説明

小径超硬エンドミル

【課題】底刃の外径D1が0.5mm以下の小径超硬エンドミルにおいて、刃部の剛性や機械的強度を高くし、工具の撓み変形や折損を抑制して加工精度や耐久性を向上させるとともに、刃部の研削加工時や段取り時等の取り扱いを容易にする。
【解決手段】先端半角αが15°以上になるように刃部14とシャンク12との間に径寸法が滑らかに連続的に増大する径増大部16が設けられているため、シャンク12から刃部14の先端までの突出寸法L2が小さくなり、刃部14を含む突出部分の機械的強度や剛性が高くなって工具の撓み変形や折損が抑制される。これにより、切削加工時に高い加工精度が得られるとともに耐久性が向上する一方、刃部14の研削加工時やホルダに装着する際の段取り時等における折損も抑制されて、取り扱いが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小径超硬エンドミルに係り、特に、工具の撓み変形や折損を抑制して高い加工精度が得られる高寿命の小径超硬エンドミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超硬合金にて構成されているとともに、底刃および外周刃を有する刃部がシャンクの先端側に同軸に一体に設けられており、且つその底刃の外径D1が0.5mm以下の小径超硬エンドミルが提案されている。特許文献1に記載のエンドミルはその一例で、シャンクの先端側には、径寸法が直線的に小さくなる第1テーパ部と、径寸法が一定の首部と、径寸法が直線的に小さくなる第2テーパ部と、を介して小径の刃部が一体に設けられている。
【特許文献1】特開2006−88229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の小径超硬エンドミルは、シャンクから刃部までの突出寸法が大きくなるため、剛性や機械的強度を確保することが困難で、切削加工時に撓み変形や折損が生じ易く、十分な加工精度や耐久性が得られ難いばかりでなく、刃部の研削加工時やホルダに装着する際の段取り時等にも折損する可能性があり、取り扱いが容易でなかった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、底刃の外径D1が0.5mm以下の小径超硬エンドミルにおいて、刃部の剛性や機械的強度を高くし、工具の撓み変形や折損を抑制して加工精度や耐久性を向上させるとともに、刃部の研削加工時や段取り時等の取り扱いを容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1発明は、超硬合金にて構成されているとともに、底刃および外周刃を有する刃部がシャンクの先端側に同軸に一体に設けられており、且つその底刃の外径D1が0.5mm以下の小径超硬エンドミルであって、前記底刃と外周刃とを接続しているコーナと前記シャンクの先端外周縁とを結ぶ傾斜直線Sが、中心線Oに対して傾斜する先端半角αが、15°以上になるように、前記刃部と前記シャンクとの間にその刃部と同じ外径からシャンクと同じ外径になるまでシャンク側へ向かうに従って径寸法が大きくなる径増大部を備えていることを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明の小径超硬エンドミルにおいて、前記径増大部は、前記刃部から前記シャンクに達するまで径寸法が滑らかに連続的に増大させられていることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第2発明の小径超硬エンドミルにおいて、前記径増大部は、(a) 前記刃部から前記シャンク側へ向かうに従って、その刃部と同じ外径から径寸法が直線的に大きくなるテーパ部を、その刃部に連続して備えているとともに、(b) そのテーパ部に滑らかに接続されるとともに、軸方向の外形線が凹円弧状となるように径寸法が非線形に増大させられて前記シャンクの先端外周縁に達している凹円弧形状部を、そのテーパ部とシャンクとの間に備えていることを特徴とする。
【0008】
第4発明は、第3発明の小径超硬エンドミルにおいて、前記凹円弧形状部は、前記軸方向の外形線が一定の半径Rで湾曲させられていることを特徴とする。
【0009】
第5発明は、第4発明の小径超硬エンドミルにおいて、前記先端半角αは15°〜35°の範囲内で、前記テーパ部のテーパ半角βは5°以上、20°未満の範囲内であることを特徴とする。
なお、テーパ半角βは、テーパ角度の1/2のことである。
【発明の効果】
【0010】
