説明

小径曲げ光コネクタ及びこの製造方法

【課題】振動や衝撃による損失変動を抑えることが可能な、また、破断確率を十分に小さくすることが可能な小径曲げ光コネクタ及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】小径曲げ光コネクタ21は、曲げ光ファイバ固定部品28と、光コネクタハウジング29とを備えて構成されている。曲げ光ファイバ固定部品28は、曲げ光ファイバ30と、フェルール31、31と、固定部品用ハウジング32とを含んで構成されている。曲げ光ファイバ30は、曲げ部33と、この曲げ部33に連続する直線部34、34とを有している。固定部品用ハウジング32は、フェルール用スペース43、43と、曲げ部用スペース44と、直線部用スペース45、45とを有している。光コネクタハウジング29は、嵌合部48、48と、固定部品用凹部49とを有している。曲げ部33は、接着剤52にて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送路の曲げ箇所に局所的に用いる小径曲げ光コネクタと、この小径曲げ光コネクタの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、光伝送路の曲げ箇所に局所的に用いる光コネクタ(文献中では光モジュールと呼ばれている)の技術が開示されている。以下、図10を参照しながら光コネクタの構成及び構造について簡単に説明をする。
【0003】
光コネクタ1は、プラグ部2と、光ファイバ収納部3と、レセプタクル部4とを備えて構成されている。光コネクタ1は、プラグ部2、光ファイバ収納部3、及びレセプタクル部4を一体化してなる構造を有している。
【0004】
プラグ部2は、フェルール5と、スプリング6と、これらを収容する嵌合部7とを有している。プラグ部2は、スプリング6の変形により、フェルール5がプラグ部2の長手方向に沿って所定量だけ移動可能となるように構成されている。
【0005】
レセプタクル部4は、フェルール8と、スリーブ9と、これらを収容する嵌合部10とを有している。フェルール8は、この先端側がスリーブ9内に収容されている。
【0006】
光ファイバ収容部3は、短尺な光ファイバ11と、この光ファイバ11を収容する収容空間12とを有している。光ファイバ11の端末には、フェルール5、フェルール8がそれぞれ組み付けられている。光ファイバ11は、収容空間12において特に固定されることなく自由な状態で収容されている。
【0007】
光コネクタ1は、プラグ部2の長手方向と、レセプタクル部4の長手方向とのなす角度が90°となるように形成されている(下記特許文献1には回転手段により角度を可変させることができる例も開示されている)。光ファイバ11は、フェルール5及びフェルール8の間で略90°曲げられている。
【0008】
上記構成及び構造において、光伝送路の途中となる曲げ箇所に光コネクタ1を局所的に用いると、フェルール5がスプリング6の変形により光ファイバ収容部3の側へ移動する。この時、収容空間12における光ファイバ11は図中点線で示す撓みによってフェルール5の移動を吸収する。
【0009】
尚、下記特許文献1では、光ファイバ11の外径(クラッド径)が40μm〜90μmとなるものであれば、機械的信頼性が高く、曲げ半径を小さくしても低損失な光ファイバ11を実現することができると開示されている。この他、光ファイバ11に関し、一般的な(汎用の)外径125μmのものは適用外となっており、仮に外径125μmのものを使用した場合には、曲げ半径5mm(R=5mm)の条件で機械的信頼性を確保する必要があると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−102112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された光ファイバ11にあっては、収容空間12において特に固定されることなく自由な状態で収容されることから、振動や衝撃を受けると、これに伴って光ファイバ11の曲げの状態が変わるとともに曲げ損失が変化してしまうという虞がある。従って、場合によっては瞬間的に曲げ半径(R)が小さな状態になり、結果、損失が増大して信号波形の劣化を引き起こしてしまうという虞がある。
【0012】
ところで、近年、光ファイバを小径で曲げる要求が多くなってきているが、曲げによる損失や破断の虞から、曲げ半径の制約が光ファイバ適用への障壁となってしまうことがある。特にガラス光ファイバを小径で曲げると、ガラス径が大きくなるにつれて曲げ応力歪みが大きくなり、結果、破断確率が増大してこれが障壁となってしまうことがある。
