説明

導電性高分子溶液および導電性塗膜

【課題】 金属腐食や接触物の変色等を防止できる導電性高分子溶液および導電性塗膜を提供する。
【解決手段】 本発明の導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含有する導電性高分子溶液において、温度25℃におけるpHが5〜13である。本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子溶液が塗布されて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子溶液に関する。また、電子部品や包装材等に導電性を付与するための導電性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
π共役系導電性高分子は、電子部品、汎用帯電防止材、精密な電子機器の帯電防止包装材、転写ベルトなどの電子写真機器部品に使用されている。
このπ共役系導電性高分子はそれ単独では溶媒に溶解せず、また、融点を迎える前に分解するいわゆる不溶不融の性質を有するため、膜形成が困難である。そこで、膜形成を容易にするために、π共役系導電性高分子を可溶化させる成分を添加するなどして、π共役系導電性高分子を溶媒に溶解させる方法が数多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、スルホ基、カルボキシ基等を有するポリアニオンの存在下でアニリンを重合することにより、ポリアニリンを含有する液を得ることが提案されている。このポリアニリン含有液においては、水中にポリアニリンがnmオーダーで分散しているため、見かけ上および性能上、溶液と同様の挙動を示す。そして、このポリアニリン含有液は、水溶性ポリマーの導電性付与材料として好適であるため、水溶性ポリマーを混合することにより、優れた性能を有する帯電防止材料を得ることができる。
【特許文献1】特開平7−105718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のポリアニリン含有液を、電子部品と接触する用途に使用すると金属腐食を引き起こしたり、導電性高分子溶液に接触する接触物(例えば、食品等)の変色などの不具合を引き起こしたりすることがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、金属腐食や接触物の変色等を防止できる導電性高分子溶液および導電性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、金属腐食や接触物の変色について調べた結果、π共役系導電性高分子を含む溶液のpHが低いことが原因であることを見出し、以下の導電性高分子溶液および導電性塗膜を発明した。
すなわち、本発明の導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含有する導電性高分子溶液において、温度25℃におけるpHが5〜13であることを特徴とする。
本発明の導電性高分子溶液においては、窒素含有芳香族性環式化合物をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の導電性高分子溶液においては、分子内に水酸基、グリシジル基、アミノ基のいずれか1種以上を有する化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子溶液が塗布されて形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子の溶解性を充分に保っているにもかかわらず、金属腐食や接触物の変色等を防止できる。したがって、機能性コンデンサの陰極材料やトランジスタなどの電子部品、食品包装材などの食品分野に適用できる。
本発明の導電性塗膜は、金属腐食や接触物の変色等を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<導電性高分子溶液>
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0008】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0009】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は溶媒溶解性や、疎水性樹脂を添加した場合の相溶性および分散性がより向上することからより好ましい。また、アルキル置換化合物のアルキル基の中では、導電性の低下を防ぐことから、メチル基が好ましい。
【0010】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と後述のアニオン基を有する高分子の存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0011】
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0012】
酸化剤としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0013】
[ポリアニオン]
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0014】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ3,3,3−トリフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0015】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0016】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0018】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0019】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0020】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。
