説明

小荷物昇降機

【課題】小荷物の搬送作業を効率よく行うことができる小荷物昇降機を提供すること。
【解決手段】複数の停止位置のいずれかに停止したカゴに対する扱い処理が為されたことを検出する扱い処理検出手段(8,DS,H)が設けられ、複数の停止位置の夫々に、通報すべき情報を通報する通報手段が設けられ、制御手段(H)が、複数の停止位置のうちの、カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段(20)にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、昇降処理の実行により目標停止位置に昇降させたカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されると、扱い処理が適正に行われたことを示す処理済み情報を通報手段(21)にて通報する処理済通報処理を実行するように構成されている小荷物昇降機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の停止位置が設定された昇降経路に沿って昇降自在な小荷物搬送用のカゴと、前記カゴを昇降駆動する昇降駆動手段と、前記複数の停止位置の夫々に設けられ、前記複数の停止位置から選択される目標停止位置に前記カゴを昇降させる昇降指令を指令する昇降指令手段と、前記昇降指令手段による前記昇降指令に基づいて、前記カゴを前記目標停止位置に昇降させるべく、前記昇降駆動手段の作動を制御する昇降処理を実行する制御手段とが備えられた小荷物昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記小荷物昇降機は、例えば、レストランや小学校等における厨房で作られた料理等の小荷物を建物内の各階に配置された配膳室に搬送する労力を軽減し、作業効率を高めるものである。レストランに設置されるものを例に説明を加えると、前記複数の停止位置は、厨房(例えば、1階)及び各階(例えば、2階及び3階)の配膳室に設けられた出し入れ小口に対応した位置に設定される。厨房では、厨房にいる作業者が、厨房の出し入れ小口に対応した停止位置に停止しているカゴに料理や資材等の小荷物を載せてから、厨房に設けられた昇降指令手段にて、例えば2階の出し入れ小口を目標停止位置とする昇降指令を指令して、小荷物を載せたカゴを2階に昇降させる。2階の配膳室では、2階の配膳室にいる作業者が、2階の出し入れ小口に対応した停止位置に停止したカゴに載っている料理や資材等の小荷物をカゴから降ろす。このようにして、小荷物昇降機を使うと小荷物を楽に効率よく他の階に搬送することができる。
【0003】
上記小荷物昇降機の従来例として、制御手段が、カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときに、昇降処理の実行によりカゴを目標停止位置に昇降させた後は、特段の処理を行うことなく、複数の昇降指令手段のいずれかにより指令される次の昇降指令を待機するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−169476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記小荷物昇降機は、乗用の昇降機と違って、搬送する小荷物とともにカゴに人が乗車するものではないため、小荷物昇降機を使用して他の停止位置に小荷物を搬送する場合には、停止位置のうちカゴが停止している停止位置(以下、「送り元の停止位置」ともいう。)と、目標停止位置として指令される停止位置(以下、「送り先の停止位置」ともいう。)との夫々に位置する作業者がカゴに対する扱い処理を行う必要がある。つまり、上述した例で説明すると、1階の厨房から2階の配膳室へ小荷物を搬送する場合には、1階においては、カゴに対して小荷物を載せる処理が必要であり、2階においては、カゴから小荷物を降ろす処理が必要である。
【0006】
上記従来の小荷物昇降機では、制御手段が、カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときに、昇降処理の実行によりカゴを目標停止位置に昇降させた後は、特段の処理を行うことなく、複数の昇降指令手段のいずれかにより指令される次の昇降指令を待機するので、送り元の停止位置にいる作業者は、カゴが送り先の停止位置に昇降した後、カゴに載せた小荷物が送り先の停止位置において降ろされたか否かを容易には知ることができないものであった。
【0007】
このため、小荷物を送り先の停止位置の作業者に搬送すべく昇降指令を指令した送り元の停止位置にいる作業者は、送り先の停止位置の作業者に小荷物を搬送するという目的が達成されたか否かを確認するために、例えば、付属のインターホンにより送り先の作業者に問い合わせて、その回答を得るという煩わしい作業をしなければならないものであった。
【0008】
したがって、送り元の停止位置にいる作業者が、立て続けに他の停止位置に小荷物を搬送する場合のように、送り先の停止位置にて小荷物が降ろされたことを確認してから、次の小荷物を搬送するために空のカゴを送り元の停止位置に呼び寄せるといった運用を行う場合には、インターホン等により送り先の停止位置の作業者に対して小荷物を降ろしたか否かを問い合わせる確認作業を行わなければならず、また、その確認作業を行うにしても、送り先の停止位置にいる作業者がいつ小荷物をカゴから降ろすか不明であるため、カゴが送り先の停止位置に到着してから十分な時間が経過してから確認作業を行わなければならず、作業効率が悪化するという不都合が生じるものであった。
【0009】
本発明は上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができる小荷物昇降機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる小荷物昇降機は、
複数の停止位置が設定された昇降経路に沿って昇降自在な小荷物搬送用のカゴと、
前記カゴを昇降駆動する昇降駆動手段と、
前記複数の停止位置の夫々に設けられ、前記複数の停止位置から選択される目標停止位置に前記カゴを昇降させる昇降指令を指令する昇降指令手段と、
前記昇降指令手段による前記昇降指令に基づいて、前記カゴを前記目標停止位置に昇降させるべく、前記昇降駆動手段の作動を制御する昇降処理を実行する制御手段とが備えられたものであって、
その第1特徴構成は、
前記複数の停止位置のいずれかに停止した前記カゴに対する扱い処理が為されたことを検出する扱い処理検出手段が設けられ、
前記複数の停止位置の夫々に、通報すべき情報を通報する通報手段が設けられ、
前記制御手段が、
前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、前記昇降処理の実行により目標停止位置に昇降させた前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されると、前記扱い処理が適正に行われたことを示す処理済み情報を前記通報手段にて通報する処理済通報処理を実行するように構成されている点にある。
【0011】
本発明の第1特徴構成によると、制御手段が、昇降処理によりカゴを目標停止位置に昇降させた後、送り先の停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されると、処理済通報処理を実行し、扱い処理が適正に行われたことを示す処理済み情報を通報手段にて通報するので、昇降指令を指令した作業者は、その昇降指令を指令した昇降指令手段が設けられた停止位置に対応する通報手段にて通報される処理済み情報に基づいて、目標停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が適正に行われたことを認識できる。
【0012】
したがって、カゴが停止している停止位置(送り元の停止位置)に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置(送り先の停止位置)が目標停止位置として指令されて、カゴが送り先の停止位置に昇降した後、送り先の停止位置においてカゴに対する扱い処理が適正に為された場合には、当該昇降処理を指令した送り元の停止位置にいる作業者は、送り先の停止位置にてカゴに対する扱い処理が適正に行われた時点で、新たな昇降指令を指令して次の搬送作業のためにカゴを送り元の停止位置に呼び寄せる等、躊躇することなく新たな昇降指令を指令することができ、長い時間を置いてから新たな昇降指令を指令する、或いは、送り先の作業者に確認してから新たな昇降指令を指令するといった効率の悪い搬送作業を行わずに済む。
【0013】
また、停止位置が3箇所以上設定されている場合には、全ての停止位置の通報手段にて処理済み情報を通報するようにすれば、送り元及び送り先の停止位置以外の停止位置にいる作業者にとっても、自らが搬送しようとする小荷物をカゴに載せるべく、その作業者に対応した停止位置に空のカゴを呼び寄せるために新たな昇降指令を指令できる時期を知ることができ、長い時間を置いてから新たな昇降指令を指令する、或いは、送り先の作業者に確認してから新たな昇降指令を指令するといった効率の悪い搬送作業を行わずに済む。
【0014】
