説明

小さなリポソームの製造方法

実質的に連続的に流動する水流とリポソームを形成することができる脂質を含有する有機溶媒流とを実質的に連続的に混合し、混合物を冷却するして、リポソームを形成することにより、粒径が制限されたリポソームを調製する。リポソームの少なくとも約90%が約200 nm未満の粒径のものとなるようなリポソームの調製物が得られるように、水流の流速と有機溶媒流の流速との比、および前記混合物の冷却速度を制御する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月17日に出願された米国仮出願第61/138,353号の35 USC 119(e)およびパリ条約下での恩典を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、リポソームワクチン製造の分野に関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、サイズが約200 nm未満であるリポソームを提供することである。
【0004】
驚くべきことに、有機液体(脂質がここに溶解されている)と水とを混合する工程を含むリポソーム形成方法を使用して、有機溶媒の濃度および得られる混合物の急冷が、一貫したリポソームサイズの形成および維持のために非常に重要であることが見出された。本方法および装置は、ワクチン品質リポソームの連続製造を促進するための新規の条件下で、水混和性有機溶媒に溶解された脂質を含有する脂質溶液を流水中へ混合することによって、リポソームに組み込まれた薬物ワクチンの均質な製剤の商業的かつ大規模な合成を容易にする。本方法は、連続混合システムを使用し、それによって、流速比、即ち、脂質溶液流速と水流速との比が、一定に維持され、それによって、システム中の有機溶媒が一定のパーセンテージに維持される。本方法は、急速かつ規模に依存しない冷却工程をさらに使用し、これは、リポソームの形成に続いて行われ、平均リポソームサイズの増加を防止する。本方法は、所望のサイズのリポソームの形成を促進するパイプの配置をさらに提供する。
【0005】
サイズが約200 nm未満であるリポソームを製造するために、本方法によれば、有機溶媒/水混合物中の有機溶媒の濃度を、5%〜30%、より好ましくは10%〜25%、最も好ましくは10%〜25%に維持し;流速比(水/有機溶媒)を、19:1〜3 1/3:1、より好ましくは9:1〜5:1または9:1〜4-1に維持し;リポソーム混合物の冷却(約55℃から約30℃へ)を、5時間未満で、より好ましくは2時間未満で、最も好ましくは30分未満で、最も好ましくは本質的に即座に、完了させる。
【0006】
本発明は、当技術分野における障害、即ち、バッチ間不一致、冷却中のリポソームサイズの望ましくない増加、および超音波処理または加圧システムなどの複雑な方法の必要性を回避する。本発明に従って製造されたリポソームは、ヒト用または動物用のワクチンの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】「T」ジャンクションの配置を示す挿入図を含む、装置配置の概略図であり、任意で、パイプは、乱流を増強しそれによって混合を促進するために任意の内部突出部またはバッフルを含む。
【図2】全体的な臨床的製造プロセスの種々のパラメータを示すフローチャートである。
【図3】異なる直径のパイプ:(A)両方のパイプについて直径9 mm;(B)5 mm(水)および3 mm(脂質/溶媒)パイプを使用しての、色素(脂質/溶媒を模倣するため)と水との合流を示す写真である。
【図4】本方法に従って製造された20%t-ブタノールを使用してのMUC-1ペプチドを有するリポソームの形成を示す、透過型電子顕微鏡写真(倍率18K)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい態様の詳細な説明
本方法は、ナノスケールリポソームの製剤、特に、直径が約200 nmを超えない実質的に均一なリポソーム粒径を含む製剤の、大規模な商業的製造に適合可能である。好ましくは、90%(動的光散乱によって測定される場合に計量される量)を超えるリポソームが、約200 nm未満であり、最も好ましくは、99%を超えるリポソームが、約200 nm未満である。このようなサイズの粒子は、産業承認された臨床製造基準に従って、容易に濾過滅菌され得る。
【0009】
このような均一なサイズのリポソームの調製物は、本発明に従って、有機溶媒の濃度を制御し、それをリポソームの形成時および形成後に本質的に一定に維持することによって作製することができる。溶媒濃度を制御することによって、脂質溶液と水(または、リポソーム形成における使用に好適な他の水性溶媒)とが合流し混ざる際に形成されるリポソーム粒子のサイズを制御することが可能である。
