説明

小便器洗浄装置

【課題】 小便器の設置環境の影響による人体誤検出を無くし、使用人数の多少に関わらず人体検出の精度を上げる。
【解決手段】 小便器と、小便器のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する給水部と、小便器の前方に向けてマイクロ波を送信及び受信を行い検出データを出力するドップラーセンサーと、検出データ値に応じて小便器への人体の接近又は人体の放出する尿流を判別するコントローラと、コントローラでの判別した結果に応じて給水部のバルブを制御する小便器洗浄装置において、コントローラは、さらに人体接近又は尿流の検出回数を計時するとともに、検出回数が規定数に達するまでは、検出データ値が人体の接近を想定した第一接近データ値以下で且つその後尿流と判別した検出データを抽出し真の人体の値である接近データとして蓄積して、接近データの最低値を接近検出判断値として設定することを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いて人体の存在状況を検出するマイクロ波ドップラーセンサーを備えた小便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用足し後の小便器本体の洗浄を自動化する為に、便器に赤外線センサー等の人体検出センサーを設置し、一定時間以上人体を検出した場合には小用前の水膜形成のための前洗浄を実施したり(以下、前洗浄)、その後に人体が離れたことを検出し、一定量の洗浄水を流すようにしたもの(以下、本洗浄)がある。このような小便器洗浄装置は、通常の使用において人体は小便器洗浄の為の操作をする必要がないので便利である。
【0003】
一方、便器洗浄装置において、人体を検出するセンサーとしてマイクロ波センサーを用いることが提案されている。(例えば、特許文献1)マイクロ波は陶器や磁器を透過するので、マイクロ波センサーを陶器製の便器の内部やタイルの裏側に設置することが可能であり、センサー自体の保護、防水等を考慮する必要が無いという点で優れている。また、センサーを隠蔽できるので、悪戯の恐れが無く、デザインの自由度が向上する。
【0004】
また、電波(特にマイクロ、ミリ波)によるマイクロ波ドップラーセンサーは、ドップラ効果を利用して以下の原理で物体(動き)検出に用いられている。
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c
ΔF:ドップラ周波数
S:送信周波数
b:反射周波数
ν:物体の移動速度
c:光速(300×106 m/s)
アンテナから送信されたFSは、物体に反射し、相対運動νによるドップラ周波数シフトを受けFbとなる。この時、送信波と反射波の周波数差ΔFが検出信号として取り出せる。
【0005】
このマイクロ波ドップラーセンサーは物体(動き)を検出するので、これを小便器に採用して、人体の接近や(例えば、特許文献2)人の尿流を(例えば、特許文献3)検出することができるように検討されている。これら技術によれば、人体の接近と人の尿流とは検出されるドップラー周波数の違いに基づいて検出させている。
【0006】
しかし、人体の接近と人の尿流を検出するためにマイクロ波ドップラーセンサーの指向性を広く設定した小便器洗浄装置においては、下水管に流れる排水の影響により小便器の封水面の変動や、小便器の内面に流れ落ちる洗浄水の水滴、小便器の前方に設置された大便器ブースのドアの開閉動作等、人体の接近周波数である約5〜40Hzと類似した動きをするものがトイレ環境に存在する。これに対して人の尿流の周波数は約100〜180Hzであり、人体の接近に比べると速い動作である。更にこれと類似した動きをするものがトイレ環境に存在しないので正確に検出可能である。
そこで小便器洗浄装置は、人体の接近で前記前洗浄を実施したり、その後に人体が離反したことを検出して前記本洗浄をする必要があるが、前記のように人体の接近と類似した動きをする物に対しても人体の接近と判断すると問題が発生してしまう。
また人体の離反に関しても、マイクロ波ドップラーセンサーの小便器への取付位置や角度によって信号の大きさが変わってしまう恐れがあるため、個々の小便器によって最適な離反検出の判断レベルが異なって来る問題が発生してしまう。
これら問題を解決するために、前記人体の接近検出に関しては、その判断レベルを学習制御によって決定していくことでしかできない。また、前記人体の離反検出に関してもその判断レベルを学習制御によって決定していくか、人体の尿流の終了からの規定時間経過によるタイミングで離反検出を行うしかない。
