説明

導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液、導電性高分子、それを固体電解質として用いた固体電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】 固体電解質として用いたときに、ESRが低く、かつ静電容量が大きい固体電解コンデンサを提供できる導電性高分子を製造するのに適した酸化剤兼ドーパント溶液を提供し、また、それを用いて、上記特性を有する導電性高分子および固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 酸化剤兼ドーパントとしての有機スルホン酸第二鉄と、ヒドロキシル基を有する有機溶剤とを含む導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液に、ジアルキルエーテルまたはその誘導体を上記有機スルホン酸第二鉄に対して質量基準で4〜20%添加する。そして、その酸化剤兼ドーパント溶液を用いて、チオフェンまたはその誘導体を酸化重合させて導電性高分子を製造し、その導電性高分子を固体電解質として用いて固体電解コンデンサを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液、それを用いてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して製造した導電性高分子、その導電性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、その高い導電性により、例えば、アルミニウム固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサなどの固体電解コンデンサの固体電解質として用いられている。
【0003】
この用途における導電性高分子としては、チオフェンまたはその誘導体を酸化重合(化学酸化重合)することによって得られたものが、導電性および耐熱性のバランスがとれていて有用性が高いという理由から、多用されている(特許文献1〜2)。
【0004】
上記チオフェンまたはその誘導体などの化学酸化重合を行う際のドーパントとしては、有機スルホン酸が用いられ、酸化剤としては、遷移金属が用いられ、その中でも第二鉄が適しているといわれていて、通常、有機スルホン酸の第二鉄塩がチオフェンまたはその誘導体の化学酸化重合にあたっての酸化剤兼ドーパントとして用いられている。
【0005】
そして、この導電性高分子を固体電解質として用いる固体電解コンデンサの製造にあたっては、例えば、コンデンサ素子をモノマー溶液に浸漬し、引き上げた後、該コンデンサ素子を酸化剤兼ドーパント溶液に浸漬し、引き上げて重合を行うか、コンデンサ素子を酸化剤兼ドーパント溶液に浸漬し、引き上げた後、該コンデンサ素子をモノマー溶液に浸漬し、引き上げて重合を行うか、あるいは酸化剤兼ドーパント溶液とモノマー溶液とを混合して調製した溶液にコンデンサ素子を浸漬し、引き上げて重合することが行われている。
【0006】
その際、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液の濃度が高い方が、得られる固体電解コンデンサのESR(等価直列抵抗)が低く(小さく)なり、静電容量が高く(大きく)なるなど、コンデンサ特性が向上する傾向があるが、上記酸化剤兼ドーパント溶液の濃度が、ある濃度を超えると、かえってコンデンサ特性が悪くなる。
【0007】
これは、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液の濃度が高くなるのに伴なって粘度が高くなり、かつ反応速度が速くなるため、コンデンサ素子の細部に上記酸化剤兼ドーパント溶液が行き渡らないうちに高分子化が進んでしまって、コンデンサ特性が悪くなるものと考えられる。この傾向は、固体電解コンデンサの種類によって異なるが、巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの場合は、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液の濃度が55質量%以上になると現われるようになる。
【0008】
そこで、芳香族スルホン酸の第二鉄塩からなる第一の溶質と、芳香族スルホン酸のアミン塩、四級アンモニウム塩およびアルミニウム塩よりなる群から選ばれる第二の溶質をアルコール系溶媒に溶解することによって導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を調製し、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液の粘度を低減することが提案されている(特許文献3)。
しかし、それを固体電解コンデンサの製造にあたって応用した場合、充分な成果が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−160647号公報
【特許文献2】特開2004−265927号公報
【特許文献3】特開2010−53302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑み、固体電解質として用いたときに、ESRが低く、かつ静電容量が大きい固体電解コンデンサを提供できる導電性高分子を製造するのに適した導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を提供し、また、それを用いて、上記特性を有する導電性高分子および固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液にジアルキルエーテルまたはその誘導体を特定比率で添加することによって、上記目的を達成し、それに基づいて完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明は、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパントとしての有機スルホン酸第二鉄と、ヒドロキシル基を有する有機溶剤とを含む導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液であって、ジアルキルエーテルまたはその誘導体を上記有機スルホン酸第二鉄に対して質量基準で4〜20%添加したことを特徴とする導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液に関する。
【0013】
また、本発明は、上記導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を用いてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して製造したことを特徴とする導電性高分子に関する。
さらに、本発明は、上記導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を用いてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して製造した導電性高分子を固体電解質として用いたことを特徴とする固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液(以下、簡略化して、「酸化剤兼ドーパント溶液」という)は、ジアルキルエーテルまたはその誘導体の添加により、酸化剤兼ドーパント溶液の粘度を低下させることができるので、導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント(以下、簡略化して、「酸化剤兼ドーパント」という)の高濃度化に伴なう粘度の増加を抑制でき、その粘度の増加を抑制した上で高濃度化した酸化剤兼ドーパント溶液を用いて、チオフェンまたはその誘導体を酸化重合して製造された導電性高分子は、固体電解コンデンサの固体電解質として用いたときに、ESRが低く、かつ静電容量が大きい固体電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、酸化剤兼ドーパントとなる有機スルホン酸第二鉄の有機スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸またはその誘導体、ナフタレンスルホン酸またはその誘導体、アントラキノンスルホン酸またはその誘導体などの芳香族系スルホン酸や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂などの高分子スルホン酸が好適に用いられる。
【0016】
上記ベンゼンスルホン酸またはその誘導体におけるベンゼンスルホン酸誘導体としては、例えば、トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、プロポキシベンゼンスルホン酸、ブトキシベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸などが挙げられ、ナフタレンスルホン酸またはその誘導体におけるナフタレンスルホン酸誘導体としては、例えば、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸などが挙げられ、アントラキノンスルホン酸またはその誘導体におけるアントラキノンスルホン酸誘導体としては、例えば、アントラキノンジスルホン酸、アントラキノントリスルホン酸などが挙げられる。これらの芳香族系スルホン酸の中でも、トルエンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸などが好ましく、特に、パラトルエンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸が好ましく、とりわけ、パラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0017】