【0010】
これに関連して、脂質溶液と水との合流は、該溶液および水がそれを通って最初にポンピングされるパイプ管配置のジャンクションの直下の「中流」において生じる。脂質溶液は、1つのパイプを通って、連続的に流動している水流中へ、連続的に流れ込む。2つの流れは、いかなる角度でも合流することができ、従って、水および脂質溶液がそれを通ってそれぞれ流れるパイプは、約90度で、または90度未満で合流し得る。脂質溶液と水との混濁した混合物、「溶媒クラウド(solvent cloud)」が、パイプのジャンクションの直下で形成され、リポソームが形成されると考えられる部位の境界を定める。
【0011】
さらに、脂質/溶媒液体と水液体との混合が乱れている程度もまた、リポソーム形成を促進し得る。従って、含まれ得るがリポソームの形成に必須ではないジャンクションおよび装置の特徴は、パイプのいずれかの中空内へのバッフル、内部突出部、または陥凹部の組み込みであり、これらは、乱流を増強するのに役立ち得、それによってリポソームの生成を促進し得る。従って、液体が合流する位置での高剪断(high-shear)環境の生成は、本発明によるリポソームの製造に有用である。
【0012】
リポソームの形成と保存容器中への混合物の進入との間の時間に混合物の冷却を可能にするインライン冷却装置により、リポソーム混合物の急冷が可能になる。これは、例えば、冷却ジャケット、冷却コイル、またはリポソーム混合物がその中を流れるパイプもしくは他のコネクタを浸漬する氷浴などの手段によって達成され得る。急冷はリポソームサイズを維持し、一方、徐冷条件の間、リポソームサイズは、有機溶媒の所望の濃度で時間と共に増加する。
【0013】
(1)水流速と有機溶媒流速との比および(2)混合物中の有機溶媒の濃度を制御し、かつ(3)リポソームの形成の直後に混合物を冷却し、かつ任意で(4)乱流増強構造を使用することによって、一貫して特定のサイズ範囲内に収まるリポソームを連続的に製造することが可能となる。
【0014】
従って、この配置および設計は、所定の大量の水と脂質/溶媒とを混合する、即ち、一つのバットから別のバットへ混合する、先行技術の閉鎖された非効率的なシステムを回避する(例えば、米国特許出願第11/185,448号)。代わりに、本装置は、脂質溶液中へ組み込まれるいかなる治療物質をも含有するリポソームの均質な調製物を製造するための、恒久的で繰り返し可能なプロセスを可能にする、連続的に流動する開放システムである。
【0015】
この配置はまた、加圧された脂質/溶媒スプレーの形態で、加圧された脂質/溶媒溶液を別個のオリフィスまたはミクロンサイズの穴を通して水流中へ注入しないという点で、先行技術の装置とはさらに異なる(例えば、米国特許第6,843,942号、Wagner et al, 2002, Journal of Liposome Research, 12(3), p. 259-270、米国特許第6,855,277号)。本装置では、示されるミクロンサイズのオリフィスがそこに作製される例えば「クロスフロー・インジェクション・モジュール」(水および脂質液体のバルクがパイプ間で混ざることを妨げる)は必要としない。即ち、本発明では、液体保持パイプ同士を連結する壁(2つの液体を分離する)にある小さな穴を通して水中へ脂質/溶媒を強制的に注入することはしない。逆に、本発明の装置および方法は、このような障害物または加圧スプレーのない、ある液体流(水流)と別の自由流動液体流(脂質溶液流)とのクロスフローを真に伴う。本発明はまた、規定された一貫したサイズ範囲内のリポソームの製造のために、以前に記載されたような(例えば、米国特許第6,855,277号)ホモジナイゼーションまたは音波処理を必要としない。
【0016】
本発明の脂質溶液中へ所望の治療化合物、例えば、薬物、ペプチド、またはリポペプチド、および任意の他の望ましい成分、例えば、アジュバントまたは賦形剤を添加することは、脂質溶液が流水と合流する際に形成されるリポソーム中へのそれらの物質の組み込みを促進する。
【0017】
溶媒の濃度および水流速と脂質溶液流速との比を制御することに加えて、示されるパイピングシステムを通る各液体の流動を開始する前に、脂質溶液および水の一方または両方を加熱することも望ましい場合がある。従って、本発明の液体のそれぞれの温度は、均一なサイズの濾過可能なリポソームの一貫したかつ再現可能な収率を確実にするための重要な基準であり得る。好ましい温度は、使用される脂質の転移温度に依存する。
