説明

小型入力デバイス

【課題】文字等の情報をペン等で入力する際に、そのペン等を持つ手の小指やその付け根部分等が検知されることなく、適正に入力することができる小型入力デバイスを提供する。
【解決手段】小型入力デバイスAは、縦10cm以下,横10cm以下の四角形状の入力用中空部Sを有する四角枠状の光導波路Wと、この光導波路Wの一辺の外側に設けられた制御手段Cとを備えており、これらは、入力用中空部Sを有する四角枠状の保持板30の表面に設けられているとともに、四角枠状の保護板40で覆われている。上記制御手段Cは、上記光導波路Wの複数の光出射用コアの端部に接続される発光素子5と、上記光導波路Wの複数の光入射用コアの端部に接続される受光素子6と、上記小型入力デバイスAの移動量を認識する光学式センサ7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な位置検出手段を備えた小型入力デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力デバイスとして、複数の発光素子および受光素子を備えた光学的位置検出装置(例えば、特許文献1参照)が提案されている。このものは、四角枠状に形成され、その四角枠を構成する一対のL字状部分の一方に、発光素子を複数並設し、他方に、上記発光素子に対向する受光素子を複数並設したものとなっている。そして、その四角枠状の光学的位置検出装置は、四角形のディスプレイの周縁に沿って設置され、その四角枠内でペンや指等を移動させることにより、文字等の情報を入力し、上記ディスプレイに表示することができるようになっている。すなわち、上記四角枠内でペンや指等を移動させると、上記発光素子からの光が上記ペンや指等により遮光され、その遮光を、上記発光素子に対向する受光素子が感知することにより、上記ペンや指等の軌跡(文字等の入力情報)を検知するようになっている。そして、その軌跡を信号として上記ディスプレイに出力するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3682109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記四角枠状の光学的位置検出装置は、上記ディスプレイの周縁に沿って設置されるため、上記四角枠内が広くなっている。そのため、上記四角枠内に文字等を上記ペン等で入力しようとすると、そのペン等の先端だけでなく、そのペン等を持つ手の小指やその付け根部分(小指球)等も、上記四角枠内において、上記ディスプレイの表面に接触する。この場合、上記四角枠内において、上記ディスプレイの表面に接触した部分全体が検知されるため、不要なもの(上記小指やその付け根部分等の検知情報)が上記ディスプレイに表示されるという問題がある。そこで、上記小指やその付け根部分等が上記ディスプレイの表面に接触しないようにして、上記ペン等で文字等を入力しようとすると、今度は、その文字等が乱れ、適正に入力することができないという問題が起こる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、文字等の情報をペン等で入力する際に、そのペン等を持つ手の小指やその付け根部分等が検知されることなく、適正に入力することができる小型入力デバイスの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の小型入力デバイスは、所定領域上を移動し、その領域内の所望の位置で停止し、その位置で情報を入力するための小型入力デバイスであって、縦10cm以下,横10cm以下の入力用中空部を有する枠状板と、この枠状板において互いに対向する一方の部分に設けられた発光手段と、上記枠状板の他方の部分に設けられ上記発光手段からの出射光を受光する受光手段と、上記枠状板に設けられた移動量認識手段とを備えているという構成をとる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の小型入力デバイスは、枠状に形成され、その枠内の入力用中空部が、縦10cm以下,横10cm以下と狭くなっているため、その入力用中空部内の領域に文字等の情報をペン等で入力する際に、そのペン等を持つ手の小指やその付け根部分等を、上記小型入力デバイスの表面または外側に接触させることができ、上記入力用中空部内に入らないようにすることができる。そのため、上記入力した文字等の情報を適正に検知し、不要なものは検知しないようにすることができる。しかも、本発明の小型入力デバイスは、小型であるため、持ち運び性に優れ、使用場所の選択幅が広い。さらに、本発明の小型入力デバイスは、移動量認識手段を備えているため、その小型入力デバイスを移動させても、その移動後の位置を認識することができ、前に入力した情報に対して所望する位置に、新たな情報を入力することができる。すなわち、本発明の小型入力デバイスは、上記のように入力用中空部が狭くても、上記移動量認識手段を備えているため、入力領域を広くとることができ、入力領域が固定されない。
