説明

小口径トンネル形成用掘削装置

【課題】小口径トンネルの形成に要する推進動力を軽減し得る掘削装置を提供すること。
【解決手段】小口径トンネルを形成するために地中に推進される掘削装置(10)であって、直列に配置された複数の推進体(12,14)と、互いに隣接する両推進体を相互に接続する継手(16)とを備える。継手(16)は、一方の推進体(12)に対する他方の推進体(14)の相対的な進退及び揺動を許す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道用管、通信回線設置用管、ガス管等からなる敷設管を地中に埋設するために設けられる小口径のトンネル、より詳細には、地中に設けられた立て坑から地中を直線的に伸び、続いて地上に向けて曲線的に伸びる小口径トンネルを形成するために地中に推進される掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような小口径トンネルを形成するための掘削装置として、直列に配置された複数の推進体を有するものが用いられている(後記特許文献1参照)。
【0003】
前記従来の掘削装置にあっては、互いに隣接する両推進体が、継手を介して、その一方の推進体(先行の推進体)に対してその他方の推進体(後行の推進体)が揺動可能であるように連結されている。
【特許文献1】特開平6−173589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この掘削装置にあっては、立て坑から複数の推進体をこれらの軸線の周りに回転させながら地中に推進することにより、直線状に伸びるトンネル部分(直線部分)が形成される。その後、先頭の推進体(通常カッタヘッドが取り付けられている。)に対する地山の反力の下、前記先頭の推進体の推進方向が上方に変化すると、これに続いて推進される後続の推進体が順次揺動する。その結果、先行する複数の推進体が地中を斜め上方に向けて曲線状に推進される。その結果、前記直線部分から地上に向けて湾曲して伸びる曲線状のトンネル部分(曲線部分)が形成される。
【0005】
ところで、トンネルの前記直線部分を形成する推進体は、推進時、隣接する先行及び後行の両推進体がこれらの互いに相対する両端面において互いに接し、これにより前記推進体の直進性及び推力の伝達性が確保されることが望ましい。
【0006】
このため、前記従来の掘削装置においては、後行の推進体に筒状体が螺合されており、前記筒状体の螺合位置を変更することにより、前記筒状体を介して、先行及び後行の両推進体がこれらの端面において互いに接する状態におかれる。
【0007】
ところで、先頭の推進体及びこれに続く推進体は、前記直線部分の形成の後に前記曲線部分を形成することができるように、相互に揺動可能の状態におかれる。しかし、これは、前記直線部分の形成時に蛇行して進むことを余儀なくさせる。その結果、必要以上に大径の直線部分が形成され、その形成のために過大な推進動力が消費される。
【0008】
本発明の目的は、小口径トンネルの形成に要する推進動力を軽減し得る掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、小口径トンネルを形成するために地中に推進される掘削装置に係り、直列に配置された複数の推進体と、互いに隣接する両推進体を相互に接続する継手であって一方の推進体に対する他方の推進体の相対的な進退及び揺動を許す継手とを含む。
【0010】
前記継手は、両推進体に設けられ互いに他の一方の推進体に向けて開放する2つの中空部内に保持された可動部材を備え、前記可動部材が前記一方の推進体に対して該推進体の軸線方向にのみ移動可能であり、また前記他方の推進体に対して該推進体の軸線に直交しかつ互いに直交する2つの軸線の周りにそれぞれ揺動可能であるものとすることができる。
【0011】
より具体的には、前記継手は、前記一方の推進体に設けられ該推進体の中空部に連なる2つの穴と前記可動部材に設けられその軸線に直交して伸びる第1の貫通穴とに通された第1のピンを備え、前記2つの穴及び前記第1の貫通穴のいずれか一方が前記第1のピンの前記一方の推進体の軸線方向への相対移動を許すものとし、さらに、前記他方の推進体に設けられ該推進体の中空部に連なる2つの穴と前記可動部材に設けられその軸線に直交して伸びる第2の貫通穴とに通された第2のピンと、前記第2のピンの周面とこれを取り巻く前記第2の貫通穴の周壁とに設けられた球面対偶とを備えるものとすることができる。
【0012】