【0018】
本発明の方法は、実際的な流速の範囲での操作を可能にする。流速比(即ち、脂質溶液流速と水流速との比)が一定に維持される限り、液体が互いに流し込まれる速度は−実際的な範囲内では−重要でないことは、驚くべき知見である。従って、本方法は、非常に小さな総量の溶液および非常に大きな総量の溶液に適合可能である。
【0019】
従って、薬物が組み込まれた濾過可能なリポソームの連続的な形成を助ける本発明の因子としては、(1)溶媒および溶媒濃度;(2)脂質;(3)脂質溶液と水との流速比;(4)混合前および混合時の液体の温度;(5)液体同士が混ざってリポソームが形成された後の冷却;(6)各液体の互いへの連続的で妨げられていない流入;ならびに(7)乱流を誘発する手段が挙げられるが、これらに限定されない。以下の節で、これらの考慮すべき事柄の各々を詳述する。
【0020】
(1)溶媒および溶媒濃度
本発明の溶媒のある特定のタイプは、水混和性有機溶媒であり、例えば、これらに限定されないが、低級アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソアミルアルコール、イソプロパノール、2-メトキシエタノール、およびアセトンである。本発明の好ましい溶媒は、ブタノールまたはtert-ブタノール(t-ブタノール)である。有機溶媒は、脂質および薬物または生物活性物質を溶解し、次いでこれらを、本発明に従って、流動する水または水性媒体中へ流し、薬物または物質を組み込む本明細書に開示のリポソームを形成させるために、有用である。
【0021】
特定のサイズ範囲内に入るリポソームを製造するための一つの考慮すべき事柄は、水混和性有機溶媒の濃度である。本発明によれば、溶媒除去(例えば、凍結乾燥)前の最終濃度でもある、混合時点での有機溶媒の濃度は、5%〜30%、より好ましくは10%〜25%、最も好ましくは10%〜25%である。典型的に、溶媒の濃度が低くなるほど、得られる脂質小胞リポソーム粒子は小さくなる。従って、本発明の装置および方法の下で、リポソームの約99%が200 nm未満のサイズのものである調製物を生成した20%t-ブタノールと比べて、10%t-ブタノールの濃度によって、リポソームの約99%が100 nm未満のサイズのものであるリポソームの調製物が得られたことが見出された。例えば、24%のt-ブタノール濃度によって、サイズが400 nm未満であるリポソームが製造された。従って、リポソームの集団の平均粒径は、溶媒ミックス中の溶媒の濃度を調節し、この濃度を一定に維持することによって、調整することができる。
【0022】
サイズが約200 nmよりも小さいリポソームを製造することが望ましく、何故ならば、これらは、臨床的に承認されている孔径0.22μmのフィルターを使用して容易に滅菌濾過することができるためである。従って、本発明の一局面において、そのようなフィルターで使用され得る200 nm未満のリポソームを製造するための、特にt-ブタノールについての好ましい溶媒濃度は、約20%を超えないものである。
【0023】
脂質/溶媒ミックスを水中に迅速に分散させることは、均一な溶媒濃度を維持するのに役立ち得、従って、溶媒の濃度を約20%に維持するのに役立ち得る。
【0024】
(2)脂質
リポソームを形成することができる好ましいリン脂質としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルコリン(PC;レシチン)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なリン脂質としては、さらに、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA);ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられる。最も好ましい脂質は、DPPCである。
【0025】
リポソーム形成の促進または調整を助けるために、脂質溶液にステロールを含めることが望ましい場合がある。これに関連して、特に有用な一つのステロールは、コレステロールである。コレステロールは、リポソーム形成を促進するためには必須ではないが、リポソーム特性(例えば、安定性)を調整する。
【0026】
(3)脂質溶液と水との流速比
