説明

小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置

【課題】 筒状ゴム製品を管体に挿入するに際して、特殊な部材や特別な機構を設けることなく、局部的な歪み変形等も生じずに、円滑かつ確実に操作することができる小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】 小径の筒状ゴム製品2を管体1に挿入する方法であって、前記管体1が、筒状ゴム製品2を挿入・保持する中央部11と、第1端部12と、前記第1端部12と中央部11とを連結する接続部13と、および第2端部14と、を有するとともに、圧縮流体を導入する注入口8と、複数の吹出口15および16nと、流路17と、を有する部材であって、前記管体1を固定した状態で、前記注入口8から圧縮流体を導入するとともに、前記第1端部12から筒状ゴム製品2を挿入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置に関するもので、チューブやホースあるいはベルトやローラ等のゴムやプラスチックスなどの筒状製品(以下「ゴム製品」という。)の製造において使用される。
【背景技術】
【0002】
通常、上記のような筒状ゴム製品の製造においては、成形された筒状ゴム製品をその外周面を研磨し平滑面に仕上げる工程を有することがある。例えば、複写機用の帯電ベルトなどのような筒状ベルトについて、その外周面を研磨によって平滑化したり、その厚みを調整したりするために行われる。
【0003】
具体的には、複写機などに用いられる各種ゴムローラの作製においては、図5(A)に示すようなフローが知られており、シャフトが挿入された成形体が、図5(B)に示すような形態で研磨する方法を挙げることができる(例えば特許文献1参照)。図5(A)に示すように、まず基材ゴム、架橋剤、充填剤、発泡剤等が混練される(STP1)。混練により、ゴム組成物が得られる。次に、このゴム組成物が押出機に投入され、円筒状に押し出される(STP2)。次に、円筒状のゴム組成物が加硫される(STP3)。こうして、円筒状の成形体が得られる。次に、この成形体にシャフトが挿入される(STP4)。次に、成形体の表面が研磨される(STP5)。こうして、ゴムローラが完成する。研磨後、ゴムローラは寸法検査に供される(STP6)。
【0004】
また、図5(B)に示すように、成形体51の外周面52には、砥石57の研磨面55が当接している。研磨時には、芯棒59が回転することにより砥石57が回転し、シャフト53が回転することにより成形体51が回転する。成形体51と砥石57との擦動により、成形体51の外周面52が研磨される。砥石57の全長Lは成形体51の全長よりも小さいが、砥石57は軸方向(図中左右方向)に移動しつつ回転するので、成形体51の外周面52の全体が研磨される。研磨によって生じたバフ粉は、図示されない集塵装置によって吸引される。研磨により、ゴムローラの表面粗度が調整される。研磨により、ゴムローラの外径が調整される。
【0005】
このとき、一般には、該筒状ゴム製品をその内径よりも少し大きい外径を有する金属管等の管体の外周に筒軸線方向の一端開口側から挿入する方法が採られ、例えば、金属管を立てた状態で作業者がベルトを10mm程度金属管に入れ、その端を摘んでベルトと金属管の間に隙間を作ってそこにエアガンなどでエアを吹き付けながらベルトを手で引っ張ることによって挿入していた。また、昨今、省力化や作業効率の改善の観点から種々の方法が用いられ、あるいは提案されている。
【0006】
具体的には、図6に示すように、ゴムチューブ61の両端を把持する工程(A)と、該ゴムチューブ61の通孔62の一端からノズル63を挿入する工程(B)と、該ゴムチューブ61の通孔62の他端に配置された該芯軸64と該ノズル63を合芯する工程(C)と、該ノズル63より正圧エアを放出しながら該ノズル63を後退させつつ該芯軸64を該ゴムチューブ61の通孔62に挿入する工程(D)と、を含むゴムロール製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
