説明

少なくとも2種のシアニン化合物を含む近赤外吸収組成物

【課題】少なくとも2種のシアニン化合物を含有する、吸収および耐熱堅牢性に優れた実用的な近赤外吸収組成物を提供する。
【解決手段】吸収極大波長の異なる少なくとも2種のシアニン化合物を含み、それぞれのシアニン化合物の吸収極大波長と異なる位置に吸収極大波長を有する近赤外吸収組成物であって、少なくとも1種が、下記一般式(1)で表わされるシアニン化合物であることを特徴とする近赤外吸収組成物。


[式中、ZおよびZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群であり;RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基であり;Lは、環を形成してもよい5あるいは7個のメチンからなるメチン鎖であり;aおよびbは、それぞれ独立に、0または1である。但し、分子内に少なくとも2個のアニオン性基を含む]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近赤外吸収組成物に関し、詳しくは少なくとも2種のシアニン化合物を含む近赤外吸収組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シアニン化合物の会合体は近赤外吸収組成物として知られており、数種の色素を混合してフィルターを作成することも知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、近赤外吸収色素は熱線吸収フィルター、バンドパスフィルター、光学フィルター等のフィルター染料、不可視印刷用のインク、レーザー光反射防止用としての赤外線吸収塗料、フラッシュトナー、電子写真感光体、光重合又は光架橋用の増感剤、光ディスク等の光記録材料、光センサー等の用途に有用である。
熱線吸収フィルターにおける近赤外吸収色素の使用形態としては、透明プラスチックに含有させる、透明プラスチックあるいは透明ガラスの表面に塗布する等の手段がある。これにより、透明な熱線遮断フィルターが得られる。用途としては、メガネ、自動車あるいは建材の熱線遮光剤等が挙げられる。
【0004】
CCD等の撮像素子に近赤外線吸収フィルターを光学フィルターとして用いることも可能である。これら撮像素子に近赤外線吸収光学フィルターを用い、入射する近赤外線を遮断することにより、該撮像素子の分光感度を視感度に近づけることができる。この近赤外吸収フィルターに近赤外吸収色素を用いることができる。
プラズマディスプレイ(PDP)の画像表示装置の表面に誤動作防止のために近赤外吸収フィルターに近赤外吸収色素を用いることが出来る。
近赤外吸収色素を不可視印刷用のインクとして用いた場合、機密文書の複写防止が可能となる。
【0005】
従来、近赤外線吸収色素としてシアニン色素、オキシム又はチオールの金属錯体、ナフトキノン化合物、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物が知られているが、必要とされるIR領域(700-1100nm)に十分な吸収がなかったり、耐熱堅牢性が低いという問題点があった。
【0006】
以上のように、種々の用途で近赤外吸収色素が求められているが、従来知られている近赤外吸収色素は吸収波長の制御及び熱堅牢性の観点ではいまだ満足できる性能のものではなかった。特に、シアニン色素の会合体を利用してフィルターを作成する場合、波長の調整が難しく、850nm付近で目的の波長の吸収を有する色素がないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2002−90521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、近赤外吸収組成物の提供を目的とし、詳しくは少なくとも2種のシアニン化合物(シアニン色素)を含有する、吸収波長の制御および耐熱堅牢性に優れた実用的な近赤外吸収組成物の提供を目的とする。本発明はこの近赤外吸収組成物を用いた近赤外吸収フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化学構造を有するシアニン化合物(シアニン色素)を少なくとも2種混合すると、各々の化合物が本来有している吸収とは異なる位置に吸収極大が現れ、かつ、熱堅牢性が向上することを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。その具体的手段は以下のとおりである。
<1> 吸収極大波長の異なる少なくとも2種のシアニン化合物を含み、それぞれのシアニン化合物の吸収極大波長と異なる位置に吸収極大波長を有する近赤外吸収組成物であって、少なくとも1種が、下記一般式(1)で表わされるシアニン化合物であることを特徴とする近赤外吸収組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、ZおよびZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群であり;RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基であり;Lは、環を形成してもよい5あるいは7個のメチンからなるメチン鎖であり;aおよびbは、それぞれ独立に、0または1である。但し、分子内に少なくとも2個のアニオン性基を含む]。
<2> 一般式(1)で表わされるシアニン化合物が一般式(2)または(3)で表される化合物であることを特徴とする<1>記載の近赤外吸収組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、R〜Rは各々独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、RとRおよびRとRはお互いに結合して環を形成してもよい。R10およびR11は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。Rは一価の基を表し、Z3およびZ4のベンゼン環にはさらに別のベンゼン環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、R12およびR13は各々独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、R14およびR15は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。R16は一価の基を表し、Z5およびZ6のベンゼン環にはさらに別のベンゼン環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
