
【0054】
即ち、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦方向または横方向にのみ並べ、少なくとも導電性の金属線材を横方向または縦方向にのみ並べることによって、複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものの方向には、顕著な伸縮性を有する導電性織物を得ることができる。したがって、請求項3,4に記載の発明の作用効果に加えて、水中に浸す必要がないため工数が省けるとともに、金属線材として材料を選ばないという作用効果が得られる。
【0055】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができるとともに、伸縮性をも有する導電性織物となる。
【0056】
請求項7の発明にかかる導電性織物は、導電性金属線材が約50μm〜約500μmの太さを有するものである。本発明者は、本発明にかかる導電性織物を構成する導電性金属線材として、どの程度の太さを有するものが最も適しているか鋭意実験研究の結果、約50μm〜約500μmの太さを有するものが最も適していることを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。
【0057】
即ち、導電性金属線材の太さが約50μm未満であると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに切れる可能性が高くなり、また導電性織物としたときに表面に露出する導電性金属線材の割合が小さくなるため、大きな電磁波遮蔽性能が得られない。一方、導電性金属線材の太さが約500μmを超えると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに柔軟性が不足してうまく混合糸を紡糸することができない。したがって、導電性金属線材の太さを約50μm〜約500μmの範囲内とすることによって、容易に混合糸を紡糸することができ、また導電性織物としたときに表面に露出する導電性金属線材の割合が大きくなるため、大きな電磁波遮蔽性能を得ることができる。
【0058】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0059】
請求項8の発明にかかる導電性織物においては、少なくとも導電性の金属線材として銅線材を用いているから、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの効果に加えて、銅線材は導電性に優れ、柔軟性も兼ね備えており、任意の太さのものが容易に入手できるので、本発明の導電性織物における導電性の金属線材として適している。銅線材がニッケル等でメッキされていれば、耐候性にも優れるのでより好ましい。
【0060】
このようにして、表面に露出する導電性の金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる導電性織物となる。
【0061】
請求項9の発明にかかる導電性織物においては、前記導電性の金属線材を導電性を有する磁性体としたものであるから、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの効果に加えて、磁性体としての機能を合わせ持つから、電磁波の遮蔽として良好な特性を持たせることができる。
【0062】
請求項10の発明にかかる導電性織物は、混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと混合糸または導電性金属線材とを多重織りしてなるものであり、混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものが強度と柔軟性を充分に有するため、二重織り・三重織りはもとより、四重織り・五重織りも可能である。このように、少なくとも導電性の金属線材または導電性を有する磁性体の金属線材を撚り込んだ混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと混合糸または導電性金属線材とを多重織りすることによって、導電性織物に含まれる金属線材の絶対量が益々増加するため、より優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物を得ることができる。
【0063】
請求項11の発明にかかる導電性織物は、混合糸或いは複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと混合糸または導電性金属線材とを3次元構造に織成してなるものである。ここで、「3次元構造」とは、例えば段ボールのように3次元的な膨らみを有する構造をいう。このように、少なくとも導電性の金属線材または導電性を有する磁性体の金属線材を撚り込んだ混合糸で立体的な構造を形成することによって、多重織りの効果とともに内部に適当な空間ができることから、さらに優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物を得ることができる。
【0064】
請求項12の発明にかかる導電性織物は、導電性織物または導電性織物をテープ状に裁断したものを巻き付けることによって、巻き付けられた人体または物体或いはその一部を静電的にシールドするとともに電磁波からシールドするものである。このように、導電性織物または導電性織物をテープ状に裁断したものは可撓性に優れ、どんなものにもどのような巻き方でも(螺旋状にも、帯状にも)巻き付けることができることから、人体または物体或いはその一部を容易にシールドすることができる。特に、人体やその一部或いは長い物体等に巻き付ける場合には、螺旋状に巻き付けることによってシールドすることになる。
【0065】
請求項13の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の水溶性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して水溶性繊維を溶解・除去してなるものである。ここで、「水溶性繊維」としては、水溶性ビニロン繊維等を用いることができる。これによって、必要な太さの水溶性繊維を中心とした混合糸は充分な強度を有するので通常の織機で織ることができ、水溶性繊維を溶解・除去することによって金属線材のみからなる織物を製造することができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして細い金属線から形成される製品への応用が可能になる。金属製織物の目の細かさや金属線材の太さは、混合糸を形成するときの水溶性繊維の太さと金属線材の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。なお、金属製織物の用途にもよるが、金属線材としては水中に浸されるので、ステンレス線材、アルミニウム線材、亜鉛線材等の錆び難い材料がより好ましい。
【0066】