水および脂質溶液フローの開始および停止が同時である場合、水流速と脂質溶液流速との比により、溶媒濃度が決定され、従って、リポソームサイズが決定される。溶媒濃度が高いほど、形成されるリポソームは大きい。水流速と脂質溶液流速との比は、好ましくは、少なくとも2:1(約33 1/3%以下の有機溶媒濃度をもたらす)、より好ましくは、少なくとも3:1(約25%以下の有機溶媒濃度をもたらす)である。比は、好ましくは19:1を超えない。比は、約19:1(約5%の有機溶媒濃度を達成する)〜3 1/3:1(約30%の有機溶媒濃度を達成する)、より好ましくは9:1(約10%の有機溶媒濃度を達成する)〜5:1(約20%の有機溶媒濃度を達成する)、または9:1〜4:1(約25%の有機溶媒濃度を達成する)であり得る。
【0027】
従って、本発明による水の流速は、毎分約1.7リットルであり得る。本発明による脂質/溶媒の流速は、毎分約0.43リットルであり得る。比が一定に維持される限り、流速は、所定の所望のリポソームサイズについて実際的であるように調節され得る。従って、例えば、リポソームの約99%超が約200 nm未満のサイズのものであるリポソームの調製物を製造することが望ましく、かつ、有機溶液の濃度が約20%である場合、水流速と脂質溶液流速との比を約4対1に維持しながら、実際的な混合時間および使用される溶液の量などの実際的な考慮すべき事柄に応じて、流速が調節され得る。
【0028】
(4)液体の温度
好ましい最低温度は、転移温度に関連する。好ましくは成分の転移温度より10℃以上高く、本発明の水および脂質溶液液体の両方を加熱することが望ましい。従って、それは、転移温度より10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20度以上高い温度であり得る。液体は、熱損失を減らすためにジャケットで断熱され得るそれぞれの保持タンク中において加熱され得る。いずれの液体の温度も、約40℃〜45℃、約45℃〜50℃、約50℃〜55℃、または約55℃〜60℃であり得る。
【0029】
DPPCについて、温度は、好ましくは少なくとも42℃、より好ましくは少なくとも45℃、最も好ましくは少なくとも50℃である。最高温度は重要ではないが、当然ながら、より高い温度は、より大きなエネルギー入力を必要とする。DPPCについて、選択される温度は、好ましくは約42℃〜65℃、より好ましくは45℃〜60℃、最も好ましくは50℃〜55℃である。
【0030】
(5)冷却
多くの方法では、保存、濾過または他の処理の前に、バルクの冷却が必要である。本発明者らの方法のリポソーム形成工程において必要とされる温度および溶媒濃度で、リポソームの形成後の時間と共にリポソームサイズが増加することは、本発明者らの驚くべき知見である。従って、冷却が収集容器中で行われる場合、より大きなバッチは冷却により長い時間を要することから、バッチサイズはリポソームの最終サイズに影響を与える。リポソームの形成直後に熱交換器を使用することによって実行可能となる瞬間冷却は、リポソームサイズの制御を可能にし、バッチサイズに依存せずこの障害を取り除く。リポソームサイズを維持するためには、冷却時間は、5時間で20℃を超えるべきではない;例えば、5時間未満で約55℃から約35℃への冷却、より好ましくは、2時間未満で約55℃から約30℃への冷却、最も好ましくは、30分未満で約55℃から約30℃への冷却。混合物は、必要に応じて、より低い温度へ冷却され得る。
【0031】
(6)各液体の互いへの連続的なフロー
本発明の液体、即ち、水および脂質溶液は、上述のような望ましい流速に応じて設定または調節される別個のモーター下でポンピングされ得、大量の各液体を保持し得る大きなバット中に保存され得る。従って、50 Lまでまたはそれ以上(好ましくは200L)の注入用水を保持するタンクが、リザーバとして使用され得、ここから、水が、記載のパイプおよびT-ジャンクション配置を通してポンピングされ得、その速度は、水流の経路中にフローメーターを設置することによってモニタリングされ得る。同様に、例えば50 Lまでまたはそれ以上の、大量の脂質/溶媒溶液を保持する別のタンクは、前記装置によってポンピングされ得、同一の方法で流速についてモニタリングもされ得る。
【0032】
水が装置によってポンピングされる速度に応じて、より多くのまたはより少ない水が、ある一定の時間にわたって保持タンクから失われる。
【0033】
同じことが、脂質溶液リザーバに明らかに当てはまる。水流の速度は、脂質溶液についての流速の少なくとも約4倍であることが時に望ましいので、脂質溶液に比べて少なくとも4倍の量の水を収容し得る保持タンクを使用することが望ましい。しかしながら、水および脂質溶液の連続流を期間中に生じさせるのに十分な液体が、両方の保持タンク中に存在する期間が確かに存在すると考えられ、それにより単位時間当たりに製造され得る適切なサイズのリポソームの量を最大化する。「タンク」は、ガラス製、ステンレス鋼製およびプラスチック製の容器を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の液体の量を保持および/または加熱することができる任意の容器であってよい。