<3> 色素が会合体を形成していることを特徴とする<1>または<2>に記載の近赤外吸収組成物。
<4> 近赤外吸収領域が、吸収波長700nm〜1100nmの領域であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の近赤外吸収組成物。
<5> シアニン化合物の固体微粒子分散体を含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の近赤外吸収組成物。
<6> 近赤外吸収フィルターであることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の近赤外吸収組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の近赤外吸収組成物は、吸収極大波長の異なる少なくとも2種のシアニン化合物を含み、それぞれの化合物の吸収極大波長と異なる近赤外領域に吸収極大を有し、耐熱堅牢性が向上するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の近赤外吸収組成物について詳細に示す。
まず、一般式(1)で表わされる化合物について説明する。
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、ZおよびZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群であり;RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基であり;Lは、5または7個のメチンからなるメチン鎖であり;aおよびbは、それぞれ独立に、0または1である。但し、分子内に少なくとも2個のアニオン性基を含む]。
【0020】
式(1)において、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群である。含窒素複素環には、他の複素環、芳香族環または脂肪族環が縮合してもよい。含窒素複素環およびその縮合環の例には、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオサゾール環、オキサゾロカルバゾール環、オキサゾロジベンゾフラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール環、インドリジン環、イミダゾキノキサリン環およびキノキサリン環が含まれる。含窒素複素環は、6員環より5員環の方が好ましい。5員の含窒素複素環にベンゼン環またはナフタレン環が縮合していることがさらに好ましい。ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環またはベンゾインドレニン環が好ましい。インドレニン環が最も好ましい。
【0021】
含窒素複素環およびその縮合環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、ホルミル、カルバモイル、ウレイド、ウレタン、メルカプト、スルホ、スルファモイル、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−R、−NH−R、−NR2、−NH−CO−R、−CO−NH−R、−CO−NR2、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−NR2、−NH−CO−O−R、−S−R、−SO2−R、−SO2−O−R、−NH−SO2−R、−SO2−NH−R、−SO 2−NR2が含まれる。Rは、それぞれ独立に、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。置換基として好ましくはハロゲン原子、カルボキシル基およびスルホ基であり、特に好ましくは、スルホ基である。なお、カルボキシルおよびスルホは、水素原子が解離しても、塩の状態であってもよい。
【0022】
本明細書において脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基を意味する。アルキル基は、環状であってもよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至12がさらに好ましく、1乃至8最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよび2−エチルヘキシルが含まれる。アルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチルが好ましく、メチルおよびエチル基が特に好ましい。
【0023】
置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。置換アルキル基の置換基の例に前述した含窒素複素環の置換基を挙げることができる。置換アルキル基の例には、2−ヒドロキシエチル、2−カルボキシエチル、2−メトキシエチル、2−ジエチルアミノエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。
【0024】
アルケニル基は、環状であってもよい。鎖状アルケニル基は、分岐を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は、2ないし20が好ましく、2乃至12がさらに好ましく、2乃至8が最も好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル、1−プロペニル、2ーブテニル、2−ペンテニルおよび2−ヘキセニルが含まれる。置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。置換アルケニル基の置換基は、アルキル基の置換基と同様である。
【0025】
アルキニル基は、分岐を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は、2ないし20が好ましく、2乃至12がさらに好ましく、2乃至8が最も好ましい。アルキニル基の例には、エチニルおよび2−プロピニルが含まれる。置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。置換アルキニル基の置換基は、アルキル基の置換基と同様である。
【0026】