このようにして、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる金属線材のみからなる金属製織物となる。
【0067】
請求項14の発明にかかる金属製織物は、1本または複数本の溶融性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して前記溶融性繊維を溶解・除去してなるものであるから、請求項13の効果に加えて、請求項13の「水溶性繊維」の問題点である導電性の金属線材に錆がくる可能性をなくすことができる。
【0068】
ここで、「溶融性繊維」としては、例えばポリエステル、羊毛等を用いることができ、「溶融性繊維」を溶解させるための「溶液」としては、例えばポリエステルに対してはフェノールと四塩化エタンの混合液を、また羊毛に対しては金属に影響を及ぼさない程度の弱アルカリ溶液を、それぞれ用いることができる。その他にも、ナイロン・ポリエステル・塩化ビニリデン等の有機合成繊維は、塩化エチル・酢酸エチル・アセトン・テトラヒドロフラン・クロロホルム・四塩化炭素等の有機溶剤に溶解する。
【0069】
請求項15の発明にかかる金属製織物は、混合糸を多重織りしてなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して水溶性繊維または溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。これによって、厚みを有する金属製織物を得ることができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして幅広い応用が可能になる。
【0070】
請求項16の発明にかかる金属製織物は、混合糸を3次元構造に織成してなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して水溶性繊維または溶融性繊維を溶解・除去してなるものである。これによって、3次元構造を有する金属製織物が得られ、幅広い応用が可能になる。
【0071】
請求項17の発明にかかる金属製織物は、導電性織物若しくは混合糸織物を加熱することによって通常の可紡性繊維、伸縮性を有する繊維、水溶性繊維または溶融性繊維のみを融解・除去または燃焼・除去してなるものである。通常の可紡性繊維、伸縮性を有する繊維、水溶性繊維または溶融性繊維の融点または発火点に比べて金属の融点はずっと高いので、加熱してこれらの繊維を融解・除去または燃焼・除去することによって金属線材のみからなる織物を製造することができ、電磁波遮蔽材、金属フィルターを始めとして細い金属線から形成される製品への応用が可能になる。
【0072】
請求項18の発明にかかる金属製織物は、前記導電性の金属線材を導電性を有する磁性体としたものであるから、請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の効果に加えて、磁性体としての機能を合わせ持つから、電磁波の遮蔽として良好な特性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0074】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。そして、図5は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を製造する糸の状態を示す写真1としての図、図6は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真2としての図、図7は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真3としての図である。
【0075】
図1(a)に示されるように、本実施の形態1の導電性織物1を構成する混合糸2は、複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。これによって、ニッケルメッキ銅線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3ができるだけニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0076】
このようにして形成された混合糸2を織機で織って、図1(b)に示されるような導電性織物1を製造した。図1(b)に拡大して示されるように、この導電性織物1の表面にはニッケルメッキ銅線材4がかなりの割合で露出している。したがって、電磁波遮蔽性能も大きいものと期待される。そこで、この導電性織物1の電磁波遮蔽性能を測定したところ、周波数100MHzにおいて65dB〜70dBという高い値を示した。なお、かつ、この導電性織物1は薄いため二重にしても電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽作業着等に応用することができるので、二重にした場合の電磁波遮蔽性能を測定したところ、周波数100MHzにおいて140dBという大きな電磁波遮蔽性能を示した。
【0077】
このようにして、本実施の形態にかかる導電性織物1においては、表面に露出する導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。したがって、電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物1を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0078】
なお、写真2及び写真3は、図1に対応する実施物であり、Z撚り(4a)及びS撚り(4b)のピッチは、写真1に示すように比較的粗いものとしている。したがって、Z撚り(4a)及びS撚り(4b)のピッチを変化させるだけで、電磁波遮蔽材としての特性が大きく変化すると推定される。
【0079】
また、このようにして製造された導電性織物1は可撓性に優れているため、テープ状(包帯状)に裁断して、電磁波遮蔽したい部分または全体に巻き付け、ナイロン繊維3部分を溶融・固化させて止めることによって、様々な形状の部分または全体を容易に電磁波遮蔽することができる。
【0080】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図2を参照して説明する。図2(a)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0081】
図2(a)に示されるように、本実施の形態2の導電性織物6を構成する混合糸7は、中心に複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4を各3本ずつZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して、ナイロン繊維3の大部分が導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4で覆われるように形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、実施の形態1と同じく約80μmである。これによって、ニッケルメッキ銅線材4は必要電磁波遮蔽な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3の大部分がニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸7が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0082】
