説明

少なくとも1つの基材と1つの発光コーティングを含む発光素子

本発明は、少なくとも1つの基材(1.1、1.2)と、当該基材に平坦に組み付けられた発光コーティングとを含み、当該コーティングが異なる発光効果を得るよう表面の種々の部分において互いに隣り合って別々に電気接続できる複数の発光素子を含む平面発光素子に関する。本発明によれば、少なくとも1つの独立した発光素子(4)は、表面(3)の明るさと比べて高い光度と、ある方向に向けられた発光とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの基材と、当該基材の表面に適用されて光を発する1つのコーティングとを含み、当該コーティングが異なる発光効果を得るよう表面の異なる部分において互いに隣り合って別々に電気接続できる複数の発光素子を含む平面発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
文献DE−C1−101 26 868では、これらの特徴を備えた平面発光素子を開示しており、この平面発光素子は、2つの基材とそれらを互いに結合する接着剤層とから構成された積層素子によって本質的に形成され、発光素子自体は接着剤層の面に配置されている。この平面発光素子は、部分的な(不透明な)表面だけが光を発し、一方で、光が他の部分的な表面を通過できるように形成される。表面の異なる部分において互いに隣り合って別々に接続できる複数の発光素子を提供することができ、ここで、電極及び電流を伝える結線は、不透明なコーティングによって簡単に覆うことができる。このような場合には、光が通過する電極は、任意選択ですべての発光素子のための共通(接地)電極として使用することができる。したがって、(各発光表面積及び場合によりその色に応じて)様々な発光効果を得ることができるか又はさらに光度を複数の段階に制御することができる。
【0003】
発光素子を取り付けて用いられる部分的に透明な窓基材が、自動車のルーフィング基材として自動車の独立した内部空間用照明素子に取って代わることができ、そして十分に大きな表面積又は十分に高い光度のために、ある一定量の光が依然として日中の間ガラスルーフを通って上から透過することができる。
【0004】
文献DE−A1−101 08 302では、発光表面が、例えば、自動車のサンルーフのような透明カバーのフレーム上に配置できる別の平面発光素子を記載している。積層素子の膜上に取り付けられる発光素子の組込みはこの文献には含まれていない。
【0005】
さらに文献EP−A2−1 053 910では、エレクトロルミネセンスの平面発光膜に基づいた乗り物のための内部空間用照明を開示している。このような膜は乗り物のどこにでも配置することができる。発光素子表面の種々の領域の個別の制御はこの文献では開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような性質を有する平面発光素子のための別の適用分野を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この問題は請求項1の特徴によって解決される。従属請求項の特徴は本発明の有利な実施態様を提供する。
【0008】
本発明によれば、そこで、平面発光素子は、発光の分野の他のもののむしろ拡散した発光と比較して、ある方向に向けられた光線を発する少なくとも1つの独立した発光素子によって強化される。この素子は、好ましくは平面発光素子と同じ平面、それゆえ、支持媒体として用いられる単一基材の表面又は2つの基材の複合体の内側に配置することができる。まさにその配置としての平面発光素子の構成は、この場合において2番目に重要であり、それは、例えば、全領域の照明素子、又はフレームの形態若しくはグリッドパターンに構成された照明素子であることができる。
【0009】
独立した発光素子は、原則として、常に平面照明ユニットと同時に接続することができる。しかしながら、好ましくは、別々に発光素子を接続又は分離することが可能であり、接続手段は、発光素子から離れた場合とちょうど同じくらい容易にそれぞれの独立した発光素子の近くに配置することができる(ローカル制御)。例えば、乗り物が停車したときに発光素子が自動的に接続する接続手段を配することもできる。
【0010】
ローカル制御の場合には、それ自体公知でかつ接触又は近接にセンシティブなセンサー又はタッチスクリーンのスイッチを使用することができる。例えば、指を制御表面に置くことにより、対応する独立した発光素子を起動させ、次いでその操作を繰り返すことにより停止させることができる。平面発光素子の内側又は外側に配置されたこれらのスイッチ及びそれに対応するスイッチング並びに制御素子のための電流フィードは、必要に応じて発光素子自体の電流フィードに取り付けることさえ可能である。必要な場合には、このようなスイッチング素子は、積層素子に組み込むことさえも可能であり、したがって、必ずしも滑らかな発光表面の上に突き出す必要はない。
【0011】