また、図7に示すように、管体72をその軸線方向の下端部で固定支持する管体セット台73に対して駆動昇降自在に構成された可動板部材75に、筒状ベルト71の下端開口端縁71eを掛止可能な掛止爪78とこの掛止爪78を筒状ベルト71の径方向外方へ駆動移動させるエアシリンダ79とからなる複数の拡径ユニット77を装着している一方、管体72の軸線方向一端部近くには、エアを外方へ吹き出し可能なエア吹出孔76が設けられている筒状ベルトの挿入装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−9157号公報
【特許文献2】特開2004−308781号公報
【特許文献3】特開2003−191163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記のような公知技術による方法にあっては、各種の用途に適用する場合において、設備面あるいは作業効率の面で十分な対応が困難となることがある。
【0010】
具体的には、ゴムの部分だけを掴んで引っ張る作業は、手動では難しく、無理やり無差別方向に不均等に引っ張るために、局部的な歪み変形が発生して最終製品の性能にも悪影響を及ぼしかねないという問題があった。また、エアを吹き込むためにエアガンを間隙に近づける作業が手動であったために、誤ってエアガンを管体に接触させて管体を傷めることがあった。
【0011】
また、ゴム製品の内径が管体の外径よりも小さい場合には、ゴムの特性である粘着性や柔軟性などから、ゴム製品の端部全体を均等に管体の外周部に接するようにすることが難しく、そのままでは簡単に挿入できない場合があった。
【0012】
特に、ゴム製品自体が小径である場合には、エアガンの挿入が難しくなり、またゴム製品を摘んだ状態でエアを吹き込みにくいことなど、寸法的な制限から先端部の挿入操作などの困難性がさらに大きくなり、過大な負荷がかかることになり、その結果、一本挿入するのに多くの時間や労力を要することとなる。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、筒状ゴム製品を管体に挿入するに際して、特殊な部材や特別な機構を設けることなく、局部的な歪み変形等も生じずに、円滑かつ確実に操作することができる小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0015】
つまり、本発明は、小径の筒状ゴム製品を管体に挿入する方法であって、
前記管体が、挿入前の筒状ゴム製品の内径よりも大きな外径の筒部を有し筒状ゴム製品を挿入・保持する中央部と、該管体の一端に配設され前記筒状ゴム製品の内径と同等あるいは小径の筒部を有する第1端部と、前記第1端部と中央部とを連結する接続部と、および前記中央部に対して第1端部と反対側に配設され筒状ゴム製品が挿入されない筒部を有する第2端部と、を有するとともに、第2端部に圧縮流体を導入する注入口と、中央部の接続部側および接続部の中央部側に複数の吹出口と、該管体の内部に注入口から複数の吹出口に繋がる流路と、を有する部材であって、
前記管体を固定した状態で、前記注入口から圧縮流体を導入するとともに、前記第1端部から筒状ゴム製品を挿入することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、小径の筒状ゴム製品を管体に挿入する装置であって、
挿入前の筒状ゴム製品の内径よりも大きな外径の筒部を有し筒状ゴム製品を挿入・保持する中央部と、該管体の一端に配設され前記筒状ゴム製品の内径と同等あるいは小径の筒部を有する第1端部と、前記第1端部と中央部とを連結する接続部と、および前記中央部に対して第1端部と反対側に配設され筒状ゴム製品が挿入されない筒部を有する第2端部と、を有するとともに、第2端部に圧縮流体を導入する注入口と、中央部の接続部側および接続部の中央部側に複数の吹出口と、該管体の内部に注入口から複数の吹出口に繋がる流路と、を有する管体と、
該管体を固定する固定部材と、
前記管体を固定した状態で、前記注入口と圧縮流体の導入口を接続する連結手段と、
該導入口を介して前記管体内流路に圧縮流体を供給する給送手段と、
を有することを特徴とする。
【0017】