図2(b)に示されるように、この混合糸7によって織られた本実施の形態2の導電性織物6は、混合糸7が中心にナイロン繊維3を配置し、大部分がニッケルメッキ銅線材4で覆われるように周囲に各3本ずつのニッケルメッキ銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されているので、織成された織物6の表面には殆どニッケルメッキ銅線材4のみが露出していることになり、したがってさらに電磁波遮蔽性に優れた導電性織物となる。よって、より優れた電磁波遮蔽材として電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0083】
このようにして、本実施の形態2の導電性織物6においては、表面に露出する導電性金属線材としてのニッケルメッキ銅線材4の面積の割合を最大限に大きくすることによってさらに大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。
【0084】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について、図3及び図4を参照して説明する。図3(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。図4(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物の全体構成を示す斜視図である。
【0085】
図3(a)に示されるように、本実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物10を構成する混合糸12は、複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13を中心にして、この水溶性ビニロン繊維13に金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成されている。これによって、ステンレス線材14は必要な太さの水溶性ビニロン繊維13を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸12が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。このようにして形成された混合糸12を織機で織って、図3(b)に示されるような混合糸織物10を製造した。
【0086】
この混合糸織物10を約60℃の温水中に浸して、混合糸織物10の内部まで温水が行き渡るように充分に振盪させる。これによって、混合糸12を構成する水溶性ビニロン繊維13が約60℃の温水に溶解して、図4(a)に示されるように、ステンレス線材14のみが残された構造12Aとなる。したがって、図3(b)に示される混合糸織物10は、図4(b)に示されるように、ステンレス線材14のみによって構成される金属製織物11となり、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに金属製織物11を縫付けた電磁波遮蔽作業着、金属フィルターを始めとして細いステンレス線材14から形成される製品への応用が可能になる。金属製織物11の目の細かさやステンレス線材14の太さは、混合糸12を形成するときの水溶性ビニロン繊維13の太さとステンレス線材14の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。
【0087】
このようにして、本実施の形態3にかかる金属製織物11においては、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる金属線材のみからなる金属製織物となる。
【0088】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について、図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0089】
図8(a)に示されるように、本実施の形態4にかかる導電性織物21は、図1(a)に示される実施の形態1の混合糸2によって織成されている。即ち、混合糸2は複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。本実施の形態4にかかる導電性織物21が実施の形態1の導電性織物1と異なるのは、図8(a)に示されるように二重織りされている点である。
【0090】
ニッケルメッキ銅線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ナイロン繊維3ができるだけニッケルメッキ銅線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で一度に二重織りすることができる。これによって、導電性織物21に含まれるニッケルメッキ銅線材4の絶対量が増加するため、より優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物21を得ることができる。したがって、電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物21を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0091】
本実施の形態4においては、多重織りの導電性織物の一例として二重織りの導電性織物21について説明したが、混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、三重織り・四重織り・五重織りも可能である。また、混合糸2の代わりに、複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13を中心にして、この水溶性ビニロン繊維13に金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成された混合糸12を用いて多重織りの混合糸織物を織成し、約60℃の温水中に浸して混合糸12を構成する水溶性ビニロン繊維13を溶解させれば、多重織りの金属製織物を製造することもできる。
【0092】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について、図9を参照して説明する。図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0093】
