説明

導電性酸化スズ粒子およびその製造方法

【課題】
ATO(アンチモンドープ酸化スズ)に匹敵する表面抵抗率が得られ、さらに透明性が高く、かつ毒性の懸念があるアンチモンを含有しない酸化スズ粒子を提供するものである。
【解決手段】
一般式SnO(2−x)(ただし、0<x<1)で表される酸素欠陥型酸化スズよりなり、XPS(X線光電子分光分析)で検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75〜1.95であり、結晶子径が3〜15nmである酸化スズ結晶超微粒子。また、P原子をSnOに換算したSnO(2−x)に対して0.01〜0.8質量%含有し、XPSにより測定された粒子最表面のP原子とXRF(蛍光X線分析)により測定された粒子全体中のP原子の組成比が1より大である酸化スズ結晶超微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れ、且つアンチモンを含有しない酸化スズ粒子及びその製造方法に関し、詳しくは液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの透明帯電防止膜などの機能性フィルムや、塗料・インキ・プラスチック・コーティング剤等へ配合し塗装することで得られる導電性塗膜や、トナーや感光ドラムなどの電荷調整剤などに使用できる酸化スズ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの透明帯電防止膜などで使用されている酸化スズはアンチモンドープ酸化スズ(以下ATO)であり、酸化スズ結晶中の一部のSn4+をSb5+で置換したものである。ATOの特徴は、塗膜にしたときの表面抵抗率が低く導電性に優れる、塗膜にしたときの透明性が高い、塗膜にしたときやや黒味を帯びる、アンチモンを含有するなどが挙げられるが、安全性や環境負荷軽減の面から、アンチモンを含有しない導電性材料が望まれており、これまで様々な検討が行われた。
【0003】
アンチモンを含有しない導電性酸化スズとしては結晶中に酸素欠陥を導入した酸化スズがあり、製造方法としては(i)第二スズ塩を含有するアルカリ性溶液又は酸性溶液とその中和剤をpH2〜12となるよう同時に添加し反応させ、そのスラリーを固液分離処理して沈殿物を回収し、乾燥し、その後不活性又は弱還元性雰囲気中、300〜800℃で焼成する(特許文献1)などが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−345429
【0005】
一方、アンチモン以外の元素をドープすることで導電性を付与した酸化スズも知られており、特にリンをドープした酸化スズについては種々の検討がなされている。例えば、(ii)塩化スズ溶液にリンを溶解し、アルカリ水溶液中に添加し沈澱を得、それを洗浄乾燥後、空気中350〜700℃で焼成する方法(特許文献2)や、(iii)リン含有含水酸化スズ沈殿を800〜1300℃の温度で焼成し、粉砕して、酸化スズを主成分とし、リンをP/Sn原子比で2.7×10−2〜1.4×10−1の割合で含み、比表面積が10m/g以上であり、かつ粉体抵抗値が500Ω・cm以下である導電性微粉末を製造する方法(特許文献3)などが知られている。
【0006】
【特許文献2】特開昭60−260424
【特許文献3】特開平6−92636
【発明の開示】
【0007】
導電性材料は塗料中に分散し、ディスプレイパネルなどの被塗物表面に塗布することで、被塗物表面に導電性を付与する。従来使用されているATOは毒性が懸念されているアンチモンを含有しているため、アンチモンフリーの導電性を有した酸化スズが市場において望まれ種々検討されている。
【0008】
また、従来導電性材料として使用されているATOは、粉体色が青黒色のためLab表色系で示されるL値が低く、塗料化し塗装した時の全光線透過率が低い。
【0009】
そこで、アンチモンを含有することなく導電性を有し、粉体色L値が高く、塗装したときにATOよりも高い透明性が得られる酸化スズの製造方法を検討した。
【0010】
従来の方法で得られるアンチモン非含有酸化スズの内、(i)で示される酸素欠陥型酸化スズの製法では粉体色が濃褐色のためL値が低く、(ii)及び(iii)で示されるリンドープ型酸化スズの製法ではアンチモンドープよりは緩和されるもののまだ粉体色が青灰色を呈するためL値が低くなるという問題があった。
【0011】