【0013】
汎用となるクラッド径125μmのガラス光ファイバを使用する場合、R=3mm程度となる小さな曲げ半径では、上記のことから破断確率が更に増大してしまうことになる。従って、このような小さな曲げ半径のものを光伝送路の途中となる曲げ箇所に局所的に用いると、光伝送路の故障につながってしまうという懸念がある。
【0014】
この他、接続損失を考慮してコア径の大きなガラス光ファイバを用いこれを配索する場合を考えてみると、コア径の増大に伴いクラッド径も大きくなってしまう(光ファイバ外径も大きくなってしまう)ことから、破断の懸念があり、小径で曲げることは困難になってしまうといえる。
【0015】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、振動や衝撃による損失変動を抑えることが可能な、また、破断確率を十分に小さくすることが可能な小径曲げ光コネクタ及びこの製造方法を提供することを課題とする。さらに、生産性向上やコスト低減を図ることが可能な小径曲げ光コネクタ及びこの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の小径曲げ光コネクタは、曲げ光ファイバ固定部品と、該曲げ光ファイバ固定部品を組み付ける光コネクタハウジングとを備え、前記曲げ光ファイバ固定部品を、所望の曲げ半径に加工した曲げ部及び該曲げ部に連続する直線部を有する曲げ光ファイバと、該曲げ光ファイバにおける前記直線部の端部にそれぞれ組み付けるフェルールと、該フェルールをそれぞれ組み付けるフェルール用スペース及び前記曲げ部を収容する曲げ部用スペースを有する固定部品用ハウジングと、を含んで構成するとともに、前記曲げ部用スペースに収容した前記曲げ部を固定手段にて固定状態にすることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の本発明の小径曲げ光コネクタは、請求項1に記載の小径曲げ光コネクタにおいて、前記直線部の微小曲げを許容する第一微小曲げ許容スペースを前記フェルールの端部から内部にかけて形成することを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の本発明の小径曲げ光コネクタは、請求項1又は請求項2に記載の小径曲げ光コネクタにおいて、前記直線部の微小曲げを許容する第二微小曲げ許容スペースを前記フェルールと前記曲げ部用スペースとの間に形成することを特徴とする。
【0019】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4記載の本発明の小径曲げ光コネクタの製造方法は、所望の曲げ半径に加工した曲げ部及び該曲げ部に連続する直線部を有する曲げ光ファイバを形成する曲げ光ファイバ形成工程と、該曲げ光ファイバ形成工程の前後いずれかで行い且つ前記直線部の端部にそれぞれフェルールを組み付けるフェルール組み付け工程と、前記フェルールを固定部品用ハウジングのフェルール用スペースに組み付けるとともに、前記曲げ部を前記固定部品用ハウジングの曲げ部用スペースに収容し、さらに該曲げ部用スペースに収容した前記曲げ部を固定手段にて固定状態にすることにより曲げ光ファイバ固定部品を形成する曲げ光ファイバ固定部品形成工程と、前記曲げ光ファイバ固定部品を光コネクタハウジングに組み付けて小径曲げ光コネクタを形成する光コネクタ形成工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載された本発明によれば、所望の曲げ半径に加工した曲げ部を有する曲げ光ファイバを構成に含み、曲げ部の加工の際に曲げ応力歪みを取り除いた状態にすれば、曲げ半径の小さな光コネクタを提供するにあたって、光ファイバの破断確率を小さくすることができるという効果を奏する。また、接続損失等に考慮してコア径を大きくしこれに伴ってクラッド径も大きくなるガラス光ファイバを用いる場合を考えると、上記同様に曲げ部の加工の際に曲げ応力歪みを取り除いた状態にすれば、曲げ半径の小さな光コネクタを提供するにあたって、光ファイバの破断確率を小さくすることができるという効果を奏する。以上のような曲げ光ファイバを構成に含む小径曲げ光コネクタを提供すれば、光伝送路の故障を防止することができるという効果も奏する。
【0021】
また、本発明によれば、曲げ部用スペースに収容した曲げ光ファイバの曲げ部を固定手段にて固定状態にすることから、振動や衝撃を受けても曲げ部の曲げ状態は変わらず、結果、損失変動を抑えることができるという効果を奏する。