図9(a)に示されるように、本実施の形態5にかかる導電性織物22も、図1(a)に示される実施の形態1の混合糸2によって織成されている。即ち、混合糸2は複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ニッケルメッキ銅線材4の太さは、約80μmである。本実施の形態5にかかる導電性織物22が実施の形態1の導電性織物1と異なるのは、図9(a)に示されるように、段ボールのような3次元構造を有する点である。この導電性織物22は襞織りという織り方で織られた物で、3枚の一重織りの織物を平行して織りながら中間の織物のみを遅らせたり進ませたりすることによって、上下の織物と接続させたものである。
【0094】
このように、ニッケルメッキされた銅線材4を撚り込んだ混合糸2で立体的な構造を形成することによって、多重織りの効果とともに内部に適当な空間ができることから、さらに優れた電磁波遮蔽性能を有する導電性織物22を得ることができる。なお、混合糸2の代わりに、水溶性ビニロン繊維の束13を中心にしてステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成された混合糸12を用いて3次元構造を有する混合糸織物を織成し、約60℃の温水中に浸して混合糸12を構成する水溶性ビニロン繊維13を溶解させれば、3次元構造を有する金属製織物を製造することもできる。
【0095】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について、図10及び図11を参照して説明する。図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。図11(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0096】
図10(a)に示されるように、本実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物27を構成する混合糸25は、複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13と複数本の伸縮性を有する繊維としてのポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)(以下、「ポリエステル製FTY」ともいう。)の束26とを中心にして、この水溶性ビニロン繊維13及びポリエステル製FTY26の束に金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成されている。これによって、ステンレス線材14は必要な太さの水溶性ビニロン繊維13及びポリエステル製FTY26を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸25が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。このようにして形成された混合糸25を織機で織って、図10(b)に示されるような混合糸織物27を製造した。
【0097】
この混合糸織物27を約60℃の温水中に浸して、混合糸織物27の内部まで温水が行き渡るように充分に振盪させる。これによって、混合糸25を構成する水溶性ビニロン繊維13のみが約60℃の温水に溶解して、図11(a)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14が残され、しかも両者の間に溶解した水溶性ビニロン繊維13の分の隙間が形成された構造25Aとなる。したがって、図10(b)に示される混合糸織物27は、図11(b)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14によって構成される顕著な伸縮性を有する導電性織物28となる。
【0098】
具体的には、この導電性織物28は約24〜25%もの伸縮性を示し、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物28を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとして細いステンレス線材14から形成される製品への応用が可能になる。
【0099】
導電性織物28の目の細かさやステンレス線材14の太さは、混合糸25を形成するときの水溶性ビニロン繊維13の太さとステンレス線材14の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。
【0100】
このようにして、本実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物28においては、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる伸縮性を有する導電性織物となる。
【0101】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について、図12及び図13を参照して説明する。図12(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の芯となる元糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(c)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。図13(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0102】
図12(a)に示されるように、本実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物33を構成する混合糸32の芯となる元糸30は、複数本の伸縮性を有する繊維としてのポリエステル製FTYの束26を中心にして、このポリエステル製FTY26の束に複数本の水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維の束13をZ撚り(13a)及びS撚り(13b)して形成されている。そして、図12(b)に示されるように、本実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物33を構成する混合糸32は、この元糸30を中心にして、金属線材としてのステンレス線材14をZ撚り(14a)及びS撚り(14b)して形成されている。
【0103】
これによって、ステンレス線材14は必要な太さの水溶性ビニロン繊維13及びポリエステル製FTY26からなる元糸30を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸32が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。このようにして形成された混合糸32を織機で織って、図12(c)に示されるような混合糸織物33を製造した。