本発明は上記従来法の問題点を解決し、粉体色L値が高く、塗膜に配合した場合にATO並みの表面抵抗率でありながら、高い全光線透過率が得られる、アンチモン非含有の酸化スズ結晶超微粒子を提供するものである。
【0012】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、リンドープ型酸化スズでは十分な導電性が得られるレベルまでリンをドープすると粉体色L値が低下する傾向にあるため、酸素欠陥型酸化スズの酸素欠陥量の最適条件を検討した。その結果、XPS(X線光電子分光分析)で検出される酸素とスズの原子比O/Snを1.75〜1.95にコントロールすることで、粉体色が向上することを見出した。
【0013】
酸素欠陥型酸化スズは窒素ガス雰囲気などの非酸化性雰囲気下で焼成することで製造することができるが、このような条件では酸素欠陥量が多すぎて、XPSで検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75以下となり粉体色L値が低下する。
【0014】
そこで、金属酸化物を大気下で焼成し急冷すると酸素欠陥が生成することに着目し、さらに酸素欠陥量を増やすために、酸化スズ表面への酸素の供給を抑制する方法を種々検討した。その結果、酸化スズ表面にリンをコーティングすると窒素が固定化され、XPSで検出される酸素とスズの原子比O/Snを1.75〜1.95にコントロールすることができ、粉体色L値を大幅に向上することができた。
【0015】
リンは表面にコーティングされることが重要であるため、XPSにより測定される粒子最表面のP原子がXRF(蛍光X線分析)により測定された粒子全体中のP原子より多くなるように最適な製造方法を見出した。また、このときリンの含有量が多すぎると、酸化スズ粒子同士の接触が阻害され導電性が低下することを考慮し、最適なリン含有量が存在することを見出した。
【0016】
即ち、本発明の酸化スズ結晶超微粒子は粉体色L値が65〜90で体積抵抗率が0.1〜500Ω・cmである。
【0017】
また、本発明は、一般式SnO(2−x)(ただし、0<x<1)で表される酸素欠陥型酸化スズよりなり、XPS(X線光電子分光分析)で検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75〜1.95であり、結晶子径が3〜15nmである酸化スズ結晶超微粒子である。また、P原子をSnOに換算したSnO(2−x)に対して0.01〜0.8質量%含有し、XPSにより測定された粒子最表面のP原子とXRF(蛍光X線分析)により測定された粒子全体中のP原子の組成比が1より大であり、Lab表色系における粉体色L値が65〜90である酸化スズ結晶超微粒子である。
【0018】
また、本発明の酸化スズを分散体、塗料組成物またはフィルム組成物として使用する方法に関するものである。
【0019】
また、本発明は30〜50℃の温水へ、水溶性スズ化合物とその中和剤の水溶液をpH7〜10を保ちながら滴下し含水酸化スズ沈殿を生成させ、この反応の後にリン化合物を添加し、含水酸化スズ表面に吸着させ、この沈澱を洗浄および乾燥後、大気中400〜1200℃の温度で焼成することを特徴とする酸化スズ結晶超微粒子の製造方法に関するものである。
【0020】
本発明の酸化スズ粒子は、毒性を危惧されるアンチモンを含有することなく、ATOと同等の体積抵抗率、結晶子径を得ることができる。そのため、塗料・インキ・プラスチック・コーティング剤などに配合することで導電性(表面抵抗率)を付与でき、トナーや感光ドラムなどの電荷調整剤などに使用できる。また、アンチモンを結晶中に含まないため、ATO特有の黒味がなく、結晶子径がATOと同等でありながら、同等以上の透明性が得られる。よって、アンチモンフリー導電性材料として使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の酸化スズ結晶超微粒子は、一般式SnO(2−x)(ただし、0<x<1)で表される酸素欠陥型酸化スズよりなり、XPS(X線光電子分光分析)で検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75〜1.95であり、結晶子径が3〜15nmである。また、P原子をSnOに換算したSnO(2−x)に対して0.01〜0.8質量%含有し、XPSにより測定された粒子最表面のP原子とXRF(蛍光X線分析)により測定された粒子全体中のP原子の組成比が1より大である。