本明細書において、芳香族基は、アリール基または置換アリール基を意味する。アリール基の炭素原子数は、6乃至25であることが好ましく、6乃至15であることがさらに好ましく、6乃至10であることが最も好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基としては前述した含窒素複素環の置換基と同義である。置換アリール基の例には、4−カルボキシフェニル、4−アセトアミドフェニル、3−メタンスルホンアミドフェニル、4−メトキシフェニル、3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4−メタンスルホンアミドフェニルおよび4−ブタンスルホンアミドフェニルが含まれる。
【0027】
本明細書において、複素環は5員環または6員環であることが好ましく、置換されていてもよい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環(縮合環を含む)の例には、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環およびチアジアゾール環が含まれる。置換複素環基の置換基は、置換アリール基の置換基と同様である。
【0028】
式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、脂肪族基である。脂肪族基の定義および例は、前述した通りである。
【0029】
式(1)において、Lは5または7個のメチンからなるメチン鎖であり、7個が好ましい。メチン鎖同士が結合して、5、6または7員環(例えば、シクロペンテン、シクロへキセン、シクロヘプテン)を形成していてもよい。また、置換基を有していても良い。置換基としては前述した含窒素複素環の置換基と同義である。
【0030】
aおよびbは0または1であるが、0であることが好ましい。
さらに、式(1)の化合物は分子内に少なくとも2個のアニオン性基を含む。2個であることがさらに好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基(塩でもよい)またはスルホ基(塩でもよい)を挙げることができる。スルホ基を有することが特に好ましい。分子内に2個のアニオン性基を有すことが好ましい。アニオン性基の1個は分子内で塩を形成し、その他のアニオン性基の対塩を形成するカチオンは、水素原子、アルカリ金属イオン(Li,Na,K)、アルカリ土類金属イオン(例、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Sr2+)、遷移金属イオン(例、Ag 、Fe、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+)、その他の金属イオン(例、Al3+)、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンおよびテトラブチルアンモニウムイオンなどが好ましい。
【0031】
一般式(1)で表わされる化合物のうち、一般式(2)または(3)で表わされる化合物が好ましい。一般式(2)または(3)で表わされる化合物について説明する。
【0032】
【化8】

【0033】
[式中、R〜Rは各々独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、RとRおよびRとRはお互いに結合して環を形成してもよい。R10およびR11は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。Rは一価の基を表し、Z3およびZ4のベンゼン環にはさらに別のベンゼン環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
【0034】
一般式(2)で表される化合物のR〜Rで表される脂肪族基は前述と同義である。RとRおよびRとRがお互いに結合する環としてはシクロペンタン、シクロヘキサン環を挙げることができる。R10およびR11によって形成される5または6員環としてシクロペンテンおよびシクロへキセンを挙げることができる。Rで表される一価の基は、前述した含窒素複素環の置換基を挙げることが出来る。
Z3およびZ4に縮合するベンゼン環は置換基を有していても良い。また、Z3およびZ4は置換基を有しても良い。これらの置換基は上述した含窒素複素環の置換基と同義である。アニオン性基は前述と同義である。
【0035】
さらに、好ましくは、Z3およびZ4はスルホ基を有し、R3およびR4は炭素原子数1−4のアルキル基であり、R5からR8はメチル基であり、R9はハロゲン原子(Cl,Br)、モルホリノ基、ピリジル基、フェニル基またはSPh基である。
【0036】
【化6】

【0037】
[式中、R12およびR13は各々独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、R14およびR15は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。R16は一価の基を表し、Z5およびZ6のベンゼン環にはさらに別のベンゼン環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
一般式(2)のR12およびR13で表される脂肪族基は前述と同義である。R14およびR15によって形成される5および6員環としてシクロペンテン、シクロへキセン挙げることができる。R16の一価の基は前述と同義である。
Z5およびZ6に縮合するベンゼン環は置換基を有していても良い。また、Z5およびZ6は置換基を有していても良い。これらの置換基は上述した含窒素複素環の置換基と同義である。
さらに好ましくは、Z5およびZ6はCl置換基を有しており、R16はハロゲン原子(Cl,Br)、モルホリノ基、ピリジル基、フェニル基またはSPh基である。R12およびR13はスルホ基を有するアルキル基である。
【0038】
混合する化合物の組み合わせてしては一般式(2)で表される化合物(2aという)から選ばれる少なくとも2種の組み合わせおよび一般式(3)で表される化合物(3aという)から選ばれる少なくとも2種の組み合わせが好ましい。ここで、(2a)とは一般式(2)の中で互いに構造の異なる化合物群を表わしている。同様に、(3a)とは一般式(3)の中で互いに構造の異なる化合物群を表わしている。
シアニン化合物の構造を互いに異なるものとする置換基としては一般式(2)において置換基R,R(1つの化合物においてRとRは同一であることが好ましい)、置換基R、置換基R10とR11がさらに好ましい。さらに、置換基RおよびR10とR11が異なることが好ましい。一般式(3)においては、置換基R12,R13(1つの化合物においてR12とR13は同一が好ましい)、置換基R16、置換基R14とR15が互いに異なる化合物の組み合わせがさらに好ましい。さらに、R14およびR15で形成される環数が異なることが好ましい。
