説明

少なくとも1種類の水溶性N−ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーの水溶性非混濁性コポリマーを製造する方法

【課題】有機溶媒中で開始剤の存在下で水溶性N-ビニルラクタムと疎水性コモノマーをラジカル重合させてビニルラクタムコポリマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】以下のプロセス手段を適切に組み合わせる。(i)還流下において重合させる。(ii)使用した疎水性モノマーの総量の少なくとも70mol%が完全に反応したら、少なくとも5mol%のN-ビニルラクタムを重合混合物中に添加する。(iii)還流中に形成された凝縮液を下方から重合混合物に戻す。(iv)有機溶媒中の溶液の形態にある開始剤を下方から重合混合物中に導入する。(v)N-ビニルラクタムを還流液に添加する。(vi)使用したN-ビニルラクタムの70〜99重量%が変換された後、溶媒の一部を留去し、重合を継続させる。(vii)少なくとも1種類のモノマーを下方から重合混合物中に導入する。(viii)成分の蒸発が回避されるように、重合を加圧下で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーを有機溶媒中でフリーラジカル重合させることによるそれらモノマーの水溶性コポリマーを製造する方法並びにそのような方法で得ることができるコポリマー及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカル重合によりN-ビニルラクタムと疎水性コモノマーからコポリマーを製造することは知られている。そのようなコポリマーの製造は、有機溶媒中で、例えば、アルコール中で実施される。通常、その重合は、溶媒を還流させながら行う。N-ビニルラクタムに比較して容易に揮発する該疎水性モノマーは、上記のような方法により、気相及び凝縮液に変化する。
【0003】
多くの用途に関して、水中で透明な溶液を形成するコポリマーが望まれている。即ち、5重量%の濃度の溶液のFNU値は、10未満であるべきであり、好ましくは、5未満であるべきである。しかしながら、モノマーのさまざまな反応性とさまざまな極性は、疎水性モノマーの濃度の増大を引き起こし得るという問題がある。疎水性モノマーの濃度が増大すると、結果として、当該疎水性モノマーから水不溶性のホモポリマーが生成され得る。たとえ少量であっても、20〜1000ppmの範囲内にあるコモノマーに依存して、そのようなホモポリマーは、当該コポリマーの水溶液を濁らせてしまう。疎水性モノマーの濃度は、特に、気相中及び凝縮液中で、また、反応器の壁や重合媒体の表面において上昇し得る。
【0004】
US 5,395,904には、供給法(フィード法(feed method))での制御重合によるビニルピロリドンと酢酸ビニルの重合について記載されている。最大で50重量%までの水を含有させ得るアルコール溶媒が使用されている。
【0005】
US 5,319,041には、重合温度を制御する供給法での重合によるビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーの調製について記載されている。
【0006】
US 5,502,136には、供給法によるビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーの製造方法について記載されており、ここで、当該供給材料は、特定の数式で定義されたスキームにより制御されている。
【0007】
US 4,520,179及びUS 4,554,311には、水中で、又は、水/アルコール混合物中で、開始剤としてペルオキシピバル酸t-ブチルを使用する、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの重合について記載されている。ここで使用されている開始剤により狭い分子量分布を有するコポリマーの製造が可能となるが、10未満のFNU値を有する水溶性生成物は得られない。
【0008】
EP-A 161には、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーの製造方法について記載されており、該方法では、重合の後で、特定の開始剤を使用する後重合を行っている。しかしながら、そのポリマーは、酢酸ビニルの残留量が多く、非混濁性の点で満足できない。
【0009】
EP-A 795 567には、水溶液状態で重合させることによる、ビニルラクタムと疎水性モノマーのコポリマーの製造について記載されている。
【0010】
EP-A 418 721には、ビニルピロリドンとビニルエステルの、水に溶解して透明な溶液となるコポリマーの製造について開示されており、ここで、該コポリマーの製造においては、揮発性成分を除去するために、重合中の特定の時点で溶媒の交換を行う。この方法は、比較的複雑である。
【0011】
DE-OS 22 18 935には、N-ビニルピロリドンと水溶性及び水不溶性のさまざまなコモノマーとの共重合について記載されている。この共重合では、水不溶性の開始剤が用いられているが、該開始剤は、該コポリマーの水溶液中の微粉砕懸濁液の形態で使用されている。しかしながら、水不溶性コモノマーの場合、同様に、FNU値が10未満の望ましい水溶性コポリマーは得られない。
【特許文献1】US 5,395,904
【特許文献2】US 5,319,041
【特許文献3】US 5,502,136
【特許文献4】US 4,520,179
【特許文献5】US 4,554,311
【特許文献6】EP-A 161
【特許文献7】EP-A 795 567
【特許文献8】EP-A 418 721
【特許文献9】DE-OS 22 18 935
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、少なくとも1種類の親水性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーの水に溶解して透明な溶液となるコポリマーを、有機溶媒中でのフリーラジカル共重合により製造する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、本発明に従って、有機溶媒中、開始剤の存在下で、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーをフリーラジカル重合させることによるビニルラクタムコポリマーの製造方法より達成されるが、ここで、当該製造方法においては、以下のプロセス手段(process measure):
(i) 還流下において重合させること;
(ii) 使用した疎水性モノマーの総量の少なくとも70mol%が完全に反応したら、少なくとも5mol%のN-ビニルラクタムを重合混合物中に添加すること;
(iii) 還流中に形成された凝縮液を下方から重合混合物に戻すこと;
(iv) 有機溶媒中の溶液の形態にある開始剤を下方から重合混合物中に導入すること;
(v) N-ビニルラクタムを還流液に添加すること;
(vi) 使用したN-ビニルラクタムの70〜99重量%が変換された後、溶媒の一部を留去し、重合を継続させること;
(vii) 少なくとも1種類のモノマーを下方から重合混合物中に導入すること;
(viii) 成分の蒸発が回避されるように、重合を加圧下で行うこと;
の組合せを、手段(i)が少なくとも2つの別の手段(ii)〜(vii)と組み合わされるように実施するか又は手段(viii)が少なくとも1つの別の手段と組み合わされるように実施する(但し、手段(viii)と手段(i)、手段(iii)又は手段(v)のうちの少なくとも1つとの組合せは、順次的にのみ実施する)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
適切な水溶性ビニルラクタムは、N-ビニルピロリドン、3-メチル-N-ビニルピロリドン、4-メチル-N-ビニルピロリドン、5-メチル-N-ビニルピロリドン、N-ビニルピリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムであり、好ましくは、N-ビニルピロリドンである。該ビニルラクタムは、30〜90重量%の量で、好ましくは、50〜90重量%の量で使用する。
【0015】
本発明の方法は、疎水性モノマーの含有量がモノマー混合物に基づいて10〜70重量%の範囲、好ましくは、10〜50重量%の範囲にあるモノマー混合物から水溶性ポリマーを製造するのに適している。適切な疎水性モノマーは、1〜100g/Lの範囲の水溶解度を有する疎水性モノマーである。適切な疎水性モノマーは、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルである。該疎水性モノマーは、特に、大気圧下での沸点が60℃〜130℃の重合温度の範囲内にあるものであり、それにより、該疎水性モノマーは、重合条件下で蒸発し得る。重合温度よりも僅かに高い(+15℃)沸点であっても、該疎水性モノマーは、重合条件下で沸騰する溶媒と充分な混和性を有していれば、その溶媒と一緒に気相に変化することが可能である。特に、該疎水性モノマーは、その溶媒との共沸混合物として気相に変化することが可能であるか、又は、その溶媒との物理的混合物として気相に変化することが可能である。好ましい疎水性モノマーは、酢酸ビニルである。
【0016】