好ましくは、前記一方の推進体及び前記他方の推進体は、それぞれ、前記掘削装置の推進方向に関して先行の推進体及び後行の推進体をなす。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掘削装置を構成する互いに隣接する両推進体を相互に接続する継手が、一方の推進体(例えば先行の推進体)に対する他方の推進体(例えば後行の推進体)の相対的な進退及び揺動を許すものであることから、両推進体を、これらが端面において互いに接し、これにより揺動不可能である状態(第1の状態)と、互いに離れかつ揺動可能である状態(第2の状態)とにおくことができる。
【0014】
前記第1の状態は、地中における両推進体の真っ直ぐな移動を可能にし、これにより、形成される小口径トンネルの直線部分の形成時における両推進体の蛇行及びこれに伴う過大な口径のトンネルの形成及び推進動力の増大を防止することができる。また、前記第1の状態は、前記推進体に推力を付与するにより生じさせることができる。このことから、前記従来必要とした筒状体の回転操作のための労力及び時間を必要としない。
【0015】
また、前記第2の状態は、推進中の先頭の推進体が地山の反力の下で後続の推進体に対して揺動し、その進行方向を変えるときに生じさせることができる。前記第2の状態の間、前記先頭の推進体は前記継手を介して推力を受け、後続の推進体と共に変更後の進行方向へ推進される。
【0016】
両推進体を接続する前記継手は、両推進体の中空部内に保持された可動部材を有するものとすることができる。前記可動部材は前記一方の推進体の軸線方向に移動可能であり、これにより、前記一方の推進体に対する前記他方の推進体の進退が可能である。また、前記可動部材は前記他方の軸線に直交しかつ互いに直交する2つの軸線の周りにそれぞれ揺動可能であり、これにより前記一方の推進体の前記他方の推進体に対する揺動を可能とする。
【0017】
前記継手は、例えば、前記一方の推進体に設けられその中空部に連なる2つの穴と前記可動部材の軸線に直交して伸びる第1の貫通穴とに通された第1のピンを備え、前記2つの穴及び前記第1の貫通穴のいずれか一方が前記第1のピンの前記一方の推進体の軸線方向への相対移動を許す。これによれば、前記2つの穴又は前記第1の貫通穴に対する前記第1のピンの相対移動により、前記可動部材は、前記一方の推進体に対して相対移動をすることができる。
【0018】
また、前記継手が、例えば、前記他方の推進体に設けられその中空部に連なる2つの穴と前記可動部材に設けられその軸線に直交して伸びる第2の貫通穴とに通された第2のピンと、前記第2のピンの周面とこれを取り巻く前記第2の貫通穴の周壁とに設けられた球面対偶とを備える。これによれば、前記球面対偶を介して、前記可動部材と前記他方の推進体との間における前記第2のピンの軸線の周り及びこれに直交する軸線の周りの相対揺動を可能とすることができる。
【0019】
前記一方の推進体及び他方の推進体は、それぞれ、先行の推進体及び後行の推進体に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び図2を参照すると、本発明に係る掘削装置が全体に符号10で示されている。
【0021】
掘削装置10は、上下水道管、通信回線用管、ガス管等の敷設管が設置される比較的小口径のトンネル(図示せず)の形成のために用いられる。
【0022】
前記小口径トンネルは、地中に設けられた立て坑(図示せず)から、掘削装置10を地中に推進することにより形成される。このようにして形成された小口径トンネルは、前記立て坑から地中を直線的に伸びる部分(直線部分)と、続いて地上に向けて曲線的に伸びる部分(曲線部分)とからなる。
【0023】
また、前記小口径トンネル内への前記敷設管の設置は、地上から前記小口径トンネル内に前記敷設管を引き込むことにより行われる。この引き込みは、例えば、掘削装置10に前記敷設管を接続し、前記小口径トンネルから掘削装置10を引き抜くこと、すなわち掘削装置10を前記立て坑に向けて逆方向へ移動させることにより行われる。
【0024】
掘削装置10は、直列に配置された複数の推進体12,14,すなわち先頭の推進体12と、これに続く複数の推進体14とを備える。
【0025】
互いに隣接する両推進体12,14及び14,14は、両推進体の一方に対する他方の推進体の進退と揺動とを許す継手16により、相互に接続されている。
【0026】
図示の推進体12,14は円形の横断面形状を有する管状部材からなる。前記推進体は、前記小口径トンネルの直線部分を形成するために推進されるとき、互いに隣接する両推進体の端面同士が互いに当接し、真っ直ぐに整列するように設定され(図1及び図2)、また、前記小口径トンネルの曲線部分を形成するために推進され(図3)、あるいは推進方向を変えるとき(図4)、互いに隣接する両推進体の端面の一部同士が互いに当接するように設定されている。
【0027】
先頭の推進体12はその先端に取り付けられた複数のビット18と、平坦な傾斜面20とを有し、傾斜面20は、掘削装置10の推進方向(図1において左方向)に関する前方から後方に向けて下方(図1において下方)へ伸びている。
