説明

小エビ類の凍結方法及び装置

【課題】小エビ類の凍結処理において、IQFを可能としながら、ヒゲを分離収集して有効利用し、冷却器の冷風吸込口へのヒゲの付着を防止して冷却器の冷凍能力を維持する。
【解決手段】冷風fを形成した密閉空間c内で小エビ類sをコンベア2で搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結方法において、網目状に多数の細孔を有するコンベア面13aに下方から上方に抜けるように形成された冷風fにより小エビ類sを凍結し、凍結された小エビ類sの低温脆性と、冷風fで小エビ類sをコンベア面上で攪拌することによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、小エビ類sのヒゲhを折ると共に、コンベア面13aから上方に吹き上がる冷風fに折れたヒゲhを同伴させ、コンベア面13aから吹き上がった冷風fの風速を低下させる曲流部bを形成して、該曲流部bで冷風fに同伴されたヒゲhを冷風fから分離落下させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桜エビのような長いヒゲをもつ小エビ類を凍結する場合に、凍結時にヒゲの分離を可能とし、ヒゲを収集して有効利用を可能とした方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駿河湾特産の桜エビは、希少価値の高いブランド品であり、漁期が春と秋の2期に分かれ、漁が行なわれている。漁獲した桜エビは、生のまま、あるいは冷凍品として、あるいは釜揚げ、素干し等の加工を行なって、販売されている。この中で、冷凍品に関しては、ブロック凍結が行なわれてきた。しかし、昨今の消費者側のニーズから、バラ凍結であるIQF(個別急速冷凍)の需要が高まってきている。
【0003】
IQFは、桜エビを1匹々々バラで急速凍結するもので、桜エビ固体をムラ無く均一に瞬間凍結できるため、通常のブロック凍結に比べ、鮮度良く凍結できる。また、解凍もムラ無く行なえるという利点がある。桜エビの場合、これまでは、凍結庫内で、人手によりバラ凍結が行なわれてきた。
【0004】
一方、桜エビは、その特徴として、エビ本体の体長の4〜5倍あるヒゲをもっている。従来、このヒゲは食用対象外として扱われ、水揚げ後の各種加工工程の前処理時に、洗浄と選別を兼ねて、ヒゲ取りを行なっていた。しかしながら、これだけでは十分なヒゲの除去ができず、そのため、加工後に再度ヒゲ取りを行ない、最終的には、消費者側でヒゲを除去しながら、食する状況にある。
【0005】
特許文献1(特開平6−307748号公報)には、小エビ類等の粒状食品をばら状で連続的に冷凍する手段が開示されている。この手段は、密閉空間を形成するハウジング内に冷凍面を有する円板を配設し、該円板を回転させ、円板の回転方向上流側に粒状食品を投入し、該円板の冷凍面に向けて液体窒素を噴射して粒状食品を冷凍温度まで冷却する。そして、円盤の回転方向下流側に設けられた回収手段から、少なくとも表面近傍部分が凍結した粒状食品を冷凍面から回収するようにしている。
【0006】
特許文献2(特開平9−303926号公報)には、小エビ類や果物等の食品を連続的に凍結させる装置が開示されている。この装置は、断熱容器中に低温液化ガス浴を形成し、該低温液化ガス浴中にベルトコンベアを配設し、被凍結物を該ベルトコンベアで搬送しながら冷却し、該低温液化ガス浴から出し、その後、さらに被凍結物をトンネル型フリーザ内に投入するようにしたものである。
【0007】
特許文献3(特開2002−130901号公報)は、本出願人が提案したトンネル型フリーザであり、牡蠣フライ等の軟質の水産加工品をベルトコンベア上で搬送しながら連続的に凍結するものであり、洗浄殺菌の点でも優れたスチールベルトを使用した衝突噴流式の高効率のフリーザである。
【0008】
【特許文献1】特開平6−307748号公報
【特許文献2】特開平9−303926号公報
【特許文献3】特開2002−130901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3に開示された凍結手段は、いずれもIQFを可能とするものである。これらの手段を参考に、本発明者等は、IQFを適用した桜エビの凍結方法を検討してきた。本発明者等が計画したIQF適用型凍結装置の一例を図5に示す。図5において、密閉空間を形成するハウジング1の内部に、コンベア2が設けられ、上方に設けられたファン3により、冷風の循環流fが形成されている。コンベア2のコンベア面には、網目状の多数の細孔が設けられている。