例として挙げることができるフリーラジカル開始剤は、以下のものである:ジアルキルペルオキシド類又はジアリールペルオキシド類、例えば、ジ-t-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、t-ブチルクメンペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキセン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン又はジ-t-ブチルペルオキシド、脂肪族及び芳香族のペルオキシエステル類、例えば、ペルオキシネオデカン酸クミル、2-ペルオキシネオデカン酸2,4,4-トリメチルペンチル、ペルオキシネオデカン酸t-アミル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチル、ペルオキシピバル酸t-アミル、ペルオキシピバル酸t-ブチル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-アミル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-ブチル、ペルオキシジエチル酢酸t-ブチル、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ペルオキシイソブタン酸t-ブチル、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸t-ブチル、ペルオキシ酢酸t-ブチル、ペルオキシ安息香酸t-アミル又はペルオキシ安息香酸t-ブチル、ジアルカノイルペルオキシド又はジベンゾイルペルオキシド、例えば、ジイソブタノイルペルオキシド、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン又はジベンゾイルペルオキシド、並びに、ペルオキシ炭酸エステル、例えば、ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、ペルオキシ二炭酸ビス(2-エチルヘキシル)、ペルオキシ二炭酸ジ-t-ブチル、ペルオキシ二炭酸ジアセチル、ペルオキシ二炭酸ジミリスチル、ペルオキシイソプロピル炭酸t-ブチル又はペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸t-ブチル。油に容易に溶解するアゾ開始剤で使用されるのは、例えば、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)又は4,4'-アゾ
ビス(4-シアノペンタン酸)である。
【0017】
使用されるフリーラジカル開始剤は、好ましくは、以下のものを含む群から選択される化合物である:ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 21;Akzo Nobel製のTrigonox(登録商標)グレード)、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-アミル(Trigonox(登録商標) 121)、ペルオキシ安息香酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) C)、ペルオキシ安息香酸t-アミル、ペルオキシ酢酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) F)、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 42 S)、ペルオキシイソブタン酸t-ブチル、ペルオキシジエチル酢酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 27)、ペルオキシピバル酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 25)、ペルオキシイソプロピル炭酸t-ブチル、(Trigonox(登録商標) BPIC)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(Trigonox(登録商標) 101)、ジ-t-ブチルペルオキシド(Trigonox(登録商標) B)、クミルヒドロペルオキシド(Trigonox(登録商標) K)、及び、ペルオキシ-2-エチルヘキシル炭酸t-ブチル(Trigonox(登録商標) 117)。もちろん、上記で挙げたフリーラジカル開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0018】
使用する開始剤の量は、当該モノマーに基づいて、0.02〜15mol%の範囲、好ましくは、0.05〜3mol%の範囲である。本発明の方法では、開始剤は、その溶解度に応じて、C1-C4-アルコール中の溶液として使用する。そのような溶液においては、開始剤の濃度は、該溶媒に基づいて、1〜90重量%の範囲、好ましくは、10〜90重量%の範囲である。
【0019】
適切な重合媒体は、極性有機溶媒である。該溶媒は、どのような混合比でもビニルラクタムと混和可能であるような充分な親水性を有していなければならない。さらに、該溶媒は、還流が形成可能となるように、重合条件下で好ましくは沸騰すべきである。適切なものは、例えば、脂肪族又は芳香族のハロゲン化炭化水素類、例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン及び液状のC1-又はC2-クロロフルオロカーボン、脂肪族C2-C5-ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル又はバレロニトリル、直鎖又は環状の脂肪族C3-C7-ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-又は3-ヘキサノン、2-、3-又は4-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、直鎖又は環状の脂肪族エーテル類、例えば、ジイソプロピルエーテル、1,3-又は1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン又はエチレングリコールジメチルエーテル、炭酸エステル類、例えば、炭酸ジエチル、並びに、ラクトン類、例えば、ブチロラクトン、バレロラクトン又はカプロラクトンである。適切な一価、二価又は多価アルコールは、特に、C1-C8-アルコール、C2-C8-アルカンジオール及びC3-C10-トリオール又はポリオールである。それらの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及び、エチレングリコール、プロピレングリコール又は1,3-プロパンジオールである。
【0020】
使用されるモノアルコキシアルコールは、特に、C1-C6-アルコキシ基で置換されている上記C1-C8-アルコール及びC2-C8-アルカンジオール及びC3-C10-トリオールである。その例は、メトキシメタノール、2-メトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、3-メトキシプロパノール、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、4-メトキシブタノール、2-エトキシエタノール、2-エトキシプロパノール、3-エトキシプロパノール、2-エトキシブタノール、3-エトキシブタノール、4-エトキシブタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-イソプロポキシプロパノール、3-イソプロポキシプロパノール、2-イソプロポキシブタノール、3-イソプロポキシブタノール、4-イソプロポキシブタノール、2-(n-プロポキシ)エタノール、2-(n-プロポキシ)プロパノール、3-(n-プロポキシ)プロパノール、2-(n-プロポキシ)ブタノール、3-(n-プロポキシ)ブタノール、4-(n-プロポキシ)ブタノール、2-(n-ブトキシ)エタノール、2-(n-ブトキシ)プロパノール、3-(n-ブトキシ)プロパノール、2-(n-ブトキシ)ブタノール、3-(n-ブトキシ)ブタノール、4-(n-ブトキシ)ブタノール、2-(s-ブトキシ)エタノール、2-(s-ブトキシ)プロパノール、3-(s-ブトキシ)プロパノール、2-(s-ブトキシ)ブタノール、3-(s-ブトキシ)ブタノール、4-(s-ブトキシ)ブタノール、2-(t-ブトキシ)エタノール、2-(t-ブトキシ)プロパノール、3-(t-ブトキシ)プロパノール、2-(t-ブトキシ)ブタノール、3-(t-ブトキシ)ブタノール、4-(t-ブトキシ)ブタノールである。
【0021】
特に適しているのは、C1-C4-アルコール、好ましくは、エタノール又はイソプロパノールである。イソプロパノールを溶媒として使用するのが特に好ましい。
【0022】
使用される溶媒には、最大で20%までの、好ましくは、最大で10%までの他の成分を含有させることができるが、それは、常に均一相の形態にある。
【0023】
該重合は、通常、5〜9の範囲内にある中性pHで実施する。必要な場合、そのpHは、重合反応の前に、塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン又は水酸化ナトリウム溶液)又は酸(例えば、塩酸、乳酸、シュウ酸、酢酸又はギ酸)を加えることにより調節し、及び/又は、重合反応中に、連続的若しくはバッチ式に添加して維持する。
【0024】