また、上記有機スルホン酸第二鉄は、その鉄に対する有機スルホン酸のモル比が1:3より有機スルホン酸が少ないものが好ましい。これは鉄に対する有機スルホン酸のモル比を、その化学量論的モル比である1:3より有機スルホン酸を少なくすることによって、その有機スルホン酸第二鉄の反応速度を若干低減できるからであり、鉄に対する有機スルホン酸のモル比が、1:2程度のものまでが好ましく、1:2.2程度、特に1:2.4程度のものまでがより好ましく、1:2.75程度のものまでがさらに好ましい。
【0018】
ヒドロキシル基を有する有機溶剤は、上記酸化剤兼ドーパントとしての有機スルホン酸第二鉄を溶解して溶液とするためのものであり、このヒドロキシル基を有する有機溶剤としては、例えば、メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、プロパノール(プロピルアルコール)、ブタノール(ブチルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いることができ、それらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数が1〜4のアルコールが好ましい。
【0019】
そして、ジアルキルエーテルまたはその誘導体としては、例えば、次の一般式(1)で表されるジアルキルエーテル、一般式(2)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテルおよび一般式(3)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルなどが好適なものとして挙げられる。
一般式(1):
−O−R
(式中、RとRは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、これらのRとRは、同一でもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。ただし、RとRが同時にCHである場合を除く)
一般式(2):
−O−R−O−R
(式中、RとRは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、これらのRとRは、同一でもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)
一般式(3):
−O−(R−O)−R
(式中、RとRは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、これらのRとRは、同一でもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)
【0020】
上記一般式(1)で表されるジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテルなどが挙げられる。特に、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテルなどが好ましく、プロピル基に関しては、ノルマル、イソのいずれでもよく、ブチル基に関して、ノルマル、イソ、sec、tertのいずれでもよい。これは以下に示すジアルキルエーテルまたはその誘導体においても同様である。なお、本発明において、ジアルキルエーテル中、RとRがともに炭素数1のアルキル基、つまりメチル基であるジメチルエーテルを除くようにしているのは、ジメチルエーテルは沸点が−24.8℃(常圧下)と低すぎ、常温で気体であるため、酸化剤兼ドーパント溶液の粘度を下げることに役立せることができないからである。
【0021】
上記一般式(2)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、メチレングリコールジメチルエーテル、メチレングリコールジエチルエーテル、メチレングリコールジプロピルエーテル、メチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルや、それらのアルキル基がRとRで異なるものなどが挙げられ、特にエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、メチレングリコールジメチルエーテルなどが好ましい。
【0022】
上記一般式(3)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル〔CH−O−CHCH−O−CHCH−O−CH〕、ジエチレングリコールジエチルエーテル〔CHCH−O−CHCH−O−CHCH−O−CHCH〕などが挙げられる。
【0023】
そして、上記に例示したジアルキルエーテルまたはその誘導体は、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種以上併用することができるが、このジアルキルエーテルまたはその誘導体は、酸化剤兼ドーパント溶液の粘度を低下させる作用があり、有機スルホン酸第二鉄の高濃度化に伴なう粘度の増加を抑制できるので、粘度の増加に伴なう弊害(固体電解コンデンサにしたときのESRの増加や静電容量の低下など)を招くことなく、酸化剤兼ドーパント溶液を高濃度化でき、それによって、固体電解コンデンサのESRの低減や静電容量の増加を達成でき、コンデンサ特性を向上させることができる。
【0024】
このジアルキルエーテルまたはその誘導体には、高沸点のものがあり(例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテルは沸点が187℃)、それらは通常の乾燥では、除去されることなく、導電性高分子中に残る可能性があるが、たとえ残存したとしても、後記の実施例に示すように、ESRの増加や静電容量の低下を引き起こすことがない。
【0025】
そして、このジアルキルエーテルまたはその誘導体の有機スルホン酸第二鉄に対する添加量は、質量基準で4〜20%(すなわち、有機スルホン酸第二鉄100質量部に対してジアルキルエーテルまたはその誘導体が4〜20質量部)であり、ジアルキルエーテルまたはその誘導体の添加量が上記より少ない場合は、粘度を低下させる作用が充分に発揮されず、また、ジアルキルエーテルまたはその誘導体の添加量が上記より多い場合は、添加量の増加に伴なう効果の増加が少なく、コスト高を招く上に、混和しなくなり、酸化剤兼ドーパント溶液の貯蔵安定性を低下させるおそれがある。そして、このジアルキルエーテルまたはその誘導体の有機スルホン酸第二鉄に対する添加量は、上記範囲内で、質量基準で5%以上が好ましく、また、16%以下が好ましい。
【0026】
導電性高分子製造用の酸化剤兼ドーパント溶液は、これまで、溶剤としてブタノールを用いたブタノール系溶液では、有機スルホン酸第二鉄の濃度を54質量%にすることが、高濃度化に伴なう弊害を招くことなく高濃度化できる限界であったが、上記のようなジアルキルエーテルまたはその誘導体の添加により、高濃度化に伴なう弊害の発生を抑制しつつ、有機スルホン酸第二鉄の濃度を60質量%程度まで高濃度化することができ、また、溶剤としてエタノールを用いたエタノール系溶液では、これまで、有機スルホン酸第二鉄の濃度を60質量%にすることが、有機スルホン酸第二鉄の高濃度化に伴なう弊害を招くことなく高濃度化できる限界であったが、上記のようなジアルキルエーテルまたはその誘導体の添加により、高濃度化に伴なう弊害の発生を抑制しつつ、有機スルホン酸第二鉄の濃度を65質量%程度まで高濃度化することができ、それによって、特性の良い固体電解コンデンサを得ることができる。
【0027】
また、溶剤としてメタノールを用いたメタノール系の酸化剤兼ドーパント溶液や溶剤としてプロパノールを用いたプロパノール系の酸化剤兼ドーパント溶液においても、それぞれ、ジアルキルエーテルまたはその誘導体の添加により、有機スルホン酸第二鉄の高濃度化に伴なう弊害を伴なうことなく、高濃度化を達成でき、それによって、固体電解コンデンサの特性を向上させることができる。
【0028】
本発明において、導電性高分子を製造するにあたってのモノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体が用いられる。これは、前記したように、チオフェンまたはその誘導体を重合して得られる導電性高分子が導電性および耐熱性のバランスがとれていて、他のモノマーに比べて、コンデンサの特性の優れた固体電解コンデンサが得られやすいという理由に基づいている。
【0029】
そして、そのチオフェンまたはその誘導体におけるチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3−アルキルチオフェン、3−アルコキシチオフェン、3−アルキル−4−アルコキシチオフェン、3,4−アルキルチオフェン、3,4−アルコキシチオフェンや、上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数としては1〜16が好ましく、特に1〜4が好ましい。
【0030】
上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンについて詳しく説明すると、上記3,4−エチレンジオキシチオフェンやアルキル化3,4−エチレンジオキシチオフェンは、下記の一般式(4)で表される化合物に該当する。
【0031】
【化1】

(式中、Rは水素またはアルキル基である)
【0032】