【0022】
さらに、本発明によれば、固定部品用ハウジングを構成に含むことにより、曲げ半径の寸法公差を緩くすることが可能になることから、曲げ光ファイバにおける曲げ部の寸法管理を容易にすることができるという効果を奏する。従って、生産性の向上やコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0023】
請求項2に記載された本発明によれば、曲げ光ファイバにおける曲げ部の寸法のバラツキを第一微小曲げ許容スペースにて吸収することができるという効果を奏する。従って、曲げ部の寸法管理を更に容易にすることができるという効果を奏する。
【0024】
請求項3に記載された本発明によれば、曲げ光ファイバにおける曲げ部の寸法のバラツキを第二微小曲げ許容スペースにて吸収することができるという効果を奏する。従って、曲げ部の寸法管理を更に容易にすることができるという効果を奏する。
【0025】
請求項4に記載された本発明によれば、上記効果の小径曲げ光コネクタに係る製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の小径曲げ光コネクタを示す図であり、(a)は構成図、(b)は使用状態の説明図である。
【図2】曲げ光ファイバ固定部品を示す斜視図である。
【図3】端末にフェルールを設けた状態の曲げ光ファイバを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図4】ベース側の固定部品用ハウジングを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図5】光コネクタハウジングを示す図であり、(a)はベース側の光コネクタハウジングの正面図、(b)はカバー側の光コネクタハウジングの正面図である。
【図6】曲げ光ファイバ固定部品形成工程に係る図であり、(a)は曲げ部を固定する前の図、(b)は曲げ部を固定した後の図である。
【図7】(a)は曲げ光ファイバ固定部品形成工程に係る図、(b)は光コネクタ形成工程に係る図である。
【図8】(a)〜(d)は曲げ半径が大きい場合及び曲げ半径が小さい場合の形成に係る図である。
【図9】(a)はベース側の固定部品用ハウジングの変形例に係る図、(b)は小径曲げ光コネクタの変形例に係る図である。
【図10】従来例の光コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら一実施形態を説明する。図1は本発明の小径曲げ光コネクタを示す図である。また、図2は曲げ光ファイバ固定部品を示す図、図3は端末にフェルールを設けた状態の曲げ光ファイバを示す図、図4はベース側の固定部品用ハウジングを示す図、図5は光コネクタハウジングを示す図、図6は曲げ光ファイバ固定部品形成工程に係る図、図7は光ファイバ固定部品形成工程及び光コネクタ形成工程に係る図、図8は曲げ半径が大きい場合及び曲げ半径が小さい場合の形成に係る図、図9は変形例に係る図である。
【0028】
図1において、引用符号21は本発明の小径曲げ光コネクタを示している。小径曲げ光コネクタ21は、光伝送路22の途中となる曲げ箇所23に局所的に用いるための部品であって、本形態においては第一光ファイバレセプタクル24と第二光ファイバレセプタクル25とを光学的且つ機械的に接続することができる構成及び構造を有している。第一光ファイバレセプタクル24の長手方向及び第二光ファイバレセプタクル25の長手方向は、本形態において直交するように配置されている。小径曲げ光コネクタ21は、光伝送路22を略90°曲げることができるようになっている(曲げ角度は一例であるものとし、任意の曲げ角度に設定してよいものとする)。
【0029】
第一光ファイバレセプタクル24及び第二光ファイバレセプタクル25は、伝送路22に設けられるフェルール26と、このフェルール26を収容して小径曲げ光コネクタ21に嵌合する嵌合部27とをそれぞれ有している。小径曲げ光コネクタ21に対する光学的且つ機械的に接続する構造に関しては一例であるものとする。
【0030】
小径曲げ光コネクタ21は、曲げ光ファイバ固定部品28と、この曲げ光ファイバ固定部品28の組み付け先となる光コネクタハウジング29とを備えて構成されている。先ず、上記の各構成について説明をする。
【0031】