【0022】
このような酸化スズ粒子は結晶子径が小さく、体積抵抗率が低いため、例えば塗料中に配合し、塗膜を作製した場合、樹脂成分1に対しこの酸化スズを1〜8、好ましくは2〜4配合することで、可視光透過率が高く、表面抵抗率が104〜1013Ω/□となる機能性を有している。
【0023】
結晶子径が3nmを下回ると塗料中での分散が困難となる傾向にあり、15nmを超えると高い可視光透過率と低い表面抵抗率の両立が困難となる傾向にある。
【0024】
本発明の酸化スズ粒子はSnO(2−x)で表されるが、XPSで検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75を下回ると一般的に粉体色L値が65以下になる傾向にある。また、XPSで検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.95を上回ると一般的に粉体色L値は高くなる傾向にあるが、酸素欠陥量が十分ではなくなり体積抵抗率が高くなる傾向にある。また、毒性のあるアンチモン以外の元素、例えばリンをドープ剤として使用する方法では、アンチモンドープに比べると粉体色は高くなるものの、粉体色L値は65以下になる傾向にある。
【0025】
粉体色L値が65〜90で体積抵抗率が0.1〜500Ω・cmの酸化スズ結晶超微粒子を得るためには、XPSで検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75〜1.95に調整すると好適である。また、このような酸化スズ結晶超微粒子を得るためには、P原子をSnOに換算したSnO(2−x)に対して0.01〜0.8質量%含有し、XPSにより測定された粒子最表面のP原子とXRFにより測定された粒子全体中のP原子の組成比が1より大であるものが好適である。
【0026】
Pの含有量はSnOに対して0.01質量%を下回ると酸素欠陥量が十分でなくなり導電性が得られにくい傾向にあり、SnOに対して0.8質量%を超えると酸化スズ粒子の表面を被覆する割合が増すため、塗膜中で酸化スズ粒子同士の接触が妨げられ導電性を低下させる傾向にある。Pの含有量はリン化合物の添加量によって調節することができる。
【0027】
このような酸化スズ粒子の製造方法は、スズ化合物溶液と、酸またはアルカリ性水溶液とを混合し、この反応の後にリン化合物を添加し沈殿物を生成し、この沈殿物を洗浄、乾燥、粉砕した後、大気下で焼成し、粉砕することを特徴としている。
【0028】
以下に限定されないが、本発明において原料として使用されるスズ化合物溶液としては、塩化第二スズ、塩化第一スズ、スズ酸カリウム、スズ酸ナトリウムなどが挙げられる。また、リン化合物としては、オルトリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、亜リン酸などが挙げられ、これらのうちの一種或いは二種以上の化合物を使用することができる。中和剤として使用するアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩やアンモニアなどが挙げられ、酸性水溶液としては硫酸、塩酸、硝酸などが挙げられる。
【0029】
本発明の酸化スズ粒子の製造方法では、30〜50℃、好ましくは35〜45℃の温水中にスズ化合物溶液と酸性又はアルカリ性水溶液をpH7〜10、好ましくはpH7.5〜9.5に保ちながら反応させ、この反応の後にリン化合物を添加し、リン含有含水酸化スズを生成する。温水温度は60℃を上回る及び/又はpH6を下回ると、リン含有酸化スズ水和物の凝集体が大きく、凝集の度合いも強くなり、個々の酸化スズ粒子表面が非酸化性ガスに晒されないため、酸素欠陥が十分に生成されず、導電性が低下する傾向にあり好適でない。
【0030】
上記のリン含有酸化スズ水和物は十分洗浄した後、100〜200℃で乾燥し、粉砕した後、大気下400〜1200℃で30分〜6時間焼成し、粉砕するのが好ましい。焼成温度は、400℃を下回ると所望の導電性が得られにくく、1200℃を上回ると結晶子径が15nmを超えて粒子成長してしまうため好適でない。また、焼成時間は30分以内だと所望の導電性が得られにくく、6時間を超えて焼成することは経済性の点で好ましくない。
【0031】