【0010】
冷風の循環流fは、コンベア2のコンベア面を下方から上方に吹き上げる流れを形成している。ファン3の近傍には、冷風ダクト5を介して冷却器4が設けられている。冷却器4は、冷凍サイクルを構成し、該冷凍サイクルで冷却された冷媒又はブラインとハウジング1内の冷風fとを熱交換して、冷風fを冷却するものである。冷却器4で冷却された冷風fは、ダクト6を通ってコンベア2の下方に導入される。
図6は、ファン3がハウジング内の下方で、ダクト6に設けられた例を示す。その他の構成は、図5の例と同一である。
【0011】
これらの装置構成では、コンベア2の下方から冷風fを吹き込み、被凍結物である桜エビsをコンベア面上で浮き上がるような状態で凍結を行なうので、冷風fと桜エビsとの熱交換効率を向上させることができる。なお、冷風をコンベア2に送るファン3を、冷却器4に冷風を送って熱交換させるためのファンと兼用させている。
【0012】
かかる構成の冷凍装置では、凍結処理中、一部の桜エビsから分離したヒゲhが冷却器4に流れる冷風と一緒に吹き飛ばされ、冷却器4の冷風吸込口7に付着し、冷却器4の能力低下を引き起こす。冷却器4の冷風吸込口7に付着したヒゲhは、冷却器4の霜取り用の散水で洗い流すしかない。従って、ヒゲhを集めて、有効利用することができない。
【0013】
桜エビのヒゲは、近年発ガンを抑える成分が含まれていることが発見され、機能的食品として注目されている。しかし、図5又は図6の装置では、桜エビ本体からヒゲを分離できないので、ヒゲを有効利用することができない。従って、ひげを有効利用するためには、桜エビ本体との分離を可能とする凍結手段を開発する必要がある。
また、図5又は図6の装置では、冷風をコンベア2に送るファン3を、冷却器4に冷風を送って熱交換させるためのファンと兼用させているため、冷却器4を通る冷風の風量や、コンベア面を吹き抜ける冷風の風量を制御できない。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、桜エビ等の小エビ類を凍結処理する場合に、IQFを可能としながら、冷却器の冷風吸込口に小エビ類から分離したヒゲが付着して冷却器の冷凍能力を低下させることを防止すると共に、ヒゲを効率的に分離して収集し、別用途に有効利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明の小エビ類の凍結方法は、
冷風を形成した密閉空間内で小エビ類をコンベアで搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結方法において、
網目状に多数の細孔を有するコンベア面に下方から上方に抜けるように形成された冷風により小エビ類を攪拌しながら凍結し、
凍結された小エビ類の低温脆性と、該冷風で小エビ類をコンベア面上で躍らせることによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、小エビ類のヒゲを折ると共に、該コンベア面から上方に吹き上がる冷風に折れたヒゲを同伴させ、
コンベア面から吹き上がった冷風の風速を低下させる曲流部を形成して、該曲流部で冷風に同伴されたヒゲを冷風から分離落下させるようにしたものである。
【0016】
本発明方法は、IQFを可能とする凍結方法であり、IQFの利点を享受できるものである。しかも、コンベア面に下方から上方に抜けるように形成された冷風により小エビ類を攪拌しながら凍結するので、冷風と小エビ類との熱交換効率を高め、凍結処理効率を高めることができる。
【0017】
また、凍結された小エビ類の低温脆性を利用すると共に、小エビ類をコンベアで搬送中に下方より吹き付ける冷風によりコンベア面上で躍らせるようにする。これによって、小エビ類同士を衝突させ、その衝撃で小エビ類のヒゲを効率良く折ることができるようにしたものである。
なお、好ましくは、コンベア面に振動付与装置により振動を与え、小エビ類同士の衝突を促進させるようにすれば、さらにヒゲ折りを容易にすることができる。
【0018】
また、本発明方法では、折ったヒゲを冷風に同伴させ、コンベア面から吹き上がった冷風に曲流部を形成し、該曲流部で風速が減速した冷風からヒゲを分離落下させるようにする。このように、冷風を冷却器で冷却する前に、ヒゲを冷風から分離させるようにしているので、ヒゲが冷却器の吸込口に付着することがなくなる。そのため、冷却器の冷却能力を低下させるおそれがない。そして、ヒゲが落下する位置にヒゲを収容する容器等を置けば、分離したヒゲを収集して別用途に再利用することができる。
【0019】
また、前記本発明方法を実施するための本発明の小エビ類の凍結装置は、
