説明

小径シールド用エレクタ

【課題】セグメントを安定して支持できる小径シールド用エレクタを提供する。
【解決手段】シールド本体2に同軸上に回転自在に設けられた旋回フレーム3と、旋回フレーム3にリンク機構4を介して径方向に移動可能に設けられセグメント5を着脱自在に把持するセグメント把持部6と、セグメント把持部6に設けられセグメント把持部6に把持されたセグメント5を支持すべくセグメント5に当接するサポート部7とを備えた小径シールド用エレクタ1において、サポート部7が、セグメント5を弾発付勢するバネ27を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小口径のトンネル掘進機に具備される小径シールド用エレクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
φ3mクラスより大口径のシールド掘進機では、セグメント組立用エレクタが油圧ジャッキ式のサポート部を備え、セグメント組立用エレクタでセグメントを把持したときサポート部を伸長させることでセグメントを押圧し、セグメントを安定して支持するようになっている。
【0003】
また、φ3mクラスより小口径のシールド掘進機(以下、小径シールドという)では、狭隘な機内に油圧ジャッキ式のサポート部を装備することは配置上無理があるため、図8に示すような固定式のサポート部60、61を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−18995号公報
【特許文献2】特開2008−240452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スチールセグメントの内周側にコンクリートからなるライニングを予め施した合成セグメントを小径シールドで組み立てる場合、固定式のサポート部60、61では合成セグメントを安定して支持することはできないため、合成セグメントを組み立てるとき合成セグメントがサポート部60、61にカタカタと当たり、合成セグメントのコンクリート部分に傷やクラックが入る虞があるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、セグメントを安定して支持できる小径シールド用エレクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、シールド本体に同軸上に回転自在に設けられた旋回フレームと、該旋回フレームにリンク機構を介して径方向に移動可能に設けられセグメントを着脱自在に把持するセグメント把持部と、該セグメント把持部に設けられセグメント把持部に把持されたセグメントを支持すべく該セグメントに当接するサポート部とを備えた小径シールド用エレクタにおいて、前記サポート部が、前記セグメントを弾発付勢するバネを備えたものである。
【0008】
前記サポート部が、前記セグメント把持部に取り付けられた固定部と、該固定部にスライド可能に設けられ前記セグメントに当接する当接部と、該当接部と前記固定部との間に設けられ前記セグメントに前記当接部を弾発付勢するためのバネとを備えるとよい。
【0009】
前記サポート部が、前記バネの弾性力を調整すべく前記バネを変形させるバネ力調整手段を備え、前記固定部が、前記セグメント把持部に前記バネの伸縮方向に位置調整可能に設けられるとよい。
【0010】
前記当接部には、前記固定部に対する前記当接部の回転を規制する回り止めが設けられるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セグメントを安定して支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は小径シールドの要部拡大側断面図である。
【図2】図2は図1の背面図である。
【図3】図3は図2の要部拡大平面図である。
【図4】図4は図2の要部拡大図である。
【図5】図5(a)は小径シールド用エレクタのサポート部の背面断面図であり、図5(b)はセグメントを支持しているときのサポート部の背面断面図である。
【図6】図6は図5(b)の側面図である。
【図7】図7はキーセグメントを組み立てる状態の説明図である。
【図8】図8は従来のサポート部の背面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は小径シールドの坑口側を側方から視た側断面図である。図1において紙面左側が切羽側(掘進方向前側)であり、紙面右側が坑口側(掘進方向後側)である。図2は小径シールドを坑口側から視た背面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、小径シールド用エレクタ1は、シールド本体2に同軸上に回転自在に設けられた旋回フレーム3と、旋回フレーム3にリンク機構4を介して径方向に移動可能に設けられセグメント5を着脱自在に把持するセグメント把持部6と、セグメント把持部6に設けられセグメント把持部6に把持されたセグメント5を支持すべくセグメント5に当接するサポート部7と、シールド本体2に設けられ旋回フレーム3を駆動する駆動装置8とを備えて構成される。
【0015】
シールド本体2は、φ3mより小口径のシールド掘進機9の外周壁を形成するシールドフレーム10と、シールドフレーム10の内周面に設けられたリングガーダー11とを備える。
【0016】
旋回フレーム3は、リング状に形成され、リングガーダー11に支持ローラ12、13を介して回転可能に支持されている。旋回フレーム3は切羽側に駆動ギヤ14を有し、駆動ギヤ14には駆動装置8のピニオン15が噛合される。