比較的低分子量であることが望ましい場合、それらは、重合混合物に調節剤を添加することにより確立することができる。適切な調節剤は、例えば、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒド、ギ酸、ギ酸アンモニウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウム及びリン酸ヒドロキシルアンモニウムである。さらに、有機的に結合した形態の硫黄を含んでいる調節剤を使用することもできる。そのような調節剤は、例えば、ジ-n-ブチルスルフィド、ジ-n-オクチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジ-n-ブチルジスルフィド、ジ-n-ヘキシルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド及びジ-t-ブチルトリスルフィドである。好ましくは、該調節剤は、SH基の形態の硫黄を含んでいる。そのような調節剤の例は、n-ブチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン又はn-ドデシルメルカプタンである。水溶性の硫黄含有重合調節剤、例えば、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、並びに、例えば、チオグリコール酸エチル、システイン、2-メルカプトエタノール、1,3-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、1,4-メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセロール、ジエタノールスルフィド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、チオ尿素及びジメチルスルホキシドなどの化合物が特に好ましい。アリル化合物、例えば、アリルアルコール若しくは臭化アリル、ベンジル化合物、例えば、塩化ベンジル、又は、ハロゲン化アルキル、例えば、クロロホルム若しくはテトラクロルメタンなども調節剤として適している。好ましい実施形態では、調節剤は、適切な場合にはC1-C4-アルコール中の溶液として、反応混合物中に計量供給される。
【0025】
該モノマー(適切な場合には、C1-C4-アルコール中の溶液として)は、反応混合物中に計量供給される(供給法)。本発明の一実施形態では、水溶性N-ビニルラクタムIの(N-ビニルラクタムIの総量に基づいて)20mol%まで、好ましくは、15mol%まで、特に好ましくは、10mol%までと、少量の開始剤溶液と、溶媒(好ましくは、エタノール又はイソプロパノール)を最初に導入する。次いで、その混合物を反応温度とし、残りの量のモノマーを、連続的に又は数回に分けて、残りの開始剤溶液と同時に、また、適切な場合には調節剤と同時に、計量供給する。一般に、この計量添加は、(使用するバッチサイズ及び濃度に応じて)2〜14時間にわたり、好ましくは、3〜12時間にわたり、理想的には、4〜11時間にわたり行われる。該反応混合物中のモノマーの濃度は、反応混合物に基づいて、10〜80重量%の範囲、好ましくは、20〜75重量%の範囲、特に、25〜70重量%の範囲である。この場合、反応混合物を望ましい反応温度とした後、開始剤溶液を、連続的に又は数回に分けて、特に、2.5〜16時間にわたり、好ましくは、3.5〜14時間にわたり、特に、5〜12.5時間にわたり流す。
【0026】
本発明の方法は、以下で(i)〜(viii)のもとに記載されている手段のうちの2つ以上を組み合わせることにより、より疎水性のコモノマーの濃度が局所的に高くなるのが回避されるように実施する:
(i) 還流下において重合させること;
(ii) 使用した疎水性モノマーの総量の少なくとも70mol%が完全に反応したら、少なくとも5mol%のN-ビニルラクタムを重合混合物中に添加すること;
(iii) 還流中で形成された凝縮液を下方から重合混合物に戻すこと;
(iv) 有機溶媒中の溶液の形態にある開始剤を下方から重合混合物中に導入すること;
(v) N-ビニルラクタムを還流液に添加すること;
(vi) 使用したN-ビニルラクタムの70〜99重量%が変換された後、溶媒の一部を留去し、重合を継続させること;
(vii) 少なくとも1種類のモノマーを下方から重合混合物中に導入すること;
(viii) 成分の蒸発が回避されるように、重合を加圧下で行うこと。
【0027】
上記組合せは、手段(i)が少なくとも2つの別の手段(ii)〜(vii)と組み合わされるようなものであるか、又は、手段(viii)が少なくとも1つの別の手段と組み合わされるようなものであるが、但し、手段(viii)と手段(i)、手段(iii)又は手段(v)のうちの少なくとも1つとの組合せは、順次的にのみ実施する。
【0028】
上記した個々の手段は、ここでは、当該重合方法の間に個々の手段が時間的に重複可能であるように組み合わせることができる。
【0029】
以下では、当該重合反応の構成に関する条件について最初にその意味を定義した後、当該個々の手段及びそれらを実施するための時間について説明し、次に、当該個々の手段の組合せについて記述する。
【0030】
「還流条件下における重合」は、ここでは、以下の意味を有する:
重合反応が還流条件下で実施される。これに関連して、「還流条件」は、液体重合混合物が沸騰して、容易に揮発する成分、例えば、溶媒及び/若しくは疎水性モノマー又は疎水性モノマーと別の成分(例えば、溶媒など)の共沸混合物などが蒸発し、冷却することによって再度凝縮することを意味する。還流条件は、温度及び圧力を制御することによって維持される。
【0031】
「適切な重合温度及び圧力」は、ここでは、以下のような意味を有する:
反応温度は、通常、60〜120℃の範囲内にあるが、最高で150℃までとすることも可能である。当該反応は、大気圧下で、自生圧力下で、又は、保護ガス加圧下で実施することができる。加圧の場合、該圧力は、それまでどおり常に沸騰しているように調節する。当業者は、相対蒸気圧を用いて、適切な圧力範囲を確認することができる。通常、該圧力は、ここでは、2MPaを超えない。重合は、0.05〜2MPa、好ましくは、0.08〜1.2MPa、特に、0.1〜0.8MPaの圧力で実施することができる。他方では、手段(viii)におけるように沸騰を回避する場合は、原料物質の蒸発が起こらないように温度範囲及び圧力範囲を選択する。圧力を高くすると沸騰は抑制されるが、その高い圧力は、同一の容積で温度を調節することにより達成することが可能であるか、又は、不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン、好ましくは、窒素)を注入して圧力を上昇させることによって達成可能である。
【0032】
重合について選択される圧力は、従って、圧力以外の点では同一の条件下における手段(viii)において必要とされる圧力よりも低い。
【0033】
「重合に適した容器」は、ここでは、以下のような意味を有する:
重合は、撹拌装置が備え付けられているタンク内で実施する。適切な撹拌装置は、アンカー撹拌機(anchor stirrer)、プロペラ撹拌機、クロスブレード撹拌機、MIK撹拌機、又は、溶液重合に適した当業者には既知の他の撹拌機である。さらに、モノマー、開始剤溶液及び適切な場合には調節剤(溶液)を計量して添加するための1以上の供給装置も存在している。
【0034】
さらに、液体重合混合物が存在せず気相が存在している反応器上部にあるタンクには、冷却器が備え付けてある。重合条件下において、溶媒及び/若しくは疎水性モノマー又は疎水性モノマーと別の成分(例えば、溶媒など)の共沸混合物は、沸点が比較的低いという理由により、部分的に気相に変化するが、それに対して、沸点が高いN-ビニルラクタムはその大部分が液体重合相のままである。選択した溶媒に応じて、その気相は疎水性モノマーのみからなることも可能である。冷却器では、溶媒及び/又は疎水性モノマーの気相が凝縮し、その際、いわゆる還流液を形成する。
【0035】
周囲圧力よりも高い圧力を用いる場合、また、適切な場合には、安全のために、耐圧性の容器を使用すべきであり、また、適切な場合には、ガススペース(gas space)内に位置しているか又はタンクのガススペースに連結されていて大気に対して閉じている同様に耐圧性の還流冷却器を使用すべきである。そのような装置は当業者には既知である。
【0036】
液体重合混合物の充填量のレベルは、通常、全ての供給材料を添加した後、タンク容積の50〜95容積%、好ましくは、70〜90容積%である。
【0037】
手段(i)
本発明の方法は、還流下で行われる。溶媒の他に、該還流液は、蒸発したモノマーも含んでいる。ここで、より疎水性であるモノマーのフラクションは、N-ビニルラクタムのフラクションよりも大きい。
【0038】
本発明の方法は、重合反応中の供給材料(feed)1の計量供給時間の遅くとも15%経過後に、より疎水性であるモノマー(適切な場合には、溶媒などの別の反応成分と混合した状態で、例えば、共沸混合物として)の一部が蒸発し、冷却器位置にある反応スペース内で再度凝縮するように実施する。この凝縮物を反応混合物に直接戻し(還流)、その結果、この還流液は、上部から反応混合物の液面を通過し、再度混合される。
【0039】
当該重合は、適切な容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0040】
手段(ii)
本発明の方法は、疎水性モノマーの少なくとも70mol%が完全に反応したら、少なくとも5mol%のN-ビニルラクタムが重合混合物中に添加されるように実施する。
【0041】