管体にゴム製品を挿入するためには、少なくとも管体の先端部の外径がゴム製品の内径よりも小さいことが好ましい。また、管体への挿入時に、圧縮流体が均等にかつ全周面に吹き込まれることによってゴム製品の端部周辺が膨張し、管体との間に均等な間隙を形成することが好ましい。本発明者は、種々の圧縮流体の吹き出し方法(以下圧縮流体の流れを「エアブロー」という。)を検証した結果、エアブローの吹出口の位置は、(a)管体中央部の挿入側端部にあって、中央部でのゴム製品の挿入の円滑を図ることが好ましく、かつ(b)管体の端部から中央部にいたるまでの間(本発明においては「接続部)に該当)の中央部側にあって、ゴム製品の中央部への挿入の円滑を図ることが好ましいこと、を見出した。特に、これらを複数設けることが好ましい。つまり、ゴム製品の管体への挿入作業時のエアブローを、管体中央部の接続部側端部のみならず接続部の中央部側端部直前においても行うことによって、確実にゴムの膨張を利用し、管体との間に均等な間隙を設けることができる。
【0018】
また、管体中央部の外径は第1端部の外径よりも大きいことから、接続部は管体の中心軸に対して所定の傾斜角を有している。つまり、接続部の挿入側端部の設けた吹出口は、挿入されるゴム製品の内面に対して所定の傾斜角を有することになり、エアブローがゴムに対して挿入に適切な角度で圧力を与えることによって、より円滑に挿入することが可能となった。
【0019】
さらに、管体に設けられた第1端部および第2端部は、次の研磨工程や検査工程などにおいてゴム製品が挿入された管体の固定用持具としての役割を担うことも可能である。また、管体中央部に設けられた吹出口は、ゴム製品を管体から脱型処理を行う際においても利用することが可能である。
【0020】
従って、カバー材やキャップ体という特殊な部材や特別な機構を使用することなく、局部的な歪み変形等も生じずに、円滑かつ確実に操作することができる小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置を提供することが可能となる。
【0021】
ここで、「小径の筒状ゴム製品」とは、図7に例示するような「掛止爪」など機械的に開口部を保持あるいは拡張することが難しい内径を有する筒状体をいい、具体的には、例えば内径が50mm以下の筒状体が該当する。
【0022】
本発明は、上記小径の筒状ゴム製品を管体に挿入する装置であって、前記吹出口が、中央部の外周および接続部の外周を略等分割する位置であって、それぞれ近接する位置に配設されることを特徴とする。
【0023】
上記のように、種々の圧縮流体の吹出口の位置は、(a)中央部の接続部側および(b)接続部の中央部側に複数あることが好ましい。本発明者は、さらに検証を重ねた結果、吹出口について、(c)接続部の中央部側の吹出口と中央部の接続部側の吹出口を近接させることによって、相反方向に吹き出すエアブローを形成することが可能となり、ゴム製品が膨張して管体との間に均等な間隙を形成することが可能となること、および(d)管体の外周を略等分割する位置からの少なくとも2つのエアブローによって管体の外周面全体をカバーすることが必要であること、を見出した。つまり、中央部にある吹出口と接続部にある吹出口の配置関係を管体の中心軸方向に対し重複する位置となるようにすることによって、エアブローを分散し、さらに管体の外周を略等分割する位置に吹出口を設けることによって、エアブローの均一化を図り、均等な圧力によってゴム製品と管体の間隙をより均等に形成することができ、円滑に挿入することが可能となる。
【0024】
本発明は、上記小径の筒状ゴム製品を管体に挿入する装置であって、前記第2端部にガイド部材を配設し、前記固定部材に該ガイド部材を係合あるいは固定可能な部位を有することを特徴とする。
【0025】