図1及び図2において、曲げ光ファイバ固定部品28は、曲げ光ファイバ30と、フェルール31、31と、固定部品用ハウジング32とを含んで構成されている。フェルール31、31は、それぞれ曲げ光ファイバ30の端末に組み付けられており、これらフェルール31、31及び曲げ光ファイバ30は、固定部品用ハウジング32の所定位置に収容されている。
【0032】
図1及び図3において、曲げ光ファイバ30は、曲げ箇所23に必要となる長さの確保がなされた短尺の光ファイバであって、ここでは汎用となるクラッド径125μmのガラス光ファイバが使用されている(従来例のクラッド径90μm〜40μmとなるものであってもよいものとする)。曲げ光ファイバ30は、略90°に曲げられた曲げ部33と、この曲げ部33に連続する直線部34、34とを有している。
【0033】
曲げ部33は、例えばR=3mm程度となる小さな曲げ半径(所望の曲げ半径でよいものとする)に加工されている。曲げ部33は、ヒータ等で加熱をしつつ曲げ応力歪みが残らないように上記曲げ半径に曲げて硬化させることにより形成されている。曲げ部33は、曲げが施されてもこの部分に残留する歪みが非常に小さなものとなっている。このため、上記曲げ半径であっても長期間で曲げ部33が破断する確率は十分に小さなものになっている(曲げ部33は、長期的に破断の虞がなく、単に曲げたものとは異なっている)。曲げ部33は、図3(b)において仮想線L1、L1の間の部分として形成されている。
【0034】
直線部34、34は、仮想線L1、L2の間の部分として形成されている。直線部34、34は、フェルール31、31を組み付ける部分として形成されるのは勿論のこと、曲げ部33の曲げ半径の寸法公差を吸収するための部分としても形成されている(寸法公差の吸収については後述する)。
【0035】
フェルール31、31は、共に同じものであり、以下、片方について説明をする。フェルール31は、金属製又は樹脂製の略筒状の部材であって、筒外面が段付き形状に形成されている。すなわち、フェルール31は、大径部と小径部とを有している。また、フェルール31の筒内面も段付き形状に形成されている。
【0036】
フェルール31における引用符号35は直線部34の挿通・固定をする部分としての光ファイバ挿通孔を示している。また、引用符号36は直線部34の微小曲げを許容する第一微小曲げ許容スペースを示している。さらに、引用符号37は第一微小曲げ許容スペース36と光ファイバ挿通孔35との間に形成される光ファイバ案内用テーパを示している。さらにまた、引用符号38はフェルール31の後端部に形成されるテーパを示している。
【0037】
光ファイバ挿通孔35は、フェルール31における先端面39の中央を貫通するように形成されている。第一微小曲げ許容スペース36は、テーパ38から光ファイバ案内用テーパ37にかけての内部空間として形成されている。光ファイバ案内用テーパ37は、筒内面の段付き部分に配置形成されている。
【0038】
図2及び図4において、固定部品用ハウジング32は、合成樹脂製の成形品であって、ベース側の固定部品用ハウジング40と、カバー側の固定部品用ハウジング41とを備えて構成されている。ベース側の固定部品用ハウジング40とカバー側の固定部品用ハウジング41は、同じ構成及び構造を有して面接合42をするようになっている。以下では一方を代表にして説明をするものとする(カバー側の固定部品用ハウジング41の使用は任意であるものとする。使用する場合は、曲げ光ファイバ30等の汚れ防止や保護に有効である。尚、使用しない場合は、これに対応するよう後述する光コネクタハウジング29の構成を変えるものとする)。
【0039】
ベース側の固定部品用ハウジング40は、フェルール用スペース43、43、曲げ部用スペース44、及び直線部用スペース45、45を有しており、外観が略扇形状となるように形成されている。フェルール用スペース43、43、曲げ部用スペース44、及び直線部用スペース45、45は、凹状に形成されている。また、曲げ部用スペース44及び直線部用スペース45、45は、フェルール用スペース43、43の間に延びる浅底の溝状に形成されている。フェルール用スペース43及び直線部用スペース45の一方・他方は、本形態において直交するように配置されている。
【0040】
フェルール用スペース43は、フェルール31を収容して組み付ける断面半円形状の凹みであって、フェルール31の大径部の直径及び長手方向の長さに合わせて形成されている。フェルール用スペース43には、直線部用スペース45が連成されている。また、直線部用スペース45には、これと同じ幅で曲げ部用スペース44が連成されている。
【0041】
