説明

導電部材

導電部材(1)は、第一電気接点(2)と、少なくとも一つの第二電気接点(3)と、接続要素(4)と、を有している。この接続要素は、第一電気接点(2)と前記少なくとも一つの第二電気接点(3)を電気的に接続し、且つ少なくとも一つのプレート状の領域(41)を有している。各プレート状の領域(41)は、少なくとも一つの第一のピボット(452,452' ,452'')及び少なくとも一つの第二のピボット(462,462' ,462'')を備えた、少なくとも一つの撓み手段(44)を有していて、ここで、各撓み手段(44)の、第一のピボット(452,452' ,452'')及び第二のピボット(462,462' ,462'')は、各第二電気接点(3)が、剪断力を生ずることなく、撓み方向(43)に第一電気接点(2)に対して移動可能であるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー・エレクトロニクスの分野に係り、特に、請求項1の前書き部分に基づく導電部材(electrical conductor)、請求項15に基づく電気端子、そのような導電部材または電気端子を備えた半導体モジュール、及び、請求項6に基づく半導体モジュールに係る。
【背景技術】
【0002】
IGBT(絶縁バイポーラ・ゲート・トランジスタ)パワー・モジュールのような、半導体パワー・モジュールのための電気端子は、数キロ・アンペアまでの電流の入り切りに使用される。モジュールの外側の接点からチップまでの電気的接続部は、ターミナルと呼ばれる金属導電部材により設けられ、このターミナルは、ハウジングに固定された外側の接点のための一つの電気接点を有している。図1は、従来の電気端子を示している。この電気端子10は、第一電気接点2、第二電気接点3、及び第一電気接点2と第二電気接点3を電気的に接続する接続要素4を有している。
【0003】
この接続要素4は、一つの平面内に配置され、且つ、撓み手段44を備えたプレート状の領域41を有している。この撓み手段44は、第一のセクション45、第二のセクション46、及び第一のセクション45と第二のセクション46との間に配置された第三のセクション47を有している。第一のセクション45は、第一のピボット452を有する第一のヒンジ453として振舞う第一の接続部454を除いて、第一のカット部451によって、第三のセクション47から分離されている。これに対応して、第二のセクション46は、第二のピボット462を有する第二のヒンジ463として振舞う第二の接続部464を除いて、第二のカット部461によって、第三のセクション47から分離されている。
【0004】
ピボット452,462の曲げ能力を改善するため、第一の接続部454及び第二の接続部464は、これらの接続部454,464の間の第三のセクション47と比較して、小さな断面を有している。この配置によって、電流経路5(図1の中の破線)が、第一電気接点2から、第一のセクション45、第一の接続部454、第三のセクション47、第二の接続部464、第二のセクション46を通って、第二電気接点3まで、形成される。ターミナル10の頂点部分は、第一電気接点2がハウジングから突き出るように、モジュールのハウジングに固定される。
【0005】
第二電気接点3は、半導体モジュールの中に配置され、半導体チップに接続するために、メタライズされたセラミック基板にハンダ付けされている。複数の並列に接続されたIGBTを備えたモジュールの場合には、そのようなターミナル10は、二つのそのような第二電気接点3(第一の第二電気接点31及び第二の第二電気接点32)を有していて、それらの第二電気接点は、共通の第一のセクション45により、及び、第一の接続部454、第三のセクション47、第二の接続部464、第二のセクション46、及び対応する第一の第二電気接点31または第二の第二電気接点32の鏡面対称の配置により、第一電気接点2に電気的に接続されている。
【0006】
パワー・モジュールの運転の間、当該パワー・モジュールは、電流に起因する温度変化に曝され、そのような温度変化は、ターミナルの自己発熱をもたらし、それは、特に大電流または急速な電流変動の際に生じ、特に、スイッチング・プロセスの間に生ずる。これは、モジュールのハウジングの周期的な膨張をもたらす。それ故に、第一電気接点2は、第二電気接点3に対して変位され、力がターミナル10に加えられ、その力が、撓み手段44の膨張または収縮をもたらす。この動きを実現するために、ターミナルが、第一のピボット452及び第二のピボット462で曲がり、それにより、第二電気接点の上で、法線力FN(図1の中で矢印により示されている)及び剪断力FSを作り出す。これらの剪断力FSは、第二電気接点と基板の間の接触部でのハンダの変形をもたらし、そして最終的に、モジュール故障をもたらす。