このようにして得られる本発明の酸化スズ粒子は、例えば塗料・インキ・プラスチック・コーティング剤等へ配合し塗装することで、これらの組成物に導電性を付与することができる。また、トナーや感光ドラム等の電荷調整剤としても使用することができる。酸化スズの配合比率は任意に変えることができるが、塗料・インキ・プラスチック・トナーや感光ドラム、それぞれの組成物中で本発明の酸化スズの配合量が下限を下回った場合、導電性を有していても、配合比率の低下に伴い効果は小さくなる。配合量が上限を上回ると、導電性を有していても、それぞれの組成物としての特性を損なう。
【0032】
本発明の酸化スズ粒子を塗料・インキの用途に用いる場合、酸化スズ粒子の配合比率は樹脂成分1に対して酸化スズ粒子を1〜8配合することが好ましい。本発明の酸化スズを塗料・インキの用途に用いる場合、配合比率は樹脂の使用目的などに応じて任意に変えることができるが、樹脂1あたり、酸化スズ1〜8が望ましい。酸化スズとの配合に使用する樹脂は、アクリルメラミン、常乾アクリル、アクリルウレタン、ポリエステルメラミン、アルキドメラミン、ポリウレタン、ニトロセルロース、フッ素樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられ、紫外線反応性オリゴマー、紫外線反応性モノマー及び光重合開始剤から少なくともなる紫外線硬化型インキなども挙げられる。
【0033】
上記樹脂組成物に酸化スズを配合する際には、まず有機溶剤または水に溶解混合し、分散と塗装に適した粘度に調整する。有機溶剤としては、炭化水素系、アルコール系、エーテルアルコール及びエーテル系、エステル及びエステルアルコール系、ケトン系の中から任意に分散性、塗装性に適したものを用いればよい。そして、ペイントコンディショナー、ディスパー、サンドグラインドミルなど使用目的に応じて分散・攪拌に適した装置を用いて本発明の酸化スズを分散する。
【0034】
作製した塗料は金属又はプラスチック製の被塗物に、バーコーター、刷毛、エアスプレー、静電塗装、スピナー法、ディッピング法などにより塗装することができる。膜厚は目的により適宜変えることができる。なお、使用する樹脂によっては、110〜180℃の温度で10〜40分間程度乾燥する又は紫外線照射などにより硬化させる必要がある。
【実施例】
【0035】
以下実施例及び比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されたものではない。
【0036】
実施例1
市水1000gを40℃に加熱し、そこへSnOとして100g分のSnCl溶液とアンモニア水溶液をpH7.5〜8.5の範囲を維持しながら定量ポンプにて20分間で同時に滴下し含水酸化スズの沈殿を生成し、その後SnOに対してP原子換算で0.4質量%分のリン(HPO使用)を添加し、その後pH2.5に調整後、ろ過、洗浄し、リン添加含水酸化スズを得た。得られたリン添加含水酸化スズは120℃で12時間乾燥し、この乾燥物を流体エネルギーミルで粉砕した。この粉砕物を大気下800℃で2時間焼成し、この焼成物を流体エネルギーミルで粉砕し酸化スズ粒子を得た。上記の方法で得られた酸化スズ粒子の評価結果を表1に示した。
【0037】
実施例2
実施例1においてPの添加量がSnOに対して0.2質量%(HPO使用)であること以外は実施例1と同様にして酸化スズ粒子を得た。上記の方法で得られた酸化スズ粒子の評価結果を表1に示した。
【0038】
比較例1
実施例1において焼成を窒素雰囲気下800℃で2時間焼成すること以外は実施例1と同様にして酸化スズ粒子を得た。上記の方法で得られた酸化スズ粒子の評価結果を表1に示した。
【0039】
比較例2
市水1000gを50℃に加熱し、そこへ3N塩酸100mlとSnOとして43g分のSnCl溶液及びSnOに対してP原子換算で1.0質量%分のリン(PCl使用)を溶解した溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを、pH7.0〜7.5の範囲に維持しながら定量ポンプにて20分間で同時に滴下しリン含有含水酸化スズの沈殿を生成した。その後pH2.5に調整後、ろ過、洗浄し、リン含有含水酸化スズを得た。得られたリン含有含水酸化スズは120℃で12時間乾燥し、この乾燥物を流体エネルギーミルで粉砕した。この粉砕物を大気下1000℃で1時間焼成し、この焼成物を流体エネルギーミルで粉砕し酸化スズ粒子を得た。上記の方法で得られた酸化スズ粒子の評価結果を表1に示した。
【0040】
