説明

小型データ入力装置とメニュー選択方法

【課題】狭い指運動の範囲で、正確に多様の指示が入力できること。
【解決手段】指から加わる力を受け止める操作部材と、指から前記操作部材に加わる力の重心位置を検出する加圧位置検出手段と、指が前記操作部材に加圧しながら移動する時に、加圧を開始してから加圧を終了するまでの間に指が移動した方向を検出する移動方向検出手段と、指が前記操作部材に加圧するときに加圧開始位置に関連付けられたメニューを加圧中にディスプレイに継続的にポップアップ表示し、加圧を終了するときにポップアップを終了するメニューポップアップ手段と、前記ポップアップメニュー内でフォーカスの当たる項目をハイライト表示するメニュー項目ハイライト手段と、前記移動方向検出手段によって検出される加圧中の指の移動方向に従って、メニュー内のフォーカスを対応する方向の項目に移動するメニューフォーカス制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器に文字や指令を入力する際のマルチモーダル・ユーザインターフェイス技術に係り、特に視覚・聴覚・触覚を総合的に利用してユーザ操作を補助する小型で比較的簡単な機構で実現することのできるデータ入力装置とメニュー選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡単な操作でコンピュータに情報を入力する技術が提案されている。一般に、一本指で多様な情報を入力するには、指先の下降位置と上昇位置を組み合わせて入力する情報を指定する方式が有効である。(特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、装置を小型化するために指の運動範囲が狭くなると、狭い運動範囲内で接近した下降位置と上昇位置を正確に把握することは困難である。
【0004】
特にタッチパッドやタッチディスプレイなどのフラットな表面上で指を動かす場合には、触覚的な手掛かりが全くなく、画面上に表示されるカーソルの移動を視覚的に確認しながら操作せざるを得ずに、視覚的な注意の負荷が大きくなり、操作能率が低下すると共に誤入力も増えてしまう。
【0005】
この問題を解決するため、指先の下降位置と上昇位置とを組み合わせて入力する情報指定する際に、指先の位置に応じて異なる触覚刺激を加えることで、下降位置と上昇位置を触感の差異により明瞭に把握できるようにした方式が考案され、狭い運動範囲で触感を頼りに素早く指を動かしながら明瞭に指位置を把握して正しく入力を行えるようになったが、機構が複雑であった。(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、カーソルキーの形状や大きさを方向ごとに変えて触覚により区別できるようにする方式や指先接触部にボール状突起を複数個配列して、指先がボール状突起配列の上を円滑に移動しながらボール状突起配列の凹凸の触覚情報を手がかりに情報を入力する方式も提案されている。(特許文献4〜6参照)。
【0007】
しかしながら、これらの方式を、タッチディスプレイやタッチパネルに導入することは困難であった。
【特許文献1】特開平11−224161号公報
【特許文献2】実開平5−55222号公報
【特許文献3】特開2002−278694号公報
【特許文献4】特開平3−90922号公報
【特許文献5】特開平11−353091号公報
【特許文献6】特開2001−166871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、従来のタッチパッドやタッチディスプレイの使用法や構成を工夫して、狭い指運動の範囲で、正確に多様の指示を入力することのできる小型のデータ入力装置とメニュー選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係わるデータ入力装置は、指から加わる力を受け止める操作部材と、指から前記操作部材に加わる力の重心位置を検出する加圧位置検出手段と、指が前記操作部材に加圧しながら移動する時に、加圧を開始してから加圧を終了するまでの間に指が移動した方向を検出する移動方向検出手段と、指が前記操作部材に加圧するときに加圧開始位置に関連付けられたメニューを加圧中にディスプレイに継続的にポップアップ表示し、加圧を終了するときにポップアップを終了するメニューポップアップ手段と、前記ポップアップメニュー内で選択対象項目すなわちフォーカスの当たる項目をハイライト表示するメニュー項目ハイライト手段と、前記移動方向検出手段によって検出される加圧中の指の移動方向に従って、メニュー内のフォーカスを対応する方向の項目に移動するメニューフォーカス制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