このような小径超硬エンドミルにおいては、先端半角αが15°以上になるように刃部とシャンクとの間に径増大部が設けられているため、シャンクから刃部の先端までの突出寸法が小さくなり、刃部を含む突出部分の機械的強度や剛性が高くなって工具の撓み変形や折損が抑制される。これにより、切削加工時に高い加工精度が得られるとともに耐久性が向上する一方、刃部の研削加工時やホルダに装着する際の段取り時等における折損も抑制されて、取り扱いが容易になる。
【0011】
第2発明では、上記径増大部の径寸法が滑らかに連続的に増大させられているため、径寸法の急な変化に起因する応力集中が防止され、切削加工時等の折損が一層効果的に抑制される。
【0012】
第3発明では、径増大部がテーパ部と凹円弧形状部とを備えているため、径寸法の急な変化による応力集中を防止しつつ前記先端半角αを容易に15°以上として、機械的強度や剛性を向上させることができる。
【0013】
第4発明では、凹円弧形状部が一定の半径Rで湾曲させられているため、その設計や加工が容易で、高い寸法精度で凹円弧形状部を加工することができる。
【0014】
第5発明では、テーパ部のテーパ半角βが20°未満であるため、径寸法の急な変化による刃部との境界部分の応力集中が防止される一方、そのテーパ半角βは5°以上であるため、テーパ部による応力集中防止作用を享受しつつ凹円弧形状部によって前記先端半角αが15°以上になるようにすることができる。また、先端半角αが35°以下とされているため、テーパ部として所定長さを確保しつつ、一定の半径Rの凹円弧形状部によってシャンクと同じ外径まで径寸法を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の小径超硬エンドミルは、底刃の外径D1が0.5mm以下であれば良く、その外径D1と同じ一定の径寸法の外周刃を備えているストレート刃のエンドミルや、径寸法が外径D1から直線的に大きくなるテーパ刃エンドミルに好適に適用されるが、底刃が半球面上に設けられているボールエンドミルなどの他のエンドミルにも適用され得る。本発明は外径D1が0.1mm以下のエンドミルに好適に適用される一方、外径D1が0.5mmより大きいエンドミルについても、本発明と同様に構成することが可能である。
【0016】
刃部には、切り屑排出用の溝が形成され、その溝に沿って外周刃が設けられるとともに、その外周刃に連続するように底刃が設けられる。溝としてはねじれ溝が望ましいが、加工が容易な直溝を採用することもできる。溝数すなわち刃数は、極めて小径であることから2本(2枚刃)が適当であるが、1本(1枚刃)または3本(3枚刃)以上とすることも可能である。
【0017】
先端半角αが15°より小さいと、シャンクから刃部の先端までの突出寸法が大きくなり、機械的強度や剛性が得られ難くなるため、先端半角αが15°以上になるように径増大部を構成する必要がある。径増大部を、刃部に接続されるテーパ部と、シャンクに接続される一定の半径Rの凹円弧形状部とによって構成した場合には、所定の長さ寸法のテーパ部を確保する上で、先端半角αが35°以下の範囲で径増大部を構成することが望ましい。
【0018】
径増大部は、第2発明のように径寸法を滑らかに連続的に増大させることが望ましいが、第1発明の実施に際しては、径寸法が一定の円筒部や、径寸法の変化率が不連続に変化している不連続変化部などを備えていても良い。なお、第2発明では、径増大部における径寸法が滑らかに連続的に増大させられておれば良く、刃部と径増大部との境界や、径増大部とシャンクとの境界では、径寸法の変化率が不連続に変化していても良い。
【0019】
第3発明では、径増大部が刃部に接続されるテーパ部とシャンクに接続される凹円弧形状部とを備えているが、他の発明の実施に際しては、刃部に接続される凹円弧形状部とシャンクに接続されるテーパ部とによって構成したり、刃部に接続されるテーパ部と、中間の凹円弧形状部と、シャンクに接続されるテーパ部とによって構成したり、或いは凹円弧形状部のみで構成したりするなど、種々の態様が可能である。
【0020】
第4発明では、凹円弧形状部が一定の半径Rで湾曲させられているが、他の発明の実施に際しては、例えばシャンクに向かうに従って曲率が連続的に大きくなるなど、曲率が変化している凹円弧形状部を採用することもできる。
【0021】
第5発明では、テーパ部のテーパ半角βが5°以上、20°未満であり、20°以上になると刃部との境界部分に応力集中が生じ易くなり、5°未満では先端半角αを15°以上にすることが難しくなるが、他の発明の実施に際しては必ずしもテーパ半角βを5°以上、20°未満の範囲内で設定する必要はない。
【0022】
シャンクは、例えば外径が一定の円柱形状のストレートシャンクが好適に用いられるが、径寸法が直線的に変化しているテーパシャンクを採用することも可能で、少なくとも先端部が円形状を成していれば良い。