曲げ部用スペース44は、この凹状の外側曲線となる外側半径r1が曲げ光ファイバ30における曲げ半径の最大値以上となるように設定されている。また、内側曲線となる内側半径r2が曲げ光ファイバ30における曲げ半径の最小値以下となるように設定されている。尚、曲げ光ファイバ30における曲げ部33に応力が掛からないようにこれを収容することができれば、特に形状は限定されないものとする。
【0042】
曲げ部用スペース44は、図4(b)において仮想線L3、L3の間の部分として形成されている。直線部用スペース45は、フェルール用スペース43から仮想線L3の間の部分として形成されている。
【0043】
図1及び図5において、光コネクタハウジング29は、合成樹脂製の成形品であって、ベース側の光コネクタハウジング46と、カバー側の光コネクタハウジング47とを備えて構成されている。ベース側の光コネクタハウジング46とカバー側の光コネクタハウジング47は、同じ構成及び構造を有して面接合をするようになっている。
【0044】
ベース側の光コネクタハウジング46及びカバー側の光コネクタハウジング47は、第一光ファイバレセプタクル24及び第二光ファイバレセプタクル25が嵌合する嵌合部48、48と、曲げ光ファイバ固定部品28の組み付け先となる固定部品用凹部49とを有して構成されている。嵌合部48、48は、この長手方向が本形態において直交するように配置されている。嵌合部48、48は、固定部品用凹部49に連通しており、連通部分にはフェルール31、31の小径部が挿通されるようになっている。フェルール31、31は、この先端側が嵌合部48、48内に突出するようになっている。
【0045】
フェルール31、31の先端側が嵌合部48、48内に突出すると、この各部分は第一光ファイバプラグ50及び第二光ファイバプラグ51として機能するようになっている。第一光ファイバプラグ50は、第一光ファイバレセプタクル24と光学的且つ機械的に接続することができるように形成されている。第二光ファイバプラグ51も第二光ファイバレセプタクル25と光学的且つ機械的に接続することができるように形成されている(例えばロック構造等があるが、この図示は省略するものとする)。
【0046】
固定部品用凹部49は、固定部品用ハウジング32(ベース側の固定部品用ハウジング40及びカバー側の固定部品用ハウジング41)の外観形状に合わせて凹むように形成されている。
【0047】
次に、上記構成及び構造に基づきながら、小径曲げ光コネクタ21の組み付けについて説明をする。
【0048】
<曲げ光ファイバ形成工程>
図3において、ここでの工程では、曲げ部33及びこれに連続する直線部34、34を有する曲げ光ファイバ30を形成することを行う。具体的には、ヒータ等で加熱をしつつ曲げ応力歪みが残らないように例えばR=3mm程度となる小さな曲げ半径で曲げ、この後に硬化させることにより曲げ光ファイバ30を形成することを行う。
【0049】
<フェルール組み付け工程>
図3において、ここでの工程では、曲げ光ファイバ30の直線部34、34にそれぞれフェルール31、31を組み付けることを行う。具体的には、直線部34をフェルール31の後端部から差し込んで光ファイバ挿通孔35に挿通するとともに、接着剤等の公知の固定方法にて固定をすることを行う。この時、フェルール31の先端面39から直線部34の端部を突出(図6参照)させるようにして固定をすることを行う。尚、このようなフェルール組み付け工程は、曲げ光ファイバ形成工程における曲げ部33の曲げの前に行ってもよいものとする。
【0050】
<曲げ光ファイバ固定部品形成工程>
図6及び図7(a)において、ここでの工程では、端末にフェルール31、31を組み付けた状態の曲げ光ファイバ30を固定部品用ハウジング32(ベース側の固定部品用ハウジング40及びカバー側の固定部品用ハウジング41)に組み付けるとともに、この組み付けの過程で曲げ光ファイバ30の曲げ部33を接着剤52にて固定状態にし、これにより曲げ光ファイバ固定部品28を形成することを行う。
【0051】
具体的には、フェルール31、31をベース側の固定部品用ハウジング40におけるフェルール用スペース43、43に収容するとともに、曲げ部33をベース側の固定部品用ハウジング40における曲げ部用スペース44に収容することを先ず行う(図6(a)参照)。次に、曲げ部用スペース44に収容した曲げ部33を接着剤52にて固定状態にすることを行う(図6(b)参照)。尚、曲げ部33における曲げ半径の寸法公差が大きい場合、又は小さい場合には、フェルール31、31がフェルール用スペース43、43から若干突出することになる。しかしながら、この突出分は後に吸収されるようになる。突出により生じた引用符号53のスペースは、特許請求の範囲に記載した第二微小曲げ許容スペースに相当するものとする(後述する)。