密閉空間を形成するハウジング内にコンベアを配設し、該密閉空間に冷風を形成し、小エビ類をコンベアで搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結装置において、
網目状に多数の細孔を有するコンベア面に下方から上方に吹き抜けるように冷風流を形成させる冷風流形成手段と、
該コンベア面から上方に吹き抜けた冷風に冷風の風速を低下させる曲流部を形成させる曲流部形成手段と、
冷風の該曲流部で減速した冷風から分離し落下したヒゲを収容する収容部と、
ヒゲが分離された冷風を冷却してコンベア側へ戻す冷却器と、を備え、
該コンベア面を下方から上方に吹き抜ける冷風で小エビ類を攪拌しながら凍結処理すると共に、凍結された小エビ類の低温脆性と、該冷風で小エビ類をコンベア面上で躍らせることによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、コンベア面上で小エビ類のヒゲを折り、エビ本体から分離するように構成したものである。
【0020】
本発明装置において、前記冷風流形成手段により、コンベア面を下方から上方に吹き抜ける冷風流を形成させ、この冷風流で小エビ類を凍結させる。そして、凍結した小エビ類の低温脆性と、冷風流によりコンベア面上で躍らされる小エビ類同士の衝突との相乗作用により小エビ類のヒゲを効率的に折ることができる。折られたヒゲは、冷風に同伴されるが、前記曲流部形成手段により形成された曲流部で冷風が減速するので、該曲流部でヒゲを分離落下させ、その下方に置かれた収容部に収容することができる。
【0021】
本発明装置において、前記冷風流形成手段を、コンベア面の下方に閉鎖区間を形成し、該閉鎖空間に冷風流を導入するファンを備えてなるように構成することができる。かかる構成により、簡素でかつ低コストにできると共に、専用のファンを備えることで、コンベア面を下方から上方に吹き抜ける冷風流の風量を制御可能となる。該冷風流の風量を制御可能とすることで、コンベア面上での小エビ類の躍り状態を制御して、ヒゲの分離を促進することができる。
【0022】
また、本発明装置において、前記曲流部形成手段を、コンベア面の上方で冷風の流れをハウジングの壁面へ屈曲させ該壁面に当てた後冷却器側へ戻す曲流部を形成するように配置された仕切壁で構成することができる。かかる簡素かつ低コストな構成で曲流部を容易に形成することができる。
【0023】
また、本発明装置において、前記冷却器が、ヒゲが分離された冷風を該冷却器を通してコンベア側へ戻すファンを備えるようにするとよい。このように、冷風を冷却器に導くための専用のファンを設けたことで、冷却器に導入する冷風の風量を制御できるので、ハウジング内の冷風の温度制御を容易に行なうことができる。
そして、該ファンと、前述のように、コンベア面を下方から上方に吹き抜ける冷風流を形成するための専用のファンとを設けることで、ハウジングでの小エビ類の凍結処理及びヒゲ分離と、冷風の温度制御とを確実に行なうことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明方法によれば、冷風を形成した密閉空間内で小エビ類をコンベアで搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結方法において、網目状に多数の細孔を有するコンベア面に下方から上方に抜けるように形成された冷風により小エビ類を攪拌しながら凍結し、凍結された小エビ類の低温脆性と、該冷風で小エビ類をコンベア面上で躍らせることによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、小エビ類のヒゲを折ると共に、該コンベア面から上方に吹き上がる冷風に折れたヒゲを同伴させ、コンベア面から吹き上がった冷風の風速を低下させる曲流部を形成して、該曲流部で冷風に同伴されたヒゲを冷風から分離落下させるようにしたことにより、IQFによる凍結処理を可能とすると共に、小エビ類を凍結処理しながら、ヒゲを分離して収集可能にしたので、ヒゲが冷却器の吸込口に付着して冷却器の能力を低下させるのを防止できると共に、ヒゲをハウジング内の任意の場所に収集して別な用途に再利用することができる。
【0025】