そして、上記一般式(4)中のRが水素の化合物が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4−エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本書では、この「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4−エチレンジオキシチオフェン」と表示している。そして、上記一般式(4)中のRがアルキル基の場合、該アルキル基としては、炭素数が1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(4)中のRがメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(4)中のRがエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(4)中のRがプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、一般式(4)中のRがブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。また、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を、以下、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」で表わす。そして、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、メチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましく、特にエチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
【0033】
そして、3,4−エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン)とアルキル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン)とは、混合して用いることが好ましく、その混合比は、モル比で0.1:1〜1:0.1、特に0.2:1〜1:0.2、とりわけ0.3:1〜1:0.3が好ましい。
【0034】
本発明の酸化剤兼ドーパント溶液を用いての導電性高分子の製造は、通常に導電性高分子を製造する場合と、固体電解コンデンサの製造時に導電性高分子を製造する、いわゆる「その場重合」による導電性高分子の製造との両方に適用できる。
【0035】
モノマーとなるチオフェンやその誘導体は、常温で液状なので、重合にあたって、そのまま用いることができるし、また、重合反応をよりスムーズに進行させるために、モノマーを、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、アセトニトリルなどの有機溶剤で希釈して有機溶剤溶液として用いてもよい。ただし、モノマーを上記のような有機溶剤で希釈してしまうと、酸化剤兼ドーパント溶液を高濃度化した特色が損なわれてしまうので、モノマーであるチオフェンやその誘導体を酸化剤兼ドーパント溶液と混合して用いる場合には、チオフェンまたはその誘導体を溶剤で希釈することなく、そのまま用いることが好ましい。
【0036】
通常に導電性高分子を製造する場合(この通常に導電性高分子を製造する場合とは、固体電解コンデンサの作製時に「その場重合」により導電性高分子を製造するのではないという意味である)、本発明の酸化剤兼ドーパント溶液とモノマーのチオフェンまたはその誘導体を混合した混合物を用い(その混合割合は質量基準で、酸化剤兼ドーパント:モノマーが5:1〜15:1が好ましい)、例えば、5〜95℃で、1〜72時間酸化重合することによって行われる。
【0037】
本発明の酸化剤兼ドーパント溶液は、特に固体電解コンデンサの作製時にモノマーのチオフェンまたはその誘導体をいわゆる「その場重合」で導電性高分子を製造するのに適するように開発したものであることから、これについて以下に詳しく説明する。
【0038】
また、固体電解コンデンサも、アルミニウム固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサなどがあり、そのアルミニウム固体電解コンデンサの中にも、巻回型アルミニウム固体電解コンデンサと積層型アルミニウム固体電解コンデンサがあるが、本発明の酸化剤兼ドーパント溶液は特に巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって適するように開発したものであるから、これについて特に詳しく説明する。
【0039】
まず、巻回型アルミニウム固体電解コンデンサのコンデンサ素子としては、アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理して誘導体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して作製したものを使用する。
【0040】
そして、上記コンデンサ素子を用いての巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製は、例えば、次のように行われる。
すなわち、上記コンデンサ素子を本発明の酸化剤兼ドーパント溶液とモノマー(チオフェンまたはその誘導体)との混合物に浸漬し、引き上げた後、室温または加熱下でモノマーを重合させてチオフェンまたはその誘導体の重合体をポリマー骨格とする導電性高分子からなる固体電解質層を形成した後、水に浸漬し、引き上げた後、乾燥し、その固体電解質層を有するコンデンサ素子を外装材で外装して、巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製する。
【0041】
また、上記のように、コンデンサ素子を本発明の酸化剤兼ドーパント溶液とモノマーとの混合物に浸漬するのに代えて、モノマー(チオフェンまたはその誘導体)を前記したメタノールなどの有機溶剤で希釈しておき、そのモノマー溶液にコンデンサ素子を浸漬し、引き上げて乾燥した後、該コンデンサ素子を本発明の酸化剤兼ドーパント溶液に浸漬し、引き上げた後、室温または加熱下でモノマーを重合させるか、または、コンデンサ素子を先に本発明の酸化剤兼ドーパント溶液に浸漬し、引き上げた後、該コンデンサ素子をモノマーに浸漬し、引き上げた後、室温または加熱下でモノマーを重合させ、以後、前記と同様にして、巻回型アルミニウム固体電解コンデンサが作製される。
【0042】
上記巻回型アルミニウム固体電解コンデンサ以外の固体電解コンデンサ、例えば、積層型アルミニウム固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサなどの作製にあたっては、コンデンサ素子としてアルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の多孔体からなる陽極と、それらの弁金属の酸化皮膜からなる誘導体層を有するものを用い、そのコンデンサ素子を、前記巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの場合と同様に、本発明の酸化剤兼ドーパント溶液とモノマーとの混合物に浸漬し、引き上げて、室温または加熱下でモノマー(チオフェンまたはその誘導体)を重合させるか、あるいは、コンデンサ素子をモノマー溶液に浸漬し、引き上げて乾燥した後、該コンデンサ素子を本発明の酸化剤兼ドーパント溶液に浸漬し、引き上げて、室温または加熱下でモノマーを重合させるか、もしくは、コンデンサ素子を本発明の酸化剤兼ドーパント溶液に浸漬し、引き上げた後、該コンデンサ素子をモノマー中に浸漬し、引き上げた後、室温または加熱下でモノマーを重合させ、これらの工程を繰り返して、導電性高分子からなる固体電解質層を形成した後、カーボンペースト、銀ペーストを付け、乾燥した後、外装することによって、積層型アルミニウム固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサなどが作製される。
【0043】
上記のような導電性高分子の製造や固体電解コンデンサの作製時の「その場重合」による導電性高分子の製造にあたって、本発明の酸化剤兼ドーパント溶液とモノマー(チオフェンまたはその誘導体)あるいはモノマー溶液との使用比率は、酸化剤兼ドーパントとなる有機スルホン酸第二鉄とモノマーとが質量比で2:1〜8:1が好ましく、「その場重合」は、例えば、10〜300℃、1〜180分で行われる。
【0044】
また、固体電解コンデンサの作製にあたって、コンデンサ素子を本発明の酸化剤兼ドーパント溶液とモノマーとの混合物に浸漬する場合、通常は本発明の酸化剤兼ドーパント溶液をあらかじめ調製しておいて、それをモノマーと混合するが、そのようなあらかじめの調製をせずに、有機スルホン酸第二鉄の有機溶剤溶液(ヒドロキシル基を有する有機溶剤の溶液)と、スルホキシド基を有する化合物と、モノマーとを混合して、そのような混合状態において、本発明の酸化剤兼ドーパント溶液に相当する有機スルホン酸第二鉄の有機溶剤溶液とスルホキシド基を有する化合物とが存在するようにしてもよい。
【0045】
また、本出願人の出願に係る特願2010−08722に開示のように、導電性高分子の製造にあたり、チオフェンまたはその誘導体からなるモノマーに、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド基を有する化合物をモノマーのチオフェンまたはその誘導体に対して質量基準で1.5〜20%添加しておくと、酸化剤兼ドーパント溶液における酸化剤の反応速度を低下させることができ、酸化剤兼ドーパント溶液の高濃度化による弊害を低減することができる。
【0046】
そこで、本発明と上記モノマーに対してスルホキシド基を有する化合物を添加することを併用すると、本発明による粘度の低下とモノマーへのスルホキシド基を有する化合物の添加に基づく酸化剤の反応速度の低下作用とが相乗的に働いて、特性のより良い固体電解コンデンサを得ることができる。
【0047】