【0007】
ターミナル10の温度上昇を低く抑えるために、プレート状の領域41の電気抵抗が低くなければならなず、それは、典型的には、大きな断面を備えたプレートにより実現される。他方、モジュールが温度変化により膨張されたときに、大きな力を生じさせないために、ターミナルに、高い機械的なフレキシビリティが要求され、そのようなフレキシビリティは、典型的に、狭い幅(即ち小さな断面)を備えたプレートにより実現される。
【0008】
図2は、二つの第二電気接点31,32を備えた電気端子10を示している。その内の何れにおいても、剪断力FSが作り出される。そのような複数の第二電気接点は、複数のチップを並列に接続するために使用される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、改善された機械的なフレキシビリティ及び低い電気抵抗を備えた導電部材を提供することにあり、この導電部材において、温度変化の場合のハンダの変形が、減少されまたは取り除かれ、それにより、デバイスの寿命が増大される。
【0010】
この目的は、請求項1に基づく導電部材により、請求項15に基づく電気端子により、そして、請求項16に基づくそのような導電部材またはターミナルを備えた半導体モジュールにより、実現される。
【0011】
本発明の導電部材は、第一電気接点と、少なくとも一つの第二電気接点と、接続要素と、を有していて、この接続要素は、第一の第二電気接点及び前記少なくとも一つの第二電気接点を電気的に接続し、且つ、少なくとも一つのプレート状の領域を有している。各プレート状の領域は、少なくとも一つの第一のピボット及び少なくとも一つの第二のピボットを備えた、少なくとも一つの撓み手段を有していて、ここで、各撓み手段の第一のピボット及び第二のピボットは、撓み方向の動きの場合に、各第二電気接点が、剪断力を生ずることなく、撓み方向に第一電気接点に対して移動可能であるように構成されている。
【0012】
撓み手段の中でのピボットの本発明の配置によって、剪断力が、第二電気接点に加えられることがなく、且つ、半導体モジュールの内側の基板の上のハンダ層に加えられることがない。そのような剪断力は、運転中に、ハンダ層の中に亀裂を生じさせる可能性があり、または、電気的接続部の分離さえも生じさせる可能性がある。
【0013】
剪断力が作り出されることが無いような、ピボットの配置のために、全ての断面が、特に、ピボットの及びピボットの間の領域が、大きな断面で作られることが可能になり、それによって、導電部材の機械的なフレキシビリティを減少させることなく、電気抵抗を低下させることになる。
【0014】
導電部材は、第一電気接点と第二電気接点の間に、二つ以上の電流経路が作り出されるように構成されることが可能であり、それによって、電気抵抗が引き下げられ、電流経路のそれぞれの中で作り出される熱が少なくなり、それと同時に、導電部材は、依然として、良好な機械的なフレキシビリティを有することになる。第一電気接点と、複数の第二電気接点の内の何れかとの間に、剪断力が作り出されることがなく、特に、これらの電流経路の内の何れの中にも、剪断力が作り出されることがない。
【0015】
また、複数の第二電気接点が、一つの導電部材の中に作られることが可能であり、これらの第二電気接点は、同一の方向にまたは異なる方向に、配置されても良く、それ故に、ハウジングの中でのチップの配置の幾何学的な可能性を改善する。
【0016】
たとえ一つの電流経路の中であっても、複数の撓み手段が交互に配置されることが可能であり、それによって、直列配置が実現され、その結果、電気抵抗を低く抑えながら、機械的なフレキシビリティを改善する。
【0017】
更にまた、もし、複数の電流経路が、一つまたはそれ以上の第二電気接点につながる場合には、それらの電流経路が同一の電気抵抗を有するように、電流経路を形成することが可能であり、それによって、パワー・モジュールの中の電流分布の均衡が更に改善されることになる。
【0018】
そのような本発明の導電部材は、半導体モジュールの中で、二つの電気的要素の間に電気的接続部を作り出すために、または、外側の電気接点を作り出すために、使用されることが可能である。
【0019】
更に好ましい変形形態及び実施形態が、従属請求項の中に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、一つの第二電気接点及び一つの撓み手段を備えた、従来技術の導電部材を示す。