管体の固定には種々の方法があるが、本発明では、後段の研磨工程や検査工程などにおいても適切に利用可能な固定方法が好ましい。つまり、第2端部を挿入工程における固定部材とするとともに、後段の工程においては回転操作の基点としてチャッキング可能かつ回転方向の係動を防止できることが望まれる。そこで、管体第2端部にガイド部材を配設するとともに、固定部材に該ガイド部材を係合あるいは固定可能な部位を設けことによって、簡単な構成で固定の確実を図ることができ、管体の回転操作においてもチャッキングの確実を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明では、管体を最適な構造にしてエアブローの吹出口の位置に適切に配備することによって、特殊な部材や特別な機構を設けることなく、局部的な歪み変形等も生じずに、円滑かつ確実に操作することができる小径の筒状ゴム製品の挿入方法およびその装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
<本発明に係るゴム製品の挿入装置の基本的構成>
図1は、本発明に係るゴム製品の挿入装置の全体図として、管体1にゴム製品2を挿入する直前の状態を例示している。管体1に配設されたガイド部材3を規制するガイド4を有し、管体1を固定する固定部材5と、圧縮流体(エア)供給用の導入口6を有し、シリンダ7によって移動して管体1に設けられた注入口8と接続する連結手段9と、該連結手段9と繋がりバルブ10および該導入口6を介して管体1に圧縮エアを供給する供送手段から構成される。このとき、管体1を立てて固定した状態で挿入することで、固定部材5および連結手段9や供送手段の構成を簡略化することができる。
【0029】
ここで、ゴム製品2は、図1に示すように、内径dが50mm以下、例えば20〜30mm程度、厚みが0.5〜5mm程度、長さが200〜500mm程度の筒状体を形成する。素材としては、天然ゴムや所定の弾性を有する合成ゴム、例えばNBR(ニトリルゴム)等のジエン系ゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、シリコンゴムやウレタンゴム等の非ジエン系ゴム等を用いることができる。
【0030】
固定部材5は、管体1を確実に固定できるものであれば材質は特に限定されないが、管体1の保持部の保護などの観点からMCナイロンなどの樹脂などが用いられることが好ましい。また、固定部材5には、管体1のガイド部材3を規制するガイド4とともに、ガイド部材3を係合あるいは固定可能な部位を有することが好ましい。こうした部位を設けことによって、簡単な構成で固定の確実を図ることが可能となる。回転方向での位置のずれの発生をも防止することができる。
【0031】
圧縮流体は、圧縮が容易でゴム製品を膨張させる機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、通常入手が容易な空気、特に乾燥空気を用いることができる。図1には示していないが、圧縮エア供送手段としては、圧縮機を用いて加圧した空気をフィルタ等によって除塵・精製した状態で繋がりバルブ10を介して供給することが好ましい。
【0032】
導入口6と注入口8の接続は、例えば導入口6の周囲に樹脂製のシール用部材などを設けて密着性を高める方法や、導入口6を含む連結手段9の先端部を柔軟性のある樹脂製の部材を用いてシールする方法などを採ることができる。固定部材5における注入口8の位置は、管体1ガイド部材3がガイド4によって規制されることによって定まり、導入口6を含む連結手段9の先端部をシリンダ7でその位置にスライドすることによって、確実に接続およびシールを維持することができ、高い再現性も確保することができる。なお、連結手段9の移動は、シリンダ7に限定されるものではなく、ロボットアームなど種々の手段を用いることが可能である。
【0033】
また、本構成では、制御部(図示せず)を設けて、圧縮機(図示せず)、バルブ10、シリンダ7と連結することが可能である。これにより、圧縮機の作動、バルブ10の開閉、エアの圧力・流量の調整、シリンダ7の往復運動・停止位置、を手動あるいは自動的に制御することができる。
【0034】
次に、管体1について詳述する。管体1は、図2に例示するように、中央部11、第1端部12、接続部13、および第2端部14、を有するとともに、第2端部14に圧縮流体を導入する注入口6と、中央部11の接続部側および接続部13の中央部側に複数の吹出口15nおよび16n(以下、中央部11の接続部側の個々の吹出口については「15a、15b、15c、・・・」と、総称としては「15n」といい、接続部13の中央部側の個々の吹出口については「16a、16b、16c、・・・」と、総称としては「16n」という。)と、該管体の内部に注入口8から複数の吹出口15nおよび16nに繋がる流路17と、を有することを特徴とする。