従来のタッチパッドやタッチディスプレイでも、上記手段を備えてはいるが、本発明では、装置のコストを下げるために簡易なスイッチ機構によって前記の「加圧位置」と「移動方向」を検出する加圧位置検出手段と移動方向検出手段を与え、またこの簡易な構成の範囲で、多様な情報を入力するためのメニュー制御手段(メニューポップアップ手段、メニューフォーカス制御手段、メニュー項目ハイライト手段、及び、メニューデザイン)を与える。従来のタッチパネルやタッチディスプレイは変形しないソリッドな構造を持つため、操作中に触覚手掛かりが全くなかったが、本発明の簡易化された加圧位置検出手段と移動方向検出手段では、装置内に物理的に動く部分があるため、クリック感などの触覚手掛かりを与えることができる。なおコストを下げる必要がない場面でも、従来のタッチパッドやタッチディスプレイを使いながら、本発明で与えるメニュー制御手段を用いると、多様な情報を容易に入力できるようになる。
【0011】
本発明では、階層化されたメニュー構造において、フォーカスをあてたメニュー項目を中心に指の移動方向によって定まる一のメニュー項目を選択し、指の加圧状態の変化や別に設けた確定用ボタンの操作によって、当該選択を有効にする。
【0012】
ここで、「ハイライト表示」は、フォーカスされていることを識別可能であれば足りる趣旨である。
【0013】
上記の加圧位置検出手段は、指位置を光の反射やタッチパネル等で検出することによって、操作部材に接近または接触する位置を検出する接触位置検出手段に置き換えることができる。
【0014】
誤操作、誤動作を防止するために、好ましくは、指が前記操作部材に加圧または接触しながら移動する時に、加圧または接触を終了してから加圧または接触を開始するまでの時間間隔が所定間隔以下である場合に、この加圧または接触の終了と開始を無効として、連続的に加圧または接触が行われていたと見なすチャタリング防止手段を備え、また、移動方向検出手段が指の移動方向を検出する際に、指の移動量が適切な量に到達したことを音や振動で通知する手段を備えるようにするとよい。
【0015】
より好ましくは、指が前記操作部材に加圧または接触しながら移動する時に、前記移動方向検出手段が、加圧または接触を開始してから加圧または接触を終了するまでの間に、移動方向の反転を所定回数以上計測したときに、加圧または接触開始からその時点までの入力をキャンセルし、加圧または接触開始以前の入力状態に復帰する手段を備える。
【0016】
すなわち、上記の加圧位置検出または接触位置検出と移動方向検出の組合せでメニュー項目の選択を行うと共に選択されたメニュー項目を表示し、コンピュータは加圧を解除した時または別に設けた確定用ボタンを操作したときにその選択を実行するようにする。一方、加圧したままの状態で一定時間内に移動方向の変化が所定回数あった場合は選択をキャンセルする。これにより、ユーザは、誤選択を直感的な方法で簡単にキャンセルして再選択を行なうことができる。
【0017】
本発明に係わるデータ入力装置は、加圧位置検出手段または接触位置検出手段によって検出される指位置に基づき、ディスプレイ内で指の下に隠れてしまう隠蔽部位を判定し、前記隠蔽部位を避けて前記ポップアップメニューを表示するメニューポップアップ位置制御手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明では、指操作時に指に隠れる部分あるいは当該部分以外のエリアを予め指定してメニュー項目の表示位置を設定しておいて、各表示位置にソフトウェアないし機能ごとに定まる具体的メニューを動的に割り付ける。
【0019】
また、本発明に係わるデータ入力装置は、前記メニューポップアップ手段によってポップアップ表示するメニューを、3行3列に並べた9個の項目によって構成し、また前記移動方向検出手段によって、前後左右斜めの少なくとも8方向の指の移動方向を区別し、前記3行3列の項目のメニュー内で指の運動方向に対応した方向にある項目にフォーカスを移動することを特徴とする。
【0020】
本発明では、加圧位置に応じてポップアップ表示したメニュー内で、中心位置から指の移動方向へメニューフォーカスを移動し、加圧状態または接触状態の変化や別に設けた確定用ボタンの操作によってフォーカスを当てたメニュー項目を選択確定し、必要に応じてこの選択したメニュー項目に応じた下位のメニューを逐次選択可能にする。
【0021】
本発明の適用例として、QWERTYキーボードの英字アルファベット配列を左部、中部、右部の3つのエリアに分割し、これらの各エリアの英字アルファベットの配列を近似するように、英字アルファベットを3行3列の項目の配列として並べて、これを前記メニューポップアップ手段によってポップアップ表示するメニューとして用い、前記加圧位置が、左位置、右位置、中央位置のいずれにあるのかに応じて、前記左部、中部、右部の各エリアに対応した文字配列をポップアップ表示することができる。