【図2】図2は、二つの第二電気接点を備えた、他の従来技術の導電部材を示す。
【図3】図3は、一つの第二電気接点を備えた、本発明に基づく導電部材の第一の実施形態を示す。
【図4】図4は、一つの第二電気接点及びサブ・セクションを備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【図5】図5は、第一電気接点に対して同一の方向に移動可能な二つの第二電気接点を備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【図6】図6は、第一電気接点に対して異なる方向に移動可能な二つの第二電気接点を備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【図7】図7は、それぞれ二つの電流経路を有する、二つの第二電気接点を備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【図8】図8は、二つの第二電気接点及び非対称的に配置された第一電気接点を備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【図9】図9は、非対称的に配置された第一電気接点、二つの第二電気接点、及び適合された電気抵抗の電流経路を備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【図10】図10は、非対称的に配置された第一電気接点、一つの第二電気接点、及び適合された電気抵抗の二つの電流経路を備えた、本発明に基づく導電部材の他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の主題が、添付図面を参照しながら、以下のテキストにおいて、より詳細に説明される。
これらの図の中で使用されている参照符号及びそれらの意味は、参照符号のリストの中にまとめられている。一般的に、同様なまたは同様に機能する部分には、同一の参照符号が付与されている。ここに記載された実施形態は、例として意図されたものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
図3は、第一電気接点2、第二電気接点3、及び接続要素4を有する本発明の導電部材1を示している、この接続要素は、第一電気接点2と第二電気接点3を電気的に接続し、且つ、少なくとも一つのプレート状の領域41を有している。このプレート状の領域41は、第一のピボット452及び第二のピボット462を備えた撓み手段44を有していて(図3の中でピボットの周りの円により強調されている)、この撓み手段は、第二電気接点3が、剪断力を生ずることなく、撓み方向43に第一電気接点2に対して移動可能であるように構成されている。剪断力は、撓み方向に対して垂直な方向の力である。
【0023】
導電部材1が第一のピボット452及び第二のピボット462で曲げられることで、導電部材1が、圧縮または伸張されることが可能である。図3において、導電部材1は、プレート状の領域41を有していて、このプレート状の領域は、一つの平面内に配置されている。撓み手段44の第一のピボット452及び第二のピボット462は、第二電気接点3が、前記平面の中にある撓み方向43に第一電気接点2に対して移動可能であるように構成されている。撓み手段44の第一のピボット452及び第二のピボット462は、仮想的な接続線48(図3の中で破線で示されている)の上に配置され、この接続線は、撓み方向43に対して垂直方向にある。
【0024】
プレート状の領域41が一つの平面内に配置される代りに、プレート状の領域41が、一つまたはそれ以上の湾曲部分を有することも可能であり、この湾曲部分は、撓み手段44の中にあることが可能であり、それによって、第一の、第二のおよび/または第三のセクション45,46,47が曲げられ、または、この湾曲部分が、プレート状の領域41の何れか他の部分に配置されることが可能である。
【0025】
大半の用途に対して、導電部材1の電気接点2,3は、プレート状の領域41に対して垂直な方向に曲げられ、それによって、電気接点2,3が、撓み方向43に対して、及びプレート状の領域41が配置されている平面に対して、垂直方向にあることになる。更に、電気接点2,3が、導電部材に対して電気に接触するために準備され、これらの導電部材は、互いに平行な二つの平面の中に配置される。
【0026】