【0008】
特に、上記発光手段が、発光素子と、この発光素子に接続された、光導波路の複数の光出射用コアとからなり、上記受光手段が、受光素子と、この受光素子に接続された、光導波路の複数の光入射用コアとからなり、上記光出射用コアの先端部と上記光入射用コアの先端部とが、上記枠状板の内側縁に位置決めされた状態で対向している場合には、上記枠状板上に上記光導波路が形成され、その光導波路は薄く形成することができるため、ペン等で入力する際に、本発明の小型入力デバイスが、入力の妨げにならず、そのペン等を持つ手を自然な位置に位置決めすることができ、入力し易くなっている。
【0009】
また、上記発光手段が、複数の発光素子からなり、上記受光手段が、複数の受光素子からなり、上記複数の発光素子と上記複数の受光素子とが、上記枠状板の内側縁に位置決めされた状態で対向している場合には、上記発光素子および上記受光素子がある程度厚みを有するため、本発明の小型入力デバイスも全体的にある程度厚く形成され、その小型入力デバイスを剛性および強度のあるものとすることができる。
【0010】
さらに、上記移動量認識手段が、上記枠状板の裏面から発した光の反射光を読み取ることにより上記小型入力デバイスの移動量を認識する光学式センサである場合には、移動量の認識を高精度に行うことができ、本発明の小型入力デバイスを移動した後の情報入力が、より高精度な位置に行うことができる。なお、上記光学式センサが発し読み取る上記光は、例えば、LED(発光ダイオード)の光,レーザ光等である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の小型入力デバイスの第1の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)は、上記小型入力デバイスの光導波路を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のX1−X1断面の拡大図であり、(c)は、(a)のX2−X2断面の拡大図である。
【図3】上記小型入力デバイスの移動例を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、上記小型入力デバイスの作製方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、上記図4に示す工程に続く小型入力デバイスの作製方法を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)〜(b)は、上記図5に示す工程に続く小型入力デバイスの作製方法を模式的に示す説明図である。
【図7】(a)は、上記図6に示す工程に続く小型入力デバイスの作製方法を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)のX4−X4断面図である。
【図8】上記図7に示す工程に続く小型入力デバイスの作製方法を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の小型入力デバイスの第2の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明の小型入力デバイスの第1の実施の形態を示す斜視図であり、図2(a)は、その平面図、図2(b)は、図2(a)のX1−X1断面の拡大図、図2(c)は、図2(a)のX2−X2断面の拡大図である。この実施の形態の小型入力デバイスAは、図1,図2(a)〜(c)に示すように、縦10cm以下,横10cm以下の四角形状の入力用中空部(窓部)Sを有する四角枠状の光導波路Wと、この光導波路Wの一辺の外側に設けられた制御手段Cとを備えており、これらは、上記入力用中空部Sを有する四角枠状の保持板(枠状板)30の表面に設けられているとともに、四角枠状の保護板40で覆われている。そして、上記制御手段Cは、上記光導波路Wの複数の光出射用コア2aの端部に接続される発光素子5と、上記光導波路Wの複数の光入射用コア2bの端部に接続される受光素子6と、上記小型入力デバイスAの移動量を認識する光学式センサ7とを備えている。
【0014】
上記光学式センサ7は、光を発し、その反射光を読み取ることにより上記小型入力デバイスAの移動量を認識するものであり、その移動量認識が可能となるよう、図2(c)に示すように、上記光学式センサ7が搭載されている回路基板8の部分および上記光学式センサ7の設置位置に対応する上記保持板30の部分に、貫通孔8a,30aが形成され、その貫通孔8a,30aを通して、上記保持板30の裏面から上記光学式センサ7が光を発し、その反射光を読み取るようになっている。なお、上記光学式センサ7は、図示のように1個でも、上記小型入力デバイスAの回動した角度を認識することはできるが、その角度の認識精度を向上させるために、それを2個用い、それらを距離をおいて配置し、それらが認識した移動量の値の差から角度を算出してもよい。