【0104】
この混合糸織物33を約60℃の温水中に浸して、混合糸織物33の内部まで温水が行き渡るように充分に振盪させる。これによって、混合糸32の芯をなす元糸30を構成する水溶性ビニロン繊維13のみが約60℃の温水に溶解して、図13(a)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14が残され、しかも両者の間に溶解した水溶性ビニロン繊維13の分の隙間が形成された構造32Aとなる。したがって、図12(c)に示される混合糸織物33は、図13(b)に示されるように、ポリエステル製FTY26及びステンレス線材14によって構成される顕著な伸縮性を有する導電性織物35となる。
【0105】
具体的には、この導電性織物35は約15%もの伸縮性を示し、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物35を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとして細いステンレス線材14から形成される製品への応用が可能になる。
【0106】
導電性織物35の目の細かさやステンレス線材14の太さは、混合糸32を形成するときの水溶性ビニロン繊維13の太さとステンレス線材14の太さを適宜選択することによって、任意に調整することができる。
【0107】
このようにして、本実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物35においては、優れた電磁波遮蔽性能を有するとともに、用途に応じて目の細かさや金属線材の太さを任意に調整できる伸縮性を有する導電性織物となる。
【0108】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について、図14を参照して説明する。図14は本発明の実施の形態8にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0109】
図14に示されるように、本実施の形態8の伸縮性を有する導電性織物36は、上記実施の形態1にかかる混合糸2と、やや太めの伸縮性を有する繊維としての綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)(以下、「綿製CSY」ともいう。)の束37から織成されている。図1(a)に示されるように、混合糸2は、複数本の通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維の束3を中心にして、このナイロン繊維3に導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。
【0110】
ここで、図14に示されるように、伸縮性を有する導電性織物36においては、混合糸2と伸縮性を有する繊維としての綿製CSY37とが、縦方向にも横方向にも交互に配置されている。これによって、本実施の形態8にかかる導電性織物36は顕著な伸縮性を有する導電性織物となり、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物36を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとして細いニッケルメッキされた銅線材4から形成される製品への応用が可能になる。
【0111】
実施の形態9
次に、本発明の実施の形態9について、図15を参照して説明する。図15は本発明の実施の形態9にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【0112】
図15に示されるように、本実施の形態9の伸縮性を有する導電性織物40は、上記実施の形態8にかかるやや太めの伸縮性を有する繊維としての綿製CSYの束37と、やや太めの柔軟性を有する導電性金属線材としてのニッケルメッキされた銅線材38から織成されている。
【0113】
ここで、図15に示されるように、伸縮性を有する導電性織物40においては、縦糸としてはニッケルメッキされた銅線材38のみが、横糸としては綿製CSY37のみが、それぞれ用いられている。これによって、本実施の形態9にかかる導電性織物40は横方向に顕著な伸縮性を有する導電性織物となり、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに導電性織物40を縫付けた電磁波遮蔽作業着を始めとしてやや太めのニッケルメッキされた銅線材38から形成される製品への応用が可能になる。
【0114】
上記各実施の形態においては、混合糸を形成する際に導電性金属線材をZ撚り及びS撚りしているが、1本または複数本の導電性金属線材をZ撚りのみまたはS撚りのみすることによって混合糸を形成しても良い。上記実施の形態7においても、元糸を形成する際に水溶性繊維をZ撚り及びS撚りしているが、1本または複数本の水溶性繊維をZ撚りのみまたはS撚りのみすることによって元糸を形成しても良い。
【0115】
また、上記実施の形態1,2,4,5,8,9においては、導電性金属線材としてニッケルメッキ銅線材4,38を使用しているが、これに限られるものではなく、その他の導電性金属線材を使用しても良い。勿論、導電性を有し、かつ、磁性体、特に、強磁性体であれば、静電及び磁気的に遮蔽に好適となる。
【0116】
さらに、上記実施の形態3,6,7においては水溶性繊維を用いているが、溶融性繊維を用いて、これに少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して溶融性繊維を溶解・除去して金属製織物を形成しても良い。これによって、水溶性繊維の問題点である導電性の金属線材に錆がくる可能性をなくすことができる。
【0117】
ここで、「溶融性繊維」としては、例えばポリエステル、羊毛等を用いることができ、「溶融性繊維」を溶解させるための「溶液」としては、例えばポリエステルに対してはフェノールと四塩化エタンの混合液を、また羊毛に対しては金属に影響を及ぼさない程度の弱アルカリ溶液を、それぞれ用いることができる。その他にも、ナイロン・ポリエステル・塩化ビニリデン等の有機合成繊維は、塩化エチル・酢酸エチル・アセトン・テトラヒドロフラン・クロロホルム・四塩化炭素等の有機溶剤に溶解する。
【0118】
したがって、上記実施の形態3における水溶性ビニロン繊維13の代わりにポリエステル繊維を用いて混合糸織物を製造し、この混合糸織物をフェノールと四塩化エタンの混合液中に浸して、混合糸織物の内部まで混合液が行き渡るように充分に振盪させれば、ポリエステル繊維がフェノールと四塩化エタンの混合液に溶解して、金属製織物を容易に製造することができる。
【0119】
また、上記各実施の形態にかかる導電性織物1,6,21,22、混合糸織物10,27,33を加熱することによって、通常の可紡性繊維としてのナイロン繊維3、水溶性繊維としての水溶性ビニロン繊維13、伸縮性を有する繊維としてのポリエステルからなるFTY(フィラメント・ツイステッド・ヤーン)26や綿からなるCSY(コア・スパン・ヤーン)37を融解・除去または燃焼・除去して金属製織物を形成することもできる。