また、本発明装置によれば、密閉空間を形成するハウジング内にコンベアを配設し、該密閉空間に冷風を形成し、小エビ類をコンベアで搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結装置において、網目状に多数の細孔を有するコンベア面に下方から上方に吹き抜けるように冷風流を形成させる冷風流形成手段と、該コンベア面から上方に吹き抜けた冷風に冷風の風速を低下させる曲流部を形成させる曲流部形成手段と、冷風の該曲流部で減速した冷風から分離し落下したヒゲを収容する収容部と、ヒゲが分離された冷風を冷却してコンベア側へ戻す冷却器と、を備え、該コンベア面を下方から上方に吹き抜ける冷風で小エビ類を攪拌しながら凍結処理すると共に、凍結された小エビ類の低温脆性と、該冷風で小エビ類をコンベア面上で躍らせることによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、コンベア面上で小エビ類のヒゲを折り、エビ本体から分離するように構成したことにより、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
(実施形態1)
【0027】
第1の本発明の一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る凍結装置の横断面図、図2は、図1中のA−A線に沿う縦断面図である。
図1及び図2において、断熱壁1aで囲まれ密閉空間cを形成できるハウジング1の内部で生の桜エビsの凍結処理を行なう。ハウジング1の断熱壁1aには、コンベア2を配置するための開口1b及び1cが設けられている。開口1bには、コンベア2の搬送始端部2aが配置され、開口1cには、コンベア2の搬送終端部2bが配置される。
【0028】
搬送始端部2aには、駆動スプロケット11が配置され、駆動スプロケット11を駆動する図示しない駆動装置が設けられている。搬送終端部2bには、従動スプロケット12が配置されている。駆動スプロケット11と従動スプロケット12間にはコンベアべルト13が巻回され、コンベアべルト13は、搬送面13aが駆動スプロケット11により矢印a方向に移動するように駆動される。コンベアべルト13は、網目状に多数の細孔をもち、該細孔から通気が自在となるように構成されている。
【0029】
図1に示すように、コンベア2は、両側からフレーム14a及び14bで水平方向に支持されている。図2に示すように、フレーム14a及び14bは、ハウジング1の略全長に亘って延設されている。フレーム14a及び14bは、ファン15の通気口以外は隙間がないように構成されており、そのため、べルト13の下方で閉鎖空間c1を形成している。フレーム14bの下部には、水平方向に等間隔で複数のファン15が配設され、ファン15により、閉鎖空間c1に冷風fが導入される。閉鎖空間c1に導入された冷風fは、搬送面13aに形成された網目状の細孔を通って上方に吹き抜ける。
【0030】
フレーム14bの上部は、さらに上方に延設され、搬送面13aの上方を覆うように水平方向に屈曲された仕切壁16を形成している。これによって、搬送面13aを下方から上方に吹き抜けた冷風fは、該仕切壁16に沿って水平方向に曲がり、その後、ハウジング1の断熱壁に当り、仕切壁16の上方を通って冷却器4側に向かう曲流部bを形成する。
【0031】
ハウジング1の天井には冷却器4が吊下され、冷却器4には複数のファン3が設けられている。ファン3によって、冷却器4の吸込口17から冷却器4内に入り、冷却器4で再冷却されてファン3から排出される冷風流fが形成される。曲流部bが形成される位置の下方には、分離した桜エビsのヒゲhを収容する収容容器18が設けられている。
また、コンベア2の搬送始端部2a近傍の搬送面13aを振動させる第1振動装置21と、その搬送下流側の搬送終端部2bにやや近い位置で搬送面13aを振動させる第2振動装置22が配設されている。
【0032】
これら振動装置21又は22の構成例を図3及び図4で説明する。図3において、コンベア2の搬送面13aは、網目状の細孔をもつコンベアネットで構成され、該コンベアネットが矢印a方向に移動している。コンベア面13aの下方には、コンベア2の幅方向(搬送面13aと直交する方向)に回転軸211が架設され、該回転軸211に5個の振動部210が等間隔に装着されている。
【0033】
回転軸211の両端は、フレーム14a及び14bの外側で軸受212で回転可能に支持されている。なお、図3において、フレーム14bから上方に延設された仕切壁16は省略されている。フレーム14bの外側で、回転軸211は図示しない軸受212からさらに延設され、その端部に従動プーリ213が装着されている。また、コンベア2の近傍に、回転軸211を回転駆動ための電動機214が設けられている。
【0034】
電動機214の出力軸214aの回転は、減速機215を介して駆動プーリ216に伝達されている。駆動プーリ216と従動プーリ213間にはVベルト217が巻回されて、駆動プーリ216の回転を従動プーリ213に伝達している。かかる構成により、電動機214の回転が減速機215を介して、Vベルト217により回転軸211に伝達される。