その結果、小便器洗浄装置のそれぞれが設置されたトイレ環境を、使用人数の多少に関わり無く学習させながら、自動で人体の接近とその他の類似した動きをのものを区別してその検出レベルを蓄積し、その検出レベルの精度を高めていく必要がある。
【特許文献1】実開昭62−132484
【特許文献2】特開平9−80150
【特許文献3】特開2002−266407
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述した背景に鑑みてなされたもので、本発明が目的とするところは小便器洗浄装置が設置されたトイレ環境において、その後の使用人数の多少に関わらず人体検出の精度を上げるための小便器洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、小便器と、前記小便器のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する給水部と、前記小便器の前方の対象物に向けて電波を送信しその電波の反射波を受信してドプラー周波数信号として対象物の動きを抽出した検出データを出力するドップラーセンサーと、前記検出データによりドプラー周波数の違いによって前記対象物を人体の接近であるか又は人体の放出する尿流であるかを判別するコントローラと、前記コントローラは、前記検出データが対象物有りと判別された直後に前記尿流有りと判別がされたとき、前記対象物有りの検出データを前記人体の接近である接近データとして蓄積し、その接近データの最低値を人体の接近を判別する接近検出判断値として設定するとともに、前記検出データと前記接近検出判断値とを比較して人体の接近を判別し、前記給水部の制御をする小便器洗浄装置であって、前記コントローラは通電開始時より前記対象物の有りと判別した検出データの個数を数え、前記個数が所定数に達するまでは、人体の接近を想定したときの最大値である第一接近データ値を超える前記対象物有りの検出データ値は除いて、前記接近データとして蓄積することを特徴とする。
この結果、設置場所での小便器使用回数が少なくて検出データ数が規定数以下の場合は、掃除時の人の便器に異常接近する動きのように、実際の小便器の使用ではなりえない異常に大きなレベル値をあらかじめ決めてそれを排除して、人体の接近検出判断値を設定する。個々の検出データが少ない間は、大きな検出データを排除し、個々のデータの均一化した範囲内で使用するので、想定した範囲内より大きくずれることがないので設置後の人体の誤検知を防止する。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の小便器洗浄装置において、前記対象物有りの検出データが人体の接近を想定したときの最大値である第一接近データ値以下で、且つ対象物有りと判別された直後に前記尿流無しと判別がされたとき、前記対象物有りの検出データを抽出し外乱データとして蓄積して、前記外乱データの最大値と前記接近検出判断値を比較して大きい方の値を前記接近検出判断値として設定することを特徴とする。
この結果、外乱データを考慮に入れ接近検出判断値を設定するので、より実状にあった人体の検出精度を上げることができ、小便器洗浄装置の誤検知を防止する。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1又は2に記載の小便器洗浄装置において、1日又は1週間を周期として計時を行うタイマー手段を備え、前記周期を複数の時間帯に分割するとともに、前記時間帯毎に前記接近検出判断値を設定することを特徴とする。
この結果、1日の所定時間帯に定期的に発生する小便器掃除等の人の動き等を特定しその時間帯ごとに、接近検出判断値を設定するので、それぞれの時間帯にあった最適に検出精度を上げることができる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の小便器洗浄装置において、前記周期を分割した複数の時間帯毎に前記接近データ又は外乱データが所定期間連続して検出されないときは、前記接近検出判断値を所定の値に再設定することを特徴とする。