【0034】
(7)妨げられていない液体フロー、および乱流を誘発する手段
上述したように、脂質溶液を水流中へ導入するための有用な配置は、各パイプが接触する部位、即ちジャンクションにおいて、各パイプの内部が、2つの開口部間に内部障害物(脂質溶液のバルクが、その開口部を通って自由に流動することを妨げる)を伴わずに、互いに対して開放的であるように方向付けられた、2つのパイプを介するものである。2つの流れは、いかなる角度でも合流し得、従って、水および脂質溶液がそれぞれその中を流れるパイプは、約90度で、または90度未満で合流し得る。図1を参照されたい。
【0035】
本方法は、商業的製造目的において適合性が高く容易に大規模化可能であるので、本発明に従って、流速および溶媒濃度などの他のパラメータの適切な改変に応じて、任意の直径のパイプが使用され得る。従って、本発明のパイプは、直径約1 mm、2 mm、3 mm、4 mm、5 mm、6 mm、7 mm、8 mm、9 mm、10 mm、12 mm、13 mm、14 mm、15 mm、16 mm、17 mm、18 mm、19 mm、または20 mmの、または直径20 mmを超える、任意の直径のものであり得る。直径は、流速および混合効率を考慮した後に選択され得る。
【0036】
このような直径のパイプは、その全長にわたってまたはその長さの一部にわたって一様であり得る。即ち、柔軟性のある様式でガラス配管の互いへの連結またはコックもしくはポンプへの連結を容易にするために実験室において広く使用されている典型的な「チュービング」コネクタを収容するために、本発明のパイプは、このような管への挿入を容易にするために一方の末端で狭くなっていてもよい。
【0037】
ジャンクションを作る2つのパイプは、それらの開口部が合流するジャンクションにおいて同一の直径のものであってもなくてもよい。従って、水を保持するパイプは、脂質溶液パイプよりも狭い場合も広い場合もあり、逆もまた同様である。本発明のパイプは、ガラス、プラスチック、または金属であってよい。
【0038】
内部表面が、パイプの内部中空コアを通る液体のフローを調節するリッジ、バッフル、陥凹部、または突出部を含有するパイプを使用することが可能である。水が脂質溶液と合流する部位での環境の乱流を増加させることが望ましい場合、このようなパイプの1つを使用して、水流を刺激し、ジャンクションでの乱流を引き起こし、それによって通常よりも高い剪断力を誘導し、リポソーム形成を促進する。突出部またはバッフルは、液体の混合を促進するために、ジャンクションの下流とともに水流動パイプ中のジャンクションの「上流に」、または下流の代わりに水流動パイプ中のジャンクションの「上流に」、最適には配置され得る。
【0039】
(8)他の考慮すべき事柄、成分、およびパラメータ
(i)リポソーム
サイズが200 nmよりも小さいリポソームを製造することが望ましく、何故ならば、これらは、臨床的に承認されている孔径0.22μmのフィルターを使用して容易に滅菌濾過できるためである。本発明の装置を使用して本方法に従って作製される調製物は、特定の最大サイズのリポソームの集団を含む。
【0040】
一般的に、脂質溶液流速に対する水流速の比の減少に伴って、従って有機溶媒濃度の増加に伴って、リポソームサイズが増加する。リポソームサイズはまた、使用される温度または有機溶媒などの他の因子によって影響され得る。
【0041】
脂質/溶媒が水と合流し混ざった後に製造されるリポソームは、次いで、任意で冷却ジャケットに通され、別のタンク中に集められ得る。次いで、そのリポソーム調製物は、周知の方法に従って、凍結乾燥され、その後、再構成され得る。
【0042】
(ii)生物活性物質
MUC-1は、20アミノ酸配列の30〜100個のリピートからなるポリペプチドコアを含有する大きなムチンである。MUC-1ペプチド、グリコペプチド、リポペプチドおよびグリコリポペプチドが、本発明のリポソームへの組み込みに特に望ましいペプチドであるが、任意の他のペプチド、生物活性物質、薬物、または治療化合物が、本発明のリポソームへ組み込まれ得るので、本発明はこれらの物質のみには限定さない。
【0043】