さらに、本出願人の出願に係る特願2010−08721に開示のように、導電性高分子の製造にあたり、酸化剤兼ドーパント溶液に、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド基を有する化合物を酸化剤の有機スルホン酸第二鉄に対して質量基準で1〜7.5%添加しておくと、酸化剤兼ドーパント溶液における酸化剤の反応速度を低下させることができ、酸化剤兼ドーパントの高濃度化による弊害を低減することができる。
【0048】
そこで、本発明と上記酸化剤兼ドーパントに対してスルホキシド基を有する化合物を添加することを併用すると、本発明による粘度の低下と酸化剤兼ドーパントへのスルホキシド基を有する化合物の添加に基づく酸化剤の反応速度の低下作用とをそれぞれ発揮させて、特性のより良い固体電解コンデンサを得ることができる。
【実施例】
【0049】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて濃度や添加量などを示す際の%は特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
【0050】
〔酸化剤兼ドーパント溶液の調製〕
以下に示す実施例1〜18および比較例1〜8では、酸化剤兼ドーパント溶液の調製を示す。なお、これらの酸化剤兼ドーパント溶液の評価は、後記の〔固体電解コンデンサでの評価(1)〕 や〔固体電解コンデンサでの評価(2)〕における固体電解コンデンサの評価によって行う。
【0051】
まず、酸化剤兼ドーパント溶液をエタノール系溶液とし、酸化剤兼ドーパントとしての有機スルホン酸第二鉄の濃度を62%に高濃度化した実施例1〜10および比較例1〜4の酸化剤兼ドーパント溶液の調製について説明する。
【0052】
実施例1
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテル〔一般式(2)において、RとRがメチル基で、Rがエチレン基であるアルキレングリコールジアルキルエーテル〕を7.3g添加し、かつエタノールを11.0g添加し、60℃で1時間加熱した後、アドバンテック東洋社製ガラスフィルターGF75(GF75は品番であり、以下、社名を省略して表示する)で濾過し、濾液を実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液のB型粘度計で温度25℃、回転数60rpmの条件下で測定した粘度は、118mPa・sであった。
【0053】
実施例2
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを3.7g添加し、かつエタノールを14.7g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例2の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例2の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は5.0%であった。また、この実施例2の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、120mPa・sであった。
【0054】
実施例3
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを5.9g添加し、かつエタノールを12.5g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は8.0%であった。また、この実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、116mPa・sであった。
【0055】
実施例4
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを9.5g添加し、かつエタノールを8.9g添加し、60℃で1時間加熱した後、アドバンテック東洋社製ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例4の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例4の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は13.0%であった。また、この実施例4の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、108mPa・sであった。
【0056】
実施例5
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを11.7g添加し、かつエタノールを6.7g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例5の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例5の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は16.0%であった。また、この実施例5の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、105mPa・sであった。
【0057】
実施例6
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを14.7g添加し、かつエタノールを3.7g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例6の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例6の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は20.0%であった。また、この実施例6の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、100mPa・sであった。
【0058】
実施例7
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを3.0g添加し、かつエタノールを15.4g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は4.0%であった。また、この実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、133mPa・sであった。
【0059】
実施例8
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、ジプロピルエーテル〔一般式(1)において、RとRがプロピル基であるジアルキルエーテル〕を7.3g添加し、かつエタノールを11.1g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例8の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例8の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するジエチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この実施例8の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、112mPa・sであった。
【0060】
実施例9
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、メチレングリコールジメチルエーテル(CH−O−CH−O−CH−O−CH)〔一般式(2)において、RとRがメチル基で、Rがメチレン基であるジアルキレングリコールジアルキルエーテル〕を7.3g添加し、かつエタノールを11.1g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例9の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例9の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するメチレングリコールジメチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この実施例9の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、106mPa・sであった。
【0061】
実施例10
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを7.3g添加し、ジメチルスルホキシドを1.8g添加し、かつエタノールを9.2g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例10の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例10の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は10.0%、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するジメチルスルホキシドの添加量は2.5%であった。また、この実施例10の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、126mPa・sであった。
【0062】
比較例1