このように、本発明の第1特徴構成によると、送り先の停止位置においてカゴに対する扱い処理が為されたか否かが不明であるために、新たな昇降指令を指令することを躊躇して長い時間を置いてから新たな昇降指令を指令するといった事態を回避でき、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができる小荷物昇降機を得るに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、本発明の第1特徴構成において、前記制御手段が、前記複数の停止位置のいずれかに停止した前記カゴに対する扱い処理が為されたことを検出する扱い処理検出手段が設けられ、前記制御手段が、前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときに、前記昇降処理の実行により前記カゴを目標停止位置に昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、前記目標停止位置に停止した前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されない場合には、前記扱い処理が適正に行われない異常状態であるとして異常対策処理を実行するように構成されている点にある。
【0016】
本発明の第2特徴構成によると、制御手段が、昇降処理によりカゴを目標停止位置に昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、送り先の停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されない場合には、異常対策処理を実行するので、昇降指令を指令した作業者は、目標停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が適正に行われない異常状態であることを認識できる。作業者は、異常対策処理が実行されたことに気付いた時点で、カゴに載せた小荷物をどのように処理するかについての準備をすることができる。
【0017】
したがって、カゴが停止している停止位置(送り元の停止位置)に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置(送り先の停止位置)が目標停止位置として指令されて、カゴが送り先の停止位置に昇降してからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、送り先の停止位置においてカゴに対する扱い処理が為されなかった場合には、当該昇降処理を指令した送り元の停止位置にいる作業者は、異常対策処理が実行されたことに気付いた時点で、小荷物が載ったままの状態のカゴをどのように処理するかについての準備をすることが可能となり、送り元の停止位置、送り先の停止位置、及び、送り先の停止位置以外の停止位置であって当該昇降処理後にカゴを呼び寄せる作業者がいる停止位置の夫々の停止位置において、小荷物の扱いに関して混乱が生じることを予防すべく適切な措置をとることができる。
【0018】
このように、本発明の第2特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よくしかも円滑に行うことができる小荷物昇降機を得るに至った。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、本発明の第2特徴構成において、前記制御手段が、前記異常対策処理として、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に、前記カゴを返送するべく前記昇降処理を実行するように構成されている点にある。
【0020】
本発明の第3特徴構成によると、複数の停止位置のうちの、カゴが停止している停止位置(送り元の停止位置)に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置(送り先の停止位置)として指令されたときに、昇降処理の実行によりカゴを送り先の停止位置に昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、送り先の停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されない場合には、制御手段により異常対策処理が実行され、扱い処理が為されなかった目標停止位置を指令した昇降指令手段が設けられた停止位置にカゴが返送される。
【0021】
したがって、昇降指令を指令した送り元の停止位置にいる作業者は、送り元の停止位置に返送されたカゴに載せられている小荷物を降ろす等の何らかの措置を送り元の停止位置において講じることができ、送り先の停止位置に昇降した後、送り先の停止位置にて扱い処理がされなかった場合に、送り先の停止位置以外の停止位置に設けられた昇降指令手段にて昇降指令を指令してカゴを呼び寄せるべく昇降させたときに、当該昇降指令についての送り先の停止位置で、小荷物が載ったままの状態でカゴが呼び寄せられるという不都合が生じることを予防して、送り元の停止位置、送り先の停止位置、及び、送り先の停止位置以外の停止位置であって当該昇降処理後にカゴを呼び寄せる作業者がいる停止位置の夫々の停止位置において、小荷物の扱いに関して現場に混乱が生じることを事前に回避することができる。
【0022】
このように、本発明の第3特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができ、しかも、送り先の停止位置にて扱い処理が為されなかった場合に送り元の停止位置にて何らかの措置を講じることを可能にすることにより小荷物の搬送作業を円滑に行うことができる小荷物昇降機を得るに至った。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、本発明の第3特徴構成において、前記制御手段が、前記異常対策処理として、前記カゴを返送するべく前記昇降処理を実行するに加えて、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に対応する前記通報手段により、異常発生情報を通報する異常発生通報処理を実行するように構成されている点にある。
【0024】
本発明の第4特徴構成によると、複数の停止位置のうちの、送り元の停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときに、昇降処理の実行によりカゴを送り先の停止位置に昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、送り先の停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されない場合には、制御手段により異常対策処理に加えて異常発生通報処理が実行され、扱い処理が為されなかった目標停止位置を指令した昇降指令手段が設けられた停止位置にカゴが返送され、これに加えて、送り元の停止位置に設けられた通報手段にて異常発生情報が通報される。
【0025】
したがって、異常発生通報処理が、例えば、送り先の停止位置において扱い処理が為されなかった旨や、カゴが送り元の停止位置に返送された旨の音声情報や表示情報を異常発生情報として通報するようなものであると、送り先の停止位置において扱い処理が為されなかったためにカゴに載ったままの小荷物を送り元の停止位置において降ろす等、返送されるカゴに対する扱い処理を行う必要があることを、通報手段を作動させて異常発生情報を通報することにより、送り元の停止位置にいる作業者に知らせることができる。
【0026】
このように、本発明の第4特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができ、しかも、小荷物がカゴに載ったままにつき送り先の停止位置から返送されるカゴに対する扱い処理が必要であることを送り元の停止位置にいる作業者に知らせて現場の混乱を予防することができる小荷物昇降機を得るに至った。
【0027】
本発明の第5特徴構成は、本発明の第3又は第4特徴構成のいずれかにおいて、前記制御手段が、前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、その後、その目標停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されるまで、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令によっては前記昇降処理を実行しないように構成され、且つ、
前記異常対策処理として、前記カゴを返送すべく前記昇降処理を実行したときには、その後、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されるまで、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令によっては前記昇降処理を実行しないように構成されている点にある。
【0028】
本発明の第5特徴構成によると、送り元の停止位置にて昇降指令を指令してから、送り先の停止位置に昇降されたカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されるまでは、送り元の停止位置の昇降指令手段とは異なる昇降指令手段によって昇降指令が指令されても昇降処理は実行されないので、送り先の停止位置に昇降されたカゴに対する扱い処理が為されるまでに、カゴが送り元の停止位置以外の他の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令される昇降指令に基づいて昇降することがない。
【0029】