【0035】
管体1の素材は、特に限定されないが、後述する加工工程における堅牢性、ゴム製品2が挿入された状態での固定性、研磨等加工後の取外しの容易性などから、金属製例えばステンレス製などが好ましい。
【0036】
中央部11は、図1に示したゴム製品2の内径dよりも大きな外径Daの筒部11aを有し、ゴム製品2を挿入し、全体を被覆した状態を形成する。また、中央部11の接続部13に近接する位置には複数の吹出口15nが設けられ、管体1の内部に形成された流路17からの圧縮エアが吹き出される。中央部11の外径Daは、例えば30〜50mm程度とすることによって、挿入されたゴム製品2を確実に固定することができる。また、中央部11の長さは、ゴム製品2の長さと同じ(200〜500mm程度)あるいは少し長くする。
【0037】
吹出口15nは、複数設けることが好ましい。つまり、ゴム製品2の管体1への挿入作業時のエアブローを、中央部11の接続部側端部において複数の吹出口15a、15b、15c、・・・から行うことによって、ゴムの膨張を利用して管体1との間に均等な間隙を設け、ゴム製品2の中央部11への挿入の円滑を図ることができる。また、吹出口15nは、ゴム製品2を管体1から脱型処理を行う際においても、エアブローを行うことによって両者の間に均等な間隙を形成することができ、小径のゴム製品2の製造工程全体としても有効である。
【0038】
また、吹出口15nが中央部11の外周を略等分割する位置に設けることが好ましい。つまり、管体1の外周を略等分割する位置からの少なくとも2つのエアブローによって、管体1の外周面全体をカバーしエアブローの均一化を図り、均等な圧力によってゴム製品2と管体1の間隙をより均等に形成することができ、円滑に挿入することが可能となる。
【0039】
第1端部12は、管体1にゴム製品2を挿入するためには、少なくとも管体1の先端部の外径Dbが挿入前のゴム製品2の内径dよりも小さいことが好ましいことから、管体1の一端に配設されたもので、ゴム製品2の内径dと同等あるいは小径の外径Dbの筒部12aを有する。つまり、例えば内径d:20〜30mm程度のゴム製品2の場合、外径Db:20〜30mm程度とすることが好ましい。また、第1端部12の最先端は、さらに挿入が容易となるように面取りを行うことが好ましい。
【0040】
接続部13は、小径の第1端部12と大径の中央部11とを連結し、ゴム製品の中央部への挿入の円滑を図るために、テーパ状または凸曲面状あるいは凹曲面状の形状を有することが好ましい。また、接続部13の中央部11に近接する位置には複数の吹出口16nが設けられ、管体1の内部に形成された流路17からの圧縮エアが吹き出される。
【0041】
ここで、吹出口16nは、複数設けることが好ましい。つまり、管体中央部の接続部側端部と同時に接続部の中央部側端部においても、ゴム製品の管体への挿入作業時において複数の吹出口15a、15b、15c、・・・からエアブローを行うことによって、確実にゴムの膨張を利用して管体との間に均等な間隙を設け、ゴム製品の中央部への挿入の円滑を図ることができる。特に、接続部でのエアブローは、管体1の中心軸に対して所定の傾斜角を有する方向から、挿入されるゴム製品の内面に対して当たることになり、エアブローがゴムに対して挿入に適切な角度で圧力を与えることによって、より円滑に挿入することが可能となる。
【0042】
また、吹出口16nは、接続部の外周を略等分割する位置であって、吹出口15nと近接する位置に配設されることが好ましい。つまり、管体1の外周を略等分割する位置からの少なくとも2つのエアブローによって、管体1の外周面全体をカバーしエアブローの均一化を図り、均等な圧力によってゴム製品2と管体1の間隙を均等に形成することができる。さらに、吹出口16nと吹出口15n配置関係を近接させ、管体1の中心軸方向に対し重複する位置となるようにすることによって、相反方向に吹き出すエアブローを形成することが可能となり、吹出口15nと吹出口16nのエアブローを分散しエアブローの均一化を図り、ゴム製品2と管体1の間隙をより均等に形成することができ、円滑に挿入することが可能となる。