上記の方法で得られた酸化スズ粒子について、体積抵抗率、結晶子径、粉体色、XPS(X線光電子分光分析)によるO/Sn比、及び、リンのXPS値/XRF値(蛍光X線分析値)を測定した。各測定の方法については以下に示した。
【0041】
(1)体積抵抗率の測定
酸化スズ粉末を100kg/cmの圧力で加圧成形し試料片を作製し、加圧した状態で試料片の上下間の抵抗値を測定し、同時に試験片の厚みを測定した。測定された抵抗値及び試験片の厚さ及び断面積から体積抵抗率を算出した。
【0042】
(2)結晶子径の測定
酸化スズ粉末をスペクトリス社製X線回折装置X‘Pert PROにより、CuKα線を使用して印加電圧45kV、印加電流40mAの条件にて、θ−2θ法でX線回折分析を行った。次に正方晶系SnOの(110)面のピークの半価幅を求め、Sherrerの式から結晶子径を求めた。
【0043】
(3)粉体色の測定
酸化スズ粉末を粉体測定セルに入れて50回タッピングし、日本電色工業社製測色色差計ZE 2000にて粉体色L値を測定した。
【0044】
(4)O/Snの測定
酸化スズ粉末を島津製作所社製X線光電子分光装置ESCA−3400にて原子比O/Sn測定した。
【0045】
(5)リンのXPS量/XRF量の測定
酸化スズ中のP換算リン全含有量(XRF量)は島津製作所社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置EDX−700にて測定した。また、島津製作所社製X線光電子分光装置ESCA−3400より測定した値を最表面のP換算リン含有量(XPS量)として測定した。それぞれの測定値より原子比でリンのXPS量/XRF量を算出した。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式SnO(2−x)(ただし、0<x<1)で表される酸素欠陥型酸化スズよりなり、XPS(X線光電子分光分析)で検出される酸素とスズの原子比O/Snが1.75〜1.95であり、結晶子径が3〜15nmである酸化スズ結晶超微粒子。
【請求項2】
P原子をSnO換算したSnO(2−x)に対して0.01〜0.8質量%含有し、XPSにより測定された粒子最表面のP原子とXRF(蛍光X線分析)により測定された粒子全体中のP原子の組成比が1より大である請求項1記載の酸化スズ結晶超微粒子。
【請求項3】
Lab表色系における粉体色L値が65〜90である請求項1又は2記載の酸化スズ超微粒子。
【請求項4】
100kg/cmの圧力で圧縮成形した時の体積抵抗率が0.1〜500Ω・cmである請求項1ないし3いずれか記載の酸化スズ結晶超微粒子。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の酸化スズ超微粒子を水又は有機溶媒に分散してなる分散体組成物。
【請求項6】
請求項1ないし4いずれか記載の酸化スズ超微粒子を、樹脂成分を含む水又は有機溶媒に分散してなるコーティング剤組成物。
【請求項7】
請求項5記載の分散体と樹脂成分を含有するコーティング剤組成物
【請求項8】
請求項5ないし7いずれか記載の組成物を塗装してなるフィルム組成物。
【請求項9】
30〜50℃の温水へ、水溶性スズ化合物とその中和剤の水溶液をpH7〜10を保ちながら滴下し含水酸化スズ沈殿を生成させ、この反応の後にリン化合物を添加し、含水酸化スズ表面に吸着させ、この沈澱を洗浄および乾燥後、大気中400〜1200℃の温度で焼成することを特徴とする酸化スズ結晶超微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記スズ化合物は塩化スズであり、中和剤はアルカリである請求項9の方法。
【請求項11】
前記スズ化合物はアルカリ金属スズ酸塩であり、中和剤は無機酸である請求項9の方法。
【請求項12】
前記リン化合物はオルトリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウムまたは亜リン酸から選ばれる請求項9の方法。
【請求項13】
前記焼成工程の前および後に、原料および生成物の粉砕工程をさらに含んでいる請求項9の方法。

【公開番号】特開2007−331966(P2007−331966A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164321(P2006−164321)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】