【0023】
シャンクの先端部の外径D2は、そのシャンクを把持するホルダの規格等に応じて適宜定められる一方、シャンクから刃部の先端までの突出寸法L2は、前記先端半角αおよびシャンクの外径D2に応じて定まり、例えばD2≒4mmで、先端半角α≒15°であれば、突出寸法L2は7.4mm程度になり、突出寸法L2が7.4mm以下になるように径増大部を構成するようにしても良い。D2≒5mmで、先端半角α≒15°であれば、突出寸法L2は9.3mm程度になり、D2≒10mmで、先端半角α≒15°であれば、突出寸法L2は18.6mm程度になるが、剛性や機械的強度は突出寸法L2が大きくなるのに伴って低下するため、シャンクの外径D2が大きくなるに従って前記先端半角αを大きくすることが望ましい。例えば、シャンクの先端部の外径D2の大きさに拘らず、突出寸法L2が所定値(例えば7.4mm)以下になるように先端半角αを設定するようにしても良い。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である2枚刃の小径超硬エンドミル10を示す図で、(a) は中心線Oと直角方向から見た拡大正面図、(b) は先端部分を更に拡大して示す正面図、(c) は刃部14を更に拡大して示す正面図、(d) は刃部14を更に拡大して斜め先端側から見た斜視図である。この小径超硬エンドミル10は、超硬合金にて構成されているとともに、円柱形状のシャンク(ストレートシャンク)12と、そのシャンク12の先端側に設けられた刃部14と、それ等の間の径増大部16とが、共通の中心線O上に一体に設けられている。刃部14は、ストレート刃のエンドミルとして機能するもので、径増大部16の先端部分に達するように一対のねじれ溝18が砥石による研削加工によって設けられており、そのねじれ溝18に沿って径寸法が一定の外周刃20が形成されているとともに、軸方向の先端部には、その外周刃20に連続して底刃22が設けられている。底刃22の外径D1すなわち工具径は0.5mm以下で、本実施例では0.05mmであり、刃長L1は0.075mmである。また、シャンク12の外径D2は4mmである。
【0025】
前記径増大部16は、刃部14からシャンク12側へ向かうに従って刃部14と同じ外径(底刃22の外径D1)から径寸法が直線的に大きくなるテーパ部30を刃部14に連続して備えているとともに、そのテーパ部30とシャンク12との間に、テーパ部30に滑らかに接続されるとともに軸方向の外形線が凹円弧状となるように径寸法が非線形に増大させられてシャンク12の先端外周縁に達する凹円弧形状部32を備えており、刃部14からシャンク12に達するまで径寸法が滑らかに連続的に増大させられている。凹円弧形状部32は、軸方向の外形線が一定の半径Rで湾曲させられており、テーパ部30との境界では円弧の接線がテーパ部30の外周面(テーパの母線)と一致している。これ等のテーパ部30および凹円弧形状部32は、底刃22と外周刃20とを接続しているコーナC1とシャンク12の先端外周縁C2とを結ぶ傾斜直線Sが、中心線Oに対して傾斜する先端半角αが、15°〜35°の範囲内となり、且つテーパ部30のテーパ半角βが5°以上、20°未満の範囲内となるように構成されている。本実施例では、テーパ半角β=10°、半径R=3mmで、先端半角αが20°となるように設計されており、シャンク12から刃部14の先端までの突出寸法L2は約5.5mmで、テーパ部30と凹円弧形状部32との境界の径寸法D3は約1.2mmである。
【0026】
図2は、本実施例の小径超硬エンドミル10の先端部分の電子顕微鏡写真で、(a) はシャンク12よりも先端側部分の拡大写真、(b) は(a) の白丸で囲った部分の拡大写真、(c) は(b) の白丸で囲った部分の拡大写真、(d) は(c) の白丸で囲った部分の拡大写真、(e) は刃部14を斜め先端側から写した写真である。この図2の(a) 、(d) 、および(e) は、それぞれ図1の(b) 、(c) 、(d) に対応する。
【0027】
このような本実施例の小径超硬エンドミル10によれば、先端半角αが15°以上になるように刃部14とシャンク12との間に径増大部16が設けられているため、シャンク12から刃部14の先端までの突出寸法L2が小さくなり、刃部14を含む突出部分の機械的強度や剛性が高くなって工具の撓み変形や折損が抑制される。これにより、切削加工時に高い加工精度が得られるとともに耐久性が向上する一方、刃部14の研削加工時やホルダに装着する際の段取り時等における折損も抑制されて、取り扱いが容易になる。
【0028】