【0022】
好ましくは、前記加圧位置または接触位置検出手段として、指が前記操作部材を加圧する時の静電容量、あるいは抵抗、あるいは電極間の導通関係、あるいは圧電素子の電圧の変化に基づき、加圧位置または接触位置を検出するようにすると良い。これにより、簡単な構成で加圧位置または接触位置の検出を行うことができる。
【0023】
また、前記操作部材としては、次の1〜5のいずれかの手段を採ると良い。
1. 所定の方向に回転すると共に回転方向と直交する方向へ揺動する回転体を用いて、前記運動方向検出手段として、前記回転方向を検出する手段と前記揺動方向を検出する手段を組み合わせて使用する。
2. 前後方向に回転すると共に左右方向に平行移動する回転体を用いて、前記運動方向検出手段として、回転体の回転方向に基づき指の前後方向の運動を検出し、回転体の平行移動の方向に基づき、指の左右方向の運動を検出する手段を用いるようにする。
3. ディスプレイ前面に設置した透明板を用い、前記運動方向検出手段として、前記透明板上を滑る指の運動方向を、静電容量、あるいは抵抗、あるいは電極間の導通関係、あるいは圧電素子の電圧の変化に基づき、検出する手段を用いる。
4. ディスプレイ周辺に設置した板を用い、前記運動方向検出手段として、前記板上を滑る指の運動方向を、静電容量、あるいは抵抗、あるいは電極間の導通関係、あるいは圧電素子の電圧の変化に基づき、検出する手段を用いるようにしても良い。
5. ディスプレイ前面に前後左右に揺動可能に設置した透明板を用い、前記運動方向検出手段として、前記透明板の揺動方向を検出する手段を用いる。
6. ディスプレイ周辺に揺動可能に設置した板を用い、前記運動方向検出手段として、前記板の揺動方向を検出する手段を用いる。
【0024】
本発明に係わるメニュー選択方法は、指から加わる力を受け止める操作部材を有するデータ入力装置を用いてコンピュータのディスプレイ上に表示されたメニューを選択する方法であって、指から前記操作部材に加わる力の重心位置を検出するステップと、指が前記操作部材に加圧しながら移動する時に、加圧を開始してから加圧を終了するまでの間に指が移動した方向を検出する移動方向検出ステップと、指が前記操作部材に加圧するときに加圧開始位置に関連付けられたメニューを加圧中にディスプレイに継続的にポップアップ表示し、加圧を終了するときにポップアップを終了するステップと、前記ポップアップメニュー内でフォーカスの当たる項目をハイライト表示すると共に前記移動方向検出ステップによって検出される加圧中の指の移動方向に従って、メニュー内のフォーカスを対応する方向の項目に移動するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明では、指操作による加圧状態と、移動方向との組合せによって、簡単な機構で階層的なメニューを効率よく選択可能にする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、狭い指運動の範囲で、正確に多様の指示を入力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の実施の形態によるデータ入力装置1のブロック図である。ここで、データ入力装置1は、指操作情報を入力する入力部10、入力した情報をもとにメニュー項目などディスプレイに表示するべき情報の処理を行う処理部30、処理された情報を表示する表示部20、および、データを記憶する記憶部40で構成されている。
【0028】
処理部30は、入力部10から取得する加圧状態および移動方向の信号のチャタリングを除去するチャタリング防止手段35、加圧状態データおよび移動方向データをもとに、メニューのポップアップ表示を制御するメニューポップアップ手段31、ポップアップメニュー内でフォーカスの当たる項目をハイライト表示するメニュー項目ハイライト手段32、メニュー内のフォーカスを対応する方向の項目に移動するメニューフォーカス制御手段33、メニューのポップアップ位置を可変にするメニューポップアップ位置制御手段34を備えている。各手段31から35は、CPUの機能として実現可能である。勿論、チャタリング防止手段35など、ハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0029】
図2は、データ入力装置1の外観図である。ここで、入力部10は、データ入力装置1の下側に配置され、その上の表示部20の画面下部には、入力部10の加圧箇所に対応してメインメニューが表示されている。