【0021】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0022】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0023】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0024】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸i−オクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0025】
導電性高分子溶液における上記π共役系導電性高分子とポリアニオンとの割合は、ポリアニオン100質量部に対してπ共役系導電性高分子1〜1000質量部であることが好ましい。π共役系導電性高分子が1質量部未満であると、導電性が不足する傾向にあり、1000質量部を超えると溶媒溶解性が不足する傾向にある。
【0026】
(ドーパント)
導電性高分子溶液において、ポリアニオンはπ共役系導電性高分子のドーパントとして機能するが、導電性高分子溶液にはポリアニオン以外のドーパント(以下、他のドーパントという。)が含まれていてもよい。
他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
【0027】
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0028】
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0029】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0030】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0031】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0032】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0033】
(溶媒)
導電性高分子溶液に含まれる溶媒としては、溶解性パラメータ(SP値)が10以上のものが好ましい。SP値が10以上のものしては、水や、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪酸類、N−メチルホルムアミド、メチルアセトアミド、アセトニトリル等の窒素化合物類、炭酸エチレン、炭酸プロピレンが挙げられる。溶媒は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
また、溶媒としては、ポリアニオンおよび前記前駆体モノマーを溶解する共に、酸化剤を溶解して前駆体モノマーの重合が進行するものが特に好ましい。
【0034】
(導電性高分子溶液のpH)
導電性高分子溶液は、25℃におけるpHが5〜13、好ましくは7〜11になるように調整されたものである。pHが5未満であると、金属腐食や接触物の変色を防止できず、13を超えるとポリアニオンが脱ドープして、導電性が不足する。
pHを調整する方法としては、例えば、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体の水溶液(以下、複合体水溶液という。)にアルカリを混合して塩を形成させる方法、酸基をエステル化する方法、酸基をアミド化する方法などが挙げられる。
【0035】
アルカリを混合する場合のアルカリとしては特に限定されず、公知の無機アルカリや有機アルカリを使用できる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。また、有機アルカリとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミンのような脂肪族アミン、アニリン、ベンジルアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジンのような芳香族アミンもしくはこれらの誘導体、ピロール、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド等の金属アルコキシドなどが挙げられる。
これらの中でも、弱塩基の脂肪族アミン、芳香族アミン、金属アルコキシドが好ましい。
【0036】
さらに、有機アルカリとして、窒素含有芳香族性環式化合物を好適に用いることができる。窒素含有芳香族性環式化合物は、ポリアニオンの脱ドープを防止できるだけでなく、導電性を向上させることもできる。
ここで、窒素含有芳香族性環式化合物とは、少なくとも1個以上の窒素原子を含む芳香族性環を有し、芳香族性環中の窒素原子が芳香性環中の他の原子と共役関係を持つものである。共役関係となるためには、窒素原子と他の原子とが不飽和結合を形成している。あるいは、窒素原子が直接的に他の原子と不飽和結合を形成していなくても、不飽和結合を形成している他の原子に隣接していればよい。窒素原子上に存在している非共有電子対が、他の原子同士で形成されている不飽和結合と擬似的な共役関係を構成できるからである。