好ましくは、前記物質は、上述の20アミノ酸反復配列の少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、または少なくとも9個の連続残基を含むペプチド(任意でグリコシル化および/または脂質付加されている)である。これはタンデムリピートであるので、どのアミノ酸が最初のものであるかの選択は、本質的に任意であることが認識される。好ましくは、ペプチドは、反復配列の少なくともDTRトリペプチドを含む。それは、例えば、PDTRP(SEQ ID NO: 1のアミノ酸13〜17)、SAPTDRP(アミノ酸12〜17)、TSAPDTRP(アミノ酸11〜17)、PDTRPAP(アミノ酸13〜19)またはTSAPDTRPAP(アミノ酸11〜19)配列を含み得る。前記物質は、1つを超えるリピートを含み得、かつ、非整数個、例えば、1 1/4個のリピートを含み得る。
【0044】
脂質付加は、リポソーム中へのペプチドの組み込みを促進する。好ましくは、脂質付加される場合、ペプチドは、タンデムリピート領域のフラグメントである第1配列(このフラグメントは、単一リピートより小さいか、これに等しいか、またはこれを超える場合がある)および脂質付加されている第2配列を含むかまたはこれらからなる。第1配列は、好ましくは、下記に記載されるようなBLP25またはBLP40のMUC1由来配列である。
【0045】
第2配列は、好ましくは、第1配列のC末端へ結合されており、好ましくは、5個以下のアミノ酸であり、最も好ましくは、2または3個のアミノ酸である。好ましくは、1〜3個のアミノ酸が脂質付加され、好ましくは、これらは連続的である。好ましくは、脂質付加アミノ酸は、独立して、Ser*、Thr、Asp、Glu、Cys、Tyr、Lys*、Arg、Asn、またはGlnである(*最も良い)。好ましくは、第2配列の最終アミノ酸は脂質付加されておらず、好ましくは、Gly*、Ala、Val、Leu*、またはIleである。好ましくは、脂質基は、C12(ラウリン酸)、C14(ミリスチン酸)、C16(パルミチン酸)*、C18(ステアリン酸)またはC20(アラキジン酸)脂質である。
【0046】
MUC-1に関して、特に興味深い物質は、27アミノ酸リポペプチド、「BLP25」である。これは、MUC-1タンパク質のタンデムリピート領域の25-アミノ酸残基部分(即ち、1 1/4リピート)および2つのアミノ酸C末端伸長部(KG)からなり、ここで、K(リジン)は、下記に示すように脂質付加されている:

【0047】
特に興味深い別の物質、「BGLP40」は、MUC-1タンパク質のタンデムリピート領域の40 aa残基フラグメント、およびC末端伸長部(SSL)を含み、これは、下記に示すように脂質付加されている(示されるグリコシル化は一例であり、他のグリコシル化パターンおよびグリコシル化されていないものも含まれる):

【0048】
(iii)他の成分
脂質成分のさらなる好適な成分は、糖脂質および他の脂質アジュバント、例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA)またはリピドA、または、天然のアジュバントのアナログであってもなくてもよい合成アジュバントである。
【0049】
(iv)
臨床等級の水
【0050】
(9)スケーラビリティー
体積は、容器サイズによってのみ限定される。商業的過程は、コンピューター制御され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)実質的に連続的に流動する水流を提供する工程、
b)実質的に連続的に流動する有機溶媒流を提供する工程であって、該有機溶媒が、そこに溶解された少なくとも1つの脂質を含有し、該脂質が、リポソームを形成することができる、工程、
c)混合物が得られるように、前記水流と前記有機溶媒流とを実質的に連続的に混合する工程、および
d)該混合物を冷却する工程、および
e)該混合物内でリポソームを形成させる工程
を含む、制限された粒径のリポソームの調製物を製造するための方法であって、リポソームの少なくとも約90%が約200 nm未満の粒径のものとなるようなリポソームの調製物が得られるように、水流の流速と有機溶媒流の流速との比、および前記混合物の冷却速度を制御する、方法。
【請求項2】
水流の流速と有機溶媒流の流速との比が、少なくとも約2:1である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水流の流速と有機溶媒流の流速との比が、約19:1を超えない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
水流の流速と有機溶媒流の流速との比が、少なくとも約3:1であり、かつ約19:1を超えない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