【0028】
掘削装置10は、前記小口径トンネルの形成のために地中に推進されるとき、その軸線の周りに駆動回転される。このとき、ビット16は地中の砂礫を押し退け、またこれを砕く作用をなす。
【0029】
推進体12の傾斜面20は、前記小口径トンネルの直線部分の形成後、その曲線部分を形成するために掘削装置10の進行方向を変更する際に機能する。
【0030】
すなわち、前記直線部分の形成後、掘削装置10の回転が一時停止され、かつ推進体12の傾斜面20が図1に示すように下方に向けられる。次いで、掘削装置10の推進が再開される。このとき、地山から先頭の推進体12の傾斜面20に及ぼされる推進抵抗(反力)のため、先頭の推進体12がその後続の推進体14に対して斜め上方に向けて揺動し(図3参照)、これにより推進方向が変更される。その後、掘削装置10の回転が再開され、先頭の推進体12及びこれに続く複数の推進体14が地上に向けて推進され、これにより前記曲線部分が形成される。
【0031】
互いに隣接する両推進体12,14(又は14,14)は、それぞれ、互いに他の一方に向けて開放する2つの中空部22を有する。推進体12,14が管状部材からなる図示の例では、中空部22は円筒形を呈する。
【0032】
推進体12の中空部22はその後端面で開放している。また、各推進体14はその両端面でそれぞれ開放する2つの中空部22を有し、両中空部22は推進体14の軸線方向における中央部を横断する仕切り部24により仕切られている。仕切り部24は推進体14の補強作用をなす。
【0033】
継手16は、互いに隣接する両推進体の互いに相対する2つの中空部22内に保持された可動部材26を備える。
【0034】
図示の可動部材26は全体に円柱状を呈し、わずかな直径差を有する大径部と小径部とからなる。可動部材26はその大径部において両推進体の一方(例えば先頭の推進体12又は先行の推進体14)の中空部22内に受け入れられ、その小径部において他方の推進体(後行の推進体)14の中空部22内に受け入れられている。
【0035】
いずれの中空部22も可動部材26の大径部とほぼ同じ直径を有し、またその小径部より大きい直径を有する。可動部材26は一方の推進体12に対して該推進体の軸線方向に移動可能とされ、また他方の推進体14に対して該推進体の軸線に直交しかつ互いに直交する2つの軸線の周りにそれぞれ揺動可能とされている。
【0036】
図示の例では、一方の推進体12にその中空部22に連なる2つの穴28が設けられ、また可動部材26の大径部にその軸線に直交して伸びる第1の貫通穴30が設けられ、両穴28と第1の貫通穴30とに第1のピン32が通されている。
【0037】
2つの穴28はそれぞれピン32の直径より大きい直径を有する。このため、両穴28は推進体12の軸線方向に関して各穴28の直径とピン32の直径との差に相当する距離だけ、穴28内でのピン32の移動を許す。
【0038】
ピン32は、適当な保持手段を介して、両穴28及び第1の貫通穴30内に保持されている。図示の保持手段は、ピン32の軸線方向における中央部に設けられた環状溝34と、該環状溝34に部分的に嵌合されたボール36と、ピン32に向けてボール36にばね力を及ぼすコイルスプリング38とからなる。コイルスプリング38は可動部材26の前記大径部に設けられた小穴40内に収容されている。
【0039】
これにより、可動部材26は実質的にピン32と一体をなし、また両穴28に対するピン32の係合のためにその軸線の周りの回転を制限されているため、ピン32と共に中空部22をその軸線方向にのみ移動することができる。
【0040】
穴28の平面形状については、これを円形とする図示の例に代えて、前記推進体の軸線方向に伸びる長穴、楕円等とすることが可能である。
【0041】
また、一方の推進体12に隣接する他方の推進体14にはその中空部22に連なる2つの穴42が設けられ、可動部材26(より詳細にはその小径部)にはその軸線に直交して伸びる第2の貫通穴44が設けられ、両穴42と第2の貫通穴44とに第2のピン46が通されている。
【0042】
第2のピン46の周面とこれを取り巻く第2の貫通穴44の周壁とには、それぞれ、環状に伸びる球面対偶48,50が配置されかつこれらに固定されている。球面対偶48,50は、第2のピン46の軸線方向におけるほぼ中央部に配置されている。
【0043】
図示の例では、第2のピン46は、雌部材54及びこれに嵌合する雄部材56からなり、これらの両部材はボルト52により相互連結されている。また、第2のピン46は両穴42とほぼ等しい直径を有する。
【0044】