【0017】
図1及び図3に示すように、リンク機構4は、一端を旋回フレーム3に周方向に延びる軸回り回動自在に設けられると共に他端をセグメント把持部6に前記軸と平行な軸回り回動自在に設けられた一対の平行なリンク16、すなわち平行リンク16からなる。平行リンク16はセグメント把持部6と旋回フレーム3との間に旋回フレーム3の周方向に離間して一対設けられている。
【0018】
セグメント把持部6は、セグメント5をピン結合にて揺動可能に把持するものであり、矩形枠状に形成された昇降フレーム17と、昇降フレーム17に左右(旋回フレームの周方向)に離間して設けられ前後に延びる一対の摺動ガイド18と、これら摺動ガイド18に前後に摺動自在に設けられた摺動フレーム19と、昇降フレーム17に設けられ摺動フレーム19を摺動ガイド18に沿って摺動させる摺動ジャッキ20とを備える。図4に示すように、摺動フレーム19には、セグメント5に設けられた吊り具21にピン22を介して結合される支持ブラケット23が旋回フレーム3の径方向外方に延びて設けられている。支持ブラケット23は、昇降フレーム17の左右方向の中央に位置されており、ピン22を前後方向に向けて挿通させるようになっている。図1及び図3に示すように、セグメント把持部6と旋回フレーム3との間には、セグメント把持部6を旋回フレーム3の径方向に駆動するための昇降ジャッキ24が設けられている。
【0019】
図4及び図5(a)に示すように、サポート部7は、セグメント把持部6の左右両側に設けられ、高さ方向(旋回フレーム3の径方向)の寸法をセグメント把持部6と略同じに形成される。サポート部7は、セグメント把持部6に取り付けられた固定部25と、固定部25に旋回フレーム3の径方向にスライド可能に設けられセグメント把持部6で把持したセグメント5に当接する当接部26と、当接部26と固定部25との間に設けられセグメント5に当接部26を弾発付勢するためのバネ27と、バネ27の弾性力を調整すべくバネ27を変形させるバネ力調整手段28とを備えて構成される。
【0020】
固定部25は、昇降フレーム17の側面にバネ27の伸縮方向(旋回フレーム3の径方向)に位置調整可能に設けられており、バネ27を変形させて当接部26がバネ27の伸縮方向に移動したとき、固定部25の取付位置を移動させることで当接部26を元の位置に戻せるようになっている。固定部25は、昇降フレーム17に位置調整可能に取り付けられる取付板29と、取付板29に設けられ旋回フレーム3の径方向に延びる外筒30と、旋回フレーム3の径方向内側の外筒30の端部に設けられた天板31を備える。図5(a)及び図6に示すように、取付板29は、昇降フレーム17に螺合されるボルト32を挿通させるための複数の長穴33を有する。長穴33は、バネ27の伸縮方向に延びて形成されており、ボルト32を緩めることで固定部25をバネ27の伸縮方向に位置調整できるようになっている。天板31には、後述するバネ力調整手段28の止めネジ34を挿通させるための第1挿通孔35が形成されている。
【0021】
当接部26は、有底筒体状に形成され外筒30内に軸方向スライド可能に挿入される内筒36と、内筒36の底板37に設けられセグメント把持部6がセグメント5を把持したときセグメント5の内周面に当接されるシュー38とを備える。内筒36の底板37には、後述するバネ力調整手段28の止めネジ34を挿通させるための第2挿通孔39が形成されている。シュー38は、内筒36の底板37に締結される鋼製の基部40と、基部40の底面に設けられる緩衝材41とからなる。
【0022】
バネ27は、コイルバネからなり、固定部25の天板31と当接部26の底板37との間に圧縮された状態で設けられる。
【0023】
バネ力調整手段28は、第1挿通孔35と第2挿通孔39に挿通される止めネジ34と、当接部26の底板37に設けられ止めネジ34に螺合される固定ナット42と、天板31より上方(旋回フレーム3の径方向内方)の止めネジ34に螺合され当接部26の下端位置を位置調整可能に規制するための調整用ナット43、44とからなる。調整用ナット43、44は、当接部26がセグメント5に当接しないとき固定部25の天板31に着座される第1ナット43と、第1ナット43の上面に着座される第2ナット44とからなる。
【0024】
また、当接部26には、固定部25に対する当接部26の回転を規制する回り止め45が設けられる。回り止め45は、底板37と基部40とに固定部25の取付板29に摺接する摺接部46、47を形成してなる。摺接部46、47は止めネジ34と直交すると共に取付板29に沿う方向に延びて形成されている。
【0025】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0026】
既設セグメント上に置かれたセグメント5を小径シールド用エレクタ1で把持する場合、図1に示すように、旋回フレーム3を回転させてセグメント把持部6をセグメント5の直上に移動させたのち、昇降ジャッキ24を伸長させてセグメント把持部6を下方に移動させる。これにより、サポート部7のシュー38がセグメント5の内周面に着座する。セグメント把持部6をさらに下方に移動させると、図5(b)に示すように、当接部26の内筒36はバネ27を縮退させながら固定部25の外筒30内に挿入される。
【0027】