重合は、適切な容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0042】
本発明による手段(ii)の場合、重合に使用される疎水性モノマーの総量の少なくとも70%が重合した後、重合に使用されるビニルラクタムの総量の5〜25mol%(量(I))を、さらに、直線的な物質流若しくは時間的に変更可能な物質流を用いて連続的に添加するか又は数回に分けてバッチ式で添加するが、ここで、この量(I)は、ビニルラクタムの量(I)の添加が疎水性モノマーの総添加時間の110〜150%後には完了するように添加する。当該添加を時間的に変更可能な物質流を用いて連続的に行う場合、この量(I)の少なくとも60%は、量(I)の添加時間の50%以内に反応混合物に添加する。当該添加を数回に分けてバッチ式で行う場合、同様にこの量(I)の少なくとも60%が量(I)の添加時間の50%以内に反応混合物に添加され得るように、該量を絶対添加時間に応じて等しい量の3〜7の部分に分割する。その際、最初の部分は、量(I)の添加時間のゼロ時点において該反応混合物に添加する。当該添加を直線的な物質流を用いて連続的に行う場合、同様にゼロ時点(量(I)の添加時間)において量(I)の総量のうちの5〜10%を反応混合物にバッチ式で添加した後、連続的な計量添加を開始することができる。
【0043】
手段(iii)
本発明による手段(iii)は、還流中に形成された凝縮液を下方から重合混合物に戻すように実施する。重合は、適切な容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0044】
本発明による手段(iii)では、還流液を上方から重合混合物の上に戻すこと(これは、本発明以外では慣習的である)は許されず、凝集液は、適切な装置によって下方から重合混合物に戻される。これに関連して、「下方から」は、疎水性モノマーを含んでいる凝縮液を液体重合混合物の表面の下から導入することを意味する。ここで、その凝縮液は、還流液全体の少なくとも90重量%がいずれの時点においても下方から戻されるようなやり方で戻す。好ましくは、液体重合混合物の最大混合及び剪断領域(zone of greatest mixing and shearing)に戻す。この領域が何処に位置するかは、第1に使用する撹拌機のタイプに依存し、第2に、反応器の幾何形状に依存する。選択された撹拌機のタイプに応じた最大混合領域は、当業者には知られている。当業者は、自体公知の容易な方法で、例えば、コンピューターシミュレーション又は色分布実験(color distribution experiment)などによって、この領域を確認することも可能である。最大混合領域又は非常に大きな混合領域が複数存在している場合、それらの領域のうちの1つの液面の下のできる限り離れたところに還流液を導入するのも適切であり得る。これにより、開始剤溶液(これは、通常、上方から計量添加される)を導入する場所と還流液を導入する場所の間の距離が最大になる。
【0045】
本発明の方法を実施するために、冷却器は、還流ブロックとして働くバリヤーが下端に備え付けられている上昇冷却器(ascending condenser)として配置することができる。ここで、気体成分はこのバリヤーを超えて上昇して冷却器の中に入ることができるが、それに対して、逆行して流れる凝縮液はパイプラインの中を進み、このパイプラインを経由して下方から反応器の中に戻る。さらにまた、冷却器は、屈曲した管として設計でき、この管の反応器の気相に通じている末端は上向きに上行するように最初に配置されていて、パイプ内を上昇する気体の凝縮を防止するために加熱可能である。下方を向いている部分において、パイプは気体成分を凝縮して戻すために冷却される。
【0046】
さらにまた、反応器に通常の還流冷却器を備え付けることにより、凝縮液を分離することができる。その還流冷却器から還流液が滴となって落ちて反応器のガススペース内に設置された収集装置の中に入り、その収集装置からパイプラインを介して送出される。その収集装置の形状は重要ではなく、任意のボール様又は漏斗状の形状が適している。ここで、該パイプラインは、凝縮液が外側から再度導入されるように通じさせることができる。該パイプラインは、さらにまた、出口開口部が最大混合領域内に配置されるように、液層を通って内部に通じさせることもできる。
【0047】
どのような冷却器であっても、その構造に関係なく、容易に蒸発する揮発性成分を凝縮させるのに原則的に適している。特定の還流比を維持することは重要である。かくして、通常の還流液として液体重合混合物の表面上に通るのは還流液の最大でも10重量%であるべきである。該還流は、さらにまた、気相に接触している重合タンクの部分を効果的に断熱するか又は加熱することにより、最適化することもできる。
【0048】
凝縮液は、液体を導入するのに適している通常のバルブを介して液体反応混合物の中に導入することができる。定量ポンプを用いて、連続計量供給スキーム又は供給速度及び供給時間が変化する予め定められた計量供給スキームで還流液の戻りを計量供給することができる。凝縮液は、バッチとして、又は、貯蔵容器を介したセミバッチとして戻すことも可能である。これに関連して、戻される前に、当該凝縮液をターゲットとするやり方でビニルラクタムを添加することも可能である(手段(v)との組合せ)。
【0049】
還流液を戻すためのパイプラインは、もちろん、動いている内部構造物(例えば、撹拌機など)又は固定されている内部構造物(例えば、流れ破砕機、内部熱交換器など)を通して最大混合領域まで通じさせることも可能である。ここで、パイプラインを通じさせる経路は、液面下の最大混合領域へ導入されるという条件の下で、概して自由に選択することができる。
【0050】
最大混合領域又は非常に大きな混合領域が複数存在している場合、その液面の下のできる限り離れたところに当該還流液の戻りを導入するのも適切であり得る。これにより、還流液を導入する場所と開始剤添加の導入場所の間の距離が最大になる。この導入は、特に好ましくは、タンクの底部領域を介して行う。還流液は、外側から、即ち、タンク壁から、反応混合物の中に導入することが可能である。また、還流液は、当該戻りをタンク壁又はタンクの蓋から内部に通じさせ且つタンクスペースの内部の最大混合となる可能性のある領域内であって反応時間全体にわたり反応混合物によって囲まれていている領域内で終わらせることによって、タンクスペースの内部から反応混合物の中に導入することが可能である。アンカー撹拌機の場合、当該戻りは、例えば、上方から下方に向けて、撹拌機のシャフトの近傍にあるタンクスペースの中央領域内に通じさせることができる。クロスブレード撹拌機の場合、当該戻りは、2つのブレードの間のタンク壁の側面から中央の領域内に通じさせることができる。当該戻りがタンクスペース内の反応混合物の内部に通じている場合、その戻りは、いわば、流れ破砕機として作用し、かくして、所望される混合を増強する。このような配置の場合、タンク内に2つの例えば対称的な流れ破砕機(ここで、それらの一方、又は、適切な場合には両方とも、戻りとして設計されている)を設置するために、適切な場合には、当該戻りに対して対向する部品(counterpiece)として、さらなる流れ破砕機を組み込むことは有用であり得る。さらなる流れ破砕機を含んでいるか又は含んでいない戻りとして最良の配置及び形状は、タンクの形状及び選択した撹拌機のタイプに応じて、混合の質に左右される。そのような混合の質は、例えばコンピューターシミュレーション又は色分布実験などによって、当業者が容易に確認することができる。当該戻りは、もちろん、記述されているように、動いているタンク内部構造物(例えば、撹拌機など)又は他の動かないタンク内部構造物(例えば、熱交換器など)を通して通じさせることも可能である。そのような内部構造物は、当業者には知られている。
【0051】
手段(iv)
本発明による手段(iv)は、開始剤が溶媒(通常、有機溶媒)中の溶液の形態で下方から重合混合物中に導入されるように実施する。
【0052】
重合は、その重合に適した容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0053】
本発明による手段(iv)では、該開始剤溶液は、適切な装置によって下方から重合混合物中に導入される。これに関連して、「下方から」は、当該開始剤溶液を液体重合混合物の表面の下から導入することを意味する。好ましくは、当該液体重合混合物の最大混合領域に導入する。この領域が何処に位置するかは、第1に使用する撹拌機のタイプに依存し、第2に、反応器の幾何形状に依存する。選択された撹拌機のタイプに応じた最大混合領域は、当業者には知られている。当業者は、自体公知の容易な方法で、例えば、コンピューターシミュレーション又は色分布実験(color distribution experiment)などによって、この領域を確認することも可能である。
【0054】
当該開始剤溶液は、液体を導入するのに適している通常のバルブを介して液体反応混合物の中に導入することができる。定量ポンプを用いて、連続計量供給スキーム又は供給速度及び供給時間が変化する予め定められた計量供給スキームで開始剤溶液を計量供給することができる。
【0055】
開始剤溶液を導入するためのパイプラインは、もちろん、動いている内部構造物(例えば、撹拌機など)又は固定されている内部構造物(例えば、流れ破砕機、内部熱交換器など)を通して最大混合領域まで通じさせることも可能である。ここで、パイプラインを通じさせる経路は、液面の下方の最大混合領域へ導入されるという条件の下で、概して自由に選択することができる。
【0056】