【0120】
さらに、伸縮性を有する繊維として、上記実施の形態6,7においてはポリエステルからなるFTYを用いた例を示し、実施の形態8,9においては綿からなるCSYを用いた例を示したが、実施の形態6,7において綿製CSYを用いても良いし、実施の形態8,9においてポリエステル製FTYを用いることもでき、さらにその他の材質からなるFTY、CSYを始めとして、他の伸縮性を有する繊維を用いることもできる。
【0121】
そして、導電性織物及び金属製織物のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0122】
さらに、本発明の導電性織物及び金属製織物は、電池の電極としての使用、絨毯の基布として植毛された繊維に帯電した電荷を逃がすのにも使用できる。勿論、自動車等の乗物のシートに用いて繊維に帯電した電荷を逃がすこともできる。特に、金属製織物は、メタルラスまたはワイヤラス等と同様に建材にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態3にかかる金属製織物の全体構成を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物を製造する糸の状態を示す写真1としての図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真2としての図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態1にかかる導電性織物の実施物を示す写真3としての図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図9】図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる導電性織物の構成を示す拡大縦断面図、(b)は導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図12】図12(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を構成する混合糸の芯となる元糸の構成を示す拡大図、(b)は混合糸織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(c)は混合糸織物の全体構成を示す斜視図である。
【図13】図13(a)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物を製造するための混合糸織物を温水中に浸した後の混合糸の状態を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態7にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態8にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態9にかかる伸縮性を有する導電性織物の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0124】
1,6,21,22 導電性織物
2,7,12,25,32 混合糸
3 通常の可紡性繊維
4,38 導電性金属線材
10,27,33 混合糸織物
11 金属製織物
13 水溶性繊維
14 金属線材
26,37 伸縮性を有する繊維
28,35,36,40 伸縮性を有する導電性織物
30 元糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなることを特徴とする導電性織物。
【請求項2】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に2本以上の少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして、前記通常の可紡性繊維の大部分が前記導電性金属線材で覆われるように形成した混合糸を織成してなることを特徴とする導電性織物。
【請求項3】
1本または複数本の水溶性繊維及び1本または複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項4】
1本または複数本の伸縮性を有する繊維に1本または複数本の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸にさらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項5】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを縦方向及び横方向ともに交互に配置されるように織成してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項6】
複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦糸または横糸にし、少なくとも導電性の金属線材を横糸または縦糸にして織成してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項7】
前記導電性金属線材は、約50μm〜約500μmの太さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項8】
前記導電性金属線材は、銅線材であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項9】
前記導電性金属線材は、導電性を有する磁性体であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項10】
前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを多重織りしてなることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項11】
前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを3次元構造に織成してなることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項12】
前記導電性織物または前記導電性織物をテープ状に裁断したものを巻き付けることによって、巻き付けられた人体または物体或いはその一部を静電的にシールドするとともに電磁波からシールドすることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項13】
1本または複数本の水溶性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする金属製織物。
【請求項14】