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エタノールを18.4g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を比較例1の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この比較例1の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であった。また、この比較例1の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件で測定した粘度は、148mPa・sであった。
【0063】
比較例2
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを2.2g添加し、かつエタノールを16.2g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を比較例2の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この比較例2の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は3.0%であった。また、この比較例2の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、143mPa・sであった。
【0064】
比較例3
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジメチルエーテルを18.4g添加したところ、2層に分離し、60℃で1時間加熱しても、均一な酸化剤兼ドーパント溶液は得られなかった。なお、この比較例3の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は25%であった。
【0065】
比較例4
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は73.4%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールモノメチルエーテルを7.3g添加し、かつエタノールを11.0g添加し、60℃で1時間加熱した後、アドバンテック東洋社製ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を比較例4の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この比較例4の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は62.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールモノメチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この比較例4の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件で測定した粘度は、152mPa・sであった。
【0066】
上記実施例1〜10および比較例1〜4の酸化剤兼ドーパント溶液のジアルキルエーテルまたはその誘導体の酸化剤の有機スルホン酸第二鉄(パラトルエンスルホン酸)に対する添加量、該ジアルキルエーテルまたはその誘導体の種類および粘度を表1に示す。
ただし、ジアルキルエーテルまたはその誘導体については、スペース上の関係で、次のように簡略化して示す。
【0067】
EGDM:エチレングリコールジメチルエーテル
DPrE:ジプロピルエーテル
MGDM:メチレングリコールジメチルエーテル
EGMM:エチレングリコールモノメチルエーテル
【0068】
【表1】

【0069】
上記表1において、比較例3の粘度を示していないのは、前記のように、エチレングリコールジメチルエーテルの添加量が多すぎ、均一な酸化剤兼ドーパント溶液が得られず、そのため、粘度測定を行わなかったことによるものであるが、表1に示すように、実施例1〜10の酸化剤兼ドーパントは、比較例1〜2および4の酸化剤兼ドーパント溶液に比べて、粘度が低かった。
【0070】
次に酸化剤兼ドーパント溶液をブタノール系溶液にし、酸化剤兼ドーパントとしての有機スルホン酸第二鉄の濃度を56%に高濃度化した実施例11〜18および比較例5〜8の酸化剤兼ドーパント溶液の調製について説明する。
【0071】
実施例11
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテル〔一般式(2)において、RとRがエチル基で、Rがエチレン基であるアルキレングリコールジアルキルエーテル〕を6.6g添加し、かつブタノールを10.4g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同様の条件下で測定した粘度は、127mPa・sであった。
【0072】
実施例12
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄でブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを3.3g添加し、かつブタノールを13.7g添加し、60℃で1時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例12の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例12の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は5.0%であった。また、この実施例12の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、137mPa・sであった。
【0073】
実施例13
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを5.9g添加し、かつブタノールを11.1g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例13の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例13の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は9.0%であった。また、この実施例13の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、129mPa・sであった。
【0074】
実施例14
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを8.5g添加し、かつブタノールを8.5g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例14の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例14の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は13.0%であった。また、この実施例14の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同様の条件下で測定した粘度は、122mPa・sであった。
【0075】
実施例15
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄エタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.75)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを10.5g添加し、かつブタノールを6.5g添加し、60℃で2時間加熱した、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例15の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例15の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は16.0%であった。また、この実施例15の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、119mPa・sであった。
【0076】
実施例16
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄でブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを13.1g添加し、かつブタノールを3.9g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例16の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例16の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は20%であった。また、この実施例16の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、116mPa・sであった。
【0077】
実施例17
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、ジブチルエーテル〔一般式(1)において、RとRがブチル基のジアルキルエーテル〕を6.6g添加し、かつブタノールを10.4g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例17の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例17の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するジブチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この実施例17の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、130mPa・sであった。