窒素含有芳香族性環式化合物においては、他の原子と共役関係を有する窒素原子と、不飽和結合を形成している他の原子に隣接している窒素原子を共に有することが好ましい。
【0037】
このような窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
また、窒素含有芳香族性環式化合物は、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等の置換基が環に導入されたものでもよいし、導入されていないものでもよい。また、環は多環であってもよい。
【0038】
置換基のうち、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
ヒドロキシ基としては、ヒドロキシ、メチレンヒドロキシ、エチレンヒドロキシ、トリメチレンヒドロキシ、テトラメチレンヒドロキシ、ペンタメチレンヒドロキシ、ヘキサメチレンヒドロキシ、ヘプタメチレンヒドロキシ、プロピレンヒドロキシ、ブチレンヒドロキシ、エチルメチレンヒドロキシ等のアルキレンヒドロキシ基、プロペニレンヒドロキシ、ブテニレンヒドロキシ、ペンテニレンヒドロキシ等のアルケニレンヒドロキシ基が挙げられる。
カルボキシ基としては、カルボキシ、メチレンカルボキシ、エチレンカルボキシ、トリメチレンカルボキシ、プロピレンカルボキシ、テトラメチレンカルボキシ、ペンタメチレンカルボキシ、ヘキサメチレンカルボキシ、ヘプタメチレカルボキシ、エチルメチレンカルボキシ、フェニルエチレンカルボキシ等のアルキレンカルボキシ、イソプレンカルボキシ、プロペニレンカルボキシ、ブテニレンカルボキシ、ペンテニレンカルボキシ等のアルケニレンカルボキシ基が挙げられる。
【0039】
シアノ基としては、シアノ、メチレンシアノ、エチレンシアノ、トリメチレンシアノ、テトラメチレンシアノ、ペンタメチレンシアノ、ヘキサメチレンシアノ、ヘプタメチレンシアノ、プロピレンシアノ、ブチレンシアノ、エチルメチレンシアノ等のアルキレンシアノ基、プロペニレンシアノ、ブテニレンシアノ、ペンテニレンシアノ等のアルケニレンシアノ基が挙げられる。
フェノール基としては、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール基、メチレンフェノール、エチレンフェノール、トリメチレンフェノール、テトラメチレンフェノール、ペンタメチレンフェノール、ヘキサメチレンフェノール等のアルキレンフェノール基等が挙げられる。
フェニル基としては、フェニル、メチルフェニル、ブチルフェニル、オクチルフェニル、ジメチルフェニル、等のアルキルフェニル基と、メチレンフェニル、エチレンフェニル、トリメチレンフェニル、テトラメチレンフェニル、ペンタメチレンフェニル、ヘキサメチレンフェニル、ヘプタメチレンフェニル等のアルキレンフェニル基と、プロペニレンフェニル、ブテニレンフェニル、ペンテニレンフェニル等のアルケニレンフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。
【0040】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジン−ジカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0041】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0042】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0043】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0044】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0045】
窒素含有芳香族性環式化合物における窒素原子には非共有電子対が存在しているため、窒素原子上には置換基又はプロトンが配位又は結合されやすい。窒素原子上に置換基又はプロトンが配位又は結合された場合には、窒素原子上にカチオン電荷を帯びる傾向がある。ここで、窒素原子と他の原子とは共役関係を有しているため、窒素原子上に置換基又はプロトンが配位又は結合されたことによって生じたカチオン電荷は窒素含有芳香族性環中に拡散されて、安定した形で存在するようになる。
このようなことから、窒素含有芳香族性環式化合物は、窒素原子に置換基が導入されて窒素含有芳香族性環式化合物カチオンを形成していてもよい。さらに、そのカチオンとアニオンとが組み合わされて塩が形成されていてもよい。塩であっても、カチオンでない窒素含有芳香族性環式化合物と同様の効果を発揮する。
【0046】
窒素含有芳香族性環式化合物の窒素原子に導入される置換基としては、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
ヒドロキシ基としては、ヒドロキシ、メチレンヒドロキシ、エチレンヒドロキシ、トリメチレンヒドロキシ、テトラメチレンヒドロキシ、ペンタメチレンヒドロキシ、ヘキサメチレンヒドロキシ、ヘプタメチレンヒドロキシ、プロピレンヒドロキシ、ブチレンヒドロキシ、エチルメチレンヒドロキシ等のアルキレンヒドロキシ基、プロペニレンヒドロキシ、ブテニレンヒドロキシ、ペンテニレンヒドロキシ等のアルケニレンヒドロキシ基が挙げられる。
カルボキシ基としては、カルボキシ、メチレンカルボキシ、エチレンカルボキシ、トリメチレンカルボキシ、プロピレンカルボキシ、テトラメチレンカルボキシ、ペンタメチレンカルボキシ、ヘキサメチレンカルボキシ、ヘプタメチレンカルボキシ、エチルメチレンカルボキシ、フェニルエチレンカルボキシ等のアルキレンカルボキシ基、イソプレンカルボキシ、プロペニレンカルボキシ、ブテニレンカルボキシ、ペンテニレンカルボキシ等のアルケニレンカルボキシ基が挙げられる。