最大混合領域又は非常に大きな混合領域が複数存在している場合、その液面の下のできる限り離れたところに当該開始剤溶液を導入するのも適切であり得る。これにより、開始剤溶液の導入場所と還流液の導入場所の間の距離が最大になる。この導入は、特に好ましくは、タンクの底部領域を介して行う。当該開始剤溶液は、外側から、即ち、タンク壁から、反応混合物の中に導入することが可能であり、また、当該計量供給ラインをタンク壁又はタンクの蓋から内部に通じさせ且つタンクスペースの内部の最大混合となる可能性のある領域内であって反応時間全体にわたり反応混合物によって囲まれていている領域内で終わらせることによって、タンクスペースの内部から反応混合物の中に導入することが可能である。アンカー撹拌機の場合、当該計量供給ラインは、例えば、上方から下方に向けて、撹拌機のシャフトの近傍にあるタンクスペースの中央領域内に通じさせることができる。クロスブレード撹拌機の場合、当該計量供給ラインは、2つのブレードの間のタンク壁の側面から中央の領域内に通じさせることができる。当該計量供給ラインがタンクスペース内の反応混合物の内部に通じている場合、その計量供給ラインは、いわば、流れ破砕機として作用し、かくして、所望される混合を増強する。このような配置の場合、タンク内に2つの例えば対称的な流れ破砕機(ここで、それらの一方、又は、適切な場合には両方とも、計量供給ラインとして設計されている)を設置するために、適切な場合には、当該計量供給ラインに対して対向する部品(counterpiece)として、さらなる流れ破砕機を組み込むことは有用であり得る。さらなる流れ破砕機を含んでいるか又は含んでいない計量供給ラインとして最良の配置及び形状は、タンクの形状及び選択した撹拌機のタイプに応じて、混合の質に左右される。そのような混合の質は、例えばコンピューターシミュレーション又は色分布実験などによって、当業者が容易に確認することができる。当該導入は、記述されているように、もちろん、動いているタンク内部構造物(例えば、撹拌機など)又は他の動かないタンク内部構造物(例えば、熱交換器など)を通して通じさせることも可能である。そのような内部構造物は、当業者には知られている。
【0057】
手段(v)
本発明による手段(v)は、N-ビニルラクタムが還流液中に添加されるように実施する。
【0058】
重合反応は、還流条件下、その重合に適した容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0059】
本発明による手段(v)では、ビニルラクタムを還流液に添加する。ここで、ビニルラクタムの量は、重合によって単位時間当たり消費される量のビニルラクタムが疎水性モノマーの還流液に部分的に又は完全に添加され、それによりタンク内の反応混合物中に導入されるように、選択する。それに反して、それぞれの場合に単位時間当たり消費される量の疎水性モノマーは、当該反応混合物に直接添加する。単位時間当たり消費されるビニルラクタムの量は、共重合パラメーターを用いて計算することができるか、又は、サンプリングすることにより実験中に不連続的若しくは連続的に測定することができる。測定は、例えば、当業者には既知の適切な方法(例えば、GC、IR、HPLCなど)を用いて工程管理することにより、実施することができる。上記計算に関連のあるパラメーターは、使用したモノマーの共重合パラメーター及びその計算に必要な方程式である。当業者は、それらを既知テキストブック及び刊行物から入手することができる。モノマーの選択に依存した個々の計算は、当業者が容易に実施することができる。
【0060】
当該方法は、従って、ビニルラクタムの一部を直接反応混合物に添加し、適切な場合には、一部を直接反応混合物に計量供給し、そして、一部を冷却器からの疎水性モノマーの還流液を介して添加するように、実施される。疎水性モノマーの一部を直接反応混合物に添加し、その後、一部を反応中に消費に応じて計量供給する。重合の終了(完全な変換)に至るまで、気相中及び還流液中には疎水性モノマーの一部が常に存在していることとなる。
【0061】
本発明の範囲内において、同様に、疎水性モノマー又はモノマー及び溶媒の還流液へのビニルラクタムの計量添加を、モノマーの大部分が通常の計量供給により直接反応混合物に供給され、ビニルラクタムの大部分が重合によって消費されたとき、反応の終わりごろにのみ実施することも可能である。共重合パラメーターのため、この時点で、ビニルラクタムの量は疎水性モノマーの量よりも少ない。このことは、疎水性モノマーの大きなフラクションを含んでいるポリマーフラクションが生じるであろうということを意味するか、又は、疎水性モノマーのホモポリマーが生じるであろうということを意味する。これは、還流液を介してビニルラクタムを計量供給することによって効果的に回避することができ、よって、この計量添加がなければ疎水性モノマーを多量に含んでいる還流液との極めて効果的な混合が保証され、反応混合物中に還流する時点における反応混合物内の疎水性モノマーの濃度が局所的に高くなること及びそれに伴う上記で説明した不都合が防止される。
【0062】
従って、還流液中へのビニルラクタムの計量供給時間は、例えば、重合開始から始まるか又は還流開始から始まり、その際、ビニルラクタムの一部は反応の前又は反応の開始と同時に反応混合物に添加され(当該反応の開始は、開始剤を最初に添加したときである)、計量供給されるビニルラクタムの残りの全量は、連続的に制御された添加(単位時間当たりのビニルラクタムの量は直線的又は非直線的に推移する)によって還流液中に導入される。その後、それは、反応混合物中に戻るか、又は、この中に計量供給される。本発明の別の実施形態では、共重合パラメーターに基づいて計算された計量供給スキームを用いてモノマーを制御添加(単位時間当たりのビニルラクタム又は疎水性モノマーの量は直線的又は非直線的に推移する)することにより、反応を既に従来技術によって示されているように実施する。重合時間の終わり頃(疎水性モノマーの添加のための時間の70〜100%)にのみ、疎水性モノマーの還流液への計量添加によるさらなる量のビニルラクタムの計量添加を実施する。しかしながら、ビニルラクタムのこのさらなる計量添加は、疎水性モノマーの添加の終了のずっと後まで疎水性モノマーの総添加時間の少なくとも約10〜50%の間継続させ、また、適切な場合には、さらにまた、疎水性モノマーの還流が微弱になっているが、それでも僅かに検出される場合、重合が終了するまで継続させる。
【0063】
適切な量を確定するために、いずれの場合にも、所望の組成に対する還流プロフィールを最初に確認する。そのために、単位時間当たりの還流液中の疎水性モノマーの濃度を、重合反応の全過程に対して測定する。これは、例えば、流量計及び還流液中の疎水性モノマーの含有量の分析を用いて、実施することができる。
【0064】
ビニルラクタムの添加をより正確に制御することを可能とするために、また、ビニルラクタムと還流液との混合をできる限り効果的なものとできるように、当該タンクは、1以上の画定された場所において(例えば、還流冷却器の還流から)還流が起こるように、便宜的に設計する。混合は、例えば、静的混合機若しくは機械的混合機を組み込むことによって又は波動(例えば、超音波など)の作用下で混合することによって実施可能であり、それにより、ビニルラクタムと混合された還流液は反応溶液の中に戻っていく。
【0065】
手段(vi)
本発明による手段(vi)は、使用したN-ビニルラクタムの70〜99重量%が変換された後、溶媒の一部を留去し、重合を継続させるように実施する。
【0066】
重合反応は、その重合に適した容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0067】
重合は、還流条件下で実施することができる。
【0068】
本発明による手段(vi)では、疎水性モノマーを使い果たすために、溶媒の中間的な蒸留を実施する。中間的な蒸留を行う時点は、当該時点において当該ビニルラクタムの70〜99重量%が変換されるように選択する。当該重合混合物のビニルラクタムモノマー含有量は、例えばサンプリングを行い、未反応のモノマーの残留含有量を、例えばガスクロマトグラフ法(GC)又は可溶化-クロマトグラフ法(HPLC)などによって、外部から測定することが可能である。しかしながら、赤外線、紫外線-可視光若しくは他の光学的な又は分光学的な方法を用いて残留含有量を測定する校正された測定用プローブによってその場で測定することも可能である。そのような方法及び装置は、当業者には知られている。
【0069】
ビニルラクタムの70〜99重量%の変換が達成されたら、溶媒の一部及びビニルラクタムよりも揮発性である疎水性モノマーの一部を熱による蒸留で除去する。ここで、理想的には、疎水性モノマーの沸点が溶媒よりも低くなるように、疎水性モノマーが同等に高い沸点(沸点における差異は、10℃未満、好ましくは、8℃未満)を有するように、且つ/又は、溶媒が疎水性モノマーと共沸混合物を形成するように、重合用の溶媒を選択する。蒸留の結果として、この時点で反応していない疎水性モノマーの一部は反応混合物から除去され、それによって、疎水性モノマーの濃度とビニルラクタムの濃度は非常に類似したものとなる。この蒸留は、ビニルラクタムの総計量供給時間の70〜130%後、好ましくは、75〜120%後に実施する。ここで、留出物の量は、反応混合物の総量の3〜30%に相当し、好ましくは、5〜20%に相当する。溶媒を除去した後の重合条件下において、残った反応混合物がもはや撹拌可能ではないか又は撹拌可能ではあるが困難を伴う場合、新たな溶媒で同時に又は順次的に希釈することができる。かくして、除去された量の溶媒は、新たな溶媒を添加することによって、反応混合物中に再度導入することができる。新たな溶媒の添加は、当然のことながら、そのような溶媒の添加を必要なものとする粘度の上昇がなくても実施することができる。