【0015】
さらに、上記制御手段Cは、上記小型入力デバイスAを制御するIC(図示せず),上記光導波路Wの入力用中空部S内の領域に入力した情報(ペン先等の移動軌跡の情報)を出力する出力モジュール(図示せず),電源となる電池(図示せず)等も備えている。そして、上記発光素子5,上記受光素子6,上記光学式センサ7,上記IC,上記出力モジュール,上記電池等は、回路基板8に搭載され、電気的に接続されている。
【0016】
上記四角枠状の光導波路Wについてより詳しく説明すると、その四角枠状の光導波路Wは、図2(a),(b)に示すように、その四角枠形状の各辺の帯状の光導波路部分を個別に作製し、それを四角枠状に接続したものとなっている。この実施の形態では、上記帯状の各光導波路部分の両端縁が段部に形成されており、その段部を利用して位置決めした状態で、隣接し合う光導波路部分と光導波路部分とが接続されている。また、上記帯状の各光導波路部分は、アンダークラッド層1と、このアンダークラッド層1の表面に所定パターンに形成されたコア2a,2bと、このコア2a,2bを被覆した状態で、上記アンダークラッド層1の表面に形成されたオーバークラッド層3とからなっている。なお、上記アンダークラッド層1は、上記四角枠状の保持板30の表面に貼着されている。
【0017】
そして、四角枠状に形成された上記光導波路Wは、そのアンダークラッド層1の四角枠を構成する一対のL字状部分の一方の表面に、光出射用のコア2aが複数に分岐された状態で形成され、他方の表面に、光入射用の複数のコア2bが並列状態で形成されている。各コア2a,2bの先端部は、上記一対のL字状部分の内側縁(四角枠の内周縁)に位置決めされ、光出射用のコア2aの先端部と光入射用のコア2bの先端部とが対向した状態に形成されている。さらに、上記光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを被覆した状態で、上記アンダークラッド層1の表面に、オーバークラッド層3が四角枠状に形成されている。この実施の形態では、上記四角枠の内周縁に位置決めされているコア2a,2bの先端部が、平面視形状が略1/2円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部に形成され、そのレンズ部を被覆するオーバークラッド層3の先端部が、側断面形状が略1/4円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部3aに形成されている。なお、図2(a)では、コア2a,2bを鎖線で示しており、鎖線の太さがコア2a,2bの太さを示している。また、図2(a),(b)では、コア2a,2bの数を略して図示している。
【0018】
そして、上記小型入力デバイスAにおいて、上記発光素子5からの光Hは、上記光出射用のコア2aを通り、その先端のレンズ部を経て、それを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの表面から出射される。これにより、その光Hは、上記四角枠状の光導波路Wの入力用中空部S内の領域において、格子状に走った状態となる。その格子状に走る光Hは、上記光出射用のコア2aの先端のレンズ部およびそれを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの屈折作用により、発散が抑制されている。そして、この状態で、光導波路Wの入力用中空部S内の領域でペン等を移動させることにより、文字,図,印等の情報を入力することができる。すなわち、上記光導波路Wの入力用中空部S内の領域で上記ペン等を移動させると、上記格子状に走る光Hは、上記ペン等の先端(ペン先等)により遮光され、その遮光が上記受光素子6により感知されることにより、上記ペン等の先端の軌跡(文字等の入力情報)が検知される。
【0019】
このような小型入力デバイスAは、例えば、パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という)とともに使用される。すなわち、上記パソコンのディスプレイに資料等の情報を表示し、その表示された情報に、文字,図,印等の情報を加えたい場合、上記小型入力デバイスAをテーブル上やテーブル上の紙上等に載置し、その小型入力デバイスAの入力用中空部S内の領域に、上記文字等の情報をペン等で入力する。これにより、そのペン等の先端部の軌跡が、上記小型入力デバイスAにより、検知されるとともに、信号として上記パソコンに無線または接続ケーブルで伝達され、上記ディスプレイに表示することができる。これにより、上記ディスプレイには、上記資料等の情報に、上記小型入力デバイスAで入力した文字等の情報が重ね合わさった状態で表示される。
【0020】