したがって、送り元の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令された昇降指令に基づいてカゴが昇降した後、送り元の停止位置以外の他の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令される昇降指令に基づいてカゴが昇降する場合に、先の昇降処理についての送り先の停止位置で降ろされるべき小荷物が載せられたままの状態でカゴが昇降することを防止できる。
【0030】
また、本発明の第5特徴構成によると、送り先の停止位置にて扱い処理が為されなかったために異常対策処理によりカゴが送り先の停止位置から送り元の停止位置に返送された場合において、カゴが送り元の停止位置に返送された後、送り元の停止位置において扱い処理が為されるまでは、送り元の停止位置に対応する昇降指令手段とは異なる昇降指令手段にて昇降指令を指令しても、昇降処理が実行されないので、送り元の停止位置に返送されたカゴが、送り元の停止位置において扱い処理が為されるまでに、送り元の停止位置以外の他の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令される昇降指令に基づいて昇降することがない。
【0031】
したがって、送り先の停止位置において扱い処理が為されずに送り元の停止位置に返送されたカゴに対して扱い処理が為されるまでに、送り元の停止位置以外の他の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令される昇降指令に基づいて、送り先で降ろされるべき小荷物が載せられたままの状態でカゴが昇降することを防止できる。
【0032】
つまり、送り先の停止位置において扱い処理が為される場合においてその扱い処理が為されるまでの間、及び、送り先の停止位置において扱い処理が為されない場合において送り元の停止位置に返送されたカゴに対して扱い処理が為されるまでの間は、夫々の場合においてカゴが停止している停止位置(送り元及び送り先の停止位置)以外の停止位置にカゴが昇降することがないため、カゴが停止した状態を保って、扱い処理を為すことができる状態でカゴを待機させることができる。
【0033】
このように、本発明の第5特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができ、しかも、送り先の停止位置又は送り元の停止位置にてカゴを待機状態としてカゴに対する扱い処理が確実に行われるようにすることができる小荷物昇降機を得るに至った。
【0034】
本発明の第6特徴構成は、本発明の第5特徴構成において、前記制御手段が、前記異常対策処理として、前記カゴを返送するべく前記昇降処理を実行したときに、その後の経過時間が返送後待機用時間を経過しても、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されない場合には、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令による前記昇降処理を実行するように構成されている点にある。
【0035】
本発明の第6特徴構成によると、異常対策処理によりカゴが送り元の停止位置に返送された後、送り元の停止位置にて、その返送されたカゴに対する扱い処理が為されないまま、返送後待機用時間が経過した場合に、送り元の停止位置に対応する昇降指令手段とは異なる昇降指令手段にて昇降指令が指令されると、その昇降指令に基づく昇降処理が実行されるので、カゴが送り元の停止位置に返送されて、送り元の停止位置でカゴに対する扱い処理が為されるのを待機している状態となってから返送後待機用時間が経過した後は、他の停止位置に対応する昇降指令手段にて当該他の停止位置を目標停止位置とする昇降指令を指令することで、当該他の停止位置にカゴを昇降させることができる。
【0036】
したがって、送り元の停止位置における作業者がその他の作業に忙しく、返送されたカゴに対する扱い処理を為す時間的余裕がないことや、その他の事情が原因で、異常対策処理により送り元の停止位置に返送されたカゴに対する扱い処理が為されない状況が返送後待機用時間より長く継続する場合には、他の停止位置における作業者によるカゴの昇降指令に基づく昇降処理を実行することで、返送後のカゴが送り元の停止位置に停止したままの状態で昇降が停滞してしまう不都合を回避して、各停止位置にて小荷物の搬送作業が停滞することを防止できる。
【0037】
このように、本発明の第6特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができ、しかも、返送後のカゴが送り元の停止位置に停止したままの状態となって各停止位置にて小荷物の搬送作業が停滞することを防止できる小荷物昇降機を得るに至った。
【0038】
本発明の第7特徴構成は、本発明の第2特徴構成において、前記制御手段が、前記異常対策処理として、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に対応する前記通報手段により、異常発生情報を通報する異常発生通報処理を実行するように構成されている点にある。
【0039】
本発明の第7特徴構成によると、複数の停止位置のうちの、カゴが停止している停止位置(送り元の停止位置)に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置(送り先の停止位置)として指令されたときに、昇降処理の実行によりカゴを送り先の停止位置に昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、送り先の停止位置に停止したカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されない場合には、制御手段により異常対策処理として異常発生通報処理が実行され、送り元の停止位置に対応する通報手段により異常発生情報が通報される。
【0040】
したがって、異常発生通報処理が、例えば、送り先の停止位置において扱い処理が為されなかった旨の音声情報や表示情報を異常発生情報として通報するようなものであると、昇降指令を指令した送り元の停止位置にいる作業者は、送り先の停止位置において扱い処理が為されなかったためにカゴに小荷物が載ったままの状態であることを把握することができるので、送り先の停止位置に昇降したカゴに載っている小荷物について何らかの措置を講じることができ、送り先の停止位置に昇降した後、送り先の停止位置にて扱い処理がされなかった場合に、送り先の停止位置以外の停止位置に設けられた昇降指令手段にて昇降指令を指令してカゴを呼び寄せるべく昇降させたときに、当該昇降指令についての送り先の停止位置で、小荷物が載ったままの状態でカゴが呼び寄せられるという不都合が生じることを予防して、送り元の停止位置、送り先の停止位置、及び、送り先の停止位置以外の停止位置であって当該昇降処理後にカゴを呼び寄せる作業者がいる停止位置の夫々の停止位置において、小荷物の扱いに関して現場に混乱が生じることを事前に回避することができる。
【0041】
このように、本発明の第7特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができ、しかも、小荷物がカゴに載ったままにつきカゴに対する扱い処理が必要である状態であることを送り元の停止位置にいる作業者に知らせて現場の混乱を予防することができる小荷物昇降機を得るに至った。
【0042】
本発明の第8特徴構成は、本発明の第7特徴構成において、前記制御手段が、前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、その後、その目標停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されるまで、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令によっては前記昇降処理を実行しないように構成されている点にある。
【0043】
本発明の第8特徴構成によると、送り元の停止位置にて昇降指令を指令してから、送り先の停止位置に昇降されたカゴに対する扱い処理が為されたことが扱い処理検出手段にて検出されるまでは、送り元の停止位置の昇降指令手段とは異なる昇降指令手段によって昇降指令が指令されても昇降処理は実行されないので、送り先の停止位置に昇降されたカゴに対する扱い処理が為されるまでに、カゴが送り元の停止位置以外の他の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令される昇降指令に基づいて昇降することがない。
【0044】
したがって、送り元の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令された昇降指令に基づいてカゴが昇降した後、送り元の停止位置以外の他の停止位置に対応する昇降指令手段にて指令される昇降指令に基づいてカゴが昇降する場合に、先の昇降処理についての送り先の停止位置で降ろされるべき小荷物が載せられたままの状態でカゴが昇降することを防止し、カゴが停止した状態を保って、扱い処理を為すことができる状態でカゴを待機させることができる。
【0045】
このように、本発明の第8特徴構成によると、小荷物の搬送作業を効率よく行うことができ、しかも、送り先の停止位置にてカゴを待機状態としてカゴに対する扱い処理が確実に行われるようにすることができる小荷物昇降機を得るに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の小荷物昇降機の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態の小荷物昇降機は、学校給食を搬送等するためのものとして小学校や中学校に設置されているものであり、床面を走行するキャスター付き小型台車等も搬送できるように、各階の出し入れ小口が、床面高さに合わせて設けられているフロアタイプの小荷物昇降機である。そして、小荷物昇降機は、主に、1階の厨房から各階の配膳室へ食器や調理した給食を搬送したり、各階の配膳室から1階の厨房へ使用済みの食器や給食が入っていた空き容器を搬送する場合に使用される。