集中した光を有するこのような独立した発光素子の1つの特に好ましい適用分野は、例えば、乗り物のルーフィング基材又はサンルーフなどの滑らかな表面の平面素子に特には不連続な形態で組み込まれた読書灯であり、それによって、乗員が、例えば、実質的に乗り物の他の乗員の邪魔をしたり目をくらましたりすることなく、乗り物の暗い内部空間でロードマップを調べたり又は読んだりすることができる。したがって、例えば、従来の乗り物における通常の車両内部空間用照明に加えて、それが占める対応する容積とその配線を備えている独立した読書灯を排除することができる。したがって、本発明による構成では、特に簡潔でさらには安価でもある解決策が得られる。当然ながら、他の照明又は付加価値のある適用、例えば、乗り物のドア開閉システム又は他の機能素子の(自動)ターゲット照明を実現することができる。
【0012】
明らかには、このような平面発光素子は、乗り物で使用するのに適しているだけではなく、建物又は場合により商業施設若しくは住宅の部屋備品で使用するのにも等しく好都合である。例えば、クローゼット照明を挙げることもでき、その場合には、このような発光素子は、天井又はさらには中間の棚として取り付けることができ、ここでは、それは、内部空間の表面照明に加えて、特殊な構造又はデザインの、例えば、機能素子の局所的にアクセントをつけた照明を提供することができる。
【0013】
独立した発光素子の強化された照明力を表面照明の上にさらに重ねることができる。言い換えれば、独立した発光素子が接続されていない「通常の」状態では、平面発光素子全体が接続された場合にこの場所でより低い光量が発せられるであろう。
【0014】
この個別の発光は、例えば、序文で引用した従来の技術水準においても同様に、平面発光がグリッド又は類似したものに分解された場合に可能である。その場合、独立した発光素子は、この同じグリッドに組み込むことができるか、又は言い換えれば、その平面発光素子は、これまで発光表面として使用されていないグリッド表面の部分に挿入することができる。
【0015】
より高密度の光又はより高い光量はまた、この又はそれぞれの独立した発光素子が、その表面全体がグリッドとしてさらにパターニングされた発光表面の内側にある状態で配置された場合に自然と得られる。このような場合には、平面発光素子と同じエレクトロルミネセンス材料を使用することができる。
【0016】
しかしながら、それどころか、この又はそれぞれの独立した発光素子については特に強力なエレクトロルミネセンス材料を使用することが常に可能である。
【0017】
独立した発光素子によって発せられた光を配向及び集中させるために、好ましい実施態様によれば、光デバイスが発光素子によって覆われた表面の領域に設けられる。これは簡単なレンズであることができ、このレンズは、発光素子の上に直接的に又は発光の方向において発光素子を覆う基材の上若しくはその中に設けられる。このようなレンズは、(研削又は圧縮により)ガラス又はプラスチックのカバー部材又は基材中に形成することもできるし、又は独立した部品として素子の空孔に配置することもできる。後者の変形態様は、基材の外面が依然として滑らかであることができるように、レンズ面が積層素子の内部に置かれた場合に有用な場合がある。
【0018】
しかしながら、好ましくは、それ自体が非常に薄く、しかしそれにもかかわらず光の優れた集中及び配向を提供する平面レンズを、特に簡単な方法で積層素子に挿入することができる。このような平面レンズはまた、ガラスから作られようとプラスチックから作られようと、当然ながらカバー部材又は基材の外面に配置することができる。
【0019】
要求される光の集中及び配向は、独立した発光素子の表面の上記領域にさらに配置され及びその光放射に対して透過性であるホログラフィック素子(立体ホログラム)によって得ることもできる。このようなホログラフィック素子は、無視できる厚さで光の非常に正確な配向及び集中を提供できるマイクロプリズムを備えた膜の形態に製作することができる。マイクロプリズムは、基材の平面に対して垂直な通常の放射方向に関して特に大きな偏差角を提供することさえ可能である(この目的については、例えば、DE−C1−195 12 864又はDE−C2−197 03 398を参照されたい)。
【0020】
同様の偏差及び配向の挙動は平面鏡によっても得ることができ、この平面鏡は、発光素子によって発せられた光に対して透過性でもあるが、同時にそのデザインに応じて入射角に対して幾分透過性にもなる。
【0021】
配向されたビームを随意に調整する可能性は、発光素子の表面より上の所与の局所的な高さを犠牲にして得ることができるが、しかしながら、これによってある特定の効果を提供することができる。この目的のため、鏡、レンズなどを備えた光デバイスを配置することが必要であり、このような光デバイスは、独立した発光素子が光を発する地点の発光素子の外面上を手で又は小型の遠隔制御装置を用いて移動させることができる。
【0022】
本発明の目的の他の詳細及び利点は、例示的な実施態様の図及び以下の詳細な説明において明らかとなろう。
【0023】