また、上記小型入力デバイスAを上記テーブル上等でスライド移動させると、その移動量が、上記光学式センサ7により、認識されるとともに、上記パソコンに無線または接続ケーブルで伝達される。そして、その移動後の入力用中空部Sの位置が、上記ディスプレイにも表示され、その移動後の新たな位置で、上記のようにして、文字等の情報をペン等で入力することができる。
【0021】
例えば、上記小型入力デバイスAの入力用中空部Sが、図3に示すように、横方向にX1 ,縦方向にY1 だけ平行移動するとともに、角度θだけ回動した場合、移動後のペン先Pの(X,Y)座標は、横方向Xが下記の式(1)、縦方向Yが下記の式(2)として認識され、その座標に対応して、上記ディスプレイに表示される。したがって、移動後の新たな位置で、新たな情報を入力することができ、上記小型入力デバイスAの入力用中空部S自体は狭いが、上記光学式センサ(移動量認識手段)7と組み合わせることにより、ディスプレイ画面全体を有効に利用することができる。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで使用される上記パソコンについて説明すると、上記小型入力デバイスAの使用開始時等において、その小型入力デバイスAの入力用中空部Sに対応する、ディスプレイでの表示部分が、上記小型入力デバイスAでのスイッチ操作またはパソコンでのキーボード操作等により、上記ディスプレイでの所定の基準位置に位置決め(リセット)されるようになっている。また、上記小型入力デバイスAの入力用中空部Sで入力した文字等を、その入力した位置に対応するディスプレイの位置に表示させるために、小型入力デバイスAの入力用中空部S内の領域の座標を、ディスプレイの画面の座標に変換し、小型入力デバイスAで入力した文字等をディスプレイに表示するソフトウェア(プログラム)が、上記パソコンに組み込まれている。
【0024】
なお、上記資料等の情報は、通常、上記パソコン内のハードディスクや外部のUSBメモリ等の情報記憶媒体に予め記憶させておき、その情報記憶媒体から出力される。そして、上記ディスプレイに表示された、上記資料等の情報と上記小型入力デバイスAで入力した文字等の情報とが重ね合わさった情報は、上記情報記憶媒体に記憶することができる。
【0025】
このようにして上記小型入力デバイスAを使用する際において、その小型入力デバイスAの入力用中空部Sが、縦10cm以下,横10cm以下と狭くなっているため、上記のように入力用中空部S内の領域に、文字等の情報をペン等で入力する際に、そのペン等を持つ手の小指やその付け根部分等を、上記小型入力デバイスAの表面または外側に接触させることができ、上記入力用中空部S内で検知しないようにすることができる。
【0026】
特に、上記小型入力デバイスAの光導波路Wは、薄く形成することができ(厚くても2mm程度)、この実施の形態のように、光導波路Wの表裏面に保持板30および保護板40を設けても、総厚を3mm程度に形成できるため、ペン等で入力する際に、上記小型入力デバイスAが、入力の妨げにならず、そのペン等を持つ手を自然な位置に位置決めすることができ、入力し易くなっている。
【0027】
しかも、上記小型入力デバイスAは、小型であるため、持ち運び性に優れ、使用場所の選択幅が広い。
【0028】
さらに、上記小型入力デバイスAは、移動量を認識する光学式センサ7を備えているため、その小型入力デバイスAを上記テーブル上等でスライド移動させても、その移動後の位置を認識することができる。そのため、上記ディスプレイに表示された情報において、前に入力した情報に対して所望する位置に、新たな情報を入力することができる。すなわち、上記小型入力デバイスAは、先に述べたように、上記のように入力用中空部Sが狭くても、移動量を認識する上記光学式センサ7を備えているため、入力領域を広くとることができ、入力領域が固定されない。
【0029】
また、上記小型入力デバイスAの入力用中空部Sの内縁に沿ってペン先を移動させることにより、直線を引くこともできる。そして、上記小型入力デバイスAを移動させた後に、同様にして直線を引くと、移動前後の両直線の距離を知ることもできる。このように、上記小型入力デバイスAを定規として使用することもできる。
【0030】
つぎに、上記小型入力デバイスAの作製方法の一例について説明する。この実施の形態では、四角枠状の光導波路Wの作製は、その四角枠形状の各辺の帯状の光導波路部分を個別に作製し、それを四角枠状に接続することにより行われる。なお、光導波路Wの作製方法の説明に引用する図4(a)〜(c),図5(a)〜(c)は、図2(a)のX1−X1断面に相当する部分を図示している。
【0031】
まず、帯状の光導波路部分を形成するための基板10〔図4(a)参照〕を準備する。この基板10の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。
【0032】