この結果、長期間の人の動きが検出されないような場合は、接近検出判断値が適合してないと思われる。よって、接近検出判断値を所定の値に再設定するので、小便器洗浄装置を正常な状態に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小便器設置で、小便器施工時や小便器掃除時の人の動きがあったような時間帯を特定して、その接近データを排除して人体判断値を設定するので、小便器の設置される環境によって人体検出の少ないケースでも、最適な判断値を設定することができ誤検出の少ない小便器装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明による便器洗浄装置を適用した小便器の構成を示す図である。小便器1の内部には、マイクロ波ドップラーセンサー2、制御部3が収められている。小便器1の上端は、蓋4となっており、マイクロ波ドップラーセンサー2と制御部3が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。小便器1の上方背面には小便器1のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する為の給水部5が設けられている。ボール部内空間の上部には、洗浄水吐出口6が設けられている。ボール部内空間の下部には、封水を形成する為のトラップ部7と排水口8が設けられている。マイクロ波ドップラーセンサーの検出範囲9内に小便器1の人体10が接近し用を足すことにより、人体10の接近とその尿流11を検出することができる構成とされている。
【0014】
図2は、マイクロ波ドップラーセンサーによる人体接近、及び尿流検出より接近検出判断値を設定するための概略構成図である。マイクロ波ドップラーセンサー2は、10.525GHzのマイクロ波を送信する送信手段20と、反射波を受信する受信手段21と、送信手段20と受信手段21との周波数との差分を出力する差分検出手段22から構成されている。この点がドップラーセンサーの特徴である。
【0015】
そして、コントローラ3を具体的に示す。マイクロ波ドップラーセンサー2からの検出データ23を接近検出判断値12と比較して接近判断を接近検出判断手段13が行う。同様に、前記検出データ23を尿流検出判断値14と比較して尿流検出判断を尿流検出判断手段15が行う。コントローラ3は、この尿流検出の有無の判断に基づいてバルブ50を操作する。
【0016】
そして、接近検出判断手段13と尿流検出判断手段15の判断結果をデータに応じて接近判断統計手段16によって、前記検出データ23が接近データであったのか外乱データであったかの判断を行う。
【0017】
そして、接近検出判断値設定手段17が、前記検出データ23をデータ蓄積部18に蓄積し、時間枠に応じて前記接近検出判断値12を設定する。時間枠の計時は時間枠計時部19によって行われる。
【0018】
図3は、マイクロ波ドップラーセンサーによる人体接近、及び尿流検出より接近検出判断値を設定するための実施例に基づいた詳細構成図である。マイクロ波ドップラーセンサー2は、10.525GHzのマイクロ波を送信する送信手段20と、反射波を受信する受信手段21と、送信手段20と受信手段21との周波数との差分を出力する差分検出手段22から構成されている。この点がドップラーセンサーの特徴である。
【0019】
そして、コントローラ3を具体的に示す。マイクロ波ドップラーセンサー2からの信号は増幅され、約15〜40Hzの信号を通過させる第1の周波数フィルター24と、その出力を第1人体検出データ25として、その値を第1接近検出判断値28と比較して主として接近し始めた状態での接近判断を第1接近判断手段29が行う。同様に、約5〜40Hzの信号を通過させる第2の周波数フィルター26と、その出力を第2人体検出データ27として、その値を第2接近検出判断値30と比較して接近状態での接近継続しているかどうかの判断を第2接近判断手段31が行う。ここで、第1接近判断手段29、第2接近判断手段31の出力に応じて総合接近判断手段32が最終的な接近の判断を行う。
【0020】
また、約100〜180Hzの信号を通過させる第3の周波数フィルター34と、その出力を尿流検出データ35として、その値を尿流検出判断値14と比較して尿流の有無の判断を尿流検出判断手段15が行う。コントローラ3は、これらの判断に基づいてバルブ50を操作する。このように、検出しようとする対象ごとに、周波数フィルターを通して適切な出力にして取り出している。
【0021】
また、総合接近判断手段32と尿流検出判断手段15の判断結果をデータに応じて接近判断統計手段16によって、前記第1人体検出データ25と前記第2人体検出データ27が接近データであったのか外乱データであったかの判断を行う。
【0022】
そして、接近検出判断値設定手段17が、前記第1人体検出データ25と前記第2人体検出データ27をデータ蓄積部18に蓄積し、時間枠に応じて前記第1接近検出判断値28と前記第2接近検出判断値30を設定する。時間枠の計時は時間枠計時部19によって行われる。