【0070】
蒸留とビニルラクタムの追加の計量供給の時間的な重複(手段(ii)との組合せ)も可能であり、そのような重複によって、サイクル時間が全体的に短縮される。
【0071】
留去すべき量は、第1に、蒸留後の反応混合物の撹拌性に左右され(ここで、蒸留中に溶媒を計量供給することにより、粘性のある媒体中での通常の重合に関して操作可能なオーダーの粘度が維持される(反応温度において50Pas未満))、第2に、蒸留の時点に左右される。かくして、ビニルラクタムの総計量供給時間の70%後の実施に関しては、留出物の量は、ビニルラクタムの総計量供給時間の130%後よりも多くなるように選択される。
【0072】
ここで成されている記述を参照することにより、当業者は、蒸留の時点に応じて、特定の実験の構成(experimental set-up)、バッチサイズ及び濃度比(concentration ratio)に適した留出物の量を確定することができる。留出物の量が多くなって疎水性モノマーの減少の程度が大きくなると、本手段の特定のより多くの効果が達成される。
【0073】
手段(vii)
本発明による手段(vii)は、モノマーが、個別的に又は混合物として、純粋な形態又は溶媒で希釈された形態で、下方から重合混合物の中に計量添加されるように実施する。
【0074】
重合は、その重合に適した容器内で、適切な重合温度及び圧力で実施する。
【0075】
本発明による手段(vii)では、モノマーは、個別的に又は混合物として、純粋な形態又は溶媒で希釈された形態(以下では、「モノマー供給材料」と称する)で、下方から重合混合物の中に計量添加され、本発明以外では慣習的である重合混合物への上方からの計量添加はなされない。この計量添加は、適切な装置によって重合混合物の中へ下方から実施される。これに関連して、「下方から」は、モノマー供給材料を液体重合混合物の表面の下から導入することを意味する。モノマーの供給は、好ましくは、液体重合混合物の最大混合及び剪断領域(zone of greatest mixing and shearing)で行う。この領域が何処に位置するかは、第1に使用する撹拌機のタイプに依存し、第2に、反応器の幾何形状に依存する。選択された撹拌機のタイプに応じた最大混合領域は、当業者には知られている。当業者は、自体公知の容易な方法で、例えば、コンピューターシミュレーション又は色分布実験などによって、この領域を確認することも可能である。最大混合領域又は非常に大きな混合領域が複数存在している場合、それらの領域のうちの1つの液面の下のできる限り離れたところにモノマー供給材料を導入するのも適切であり得る。これにより、開始剤溶液(これは、通常、上方から計量供給される)を導入する場所とモノマー供給材料を導入する場所の間の距離が最大になる。
【0076】
モノマー供給材料は、液体を導入するのに適している通常のバルブを介して液体反応混合物の中に導入することができる。定量ポンプを用いて、連続計量供給スキーム又は供給速度及び供給時間が変化する予め定められた計量供給スキームでモノマー供給材料を計量供給することができる。
【0077】
原則として、本発明による手順は、モノマー供給材料の計量供給に適用される:該モノマー(適切な場合には、C1-C4-アルコール中の溶液として)は、反応混合物中に計量供給される(供給法)。本発明の一実施形態では、N-ビニルラクタムIの総量に基づいて20mol%まで、好ましくは15mol%まで、特に好ましくは10mol%までの水溶性N-ビニルラクタムIと、少量の開始剤溶液と、溶媒(好ましくは、エタノール又はイソプロパノール)を最初に導入する。次いで、その混合物を反応温度とし、残りの量のモノマーを、連続的に又は数回に分けて、残りの開始剤溶液と同時に、また、適切な場合には調節剤と同時に、計量供給する。一般に、この計量添加は、(使用するバッチサイズ及び濃度に応じて)2〜14時間にわたり、好ましくは、3〜12時間にわたり、理想的には、4〜11時間にわたり行われる。該反応混合物中のモノマーの濃度は、反応混合物に基づいて、10〜80重量%の範囲、好ましくは、20〜75重量%の範囲、特に、25〜70重量%の範囲である。この場合、反応混合物を望ましい反応温度とした後、開始剤溶液を、連続的に又は数回に分けて、特に、2.5〜16時間にわたり、好ましくは、3.5〜14時間にわたり、特に、5〜12.5時間にわたり流す。
【0078】
モノマー供給材料を導入するためのパイプラインは、もちろん、動いている内部構造物(例えば、撹拌機など)又は固定されている内部構造物(例えば、流れ破砕機、内部熱交換器など)を通して大きな混合の領域まで通じさせることも可能である。ここで、パイプラインを通じさせる経路は、液面の下方の大きな混合の領域に導入されるという条件の下で、概して自由に選択することができる。
【0079】
最大混合領域又は非常に大きな混合領域が複数存在している場合、その液面の下のできる限り離れたところにモノマー供給材料を導入するのも適切であり得る。これにより、モノマー供給材料の導入場所と開始剤の添加場所の間の距離が最大になる。この導入は、特に好ましくは、タンクの底部領域を介して行う。モノマー供給材料は、外側から、即ち、タンク壁から、反応混合物の中に導入することが可能であり、また、モノマー供給材料を導入するためのラインをタンク壁又はタンクの蓋から内部に通じさせ且つタンクスペースの内部の最大混合となる可能性のある領域内であって反応時間全体にわたり反応混合物によって囲まれていている領域内で終わらせることによって、タンクスペースの内部から反応混合物の中に導入することが可能である。アンカー撹拌機の場合、当該導入は、例えば、上方から下方に向けて、撹拌機のシャフトの近傍にあるタンクスペースの中央領域内に通じさせることができる。クロスブレード撹拌機の場合、当該導入は、2つのブレードの間のタンク壁の側面から中央の領域内に通じさせることができる。当該導入がタンクスペース内の反応混合物の内部に通じている場合、そのパイプラインは、いわば、流れ破砕機として作用し、かくして、所望される混合を増強する。このような配置の場合、タンク内に2つの例えば対称的な流れ破砕機(ここで、それらの一方、又は、適切な場合には両方とも、導入として設計されている)を設置するために、適切な場合には、当該導入に対して対向する部品(counterpiece)として、さらなる流れ破砕機を組み込むことは有用であり得る。さらなる流れ破砕機を含んでいるか又は含んでいない導入として最良の配置及び形状は、タンクの形状及び選択した撹拌機のタイプに応じて、混合の質に左右される。そのような混合の質は、例えばコンピューターシミュレーション又は色分布実験などによって、当業者が容易に確認することができる。
【0080】
手段(viii)
本発明による手段(viii)は、成分の蒸発が回避されるように重合が加圧下で行われるように実施する。
【0081】
重合反応は、その重合に適した容器内で実施する。
【0082】
重合反応は、還流が回避されるような条件下で実施する。これに関連して、このことは、液体重合混合物が沸騰せず、また、容易に揮発する成分(例えば、溶媒、及び、特に、疎水性モノマー、又は、それらの混合物)が蒸発できず、従って、冷却の結果としての再凝縮ができないということを意味する。還流条件の回避は、圧力を制御することによって制御する。
【0083】
反応温度は、60〜150℃であることが可能であり、通常は、60〜130℃の範囲内である。当該反応は、加圧下で実施する。ここで、圧力は、液体重合混合物が沸騰しないように調節する。温度と圧力の範囲は、供給材料の蒸発が起こらないように選択する。沸騰を抑制するこの低い又は高い圧力(大気圧よりも)は、同一の容積で温度を調節することにより達成することが可能であるか、又は、不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン、好ましくは、窒素)を注入して圧力を上昇させることによって達成可能である。当業者は、相対蒸気圧によって適切な圧力範囲を確認することができる。通常、ここにおける圧力は、0.05〜2MPa、好ましくは、0.08〜1.2MPa、特に、0.1〜0.8MPaである。
【0084】
個々の手段の実施期間
手段(i)は、常に、他の手段(ii)〜(vii)と時間的に重複して実施する。しかしながら、手段(i)を手段(viii)と組み合わせる場合、当該重合反応中の時間的に別個の期間に実施する。
【0085】
手段(ii)は、当該重合反応中、疎水性モノマーの少なくとも70mol%が完全に反応した時点で実施する。当業者は、例えば、反応容器から連続的又は定期的にサンプリングしてモノマーのそれぞれの残留量を容器から直接測定するか、若しくは、サンプリングポイントを有している外部循環サイクルから連続的又は定期的にサンプリングしてモノマーのそれぞれの残留量を測定することすることにより、又は、工程を管理することにより、当該時点を容易に確定することができる。
【0086】
手段(iii)は、手段(iii)がない場合に反応スペース内の冷却器の領域から反応溶液への還流(手段(i))が存在しているか又は存在しているであろうという条件の下で、全重合時間を通して実施する。
【0087】
手段(iv)は、開始剤を(適切な場合には、所望の溶媒を用いた溶液の形態で)計量添加するという条件の下で、全重合時間を通して実施する。
【0088】