ついで、図4(a)に示すように、上記基板10の表面に、帯状のアンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1は、感光性樹脂を形成材料として、フォトリソグラフィ法により形成することができる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0033】
つぎに、図4(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により前記パターンの光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを形成する。これらコア2a,2bの形成材料としては、上記アンダークラッド層1および下記オーバークラッド層3〔図5(b)参照〕の形成材料よりも屈折率が高い感光性樹脂が用いられる。
【0034】
ここで、図4(c)に示すように、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する成形型20を準備する。この成形型20には、オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の表面形状に対応する型面を有する凹部21が形成されている。そして、その凹部21を上にして、成形型20を成形ステージ(図示せず)の上に設置し、その凹部21に、オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3Aを充填する。
【0035】
ついで、図5(a)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面にパターン形成したコア2a,2bを、上記成形型20の凹部21に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層1を上記成形型20に押圧し、上記オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3A内に、上記コア2a,2bを浸す。そして、この状態で、紫外線等の照射線を、上記成形型20を透して上記感光性樹脂3Aに照射し、その感光性樹脂3Aを露光する。これにより、上記感光性樹脂3Aが硬化し、コア2a,2bの先端部に対応するオーバークラッド層3の部分がレンズ部3aに形成されたオーバークラッド層3が形成される。
【0036】
つぎに、図5(b)〔図5(a)とは上下を逆に図示している〕に示すように、上記成形型20〔図5(a)参照〕から、上記オーバークラッド層3を、上記基板10,アンダークラッド層1およびコア2a,2bと共に脱型する。
【0037】
そして、図5(c)に示すように、上記基板10〔図4(b)参照〕をアンダークラッド層1から剥離し、アンダークラッド層1,コア2a,2bおよびオーバークラッド層3からなる帯状の光導波路部分を得る。
【0038】
つぎに、図6(a)に平面図で示すように、回路基板8を準備し、それに、発光素子5,受光素子6,移動量認識用の光学式センサ7,上記小型入力デバイスA(図1参照)を制御するIC(図示せず),上記光導波路W(図1参照)の入力用中空部S内の領域に入力した情報を出力する出力モジュール(図示せず),電池等を搭載し、前記制御手段Cを作製する。なお、上記回路基板8には、上記光学式センサ7が搭載される部分に光通過用の貫通孔8a〔図2(c)参照〕を予め形成しておく。
【0039】
ここで、図6(b)に平面図で示すように、入力用中空部Sを有する四角枠状の保持板30を準備する。この保持板30の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。なかでも、平面性の保持に優れている点で、ステンレスが好ましい。保持板30の厚みは、例えば、0.5mm程度に設定される。なお、上記保持板30には、上記光学式センサ7の設置位置に対応する部分に光通過用の貫通孔30aを予め形成しておく。
【0040】
そして、図7(a)に平面図で示し,図7(b)に断面図〔図7(a)のX4−X4断面図〕で示すように、上記四角枠状の保持板30の表面に、上記帯状の光導波路部分を貼着し、四角枠状の光導波路Wを作製する。このとき、上記発光素子5を光出射用のコア2aに接続し、上記受光素子6を光入射用のコア2bに接続する。
【0041】
その後、図8に断面図で示すように、上記オーバークラッド層3のレンズ部3aを除く頂面と、上記制御手段Cとを、保護板40で被覆する。この保護板40の形成材料としては、例えば、樹脂,金属,ガラス,石英,シリコン等があげられる。保護板40の厚みは、例えば、金属製であれば、0.5mm程度、樹脂製であれば、0.8mm程度に設定される。
【0042】
このようにして、上記小型入力デバイスAを作製することができる。この小型入力デバイスAにおいて、上記光導波路Wの部分は、先に述べたように、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせても、総厚を3mm程度と、薄く形成することができる。上記制御手段Cの部分も、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせても、総厚を3mm程度と、薄く形成することができる。この実施の形態では、上記光導波路Wの部分も上記制御手段Cの部分も、同じ厚みに形成している。