【0052】
続いて、ベース側の固定部品用ハウジング40に対しカバー側の固定部品用ハウジング41を被せるとともに、図示しない固定部又は接着剤等によりこれらを固定することを行う。この時、フェルール31、31をフェルール用スペース43、43の所定位置に固定することも行う。例えば、図2及び図6(b)に示すフェルール31、31の若干突出する状態にあっては、これをゆっくりと押し込むようにして固定をすることを行う。フェルール31、31は第一微小曲げ許容スペース36を有することから、図7(a)に示すように直線部34の微小曲げが許容されてフェルール31、31の所定位置への固定が可能になる。最後に、フェルール31の先端面39から突出する直線部34の端部を除去するように、先端面39を研磨等により平滑化することを行う(光ファイバ端面を平滑にし、端面での散乱を抑える)。以上により曲げ光ファイバ固定部品28の形成が完了する。
【0053】
曲げ光ファイバ固定部品28の形成に係り、曲げ部33を固定状態にする接着剤52としては、例えばUV硬化樹脂を用いることが好適な例として挙げられるものとする。また、曲げ損失を低減するため、シリコーン系及びフッ素系の低屈折率の材料を使用することが望ましいものとする。接着剤52以外による固定としては、柔軟性のある材質からなる押さえ付け部材(固定手段)を用いて押さえ付けをするようにしても好適であるものとする。曲げ部33を最初に接着剤52等の固定手段にて固定状態にすることにより、曲げ部33には歪みの発生がないといえる。
【0054】
<光コネクタ形成工程>
図7(b)において、ここでの工程では、曲げ光ファイバ固定部品28を光コネクタハウジング29(ベース側の光コネクタハウジング46及びカバー側の光コネクタハウジング47)に組み付けて小径曲げ光コネクタ21を形成することを行う。具体的には、先ず曲げ光ファイバ固定部品28をベース側の光コネクタハウジング46の固定部品用凹部49や嵌合部48、48に組み付けることを行う。次に、ベース側の光コネクタハウジング46に対しカバー側の光コネクタハウジング47を被せるとともに、図示しない固定部又は接着剤等によりこれらを固定することを行う。以上により小径曲げ光コネクタ21の形成(組み付け)が完了する。
【0055】
以上、図1ないし図7を参照しながら説明してきたように、小径曲げ光コネクタ21によれば、所望の曲げ半径(R=3mm程度)に加工した曲げ部33を有する曲げ光ファイバ30を構成に含み、曲げ部33はこの形成の際に曲げ応力歪みを取り除いた状態にしていることから、従来に比べて光ファイバの破断確率を小さくすることができるという効果を奏する。また、小径曲げ光コネクタ21によれば、汎用となるクラッド径125μmのガラス光ファイバを用いても光ファイバの破断確率を小さくすることができるという効果を奏する。光ファイバの破断確率を小さくすることができるのであれば、光伝送路22の故障を防止することができるという効果も奏する。
【0056】
また、小径曲げ光コネクタ21によれば、曲げ部用スペース44に収容した曲げ部33を接着剤52にて固定状態にすることから、振動や衝撃を受けても曲げ部33の曲げ状態を変わらないようにすることができるという効果を奏する。従って、損失変動を抑えることができるという効果を奏する。
【0057】
さらに、小径曲げ光コネクタ21によれば、固定部品用ハウジング32(ベース側の固定部品用ハウジング40及びカバー側の固定部品用ハウジング41)の構造等により曲げ半径の寸法公差を緩くすることが可能になることから、曲げ部33の寸法管理を容易にすることができるという効果を奏する。従って、生産性の向上やコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0058】
さらにまた、小径曲げ光コネクタ21によれば、曲げ部33の寸法のバラツキを第一微小曲げ許容スペース36や第二微小曲げ許容スペース53にて吸収することができるという効果を奏する。従って、曲げ部33の寸法管理を容易にすることができるという効果を奏する。
【0059】
続いて、図8を参照しながら、曲げ光ファイバ固定部品28について補足説明をする。
【0060】