【0043】
第2端部14は、中央部11に対して第1端部12と反対側に配設され、ゴム製品2が挿入されない筒部14aを有する。筒部14aには、中央部側に圧縮エアの注入口8が設けられ、その反対側にガイド部材3が設けられる。管体1の固定部材5への取り付けにおいては、ガイド部材3によって取り付け位置を規制し、筒部14aが固定部材5に嵌装され、確実に固定される。
【0044】
ゴム製品2を挿入された管体1は、その後、それを保持した状態で挿入工程の後の研磨工程あるいは検査工程に供用される。このとき、管体1に設けられた第1端部12および第2端部14は、ゴム製品2が挿入された管体1の固定用持具としての役割を担うことも可能である。また、後段の工程においては、回転操作の基点としてチャッキング可能かつ回転方向の係動を防止でき、管体の回転操作においてもチャッキングの確実を図ることが可能となる。
【0045】
<本発明に係る挿入方法>
次に、上記構成からなる挿入装置を用いて、ゴム製品2を管体1に挿入する方法を説明する。本発明に係る挿入方法は、(1)管体1を固定するステップ、(2)導入口6を注入口8と接続するステップ、(3)圧縮エアを供給するステップ、(4)ゴム製品2の一端部を掴んで管体1の第1端部12に挿入するステップ、(5)ゴム製品2を中央部11に挿入するステップ、から構成される。
【0046】
(1)管体1を固定するステップ
予め固定部材5において、図1に例示するように、ガイド部材3をガイド4に沿わせて管体1を挿入し固定する。このとき、図3(A)に示すように、管体1の第2端部14が固定部材5に嵌合し、注入口8が圧縮エアを供給する導入口6を対向する位置に固定される。この状態において、加硫工程において加硫されたゴム製品2が、エアチャック(図示せず)によって保持されて挿入工程へ移送される。該エアチャックは固定部材5の上方で停止し、ゴム製品2を固定部材5に受け渡す。図1では、1つのゴム製品2について1つの挿入装置が対応するように示しているが、複数の固定部材5を配設し、同時に複数のゴム製品を挿入する装置を構成することも可能である。
【0047】
(2)導入口6を注入口8と接続するステップ
図3(A)に示す状態において、シリンダ7を作動させて、連結手段9を矢印J方向に移動させと、図3(B)に示すように、注入口8の周囲をシールするように導入口6が密着し、導入口6と注入口8が接続する。このとき、固定手段5と連結手段9との固定位置の確実を図るために、連結手段9側に止め部9aを設けることが好ましい。
【0048】
(3)圧縮エアを供給するステップ
図3(B)に示すように、固定部材5に管体1が固定され、導入口6と注入口8が接続された状態において、圧縮機(図示せず)およびバルブ10を作動し、導入口6から圧縮エアを供給する。
【0049】
(4)ゴム製品2の一端部を掴んで管体1の第1端部12に挿入するステップ
次に、移送されたゴム製品2の一端部を掴んで、図4(A)に示すように、管体1の第1端部12に挿入する。この状態では、導入口6から供給された圧縮エアは未だゴム製品2に当たることは殆どないが、さらに、図4(B)に示す位置まで挿入すると、接続部13に設けられた吹出口16nによって、ゴム製品2の内面に当たり、管体1とゴム製品2の間にエアブローの層を形成する。このエアブローの層が管体1とゴム製品2の間隙の全周に回り、エアブローの圧力と相俟ってゴム製品2を膨張させる力を発生させる。
【0050】
特に、接続部13の外周面は、管体1の中心軸Xに対して傾斜角αを有していることから、吹出口16nを外周面に垂直に加工した場合には、エアブローはゴム製品2の内面に対し鉛直角αで吹き出すことから、ゴム製品2を膨張させる力を強く発生させることが可能となる。
【0051】
(5)ゴム製品2を中央部11に挿入するステップ