【0030】
入力部10は、指操作による圧力を受け止める操作部材11、指で加圧することによって少なくとも左、中央、右の3箇所の加圧重心位置を検出する加圧位置検出手段12を備え、さらにその下に前後、左右、斜めに移動可能なスライド手段13を配置している。
【0031】
図2に示す入力部10の表面最上部には操作部材11を備え、ユーザはこの操作部材を加圧および移動させて情報を入力する。
【0032】
図2(b)は、ユーザが入力部10の操作部材11の左端を押下して、Menu Lを選択し、:左方向へスライドさせるときの図である。左端を押下したときに、Menu LのサブメニューSubmenu L1〜L9が3行3列でポップアップ表示され、中央のL5が選択候補としてフォーカスされハイライト表示されている。この状態で、加圧状態を保ちつつ、操作部材11を左方向へ移動させると、これに伴ってフォーカス位置がSubmenu L5からL4へ移動する。
【0033】
図2(c)、(d)は、QWERTYキーボードの英字アルファベット配列を左、中央、右の3グループに分けたものである。入力部10の操作部材11の左端を加圧し、右方向に移動させると、アルファベット「D」がハイライト表示される。
【0034】
図3は、入力部10の加圧位置検出手段12の構成の一例を示す正面図である。
【0035】
加圧位置検出手段12は、基台51の左右に配置した一対の導体62a、62b,各導体62a、62bの上方に微少間隙を存して設けた3層構造のフィルムスイッチ63a、63b,このフィルムスイッチの上方から面タッチする上下可動な操作部材11側の押圧部64a、64bとで形成される。なお、符号65a、65bは操作部材11を常時上方へ付勢するコイルばねを示す。
【0036】
本実施の形態では、図3(b)のように左方側に押し込み力を作用させることで、操作部材11は左方に傾くと同時に、左方に位置するフィルムスイッチ63aが押圧部64aで押し込まれ、基台51の導体62aに電気接触して導通状態になる。これにより、操作部材11が左方に傾斜したことが検出される。また、同図(c)のように操作部材11の中央部位に力を作用させると、操作部材11が基台51と略平行に下方移動する。これにより、左右のフィルムスイッチ63a、63bが同時に電気接触して、操作部材211が全体として下降変位したことが検出される。
【0037】
図3(d)は、右側を押圧したときの作用図である。同図(b)と対称的に右側のフィルムスイッチ63bが押し込まれ、右導体62bが電気接触して導通する。
【0038】
移動方向検出手段13は、加圧位置検出手段12の基台51下側に設けられており、図3(b)〜(d)のいずれかの加圧状態のままスライド可能に構成されている。
【0039】
図4(a)は、移動方向検出手段13の平面図である。同図に示すように、横方向(X方向)移動量検出手段13aと縦方向(Y方向)移動量検出手段13bを有している。なお、横方向、縦方向は便宜上定めたもので、直角な2次元座標における夫々の動きを計測することができれば良い。支持手段13cは、その上に接触配置される加圧検出手段12の基台51を安定して支えるためのものである。移動量の検出機能は、下側のローラ支軸72bにのみ設けられている。
【0040】
縦方向移動量検出手段13bは、ローラ支軸72bと一体となって回転するローラ71bを有し、ローラ支軸72bは支持部材78b、79bの穴に軸を中心に回転可能に取り付けられている。また、ローラ71bは、バネ76b、77bによって中央位置に向けて付勢されている。ローラ支軸72bの一端には六角形の導体で形成されたカム部材73bが取り付けられており、その角の頂点部分は、回転時に、先端部分が導体で形成された接触子74b、75bと接触する。カム部材73b、ローラ支軸72b、支持部材79bは、それぞれ導体で形成され、電気的に接続されている。図4(b)は、同図(a)の正面図である。横方向移動量検出手段13aも上記と同様な機構71a〜79aを有する。
【0041】
ここで、図5を用いて、移動量の検出方法について説明する。
図5(a)は、横方向移動量検出手段13aおよび縦方向移動量検出手段13bの構成を示す正面図、同図(b)はその平面図、同図(c)はそれを右側面から見た図である。
【0042】
いま、縦方向移動量検出手段13bを代表して説明すると、ローラ71bの回転に伴って、ローラ支軸72bを通して繋がるカム部材73bも回転する。これにより六角形の頂点部分は、接触子74b、75bと周期的に接触する。接触子74b、75bは、カム部材73bに対して位相が異なるように(たとえば60度程度)取り付けられている。この状態で、図面の下から上方向に基台51が移動すると、図5(c)の右向きにカム部材73bが回転すると、この回転に伴って、A(支持部材79b)−B(接触子74b)間が周期的に導通して、パルスを発生する。また、A(支持部材79b)−C(接触子75b)も位相差をもって周期的にパルスを発生する。同図(e)、(f)は、それぞれA−B間、A−C間の導通状況を示している。基台51が上から下方向へ移動すると、逆にA−C間の位相がA−B間の位相に比べて早くなる。
このように両パルスの位相差を180度からずらすことによって、移動方向が分かり、パルス数をカウントすることによって、移動量を把握することができる。
【0043】
横方向移動量検出手段13aについても同様に移動方向と移動量を把握することができる。
【0044】
なお、加圧位置検出手段12の基台51が縦方向の移動時に同時に横方向(たとえば左方向)へも移動した場合は、図5(d)に示すように、ローラ71bがローラ支軸72bに沿ってスライドする。このとき、バネ76bは圧縮変形し、加圧が解除されたときに中央へ復帰するための付勢力となる。図4(c)、(d)に、このときの各ローラ71a〜71cの動きを示す。
【0045】
以上、横方向移動量検出手段13aと縦方向移動量検出手段13bの夫々の移動方向と移動量をもとに、任意の移動方向と移動量(すなわち2次元ベクトル量)を把握することができる。
【0046】
この、加圧位置および加圧状態データ、および移動方向、移動量データを用いて次の処理によって、メニュー項目の効率的な選択を実行する。
【0047】
次に上記の構成を有するデータ入力装置1の動作を図6のフローチャートと図2の画面表示例を用いて説明する。
【0048】
図6は、データ入力装置1の処理部30の処理手順を示すフローチャートである。ここで、処理部は、加圧位置検出手段12から送られてきた信号をチャタリング防止手段35によってチャタリングを除去した後のデータを用いて、まず加圧あり否かを判定する(S101)。そして、加圧ありの場合は(S101で「YES」)、加圧位置を取得し(S102)、図7に示すメニュー選択テーブル41を参照してその加圧位置に対応するサブメニュー項目の一覧をポップアップ表示させる。そして、加圧位置に対応するサブメニュー項目をハイライト表示する(S104)。
【0049】
たとえば、図2(b)に示す入力部10の左端(Menu Lの位置)が押された場合は、SubMenu L1〜L9のサブメニュー群が3行3列でポップアップ表示され、その中央位置であるSubMenu L5がハイライト表示される。次に加圧状態が解除されたか否かを判定して(S105)、解除されていない場合は(S105で「NO」)、移動方向検出手段13からチャタリング防止手段35を介して入力された移動方向データを入力して、移動方向が変化したか否かを判定する(S108)。移動方向が変化し、それが往復運動でない場合は(S109で「NO」)、ステップS104に戻って、メニュー選択テーブル41を参照して選択されたその加圧位置、移動位置のサブメニュー項目をハイライト表示する。
図2(b)の例で、操作部材11の左端が押された状態で左方向にスライドした場合、すなわち右水平方向を0°としたとき180°の方向に移動したことになるので、SubMenu L4が選択されハイライト表示される。
【0050】
この状態で加圧が解除されると(S105で「YES」)、ハイライト表示されたサブメニュー項目が選択・実行され(S106)、ポップアップ表示が終了する(S107)。
【0051】
一方、ステップS109で、往復運動の場合など所定の移動パターンに該当したときは選択されたサブメニュー項目をキャンセルして(S110)、ポップアップを終了する(S107)。これにより、選択の取消を容易に行うことができる。
【0052】
なお、図6は加圧解除によって選択されたサブメニューを実行するようにしたが、移動方向検出手段13の下に実行ボタンを配置し、操作部材11をさらに押し込むことによってこの実行ボタンをON状態にすることによって実行させるようにしても良い。
また、図6は常時実行されるルーチンとして示しているが、加圧状態がOFFからONになったときに起動されるイベント起動ルーチンとして実現しても良い。
【0053】
以上、データ入力装置10の基本的な構成と動作について説明した。
次に、変形例を述べる。
図2は、表示部20の手前(ユーザに近い方向)に入力部10を配置した構成としたが、タッチパネルによって両者を一体として実現することもできる。
【0054】
図8は、タッチパネルによってディスプレイ上に表示されたメニューを選択するときの動作説明図である。各メニュー項目には、その表示位置とサブメニュー群が表示される位置とが関連付けられており、その位置にポップアップ表示される。ポップアップ表示位置は、メインメニュー項目の表示位置に対して奥側(ユーザから遠い方向)、メインメニュー項目の画面左右の表示位置に対して反対側、すなわち指操作によって指で隠蔽されない位置に表示されるようになっている。このとき、表示可能な領域を算出し、サブメニュー群の全体の表示縮尺を当該領域に納まるように調整する機能を設けると良い。
【0055】
また、移動方向の検出方式については、上述した方式のほか、ダイヤル(操作部材11)が前後に回転し、左右に揺動する方式(図9(a))、前後左右に揺動するスライドスイッチ方式(同図(b))、ディスプレイ前面の透明板が前後左右に揺動する方式(同図(c))、ディスプレイ周辺部が前後左右に揺動する方式(同図(d))がある。
【0056】
スライドスイッチの揺動の検出方式の一例を図14に示す。
加圧位置検出手段12の基台51の下にリンク部材95a、95bを設け、基台96上で各リンク部材95a、95bの内側近傍にスイッチ97a、97bを配置する。この状態で、たとえば、図14(b)に示すように、基台51が右側へスライドすると、スイッチ97が左側のリンク部材95aに押されてONする。これにより右方向へのスライドしたことを検出することができる。同様に左方向へのスライドも検出することができる。
【0057】
たとえば、操作部材の左側を加圧し、右方向へスライドさせると、左押圧部64aによって、左フィルムスイッチ62aがONし、左リンク部材95aに押されて左スイッチ97aがONするので、左側加圧と右方向へのスライドを検知することができる。また前後方向への回転はローラ98の回転を検知することによって把握することができる。
【0058】
操作部材11に印加される圧力の重心位置については、図10に示すように、操作部材下に複数の押圧部64を設け、その相対的な圧力によって重心位置を求めることができる。また、図11に示すように、支柱91を介して、フィルムスイッチを配置し、押圧部によって、スイッチをONして、圧力を検出する方式や、図12に示すように、接点の電気的接触や静電容量の変化によって圧力位置を識別する方式がある。
【0059】
指の重心位置については、上記のような加圧型のほか、図13に示すように、タッチパッド等のように接近のまたは接触による静電容量等の電気量の変化や発光した光が指によって反射する光の受光量を測定することによって測定することができる。この接触または接近位置を測定し、接触してから離れるまでの指の移動方向、移動量を求めることによって、上記図6に示した手順でメニュー項目を選択するようにしてもよい。
【0060】
また、図6の処理手順は、加圧解除によって、選択された項目を実行するようにしたが、図15に示すように、加圧解除した後に(S205で「YES」)、選択されたサブメニュー項目を実行対象であることを識別可能に表示し(S207)、所定時間以内にキャンセル動作があれば選択を解除し、キャンセル動作が無ければ選択されたメニュー項目を実行するようにしても良い。このようにすれば、加圧位置解除時の不要な移動方向動作による間違ったメニュー選択を取り消すことができる。勿論、加圧解除前の所定時間以内の移動方向の入力は受け付けないようにしたり、あるいは選択後に装置1の裏面に配置した実行ボタンを人差し指で押下することによって選択を実行するようにしてもよい。
【0061】
本実施の形態によれば、加圧位置の検出と、移動方向の検出によって多様な指示を簡単な操作で入力することができる。また、加圧位置の検出の後に移動方向の検出を行い、この処理の過程で往復運動の検出を行って往復運動検出時は選択キャンセルをするようにしたので、簡単な機構と処理手順で操作性に優れたメニュー選択方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態によるデータ入力装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態によるデータ入力装置のメニュー項目表示の動作を説明するための装置平面図である。
【図3】図1の加圧位置検出手段12の正面図である。
【図4】図1の移動方向検出手段13の動作を説明するための平面図(図4(a)、(c))と正面図(図4(b)、(d))である。
【図5】図1の移動方向検出手段13の移動量データを検出する方式の説明図である。
【図6】図1の処理部30の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図1のメニュー選択テーブル41のデータ構成図である。
【図8】本発明の他の実施例によるメニュー項目選択方法の説明図である。
【図9】本発明の他の実施例によるメニュー項目選択方法の説明図である。
【図10】本発明の他の実施例による加圧位置検出手段12の作用説明図である。