手段(v)は、反応スペース内の冷却器の領域から反応溶液への還流(手段(i))が存在しているという条件の下で、全重合時間を通して実施する。より良好な制御のためには、還流が、1以上の画定された領域で、例えば還流冷却器の還流から、生じるようにタンクを設計するのが望ましい。これにより、ビニルラクタムの添加をさらに正確に制御することが可能となり、また、ビニルラクタムと還流液の起こり得る最も効果的な混合が可能となる。この混合は、例えば、静的ミキサーなどを組み入れることにより実施可能であり、そのような静的ミキサーを用いて、ビニルラクタムと混合された還流液を反応溶液中に流し戻す。
【0089】
手段(vi)は、当該重合反応中、使用したN-ビニルラクタムの少なくとも70mol%が完全に反応した時点で実施する。当業者は、例えば、反応容器から連続的又は定期的にサンプリングしてモノマーのそれぞれの残留量を容器から直接測定するか、若しくは、サンプリングポイントを有している外部循環サイクルから連続的又は定期的にサンプリングしてモノマーのそれぞれの残留量を測定することすることにより、又は、工程を管理することにより、当該時点を容易に確定することができる。
【0090】
手段(vii)は、モノマー供給材料の全計量供給時間を通して実施する。
【0091】
手段(viii)は、全重合時間を通して実施することができる。重合反応中の圧力は、重合反応の全期間を通して、当該反応混合物の成分の蒸発、特に、当該疎水性モノマー(これは、当該疎水性モノマーと他の成分との可能な任意の共沸混合物を包含する)の蒸発が回避されるように、その反応条件によって制御し、また、適切な場合には、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスによる付加的な圧力によって制御する。便宜上、容器の上端のスペース内の冷却器の領域はできる限り避けられるように、反応容器を追加設計する。
【0092】
手段(viii)を全重合時間を通しては実施しない場合、それは、時間的に別個の期間内に、手段(i)と共に実施することができる。
【0093】
2以上の手段の組合せ
個々の手段は、重合プロセスの途中における個々の手段の時間的な重複が手段(i)と手段(viii)の組合せを除いて可能であるように、本発明に従って組み合わせることができる。
【0094】
示されている可能な個々の手段の組合せの時間的な順序は、個々の手段について記載されている実施期間から生じる。
【0095】
従って、原則として、以下の手段を互いに直接組み合わせることができる:
・ 手段(i)から手段(vii)まで;
・ 手段(ii)、手段(iv)、手段(vi)、手段(vii)及び手段(viii)。
【0096】
手段(viii)と手段(i)及び手段(iii)及び/又は手段(v)の組合せは、重合反応を複数の時間間隔に分割することによって可能であり、その際、手段(i)及び手段(iii)及び/又は手段(v)及び手段(viii)は、交互の順序(alternating sequence)で又は交互の間隔(alternating interval)で、1回又は2回以上続けて順次用いられる。例えば、当該重合反応の開始時において、反応混合物中に比較的大量の未反応のビニルラクタムまだ存在している場合、当該反応は、手段(iii)及び/又は手段(v)を適用しながら、還流条件下(手段(i))で実施可能である(ここで、さらに別の手段(ii)、(iv)、(vi)又は(vii)との可能な組合せも、もちろん可能であり、本発明の方法に包含される)。ビニルラクタムがさらに減少したとき、例えば不活性ガスを注入するか又は密閉反応スペースで急激に温度を上昇させることにより、反応容器内の圧力を上昇させることが可能である。その結果、当該反応のさらなる経過中における個々の成分の蒸発又は個々の成分の共沸混合物の蒸発が回避されるので(手段(i)の回避)、手段(viii)が達成される。
【0097】
手段(iii)、手段(iv)及び/又は手段(vii)の組合せの場合、開始剤溶液の添加(手段(iv))及び還流液の添加(手段(iii))及び/又はモノマー供給材料の添加(手段(vii))は、便宜上、当該反応容器内の反応スペース内の反応混合物の液面の下の異なった領域で実施する。反応スペース内のこれらのさまざまな場所は、添加された2種類又は3種類の異なった流れの接触が添加された個々の流れと当該反応混合物の可能な混合が殆ど完了した後にのみ起こるように、本発明に従って選択される。この目的のために、当業者は、既知方法で反応容器内の適切な領域を選択する。それらは、例えば、特に高度に混合している領域であり、そのような領域は、色実験(color experiment)又はシミュレーションによって容易に確定することができる。便宜上、添加位置は、できる限り互いに離れたものとし、当該添加のいずれの時点においても反応混合物の液面の下である。
【0098】
本発明によれば、上記手段は、個別的に用いられるか、又は、好ましくは、組み合わせて用いられる。重合反応を通して、最大で8の手段を組み合わせることが可能である。個々の手段に適用される条件に従って、任意の組合せが可能である。
【0099】
手段の好ましい組合せは、以下のとおりである:(i)/(ii)/(vi)、(ii)/(vi)/(viii)、(i)/(ii)/(iv)/(vi)、(ii)/(iv)/(vi)/(viii)、(ii)/(viii)、(vi)/(viii)、(i)/(ii)/(iv)、(i)/(ii)/(iii)、(i)/(ii)/(vii)。
【0100】
手段の極めて特に好ましい組合せは、以下のとおりである:(i)/(ii)/(vi)、(ii)/(vi)/(viii)、(vi)/(viii)。
【0101】
後重合及び後処理
重合反応後、重合を完結させるために、1種類以上の重合開始剤を必要に応じて添加することが可能であり、また、ポリマー溶液を、例えば重合温度又は重合温度を超える温度まで加熱することが可能である。上記で挙げたアゾ開始剤が適しているが、アルコール溶液状態でのフリーラジカル重合に適している他の通常の全ての開始剤、例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキソ二硫酸塩、ペルカルボネート、ペルオキソエステル及び過酸化水素、又は、t-ブチルヒドロペルオキシド/亜硫酸塩を用いたレドックス系も適している。結果として、重合反応は、変換率99.9%まで進行する。重合中に形成される溶液は、通常、10〜70重量%のポリマー、好ましくは、15〜60重量%のポリマーを含んでいる。
【0102】
得られた溶液は、重合後、物理的な後処理、例えば、水蒸気蒸留又は窒素によるストリッピングなどに付すことも可能であり、その際、水蒸気と一緒に揮発する不純物又は溶媒は、当該溶液から除去される。さらに、該溶液は、化学的後処理又は過酸化水素若しくは亜硫酸ナトリウム/t-ブチルヒドロペルオキシドを用いた漂白などに付すことも可能である。残留しているモノマーの加水分解も、加水分解に適した酸又は塩基、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、プロパン酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、リン酸などの酸若しくはそれらの酸性塩、又は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液などの塩基を添加することによって、同様に実施することができる。加水分解対象の疎水性モノマー又は使用したビニルラクタムに応じて選択する。
【0103】
重合中及び/又は後重合中に使用した溶媒は、必要に応じて、例えば水蒸気蒸留などによって、除去することが可能であり、また、水などの別の溶媒で置き換えることが可能である。さらに別の方法も当業者には知られている。従来技術に相当する当業者には既知の乾燥方法によって、アルコール溶液を直接固体粉末に変換するか又は溶媒交換によって得られた水溶液を固体粉末に変換して、粉末生成物を得ることも同様に考えられる。好ましい方法は、例えば、噴霧乾燥、流動床噴霧乾燥、ドラム乾燥及びベルト乾燥などである。凍結乾燥及び凍結濃縮又はブレードドライヤーなども同様に用いることができる。極少量の有機溶媒を依然として含んでいる水溶液から乾燥させるのが好ましい。
【0104】
疎水性モノマー中には非常に多く含まれている水不溶性のホモポリマー若しくはコポリマーが形成されるのを上述したように防止するために、重合反応中に2種類のコモノマーの一定の濃度が常に維持され得ること及びモノマーの一方のみの濃度の絶対的若しくは局所的な上昇が起こらないか又は少なくとも著しく制限されることが、本発明の方法により保証される。
【0105】
結果として生じたポリマーのK値(1重量%濃度の水溶液又はエタノール溶液中で25℃で測定)は、一般に、10〜100の範囲、特に、15〜90の範囲、特に好ましくは、20〜80の範囲である。K値の測定については、以下の文献に記載されている: H.Fikentscher "Systematik der Cellulosen auf Grund ihrer Viskositat in Losung [Systematics of the celluloses based on their viscosity in solution]", Cellulose-Chemie 13 (1932), 58-64 及び 71-74、並びに、 Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 21, 2nd edition, 427-428 (1970)。
【0106】