また、本実施例では、径増大部16の径寸法が滑らかに連続的に増大させられているため、径寸法の急な変化に起因する応力集中が防止され、切削加工時等の折損が一層効果的に抑制される。
【0029】
また、上記径増大部16がテーパ部30と凹円弧形状部32とを備えているため、径寸法の急な変化による応力集中を防止しつつ先端半角αを容易に15°以上として、機械的強度や剛性を向上させることができる。
【0030】
また、凹円弧形状部32が一定の半径Rで湾曲させられているため、その設計や加工が容易で、高い寸法精度で凹円弧形状部32を加工することができる。
【0031】
また、テーパ部30のテーパ半角βが20°未満であるため、径寸法の急な変化による刃部14との境界部分の応力集中が防止される一方、そのテーパ半角βは5°以上であるため、テーパ部32による応力集中防止作用を享受しつつ凹円弧形状部32により先端半角αが15°以上になるようにして突出寸法L2を小さくすることができる。
【0032】
また、先端半角αが35°以下とされているため、テーパ部30として所定長さを確保しつつ、一定の半径Rの凹円弧形状部32によってシャンク12と同じ外径D2まで径寸法を滑らかに増大させることができる。
【0033】
図3は、前記先端半角αを種々変更して、径増大部16を設計した場合の形状を具体的に説明する図で、テーパ部30のテーパ半角βは何れも10°である。図3の(a) は先端半角α=18°の場合で、半径R=3mmであり、突出寸法L2は約6mm、境界の径寸法D3は約1.5mmである。(b) は先端半角α=23°の場合で、半径R=3mmであり、突出寸法L2は約4.7mm、境界の径寸法D3は約1mmである。(c) は先端半角α=30°の場合で、半径R=3mmであり、突出寸法L2は約3.4mm、境界の径寸法D3は約0.5mmである。(d) は先端半角α=37°の場合で、半径R=2.5mmであり、突出寸法L2は約2.6mm、境界の径寸法D3は約0.3mmである。この(d) では、一応テーパ部30が存在するが、その長さ寸法が短く、径寸法の急な変化による応力集中を防止するというテーパ部30の効果が必ずしも十分に得られないため、シャンク12の外径D2によっても異なるが、先端半角αは35°以下が望ましい。
【0034】
また、図4は、テーパ部30のテーパ半角βを5°〜20°の範囲で変更して折損までの耐久性を調べた結果を説明する図である。すなわち、テーパ半角β=5°、10°、15°、20°の4種類の小径超硬エンドミル10をそれぞれ3本(No1〜No3)ずつ用意し、以下の加工条件で溝切削加工を行なって工具折損までの切削距離を調べたものである。なお、テーパ半角β以外の工具諸元は同じで、工具径すなわち底刃22の外径D1=0.05mm、刃数は2枚、刃長L1=0.075mm、先端半角α=25°、凹円弧形状部32の半径R=3mmである。
《加工条件》
・被削材:プリハードン鋼(HRC40)
・被削材寸法:100mm×30mm、板厚5mm
・回転数:40000min-1
・切込み:0.002mm
・送り:50mm/min
・加工溝形状:長さ100mm、幅0.05mm、深さ0.05mm
・加工方法:長さ100mmの溝を深さ(切込み)0.002mmずつステップ加工
【0035】
図4の切削距離は、ステップ加工の合計切削距離で、例えば切削距離が220mmの場合は、切込み0.002mmで長さ100mmの溝加工を2回行なった後、3回目の溝加工の途中(20mm)で工具が折損したことを意味している。また、評価の欄の「○」は合格、「×」は不合格を意味し、平均切削距離が200mm以上の場合を「○」、200mm未満を「×」とした。
【0036】
図4の結果から明らかなように、テーパ半角βが5°〜15°の場合は、何れも平均切削距離が200mm以上であったのに対し、テーパ半角β=20°の場合は、平均切削距離が125.7mmで、テーパ半角β=5°〜15°の場合の半分程度である。これは、テーパ半角βが20°になると、径寸法の急な変化によって刃部14との境界部分に応力集中が生じて折損し易くなるためと考えられる。したがって、テーパ半角βは20°未満であることが望ましい。
【0037】
また、図5は、先端半角αを10°〜30°の範囲で変更して溝の加工精度を調べた結果を説明する図である。すなわち、先端半角α=10°、15°、20°、25°、30°の5種類の小径超硬エンドミル10をそれぞれ3本(No1〜No3)ずつ用意し、深さ0.002mmの溝切削加工を行なって溝幅を顕微鏡で測定し、加工前の実際の刃径(外径D1)と比較した。加工条件は、前記図4の耐久性試験の時と同じであるが、切込み0.002mmで1回だけ溝加工を行なって溝幅寸法を測定した。また、溝幅および刃径(外径D1)を測定する測定顕微鏡の測定精度は0.2μmである。なお、先端半角α以外の工具諸元は同じで、工具径すなわち底刃22の外径D1=0.05mm、刃数は2枚、刃長L1=0.075mm、テーパ半角β=10°、凹円弧形状部32の半径R=3mmである。