撓み手段44は、第一のセクション45、第二のセクション46、及び第三のセクション47を有していて、この第三のセクションは、第一のセクション45と第二のセクション46の間に配置されている。第一のセクション45は、第一のセクション45と第三のセクション47の間の第一のヒンジとして振舞う第一の接続部454を除いて、第一のカット部451によって第三のセクション47から分離されている。第一のヒンジは、第一のピボット452の回りで移動されることが可能である(図3の中で円により強調されている)。第二のセクション46は、第二のピボット462を有する第二のヒンジとして振舞う第二の接続部464を除いて、対応する第二のカット部461によって、第三のセクション47から分離されている。電流経路5は、第一電気接点2から、第一のセクション45、第一の接続部454、第三のセクション47、第二の接続部462及び第二のセクション46を通って、第二電気接点3まで、形成される。上記のカット部は、スタンピング(stamping:打抜)、ジェット・カッティング、エッチング、エローディング(eroding:侵食)またはフライス加工(milling)などの、何れか適当な方法で作られることが可能である。
【0027】
第一のセクション45、第二のセクション46及び第三のセクション47は、堅く、特に、第一の、第二の及び第三のセクション45,46,47は、第一の接続部454及び第二の接続部464と比べて非常に堅い。このようにして、撓み手段44のフレキシビリティが、接続部により実現される。
【0028】
好ましい実施形態において、電流経路5の第三のセクション47の最大の断面積は、少なくとも二倍であり、特に、前記電流経路5の第一のおよび/または第二の接続部452,454,462,464の断面積の3倍以上大きい。そのような幾何学的なデザインによって、フレキシビリティを失うこと無く、電気抵抗が低くされることが可能になる。
【0029】
第一のカット部451および/または第二のカット部461の幅は、好ましくは、最大でプレート状の領域41の厚さの1.5倍に対応し、好ましくは、プレート状の領域41の厚さを上回ることがない。そのような幅によって、撓み手段が、温度膨張を調整するための高いフレキシビリティを有することになる。第一のカット部451および/または第二のカット部461の長さは、他の好ましい実施形態において、カット部の幅の、少なくとも2倍であり、特に、3倍より長い。
【0030】
好ましい実施形態において、撓み手段44が、一体的に形成され、その結果、第一のセクション45、第一の接続部454、第三のセクション47、第二の接続部464及び第二のセクション46が、互いに一体的に形成されることになる。
【0031】
図4から図10の中に、更なる実施形態が示されている。撓み手段の剛性、フレキシビリティ及び寸法に関する上述の特徴、及び、第一のセクション、第二のセクション、第三のセクション、第一の接続部及び第二の接続部などのような、その構成要素は、更なる実施形態に適用されることも可能である。
【0032】
図4は、二組のピボットを備えた本発明の導電部材1の他の実施形態を示していて、これらのピボットは、直列に配置され、二つのピボット452,462,452' ,462' の各組は、仮想的な接続線48,48' の上に配置され、これらの接続線48,48' は、互いに並列に配置されている。この実施形態において、第三のセクション47は、第一のサブ・セクション471,471' 及び第二のサブ・セクション472,472' を有している。
【0033】
導電部材1は、図4に示されているように、第一のセクション45を有していて、この第一のセクションは、第一の接続部454を除いて、第一のカット部451によって、第三のセクション47の第一のサブ・セクション471から分離されている。この第一のサブ・セクション471は、第二のヒンジとして振舞う第二のピボット462を有する第二の接続部464を除いて、第二のカット部461によって、第二のサブ・セクション472から分離されている。この第二のサブ・セクション472は、もう一つの第一のサブ・セクション471' と一体的に形成され、このもう一つの第一のサブ・セクションは、また、第一のヒンジとして振舞う第一のピボット452' を有する第一の接続部454' を除いて、第一のカット部451' によって、もう一つの第二のサブ・セクション472' から分離されている。このもう一つ第二のサブ・セクション472' は、もう一つの第二のピボット462' を有するもう一つの第二のヒンジとして振舞うもう一つの第二の接続部464' を除いて、もう一つの第二のカット部461' によって、第二のセクション46から分離されている。
【0034】