【0023】
以上の構成の小便器洗浄装置において、人体10が小便器1に接近する場合や、小便器1の近くで体を動かす際には、主に低周波域通過の第1の周波数フィルター24及び第2の周波数フィルター26から信号が出力される。一方、尿流は人体に比べて移動速度が速いので、主に高周波域通過の第3の周波数フィルター34から信号が出力されるので、制御部33は人体の動きと尿流とを識別できる。
【0024】
前述した、下水管に流れる排水の影響による小便器の封水面の変動や、小便器の内面に流れ落ちる洗浄水の水滴、小便器の前方に設置された大便器ブースのドアの開閉動作、といった外乱信号の周波数は約5〜15Hz、人体接近中の周波数は約15Hz〜40Hz、人体接近後の周波数は約5〜40Hz、尿流の周波数は約100〜180Hzであり、各々に設定されたフィルターからの出力信号を用いて人体と人の尿流の有無を判断する。
【0025】
図4は人体を検出するためのメインフローチャート図である。全体のソフト処理を示している。人体の接近(S41)・尿流(S42)の検出を行い、その結果を元に接近と外乱データを蓄積し(S43)、最適な第1接近検出判断値、第2接近検出判断値を設定するための処理(S44)を行う。このように一連の処理を連続的にソフト処理を行っている。
【0026】
図5は人体が小用を開始すると高周波域通過の第3の周波数フィルター34から得られる信号の一例である。第1人体検出出力及び第2人体検出出力を基に第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値を更新するのための起点となる尿流検出は、高周波域通過の第3の周波数フィルター34の出力信号を用いる。V1、V2は尿流検出のための尿流検出判断値36である。ここで、実際のV1、V2は数百ミリボルトの波形であり、T1は放尿の時間であり10数秒程度である。この時間の検出については、以下、図6のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0027】
図6は尿流検出手段を示すフローチャートである。高周波域通過の第3の周波数フィルター34の出力値VHがV1未満かV2より大きい時は現状維持で終了するが(S701でNO)、VHがV1以上かV2以下であれば(S601でYES)、尿流らしき波形が入力されたと判断し、尿流検出時間を計測するためタイマ1をスタートさせる(S602)。VHがV1以上かV2以下の時は常にタイマ1の値を確認し、タイマ1の値が1s以上であれば(S603でYES)尿流検出と確定するが(S604)、タイマ1の値が1s未満の時は(S603でNO)現状維持とする。その後VHがV1以上かV2以下の状態の時は現状維持であるが(S605でYES)、V1未満かV2より大きい時は(S605でNO)、尿流検出判断値を下回った時間を計測するためタイマ2をスタートさせる(S606)。尿流検出判断値を下回った時間が短ければ尿流が継続されていると判断する。その後、VHがV1以上かV2以下になれば(S607でYES)、次の時間計測のためタイマ2の停止とクリアを行い(S608)再度VHの確認を行う。VHがV1未満かV2より大きい時は(S607でNO)タイマ2の値を確認し200ms未満であれば尿流が継続中と判断し再度VHの確認を行うが(S609でNO)、200ms以上の時は尿流が途絶えたと判断する(S609でYES)。最後に次の尿流検出のために今まで計測したタイマ1・2の停止とクリアを行う(S6010)。かかる処理で尿流を判別することにより、図6の信号ではおよそT1の間を尿流と検出することができる。
【0028】
図7は人体の接近時に低周波域通過の第1の周波数フィルター24から得られる信号の一例である。まず、接近検出を行う際は、低周波域通過の第1の周波数フィルター24を通して得られる第1人体検出データ25と、低周波域通過の第2の周波数フィルター26を通して得られる第2人体検出データ27を用いる。第1人体検出データ25の振幅のプラス側の現在設定されている第1接近検出判断値をV3とし、V3Lは接近時に発生すると想定される最小の前記第1接近検出判断値である。同様に第1人体検出データ25の振幅のマイナス側の現在設定されている第1接近検出判断値をV4として、V4Lも同様である。そして第1人体検出データ25の振幅値と第1接近検出判断値28(V3−V4)の値を比較していく。ここで、実際のV3−V4の値は数ボルトで、T2は人の接近検出を判断する時間であり1秒程度である。図9のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0029】