【図11】本発明の他の実施例による加圧位置検出手段12の作用を説明するための正面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例による加圧位置検出手段12の作用を説明するための正面図である。
【図13】本発明の接触位置検出手段14の作用説明図である。
【図14】本発明の他の実施例による加圧位置検出手段と移動方向検出手段の動作を説明するための正面図である。
【図15】本発明の他の実施例による処理部30の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 データ入力装置
10 入力部
11 操作部材
12 加圧位置検出手段
13 移動方向検出手段
13a 横方向移動量検出手段
13b 縦方向移動量検出手段
13c 支持手段
20 表示部
30 処理部
31 メニューポップアップ手段
32 メニュー項目ハイライト手段
33 メニューフォーカス制御手段
34 メニューポップアップ位置制御手段
35 チャタリング防止手段
40 記憶部
41 メニュー選択テーブル
51、80、96 基台
62a、62b 導体
63a、63b フィルムスイッチ
64a、64b 押圧部
65a、65b コイルばね
71a〜71c、98 ローラ
72a〜72c ローラ支軸
73a、73b カム部材
74a、74b、75a、75b 接触子
76a〜76c、77a〜77c バネ
78a〜78c、79a〜79c 支持部材
95a、95b リンク部材
97a、97b スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指から加わる力を受け止める操作部材と、
指から前記操作部材に加わる力の重心位置を検出する加圧位置検出手段と、
指が前記操作部材に加圧しながら移動する時に、加圧を開始してから加圧を終了するまでの間に指が移動した方向を検出する移動方向検出手段と、
指が前記操作部材に加圧するときに加圧開始位置に関連付けられたメニューを加圧中にディスプレイに継続的にポップアップ表示し、加圧を終了するときにポップアップを終了するメニューポップアップ手段と、
前記ポップアップメニュー内でフォーカスの当たる項目をハイライト表示するメニュー項目ハイライト手段と、
前記移動方向検出手段によって検出される加圧中の指の移動方向に対応する方向に、メニュー内のフォーカスを移動するメニューフォーカス制御手段と、
を備えたことを特徴とするデータ入力装置。
【請求項2】
指が接触する操作部材と、
指が前記操作部材に接近または接触する位置を検出する接触位置検出手段と、
指が前記操作部材に接触しながら移動する時に、接触を開始してから接触を終了するまでの間に指が移動した方向を検出する移動方向検出手段と、
指が前記操作部材に接触するときに接触開始位置に関連付けられたメニューを接触中にディスプレイに継続的にポップアップ表示し、接触を終了するときにポップアップを終了するメニューポップアップ手段と、
前記ポップアップメニュー内でフォーカスの当たる項目をハイライト表示するメニュー項目ハイライト手段と、
前記移動方向検出手段によって検出される接触中の指の移動方向に対応する方向に、メニュー内のフォーカスを移動するメニューフォーカス制御手段と、
を備えたことを特徴とするデータ入力装置。
【請求項3】
指が前記操作部材に加圧または接触しながら移動する時に、加圧または接触を終了してから加圧または接触を開始するまでの時間間隔が所定間隔以下である場合に、この加圧または接触の終了と開始を無効として、連続的に加圧または接触が行われていたと見なすチャタリング防止手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ入力装置。
【請求項4】
移動方向検出手段が指の移動方向を検出する際に、指の移動量が適切な量に到達したことを音や振動で通知する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項5】
指が前記操作部材に加圧または接触しながら移動する時に、前記移動方向検出手段が、加圧または接触を開始してから加圧または接触を終了するまでの間に、移動方向の反転を所定回数以上計測したときに、加圧または接触開始からその時点までの入力をキャンセルし、加圧または接触開始以前の入力状態に復帰する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項6】
前記加圧または接触位置検出手段によって検出される指位置に基づき、ディスプレイ内で指の下に隠れてしまう隠蔽部位を判定し、前記隠蔽部位を避けて前記ポップアップメニューを表示するメニューポップアップ位置制御手段
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項7】