図4に示すように、セグメント把持部6が所定の位置に移動されたらセグメント把持部6の支持ブラケット23とセグメント5に設けられた吊り具21とをピン22を介して結合する。しかるのち、セグメント5を所定の組立位置に移動させるべくセグメント把持部6を上昇させる。サポート部7はそれぞれバネ27を縮退させた状態でセグメント5の内周面に当接しているため、セグメント5は所定の弾性力で押されて支持されている。このため、セグメント5がサポート部7等にカタカタと当たることはなく、セグメント5に傷やクラックが入るのを防ぐことができる。
【0028】
また、サポート部7は、高さ方向の寸法をセグメント把持部6と略同じに形成されているため、φ3mに満たない小口径であって中央に排土装置等の機器が配置された狭隘な機内であっても機器等に干渉することはない。
【0029】
把持するセグメント5の重さに応じてバネ27の力を調整する場合、調整用ナット43、44を回してバネ27の長さを伸縮する。具体的には、バネ27の力を強くする場合、調整用ナット43、44を締めてバネ27を縮退させると共に、セグメント把持部6にサポート部7を締結するボルト32を緩め、バネ27が縮退したことで上昇した当接部26の高さを所定の高さに戻すようにサポート部7の取付位置を下げる。また、バネ27の力を弱くする場合、調整用ナット43、44を緩めてバネ27を伸長させると共に、セグメント把持部6にサポート部7を締結するボルト32を緩め、バネ27が伸長したことで下降した当接部26の高さを所定の高さに戻すようにサポート部7の取付位置を上げる。
【0030】
このように、サポート部7が、セグメント5を弾発付勢するバネ27を備えるものとしたため、セグメント5を安定して支持でき、扱うセグメント5が合成セグメントであっても傷やクラックが入るのを防ぐことができる。
【0031】
また、サポート部7が、セグメント把持部6に取り付けられた固定部25と、固定部25にスライド可能に設けられセグメント5に当接する当接部26と、当接部26と固定部25との間に設けられセグメント5に当接部26を弾発付勢するためのバネ27とを備えるものとしたため、簡易な構造で確実にセグメント5を安定支持できる。
【0032】
サポート部7が、バネ27の弾性力を調整すべくバネ27を変形させるバネ力調整手段28を備え、固定部25が、セグメント把持部6にバネ27の伸縮方向に位置調整可能に設けられるものとしたため、簡易な構造でバネ27の強さを調整でき、様々なセグメント5に対応することができる。例えば図7に示すように、周方向の両端がテーパ状に形成されたキーセグメント48を既設セグメント49間に軸方向に挿入して組み立てるときなど、把持したセグメント48の姿勢を組み立てる相手のセグメント49のガイド50に倣って微小に変化させる必要がある場合であっても、バネ27の弾性力の強さを調整することで容易にセグメント48の姿勢変化を許容することができ、セグメント48を容易に組み立てることができる。
【0033】
当接部26には、固定部25に対する当接部26の回転を規制する回り止め45が設けられるものとしたため、セグメント5の内周面に当接部26を常に同じ姿勢で当接させることができ、セグメント5を安定して支持できる。
【0034】
なお、バネ力調整手段28は、止めネジ34と、固定ナット42と、調整用ナット43、44とからなるものとしたが、第1挿通孔35と第2挿通孔39に挿通されると共に頭部が当接部26の底板37に設けられるボルト(図示せず)と、天板31より上方の前記ボルトに螺合される調整用ナット43、44とからなるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 エレクタ
2 シールド本体
3 旋回フレーム
4 リンク機構
5 セグメント
6 セグメント把持部
7 サポート部
25 固定部
26 当接部
27 バネ
28 バネ力調整手段
45 回り止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド本体に同軸上に回転自在に設けられた旋回フレームと、該旋回フレームにリンク機構を介して径方向に移動可能に設けられセグメントを着脱自在に把持するセグメント把持部と、該セグメント把持部に設けられセグメント把持部に把持されたセグメントを支持すべく該セグメントに当接するサポート部とを備えた小径シールド用エレクタにおいて、前記サポート部が、前記セグメントを弾発付勢するバネを備えたことを特徴とする小径シールド用エレクタ。
【請求項2】
前記サポート部が、前記セグメント把持部に取り付けられた固定部と、該固定部にスライド可能に設けられ前記セグメントに当接する当接部と、該当接部と前記固定部との間に設けられ前記セグメントに前記当接部を弾発付勢するためのバネとを備えた請求項1記載の小径シールド用エレクタ。
【請求項3】
前記サポート部が、前記バネの弾性力を調整すべく前記バネを変形させるバネ力調整手段を備え、前記固定部が、前記セグメント把持部に前記バネの伸縮方向に位置調整可能に設けられた請求項2記載の小径シールド用エレクタ。
【請求項4】
前記当接部には、前記固定部に対する前記当接部の回転を規制する回り止めが設けられた請求項2又は3記載の小径シールド用エレクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−12467(P2011−12467A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158032(P2009−158032)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】