【0047】
図1及び図2に示すように、小荷物昇降機は、1階から3階に連通する建物内の設置用空間に設けられた鉄骨製の昇降路1に沿って形成される昇降経路Lを昇降自在な小荷物搬送用のカゴ6と、ACモータ、減速機、プーリー等で構成され、一対の巻き上げロープ9を巻き上げ又は繰り出すことでカゴ6を昇降駆動する昇降駆動手段としての巻上機10と、各階の出し入れ小口Dに設置され、昇降指令手段としての複数の運転操作ボタン20が備えられた操作盤と、外部から動作用の電力が供給される受電盤や1階操作盤PNL1、2階操作盤PNL2及び3階操作盤PNL3の夫々に設けられた運転操作ボタン20による昇降指令に基づいて、巻上機10及び制動手段としてのディスクブレーキ(図示せず)の作動を制御する制御手段としての制御盤H等が内装された制御ボックスCBとを備えている。
【0048】
昇降路1は、四隅に配設されたH鋼の柱部材2aと柱部材同士を連結する中間ビーム2bで構成されるフレーム本体2等で構成されている。フレーム本体2には、開口を備えた複数の出し入れ口下地材4が、1階〜3階の各階に設けられた出し入れ小口Dに対応する位置に設けられており、出し入れ口下地材4を介して昇降路1と1階出し入れ小口D1、2階出し入れ小口D2及び3階出し入れ小口D3とが連結されている。
【0049】
昇降路1の上端部には、前記制御ボックスCBが設けられている。フレーム本体2の制御ボックスCBの近傍にはマシンビーム受材3が設けられており、巻き上げロープ9が架けられた巻上機10がこのマシンビーム受材3に固定部材により固定されている。なお、巻き上げロープ9の一方の端部には、カゴ6の昇降方向に平行に設けられた一対の直線状のガイドレール5の間にて昇降移動自在な釣合い重り11が設けられている。この釣合い重り11が、カゴ6の昇降作動に伴って、カゴ6の昇降方向と反対方向に昇降移動することで、巻上機10の駆動負荷及びディスクブレーキの制動負荷を軽減できるようになっている。
【0050】
カゴ6は、小荷物を出し入れする扱い面の上方及び下方位置に設けられたスライドレールに案内されて上下に開く2枚戸7(以下、カゴ戸7という。)が設けられた直方体形状のステンレス製の筐体で構成されている。カゴ6の天面のカゴ外側には、一対の連結部材を介して巻き上げロープ9が連結されており、カゴ6は巻き上げロープ9にて吊り下げ支持されている。
【0051】
カゴ戸7は、カゴ6の高さ方向の略中央位置にて上下2枚に分割された上下開き式の2枚戸で構成されており、上戸7aと下戸7bは連動して互いに逆方向にスライドレールに案内されながら上下スライド動作するように構成されている。そして、上戸7aと下戸7bとが離間して、上戸7aの下端部がカゴ6の天面付近に位置すると下戸7bの上端がカゴ6の底面と同レベルの高さ位置に位置し、カゴ6の扱い面を開放する開状態となり、カゴ6に小荷物を載せたり、カゴ6から小荷物を降ろしたりするカゴ6に対する扱い処理が行える状態となる。また、上戸7aと下戸7bとが接近し、上戸7aの下端と下戸7bの上端がカゴ6の高さ方向の略中央位置にて当接してカゴ6の扱い面を塞ぐ閉状態となり、カゴ6の昇降が行われる。
【0052】
なお、カゴ戸7には、後述する出し入れ口戸14の開閉作動に連係してカゴ戸7を開閉させる図示しない連係機構が備えられており、カゴ6が出し入れ小口Dに対応する適切な昇降位置に停止した状態で、その出し入れ小口Dが備える出し入れ口戸14を開閉操作すると、カゴ戸7が出し入れ口戸14の開閉作動に連動して開閉するようになっている。ちなみに、図2には、カゴ6が3階出し入れ小口D3に停止した状態で、3階の作業者により出し入れ口戸14が開き操作された結果、カゴ戸7及び出し入れ口戸14が開状態になった状態を示している。
【0053】
また、カゴ6には、カゴ戸7が閉じ状態となると上戸7aの被検出部と当接してオンすることによりカゴ戸7が閉じ状態であることを検出するリミットスイッチ8(以下、カゴ戸スイッチ8という)が設けられている。このカゴ戸スイッチは、図示しない信号線により制御ボックスCBに内装された制御盤Hと電気的に接続されており、カゴ戸スイッチ8の検出情報が制御ボックスCB内の制御盤Hに入力されるように構成されている。
【0054】
昇降経路Lには、複数の停止位置として、各階の出し入れ小口Dに対応した適切な昇降位置が設定されており、カゴ6がこれらの昇降位置に位置するときにオンする停止位置検出手段としてのリードスイッチLSが昇降経路L上に複数設けられている。そして、作業者が、運転操作ボタン20にてカゴ6を昇降させる目的階を指令すると、作業者が指令した階における出し入れ小口Dに対応した適切な昇降位置が目標停止位置として指令され、指令された目標停止位置にカゴ6が停止するように、リードスイッチLSの検出情報に基づいて、巻上機10及びディスクブレーキの作動が制御盤Hによりインバータ方式で制御される。
【0055】
なお、指令された階の出し入れ小口Dに対応する適切な昇降位置とは、カゴ6の底面の高さ位置と指令された階の床面の高さ位置が略一致する昇降位置であり、インバータ制御による高精度な制御及び高性能なディスクブレーキによる制動を行うことで、目標停止位置に対する実際の停止位置の誤差(着床精度)は、±3[mm]以内に収まるようになっている。
【0056】
図3に示すように、各階に設けられた出し入れ小口Dは、床面が下端辺となるように壁面に設けられた開口の左右両側及び上側の縁部に設けられたステンレス製の三方枠12、開口の下端辺に敷設された敷居13、三方枠12及び敷居13に連結された前記出し入れ口下地材4よりフレーム本体側の鉛直平面に沿って上下スライド自在な出し入れ口戸14、及び、前記操作盤PNL等で構成されている。出し入れ小口Dの高さ方向及び幅方向の寸法は、カゴ6の筐体の高さ方向及び幅方向の寸法に対応したものとなっており、出し入れ小口Dの三方枠12等に接触することなく、小荷物をカゴ6に載せたり、カゴ6から降ろしたりできるようになっている。
【0057】
出し入れ口戸14は、出し入れ小口Dの高さ方向の略中央位置にて上下2枚に分割された上下開き式の2枚戸で構成されており、上戸14aと下戸14bは連動して互いに逆方向に上下スライド動作するように構成されている。そして、開閉操作用の取手15が設けられた上戸14aの下端部を上向きに引上げ操作すると、上戸14aと下戸14bとが離間して、上戸14aの下端部を三方枠12の上側フレーム付近に位置させると下戸14bの上端が床面と同レベルの高さ位置に位置し、出し入れ小口Dの開口を開放する開状態となり、開状態において、上戸14aの取手15を下向きに引下げ操作することで上戸14aと下戸14bが接近し、上戸14aの下端と下戸14bの上端が出し入れ小口Dの高さ方向の略中央位置にて当接して出し入れ小口Dの開口を塞ぐ閉状態にすることができる。
【0058】
出し入れ小口Dには、出し入れ口戸14が閉じ状態となると上戸14aの被検出部と当接してオンすることにより出し入れ口戸14が閉じ状態であることを検出する出し入れ小口リミットスイッチDSが設けられている。
【0059】
図4に示すように、操作盤PNLには、停止表示灯16、非常停止ボタン17、カゴ位置表示灯18、運転方向表示灯19、運転操作ボタン20、音声アナウンス用スピーカ21、相互式インターホン22、操作盤制御部23が設けられている。
【0060】
停止表示灯16は、小荷物を送り出そうとする階(以下、荷送り階ともいう。)以外の階で出し入れ口戸14の閉め忘れがあるときに点灯し、カゴ6を昇降させることができない状態であることを示すようになっている。
【0061】
非常停止ボタン17は、昇降作動中のカゴ6を直ちに停止させる非常停止指令を指令するものである。また、何れかの階で非常停止ボタン17が押され続けている場合は、各階の操作盤PNLの停止表示灯16が点灯する。
【0062】
カゴ位置表示灯18は、カゴ6が停止している階に対応する表示ランプを点灯させることで、カゴ6がどの階に停止しているかを各階の作業者に示すものである。
【0063】
運転方向表示灯19は、上下方向を示す略三角形状の一対の表示ランプにて構成され、カゴ6が上昇作動しているときは上方向を示す表示ランプを、カゴ6が下降作動しているときは下方向を示す表示ランプを点灯させることにより、昇降作動中のカゴ6の昇降方向を各階の作業者に示すものである。なお、カゴ6が何れかの階に停止していて昇降作動していないときには、これらの表示ランプは点灯しない。
【0064】
運転操作ボタン20は、カゴ6を昇降させる階を選択して指令するものであり、例えば、荷送り階でない階に停止しているカゴ6を荷送り階に昇降させる(呼び寄せる)場合や、荷送り階に停止しているカゴ6を、荷受け階へ昇降させる(送り出す)場合に使用される。説明を加えると、荷送り階にカゴ6が停止していない場合には、カゴ6を荷送り階に呼び寄せるべく、その荷送り階の操作盤PNLにある運転操作ボタン20のうち、当該荷送り階に対応する運転操作ボタン20を押し操作すると、カゴ6が昇降作動し、荷送り階にて停止する。また、荷送り階にカゴ6が停止している場合には、その荷送り階の操作盤PNLにある運転操作ボタン20のうち、荷物を送りたい荷受け階に対応する運転操作ボタン20を押し操作すると、カゴ6が昇降作動し、荷受け階にて停止する。
【0065】
なお、運転操作ボタン20、及び、非常停止ボタン17は全閉化されたシートキーで構成されており、油汚れ、ちり、ほこり、害虫の侵入を防止して、濡れ手による操作も可能となっている。