水流の流速と有機溶媒流の流速との比が、少なくとも約3:1であり、かつ約9:1を超えない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
水流の流速と有機溶媒流の流速との比が、約4:1である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
冷却速度が、平均して少なくとも約4℃/時である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
混合物を約2時間以内に少なくとも約20℃冷却する、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒流が、前記混合工程の前に、前記脂質の転移温度よりも少なくとも10℃高い温度にある、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの脂質がリン脂質である、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのリン脂質がDPPCである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの脂質がステロールである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記ステロールがコレステロールである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
有機溶媒がtert-ブタノールである、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
混合物を約2時間以内に少なくとも約55℃から約35℃以下へ冷却する、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
有機溶媒が、そこに溶解された生物活性物質をさらに含有する、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
生物活性物質が、MUC-1ペプチド、またはそのようなペプチドのグリコシル化および/または脂質付加誘導体である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
生物活性物質がSEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を有する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記物質が、リジンにおいて脂質付加されている、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記物質がパルミトイル化されている、請求項17〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
生物活性物質がSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を有する、請求項17記載の方法。
【請求項22】
生物活性物質が、2つの最終セリンにおいて脂質付加されている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
生物活性物質がグリコシル化されている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
グリコシル化パターンが、BGLP40について定義されているものと同一である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記水流、前記有機溶媒流、または前記混合工程によって生じる混合物流中において乱流を誘発するための手段を提供する工程をさらに含む、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−512260(P2012−512260A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542440(P2011−542440)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068499
【国際公開番号】WO2010/078045
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(510018650)オンコセリオン インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】