【0047】
シアノ基としては、シアノ、メチレンシアノ、エチレンシアノ、トリメチレンシアノ、テトラメチレンシアノ、ペンタメチレンシアノ、ヘキサメチレンシアノ、ヘプタメチレンシアノ、プロピレンシアノ、ブチレンシアノ、エチルメチレンシアノ等のアルキレンシアノ基と、プロペニレンシアノ、ブテニレンシアノ、ペンテニレンシアノ等のアルケニレンシアノ基が挙げられる。
フェノール基としては、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のアルキルフェノール基と、メチレンフェノール、エチレンフェノール、トリメチレンフェノール、テトラメチレンフェノール、ペンタメチレンフェノール、ヘキサメチレンフェノール等のアルキレンフェノール基等が挙げられる。
フェニル基としては、フェニル、メチルフェニル、ブチルフェニル、オクチルフェニル、ジメチルフェニル等のアルキルフェニル基、メチレンフェニル、エチレンフェニル、トリメチレンフェニル、テトラメチレンフェニル、ペンタメチレンフェニル、ヘキサメチレンフェニル、ヘプタメチレンフェニル等のアルキレンフェニル基、プロペニレンフェニル、ブテニレンフェニル、ペンテニレンフェニル等のアルケニレンフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。
【0048】
酸基をエステル化またはアミド化する方法としては、複合体水溶液に酸基とエステル結合を形成する官能基を有する化合物(分子内に水酸基を有する化合物、分子内にグリシジル基を有する化合物)またはアミド結合を形成する官能基を有する化合物(分子内にグリシジル基を有する化合物)を添加し、反応させる方法が挙げられる。
分子内に水酸基を有する化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、トリクロロエタノール、トリフルオロエタノール、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール、フェノール、ヒドロキノン、ピロガロール、レゾルシノール、ピロカテコール等の芳香族アルコール類やフェノール性水酸基含有化合物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類などが挙げられる。
分子内にグリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
分子内にアミノ基を有する化合物としては、例えば、前記アミノアルコール類、エチルアミン、アニリン、ベンジルアミン等のアミン化合物などが挙げられる。
【0049】
これらのうち、π共役系導電性高分子の導電性を向上させることができることから、脂肪族アルコールまたはフェノール性水酸基含有化合物が好ましい。さらに、フェノール性水酸基含有化合物は、酸化防止機能を有するため、耐熱性および長期安定性を向上させることもできるため、特に好ましい。また、ヒドロキシエチルアクリルアミドやヒドロキシエチルアクリレートのようなアクリル基を有する化合物は、光または開始剤を併用することにより、π共役系導電性高分子を架橋させることができ、熱特性、力学特性を向上させることができる点で好ましい。
【0050】
(導電性高分子溶液の製造方法)
導電性高分子溶液の製造方法としては、例えば、まず、ポリアニオンを水または溶媒に溶解し、これにより得られた溶液にπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーおよび必要に応じてドーパントを添加し、充分に攪拌混合した後、酸化剤を滴下して前駆体モノマーを重合させる。得られたπ共役系導電性高分子はポリアニオンと複合体を形成して、溶媒溶解性を持ったものとなる。
次いで、重合終了後、酸化剤、残留モノマー、副生成物を除去、精製し、25℃におけるpHが5〜13になるように上記の調整方法により調整して導電性高分子溶液を得る。
【0051】
上述した導電性高分子溶液では、pHが5〜13に調整されているため、酸性が弱く、金属と接触した際の腐食を防止し、また、接触物と接触した際の変色を防止できる。また、ポリアニオンはπ共役系導電性高分子に充分にドープしているため、導電性は確保されている。
【0052】
<導電性塗膜>
本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子塗料が塗布されて形成されたものである。導電性高分子塗料の塗布方法としては、例えば、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などが挙げられる。
この導電性塗膜は、具体的には、電子部品、帯電防止コーティング、帯電防止包装材などの帯電防止材、液晶画面やプラズマディスプレイ画面の電磁波シールド材、転写ベルト、現像ロール、帯電ロール、転写ロールなどの電子写真機器部品、CD、DVDなどの光情報記録媒体の表面などに形成される。
特に、酸に弱い電子部品や包装材に形成した場合には、本発明の効果がとりわけ発揮される。すなわち、電子部品上に導電性塗膜を形成しても電子部品を構成する金属や金属化合物の腐食を防止できる。具体的には、アルミニウムやタンタルなどの弁金属からなる陽極と前記弁金属を電解酸化して得られる酸化物からなる誘電体層とを有する機能性コンデンサにおいて、誘電体層上に本発明の導電性塗膜を陰極として形成することにより、誘電体層の腐食を防止できる。したがって、コンデンサの漏れ電流を小さくできる。また、包装プラスチックフィルム上に本発明の導電性塗膜を形成した場合には、それにより包装(接触)されるものの変色を防止できる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
(1)ポリスチレンスルホン酸溶液の調製