【0066】
音声アナウンス用スピーカ21は、合成音声を出力することにより、カゴ6の到着を荷受け階において報知したり、荷送り階から送り出したカゴ6に対する扱い処理が荷受け階で為されたことを荷送り階において報知したり、送り出したカゴ6に対する扱い処理が荷受け階で為されなかったことを荷送り階において報知したり、後述するようにカゴ6が荷送り階に戻ってきたときに返送されたカゴ6の到着をその荷送り階において報知したり、出し入れ口戸14の閉め忘れを報知したりする。つまり、音声アナウンス用スピーカ21は、本発明の通報手段に相当する。
【0067】
相互式インターホン22は、選択指定した別の階の作業者と、半二重通信であるトランシーバの要領で音声通話できるインターホンである。
【0068】
操作盤制御部23は、操作盤PNLに内装されており、図5に示すように、操作盤制御部23には、上述の出し入れ小口リミットスイッチDS、停止表示灯16、非常停止ボタン17、カゴ位置表示灯18、運転方向表示灯19、運転操作ボタン20、音声アナウンス用スピーカ21、相互式インターホン22といった各入出力機器が接続されている。
【0069】
そして、図5に示すように、各階の操作盤制御部23が制御ボックスCB内の制御盤Hとケーブル接続されており、各階の操作盤制御部23と制御ボックスCB内の制御盤Hとが行う通信により、運転操作ボタン20による昇降指令や出し入れ小口リミットスイッチDS等の入力情報が制御盤Hに入力され、また、報知するべき合成音声情報や表示すべきカゴ6の現在位置情報等の出力情報が制御盤Hから音声アナウンス用スピーカ21やカゴ位置表示灯18に対して出力される。また、各階毎に設けられたリードスイッチDSが、制御ボックスCB内の制御盤Hとケーブル接続されており、リードスイッチDSの検出情報が制御盤Hに入力されるようになっている。
【0070】
なお、操作盤制御部23には、図示しない記憶装置が備えられており、その記憶装置には、「カゴが到着しました」、「扉が開いています」、「荷受け階で扉が開けられました」、及び「カゴが戻ってきました」の複数の音声データが格納されている。制御盤Hからアナウンス指令が指令されると、その指令を受けた操作盤制御部23が、その指令情報に付加された識別情報に基づいて、上記複数の音声データのうち報知すべき音声メッセージに対応する音声データを抽出して、その音声データに基づいて、音声アナウンス用スピーカ21を作動させるようになっている。つまり、制御盤Hは、音声データを操作盤制御部23に送信することなく、報知すべき音声メッセージを指定するアナウンス指令を送信することで、音声アナウンス用スピーカ21を作動させることができる。
【0071】
次に、制御盤Hのカゴ6の昇降制御動作について説明する。
制御盤Hは、何れかの階の操作盤PNLの運転操作ボタン20により昇降指令が指令されると、目標停止位置として指令された階の出し入れ小口Dに対応して設定された昇降位置にカゴ6を昇降させるべく、停止位置検出用リードスイッチLSの検出情報に基づいて、巻上機10及びディスクブレーキの作動を制御する昇降処理P0を実行する。なお、実際には、制御盤Hに実装されたマイクロコンピュータが、プログラム形式で構成された昇降処理P0用のプログラムを実行するのであるが、以下では、説明の便宜上、制御盤Hが各種処理を実行するものとして説明する。
【0072】
制御盤Hのカゴ6の昇降制御動作について説明を加えると、例えば、カゴ6が1階の出し入れ小口Dに停止している場合に、1階にいる作業者が、1階操作盤PNL1の運転操作ボタン20のうち3階の表示がされた操作ボタン20を押し操作すると、制御盤Hにて昇降処理P0が実行されることにより、カゴ6が上昇して、目標停止位置として指令された3階の出し入れ小口Dに停止する。
【0073】
また、カゴ6が3階の出し入れ小口Dに停止している場合に、1階にいる作業者が、1階操作盤PNL1の運転操作ボタン20のうち1階(自階)の表示がされた操作ボタン20を押し操作すると、制御盤Hにて昇降処理P0が実行されることにより、カゴ6が下降して、目標停止位置として指令された1階の出し入れ小口Dに停止する。
【0074】
2階や3階にいる作業者も同様に、自階の操作盤PNLにて目標停止位置を指令することで、カゴ6を昇降させることができる。このようにして、各階の作業者は、自階に停止しているカゴ6を他階へ送り出したり、他階に停止しているカゴ6を自階に呼び寄せたりすることができるようになっている。
【0075】
制御盤Hは、昇降処理P0によりカゴ6を目標停止位置として指令された階に昇降させた後に、扱い処理監視処理P1を実行することにより、目標停止位置に停止しているカゴ6に対して扱い処理が為されたか否かを監視するように構成されている。
【0076】
制御手段Hが実行する扱い処理監視処理P1は、カゴ戸スイッチ8及び各階の出し入れ小口リミットスイッチDSの検出情報に基づいて、1階〜3階のいずれかに停止したカゴ6に対する扱い処理が為されたことを検出するように構成されている。つまり、本実施形態では、カゴ戸スイッチ8及び各階の出し入れ小口リミットスイッチDS、並びに、制御盤Hが実行するプログラム形式の扱い処理監視処理P1により本発明の扱い処理検出手段が構成されている。
【0077】
制御盤Hは、1階〜3階の出し入れ小口Dうちのカゴ6が停止している階の出し入れ小口Dに設けられた操作盤PNLの運転操作ボタン20にて、別の階の出し入れ小口Dが目標停止位置として指令されたときには、昇降処理P0の実行によりカゴ6を目標停止位置として指令された階の出し入れ小口Dに昇降させたカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されると、扱い処理が為された目標停止位置を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた出し入れ小口Dに設置された音声アナウンス用スピーカ21により、処理済み情報としての「荷受け階で扉が開けられました」という音声メッセージを通報する処理済通報処理P2を実行するように構成されている。
【0078】
説明を加えると、制御盤Hは、昇降処理P0の実行が完了した後、すなわち、カゴ6が目標停止位置として指令された階の出し入れ小口Dに到着した後、扱い処理監視処理P1を実行し、前記カゴ戸スイッチ8及び各階の前記出し入れ小口リミットスイッチDSの検出情報に基づいて、カゴ戸7及び各階の出し入れ口戸14の開閉状態を判別し、カゴ戸7及びカゴ6が停止している階の出し入れ口戸14が閉状態から開状態に切り換わると、目標停止位置に停止しているカゴ6に対する扱い処理が為されたとして、処理済通報処理P2を実行する。
【0079】
また、制御盤Hは、1階〜3階の出し入れ小口Dうちのカゴ6が停止している階の出し入れ小口Dに設けられた操作盤PNLの運転操作ボタン20にて、別の階の出し入れ小口Dが目標停止位置として指令されたときに、昇降処理P0の実行によりカゴ6を目標停止位置として指令された階の出し入れ小口Dに昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間T1(本実施形態では、1分としてる。)に達するまでの間に、目標停止位置として指令した階の出し入れ小口Dに停止したカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されない場合には、扱い処理が適正に行われない異常状態であるとして異常対策処理を実行するように構成されている。
【0080】
そして、本実施形態では、異常対策処理として、扱い処理が為されなかった階を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた階にカゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行し、さらに、扱い処理が為されなかった目標停止位置を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた出し入れ小口Dに設置された音声アナウンス用スピーカ21により、異常発生情報としての「カゴが戻ってきました」という音声メッセージを通報する異常発生通報処理P3を実行するように構成されている。
【0081】
また、制御装置Hは、1階〜3階の出し入れ小口Dうちのカゴ6が停止している階の出し入れ小口Dに設けられた操作盤PNLの運転操作ボタン20にて、別の階の出し入れ小口Dが目標停止位置として指令されたときには、その後、扱い処理監視処理P1において、その目標停止位置に昇降されたカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されるまで、目標停止位置を指令した階に設けられた操作盤PNLの運転操作ボタン20とは異なる階に設けられた操作盤PNLの運転操作ボタン20の指令によっては昇降処理P0を実行しないように構成され、且つ、前記異常対策処理として、カゴ6を返送すべく昇降処理P0を実行したときには、その後、扱い処理監視処理P1において、扱い処理が為されなかった目標停止位置を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた出し入れ小口Dに昇降されたカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されるまで、目標停止位置を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20とは異なる操作盤PNLの運転操作ボタン20の指令によっては昇降処理P0を実行しないように構成されている。
【0082】
さらに、制御装置Hは、前記異常対策処理として、カゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行したときに、その後の経過時間が返送後待機用時間T2を経過しても、扱い処理監視処理P1において、扱い処理が為されなかった目標停止位置を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた階に昇降されたカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されない場合には、目標停止位置を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20とは異なる階の操作盤PNLの運転操作ボタン20の指令による昇降処理P0を実行するように構成されている。
【0083】
説明を加えると、例えば、荷送り階の1階から荷受け階の3階に小荷物を搬送するべく、1階の作業者が、カゴ6内に搬送対象の小荷物を載せた後、1階操作盤PNL1の運転操作ボタン20にて3階を目標停止位置とする昇降指令を指令した場合、カゴ6が3階出し入れ小口D3に到着した後は、3階の作業者が小荷物を取出すために出し入れ口戸14を開操作する扱い処理を為すまで、3階操作盤PNL3の音声アナウンス用スピーカ21にて「カゴが到着しました」という荷受け階用の音声メッセージが繰り返し通報されるが、3階の作業者がカゴ6の到着に気付かず、3階出し入れ小口D3に到着したカゴ6に対する扱い処理が為されることなく扱い処理待機用時間T1が経過すると、制御盤Hは、異常対策処理を実行する。
【0084】
異常対策処理が実行されると、カゴ6が1階に自動的に返送される。カゴ6が1階出し入れ小口D1に到着すると、1階操作盤PNL1の音声アナウンス用スピーカ21にて「カゴが戻ってきました」という荷送り階用の音声メッセージが繰り返し通報される。「カゴが戻ってきました」という音声メッセージは、1階の作業者が1階出し入れ小口D1の出し入れ口戸14を開状態にする等して、カゴ6に対する扱い処理が為されるまで繰り返される。
【0085】
1階の作業者が1階操作盤PNL1の運転操作ボタン20にて3階を目標停止位置とする昇降指令を指令すると、制御盤Hは、2階操作盤PNL2や3階操作盤PNL3の運転操作ボタン20にて昇降指令が指令されても、昇降処理P0を実行しない優先モードで動作する。
【0086】
優先モードは、3階の作業者がカゴ6に対する扱い処理を為した場合や、カゴ6が3階に到着した後、扱い処理待機用時間T1が経過するまでに、3階の作業者がカゴ6に対する扱い処理を為さなかったために、異常対策処理によりカゴ6が1階に返送され、1階の作業者がカゴ6に対する扱い処理を為した場合や、異常対策処理によりカゴ6が1階に返送され、カゴ6が1階に到着した後、返送後待機用時間T2が経過するまでに、1階の作業者が、カゴ6が返送されたことやカゴ6が1階出し入れ小口D1に到着したことに気付かず、カゴ6に対する扱い処理を為されない場合には終了するが、これら3つの事象のいずれかの事象が生じるまでは、優先モードが維持されて、昇降指令を指令した1階以外の階である2階や3階の操作盤PNLの運転操作ボタン20にて昇降指令が指令されても、その指令に基づいてカゴ6が昇降作動することはない。
【0087】
なお、昇降処理P0を実行中につきカゴ6が昇降している最中に、何れかの階の出し入れ小口Dの出し入れ口戸14が開き操作されて、各階に設けられた出し入れ小口リミットスイッチDSのいずれかがOFFした場合や、何れかの階の非常停止ボタン17が押し操作された場合にも、優先モードが終了する。
【0088】
優先モードが終了すると、1階操作盤PNL1、2階操作盤PNL2、3階操作盤PNL3のいずれかの操作盤PNLの運転操作ボタン20にて新たな昇降指令が指令されるのを待機する待機状態となる。つまり、1階操作盤PNL1、2階操作盤PNL2及び3階操作盤PNL3のいずれかの運転操作ボタン20により昇降指令が指令されると、その昇降指令に基づく昇降処理P0が実行されることになる。
【0089】
上述した制御動作を実現するために、制御部Hが実行する処理内容について、図6及び図7に示されたフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明では、カゴ6の昇降作動を具体例を示して説明をする場合には、1階から3階へ小荷物を搬送する場合について説明することにする。
【0090】
待機状態にある制御部Hは、何れかの階の操作盤PNLの運転操作ボタン20にて昇降指令が指令されると、その昇降指令が、カゴ6が停止している階における運転操作ボタン20による指令(例えば、カゴ6が1階に停止している場合に、1階の作業者が3階を目標停止位置として指令する昇降指令。以下、「送り指令」ともいう。)か、或いは、カゴ6が停止していない階における運転操作ボタン20による指令であって、その階(自階)を目標停止位置とする指令(例えば、カゴ6が3階に停止している場合に、1階の作業者が1階を目標停止位置として指令する昇降指令。以下、「呼び指令」ともいう。)又はカゴ6が停止していない階における運転操作ボタン20による指令であって、その階(自階)を目標停止位置としない指令(例えば、カゴ6が3階に停止している場合に、1階の作業者が2階を目標停止位置として指令する昇降指令。以下、「移動指令」ともいう。)かを判別(ステップ#1及びステップ#2)し、呼び指令又は移動指令であれば、ステップ#4で、呼び指令を指令した階を目標停止位置とする昇降処理を実行する。
【0091】
指令された昇降指令が送り指令であると、ステップ#5以下の処理が実行される。まず、優先モードであることを示す優先モードフラグがオンされ(ステップ#5)、送り指令を指令した階が記憶され(例:1階が記憶される。)(ステップ#6)、昇降処理P0が実行される(例:カゴ6が1階から3階まで昇降作動する。)(ステップ#7)。なお、制御盤Hは、優先モードで動作している間は、荷送り階でない階(例2階や3階)から昇降指令が指令されても、昇降処理は実行しない。
【0092】
昇降処理P0の実行が完了して、カゴ6が荷受け階(例:3階)に到着すると、その階(例:3階)の操作盤PNLの音声アナウンス用スピーカ21にて「カゴが到着しました」と報知させるべく、制御盤Hは、荷受け階(例:3階)の操作盤制御部23に対して、報知すべきメッセージ情報を識別する識別情報が付加されたアナウンス指令を指令する(ステップ#8)。
【0093】
このアナウンス指令を受けた荷受け階(例:3階)の操作盤制御部23は、記憶装置に格納された複数の音声データのうち報知すべき音声メッセージに対応する音声データを識別情報に基づいて抽出し、その抽出した音声データに基づいて、音声アナウンス用スピーカ21を作動させる(例:3階の音声アナウンス用スピーカ21から「カゴが到着しました」という音声メッセージが出力される。)。これにより、荷受け階(例:3階)の作業者にカゴ6の到着を知らしめて、1階から搬送された小荷物を取り出す等のカゴ6に対する扱い処理を作業者に促すことができる。
【0094】
また、カゴ6が荷受け階(例:3階)に到着すると、制御盤Hは、タイマt1及びタイマt3をスタートさせ(ステップ#9)、計時開始からの経過時間が、扱い処理待機用時間T1に達するまでの間、ステップ#10〜ステップ#17の処理を繰り返し実行する。ステップ#10では、昇降指令が新たに指令されたか否かを監視し、ステップ#13では、カゴ6に対する扱い処理が為されたか否かを監視する。
【0095】
なお、ステップ#14〜ステップ#15の処理は、タイマt3にて計時している荷受け階(例:3階)にアナウンス指令を指令してからの経過時間がアナウンス周期T3(本実施形態では、10秒としている。)に達すれば、再び、荷受け階(例:3階)にアナウンス指令を指令する処理である。これにより、カゴ6が荷受け階(例:3階)に到着後、荷受け階(例:3階)にて荷扱い処理が為されるか、荷送り階(例:1階)にて新たな昇降指令が指令されるか、扱い処理待機用時間T1が経過するかのいずれかの場合が生じるまで、アナウンス周期T3毎に、荷受け階(例:3階)の音声アナウンス用スピーカ21から「カゴが到着しました」という音声メッセージが繰り返し出力される。
【0096】
ステップ#10にて新たな昇降指令が指令されると、その指令が荷送り階(例:1階)からの指令であるか否かが判別され(ステップ#11)、荷送り階(例:1階)からの昇降指令であると、その昇降指令にて指令された目標停止位置にカゴ6を昇降させるべく、昇降処理P0が実行される(ステップ#12)。荷送り階でない階(例:2階や3階)からの昇降指令であると、その昇降指令は無視される(ステップ#11)。新たな昇降指令により昇降処理P0が実行された後は、ステップ#8に復帰する。
【0097】
つまり、制御盤Hは、昇降指令が指令されて、一旦、優先モードになると、荷受け階(例:3階)を他の階(例:2階)に変更することになる移動指令(例:1階から指令される昇降指令であって、3階から2階へカゴ6を昇降させる昇降指令)は受け付けるが、その他の昇降指令(例:2階から指令される昇降指令等)は、無視するようになっている。
【0098】
ただし、図6及び図7のフローチャートにおける記載は省略しているが、ステップ#10にて検出された新たな昇降指令が荷送り階からの呼び指令(例:1階から指令される昇降指令であって、3階から1階へカゴ6を昇降させる昇降指令)である場合には、その昇降指令は無視されず、ステップ#12の昇降処理P0が実行される。この場合には、昇降処理P0の実行が完了すると、ステップ#31に移行して、優先モードが終了する。なお、ステップ#10にて検出された新たな昇降指令が荷送り階からの呼び指令である場合に、この指令が無視されるようにしてもよい。この場合には、ステップ#12の昇降処理P0は実行されず、ステップ#11からステップ#13へ移行して、優先モードが継続する。
【0099】
ステップ#13では、前述した扱い処理監視処理P1を実行する。すなわち、カゴ戸スイッチ8及び各階の出し入れ小口リミットスイッチDSの検出情報に基づいて、カゴ戸7及び各階の出し入れ口戸14の開閉状態を判別する。荷受け階(例:3階)の出し入れ口戸14及びカゴ戸7が閉状態から開状態に切り換わると、荷受け階(例:3階)の作業者によりカゴ6に対する扱い処理が為されたとして、ステップ#18の処理を実行する。
【0100】
ステップ#18では、前述の処理済通報処理P2が実行され、荷送り階(例:1階)の操作盤PNLの音声アナウンス用スピーカ21にて「荷受け階で扉が開けられました」と報知させるべく、制御盤Hは荷送り階(例:1階)の操作盤制御部23に対して、報知すべきメッセージ情報を識別する識別情報が付加されたアナウンス指令を指令する。
【0101】
このアナウンス指令を受けた操作盤制御部23は、記憶装置に格納された複数の音声データのうち報知すべき音声メッセージに対応する音声データを識別情報に基づいて抽出し、その抽出した音声データに基づいて、音声アナウンス用スピーカ21を作動させる(例:1階の音声アナウンス用スピーカ21から「荷受け階で扉が開けられました」という音声メッセージが出力される。)。これにより、荷送り階(例:1階)の作業者に、荷送り階に到着したカゴ6に対する扱い処理が為されたことを知らしめて、直ちに次の小荷物を1階から2階や3階へ搬送するため、空となったカゴ6を呼び寄せるべく、呼び指令を指令することができるといったように、荷受け階(例:3階)において小荷物か取り出されたかどうかについて不明な状態で時間を過ごすことや、確認のために相互インターホン22を使用して荷受け階(例:3階)の作業者と通話するといった手間を省いて、小荷物の搬送を効率よく行うことができる。
【0102】
ステップ#18でアナウンス指令を指令した後は、ステップ#31に移行して、優先モードフラグがオフされて、新たな昇降指令を待機する待機状態に復帰する。
【0103】
カゴ6が荷受け階(例:3階)に到着してからの経過時間t1が、扱い処理待機用時間T1に達するまでの間に、目標停止位置として指令した荷受け階(例:3階)の出し入れ小口Dに停止したカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されない場合には、ステップ#17で、Yesと判別され、カゴ6を荷送り階(例:1階)に返送すべく、目標停止位置の設定処理(図7のステップ#19)及び昇降処理P0(図7のステップ#20)が自動的に実行される。
【0104】
ステップ#19の昇降処理P0の実行が完了して、カゴ6が荷送り階(例:1階)に到着すると、異常発生通報処理P3が実行されて、荷送りの階(例:1階)の操作盤PNLの音声アナウンス用スピーカ21にて「カゴが戻ってきました」と報知させるべく、制御盤Hは、荷送り階(例:1階)の操作盤制御部23に対して、報知すべきメッセージ情報を識別する識別情報が付加されたアナウンス指令を指令する(ステップ#21)。
【0105】
このアナウンス指令を受けた荷送り階(例:1階)の操作盤制御部23は、記憶装置に格納された複数の音声データのうち報知すべき音声メッセージに対応する音声データを識別情報に基づいて抽出し、その抽出した音声データに基づいて、音声アナウンス用スピーカ21を作動させる(例:1階の音声アナウンス用スピーカ21から「カゴが戻ってきました」という音声メッセージが出力される。)。これにより、荷送り階(例:1階)の作業者に、返送されたカゴ6の到着を知らしめて、荷受け階(例:3階)に搬送しようとしてカゴ6内に載せられた小荷物を取り出す等のカゴ6に対する扱い処理を作業者に促すことができる。
【0106】
また、カゴ6が荷送り階(例:1階)に到着すると、制御盤Hは、タイマt2及びタイマt3をスタートさせ(ステップ#22)、計時開始からの経過時間が、返送後待機用時間T2に達するまでの間、ステップ#23〜ステップ#30の処理を繰り返し実行する。ステップ#23では、昇降指令が新たに指令されたか否かを監視し、ステップ#26では、カゴ6に対する扱い処理が為されたか否かを監視する。
【0107】
なお、ステップ#27〜ステップ#29の処理は、タイマt3にて計時している荷送り階(例:1階)にアナウンス指令を指令してからの経過時間がアナウンス周期T3(本実施形態では、10秒としている。)に達すれば、再び、荷送り階(例:1階)にアナウンス指令を指令する処理である。これにより、カゴ6が荷送り階(例:1階)に到着後、荷送り階(例:1階)にて荷扱い処理が為されるか、荷送り階(例:1階)にて新たな昇降指令が指令されるか、返送後待機用時間T2が経過するかのいずれかの場合が生じるまで、アナウンス周期T3毎に、荷送り階(例:1階)の音声アナウンス用スピーカ21から「カゴが戻ってきました」という音声メッセージが繰り返し出力される。
【0108】
ステップ#23にて新たな昇降指令が指令されると、その指令が荷送り階(例:1階)からの指令であるか否かが判別され(ステップ#24)、荷送り階(例:1階)からの昇降指令であると、その昇降指令にて指令された目標停止位置にカゴ6を昇降させるべく、昇降処理P0が実行される(ステップ#25)。荷送り階でない階(例:2階や3階)からの昇降指令であると、その昇降指令は無視される(ステップ#24)。新たな昇降指令により昇降処理P0が実行された後は、図6のステップ#8に復帰する。
【0109】
つまり、制御盤Hは、荷送り階(例:1階)昇降指令に基づいて、荷受け階(例:3階)に昇降したものの、荷受け階(例:3階)に到着した後、扱い処理待機用時間T1が経過するまでにカゴ6に対する扱い処理が為されなかったためにカゴ6を荷送り階(例:1階)に返送した後は、荷送り階(例:1階)からの新たな昇降指令は受け付けるが、その他の昇降指令(例:2階や3階から指令される昇降指令)は、無視するようになっている。
【0110】
カゴ6が荷送り階(例:1階)に到着してからの経過時間t2が、返送後待機用時間T2に達するまでの間に、返送に係る昇降処理P0についての目標停止位置として設定された荷送り階(例:1階)の出し入れ小口Dに停止したカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されない場合には、ステップ#30で、Yesと判別され、ステップ#31に移行して、優先モードフラグがオフされて、新たな昇降指令を待機する待機状態に復帰する。
【0111】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0112】
(1)上記実施形態では、制御盤Hが、異常対策処理として、カゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行するに加えて、扱い処理が為されなかった荷受け階を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた荷送り階に対応する音声アナウンス用スピーカ21により、「カゴが戻ってきました」という音声メッセージを通報する異常発生通報処理P3を実行するように構成されたものを例示したが、これに代えて、制御盤Hが、異常対策処理として、カゴ6を返送することなく、扱い処理が為されなかった荷受け階を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた荷送り階に対応する音声アナウンス用スピーカ21により、異常発生情報としての「荷受け階で扉は開けられませんでした」という音声メッセージを通報する単純異常発生通報処理を実行するように構成されたものでもよい。
【0113】
(2)上記別実施形態(1)において、さらに、制御盤Hが、荷送り階(例:1階)の運転操作ボタン20にて、別の階(例:3階)が荷受け階として指令されたときには、その後、扱い処理監視処理P1にて、その荷受け階(例:3階)に昇降されたカゴ6に対する扱い処理が為されたことが検出されるまで、荷受け階(例:3階)を指令した階(例:1階)の運転操作ボタン20とは異なる階(例:2階や3階)の運転操作ボタン20の指令によっては昇降処理P0を実行しないように構成されたものであってもよい。
【0114】
(3)上記実施形態では、制御盤Hが、異常対策処理として、カゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行するに加えて、扱い処理が為されなかった荷受け階を指令した操作盤PNLの運転操作ボタン20が設けられた荷送り階に対応する音声アナウンス用スピーカ21により、「カゴが戻ってきました」という音声メッセージを通報する異常発生通報処理P3を実行するように構成されたものを例示したが、これに代えて、制御盤Hが、異常対策処理として、カゴ6を返送するが、上記実施形態における異常発生通報処理P3を実行しないように構成されたものでもよい。
【0115】
また、異常対策処理として、カゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行するに加えて、異常発生通報処理P3を実行する場合、上記実施形態のように、カゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行して、昇降処理P0の実行が完了してから異常発生通報処理P3を実行するものに代えて、カゴ6を返送するべく昇降処理P0の実行を開始する前に異常発生通報処理P3を実行してもよいし、カゴ6を返送するべく昇降処理P0を実行している最中に異常発生通報処理P3を実行してもよい。
【0116】
さらに、異常対策処理としては、上記実施形態で示したような荷送り階へカゴを返送するための昇降処理や上記別実施形態(1)で示したような単純異常発生通報処理の他、荷受け階にカゴが到着した後に、荷受け階の音声アナウンス用スピーカ21にて繰り返し報知される「カゴが到着しました」という音声メッセージを、扱い処理待機用時間T1が経過する前に通報されていた音量より大きい音量にて通報する大音量通報処理や、同音声メッセージを、扱い処理待機用時間T1が経過する前に通報されていたアナウンス周期T3より短い周期にて通報する高頻度通報処理であってもよい。
【0117】
(4)上記実施形態では、扱い処理検出手段が、カゴ戸スイッチ8及び各階の出し入れ小口リミットスイッチDS、並びに、制御盤Hが実行するプログラム形式の扱い処理監視処理P1により構成されたものを例示したが、これに限らず、カゴ戸スイッチ8及び、カゴ戸スイッチ8の検出情報に基づいてカゴ戸7の開閉状態を監視するカゴ戸監視式扱い処理監視処理により構成されたものや、各階の出し入れ小口リミットスイッチDS、及び、各階の出し入れ小口リミットスイッチDSの検出情報に基づいて各階の出し入れ口戸14の開閉状態を監視する出し入れ口戸監視式扱い処理監視処理により構成されたものであってもよい。
【0118】
(5)扱い処理検出手段が、カゴ6に載せられた小荷物の重量を検出する重量センサや、カゴ6に載せられた小荷物の存在を検出する光電センサ等の検出手段と、この検出手段の検出情報に基づいてカゴ6内の小荷物の全部又は一部が目標停止位置にて降ろされたか否かを判別する小荷物監視処理により構成されたものであってもよい。
【0119】
(6)上記実施形態では、報知手段が音声アナウンス用スピーカ21にて構成されたものを例示したが、これに代えて、文字情報や図形情報等の視覚により認識される表示情報を表示可能な液晶表示パネルやLED表示灯等の表示手段にて構成されたものであってもよい。
【0120】
(7)上記実施形態では、カゴ6が各階の床面高さに合わせて設置された出し入れ小口Dに停止するフロアタイプの小荷物昇降機を例示したが、これに限らず、カゴ6が作業者の腰の高さに合わせて各階に設置された出し入れ小口Dに停止するテーブルタイプの小荷物昇降機であってもよく、また、各階によって異なる側面からカゴに対する扱い処理が行えるようにカゴ6及び出し入れ小口Dが構成されているものでもよい。
【0121】
(8)上記実施形態では、複数の停止位置が1階〜3階に設けられた1階出し入れ小口D1、2階出し入れ小口D2、及び、3階出し入れ小口D3に対応して3個設定されたものを例示したが、停止位置は、2個又は4階以上設定されたものでもよい。
【0122】
(9)上記実施形態では、処理済通報処理P2として、荷送り階の出し入れ小口Dの音声アナウンス用スピーカ21にて処理済み情報を報知すべく、荷送り階の出し入れ小口Dの操作盤制御部23にだけアナウンス指令を指令するものを例示したが、これに代えて、処理済通報処理P2として、全ての階の出し入れ小口Dの音声アナウンス用スピーカ21にて処理済み情報を報知すべく、全ての階の出し入れ小口Dの操作盤制御部23にアナウンス指令を指令するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】小荷物昇降機の主要構造を示す外観斜視図
【図2】小荷物昇降機の設置状態を示す縦断側面図
【図3】出し入れ小口の正面図
【図4】操作盤の正面図
【図5】制御ブロック図
【図6】制御盤の処理内容を示すフローチャート
【図7】制御盤の処理内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0124】
L 昇降経路
H 制御手段
P0 昇降処理
P2 処理済通報処理
P3 異常発生通報処理(異常対策処理)
T1 扱い処理待機用時間
T2 返送後待機用時間
D,D1,D2,D3 停止位置
DS,P1,8 扱い処理検出手段
6 カゴ
10 昇降駆動手段
20 昇降指令手段
21 通報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の停止位置が設定された昇降経路に沿って昇降自在な小荷物搬送用のカゴと、
前記カゴを昇降駆動する昇降駆動手段と、
前記複数の停止位置の夫々に設けられ、前記複数の停止位置から選択される目標停止位置に前記カゴを昇降させる昇降指令を指令する昇降指令手段と、
前記昇降指令手段による前記昇降指令に基づいて、前記カゴを前記目標停止位置に昇降させるべく、前記昇降駆動手段の作動を制御する昇降処理を実行する制御手段とが備えられた小荷物昇降機であって、
前記複数の停止位置のいずれかに停止した前記カゴに対する扱い処理が為されたことを検出する扱い処理検出手段が設けられ、
前記複数の停止位置の夫々に、通報すべき情報を通報する通報手段が設けられ、
前記制御手段が、
前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、前記昇降処理の実行により目標停止位置に昇降させた前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されると、前記扱い処理が適正に行われたことを示す処理済み情報を前記通報手段にて通報する処理済通報処理を実行するように構成されている小荷物昇降機。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、前記昇降処理の実行により前記カゴを目標停止位置に昇降させてからの経過時間が扱い処理待機用時間に達するまでの間に、前記目標停止位置に停止した前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されない場合には、前記扱い処理が適正に行われない異常状態であるとして異常対策処理を実行するように構成されている請求項1記載の小荷物昇降機。
【請求項3】
前記制御手段が、前記異常対策処理として、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に、前記カゴを返送するべく前記昇降処理を実行するように構成されている請求項2記載の小荷物昇降機。
【請求項4】
前記制御手段が、
前記異常対策処理として、前記カゴを返送するべく前記昇降処理を実行するに加えて、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に対応する前記通報手段により、異常発生情報を通報する異常発生通報処理を実行するように構成されている請求項3記載の小荷物昇降機。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、その後、その目標停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されるまで、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令によっては前記昇降処理を実行しないように構成され、且つ、
前記異常対策処理として、前記カゴを返送すべく前記昇降処理を実行したときには、その後、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されるまで、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令によっては前記昇降処理を実行しないように構成されている請求項3又は4に記載の小荷物昇降機。
【請求項6】
前記制御手段が、
前記異常対策処理として、前記カゴを返送するべく前記昇降処理を実行したときに、その後の経過時間が返送後待機用時間を経過しても、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されない場合には、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令による前記昇降処理を実行するように構成されている請求項5記載の小荷物昇降機。
【請求項7】
前記制御手段が、
前記異常対策処理として、前記扱い処理が為されなかった前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段が設けられた前記停止位置に対応する前記通報手段により、異常発生情報を通報する異常発生通報処理を実行するように構成されている請求項2記載の小荷物昇降機。
【請求項8】
前記制御手段が、
前記複数の停止位置のうちの、前記カゴが停止している停止位置に設けられた昇降指令手段にて、別の停止位置が目標停止位置として指令されたときには、その後、その目標停止位置に昇降された前記カゴに対する扱い処理が為されたことが前記扱い処理検出手段にて検出されるまで、前記目標停止位置を指令した前記昇降指令手段とは異なる前記昇降指令手段の指令によっては前記昇降処理を実行しないように構成されている請求項7記載の小荷物昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−156100(P2008−156100A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349777(P2006−349777)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000129460)株式会社クマリフト技術研究所 (40)
【Fターム(参考)】