(5−1)ゴム製品2をさらに管体1に挿入すると、図4(C)に示すように、ゴム製品2の一端部が吹出口15nを覆う状態となり、吹出口15nから吹き出した圧縮エアがゴム製品2の内面に当たり、管体1とゴム製品2の間にエアブローの層を形成する。このエアブローの層が管体1とゴム製品2の間隙の全周に回り、エアブローの圧力と相俟ってゴム製品2を膨張させる力を発生させる。このとき、エアブローはゴム製品2の内面に対し鉛直に吹き出すことから、ゴム製品2を膨張させる力を強く発生させることが可能となる。
【0052】
また、同時に、図4(A)〜(E)に示すように、吹出口15nと16nが、それぞれ中央部11および接続部13の外周を略等分割する位置であって、両者が近接する位置に配設される場合には、中央部11と接続部13の境界付近において相反方向に吹き出すエアブローを形成することが可能となるとともにエアブローの均一化を図ることができることによって、ゴム製品2と管体1の間隙をより均等に形成することができ、円滑に挿入することが可能となる。
【0053】
(5−2)図4(D)は、ゴム製品2をさらに管体1に挿入した状態を示したもので、吹出口15nからのエアブローおよび吹出口16nからのエアブローによって、ゴム製品2と管体1の間隙が均等に形成されている状態であることを示している。これによって、円滑に挿入することが可能となる。
【0054】
(5−3)図4(E)は、ゴム製品2を中央部11に完全に挿入する状態を示したもので、接続部13を覆うゴム製品2がなくなっている。従って、吹出口16nからの圧縮エアは、ゴム製品2に当たることなく放出されるとともに、吹出口15nからのエアブローについても、吹出口16nからのエアブローによる反力が殆どなくなったことから、図4(D)のような図下部方向の流れが生じなくなり、図4(E)に示すように、ゴム製品2の他端部近傍と管体1の間に間隙を生じる程度のエアブローのみに減少している。
【0055】
(6)圧縮エアの供給を停止し、ゴム製品2の挿入操作を完了するステップ
次いで、圧縮機(図示せず)およびバルブ10の作動を停止し、導入口6からの圧縮エアを供給を停止する。このとき、図4(F)に示すように、ゴム製品2の管体1への挿入操作が完全に終了する。同時に、シリンダ7を作動させて、連結手段9を図3(A)に示す矢印Jと反対の方向に移動させと、注入口8における導入口6との密着を解除する。
【0056】
以上により、成形されたゴム製品2を円滑に管体1に挿入することができるとともに、ゴム製品2が挿入された管体1を、固定手段5による固定状態から開放された状態にすることが可能となる。ゴム製品2を挿入された管体1は、その後、それを保持した状態で挿入工程の後の研磨工程あるいは検査工程に供される。また、本挿入方法の適用によって、前後の工程と合わせた連続自動ライン化が可能になる。
【実施例】
【0057】
本発明に係るゴム製品の挿入装置を使用し、以下の管体およびゴム製品を用いて実施した結果、局部的な歪み変形等も生じずに、ゴム製品が挿入された管体を作製することができた。
(i)管体としては、中央部の外径Da:40mm、第1端部の外径Db:25mmの全長400mmのステンレス製の管状体を用いた。
(ii)ゴム製品としては、内径d:25mm、厚み:1mm、長さ:400mmのウレタンゴムを用いた。
【0058】
<本発明における別の実施形態>
上記実施形態では、管体1を固定部材5に固定した状態で、ゴム製品2を移動し挿入する態様について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、ゴム製品2を固定し、連結手段9を含む圧縮エア供給手段全体を移動し、管体1にゴム製品2を挿入することも可能である。このとき、ゴム製品2の端部あるいは外周面を固定することが必要な場合には、ゴムの膨張に対応して拡張あるいは移動可能な保持手段を用いることが好ましい。
【0059】
また、本発明にいうゴム製品2は、例えばゴムベルトに使用されるが、これに限定されるものではなく、広く各種用途に用いられるゴム等の筒状製品をいう。
【0060】