第一のピボット452及び第二のピボット462は、仮想的な接続線48の上に配置され、他方の第一のピボット452' 及び第二のピボット462' は、もう一つの接続線48' の上に配置され、これらの接続線48,48' は互いに並列に配置されている。他の実施形態(図に示されていない)において、二つの接続線48,48'の間に角度がある。この角度は、何れか適当な角度であることが可能であるが、好ましくは、接続線48,48' の間の角度は小さく、それらは、撓み方向43に対して約90度である。
【0035】
図5は、二つの第二電気接点を備えた本発明の導電部材1の他の実施形態を示している。この図には、第一の第二電気接点31及び第二の第二電気接点32が示されている。第一の第二電気接点31は、剪断力を生ずることなく、第一のピボット452及び第二のピボット462によって、第一の平面の中で、第一の撓み方向431に第一電気接点2に対して移動可能である。それに加えて、第二の第二電気接点32は、剪断力を生ずることなく、第二の平面の中で、第二の撓み方向432に第一電気接点2に対して移動可能である。図5に示されているように、導電部材1の中で、第一の撓み方向431は、第二の撓み方向432と同一であり、即ち、第一の平面と第二の平面は、同一であるが、その代わりにまた、第一の平面と第二の平面の間に角度があっても良い。
【0036】
図6は、代替的な実施形態を示していて、この実施形態において、導電部材1は、図5に対して説明されたように、第一の第二電気接点31及び第二の第二電気接点32を有していて、各第二電気接点は、第一の接続部452,462及び第二の接続部452'',462''を、それぞれ有している。接続部の各対は、接続線48,48''の上に配置され、これに対して、接続線48,48''は、互いに対して垂直な方向にある。90度の角度が、可能な角度の例として示されているが、接続線48,48''が、互いに対して何れか他の角度で配置されても良い。
【0037】
図7は、二つの第二電気接点31,32を備えた本発明の導電部材1の他の変形形態を示していて、各第二電気接点は、第一の電流経路51及び第二の電流経路52を有し、これらの電流経路は、第一の第二電気接点31及び第二の第二電気接点32まで形成されている。第一の第二電気接点31を形成する第二の電流経路52の第一のカット部451' は、少なくとも部分的に、同一の(第一の)第二電気接点31への第一の電流経路51の第二のカット部461を形成する。なお、図7は、二つの第二電気接点31,32を示しているが、導電部材1は、唯一の第二電気接点3を有することも可能であり、二つの電流経路51,52が、一つの第二電気接点3につながり、第二の電流経路52の第一のカット部451'が、少なくとも部分的に、第一の電流経路51の第二のカット部461を形成する(例えば、図7の右側部分)。
【0038】
図8は、二つの第二電気接点31,32を備えた本発明の導電部材1の他の変形形態、及び、第一の電流経路51と第二の電流経路52、第一のカット部451,451''と第二のカット部461,461''、及びピボット452,452'',462,462''の鏡面対称の配置を示している。この実施形態において、第一電気接点2は、接続要素4の一方の側に非対称的に配置されている。そのような配置は、幾何学的な理由のために好ましいことがあり得る。それは、例えば、もし、複数の導電部材が、複数の半導体チップに接触するために且つモジュールの中でターミナルの間の絶縁のために、一つの半導体モジュールの中に配置されなければならない場合などである。
【0039】
二つの電流経路51,52の第一のカット部451,451''は、一つの連続するカット部であるが、当然ながら、別個のカット部を有していることもまた可能である。図8に示されているような、鏡面対称であって、従ってカット部の対称的なデザインは、カット部の最も容易な幾何学的な配置である。第二のセクション46,46'が、一つの共通の、連続するセクションではあるが、二つの第二電気接点31,32につながることもまた、可能である。
【0040】
しかしながら、もし、第一電気接点2が接続要素4の一方の側に配置される場合には、第一の電流経路51及び第二の電流経路52は、異なる長さ及び異なる電気抵抗を有している。大電流が生ずる用途に対しては、一つまたはそれ以上の第二電気接点31,32への、幾つかの電流経路を有していることが、好ましいことがあリ、それらの電流経路の全てが、同一のまたは少なくとも同様な電気抵抗を有し、それによって、パワー・モジュールの中で各部分の間で、電流分布の均衡が取られることになる。
【0041】