【0078】
実施例18
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、ジエチレングリコールジメチルエーテル〔一般式(3)において、RとRがメチル基で、Rがエチレン基であるジアルキレングリコールジアルキルエーテル〕を6.6g添加し、かつブタノールを10.4g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を実施例18の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この実施例18の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するジエチレングリコールジメチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この実施例18の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同様の条件下で測定した粘度は、133mPa・sであった。
【0079】
比較例5
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、ブタノールを17.0g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を比較例5の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この比較例5の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であった。また、この比較例5の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件で測定した粘度は、160mPa・sであった。
【0080】
比較例6
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを2.0g添加し、かつブタノールを15.0g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を比較例6の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この比較例6の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は3.0%であった。また、この比較例6の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同様の条件下で測定した粘度は、157mPa・sであった。
【0081】
比較例7
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールジエチルエーテルを16.4g添加したところ、2層に分離し、さらに、ブタノールを0.6g添加し、60℃で2時間加熱しても、均一な酸化剤兼ドーパント溶液は得られなかった。なお、この比較例7の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量は25%であった。
【0082】
比較例8
テイカ社製の濃度40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄ブタノール溶液(鉄とパラトルエンスルホン酸とのモル比1:2.77)を蒸留により濃縮した。この溶液の乾燥固形分は65.5%であった。上記溶液100gに対し、エチレングリコールモノエチルエーテルを6.6g添加し、かつブタノールを10.4g添加し、60℃で2時間加熱した後、ガラスフィルターGF75で濾過し、濾液を比較例8の酸化剤兼ドーパント溶液とした。この比較例8の酸化剤兼ドーパント溶液の計算上の固形分濃度は56.0%であり、パラトルエンスルホン酸第二鉄に対するエチレングリコールモノメチルエーテルの添加量は10.0%であった。また、この比較例2の酸化剤兼ドーパント溶液の実施例1と同条件下で測定した粘度は、160mPa・sであった。
【0083】
つぎに、上記実施例11〜18および比較例5〜8の酸化剤兼ドーパント溶液のジアルキルエーテルまたはその誘導体の有機スルホン酸第二鉄に対する添加量、ジアルキルエーテルまたはその誘導体の種類および粘度を表2に示す。なお、ジアルキルエーテルまたはその誘導体については、表1の場合と同様に、次のように簡略化して示す。
【0084】
EGDE:エチレングリコールジエチルエーテル
DBuE:ジブチルエーテル
DEGPM:ジエチレングリコールジメチルエーテル
EGME:エチレングリコールモノエチルエーテル
【0085】
【表2】

【0086】
表2において、比較例7の酸化剤兼ドーパントの粘度を示していないのは、エチレングリコールジエチルエーテルの添加量が多すぎて均一な酸化剤兼ドーパントが得られなかったために粘度測定をしなかったことによるものであるが、表2に示すように、実施例11〜18の酸化剤兼ドーパントは、比較例5〜6および8の酸化剤兼ドーパントに比べて、粘度が低かった。
【0087】
〔固体電解コンデンサでの評価(1)〕
この〔固体電解コンデンサでの評価(1)〕では、前記のように調製した実施例1〜10の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて設定静電容量が100μF以上で、設定ESRが8mΩ以下の実施例19〜28の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、それらと前記のように調製した比較例1〜2および4の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例9〜11の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサのコンデンサ特性を比較するとともに、それによって、それらの巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた実施例1〜10ならびに比較例1〜2および4の酸化剤兼ドーパント溶液の特性評価をする。
【0088】
実施例19
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って誘導体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、設定静電容量が100μF以上で、設定ESRが8mΩ以下の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサ作製用のコンデンサ素子を作製した。
【0089】
上記コンデンサ素子を、3,4−エチレンジオキシチオフェン(テイカ社製)20mlと実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液100mlとを混合して調製した混合溶液に浸漬し、引き上げた後、70℃で2時間、180℃で1時間加熱することによって、3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合させて3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合体をポリマー骨格とする導電性高分子からなる固体電解質層を形成した。これを外装材で外装して、アルミニウム巻回型固体電解コンデンサを作製した。
【0090】
上記のようにして作製したアルミニウム巻回型固体電解コンデンサについて、HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、ESRを100kHzで測定し、静電容量を120Hzで測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0091】
実施例20
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例2の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0092】
実施例21
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例3の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0093】
実施例22
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例4の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0094】
実施例23
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例5の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0095】
実施例24
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例6の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0096】
実施例25
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例7の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0097】