図8は人体の接近時に低周波域通過の第2の周波数フィルター26から得られる信号の一例である。第2人体検出データ27の振幅のプラス側の現在設定されている第2接近検出判断値をV5とし、同様に第2人体検出データ27のマイナス側の現在設定されている第2接近検出判断値をV6とする。そして第2人体検出データ27の振幅値と第2接近検出判断値30(V5−V6)の値を比較していく。ここで、実際のV5−V6の値は数ボルトで、T3は人の接近検出を判断する時間であり2秒程度である。図9のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0030】
図9は接近検出手段を示すフローチャートである。低周波域通過の第1の周波数フィルター24を通して得られる第1人体検出データ25の振幅値VAが、第1接近検出判断値28に設定される値として想定される最小値(V3L−V4L)を上回るかどうかの判断をする。下回っている場合は(S901でNO)そのまま終了するが、上回った場合は(S901でYES)人体接近らしき信号が入力されと判断し、接近検出手段を継続する。まずタイマをスタートさせ(S902)、1s経過するまで第1人体検出データ25の振幅値VAの最大値を求める(S903・S904)。図7におけるおよそT2間である。1s経過後は次の時間測定に備え、タイマ停止、及びタイマ値のクリアを行う(S905)。求めたVAの最大値と低周波域通過の第1の周波数フィルター24の第1接近検出判断値28(V3−V4)を比較し、その大小関係とVAの最大値を保持しておく(S906)。この時、今回の人体接近らしき信号の大きさを確認するため、VAの最大値が現在設定されている第1接近検出判断値28(V3−V4)を下回っていたとしても今後の処理は継続させる。続いて接近時のもう一方の周波数成分を確認するため再度タイマをスタートさせ(S907)、2s間経過するまで低周波域通過の第2の周波数フィルター26を通して得られる第2人体検出データ27の振幅値VBの平均値を求める(S908・S909)。図8におけるおよそT3間である。2s経過後は次の時間測定に備え、タイマ停止、及びタイマ値のクリアを行う(S910)。求めたVBの平均値と低周波域通過の第2の周波数フィルター26の第2接近検出判断値30(V5−V6)を比較し、その大小関係とVBの平均値を保持しておく(S911)。ここで、先程保持していた、低周波域通過の第1の周波数フィルター24の第1接近検出判断値28と、低周波域通過の第2の周波数フィルター26の第2接近検出判断値30との大小関係を確認し、VAの最大値が第1接近検出判断値28を下回るか、VBの平均値が第2接近検出判断値30を下回っていたら、S912でNO)、今回の信号を接近信号として検出しないが、VAの最大値が第1接近検出判断値28を上回り、なおかつVBの平均値が第2接近検出判断値30を上回った場合は(S912でYES)今回の信号を接近検出の信号と判断することになる(S913)。
【0031】
しかし、今回処理した第1人体検出データ25と第2人体検出データ27が本当に人体接近信号なのか、何らかの外乱信号であるのかまだこの時点では確定ができない。通常、小便器を使用する人は小便器に接近後、数十秒以内に小用を行う。そこでこの条件を利用するため再度タイマをスタートさせ、30秒以内に尿流を検出したら先程検出した第1人体検出データ25と第2人体検出データ27は人体接近の信号であったと確定できる。また、第1人体検出データ25と第2人体検出データ27はの違いは通過させるフィルターの違いが主であって、接近検出のためのデータとしては同義となるので、以下、第1人体検出データ25と第2人体検出データ27を総称して検出データと記述する。
【0032】
図10はその外乱データと接近データを判別するフローチャートである。また、図11は検出データを接近信号として判断した時のタイムチャート、それに対し図12は検出データを外乱信号として判断した時のタイムチャートである。
【0033】