図9の中に、二つの第二電気接点31,32を備えた本発明の導電部材1が示されている。接続要素4の左側での第一電気接点2の非対称的な配置のために、第一の電流経路51は、第二の電流経路52より長い。電流経路51,52の電気抵抗を等しくするために、または、少なくともそれらを互いに対して適合させるために、第一の電流経路51は、より短い第二の電流経路52のその第三のセクション47''における断面と比べて、その第三のセクション47においてより大きな断面を有している。
【0042】
図10の中に、他の好ましい実施形態が示され、ここでは、導電部材1が一つの第二電気接点3を有している。この第二電気接点に、第一及び第二の電流経路51,52がつながり、第一の電流経路51は、第二の電流経路52より長く、第一の電流経路51の第三のセクション47は、図9に基づく導電部材に対して既に説明されているように、第二の電流経路52の第三のセクション47''と比べて、大きい断面積を有している。両方の電流経路51,52は、一つの共通の、連続する第二のセクション46,46' を有していて、この第二のセクションが、第二電気接点3につながっている。
【0043】
本発明の導電部材1は、外側の電気接点を提供するための、半導体パワー・モジュールの中の電気端子として、即ち、外側の電気接点への、モジュールの中のチップの間の電気的接続部として、使用されることが可能である。代替的な実施形態において、そのような導電部材は、半導体モジュールの中での内側の電気的な接続部のために使用されることが可能である。もし、半導体モジュールが複数の半導体チップを有している場合には、その半導体モジュールは、一つまたはそれ以上のそのような本発明の電気端子および/または内側の導電部材を有していることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・電気的要素、10・・・電気端子、2・・・第一電気接点、3・・・少なくとも一つの第二電気接点、31・・・第一の第二電気接点、32・・・第二の第二電気接点、4・・・接続要素、41・・・少なくとも一つのプレート状の領域、43・・・撓み方向、431・・・第一の撓み方向、432・・・第二の撓み方向、44・・・撓み手段、45・・・少なくとも一つの第一のセクション、451,451' ,451''・・・第一のカット部、452,452' ,452''・・・第一のピボット、454,454' ,454''・・・第一の接続部、46・・・少なくとも一つの第二のセクション、461,461' ,461''・・・第二のカット部、462,462' ,462''・・・第二のピボット、464,464' ,464''・・・第二の接続部、47,47' ・・・少なくとも一つの第三のセクション、471,471' ・・・第一のサブ・セクション、472,472' ・・・第二のサブ・セクション、48,48' ,48''・・・接続線、5・・・少なくとも一つの電流経路、51・・・第一の電流経路、52・・・第二の電流経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電気接点(2)と、少なくとも一つの第二電気接点(3)と、接続要素(4)と、を有する導電部材(1)であって、
この接続要素は、第一の電気接点(2)と前記少なくとも一つの第二電気接点(3)を電気的に接続し、且つ少なくとも一つのプレート状の領域(41)を有しており、
各プレート状の領域(41)は、少なくとも一つの第一のピボット(452,452' ,452'')及び少なくとも一つの第二のピボット(462,462' ,462'')を備えた、少なくとも一つの撓み手段(44)を有し、
各撓み手段(44)の、第一のピボット(452,452' ,452'')及び第二のピボット(462,462' ,462'')は、各第二電気接点(3)が、剪断力を生ずることなく、撓み方向(43)に第一電気接点(2)に対して移動可能であるように構成され、
少なくとも一つの電流経路(5)が、第一電気接点(2)から、前記少なくとも一つの第一のピボット(452,452' ,452'')及び前記少なくとも一つの第二のピボット(462,462' ,462'')を通って、前記少なくとも一つの第二電気接点(3,31,32)まで形成される、
導電部材において、
各撓み手段(44)の第一のピボット(452,452' ,452'')及び第二のピボット(462,462' ,462'')が、少なくとも一つの接続線(48,48' ,48'')の上に配置され、この接続線が、撓み方向(43)に対して垂直に配置されていること、
を特徴とする導電部材。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の導電部材(1):