【0035】
図4に振動部210の構成を示す。図4において、振動部210は、菱形形状の2枚の振動板218の間に、4個の樹脂製ローラ219及び220が回転可能に装架されている。これらローラは、振動板218の角部に装架され、樹脂製ローラ219が対角線の長い側に装架され、樹脂製ローラ220が対角線の短い側に装架されている。そして、振動板218の中心を回転軸211が貫通し、振動板218が回転軸211に固定されている。
【0036】
第1振動装置21又は第2振動装置22は、かかる構成により、回転軸211が搬送面13aの移動方向aと反対方向(矢印e方向)に回転する。振動板218が矢印e方向に回転すると、短部樹脂製ローラ220が上方にあるときは、コンベアネットを押し上げず、長部樹脂製ローラ219が上方にあるときは、コンベアネットを押し上げる。この振動板218の動作により、コンベアネットを振動させ、コンベアネット上の桜エビsを振動させ、均し効果と共に、桜エビsの躍らせ効果を増大させる。
【0037】
かかる構成の本実施形態において、ハウジング1内では、冷却器4で冷却された冷風をファン3及びファン15によって循環させる冷却流fが形成されている。一方、コンベア2の搬送始端部2aでは、搬送面13a上に生の桜エビsが投入され、搬送面13aが矢印a方向に移動して、開口1bからハウジング1内に搬送される。搬送面13a上に投入された桜エビsは、第1振動装置21によって、桜エビsが投入された搬送面13aが振動するため、その攪拌効果で桜エビsが攪拌され、桜エビsの山が均される。
【0038】
一方、ファン15により閉鎖空間c1に導入された冷風fは、搬送面13aの下方から搬送面13aに設けられた細孔を通って吹き抜け、桜エビsを凍結処理する。搬送面13aの下流側では第2振動装置22によって搬送面13aに振動が付与される。凍結された桜エビsは、脆性が高められ、もろくなっている。この低温脆性効果に加えて、冷風fの吹き抜けによる躍り効果と、第2振動装置22によって搬送面13aに付与される振動によって、桜エビ同士の衝突が促進する。これらの相乗作用によって、桜エビsのヒゲhが折れ、桜エビ本体から分離する。
【0039】
分離したヒゲhは、搬送面13aを通って吹き抜ける冷風fに同伴する。ヒゲhを同伴した冷風fは、仕切壁16によって水平方向に曲げられ、搬送面13aの壁面に当って戻り、曲流部bを形成する。曲流部bでは、冷風fの風速が低下するので、ヒゲhが分離する。分離したヒゲhは、曲流部bの下方に置かれた収容容器18に集められる。曲流部bでヒゲhを分離した冷風fは、ファン3により冷却器4に導入される冷風流fと、冷却器4に導入されずに、コンベア2側に向かう冷風流fとに分かれる。冷却器4に導入された冷風流fは冷却器4で再冷却された後、コンベア2側に排出される。
【0040】
凍結処理を終えてコンベア2の搬送終端部2bに到達した桜エビsは、容器19に排出されて、次の加工に回される。あるいは、搬送終端部2bから別のコンベアで搬送して次の加工工程に搬送される。
【0041】
本実施形態によれば、桜エビsをコンベア2の搬送面13aで搬送しながらバラで連続的に凍結処理できるので、IQFによる急速凍結の効果を享受できる。即ち、桜エビ固体をムラ無く均一に瞬間凍結できるため、通常のブロック凍結に比べ、鮮度良く凍結できると共に、解凍もムラ無く行なえる。
【0042】
また、凍結処理により桜エビsの脆性を高め、かつ搬送面13aを下方から上方に吹き抜ける冷風fの躍らせ効果、及び第2振動装置22で搬送面13aに付与する振動による桜エビ同士の衝突促進の相乗作用により、桜エビsからヒゲhを折り、ヒゲhを桜エビ本体から容易に分離することができる。
【0043】
そして、分離したヒゲhを冷風fに同伴させ、曲流部bで冷風fと分離し、収容容器18に収容することができるので、ヒゲhを別の用途に再利用することができる。
また、ヒゲhを分離した冷風fは、冷却器4に導入される流れfと、冷却器4をバイパスして直接コンベア2の上流側に向う流れfとに分けられるので、ファン3を通る冷風量を調節することにより、搬送面13a内の密閉空間cの温度を調整可能になる。
【0044】
また、ファン15の風量を調整することにより、搬送面13aを吹き抜ける冷風fの風量を調整できるので、搬送面13a上の桜エビsの躍り程度を調整できる。そのため、桜エビsの凍結度やヒゲ折り効果を調整できる。