また、本実施形態では圧縮流体としてエアを使用したが、エア以外の圧縮流体を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上記については、主として成形されたゴム製品を管体に挿入する方法および挿入装置を例示して説明したが、むろんそれ以外の多種多様な樹脂製品における挿入装置にも適用可能である。具体的には、中央部が同一径の直管ではなく、第1端部−接続部−中央部に繋がる全体がテーパ状の管体を用いた場合などにおいても本発明の適用は可能であり、このように、本発明の特徴は、その機能の汎用性だけでなく、広い用途についても適用することができる点において優位性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るゴム製品の挿入装置の全体を例示する説明図
【図2】本発明に係るゴム製品の挿入装置において使用する管体を例示する説明図
【図3】本発明に係る挿入装置における管体の固定状態を例示する説明図
【図4】本発明に係る挿入装置におけるゴム製品を管体に挿入する状態を例示する説明図
【図5】従来のゴム製品の成型から完成化までに至る工程および研磨工程の一例を表す説明図
【図6】従来の挿入装置の一例を表す説明図
【図7】従来の挿入装置の他の例を表す説明図
【符号の説明】
【0063】
1 管体
2 筒状ゴム製品(ゴム製品)
3 ガイド部材
4 ガイド
5 固定部材
6 導入口
7 シリンダ
8 注入口
9 連結手段
10 バルブ
11 中央部
12 第1端部
13 接続部
14 第2端部
15a、15b、15c、・・15n、16a、16b、16c、・・16n 吹出口
17 流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径の筒状ゴム製品を管体に挿入する方法であって、
前記管体が、挿入前の筒状ゴム製品の内径よりも大きな外径の筒部を有し筒状ゴム製品を挿入・保持する中央部と、該管体の一端に配設され前記筒状ゴム製品の内径と同等あるいは小径の筒部を有する第1端部と、前記第1端部と中央部とを連結する接続部と、および前記中央部に対して第1端部と反対側に配設され筒状ゴム製品が挿入されない筒部を有する第2端部と、を有するとともに、第2端部に圧縮流体を導入する注入口と、中央部の接続部側および接続部の中央部側に複数の吹出口と、該管体の内部に注入口から複数の吹出口に繋がる流路と、を有する部材であって、
前記管体を固定した状態で、前記注入口から圧縮流体を導入するとともに、前記第1端部から筒状ゴム製品を挿入することを特徴とする小径の筒状ゴム製品の挿入方法。
【請求項2】
小径の筒状ゴム製品を管体に挿入する装置であって、
挿入前の筒状ゴム製品の内径よりも大きな外径の筒部を有し筒状ゴム製品を挿入・保持する中央部と、該管体の一端に配設され前記筒状ゴム製品の内径と同等あるいは小径の筒部を有する第1端部と、前記第1端部と中央部とを連結する接続部と、および前記中央部に対して第1端部と反対側に配設され筒状ゴム製品が挿入されない筒部を有する第2端部と、を有するとともに、第2端部に圧縮流体を導入する注入口と、中央部の接続部側および接続部の中央部側に複数の吹出口と、該管体の内部に注入口から複数の吹出口に繋がる流路と、を有する管体と、
該管体を固定する固定部材と、
前記管体を固定した状態で、前記注入口と圧縮流体の導入口を接続する連結手段と、
該導入口を介して前記管体内流路に圧縮流体を供給する給送手段と、
を有することを特徴とする小径の筒状ゴム製品の挿入装置。
【請求項3】
前記吹出口が、中央部の外周および接続部の外周を略等分割する位置であって、それぞれ近接する位置に配設されることを特徴とする請求項2記載の小径の筒状ゴム製品の挿入装置。
【請求項4】
前記第2端部にガイド部材を配設し、前記固定部材に該ガイド部材を係合あるいは固定可能な部位を有することを特徴とする請求項2または3記載の小径の筒状ゴム製品の挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−256030(P2009−256030A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105882(P2008−105882)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】