【0043】
なお、上記実施の形態では、小型入力デバイスAの四角枠状の光導波路Wにおいて、入力用中空部S内での光伝送効率を向上させるために、光出射用のコア2aの先端部および光入射用のコア2bの先端部をレンズ部に形成するとともに、それを被覆するオーバークラッド層3の先端部もレンズ部3aに形成したが、入力用中空部S内での光伝送効率が充分であれば、上記レンズ部は、コア2a,2bまたはオーバークラッド層3の一方のみに形成してもよいし、両方とも形成しなくてもよい。また、上記レンズ部を形成しない場合、別体のレンズ体を準備し、上記光導波路Wの入力用中空部S内の周縁縁に沿って設置してもよい。
【0044】
図9は、本発明の小型入力デバイスの第2の実施の形態を示している。この実施の形態の小型入力デバイスBは、縦10cm以下,横10cm以下の四角形状の入力用中空部Sを有する四角枠状の保持板の、上記入力用中空部Sの対向する一方の周縁に、複数の発光ダイオード(発光手段)11が並設され、他方の周縁に、複数のフォトダイオード(受光手段)12が並設され、上記発光ダイオード11の発光部と、上記フォトダイオード12の受光部とが対向している。この小型入力デバイスBには、光導波路W(図1参照)は設けられていない。なお、上記発光ダイオード11およびフォトダイオード12は、上記保持板の表面に設けられた四角枠状の回路基板8に搭載されている。また、上記第1の実施の形態と同様に、上記回路基板8には、移動量認識用の光学式センサ7,小型入力デバイスBを制御するIC,上記入力用中空部S内の領域に入力した情報を出力する出力モジュール,電池等が搭載され、さらに、保護板40も設けられている。なお、図9では、発光ダイオード11,フォトダイオード12の数を略して図示している。
【0045】
この実施の形態でも、上記複数の発光ダイオード11により、上記入力用中空部S内の領域において、光Hが格子状に走った状態となる。そして、その入力用中空部S内の領域でペン等を移動させて文字等の情報を入力すると、上記格子状に走る光Hが、上記ペン等の先端(ペン先等)により遮光され、その遮光が上記フォトダイオード12により感知されることにより、上記ペン等の先端の軌跡(文字等の入力情報)が検知される。すわなち、この第2の実施の形態の小型入力デバイスBも、上記第1の実施の形態と同様にして使用され、同様の作用・効果を奏する。
【0046】
なお、上記各実施の形態では、小型入力デバイスA,Bをパソコンとともに使用し、上記小型入力デバイスへの入力情報を上記パソコンのディスプレイに表示したが、上記各実施の形態におけるパソコンの機能と同様の機能を、上記小型入力デバイスA,Bまたは上記ディスプレイに付与し、パソコンを使用することなく、ディスプレイに表示するようにしてもよい。
【0047】
また、上記各実施の形態では、移動量認識手段として、光学式センサを用いたが、他でもよく、例えば、ボール式センサを用いてもよい。このボール式センサは、小型入力デバイスAをテーブル上等でスライド移動させた際に、そのテーブル上等に接触するボールが回転し、その回転方向や回転量を感知して移動量を認識するセンサである。上記ボール式センサを用いる場合は、それを2個用い、それらを距離をおいて配置し、それらが認識した移動量の値の差から角度を算出する。
【0048】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0049】
〔実施例1〕
〔アンダークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)75重量部。
成分B:エポキシ基含有アクリル系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0150M)25重量部。
成分C:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部。
これら成分A〜Cを、紫外線吸収剤(チバジャパン社製、TINUVIN479)5重量部とともに、シクロヘキサノン(溶剤)に溶解することにより、アンダークラッド層の形成材料を調製した。
【0050】
〔コアの形成材料〕
成分D:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、157S70)85重量部。
成分E:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)5重量部。
成分F:エポキシ基含有スチレン系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0250SP)10重量部。