前記メニューポップアップ手段によってポップアップ表示するメニューを、3行3列に並べた9個の項目によって構成し、また前記移動方向検出手段によって、前後左右斜めの8方向の指の移動方向を識別し、前記3行3列の項目のメニュー内で、指の運動方向に対応した方向にある項目にフォーカスを移動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項8】
QWERTYキーボードの英字アルファベット配列を左部、中部、右部の3つのエリアに分割し、これらの各エリアの英字アルファベットの配列を近似するように、英字アルファベットを3行3列の項目の配列として並べて、これを前記メニューポップアップ手段によってポップアップ表示するメニューとし、前記加圧位置が、左位置、右位置、中央位置のいずれにあるのかに応じて、前記左部、中部、右部の各エリアに対応した文字配列をポップアップ表示することを特徴とする請求項7に記載のデータ入力装置。
【請求項9】
前記加圧または接触位置検出手段として、指が前記操作部材を加圧または接触する時の静電容量、あるいは抵抗、あるいは電極間の導通関係、あるいは圧電素子の電圧の変化に基づき、加圧または接触位置を検出する手段を用いることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項10】
前記操作部材として、所定の方向に回転すると共に回転方向と直交する方向へ揺動する回転体を用いて、
前記運動方向検出手段として、前記回転方向を検出する手段と前記揺動方向を検出する手段を組み合わせて使用することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項11】
前記操作部材として、ディスプレイ前面に設置した透明板を用い、前記運動方向検出手段として、前記透明板上を滑る指の運動方向を、静電容量、あるいは抵抗、あるいは電極間の導通関係、あるいは圧電素子の電圧の変化に基づき、検出する手段を用いることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項12】
前記操作部材として、ディスプレイ周辺に設置した板を用い、前記運動方向検出手段として、前記板上を滑る指の運動方向を、静電容量、あるいは抵抗、あるいは電極間の導通関係、あるいは圧電素子の電圧の変化に基づき、検出する手段を用いることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項13】
前記操作部材として、ディスプレイ前面に前後左右に揺動可能に設置した透明板を用い、前記運動方向検出手段として、前記透明板の揺動方向を検出する手段を用いることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項14】
前記操作部材として、ディスプレイ周辺に揺動可能に設置した板を用い、前記運動方向検出手段として、前記板の揺動方向を検出する手段を用いることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のデータ入力装置。
【請求項15】
指から加わる力を受け止める操作部材を有するデータ入力装置を用いてコンピュータのディスプレイ上に表示されたメニューを選択する方法であって、
指から前記操作部材に加わる力の重心位置を検出するステップと、
指が前記操作部材に加圧しながら移動する時に、加圧を開始してから加圧を終了するまでの間に指が移動した方向を検出する移動方向検出ステップと、
指が前記操作部材に加圧するときに加圧開始位置に関連付けられたメニューを加圧中にディスプレイに継続的にポップアップ表示し、加圧を終了するときにポップアップを終了するステップと、
前記ポップアップメニュー内でフォーカスの当たる項目をハイライト表示すると共に前記移動方向検出ステップによって検出される加圧中の指の移動方向に従って、メニュー内のフォーカスを対応する方向の項目に移動するステップと、
を備えたことを特徴とするメニュー選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−272840(P2007−272840A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101236(P2006−101236)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進「機器の簡単確実な操作を実現するハプティックユーザインターフェースの研究開発」にかかる委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】