第2のピン46は、可動部材26の小径部に設けられた第2の貫通穴44の直径より小さい直径を有するためにこれらの間に隙間が存し、また可動部材26の小径部が推進体14の中空部22の直径より小さい直径を有するためにこれらの間に隙間が存する。このことから、可動部材26の前記小径部は、これらの隙間の範囲内で、可動部材26の上下方向に関する揺動すなわち鉛直面内における揺動が可能である(図3参照)。可動部材26、したがって一方の推進体12の前記鉛直面内における揺動は、他方の推進体14の中空部22の内壁面に対する可動部材26の小径部の当接により制限される。このとき、他方の推進体14の端面56はその一部において一方の推進体12の端面に当接し、これにより、推進体14から推進体12への推力の伝達が行われる。
【0045】
また、可動部材26の前記小径部は、他方の推進体14の中空部22における該小径部との間に存する隙間の範囲内で、第2のピン46の軸線の周りの例えば水平面内における揺動が可能である(図4参照)。一方の推進体12の前記水平面内における揺動は、他方の推進体の中空部22の内壁面に対する可動部材26の小径部の当接により制限される。このとき、他方の推進体14の端面56はその一部において一方の推進体12の端面に当接し、これにより、推進体14から推進体12への推力の伝達が行われる。
【0046】
前記したところでは、前記一方の推進体及び前記他方の推進体がそれぞれ先行の推進体及び後行の推進体である例について説明したが、逆に、後行の推進体及び先行の推進体からなるものとすることができる。
【0047】
また、前記したところでは、両穴28の直径を第1のピン32の直径より大きいものとしたが、これに代えて、両穴28直径と第1のピン32の直径とを同じにし、かつ第1の貫通穴30を第1のピン32の直径より大きい円形穴や、前記可動部材の軸線方向に長い横断面形状を有する穴とすることができ、これによっても、可動部材26が推進体12の軸線方向にのみ移動可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る掘削装置をその側面から見た部分断面図である。
【図2】掘削装置をその低面から見た部分断面図である。
【図3】鉛直面内において揺動した状態にある掘削装置の側面から見た部分断面図である。
【図4】水平面内において揺動した状態にある掘削装置の側面から見た部分断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 掘削装置
12,14 推進体
16 継手
22 推進体の中空部
26 可動部材
28,42 穴
30,44 第1及び第2の貫通穴
32,46 第1及び第2のピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小口径トンネルを形成するために地中に推進される掘削装置であって、
直列に配置された複数の推進体と、
互いに隣接する両推進体を相互に接続する継手であって一方の推進体に対する他方の推進体の相対的な進退と相対的な揺動とを許す継手とを含む、掘削装置。
【請求項2】
前記継手は、両推進体に設けられ互いに他の一方の推進体に向けて開放する2つの中空部内に保持された可動部材を備え、前記可動部材は前記一方の推進体に対して該推進体の軸線方向にのみ移動可能であり、また前記他方の推進体に対して該推進体の軸線に直交しかつ互いに直交する2つの軸線の周りにそれぞれ揺動可能である、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記継手は、前記一方の推進体に設けられ該推進体の中空部に連なる2つの穴と、前記可動部材に設けられその軸線に直交して伸びる第1の貫通穴とに通された第1のピンを備え、
前記2つの穴及び前記第1の貫通穴のいずれか一方が、前記第1のピンの前記一方の推進体の軸線方向への相対移動を許す、請求項2に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記継手は、前記他方の推進体に設けられ該推進体の中空部に連なる2つの穴と前記可動部材に設けられその軸線に直交して伸びる第2の貫通穴とに通された第2のピンと、
前記第2のピンの周面とこれを取り巻く前記第2の貫通穴の周壁とに設けられた球面対偶とを備える、請求項2又は3に記載の掘削装置。
【請求項5】
前記一方の推進体及び前記他方の推進体は、それぞれ、前記掘削装置の推進方向に関して先行の推進体及び後行の推進体をなす、請求項1に記載の掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−38460(P2008−38460A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214053(P2006−214053)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000214847)長野油機株式会社 (10)
【出願人】(504371147)株式会社進日本工業 (11)
【Fターム(参考)】