これら成分D〜Fと上記成分C4重量部とを、乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0051】
〔オーバークラッド層の形成材料〕
成分G:脂環骨格を有するエポキシ樹脂(アデカ社製、EP4080E)100重量部。
この成分Gと上記成分C2重量部とを混合することにより、オーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0052】
〔光導波路の作製〕
ステンレス製基板(厚み50μm)の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料を塗布した後、160℃×2分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。ついで、上記感光性樹脂層に対し、紫外線を照射して積算光量1000mJ/cm2 の露光を行い、厚み10μmのアンダークラッド層(波長830nmにおける屈折率1.510)を形成した。
【0053】
ついで、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料を塗布した後、170℃×3分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。つぎに、フォトマスクを介して(ギャップ100μm)、紫外線を照射し、積算光量3000mJ/cm2 の露光を行った。つづいて、120℃×10分間の加熱処理を行った。その後、現像液(γ−ブチロラクトン)を用い現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×5分間の乾燥処理を行い、幅30μm×高さ50μmのコア(波長830nmにおける屈折率1.570)をパターン形成した。
【0054】
ここで、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する成形型を準備した。この成形型には、オーバークラッド層の表面形状に対応する型面を有する凹部が形成されている。そして、その凹部を上にして、成形型を成形ステージの上に設置し、その凹部に、上記オーバークラッド層の形成材料を充填した。
【0055】
ついで、上記アンダークラッド層の表面にパターン形成したコアを、上記成形型の凹部に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層を上記成形型に押圧し、上記オーバークラッド層の形成材料内に、上記コアを浸した。そして、この状態で、紫外線を、上記成形型を透して上記オーバークラッド層の形成材料に照射して積算光量8000mJ/cm2 の露光を行い、コアの先端部に対応するオーバークラッド層の部分が凸状のレンズ部に形成されたオーバークラッド層を形成した。その凸状のレンズ部は、側断面形状が略1/4円弧状のレンズ曲面(曲率半径1.4mm)を有するものであった。
【0056】
つぎに、上記成形型から、上記オーバークラッド層を、上記基板,アンダークラッド層およびコアと共に脱型した。
【0057】
そして、上記基板をアンダークラッド層から剥離し、アンダークラッド層,コアおよびオーバークラッド層からなる帯状の光導波路部分(総厚1mm)を得た。
【0058】
〔小型入力デバイスの作製〕
つぎに、回路基板を準備し、それに、発光素子(Optowell社製、SM85−2N001),受光素子(浜松ホトニクス社製、S−10226),移動量認識用の光学式センサ(Avago社製、ADNS−5050),CMOS駆動IC,水晶振動子,無線モジュール,2個のコイン型リチウム電池(CR1216:厚み1.6mm、直径1.25mm、電圧3V)等を搭載し、制御手段を作製した。
【0059】
ここで、四角枠状のステンレス製保持板(厚み0.5mm)を準備した。この保持板の入力用中空部は、縦10cm×横10cmの四角形とした。そして、上記保持板の表面のうち、上記入力用中空部の外側部分に、上記帯状の光導波路部分を貼着し、四角枠状の光導波路を作製するとともに、上記制御手段を固定した。このとき、上記発光素子を光出射用のコアに接続し、上記受光素子を光入射用のコアに接続した。その後、上記オーバークラッド層のレンズ部を除く頂面と、上記制御手段の固定部分とを、四角枠状のステンレス製保護板(厚み0.5mm)で被覆し、小型入力デバイスを得た。この小型入力デバイスにおいて、光導波路部分は、その表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚2mmであり、上記制御手段が固定された部分は、その表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚3mmであった。
【0060】
〔実施例2〕
〔小型入力デバイスの作製〕