図8(a)は、曲げ光ファイバ30における曲げ部33の曲げ半径が所望の寸法で形成された場合の図であり、曲げ部33は曲げ部用スペース44のほぼ中央位置において固定状態になっている。また、直線部34、34はフェルール31、31の内部において真っ直ぐな状態になっている。ところで、曲げ半径が大きい場合及び曲げ半径が小さい場合には、図8(b)及び(c)に示すように第一微小曲げ許容スペース36、36にて直線部34、34の微小曲げが許容され、これによりフェルール31、31の所定位置への固定が可能になっている。直線部34、34の微小曲げは、第一微小曲げ許容スペース36、36の形成により可能になるのは勿論のこと、図8(d)に示すようにフェルール31、31と曲げ部用スペース44との間に第二微小曲げ許容スペース53を形成することにより可能になる。
【0061】
続いて、図9を参照しながら変形例について説明をする。変形例は複数本の曲げ光ファイバ30(図3参照)を使用することができるようにしたものである。
【0062】
図9(a)に示す例は、固定部品用ハウジング(ベース側の固定部品用ハウジング40′)のフェルール用スペース43、43、曲げ部用スペース44、及び直線部用スペース45、45の外側に、これらと同様の、フェルール用スペース43′、43′、曲げ部用スペース44′、及び直線部用スペース45′、45′を設けたものである。
【0063】
図9(b)に示す例は、曲げ光ファイバ固定部品28、28を上下に重ね合わせたものである。
【0064】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
21…小径曲げ光コネクタ
22…光伝送路
23…曲げ箇所
24…第一光ファイバレセプタクル
25…第二光ファイバレセプタクル
26…フェルール
27…嵌合部
28…曲げ光ファイバ固定部品
29…光コネクタハウジング
30…曲げ光ファイバ
31…フェルール
32…固定部品用ハウジング
33…曲げ部
34…直線部
35…光ファイバ挿通孔
36…第一微小曲げ許容スペース
37…光ファイバ案内用テーパ
38…テーパ
39…先端面
40…ベース側の固定部品用ハウジング
41…カバー側の固定部品用ハウジング
42…面接合
43…フェルール用スペース
44…曲げ部用スペース
45…直線部用スペース
46…ベース側の光コネクタハウジング
47…カバー側の光コネクタハウジング
48…嵌合部
49…固定部品用凹部
50…第一光ファイバプラグ
51…第二光ファイバプラグ
52…接着剤(固定手段)
53…第二微小曲げ許容スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ光ファイバ固定部品と、該曲げ光ファイバ固定部品を組み付ける光コネクタハウジングとを備え、
前記曲げ光ファイバ固定部品を、
所望の曲げ半径に加工した曲げ部及び該曲げ部に連続する直線部を有する曲げ光ファイバと、
該曲げ光ファイバにおける前記直線部の端部にそれぞれ組み付けるフェルールと、
該フェルールをそれぞれ組み付けるフェルール用スペース及び前記曲げ部を収容する曲げ部用スペースを有する固定部品用ハウジングと、
を含んで構成するとともに、
前記曲げ部用スペースに収容した前記曲げ部を固定手段にて固定状態にする
ことを特徴とする小径曲げ光コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の小径曲げ光コネクタにおいて、
前記直線部の微小曲げを許容する第一微小曲げ許容スペースを前記フェルールの端部から内部にかけて形成する
ことを特徴とする小径曲げ光コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の小径曲げ光コネクタにおいて、
前記直線部の微小曲げを許容する第二微小曲げ許容スペースを前記フェルールと前記曲げ部用スペースとの間に形成する
ことを特徴とする小径曲げ光コネクタ。
【請求項4】
所望の曲げ半径に加工した曲げ部及び該曲げ部に連続する直線部を有する曲げ光ファイバを形成する曲げ光ファイバ形成工程と、
該曲げ光ファイバ形成工程の前後いずれかで行い且つ前記直線部の端部にそれぞれフェルールを組み付けるフェルール組み付け工程と、
前記フェルールを固定部品用ハウジングのフェルール用スペースに組み付けるとともに、前記曲げ部を前記固定部品用ハウジングの曲げ部用スペースに収容し、さらに該曲げ部用スペースに収容した前記曲げ部を固定手段にて固定状態にすることにより曲げ光ファイバ固定部品を形成する曲げ光ファイバ固定部品形成工程と、
前記曲げ光ファイバ固定部品を光コネクタハウジングに組み付けて小径曲げ光コネクタを形成する光コネクタ形成工程と、
を含む
ことを特徴とする小径曲げ光コネクタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate