説明

小領域静電エアロゾルコレクタ

小領域静電エアロゾルコレクタは、コレクタハウジング、コレクタハウジングから延びる入口ノズル及びハウジングから流出する空気の出口を与える出口を含む。ポンプ装置が入口ノズルを通してハウジング内に空気を吸引する。サンプリングされた空気はダクトワーク内を移動し、粒子は基板上に収集され、空気は収集後に出口から排出される。コレクタは、ダクトワーク内に配置され、空気が通過する入口ノズルと基板との間に帯電点を定める電界を生成する帯電装置も含む。試料基板の収集表面は帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位又は反対の帯電電位に維持される。エアロゾルを前記通路内の小領域内に含め、その空気を前記試料基板の収集表面の近くに流すことによって粒子状物質が試料基板の収集表面に収集される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にはバイオエアロゾル収集に関し、特には小領域静電エアロゾルコレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射及び気候過程や人の健康への粒子状物質の潜在的影響及び大気輸送及び汚染物質の堆積に果たす粒子の役割のために、空中浮遊エアロゾルのモニタリングが注目度を増している。例えば、所定の場所の空気を、吸入可能な粒度範囲内に入る粒子状物質、例えばその場に含まれる又は導入される自然発生又は人工発生の空中浮遊病原体、アレルゲン、バクテリア、ウィルス、菌類及び生物又は化学剤について分析することが望まれる。
【0003】
別の例として、半導体クリーンルーム、薬剤生産設備及びバイオテクノロジー研究所内において不所望な環境暴露を生成する汚染もしくは製造、試験又は実験プロセスに悪影響を与える汚染が発生していないことを確かめるために、このような環境内において特定の空中浮遊粒子状物質の存在を検出することが望まれる。同様に、病院、擁護施設、リハビリセンター及び他のケア施設内において特定の空中浮遊粒子状物質の存在を検出できることは病気、感染症又は有害バクテリアの広がりを防止するために役立ち得る。
【0004】
大気粒状物質のモニタリングは更に人の健康リスク及び環境汚染を評価する用途を見出している。更に、大気粒状物質のモニタリングは、例えば公共及び商業ビルディングの空気清浄送風システム、高山、下水施設、農業及び製造施設などの仕事場、街角、煙道及び煙突などの屋外の空気をモニタして、全国大気環境基準(NAAQS)の順守を評価する用途を見出している。大気粒状物質のモニタリングは、環境衛生をモニタするのが望ましい場所、例えば微生物、植物又は動物に曝された住宅をモニタする用途も見出している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の種々の態様によれば、コレクタハウジング及びコレクタハウジング内の試料基板受入領域を備える小領域静電エアロゾルコレクタが提供される。本小領域静電エアロゾルコレクタは、更に、コレクタハウジングの外部からコレクタハウジングの内部へ空気を流す入口を与えるようにコレクタハウジングから延びる入口ノズル及び入口ノズルから試料基板受入領域へ空気を流す通路を備える。本小領域静電エアロゾルコレクタは、更に、 前記通路内へ延びる電極を有する帯電装置及び前記帯電装置に結合された高電圧電源を備える。
【0006】
収集表面を有する試料基板が試料基板受入領域に置かれ、サンプリング(抽出)動作が実行される。このサンプリング動作は、ポンプ装置によって入口ノズルを通してコレクタハウジング内に空気を吸引し、前記通路を通して空気を前記試料基板受入領域に向け引くとともに、前記コレクタハウジング内に吸引された空気を排出させる。高電圧電源によって帯電装置の電極を付勢して前記電極を流れ去る空気中の粒子を帯電する電界を生成する。更に、試料基板の収集表面は帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位及び反対の帯電電位の一つに維持される。この構成によれば、エアロゾルを前記通路内の小領域内に含め、その空気を帯電された粒子が前記収集表面に引き付つけられるように前記試料基板の収集表面の近くに流すことによって粒子状物質が試料基板の収集表面に収集される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、コレクタハウジングを付与するステップ及びコレクタハウジング内に試料基板受入領域を付与するステップを備える粒子状物質の収集方法が提供される。本方法は、更に、コレクタハウジングの外部からハウジングの内部へ空気を流すための入口を与えるように前記コレクタハウジングから延びる入口ノズルを付与するステップ及び通路内に延びる電極を有する帯電装置を付与するステップを備える。
【0008】
本方法は、更に、サンプリング動作を実行するステップを備える。収集表面を有する試料基板が前記試料基板受入領域に置かれる。サンプリング動作は、前記入口ノズルを通して前記コレクタハウジング内に空気を吸引して通路を通して空気を試料基板受入領域に向け引くとともに、前記コレクタハウジング内に吸引された空気を排出させることによって実行される。サンプリング動作は、帯電装置の電極によって該電極を流れ去る空気中の粒子を帯電する電界を発生させ、試料基板の収集表面を前記帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位及び反対の帯電電位の一つに維持することによって更に実行される。サンプリング動作は、エアロゾルを通路内の小領域に含め、その空気を荷電粒子が試料基板の収集表面に引き付けられるように試料基板の試料表面の近くに流すことにより粒子状物質を前記基板の試料表面に収集するステップを更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の種々の態様による小領域静電エアロゾルコレクタの概略図である。
【図2】本発明の種々の態様による別の小領域静電エアロゾルコレクタの概略図である。
【図3】図1及び図2に示される、本発明の種々の態様による模範的な小領域静電エアロゾルコレクタの収集効率を帯電電圧の関数として示すチャートである。
【図4】図1及び図2に示される、本発明の種々の態様による模範的な小領域静電エアロゾルコレクタの収集効率をサンプリングレートの関数として示すチャートである。
【図5】本発明の種々の態様による粒子状物質の収集方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
不純物をモニタし分析する多くの現在の技術は、試料を最初に収集し、試料基板上に濃縮する必要がある。本発明の種々の態様によれば、バイオエアロゾル粒子を含む粒子状物質を空気から除去し、それらを固体基板上の小領域に高い効率で堆積できる小領域静電コレクタが提供される。粒子は基板上に堆積される前にコレクタ内で発生される電界により生じる静電力によって堆積される。コレクタは小型に実現でき、ここに詳細に記載されるように小量の電力を使用するように構成することができる。
【0011】
図面、特に図1を参照すると、本発明の種々の態様に基づく小領域静電エアロゾルコレクタ10Aが示されている。一般に、空気はコレクタ10Aのハウジング14のエアロゾル入口12に流入する。抽出(サンプリング)された空気は粒子状物質が空気から分離されるようにダクトワーク内を移動し、収集された粒子から剥ぎ取られた空気は出口16を経てハウジング14から排出される。エアロゾルは除去すべき粒子状物質が含まれる任意のガス源とすることができる。しかし、典型的な用途は周囲空気のサンプリングとすることができる。
【0012】
空気の流入を容易にするために、コレクタ10Aのエアロゾル入口12は、コレクタハウジング14の外部からハウジング14の内部へ流入する空気のための入口を与えるためにコレクタハウジング14から例えば入口管20を経て外部へ延びる入口ノズル18を含む。空気は入口ノズル18に流入し、空気流をハウジング14内に向けるダクトワークを通る。例えば、図に示されるように、ダクトワークは入口管20を通る入口通路を含むことができる。
【0013】
空気は、出口16を経てハウジングから排出される前に、通路22から収集区域24へ走行する。収集区域24は一般に帯電装置26と、試料基板28を受け入れる試料基板受入領域をハウジング14内に含み、試料基板28は入口通路22を通ってハウジング14内へ走行してくる空気から剥ぎ取られた粒子状物質を収集する。一実施形態では、入口管20は非導電性であり、例えばデラウェア、ウェリントン所在のアイ・イー・デュポン社のDelrin(登録商標)アセタール樹脂などのポリアセタールで構成される。
【0014】
帯電装置26は、その一部分が、空気が通過する入口ノズル18と試料基板28との間に帯電点を定める電界を生成するように置かれている。図1の実施形態では、帯電装置26は、ハウジング14内に空気を通す通路22内に延びる電極、例えば少なくとも一つの帯電ワイヤ30を備える。例えば、電極は、その先端部がダクトワークを画成する入口通路22のほぼ中心まで延在するように角度をつけて入口通路22内に通すことができる。更に、電極は通路22内で調整可能にすることができる。これは所望動作のための電極の組み立て及び位置決めを容易にする。更に、帯電装置26は高電圧源32に電気的に結合される。この点に関し、高電圧源32は数千ボルトの直流(DC)電力を発生し、以下に詳述するように、電界を生成するために電極に供給される。
【0015】
帯電ワイヤ30は高電圧源32に電気的に接続されたタングステン又は他の適切な導電材料からなるものとし得る。更に、帯電ワイヤ30は好ましくは点もしくはほぼ尖った端で終端する。帯電ワイヤ30は、本発明の種々の態様によれば電極はほぼ「針状」であると特徴付けるために、ここでは帯電針とも言う。一般に、電極の鈍い先端は低効率の動作をもたらすが、比較的鋭い先端はもっと高い効率をもたらすことができる。しかし、電極形状は特定の用途により決定される。
【0016】
試料基板28は、例えばアルミニウム被覆ガラススライドのようなスライドとすることができる。この点に関し、スライドは、例えばスライドを容易に取替え及び/又は交換することができるように入口管20の下に固定するばね偏倚された固定器具を用いて、ハウジングの試料基板受入領域内に固定することができる。本発明の種々の態様によれば、試料基板28の収集表面34は入口管20の端面に極めて近接して位置し、例えば検査官が空隙を物理的に見ることができないほど近接して位置する。従って、スライドを交換するとき、スライド及び入口管の端面の適切な校正を維持するように注意する必要がある。別の例では、試料基板はアルミニウムマイラーテープとし、例えばアルミニウムマイラーテープを巻き取り及び巻き戻す適切なローラ及びテンショナを用いて自動サンプリングシステムに統合することができる。
【0017】
試料基板28がハウジング14内に手動的に装填されるか自動的に供給されるかと関係なく、試料基板28の収集表面34は帯電装置26の電極により生成される電界に対して中性又は反対の帯電電位に維持される。一実施形態では、接地ポスト36が試料基板28の試料収集表面34に電気的に結合される。接地ポスト36は大地38に接続され、よって試料基板28の試料収集表面34を帯電ワイヤ30により発生される電界に対して接地することができる。この点に関し、接地ポスト36と試料基板28の試料収集表面34との間に物理的接点を設けることができる。
【0018】
ポンプ装置40が入口ノズル18から空気をコレクタハウジング14内に吸引し、入口通路22を通して空気を試料基板受入領域24に向けて引くとともに、コレクタハウジング14内に吸引された空気を排出する。図1に示されるように、ポンプ装置40は単一のポンプを用いて実現されているが、他の構成に実現することもできる。空気(エアロゾル)はポンプ40によりダクトワークを経て、例えば入口管20に沿って入口通路22を経て吸引され、粒子状物質が試料基板28の固体試料収集表面34上に収集される。ポンプ40は更にコレクタハウジング14内に吸引された空気を出口16から排出する。この点において、試料基板28は入口管の端面に近接して置かれる。更に、主な圧力変化は入口管と基板との間の空隙で起こり、この空隙は以下に詳述されるように空気を通すのがやっとの大きさにすることができる。一実施形態では、ポンプは毎分約1〜3リットルの空気を吸引する。
【0019】
コレクタ10Aの動作中に、収集表面34を有する試料基板28は試料基板受入領域24内に置かれる。高電圧源32が帯電装置26の電極を付勢して電極を流れ去る空気内の粒子を帯電する電界を生成する。更に、試料基板28の収集表面34は、帯電装置26により生成される電界に対して中性の帯電電位又は反対の帯電電位のうちの一つに維持される。こうして、エアロゾルを通路22内の小領域内に含ませ、空気を帯電された粒子が収集表面34に引き付けられるように試料基板28の収集表面34の近くに流すことによって、粒子状物質が試料基板28の収集表面34上に収集される。
【0020】
本発明の種々の態様によれば、入口管20は入口12からコレクタチャンバ14内へ空気を流す第1の通路22を規定する。入口管20の第1端部は入口ノズル18に結合される。入口管20の第2端部は試料基板28から離間させて入口管20の端部と試料基板の収集表面34との間の空隙を規定する。帯電ワイヤ30は、電界を入口管20の通路22内にて収集表面34に近接して生成するように、入口管20内に入口管20の第2端部に向けて配置される。こうして、帯電点が入口管20の通路22内に規定され、そこで電界がコレクタ10Aを通過するエアロゾル内に懸濁されている粒子状物質を帯電する。上述したように、試料基板28の試料収集表面34は接地されるか、入口管20内に発生される電界の反対の帯電電位に維持される。従って、帯電ワイヤ30は点放射電極を構成し、基板自体は放電電極を構成する。
【0021】
高DC電圧、例えば1600ボルトから11kボルト超の範囲のDC電圧が高電圧源32により帯電ワイヤ30に供給されると、帯電ワイヤ30の先端(点放射電極)から基板(放電電極)へ延びるコロナ放電が発生する。更に、2つの電極間で沈降が起こり、エアロゾル内の粒子状物質が基板28の試料収集表面34上に収集される。帯電ワイヤ30(点放射電極)から基板の収集表面34に向かって延びるコロナ放電は放電点を頂点とし収集表面を底面とするほぼ円錐形を成す。帯電ワイヤ30を試料基板28に近接させること、エアロゾルを入口管20に流して閉じ込めること、エアロゾルをポンプ装置40により吸引して帯電後に基板の収集表面34の近くを流れさせることによって、粒子状物質を試料基板28の収集表面34上の比較的小さい区域内に集団で及び/又は個別に収集することができる。
【0022】
試料基板28の試料表面に対する帯電ワイヤ30の位置は、特定応用、例えば電圧要件、電極材料、収集要件などに応じて、制御することができる。例えば、電極の先端が試料基板28の収集表面34に近すぎる場合には、アーク放電が生じ得る。電極の先端が収集表面34から遠すぎる場合には、試料基板上への低い収集効率/エアロゾル分布が生じ得る。一実施形態では、電極の先端は試料基板の収集表面から1/4インチ(0.0635センチメートル)を越えるが1/2インチ(1.27センチメートル)を超えないように位置させることができる。しかしながら、実際には適切な構成は個々の事情によって決まる。
【0023】
本発明の種々の態様によれば、入口管20は、エアロゾルが帯電点から試料基板28の試料収集表面34までの小距離を移動するときエアロゾルを収容するように寸法決定することができる。上で詳細に述べたように、入口管20の端部と試料基板28との間に空隙を存在させることができる。しかし、入口管20は、入口管20から出るエアロゾルの空気流を基板の試料表面34に十分近接させて粒子状物質を試料表面34上の小収集区域に収集するために、基板に十分近接離間させることができる。
【0024】
本発明の種々の態様によれば、入口管内における沈降を妨げないように熱又はその他の特性は利用されない。もっと正確に言えば、サンプル時間はかなり短く維持される。更に、入口管自体の材料、例えば上記の例におけるDelrin(登録商標)アセタール樹脂が入口管内の沈降/蓄積の低減に有用である。更に、本発明の種々の態様によるコレクタ10Aは連続的にランしない。むしろ、収集プロセス中に停止し、帯電装置26の電極を滅勢するための時間を取ることができる。電極により発生される電界を消滅させる時間があるため、コレクタ10A内に蓄積する汚染の可能性が最小になる。
【0025】
従って、本発明の種々の態様によれば、コレクタ10Aは、エアロゾルを入口管20内に閉じ込め、そのエアロゾルを帯電装置26により発生される電極内により入口管20を通して吸引される粒子を帯電した後に試料基板28の試料収集表面34の近くを流れさせることによって粒子状物質をできるだけ小さい区域に堆積させようとしている。上述したように、試料収集表面34は帯電装置26により発生される電界に対して中性又は反対の帯電電位に維持されるため、帯電された粒子の試料収集平面34への引付力が試料基板28上へ粒子状物質の収集を促進する。低レートでのサンプリングで極めて高い効率が可能になる。
【0026】
本発明の種々の態様によれば、コレクタ10Aは、小さなフットプリントを有するように構成することができる。一例として、入口管20は6ミリメートル以下の内径を有し、約3インチ(約7.62センチメートル)以下の長さを有するものとし得る。ポンプ装置40は約1〜2インチ(約2.54〜5.08センチメートル)の寸法を有する単一のポンプで実現することができる。従って、コレクタ10Aは約4×4インチ(約10.16×10.16センチメートル)のフットプリントの寸法を有することができる。
【0027】
コレクタ10Aは少量の電力を使用するように設計できるが、高電圧電源32は、エアロゾルで搬送される粒子を試料基板28上に収集するのに十分な電界を帯電装置26により発生させるのに十分な電圧を発生できなければならない。上述したように、高電圧電源32は1600ボルト〜11kボルトの範囲の電圧を発生できるものとする。
【0028】
図2を参照すると、本発明の他の態様に基づくコレクタ10Bが示されている。コレクタ10Bは多くの点で図1につき説明したコレクタ10Aに類似する。従って、同等の構造は同等の符号で示されている。コレクタ10Bでは、抽出した空気をハウジング14の下部から排出する代わりに、出口及び対応するポンプ装置40はハウジング14の上部に移転されている。この構成は、試料基板の前進や自動交換などの自動プロセスを容易にする。
【0029】
特に、空気は入口管20を通して試料基板28の収集表面に向け吸引される。空気中の粒子状物質は帯電装置26の電極部分を通過するとき帯電され、試料基板28の反対極性に帯電された又は接地された(中性に帯電された)試料収集表面34に引き付けられる。残存空気はポンプ装置40により空気通路42を通ってコレクタ10Bの上部に沿って大気へ放出される。この点において、空気は図1の実施形態に示されるように試料基板28の下部又は背後を流れる必要はない。むしろ、空気は収集表面34から空気通路42を通ってコレクタハウジング14の側部から出て行く。
【0030】
この実施形態では、接地ポスト36は接地カラーとして構成され、その変更された構成を示すために36’で示されている。接地カラー36’は入口管の内径を包囲するほぼ環状のリングであり、試料基板28の収集表面34と物理的に接触する。
【0031】
更に、図2に示されるように、コレクタ10Bは更に、試料基板28の試料表面34が試料収集中に隔離されるように、粒子状物質を受け取るために入口管の端部に向けられた試料表面34の領域を隔離するコレクタシール44、例えばガスケットを含む。コレクタシール44は、先に収集された試料が汚染されないように試料基板を密封するために設けられる。
【0032】
例えば、本発明の種々の態様によれば、コレクタ10Bは、試料基板28が手動的に又は自動的に交換される自動プロセスに使用するのに適している。別の構成では、試料基板28は、例えば適切なテープ及び巻き取り、巻き戻し機構を用いて自動的に進められるテープとすることができる。
【0033】
図3を参照すると、チャート50は、帯電電圧(ボルト単位)を横軸に、本発明の種々の態様によるコレクタ10の模範的な実施形態の収集効率を縦軸にプロットしたデータ点を示す。図3のチャートの収集効率は、コレクタ内に収集された粒子状物質と試料基板上に収集された粒子状物質との比較である。
【0034】
チャート50に示されるように、模範的な測定では測定500ボルトの帯電電圧において収集は観測されなかった。しかし、1600から4000ボルトの増大した電圧では収集効率の増大を示した。更に11kVの帯電電圧ではほぼ100%の収集効率が測定された。
【0035】
図4を参照すると、チャート60は、サンプリングレート(リットル/分(LPM)単位)を横軸に、本発明の種々の態様によるコレクタ10の模範的な実施形態の収集効率を縦軸にプロットしたデータ点を示す。図4のチャートの収集効率は、11kVにおいてAPS及び5FOVにおける光学カウントに基づいて測定した。チャート60に示されるように、収集効率(パーセント単位)はサンプリングレートが減少するにつれて増大する。
【0036】
図5を参照すると、粒子状物質の収集方法100が示されている。本方法は、ステップ102においてコレクタハウジングを付与し、ステップ104においてコレクタハウジング内に試料基板受入領域を付与する。本方法は、更に、ステップ106において、コレクタハウジングの外部からハウジングの内部へ流入する空気のための入口を与えるために、例えばコレクタハウジングから外部へ延びる注入ノズルを付与し、ステップ108において通路内に延びる電極を有する帯電装置を付与する。
【0037】
本方法は、更に、サンプリング動作を実行する。収集表面を有する試料基板が試料基板受入領域に置かれる。サンプリング動作は、ステップ110においてコレクタハウジング内に空気を、例えば注入ノズルを通して吸引することにより、通路を通して空気を試料基板受入領域に向け吸引し、コレクタハウジング内に吸引された空気を排出させることによって実行される。例えば、空気はサンプリングを低レート、例えば毎分1−3リットルに制御することによりコレクタハウジング内に吸引することができる。サンプリング動作は、更にステップ112において、帯電装置の電極によって電極を流れ去る空気中の粒子を帯電する電界を発生させることにより実効される。例えば、サンプリング動作は、例えば11kボルトDC以下又は超の電圧を例えば短いサンプリング時間の間帯電装置の電極に供給することにより帯電装置の電極によって電界を発生させ、次に通路内に蓄積する汚染を低減するために電極を十分に滅勢させることができる。
【0038】
サンプリング動作は更に、ステップ114において、試料基板の収集表面を帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位及び反対の帯電電位の一つに維持し、エアロゾルを通路内の小領域に閉じ込め、その空気を試料基板の試料表面の近くに流すことにより、帯電された粒子を試料基板の収集表面に引き付けて粒子状物質を基板の試料表面に収集することにより実行される。
【0039】
本明細書で使用される用語は単に特定の実施形態を説明するためであり、本発明を限定する意図はない。本明細書で使用される単数形は文脈上明確な指示がない限り複数形も含む。更に、本明細書で使用される「備える」「からなる」及び/又は「含む」は、記載の特徴部、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、一つ以上の他の特徴部、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はその組み合わせの存在を除外しないものと理解されたい。
【0040】
本発明の記述は例示及び開示のためであり、発明の網羅を意図するものでも、発明を開示の形態に限定することを意図するものでもない。本発明の範囲及び精神から離れることなく多くの変更及び変形が当業者に明らかである。
【0041】
このように本発明がその実施形態について詳細に説明されているので、添付の特許請求の範囲に特定される本発明の範囲から離れることなく多くの変更及び変形が可能であること明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小領域静電エアロゾルコレクタであって、該コレクタは、
コレクタハウジングと、
前記コレクタハウジングの外部から前記コレクタハウジングの内部へ空気を流す入口を与えるように前記コレクタハウジングから延びる入口ノズルと、
前記コレクタハウジング内の試料基板受入領域と、
前記入口ノズルから前記試料基板受入領域へ空気を流す通路と、
前記通路内へ延びる電極を有する帯電装置と、
前記帯電装置に結合された高電圧電源と、
を備え、収集表面を有する試料基板は前記試料基板受入領域に置かれ、サンプリング動作が、
ポンプ装置によって前記入口ノズルを通して前記コレクタハウジング内に空気を吸引することにより前記通路を通して空気を前記試料基板受入領域に向けて吸引するとともに、前記コレクタハウジング内に吸引された空気を排出させ、
高電圧電源によって前記帯電装置の電極を付勢して前記電極を流れ去る空気中の粒子を帯電する電界を生成し、
前記試料基板の収集表面は前記帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位及び反対の帯電電位の一つに維持し、
エアロゾルを前記通路内の小領域内に含め、その空気を帯電された粒子が前記収集表面に引き付つけられるように前記試料基板の収集表面の近くに流すことにより粒子状物質を前記試料基板の収集表面に収集することによって、
実行されることを特徴とする小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項2】
前記帯電装置の電極は少なくとも一つの帯電ワイヤを備える、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項3】
前記帯電装置の電極はタングステン電極を備える、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項4】
前記電極は、その先端が前記通路のほぼ中心になるように角度をつけて前記通路内に挿入される、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項5】
前記通路は前記入口ノズルに結合された入口管により画成され、前記入口管の端部は、前記入口管から出る空気の流れを前記試料基板の試料表面に十分に近接させて前記試料表面に粒子を収集するために、前記試料基板受入領域内に置かれた試料基板に十分に近接離間される、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項6】
前記入口管は6ミリメートル以下の内径を有する、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項7】
前記電極は、その先端が前記通路のほぼ中心になるように角度をつけて前記通路内に挿入され、前記試料基板の試料表面から0.635センチメートル〜1.27センチメートルの範囲内に位置する、請求項6記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項8】
前記入口管は非導電性のポリアセタール材料からなる、請求項5記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項9】
主圧力変化は前記入口管と前記試料基板との間の空隙で生じ、前記ポンプ装置は毎分1〜3リトルの空気を吸引する、請求項5記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項10】
前記試料収集表面は前記ポンプ装置により空気が前記入口ノズルから吸引されるとき粒子を収集する個体基板を支持する、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項11】
前記高電圧電源は1600ボルトを越える電圧を発生する、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項12】
前記高電圧電源は約11kボルト以下の電圧を発生する、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項13】
前記入口ノズルを通して吸引される空気が前記試料基板の収集表面より上方で排出されるように向けられた空気通路を更に備える、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項14】
前記通路は前記入口ノズルに結合された入口管により画成され、
前記試料基板の収集表面は、前記入口管の内径を包囲するとともに前記試料基板の収集表面を接地する接地カラーによって、前記帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位及び反対の帯電電位の一つに維持される、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項15】
前記通路は前記入口ノズルに結合された入口管により画成され、
更に、前記試料基板の試料表面が試料収集中に隔離されるように、粒子状物質を受け入れる前記入口管の端部に向けられた前記試料表面の部分を隔離するコレクタシールを備える、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項16】
前記試料基板は自動粒子収集のためにアルミニウム被覆マイラーテープを備える、請求項1記載の小領域静電エアロゾルコレクタ。
【請求項17】
粒子状物質を収集する方法であって、該方法は、
コレクタハウジングを付与するステップ、
前記コレクタハウジング内に試料基板受入領域を付与するステップ、
前記コレクタハウジングの外部からハウジングの内部へ空気を流すための入口を与えるように前記コレクタハウジングから延びる入口ノズルを付与するステップ、及び
通路内に延びる電極を有する帯電装置を付与するステップを備え、収集表面を有する試料基板が前記試料基板受入領域に置かれ、サンプリング動作が、
前記入口ノズルを通して前記コレクタハウジング内に空気を吸引することにより通路を通して空気を試料基板受入領域に向け吸引するとともに、前記コレクタハウジング内に吸引された空気を排出させるステップ、
前記帯電装置の電極によって該電極を流れ去る空気中の粒子を帯電する電界を発生させるステップ、
前記試料基板の収集表面を前記帯電装置により生成される電界に対して中性の帯電電位及び反対の帯電電位の一つに維持するステップ、及び
エアロゾルを通路内の小領域に含め、その空気を帯電された粒子が試料基板の収集表面に引き付けられるように試料基板の試料表面の近くに流すことにより粒子状物質を前記基板の試料表面に収集するステップ、
によって実行される、粒子状物質を収集する方法。
【請求項18】
サンプリング動作の実行は、前記帯電装置の電極によって見時間サンプリング時間の間電界を発生させ、その後前記通路内に蓄積する汚染を減少させるために前記電極を十分に滅勢可能にするステップを備える、請求項17記載の方法。
【請求項19】
コレクタ内への空気の吸引は毎分1〜3リットル程度の低いレートでサンプリングすることにより制御される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記帯電装置の電極による電界の発生は、11kボルト以下の高電圧を前記電極に供給するステップを備える、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518186(P2012−518186A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551175(P2011−551175)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/024389
【国際公開番号】WO2010/096425
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501284217)バッテル メモリアル インスティチュート (6)
【Fターム(参考)】