説明

導電物内にRFIDトランスポンダを有するデバイスとその製造方法

本発明は、少なくとも1つの基板(2)と少なくとも1つのRFIDチップ(3)とを有し、少なくとも1つの第1の導電表面エレメント(7)を伴うRFIDトランスポンダデバイスに関し、前記第1の導電表面エレメント(7)が前記基板(2)から距離を隔てて存在し、かつ少なくとも1つの第1の導電接続エレメント(9、34)によって前記基板(2)及び/または前記RFIDチップ(3)へ電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び請求項9の特徴部の前の節に記載され、少なくとも1つのRFIDチップを含む少なくとも1つのRFIDトランスポンダを有するデバイス及び前記デバイスを製造するための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるRFID技術は、非常に広範な製品の非接触識別のために使用される。この目的のために、これらの製品はいわゆるトランスポンダを保有し、トランスポンダは、非接触接続を介していわゆるリーダと通信することができる。トランスポンダは、RFID(無線認証)制御エレクトロニクスと、必要であればこれに接続されるアンテナとから成ることが可能である。
【0003】
RFID制御エレクトロニクスは、集積回路として存在することができ、これは、その最小形式でアンテナの接続箇所にシリコンをベースとするウェーハからいわゆるチップとして直接搭載されることが可能である。
【0004】
このようなトランスポンダは、例えばバッテリなどの電源を装備していわゆる能動トランスポンダを形成する、或いはリーダの電磁場または磁場を介して充電される集積回路内のキャパシタの電荷を介して給電される。この種のトランスポンダは、受動トランスポンダと呼ばれる。
【0005】
受動トランスポンダとの通信及び受動トランスポンダへの電力またはエネルギ供給は、リーダとトランスポンダとの間の最大距離を下回る距離でリーダに接触することなく機能する。
【0006】
非接触通信の機能性が引き続き確実である、トランスポンダとリーダとの間の可能な最大距離は、トランスポンダの位置において利用可能な電界強度及び/または磁場強度に依存する。
【0007】
非接触通信用伝送周波数として、RFID技術では、いわゆるHF(高周波数)周波数領域において13.56MHz、及びいわゆるUHF(極超短波)領域において865−965MHzの搬送波周波数が、世界的使用のために標準化されている。UHF領域では、2.46GHzも搬送波周波数として使用することができる。
【0008】
RFID技術のHF領域では、13.56MHzの搬送波周波数が使用されれば、空気媒体内の電磁波の波長は約22mである。RFID適用において、トランスポンダとリーダとの間の通信は、リーダとトランスポンダとの距離が1メートル以内で発生する。
【0009】
通常、HF領域内の搬送波周波数が使用される場合、HFトランスポンダアンテナとRFIDリーダアンテナとは互いに磁気的に結合される。その結果、コイルとして使用されるアンテナは少ない巻数を有する形式でなければならない。
【0010】
これに対してUHF周波数領域の場合、今日までのRFID技術では、非接触接続はいわゆる遠距離場においてUHFトランスポンダとUHFリーダとの間に数メートルまでの距離でセットアップされている。UHF領域内の電磁波は、遠距離場では電磁的に伝搬されるため、UHFトランスポンダアンテナ及びリーダアンテナは通常、λ/2ダイポールを使用して実装される。865MHzのUHF搬送波周波数が使用されれば、空気媒体における結果は35cmの波長となる。
【0011】
RFID技術のUHF領域において、近距離場は、UHFトランスポンダとUHFリーダとの間の距離が数センチメートルより少ない。近距離場では、原則として、リーダとRFIDトランスポンダとの間のカップリングはE場(容量型)またはH場(誘導型、磁気型)を介して発生することが可能である。よって、遠距離場では電磁波伝搬が発生する。
【0012】
RFID技術が金属板または導電箔等の導電物を有する環境で使用されれば、遮蔽及び反射効果が生じ、トランスポンダの無故障機能については困難となる、または完全に妨害される可能性がある。
【0013】
しかしながら、金属環境においても、即ち導電物を有する環境であっても、RFID技術の優位点が使用されるべき場、但し物理的条件に起因してこれを使用できない、または限定的にしか使用できない場は存在し得る。例えば、RFID技術は、例えば兵器である、軍事またはセキュリティアプリケーションにおいて、例えば金属製容器関連の兵站業務において、または例えばプラスチック表面上の金属箔及び金属メッキである、導電性表面を有する特殊部品ケージの場合に望まれる可能性もある。
【0014】
現在まで、例えば金属壁を介する非接触通信の場合のように導電表面を有する環境では、電磁波が100%まで反射され、よって電磁波の制御された伝搬が妨げられるため、UHF領域内でRFIDシステムを使用することはできていない。UHF周波数の場合は、導電表面の材の厚みの影響を見込むことも必要である。この時点では、原則として、電磁波を損失(表皮効果)なしに反射できるように、周波数が高いほど、金属壁等の導電層をより薄くできると言うことができる。
【0015】
従って現在まで、導電壁を介するUHF周波数の伝送は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、少なくとも1つの基板と1つのRFIDチップとを有するRFIDトランスポンダデバイスとその製造方法、即ち、このデバイス及び方法によってRFIDトランスポンダによる導電エレメントを介する非接触通信が可能になるデバイスと方法を利用可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、デバイスに関しては請求項1に記載されている特徴により、かつ方法に関しては請求項9に記載されている特徴によって達成され、かつ利用可能にされるべき機能テストの形式でも達成される。
【0018】
本発明の核心的技術案は、少なくとも1つの基板と少なくとも1つのRFIDチップとを有するRFIDトランスポンダデバイスの場合、基板から距離を隔てて存在し、かつ前記基板へ少なくとも1つの第1の導電接続エレメントによって電気的に接続されている少なくとも1つの第1の導電表面エレメントが配置されることにある。基板は、具体的にはそのチップ接続面を介して表面エレメントへ電気的に接続されていることが可能である。これは、同じく基板から距離を隔てて存在し、かつ同じく導電性である少なくとも1つのさらなる第2の表面エレメントへの電気的な接続についても当てはまる。第2の表面エレメントは、少なくとも1つの第2の導電接続エレメントによって基板へ電気的に接続され、第2の表面エレメントは少なくとも1つの絶縁エレメントによって第1の表面エレメントから電気的に絶縁されている。この方法では、例えば、第2の表面エレメントが、導電物質から成りかつ少なくとも部分的に基板及びRFIDチップを包むコイン等の物体の一部の形式であり、かつ第1の表面エレメントが物体内の凹部のためのカバーの形状であって、RFIDチップを有する基板が前記凹部内に配置されていれば、少なくとも部分的に導電性である物質の物体として、こうして取得されるRFIDトランスポンダと外部リーダとの間の非接触通信を可能にするデバイスを生成することができる。従って、チップへ接続されている、伝統的に据え付けられるアンテナは不要である。「トランスポンダ」は、チップと、アンテナとしての第1及び第2の表面エレメントとを有する基板であるものとして理解される。
【0019】
この目的のために、リーダは少なくとも1つの第3の表面エレメント及び1つの第4の表面エレメントを装備し、第3の表面エレメントは第1の表面エレメントから第1の距離で離隔されてこれらの表面エレメント間の容量結合を形成し、かつ第4の表面エレメントは第2の表面エレメントから第2の距離で離隔されてこれらの表面エレメント間の容量結合を形成する。
【0020】
理想的には、全ての表面エレメントは平形であり、よって、これらは平板キャパシタのように互いに反対向きに、即ち一方では第1及び第3の表面エレメント、もう一方に第2及び第4の表面エレメントが立っている。この方法では、金属製ハウジングの金属壁またはコインの部品等の導電表面が、RFIDトランスポンダとリーダのキャパシタ表面との間に配置され、かつキャパシタ表面として作用することにより、リーダ及びRFIDトランスポンダによるデータの非接触通信のための容量結合を得られる。
【0021】
このようなデバイスは、具体的には、UHF領域において互いに通信し合うRFIDトランスポンダ及びリーダにとって適切である。UHFトランスポンダが使用され、かつ電磁波が伝送媒体として作用する遠距離場領域では、物体の外壁であり得る導電層での電波の反射に起因して、伝送は不可能であり、一方で、近距離場では、例えばRFIDトランスポンダのチップに格納されているデータの送信を実装可能とする。
【0022】
従って、本発明の目的は、UHF周波数領域における、かつRFIDトランスポンダとリーダとの間の容量結合による実際の送信が実行される点において奏功する。ここでは、UHFのRFIDトランスポンダが使用される場合、必要な部品を小型化できる点が効果的であることも確認されている。これは、RFIDトランスポンダ及び容量的に作用するリーダの表面の小型構造によって、このようなデバイスをコイン等の小さい物体に対しても使用することを可能にする。従って、このようなデバイスを装備しているコインは、例えば読み取りプロセスによって本物であることを調べられてもよい。
【0023】
ある好ましい実施形態によれば、第1及び/または第2の接続エレメントは、誘導的及び/または容量的に作用する回路を有する。これは整合回路であってもよく、RFIDチップの電気端子のインピーダンスを、容量結合、リーダ及びもしあればキャパシタ等のさらなる電子部品のためのエレメントの形状である接続された残りの回路へ整合させるために使用される。整合回路は通常、最適な送電及びシステム全体またはデバイス全体に必要な周波数特性のために起動され、そのパラメータの大きさは適宜決定される。
【0024】
効果的には、少なくとも1つの基板と少なくとも1つのRFIDチップとを有し、前記基板及びRFIDチップが物体内または物体上に配置されるこのようなRFIDトランスポンダデバイスを製造するための方法は、下記のステップ、即ち、基板を物体上または物体内に配置するステップと、前記基板上に配置され、かつ第1のチップ接続面へ接続される第1の接続面を、前記物体の、前記基板から距離を隔てて存在する導電表面エレメントへ電気的に接続するステップと、前記基板上に配置され、かつ第2のチップ接続面へ接続される第2の接続面を、前記物体の、前記基板から距離を隔てて存在する第2の導電表面エレメントへ電気的に接続するステップとを含む。
【0025】
さらなるステップは、基板上に誘導的及び/または容量的に作用する回路を配置してよく、前記回路が基板の第1のチップ接続面及び第1の接続面へ電気的に接続される。
【0026】
第1及び第2の表面エレメント間には、少なくとも1つの電気絶縁エレメントが配置される。
【0027】
さらなる後続ステップでは、RFIDトランスポンダ及び第1及び第2の表面エレメントによる組み立ての機能を、RFIDチップ上に格納されたデータを読むためのリーダによって検査することができる。これを実行するに当たっては、データを読み取ることは不要であって、例えば単にRFIDトランスポンダの電流透過率を検査すればよい。リーダは、少なくとも1つの第3の表面エレメント及び少なくとも1つの第4の表面エレメントへ接続される。
【0028】
第3の表面エレメントは第1の表面エレメントから第1の距離を隔てて存在し、このようにして共に容量結合を形成する。同様に、第4の表面エレメントは第2の表面エレメントから第2の距離を隔てて存在し、このようにして別の容量結合を形成する。
【0029】
さらなる効果的な実施形態が、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
優位点及び有用性は、図面に関連する以下の説明から理解される。
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる本発明のデバイスの構造を示す略図である。
【図2】本発明によるデバイスの基本となり得る回路を示す簡略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる本発明のデバイスの構造を示す略図である。
【図4】本発明による製造方法の1つのセクションを示す簡略図である。
【図5】本発明によるデバイスを含むコインの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本発明によるデバイスが本発明の第1の実施形態にかかる略図で示されている。好ましくは、UHF周波数領域において動作するRFIDトランスポンダ1は、基板2と、RFIDチップ3とを有する。
【0032】
RFIDトランスポンダ1の基板部分は、例えばコインであってもよい物体6−8の凹部5内に配置される。
【0033】
残りのコイン本体6のカバーも表している第1の表面ユニット7は、環状の第2の表面ユニット8に対向している。この図は、円形コインを介する断面図である可能性もあり、電気絶縁リングを表し得る絶縁エレメント13が電気的に絶縁されていることは留意されるべきである。
【0034】
第1の接続線9は、RFIDトランスポンダ1から第1の表面エレメント7へ延び、かつ第2の接続線10は、RFIDトランスポンダ1から第2の表面エレメント8へ延びる。
【0035】
第1の接続線9は、その途中に、チップ3の電気端子インピーダンスを、図2に詳細に示されているような接続される残りの回路全体へ整合させるために使用される整合回路11を有してもよい。整合回路は、全体構造の最適な送電及び必要な周波数特性に合わせて適切なパラメータで大きさを最適にする。
【0036】
第1及び第2の表面エレメントは、コインなどが通常有するような導電表面である。
【0037】
第3の表面エレメント14は、第1の表面エレメント7から第1の間隙20によって分離されている。同様に、第4の表面エレメント15は、第2の表面エレメント8から第2の間隙19によって分離されている。第1及び第3の表面エレメントの表面、及び第2及び第4の表面エレメントの表面は互いに対向し、好ましくは、互いに平行に配列する結果、平板キャパシタのような配置となり、これは、導電物質から成るこれらの表面エレメント間の容量結合をセットアップするために使用されてもよい。その結果、容量結合によって、第3及び第4の表面エレメント14、15へ接続され、UHF領域で動作し、かつ接続線16、17により接続されるリーダ18は、例えばデータ伝送のために、チップ3及び延いてはRFIDトランスポンダと非接触通信を実行できる。第1の接続線9は、基板上のチップ3の第1の接続面またはこれらの第1の接続面へ接続されるさらなる第1の接続面へ接続され、第2の接続線10は、チップ3の第2の接続面または基板上に配置され、かつこれらの第2の接続面へ接続されるさらなる第2の接続面へ接続される。
【0038】
第1の表面エレメント1は、より大きい第2の導電表面エレメントの、例えば機械的に破断された断面形式であるカットアウトであってもよい。ここで決定的に重要な点は、これらの2つの表面エレメントまたは導電層が互いから電気絶縁されていることである。
【0039】
表面エレメント7、8、14及び15は、例えば、導電の形状の金属板であってもよい。間隙19、20及び適切であればキャパシタの形状である表面エレメントのベースは、リーダのRFIDトランスポンダへの効果的な結合に影響を与え、よって、RFIDトランスポンダ1とリーダ18との間のデータ伝送の安定機能に影響を与える。
【0040】
点線で示されているコイン本体16の形状は、本発明によるデバイスが、点線で示されている部品がなかったとしても、即ち表面ユニット7及び8のみで、結果として導電物質による唯一の壁によって機能する能力を有し、前記壁はRFIDトランスポンダ1とリーダ18との間に関連の表面エレメント14、15を伴って配置されることを示すためのものである。
【0041】
この点線による第2の表面エレメント8がハウジング6の部品であれば、回路キャパシタを形成するためにキャパシタ12が追加的に配置されていてもよい。
【0042】
図2には、本発明によるデバイスの回路が簡略図で示されている。同等の部品及び等しい意味を持つ部品には、等しい参照符号が付されている。
【0043】
本図から、RFIDトランスポンダ1は、例えばコイン本体であってもよいハウジング6内にチップと共に配置され、トランスポンダは抵抗器21及びキャパシタ22によって電子部品として示されていることが分かる。
【0044】
さらに、コイン本体6内には、誘導整合のために整合回路11が配置されている。寄生回路キャパシタの場合、キャパシタ12は整合回路及びRFIDトランスポンダ1に並列に接続されている。
【0045】
第1及び第3の表面エレメント7、14間に構築される容量結合は、キャパシタにより示されている。同様に、第2及び第4の表面エレメント8、15間に構築される容量結合もキャパシタにより示されている。双方のキャパシタは、接続線16、17によって、電源24と抵抗器25とを含むUHFリーダ18へ接続されている。
【0046】
図3には、本発明によるデバイスの構造が、本発明の第2の実施形態に準じて示されている。本図は、第2の表面エレメント8を部品として有するハウジングまたはコイン本体6が包含され得ることを示している。同等の部品及び等しい意味を持つ部品には、等しい参照符号が付されている。
【0047】
本発明の第2の実施形態によれば、導電物質であるこのような完全に閉じられた金属製ハウジング6は、第4の表面エレメント15aをコイン本体6の下側6aまたは後面6aに対して間隙19aを設けて配置することを可能にし、結果的にコイン本体6全体は、内部にRFIDトランスポンダ1を配置した状態でリーダ18の2つの表面エレメント14、15a間に配置されている。その結果、リーダは、キャパシタのように作用するその平形エレメント14、15aと共にコインの上側または下側へ容易に配置され得る。
【0048】
図4は、本発明のデバイスのための、本発明による方法の1つのセクションを示す。同等の部品及び等しい意味を持つ部品には、等しい参照符号が付されている。
【0049】
基板2上に、接触面26が配置される。まず、次に下側にチップ接続面28を有するRFIDチップ3を基板2へ貼り付けることができるように、これらの接触面に、好ましくはチップウェーハからフリッププロセスによって一定量の接着剤27が塗布される。これにより、チップは、先に貼付された接着剤の塊27によって接続面26へ、延いてはインレット基板2へ永久接着により接合されている。接続面26は、基板2の別々に配置された接続面であってもよい。
【0050】
接着剤の塊は、例えば、RFIDチップ接続部と基板接続部26との間の電気的な接続を可能にする異方性接着剤(ACA接着剤)であってもよい。
【0051】
次に、圧力が加えられると、適切な時間に渡る温度効果によって硬化及び結合が生じ、かつチップ接続面28と基板接続面26との間に接続が生じる。2つの矢印29は、これを示している。
【0052】
或いは、基板接触面または基板接続面とチップ接続面28との間の接続は、はんだ接合または等方性ペースト等の自己導電ペーストによって行われてもよい。
【0053】
先に述べた整合回路11は、RFIDインレット基板2上へ、これを基板の一部として実装することによって一体化されてもよい。これは、例えば、整合回路または所望されるインダクタンス及び/またはキャパシタンス効果のためのさらなる電子部品が軌道形状を介するいわゆるストリップ伝送線路の形状であることによって実行されてもよい。
【0054】
RFIDチップは、インレット基板2上に搭載された後、適切なプラスチック物質内に封入されることによって環境の影響から保護されてもよい。
【0055】
RFIDインレット基板2は、硬質または軟質の線路搬送材料から成ってもよい。
【0056】
本発明による製造方法におけるさらなるステップとして、インレット接続面26は表面エレメント7、8へ電気的に接続されている。この場合、基板接続面26と導電層または表面エレメント7、8との間の電気的な接続は、様々な接続プロセスによって生成されてもよい。接触されるべき物質、その表面及び目的とされる機械的構造の性質に依存して、はんだ付け、溶接、圧着、ねじ込みまたはこれらに類似するものによる電気的な接続が選択されてもよい。
【0057】
同様に、適切な導電ペースト及び接着剤の塊も機械的固定及び導電接続を生成することができる。この目的のためには、例えばエポキシ系の接着剤及び銀導電ペーストが適切である。
【0058】
さらなるステップでは、例えばコインである導電物内に配置されるRFIDトランスポンダ(RFIDインレット)の機能試験が行われる。この目的のために、コインの外面へ、その第3及び第4の表面エレメント14、15との容量結合によって結合されるUHFリーダが使用されるが、表面エレメント7、14間及び表面エレメント8、15間の間隙は保持される。この方法では、RFIDトランスポンダの機能を非接触、かつ特定のRFID機能を制限することなく実行することができる。間隙19、19a及び20が所定の最適な大きさの程度で保持されることは重要である。
【0059】
図5には、本発明によるデバイスを有するコインの構造が断面図で示されている。同等の部品及び等しい意味を持つ部品には、等しい参照符号が付されている。
【0060】
この場合もやはり、基板2上にRFIDチップ3とアンテナ(詳細には図示されていない)とが配置される。基板上には、整合回路11も配置されている。
【0061】
RFIDトランスポンダは、基板2、チップ3及び整合回路と共にコイン本体6の凹部5内に配置されている。
【0062】
基板を凹部5内に固定するために、コイン本体6の金属ベース本体6aの反対側である基板の下側にエポキシ系の接着剤の塊30が配置される。或いは、または追加的に、基板2と金属ベース本体6aとの間にさらなる金属層が配置されてもよい。丸いコイン6の下側の金属ベース本体6a上には導電性接着剤の塊31が円形に配置され、よって、この方法では、第2の導電表面エレメントとしての金属ベース本体6aとの電気的な接触が得られる。この目的のために、好ましくは環状であり、かつ基板2の下側に配置される接続面32も使用される。
【0063】
基板は、その上側にさらなる接続面33を有する。接続面33は、好ましくは環状に配置され、かつ好ましくは環状である導電性接着エレメント34によって第1の表面エレメント7の環状のセクション35と電気的に接触状態にある。第1の表面エレメント7は、キャパシタ表面として作用し、かつコイン本体のカバーにもなる。
【0064】
第1の表面エレメント7は、好ましくは環状である絶縁エレメント13によって、平板キャパシタのようにも作用する第2の表面エレメント6aから電気的に絶縁されている。
【0065】
この組み立てでは、RFIDインレット基板2は、エポキシ系の接着剤の塊31によって第2の表面エレメント6aへ、またコイン本体6内部に貼り付けられ、こうして機械的に固定されている。同時に、導電性接着剤によって、チップ3と金属物質である表面エレメント6aとの間に電気的な接続が生成される。従って、エポキシ系の接着剤と導電性接着剤との組合せが存在し、RFIDインレットと金属ベース本体との機械的固定だけでなく、電気的な接触も可能にされる。RFIDインレットが、金属ベース本体6内に設置された後、金属本体またはコイン6は表面エレメント7により頂部で閉じられている。表面エレメント7の固定及び整合回路11への接続は共に、やはりエポキシ系の接着剤及び導電性接着剤の塊34によって達成される。
【0066】
或いは、上側及び下側に配置される第1及び第2の表面エレメント6a、7とRFIDトランスポンダとを接触させるために、接触ばね、ねじ式接続、はんだ付け接続及びこれらに類似する接続等の他の接触方法が使用されてもよい。
【0067】
絶縁エレメント13は、プラスチックインサートによって、またはコイン本体6の側壁とカバー7との間の充填空間に、絶縁性の塊を例えば計量分配して注入することによって実装される。
【0068】
本願で開示されている全ての特徴は、個々であれ組合せであれ、先行技術と比較して、新規であれば本発明に不可欠なものとして主張される。

【符号の説明】
【0069】
1 RFIDトランスポンダ
2 基板
3 RFIDチップ
5 凹部
6、7 物体
6a、8 第2の表面エレメント
7、14 表面エレメント
9、34 接続エレメント
10、31 第2の接続エレメント
11 回路
12、22 キャパシタ
13 絶縁エレメント
14 表面エレメント
15、15a 第4の表面エレメント
8、6;15、15a 表面エレメント
16 コイン本体
16、17 接続線
18 リーダ
19、19a、20 間隙
21、25 抵抗器
24 電源
26、28 チップ接続面
26 接触面
27、34 接着エレメント
29 2つの矢印
31 接着剤の塊
32 第2の接続面
33 第1の接続面
35 セクション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板(2)と
少なくとも1つのRFIDチップ(3)とを有し、
少なくとも1つの第1の導電表面エレメント(7)が、前記基板(2)から距離を隔てて存在し、かつ少なくとも1つの第1の導電接続エレメント(9、34)によって前記基板(2)及び/または前記RFIDチップ(3)へ電気的に接続されていることを特徴とするRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの第2の導電表面エレメント(8、6a)が、前記基板(2)から距離を隔てて存在し、かつ少なくとも1つの第2の導電接続エレメント(10、31)によって前記基板(2)及び/または前記RFIDチップ(3)へ電気的に接続され、少なくとも1つの絶縁エレメント(13)によって前記第1の表面エレメント(7)から電気的に絶縁されていることを特徴とする、請求項1に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項3】
前記第2の表面エレメント(8、6a)が、少なくとも部分的に前記基板(2)を包むコイン等の物体(6)の一部であり、
前記第1の表面エレメント(7)が、前記物体(6、7)の凹部を覆い、
前記基板(2)及び前記RFIDチップ(3)が、前記凹部内に配置されている
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項4】