各少なくとも一つのプレート状の領域(41)は、一つの平面内に配置され、且つ、
各撓み手段(44)の第一のピボット(452,452' ,452'')及び第二のピボット(462,462' ,462'')は、第一電気接点(2)が、前記平面の中にある撓み方向(43)に、各第二電気接点(3)に対して移動可能であるように構成されている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載の導電部材(1):
少なくとも一つのプレート状の領域(41)が、少なくとも一つの湾曲部分を有している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1から3の何れか1項に記載の導電部材(1):
各撓み手段(44)は、少なくとも一つの第一のセクション(45)と、少なくとも一つの第二のセクション(46)と、第一のセクション(45)と第二のセクション(46)の間に配置された、少なくとも一つの第三のセクション(47,47' )と、を有していて、
第一のセクション(45)は、第一のピボット(452,452' ,452'')を有する第一のヒンジとして振舞う第一の接続部(454,454' ,454'')を除いて、第三のセクション(47,47' )から分離され、
第二のセクション(46)は、第二のピボット(462,462' ,462'')を有する第二のヒンジとして振舞う第二の接続部(464,464' ,464'')を除いて、第三のセクション(47,47' )から分離され、
少なくとも一つの電流経路(5)が、第一電気接点(2)から、第一のセクション(45)、第一の接続部(454,454' ,454'')、第三のセクション(47,47' )、第二の接続部(462,462' ,462'')、第二のセクション(46)を通って、第二電気接点(3)まで形成される。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項4に記載の導電部材(1):
第一のセクション(45)は、少なくとも一つの第一のカット部(451,451' ,451'')によって、第三のセクション(47,47' )から分離され、および/または、
第二のセクション(46)は、少なくとも一つの第二のカット部(461,461' ,461'')によって、第三のセクション(47,47' )から分離されている。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項4または5に記載の導電部材(1):
少なくとも一つの第三のセクション(47)は、少なくとも二つの第一サブ・セクション(471,471' )及び第二のサブ・セクション(472,472' )を有し、
第一のセクション(45)は、第一の接続部(454)を除いて、前記少なくとも一つの第三のセクション(47)の第一のサブ・セクション(471)から分離され、
この第一のサブ・セクション(471)は、第二のピボット(462)を有する第二のヒンジとして振舞う第二の接続部(464)を除いて、少なくとも一つの第二のカット部(461)によって、第二のサブ・セクション(472)から分離され、
この第二のサブ・セクション(472)は、もう一つの第一のサブ・セクション(471' )と一体的に形成され、
このもう一つの第一のサブ・セクションは、第一のピボット(452' )を有する第一のヒンジとして振舞う第一の接続部(454' )を除いて、少なくとも一つの第一のカット部(451' )によって、もう一つの第二のサブ・セクション(472' )から分離され、
このもう一つの第二のサブ・セクション(472' )は、第二の接続部(464' )を除いて、第二のカット部(461' )により、第二のセクション(46)から分離されている。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項4から6の何れか1項に記載の導電部材(1):
前記少なくとも一つの第二電気接点(3)は、第一の第二電気接点(31)及び第二の第二電気接点(32)を有し、
第一の第二電気接点(31)は、剪断力を生ずることなく、一つの平面内で、第一の撓み方向(431)に第一電気接点(2)に対して移動可能であり、
第二の第二電気接点(32)は、剪断力を生ずることなく、一つの平面内で、第二の撓み方向(432)に第一電気接点(2)に対して移動可能であり、
第一の撓み方向(431)は、第二の撓み方向(432)と同一であり、あるいは、第一の撓み方向(431)は、第二の撓み方向(432)と異なる。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項4から7の何れか1項に記載の導電部材(1):