実施例26
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例8の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0098】
実施例27
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例9の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0099】
実施例28
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例10の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0100】
比較例9
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、比較例1の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0101】
比較例10
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、比較例2の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0102】
比較例11
実施例1の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、比較例4の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例19と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、この巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例19と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表3に示す。
【0103】
上記のように作製した実施例19〜28および比較例9〜11の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの静電容量およびESRを上記巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製に用いた酸化剤兼ドーパント溶液の種類とともに次の表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
表3に示すように、実施例19〜28の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、静電容量が103.5〜105.9μFであって、設定静電容量の100μF以上を満たし、ESRが7mΩ台であって、設定ESRの8mΩ以下を満たしていたが、比較例9〜11の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、静電容量が100μFに達せず、設定静電容量の100μF以上を満たさず、ESRが8mΩを超えていて、設定ESRの8mΩ以下を満たさなかった。
【0106】
すなわち、酸化剤兼ドーパントの有機スルホン酸第二鉄に対してジアルキルエーテルまたはその誘導体を所定範囲で添加した実施例1〜10の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した実施例19〜28の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、静電容量が大きく、かつESRが低く、コンデンサ特性が優れていたが、ジアルキルエーテルまたはその誘導体を添加していない比較例1の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例9の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサや、ジアルキルエーテルの誘導体に属するエチレングリコールジメチルエーテルの添加量が少ない比較例2の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例10の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサ、ジアルキルエーテルまたはその誘導体に代えて、モノアルキル系のエチレングリコールモノメチルエーテルを添加して調製した比較例4の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例11の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、実施例19〜28の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサに比べて、静電容量が小さく、ESRが大きく、コンデンサ特性が劣っていた。
【0107】
そして、この結果から、実施例19〜28の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた実施例1〜10の酸化剤兼ドーパント溶液は、比較例9〜11の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた比較例1〜2および4の酸化剤兼ドーパント溶液より、導電性高分子製造用の酸化剤兼ドーパント溶液として特性が優れていることがわかるし、また、実施例1〜10の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化重合して製造した導電性高分子が、特性が優れていることがわかる。
【0108】
〔固体電解コンデンサでの評価(2)〕
この〔固体電解コンデンサでの評価(2)〕では、前記のように調製した実施例11〜18の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて設定静電容量が50μF以上で、設定ESRが12mΩ以下の実施例29〜36の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、それらと前記のように調製した比較例5〜6および8の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例12〜14の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサとのコンデンサ特性を比較するとともに、それによって、それらの巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた実施例11〜18ならびに比較例5〜6および8の酸化剤兼ドーパントの特性評価を行う。
【0109】
実施例29
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って誘導体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、設定静電容量が50μF以上で、設定ESRが12mΩ以下の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサ作製用のコンデンサ素子を作製した。
【0110】
上記コンデンサ素子を、3,4−エチレンジオキシチオフェン(テイカ社製)20mlに対してメタノールを80ml添加して調製したモノマー溶液に浸漬し、引き上げた後、50℃で10分間乾燥した。その後、上記コンデンサ素子を実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液500mlに浸漬し、引き上げた後、70℃で2時間、180℃で1時間加熱することによって、モノマーの3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合させて3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合体をポリマー骨格とする導電性高分子からなる固体電解質層を形成した。これを外装材で外装して、巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製した。
【0111】
上記のようにして作製した巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、ESRを100kHzで測定し、静電容量を120Hzで測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0112】
実施例30
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例12の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0113】
実施例31
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例13の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0114】
実施例32
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例14の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0115】
実施例33
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例15の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0116】