【0038】
図5の結果から明らかなように、先端半角αが15°〜30°の場合は、何れも差の平均が0.001mm以下であったのに対し、先端半角α=10°の場合は、差の平均が0.0032mmで、先端半角α=15°〜30°の場合の3倍以上である。これは、先端半角αが小さくなるに従ってシャンク12からの突出寸法L2が大きくなり、先端半角α=10°の場合には突出寸法L2≒11mmになるため、工具の撓み変形による振れで溝幅が拡大するものと考えられる。なお、評価の欄の「○」は合格、「×」は不合格を意味し、差の平均が0.001mm以下の場合を「○」、0.001mmを超える場合を「×」とした。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明が適用された小径超硬エンドミルを説明する図で、(a) は中心線Oと直角方向から見た拡大正面図、(b) は先端部分を更に拡大して示した正面図、(c) は刃部を更に拡大して示した正面図、(d) は刃部を更に拡大して斜め先端側から見た斜視図である。
【図2】図1の小径超硬エンドミルの先端部分の電子顕微鏡写真を示す図で、(a) はシャンクよりも先端側部分を写した写真、(b) は(a) の白丸で囲った部分の拡大写真、(c) は(b) の白丸で囲った部分の拡大写真、(d) は(c) の白丸で囲った部分の拡大写真、(e) は刃部を斜め先端側から写した拡大写真である。
【図3】先端半角αを種々変更して径増大部を設計した場合の形状を具体的に示す図で、(a) はα=18°の場合、(b) はα=23°の場合、(c) はα=30°の場合、(d) はα=37°の場合である。
【図4】テーパ半角βが異なる複数種類の試験品を用いて折損までの耐久性を調べた結果を説明する図である。
【図5】先端半角αが異なる複数種類の試験品を用いて加工精度を調べた結果を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
10:小径超硬エンドミル 12:シャンク 14:刃部 16:径増大部 20:外周刃 22:底刃 30:テーパ部 32:凹円弧形状部 S:傾斜直線 O:中心線 α:先端半角 β:テーパ半角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金にて構成されているとともに、底刃および外周刃を有する刃部がシャンクの先端側に同軸に一体に設けられており、且つ該底刃の外径D1が0.5mm以下の小径超硬エンドミルであって、
前記底刃と外周刃とを接続しているコーナと前記シャンクの先端外周縁とを結ぶ傾斜直線Sが、中心線Oに対して傾斜する先端半角αが、15°以上になるように、前記刃部と前記シャンクとの間に該刃部と同じ外径から該シャンクと同じ外径になるまで該シャンク側へ向かうに従って径寸法が大きくなる径増大部を備えている
ことを特徴とする小径超硬エンドミル。
【請求項2】
前記径増大部は、前記刃部から前記シャンクに達するまで径寸法が滑らかに連続的に増大させられている
ことを特徴とする請求項1に記載の小径超硬エンドミル。
【請求項3】
前記径増大部は、
前記刃部から前記シャンク側へ向かうに従って、該刃部と同じ外径から径寸法が直線的に大きくなるテーパ部を、該刃部に連続して備えているとともに、
該テーパ部に滑らかに接続されるとともに、軸方向の外形線が凹円弧状となるように径寸法が非線形に増大させられて前記シャンクの先端外周縁に達している凹円弧形状部を、該テーパ部と該シャンクとの間に備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の小径超硬エンドミル。
【請求項4】
前記凹円弧形状部は、前記軸方向の外形線が一定の半径Rで湾曲させられている
ことを特徴とする請求項3に記載の小径超硬エンドミル。
【請求項5】
前記先端半角αは15°〜35°の範囲内で、前記テーパ部のテーパ半角βは5°以上、20°未満の範囲内である
ことを特徴とする請求項4に記載の小径超硬エンドミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307628(P2008−307628A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156662(P2007−156662)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】