まず、未使用時間の確認を行う(S1001)。これは後述するS1010で計時を開始した時間であって、接近データも外乱データも蓄積されなかった時間を表す。この未使用時間がある規定時間(例えば3日間)に達していれば(S1001でYES)、接近検出判断値を設定する処理(S1011)へ移行する。図16でも説明するがこの時はある規定値(例えば初期設定値)を設定するものとする。未使用時間が規定時間に達していなければ、S1002の処理へ移行する。S1002では検出データの有無を確認する。検出データが無ければ特に処理をせず終了するが(S1002でNO)、検出データがあれば次の処理へ移行する(S1002でYES)。続いて検出データを接近データとして蓄積した数を確認し規定数に達していれば(S1003でYES)S1005へ移行し、規定数に達していなければ(S1003でNO)S1004へ移行する。S1004では、前記検出データが人体接近時に想定した値である第一検出データ値以下であるかを確認する。第一接近データ値とは、接近の振幅値が図13のようなV7−V8が通常使用で有り得るような値であるか、図14のように振幅値V7H−V8Hが通常では有り得ないような値であるかを判断するための値である。この処理は、まだ接近データ数の蓄積数が少ない時に、接近を想定した値より大きな値を検出データとして使用して、後述するS1011での接近検出判断値設定の精度が悪化されるのを防ぐためである。接近の振幅値が第一接近データ以下でなければ、それは小便器施工や清掃等のイレギュラーな動作をしていると判断して処理を終了する(S1004でNO)。接近の振幅値が第一接近データ以下であれば(S1004でYES)、S1005へ進む。続いて検出データ検出からの規定時間を計測するためにタイマをスタートさせ(S1005)、尿流検出をしたかどうか(S1006)と30sが経過したかどうか(S1007)を確認する。30s以内に尿流を検出した時は(S1006でYES、且つS1007でNO)先程検出した検出データは接近信号であると判断し、VAの最大値とVBの平均値を接近データとして蓄積し、その時の時間枠も記録する(S1009)。タイムチャートで示すと図11ようになる。時間枠については後述する図15にて詳細を説明する。尿流検出せずに30sが経過した時は(S1006でNO、且つS1007でYES)先程検出した接検出データは外乱信号であると判断し、VAの最大値とVBの平均値を外乱データとして蓄積し、その時の時間枠も記録する。タイムチャートで示すと図12のようになる。時間枠については後述する図15にて詳細を説明する。そして前記S1001で判断するための未使用時間を計測するためのタイマをスタートさせる(S1010)。続いて蓄積されたデータを元に接近検出の第1接近検出判断値と第2接近検出判断値を設定する(S1011)。但しS1001で未使用時間が規定値に達してこの処理に来た時は、ある規定値(例えば初期設定値)を設定するものとする。詳細は後述する図16でも説明する。
【0034】
接近検出第1接近検出判断値28と接近検出第2接近検出判断値30は、各時間枠によって設定することにより、常に最適な接近検出判断値を設定することができる。図15は時間枠毎に接近検出判断値を設定するための説明図である。
【0035】
例えば1日を1時間毎の24の枠に区切り本日を含め過去1週間分の時間枠を設ける。各時間枠毎に検出データを接近データとして蓄積データと外乱として蓄積したデータを記録しておく(前記図10のS1108とS1109)。実際はVAの最大値とVBの平均値を接近データとして蓄積されており、VAの最大値は第1接近検出判断値、VBの平均値は第2接近検出判断値の設定として用いられる。ここでは一方(例えばVAの最大値のデータを用いて第1接近検出判断値を設定)
のみについての説明を行う。第1接近検出判断値の設定と第2接近検出判断値の設定の違いは、元の蓄積データがVAの最大値とVBの平均値かの違いのみで、設定方法自体は同一で構わない。図14中の○印は検出データを接近データとして蓄積したデータを表し、その横の数字はその検出データ値である。同様に図14中の×印は検出データを外乱データとして蓄積したデータを表し、その横の数字はその検出データ値である。何らかのデータを蓄積した時間枠は網掛け表示をしており、何のデータも蓄積しなかった時間枠には白抜き表示をしている。
【0036】
接近検出判断値の設定方法であるが、例えば時間枠1のデータを確認すると蓄積されたデータは4日前のみとなり、接近データは30、外乱データは10となる。接近データの最低値である30を検出判断値に設定すればこの時間枠での接近を検出可能となる。また外乱データの最大値である10を検出判断値に設定すれば、外乱の影響を受けることなく、より接近検出性能を向上させることができる。また、接近データの最低値30と外乱データの最大値10の中間値である20を接近検出判断値と設定しても良いし、より外乱の影響を無くしたいのであれば、中間値20より接近データの最低値30に近い値に設定し、より接近検出性能の向上を図りたいのであれば中間値20より外乱データの最大値10に近い値に設定すればよい。このように接近検出を可能とし、且つ外乱による影響を無くす値を接近検出判断値として設定する方法を以下、接近検出判断値設定法と記述する。
【0037】
時間枠2のデータを確認すると蓄積されたデータは1日前のみとなり、接近データは8と20、外乱データは2と4となる。このような時は接近データの最低値8と外乱データの最大値で4を抽出して接近検出判断値設定法を用いてもよいし、接近データの平均値である14と外乱データの平均値である3を用いて接近検出判断値設定法を用いてもよい。
【0038】
時間枠3枠のデータを確認すると蓄積されたデータは2日前のみとなり、接近データは10、外乱データは20となる。接近データの最低値が外乱データの最大値より小さくなっているため、接近を検出し、外乱の影響を受けないといった値を設定することができない。このような時は接近検出を優先するのであれば、接近データの最低値である10を接近検出判断値と設定すればよいし、外乱による接近誤検出防止を優先するのであれば、外乱データの最大値である20を接近検出判断値に設定すればよい。また各々の中間値である15を接近検出判断値と設定してもよい。
【0039】
時間枠4のデータを確認するとデータが複数日に亘って蓄積されている。このような時は接近データの最低値15と外乱データの最大値10を抽出して接近検出判断値設定法を用いてもよいし、接近データの平均値である20と外乱データの平均値である5で接近検出判断値設定法を用いてもよい。
【0040】
時間枠5〜8のデータを確認するとデータが全く蓄積されていない。このような時は直近で設定した時間枠4の判断値をそのまま設定してもよいし、初期値として設定される値にしてもよい。また接近検出を優先させるのであれば、どのような値でも検出可能とするため0としすればよいし、外乱による接近誤検出防止を優先するのであれば、設定可能な最大値を設定すればよい。
【0041】
時間枠15のデータを確認するとデータが複数日に亘って蓄積されている。更に接近データの最低値である14が外乱データの最大値である21より小さいるため、接近を検出し、外乱の影響を受けないといった値を設定することができない。このような時は接近検出を優先するのであれば、接近データの最低値である14を接近検出判断値と設定すればよいし、外乱による接近誤検出防止を優先するのであれば、外乱データの最大値である21を接近検出判断値に設定すればよい。また
接近データの平均値である21と外乱データの平均値である14で接近検出判断値設定法用いてもよい。
【0042】
図16は一定期間中小便器が使用されることなければ、小便器の設置環境が変化したと判断し、前記第1接近判断値28と第2接近判断値30をある規定値(例えば初期設定値)に設定することを表した図である。小便器施工時等、一回のみ特定行為が行われその信号により誤って前記第1接近判断値28と第2接近判断値30を学習してしまった時、かかる処理により一定未使用期間後に使用者が現れた来たときに初期設定の状態から小便器使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る小便器の構成図である。
【図2】マイクロ波ドップラーセンサーによる人体接近、及び尿流検出より接近検出判断値を設定するための概略構成図である。
【図3】マイクロ波ドップラーセンサーによる人体接近、及び尿流検出より接近検出判断値を設定するための実施例に基づいた詳細構成図である。
【図4】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される人体検出機能のプラグラムを示すフローチャートである。
【図5】小用中の高周波域通過の第3の周波数フィルターの出力波形である。
【図6】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される尿流検出のプログラムを示すフローチャートである。
【図7】小便器の人体が接近中の低周波域通過の第1の周波数フィルターの出力波形信号である。
【図8】小便器の人体が接近中の低周波域通過の第2の周波数フィルターの出力波形信号である。
【図9】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される接近検出のプログラムを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される外乱データと接近データを判別しデータを蓄積するためのプログラムを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例に係る尿流検出により検出データを接近信号と確定する時のタイムチャートである。
【図12】本発明の実施例に係る尿流未検出により検出データを外乱信号と確定する時のタイムチャートである。
【図13】本発明の実施例に係る通常使用で想定し得る検出データ波形である。
【図14】本発明の実施例に係る通常使用で想定外の検出データ波形である。
【図15】本発明の実施例に係る接近データと外乱データを蓄積し、接近検出判断値を設定するための説明図である。
【図16】本発明の実施例に係る接近データと外乱データが一定時間検出されなかった時に、接近検出判断値を設定するための説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1…小便器
2…マイクロ波ドップラーセンサー
3…コントローラ
4…蓋
5…給水部
6…洗浄水吐出口
7…トラップ部
8…排水口
9…マイクロ波ドップラーセンサー検出範囲
10…人体
11…尿流
12…接近検出判断値
13…接近検出判断手段
14…尿流検出判断値
15…尿流検出判断手段
16…検出判断統計手段
17…接近検出判断値設定手段
18…データ蓄積部
19…時間枠計時部
20…送信手段
21…受信手段
22…差分検出手段
23…検出データ
24…第1の周波数フィルター
25…第1人体検出データ
26…第2の周波数フィルター
27…第2人体検出データ
28…第1接近検出判断値
29…第1接近判断手段
30…第2接近検出判断値
31…第2接近判断手段
32…総合接近判断手段
33…制御部
34…第3の周波数フィルター
35…尿流検出データ
50…バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器と、前記小便器のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する給水部と、
前記小便器の前方の対象物に向けて電波を送信しその電波の反射波を受信してドプラー周波数信号として対象物の動きを抽出した検出データを出力するドップラーセンサーと、
前記検出データによりドプラー周波数の違いによって前記対象物を人体の接近であるか又は人体の放出する尿流であるかを判別するコントローラと、
前記コントローラは、
前記検出データが対象物有りと判別された直後に前記尿流有りと判別がされたとき、
前記対象物有りの検出データを前記人体の接近である接近データとして蓄積し、
その接近データの最低値を人体の接近を判別する接近検出判断値として設定するとともに、
前記検出データと前記接近検出判断値とを比較して人体の接近を判別し、
前記給水部の制御をする小便器洗浄装置であって、
前記コントローラは通電開始時より前記対象物の有りと判別した検出データの個数を数え、
前記個数が所定数に達するまでは、
人体の接近を想定したときの最大値である第一接近データ値を超える前記対象物有りの検出データ値は除いて前記接近データとして蓄積する
ことを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の小便器洗浄装置において、前記対象物有りの検出データが人体の接近を想定したときの最大値である第一接近データ値以下で、且つ対象物有りと判別された直後に前記尿流無しと判別がされたとき、前記対象物有りの検出データを抽出し外乱データとして蓄積して、前記外乱データの最大値と前記接近検出判断値を比較して大きい方の値を前記接近検出判断値として設定することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の小便器洗浄装置において、1日又は1週間を周期として計時を行うタイマー手段を備え、前記周期を複数の時間帯に分割するとともに、前記時間帯毎に前記接近検出判断値を設定することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の小便器洗浄装置において、前記周期を分割した複数の時間帯毎に前記接近データ又は外乱データが所定期間連続して検出されないときは、前記接近検出判断値を所定の値に再設定することを特徴とする小便器洗浄装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図1】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−37869(P2010−37869A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204115(P2008−204115)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】