さらに、冷却器4の上流側で冷風fからヒゲhを分離しているので、冷却器4の吸込口17にヒゲhが付着して冷却器4の能力低下を招くおそれがない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、小エビ類の凍結処理において、小エビ類のIQFによる連続的な凍結処理を可能とすると共に、ヒゲの分離を同時に行なって、機能性食品であるヒゲの有効利用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る凍結装置の横断面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿う縦断面図である。
【図3】前記実施形態に係る振動装置の斜視図である。
【図4】前記振動装置の振動板の斜視図である。
【図5】本発明者等が計画した非公知の凍結装置の横断面図である。
【図6】本発明者等が計画した非公知の別な凍結装置の横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ハウジング
2 コンベア
3 ファン
4 冷却器
13a 搬送面(コンベア面)
15 ファン(冷風流形成手段)
16 仕切壁(曲流部形成手段)
17 吸込口
18 収容容器
21 第1振動装置
22 第2振動装置
b 曲流部
c 密閉空間
c1 閉鎖空間
f、f、f 冷風流
h ヒゲ
s 桜エビ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷風を形成した密閉空間内で小エビ類をコンベアで搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結方法において、
網目状に多数の細孔を有するコンベア面に下方から上方に抜けるように形成された冷風により小エビ類を攪拌しながら凍結し、
凍結された小エビ類の低温脆性と、該冷風で小エビ類をコンベア面上で躍らせることによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、小エビ類のヒゲを折ると共に、該コンベア面から上方に吹き上がる冷風に折れたヒゲを同伴させ、
コンベア面から吹き上がった冷風の風速を低下させる曲流部を形成して、該曲流部で冷風に同伴されたヒゲを冷風から分離落下させるようにしたことを特徴とする小エビ類の凍結方法。
【請求項2】
前記コンベア面を振動させることにより、小エビ類同士の衝突を促進させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の小エビ類の凍結方法。
【請求項3】
密閉空間を形成するハウジング内にコンベアを配設し、該密閉空間に冷風を形成し、小エビ類をコンベアで搬送しながら連続的に凍結する小エビ類の凍結装置において、
網目状に多数の細孔を有するコンベア面に下方から上方に吹き抜けるように冷風流を形成させる冷風流形成手段と、
該コンベア面から上方に吹き抜けた冷風に冷風の風速を低下させる曲流部を形成させる曲流部形成手段と、
冷風の該曲流部で減速した冷風から分離し落下したヒゲを収容する収容部と、
ヒゲが分離された冷風を冷却してコンベア側へ戻す冷却器と、を備え、
該コンベア面を下方から上方に吹き抜ける冷風で小エビ類を攪拌しながら凍結処理すると共に、凍結された小エビ類の低温脆性と、該冷風で小エビ類をコンベア面上で躍らせることによる小エビ類同士の衝突との相乗作用により、コンベア面上で小エビ類のヒゲを折り、エビ本体から分離するように構成したことを特徴とする小エビ類の凍結装置。
【請求項4】
前記冷風流形成手段が、コンベア面の下方に閉鎖区間を形成し、該閉鎖空間に冷風流を導入するファンを備えてなることを特徴とする請求項3に記載の小エビ類の凍結装置。
【請求項5】
前記曲流部形成手段が、コンベア面の上方で冷風の流れをハウジングの壁面へ屈曲させ該壁面に当てた後冷却器側へ戻す曲流部を形成するように配置された仕切壁からなることを特徴とする請求項3に記載の小エビ類の凍結装置。
【請求項6】
前記冷却器が、ヒゲが分離された冷風を該冷却器を通してコンベア側へ戻すファンを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の小エビ類の凍結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−236378(P2009−236378A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81627(P2008−81627)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】