上記実施例1と同様の四角枠状の保持板を準備し、その入力用中空部の対向する一方の周縁に、複数の発光ダイオード(シャープ社製、GL4800E0000F)を並設し、他方の周縁に、複数のフォトダイオード(シャープ社製、PD411PI2E00P)を並設した。また、上記実施例1と同様に、回路基板に、移動量認識用の光学式センサ,CMOS駆動IC,水晶振動子,無線モジュール,2個のコイン型リチウム電池等を搭載して制御手段を作製し、それを上記保持板に固定した。そして、上記発光ダイオード,フォトダイオード,制御手段を、四角枠状のステンレス製保護板(厚み0.5mm)で被覆し、小型入力デバイスを得た。この小型入力デバイスの厚みは均一であり、総厚3mmであった。
【0061】
〔小型入力デバイスの作動確認〕
資料等の情報を記憶したUSBメモリとパソコンとを準備し、そのUSBメモリの記憶情報を、上記パソコンを利用して、そのパソコンのディスプレイに表示した。なお、上記小型入力デバイスでのスイッチ操作または上記パソコンでのキーボード操作により、上記小型入力デバイスの入力用中空部に対応する上記ディスプレイでの表示部分が、ディスプレイでの所定の基準位置に位置決めされるようになっている。また、上記パソコンには、上記小型入力デバイスの四角枠状の光導波路の入力用中空部内の領域の座標を、ディスプレイの画面の座標に変換し、小型入力デバイスで入力した文字等をディスプレイに表示するソフトウェア(プログラム)が、組み込まれている。また、上記パソコンは、上記小型入力デバイスの無線モジュールからの電波(情報)を受信できるよう受信手段を備えており、上記パソコンと小型入力デバイスとを、無線で情報伝達可能に接続した。
【0062】
そして、上記実施例1,2の小型入力デバイスを、そのステンレス製保持板を下にして、平坦なテーブル上の任意の位置に載置し、この状態で、上記小型入力デバイスの入力用中空部に対応する上記ディスプレイでの表示部分を、ディスプレイでの所定の基準位置に位置決めした。ついで、上記入力用中空部内の領域で、ペン先を移動させた。その結果、その移動軌跡が、上記ディスプレイに表示されている資料等の情報に重ね合わさった状態で、表示された。つぎに、上記テーブル上で、上記小型入力デバイスをスライド移動させ、その移動後の位置において、上記入力用中空部内の領域で、ペン先を移動させた。その結果、上記ディスプレイにおいても、上記移動量に対応した距離だけ離れた位置に、上記ペン先の移動軌跡が、上記と同様にして表示された。
【0063】
また、上記実施例1,2において、入力用中空部の大きさを縦5cm×横10cm,縦5cm×横5cmとした小型入力デバイスをぞれぞれ作製し、上記と同様にして作動確認を行った結果、上記と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の小型入力デバイスは、ディスプレイに表示された資料等に、文字,図,印等の新たな情報を書き加えることに利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
A 小型入力デバイス
S 入力用中空部
W 光導波路
C 制御手段
5 発光素子
6 受光素子
7 光学式センサ
30 保持板
40 保護板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域上を移動し、その領域内の所望の位置で停止し、その位置で情報を入力するための小型入力デバイスであって、縦10cm以下,横10cm以下の入力用中空部を有する枠状板と、この枠状板において互いに対向する一方の部分に設けられた発光手段と、上記枠状板の他方の部分に設けられ上記発光手段からの出射光を受光する受光手段と、上記枠状板に設けられた移動量認識手段とを備えていることを特徴とする小型入力デバイス。
【請求項2】
上記発光手段が、発光素子と、この発光素子に接続された、光導波路の複数の光出射用コアとからなり、上記受光手段が、受光素子と、この受光素子に接続された、光導波路の複数の光入射用コアとからなり、上記光出射用コアの先端部と上記光入射用コアの先端部とが、上記枠状板の内側縁に位置決めされた状態で対向している請求項1記載の小型入力デバイス。
【請求項3】
上記発光手段が、複数の発光素子からなり、上記受光手段が、複数の受光素子からなり、上記複数の発光素子と上記複数の受光素子とが、上記枠状板の内側縁に位置決めされた状態で対向している請求項1記載の小型入力デバイス。
【請求項4】
上記移動量認識手段が、上記枠状板の裏面から発した光の反射光を読み取ることにより上記小型入力デバイスの移動量を認識する光学式センサである請求項1〜3のいずれか一項に記載の小型入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252439(P2012−252439A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123208(P2011−123208)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】