前記物体(6、7)が、少なくとも部分的に導電物質から成ることを特徴とする、請求項3に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項5】
前記表面エレメント(7、14)間に容量結合を形成するための少なくとも1つの第3の表面エレメント(14)が、前記第1の表面エレメント(7)から第1の距離(20)を隔てて存在することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項6】
前記表面エレメント(8、6a;15、15a)間に容量結合を形成するための少なくとも1つの第4の表面エレメント(15、15a)が、前記第2の表面エレメント(8、6a)から第2の距離(19、19a)を隔てて存在することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項7】
前記第3及び第4の表面エレメント(14、15、15a)が、前記RFIDチップ(3)に格納されたデータを読み取るための少なくとも1つのリーダ(18)へ接続されていることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項8】
前記第1及び/または第2の接続エレメント(9、10)が、誘導的及び/または容量的に作用する回路(11)を含むことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のRFIDトランスポンダデバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの基板(2)と、少なくとも1つのRFIDチップ(3)と、前記基板(2)及び前記RFIDチップ(3)を含む物体(6、7)とを有するRFIDトランスポンダデバイスを製造するための方法であって、
前記基板(2)を前記物体(6)上または前記物体(6)内に配置するステップと、
前記基板(2)上に配置され、かつ第1のチップ接続面(26、28)へ接続される第1の接続面(33)を、前記基板(2)から距離を隔てて存在する前記物体(6)の第1の導電エレメント(7)へ電気的に接続するステップと、
前記基板(2)上に配置され、かつ第2のチップ接続面(26、28)へ接続される第2の接続面(32)を、前記基板(2)から距離を隔てて存在する、前記物体(6)の導電エレメント(6a)へ電気的に接続するステップとを含む方法。
【請求項10】
前記基板の前記第1のチップ接続面(26、28)及び前記第1の接続面(33)へ電気的に接続され、誘導的及び/または容量的に作用する回路(11)を、前記基板(2)上に配置する前記ステップを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の表面エレメント(7、8、6a)間に少なくとも1つの電気絶縁性の絶縁エレメント(13)が配置されることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの第3の表面エレメント(14)及び少なくとも1つの第4の表面エレメント(15、15a)へ接続され、かつ前記基板(2)及びRFIDチップ(3)と前記第1及び第2の表面エレメント(7、6a)との組み立ての機能性を、前記RFIDチップ(3)に格納されたデータを読むためのリーダ(18)によって試験するステップを特徴とする、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の表面エレメント(14)が、前記第1の表面エレメント(7)から第1の距離(20)を隔てて存在し、かつ共に容量結合を形成し、前記第4の表面エレメント(15、15a)も同様に前記第2の表面エレメント(8、6a)から第2の距離(19、19a)を隔てて存在し、かつ共に容量結合を形成することを特徴とする、請求項12に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515739(P2011−515739A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549137(P2010−549137)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052538
【国際公開番号】WO2009/109594
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(508110962)ミュールバウアー アーゲー (10)
【Fターム(参考)】