第一の電流経路(51)及び第二の電流経路(52)を有する、少なくとも二つの電流経路(5)は、前記少なくとも一つの第二の電気接点(3)まで形成され、
第一の電流経路(51)の第一のカット部(451)は、第二の電流経路(52)の第二のカット部(461)を少なくとも部分的に形成する。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項4から8の何れか1項に記載の導電部材(1):
前記少なくとも一つの第二電気接点(3)は、第一の第二電気接点(31)及び第二の第二電気接点(32)を有し、
第一の第二電気接点(31)への電流経路(5)の第一のカット部(451' )は、第二の第二電気接点(32)への電流経路(5)の第一のカット部(451'')と連続するカット部を形成し、および/または、
第一の第二電気接点(31)及び第二の第二電気接点(32)への前記電流経路(5)の第二のセクション(46)は、連続するセクションを形成する。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項4から9の何れか1項に記載の導電部材(1):
前記少なくとも一つの第一のカット部(451)および/または第二のカット部(461)は、最大で、プレート状の領域(41)の厚さの1.5倍に対応する幅、特に、最大で、プレート状の領域(41)の厚さに対応する幅を有している。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項4から10の何れか1項に記載の導電部材(1):
前記導電部材(1)は、一つの第二電気接点(3)への、および/または、少なくとも二つの第二電気接点(3)への、少なくとも二つの電流経路(5)を有し、
前記少なくとも一つの第一のカット部(451)及び第二のカット部(461)、及び前記少なくとも一つの第一の接続部(454)及び第二の接続部(464)は、前記少なくとも二つの電流経路(5)が同一の電気抵抗を有するように形成されている。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項4から11の何れか1項に記載の導電部材(1):
前記導電部材(1)は、一つの第二電気接点(3)への、および/または、少なくとも二つの第二電気接点(3)への、少なくとも二つの電流経路(5)を有し、
少なくとも一つの電流経路(3)は、もう一方の電流経路(3)より長く、このより長い電流経路(3)は、その第三のセクション(47)で、より短い電流経路(5)の少なくとも一つの、その第三のセクション(47)での断面と比べて、より大きな断面を有している。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項4から12の何れか1項に記載の導電部材(1):
電流経路(5)の第三のセクション(47)の最大の断面積は、前記電流経路(5)の第一の接続部(454)および/または第二の接続部(464)の断面積と比べて、少なくとも3倍大きい。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項4から13の何れか1項に記載の導電部材(1):
第一のカット部(451)および/または第二のカット部(461)の長さは、当該カット部の幅と比べて、少なくとも3倍長い。
【請求項15】
半導体モジュールの外側の電気接点を提供するための電気端子であって、当該電気端子が、請求項1から14の何れか1項に記載の導電部材(1)を有している端子。
【請求項16】
請求項15に記載の電気端子、または、請求項1から14の何れか1項に記載の内側の電気的接続部のための導電部材(1)を備えた半導体モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2011−517078(P2011−517078A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502372(P2011−502372)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053806
【国際公開番号】WO2009/121876
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(594075499)アーベーベー・リサーチ・リミテッド (89)
【氏名又は名称原語表記】ABB RESEARCH LTD.