1本または複数本の溶融性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して前記溶融性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする金属製織物。
【請求項15】
前記混合糸を多重織りしてなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の金属製織物。
【請求項16】
前記混合糸を3次元構造に織成してなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の金属製織物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の導電性織物若しくは請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の混合糸織物を加熱することによって前記通常の可紡性繊維、前記伸縮性を有する繊維、前記水溶性繊維または前記溶融性繊維のみを融解・除去または燃焼・除去してなることを特徴とする金属製織物。
【請求項18】
前記導電性金属線材は、導電性を有する磁性体であることを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の金属製織物。
【請求項1】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなることを特徴とする導電性織物。
【請求項2】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に2本以上の少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして、前記通常の可紡性繊維の大部分が前記導電性金属線材で覆われるように形成した混合糸を織成してなることを特徴とする導電性織物。
【請求項3】
1本または複数本の水溶性繊維及び1本または複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項4】
1本または複数本の伸縮性を有する繊維に1本または複数本の水溶性繊維をZ撚り及び/またはS撚りして形成した元糸にさらに少なくとも導電性の1本または複数本の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項5】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸と複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものとを縦方向及び横方向ともに交互に配置されるように織成してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項6】
複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものを縦糸または横糸にし、少なくとも導電性の金属線材を横糸または縦糸にして織成してなる伸縮性を有することを特徴とする導電性織物。
【請求項7】
前記導電性金属線材は、約50μm〜約500μmの太さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項8】
前記導電性金属線材は、銅線材であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項9】
前記導電性金属線材は、導電性を有する磁性体であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項10】
前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを多重織りしてなることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項11】
前記混合糸或いは前記複数本の伸縮性を有する繊維を束にしたものと前記混合糸または前記導電性金属線材とを3次元構造に織成してなることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項12】
前記導電性織物または前記導電性織物をテープ状に裁断したものを巻き付けることによって、巻き付けられた人体または物体或いはその一部を静電的にシールドするとともに電磁波からシールドすることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の導電性織物。
【請求項13】
1本または複数本の水溶性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の水中に浸して前記水溶性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする金属製織物。
【請求項14】
1本または複数本の溶融性繊維に少なくとも導電性の金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる混合糸織物を所定温度の液中に浸して前記溶融性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする金属製織物。
【請求項15】
前記混合糸を多重織りしてなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の金属製織物。
【請求項16】
前記混合糸を3次元構造に織成してなる混合糸織物を所定温度の水中または液中に浸して前記水溶性繊維または前記溶融性繊維を溶解・除去してなることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の金属製織物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の導電性織物若しくは請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の混合糸織物を加熱することによって前記通常の可紡性繊維、前記伸縮性を有する繊維、前記水溶性繊維または前記溶融性繊維のみを融解・除去または燃焼・除去してなることを特徴とする金属製織物。
【請求項18】
前記導電性金属線材は、導電性を有する磁性体であることを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれか1つに記載の金属製織物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2006−124900(P2006−124900A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109516(P2005−109516)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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