スチレンスルホン酸ナトリウム50gを水500mlに溶解し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.15gを加え、70℃で5時間重合した。重合終了後、30%硫酸水溶液30gを添加し、さらに水15000mlを添加し、限外ろ過で300mlまで濃縮して、ポリスチレンスルホン酸溶液を得た。
【0054】
(2)導電性高分子溶液の調製
(1)で得たポリスチレンスルホン酸溶液100gに、3,4−エチレンジオキシチオフェン30gを添加し、10℃に冷却しながら1時間攪拌した。これにより得られた溶液に、塩化第二鉄250gを水1250mlに溶解した酸化剤溶液を、10℃に保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けて、3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合した。
重合終了後、得られた反応溶液を限外ろ過して酸化剤残渣と未反応モノマー、オリゴマー成分を除去し、濃度1質量%の溶液とした。そして、この溶液の固形分100質量部に対して100質量部の2−メチルイミダゾールを添加し、1時間攪拌して、導電性高分子溶液を得た。
【0055】
得られた導電性高分子溶液について、下記の方法に従って表面抵抗、pH、金属腐食性を測定し、評価した。評価結果を表1に示す。
(a)表面抵抗
得られた導電性高分子溶液を厚さ100μmのPETフィルムに塗布し、乾燥させて厚さ2μmの導電性塗膜を形成し、この塗膜の表面抵抗をダイアインスツルメンツ製ハイレスタにより測定した。
(b)pH
得られた導電性高分子溶液のpHを、25℃の恒温室中で市販のpHメーター((株)堀場製作所製pHメーターF−22)により測定した。pHメーターの校正は関東化学(株)製、フタル酸pH標準液(pH4.01)、中性リン酸塩pH標準液(pH6.86)、ホウ酸塩pH標準液(pH9.18)を用いて行った。
(c)金属腐食性
純水によって環境が調節された85℃、85%RHの環境試験槽中にて、表面抵抗測定時に形成した導電性塗膜の上に1gの鉄板(厚さ0.5μm)を置き、100時間放置した。そして、100時間後の鉄板の腐食具合を目視で確認した。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例2)
2−メチルイミダゾールの代わりにイミダゾールを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
2−メチルイミダゾールの代わりにヒドロキシエチルアクリレートを添加し、その後100℃で1時間還流したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
(1)ポリアクリル酸溶液の調製
アクリル酸ナトリウム50gを水500mlに溶解し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.15gを加え、70℃で5時間重合した。重合終了後、30%硫酸水溶液30gを添加し、さらに水15000mlを添加し、限外ろ過で300mlまで濃縮して、ポリスチレンスルホン酸溶液を得た。
【0060】
(2)導電性高分子溶液の調製
(1)で得たポリアクリル酸溶液100gに、3,4−エチレンジオキシチオフェン30gを添加し、10℃に冷却しながら1時間攪拌した。これにより得られた溶液に、塩化第二鉄250gを水1250mlに溶解した酸化剤溶液を、10℃に保ちながら2時間かけて滴下し、さらに12時間攪拌を続けて、3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合した。
重合終了後、得られた反応溶液を限外ろ過して酸化剤残渣と未反応モノマー、オリゴマー成分を除去し、濃度1質量%の溶液とした。そして、この溶液の固形分100質量部に対して100質量部のピリジンを添加し、100℃で1時間還流して、導電性高分子溶液を得た。
【0061】
(実施例5)
2−メチルイミダゾールの代わりにジエチルアミンを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、重合終了後、得られた反応溶液を限外ろ過して得た濃度1質量%の溶液を導電性高分子溶液とし、pHを調整しなかった以外は実施例1と同様にして評価した。
【0063】
pHが5〜13の範囲にあった実施例1〜5の導電性高分子溶液から形成された導電性塗膜は、表面抵抗が損なわれておらず、また金属腐食性に優れていた。
これに対し、pHが5未満であった比較例1の導電性高分子溶液から形成された導電性塗膜は、これに接した鉄板に赤錆を発生させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含有する導電性高分子溶液において、温度25℃におけるpHが5〜13であることを特徴とする導電性高分子溶液。
【請求項2】
窒素含有芳香族性環式化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項3】
分子内に水酸基、グリシジル基、アミノ基のいずれか1種以上を有する化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子溶液が塗布されて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。

【公開番号】特開2006−249128(P2006−249128A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63687(P2005−63687)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】