実施例34
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例16の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0117】
実施例35
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例17の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0118】
実施例36
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、実施例18の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0119】
比較例12
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、比較例5の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0120】
比較例13
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、比較例6の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0121】
比較例14
実施例11の酸化剤兼ドーパント溶液に代えて、比較例8の酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は、すべて実施例29と同様の操作を行って巻回型アルミニウム固体電解コンデンサを作製し、その巻回型アルミニウム固体電解コンデンサについて、実施例29と同様にESRおよび静電容量を測定した。その結果を後記の表4に示す。
【0122】
上記実施例29〜36および比較例12〜14の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの静電容量およびESRを上記巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた酸化剤兼ドーパント溶液の種類とともに次の表4に示す。
【0123】
【表4】

【0124】
表4に示すように、実施例29〜36の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、静電容量が50.6〜52.4μFであって、設定静電容量の50μF以上を満たし、ESRが11mΩ台であって、設定ESRの12mΩ以下を満たしていたが、比較例12〜14の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、静電容量が50μFに達せず、設定静電容量の50μF以上を満たさず、ESRが12mΩを超えていて、設定ESRの12mΩ以下を満たさなかった。
【0125】
すなわち、酸化剤兼ドーパントの有機スルホン酸第二鉄に対してジアルキルエーテルまたはその誘導体を所定範囲で添加した実施例11〜18の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した実施例29〜36の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、静電容量が大きく、かつESRが低く、コンデンサ特性が優れていたが、ジアルキルエーテルまたはその誘導体を添加していない比較例5の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例12の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサや、ジアルキルエーテルの誘導体に属するエチレングリコールジエチルエーテルの添加量が少ない比較例6の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例13の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサ、ジアルキルエーテルまたはその誘導体に代えて、モノアルキル系のエチレングリコールモノエチルエーテルを添加した比較例8の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて作製した比較例14の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサは、実施例29〜36の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサに比べて、静電容量が小さく、かつESRが大きく、コンデンサ特性が劣っていた。
【0126】
そして、この結果から、実施例29〜36の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた実施例11〜18の酸化剤兼ドーパント溶液は、比較例12〜14の巻回型アルミニウム固体電解コンデンサの作製にあたって用いた比較例5〜6および8の酸化剤兼ドーパント溶液より、導電性高分子製造用の酸化剤兼ドーパント溶液として特性が優れていることがわかるし、また、実施例11〜18の酸化剤兼ドーパント溶液を用いて3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化重合して製造した導電性高分子が、特性が優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパントとしての有機スルホン酸第二鉄と、ヒドロキシル基を有する有機溶剤とを含む導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液であって、ジアルキルエーテルまたはその誘導体を前記有機スルホン酸第二鉄に対して質量基準で4〜20%添加したことを特徴とする導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液。
【請求項2】
ジアルキルエーテルまたはその誘導体が、次の一般式(1)で表されるジアルキルエーテル、一般式(2)で表されるアルキレングリコールジアルキルエーテルおよび一般式(3)で表されるジアルキレングリコールジアルキルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液。
一般式(1):
−O−R
(式中、RとRは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、これらのRとRは、同一でもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。ただし、RとRが同時にCHである場合を除く)
一般式(2):
−O−R−O−R
(式中、RとRは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、これらのRとRは、同一でもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)
一般式(3):
−O−(R−O)−R
(式中、RとRは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、これらのRとRは、同一でもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)
【請求項3】
ヒドロキシル基を有する有機溶剤が、炭素数1〜4のアルコールである請求項1または2記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液。
【請求項4】
有機スルホン酸第二鉄が、パラトルエンスルホン酸第二鉄である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液。
【請求項5】
有機スルホン酸第二鉄における鉄に対する有機スルホン酸のモル比が、1:3より有機スルホン酸が少ない請求項1〜4のいずれかに記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液。
【請求項6】
有機スルホン酸第二鉄の濃度が55質量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を用いてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して製造したことを特徴とする導電性高分子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を用いてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して製造した導電性高分子を固体電解質として用いたことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液を用いてチオフェンまたはその誘導体を酸化重合して導電性高分子を製造し、得られた導電性高分子を固体電解質として用いて固体電解コンデンサを製造することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
導電性高分子製造用酸化剤兼ドーパント溶液が、固体電解コンデンサの製造時に、有機スルホン酸第二鉄のヒドロキシル基を有する有機溶剤溶液にジアルキルエーテルまたはその誘導体を添加したものである請求項9記載の固体電解コンデンサの製造方法。

【公開番号】特開2012−1677(P2012−1677A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140122(P2010−140122)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】