それらの透明な溶解性(clear solubility)の尺度は、比濁計濁度単位FNU(又は、NTU)である。この比濁計濁度単位は、ポリマーの5重量%濃度水溶液中で25℃で測定し、人工的な乳白剤としてホルマジンを用いた校正により確定させる。厳密な方法については、下記実施例に記載してある。本発明により得られたポリマーは、10未満のFNU値、好ましくは、5未満のFNU値、特に好ましくは、2未満のFNU値を有する。
【0107】
本発明の方法で得られたポリマーは、特に、化粧品又は医薬調製物において、例えば、ヘアラッカー添加剤、ヘアセット添加剤若しくはヘアスプレー添加剤中の増粘剤若しくは皮膜形成剤として、皮膚用化粧品調製物若しくは免疫化学薬品中の増粘剤若しくは皮膜形成剤として、又は、医薬調製物中の活性成分放出剤として使用される。さらに、本発明により製造されたポリマーは、農業化学についての補助剤として、例えば、種子コーティングのための補助剤として、又は、徐放性肥料製剤のための補助剤として使用することもできる。さらに、該ポリマーは、工業用途のためのコーティングとして、例えば、紙若しくはプラスチックのコーティングにも適しており、又は、ホットメルト接着剤にも適している。さらに、これらのポリマーは、転写捺染用の結合剤として、潤滑添加剤として、錆止め剤又は金属表面からの錆取り剤として、スケール防止剤又はスケール除去剤として、含油水からの石油の回収における補助剤として、石油及び天然ガスの生産や石油及び天然ガスの輸送における補助剤として、汚水の清浄剤として、接着剤の原料として、洗浄剤添加物として、並びに、写真工業における補助剤としても適している。
【実施例】
【0108】
以下に記載されている実施例は、本発明を例証するためのものであるが、本発明を限定するものではない。
【0109】
実施例
比濁法による濁度測定(DIN 38404による改変法)で水性コポリマー溶液の濁度について測定した。この方法では、測定溶液により散乱された光を測光器で測定する。ここで、光散乱は、光線と溶液中の粒子又は液滴の間の相互作用に起因し、その数と大きさにより濁度の程度が決まる。ここで測定される量は、比濁計濁度単位FNU(又は、NTU)である。この比濁計濁度単位は、当該ポリマーの5重量%濃度水溶液中で25℃で測定し、人工的な乳白剤としてホルマジンを用いた校正により確定させる。FNU値が高いほど、その溶液はより濁っている。
【0110】
実施例1〜実施例6に関する一般的な手順
【表1】

【0111】
容量4.5Lの撹拌タンク内で重合を行った。初期充填物に窒素を10分間流した後、重合温度(初期温度)まで加熱した。重合温度マイナス10%で、供給材料1及び供給材料2を開始した。供給材料1は、v時間で計量供給し、供給材料2は、x時間で計量供給した。供給材料1が完了したとき、供給材料3をy時間で計量供給した。次いで、その混合物を後重合に1時間付した後、示されている量の留出物を留去した。次いで、撹拌性を維持するために、必要な場合には、その混合物を溶媒で希釈し、内部温度が重合温度プラス10℃となるまで加熱した。その温度に達した直後に、その温度で供給材料4をz時間で計量供給した。供給材料4が完了したとき、該混合物をその温度で後重合にさらに2時間付した。次いで、溶媒の大部分を蒸留により除去し、残留した量は水蒸気蒸留を用いて除去した。水蒸気蒸留を行っている間、撹拌性を維持するのに必要な場合は水を添加した。冷却後、適切な場合には、水を用いてそれぞれの固体含有量とした。
【表2】

【0112】
実施例7〜実施例33
下記表を参照されたい。
【0113】
実施例7〜実施例33に関する配合及び量は、実施例1〜実施例6に関する配合及び量から出発して、実施例7〜実施例33のそれぞれについて示されているバッチサイズに対応するように計算する。
【0114】
下記表における注記の説明
注1)= 注:圧力は、大気圧を超える加圧である。
【0115】
注2)= 注:開始剤は注入管を介して上方から当該溶液に通した;
半分量充填された後、液面下に導入した。
【0116】
注3)= 注:圧力は、窒素を注入して調節した。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、開始剤の存在下で、少なくとも1種類の水溶性N-ビニルラクタムと少なくとも1種類の疎水性コモノマーをフリーラジカル重合させることによりビニルラクタムコポリマーを製造する方法であって、以下のプロセス手段:
(i) 還流下において重合させること;
(ii) 使用した疎水性モノマーの総量の少なくとも70mol%が完全に反応したら、少なくとも5mol%のN-ビニルラクタムを重合混合物中に添加すること;
(iii) 還流中に形成された凝縮液を下方から重合混合物に戻すこと;
(iv) 有機溶媒中の溶液の形態にある開始剤を下方から重合混合物中に導入すること;
(v) N-ビニルラクタムを還流液に添加すること;
(vi) 使用したN-ビニルラクタムの70〜99重量%が変換された後、溶媒の一部を留去し、重合を継続させること;
(vii) 少なくとも1種類のモノマーを下方から重合混合物中に導入すること;
(viii) 成分の蒸発が回避されるように、重合を加圧下で行うこと;
の組合せを、手段(i)が少なくとも2つの別の手段(ii)〜(vii)と組み合わされるように実施するか又は手段(viii)が少なくとも1つの別の手段と組み合わされるように実施する(但し、手段(viii)と手段(i)、手段(iii)又は手段(v)のうちの少なくとも1つとの組合せは、順次的にのみ実施する)、前記方法。
【請求項2】
使用する前記疎水性コモノマーが、1〜100g/Lの水溶解度を有するモノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する前記疎水性コモノマーが、大気圧下で60〜150℃の範囲の沸点を有するモノマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
同時に又は順次的に少なくとも3つの前記プロセス手段を実施する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
使用する前記疎水性コモノマーが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選択されるモノマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用する前記疎水性コモノマーが酢酸ビニルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
使用する前記N-ビニルラクタムが、N-ビニルピロリドン、3-メチル-N-ビニルピロリドン、4-メチル-N-ビニルピロリドン、5-メチル-N-ビニルピロリドン、N-ビニルピリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるモノマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用する前記N-ビニルラクタムがN-ビニルピロリドンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記重合を60〜150℃の温度で実施する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
使用する前記有機溶媒がアルコールである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
手段(ii)、手段(vi)及び手段(viii)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
手段(i)、手段(ii)、手段(iv)及び手段(vi)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
手段(ii)、手段(iv)、手段(vi)及び手段(viii)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
手段(ii)及び手段(viii)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
手段(vi)及び手段(viii)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
手段(i)、手段(ii)及び手段(iv)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
手段 (i)、手段(ii)及び手段(iii)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
手段 (i)、手段(ii)及び手段(vii)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
手段(i)、手段(ii)及び手段(vi)を組み合わせる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記重合を0.05〜2MPaの圧力で実施する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記重合を保護ガスのもとで実施する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2008−138200(P2008−138200A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−307529(P2007−307529)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】