これらの図においては、それらは簡略化された描写であり、何ら特定の縮尺で描かれていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、不透明なフレーム2と発光領域3を備えた長方形の平面発光素子1を示している。発光領域3は、光を通す表面区画と不透明な表面区画から構成されるグリッドパターンにおいて公知の方法で構成されている。しかしながら、このグリッドパターニングは、操作のために必ずしも必要ではない。それは、光に対する部分的な透明性が必要でないか又は要求されない場合には全面的な構成に置き換えることもできる。照明機能自体は、それ自体公知でもある方法においてエレクトロルミネセンスにより得られる。このような素子の操作方法のより正確な記載のため、序文で触れた技術水準に単に言及することがある。
【0025】
2つの独立した発光素子が発光素子1の長手方向の面上に設けられている。これらの素子は、ここで示されるように不透明なフレーム2を部分的又は完全に覆うことができるか、あるいはまた、フレーム2を覆うことなく又はそれと接触することなく完全に表面の発光領域3の中に位置することができる。独立した発光素子4は、光量又は光束密度の高い領域である。
【0026】
当然ながら、発光素子4は非対称に配置することもできる。
【0027】
図2でより良く見ることができるように、平面発光素子1は、第1の基材1.1と、第2の透明基材1.2と、互いに対して平らな2つの基材を組み立てる接着剤層1.3とを備えた積層素子の形態で製作されている。独立した支持膜上に配置することができ、そして発光領域3を形成する平面エレクトロルミネセンス素子3.1が、接着剤層1.3と基材1.2の間に配置されている。この発光素子の正確な(多層)構造は、ここでは公知であると仮定される。この発光素子の上部表面電極がここで水平方向の破線により示され、この発光素子がここでより詳細には示されない仕方で水平方向に組み立てられ、さらに(例えば、別の薄い接着剤層により)透明基材1.2を備えていることを唯一指摘する。
【0028】
独立した発光素子4は、不透明なフレーム2の領域において断面図の右側の縁に配置されている。不透明なフレーム2は、図1で確認することもできるように、その表面が発光素子4と重なった領域(基材1.2の平面上の垂直方向の突起において見られる)において小さな削除部分を有する。ここで、発光素子4は、発光領域3とは対照的にグリッドパターニングされていないが、たとえ、発光領域3と同じエレクトロルミネセンスコーティングが用いられたとしても、より高い光密度を作り出すように全面的な領域を有する。加えて、光デバイス5が、積層素子の内部に挿入された平面レンズの形態で設けられ、独立した発光素子4によって平行な方向に発せられた光を、光円錐6によって図式的に示されるように集めそして配向している。ここで、光は基材平面に対して実際的に垂直に発せられている。
【0029】
図3の状況は異なり、光デバイス5’が基材平面の法線に対して大きく偏向した光円錐6’を作り出している。この光デバイス5’は、ここでは基材1.2の外面に接合された膜上のホログラムである。このホログラムはまた、平面レンズ5のように積層素子に挿入することもできる。しかしながら、必要に応じて、基材1.2と外気との間の光の移行における屈折を補正又は考慮する必要がある。
【0030】
図4に示される構造はこの目的に適した実施態様を表し、図2と図3の実施態様の組み合わせとして見ることができる。この場合には、光デバイス5’は内部に置かれている。この光デバイス5’は、同様に発光素子4によって発せられた光の配向及び/又は集中のために用いられる。基材1.2の外面の層インターフェース(例えば、ガラス−空気インターフェース)における全反射を回避するために(この場合、発せられた光が基材1.2の内部に伝達される)、この外面は適切な反射防止層7によってコーティングされる。この反射防止層7は、局所的にそれゆえ光線の所望の出口点においてのみ設けることができるか又は表面全体にわたって設けることができる。
【0031】
このような組み合わせに関しては、実際の光源(発光素子4)の広い領域又はさらには完全な範囲に、光源の上に配置される不透明コーティング、それゆえ必要に応じてまぶしさに対する保護を与えることができる。光学素子5’を用いると、光はコーティングに沿って透明基材1.2の内部で偏向され、その後、基材1.2上の異なる場所から出るだけである。好適な光デバイスを用いると、光をまずガラス又はプラスチック基材の内部で所与の距離にわたってそれ自体公知の仕方において誘導し、次いで反射防止層又は他の光デバイスによって外部の方へ所定の場所に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】それ自体公知の方法で表面全体にわたって照明用グリッドパターンを備えたルーフィング素子又は基材が2つの独立した発光素子を含む1つの実施態様の図である。
【図2】線分II−IIの沿った図1の概略断面図を示す。
【図3】図2と同様の断面図の詳細の変形態様を示す。
【図4】図2と同様の断面図の詳細の別の変形態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基材と、当該基材の表面に適用されて光を発する1つのコーティングとを含み、当該コーティングが異なる発光効果を得るよう表面の異なる部分において互いに隣り合って別々に電気接続できる複数の発光素子を含む平面発光素子であって、少なくとも1つの独立した発光素子(4)が、表面(3)の明るさと比べて高い光量と、ある方向に向けられた発光とを備えていることを特徴とする、平面発光素子。
【請求項2】
前記少なくとも1つの独立した発光素子(4)の領域及びその発光の方向において、当該独立した発光素子(4)によって発せられた光を集中及び/又は配向するようデザインされた光デバイス(5、5’)が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の平面発光素子。
【請求項3】
前記平面発光素子が、そのうちの少なくとも一方(1.2)が前記発光素子(4)によって発せられた光に対して透過性である2つの基材(1.1、1.2)の間において積層素子の内部に配置されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の平面発光素子。
【請求項4】
前記光デバイス(5、5’)が、前記独立した発光素子(4)からの光を通す基材(1.2)の上又はその中に配置されたことを特徴とする、請求項2又は3に記載の平面発光素子。
【請求項5】
前記光デバイスが、レンズ(5)、特には平面レンズであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項6】
前記光デバイスが、ホログラフィック素子(5’)、特には発せられた光に対して透過性であるがその光を偏向するマイクロプリズムを備えた膜の形態のホログラフィック素子(5’)であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項7】
前記光デバイスが、発せられた光に対して透過性であるがその光を偏向する平面鏡であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項8】
前記光デバイス(5)が、発光素子上に直接的に配置されたことを特徴とする、請求項2又は3に記載の平面発光素子。
【請求項9】
前記独立した発光素子(4)によって発せられた光の少なくとも一部が、当該独立した発光素子(4)によって発せられた光を通し、光導波路として作用する基材(1.2)の内部に誘導され、当該発光素子(4)から十分離れた他の場所に発せられることを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項10】
前記独立した発光素子からの光の放射方向が、前記平面発光素子の平面の法線から偏向されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項11】
反射防止層(7)が、少なくとも前記独立した発光素子(4)からの光線の出口点に設けられたことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項12】
少なくとも1つの発光素子(3、4)を接続及び/又は分離するための少なくとも1つのスイッチング素子を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項13】
前記少なくとも1つのスイッチング素子が、前記平面発光素子の一方の表面と関連した接触又は近接検出器であることを特徴とする、請求項12に記載の平面発光素子。
【請求項14】
前記独立した発光素子の表面領域において不透明なコーティング(2)が設けられ、当該コーティングに沿って出て行く光が光デバイス(5’)により偏向されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の平面発光素子。
【請求項15】
乗り物の内装品のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の平面発光素子の使用。
【請求項16】
前記平面発光素子が、乗り物のルーフィング基材又は素子を形成する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
建物に装備するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の平面発光素子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−502001(P2007−502001A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523039(P2006−523039)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050370
【国際公開番号】WO2005/018283
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】