さらに、一般式(4)および(5)の色素の組み合わせが好ましい。
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
[式中、R20およびR21は独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、R22およびR23は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。Yはカチオンを表す。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
一般式(4)および(5)において、R20およびR21で表される脂肪族基は前述と同義である。C1からC4のアルキル基が好ましい。R22およびR23で表される5または6員環は前述と同義である。Yで表されるカチオンおよびアニオン性基は前述と同義である。
【0042】
以下に一般式(1)から(5)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
一般式(1)から(5)の色素はエフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレイテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、およびデー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トッピクス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chmistry)」、第18章、第14節、482〜515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodds Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vo
l.IV,partB,1977年刊、第15章、369〜422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、特開平4−362932号記載の参考文献を参照して合成できる。
【0048】
本発明の近赤外吸収組成物には一般式(1)から(5)で表される色素が含まれるが、その波長は700〜1100nmの範囲に吸収極大を示すものであることが好ましい。さらに、750〜1000nmが好ましい。830〜880nmが最も好ましい。上記の吸収極大を示す波長(吸収極大波長)は、膜で前記色素が会合体を形成したときのものである。これらの吸収域を確保するために、本発明では一般式(1)から(5)で表される色素を少なくとも2種用いている。この中で2種用いることが最も好ましい。本発明において、2種の色素を用いた場合、例えば色素Aの膜のλmaxがanmで、色素Bがbnmの場合、AとBの色素を混合した場合のλmaxはaとbの間の吸収になるものとする。aとbのλmaxの差は30−200nm、好ましくは40−150nm,さらに好ましくは50−120nmである。
【0049】
好ましい吸収波形を得るために、本発明の近赤外組成物は、前記色素を水や溶剤等に溶解させた組成物としてもよいが、吸収および耐光性向上のために前記色素を会合状態にすることが好ましく(以下、この状態の色素を「会合体色素」ともいう)、J会合体を含む会合体状態の色素を用いることがより好ましい。
なお、会合体色素は、いわゆるJバンドを形成するため、シャープな吸収スペクトルピークを示す。色素の会合とJバンドについては、例えば、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering),Vol18,No.323−335(1974))に詳細な記載がある。J会合状態の色素の吸収極大は、溶液状態の色素の吸収極大よりも長波側に移動する。従って、近赤外吸収組成物に含まれる色素が会合状態であるか、非会合状態であるかは、吸収極大を測定することで判断できる。
【0050】
本発明においては、島津製作所社製、UV−3100Pc(商品名)を用いて測定した溶剤中での色素の吸収極大波長(λma)に対して、同装置により測定した会合後(例えば、膜)の吸収極大波長(λmb)が30nm以上長波長であるとき、その会合後の色素を会合状態の色素(会合体色素)という。ここで、より良好な会合状態として、溶液状態での吸収極大波長と会合後の吸収極大波長との差(λmb−λma)を、50nm以上とした会合体色素であることが好ましく、70nm以上とした会合体色素であることがより好ましい。
【0051】
本発明の会合体色素の形成は一般式(1)から(5)で表わされる色素を水に溶解し、ゼラチンまたは塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム,塩化亜鉛、または塩化バリウムなど)を添加して水中で会合体色素とすることができる。また、固体微粒子(平均粒径が好ましくは0.001〜100μm、より好ましくは0.005〜50μm)として分散させて会合体色素とすることもできる。逆に上記塩の水溶液に一般式(1)から(5)で表される色素の水溶液を添加してもよい。
色素を混合する場合、それぞれの色素を固体分散または組成物の作成時に混合してもよいが、混合する色素を水に溶解し、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなどを添加し、生成した混合塩を用いることが特に好ましい。さらに、固体分散することが好ましい。
【0052】
本発明の近赤外吸収組成物における一般式(1)から(5)で表わされる化合物の含有量は、必要に応じて調節することができるが、組成物中に0.1〜30質量%含有させることが好ましく、0.5〜10質量%含有させることがより好ましい。
また、少なくとも2種の化合物の互いの混合比は、質量比で、好ましくは、9:1〜1:9、さらに好ましくは3:7〜7:3、最も好ましくは1:1である。三種以上の場合は各色素が少なくとも10%以上含み、等質量比が好ましい。
【0053】
本発明において色素の固体微粒子分散物を調製する場合の調製法は、例えば、株式会社 技術情報協会 発行の「顔料分散技術−表面処理と分散剤の使い方および分散性評価−」、株式会社 朝倉書店発行の「顔料の事典」、株式会社 技術情報協会発行の「最新『顔料分散』実務ノウハウ・事例集」に詳しく記載されている。固体微粒子分散物にするためには、通常の分散機を用いることができる。分散機の例には、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル及びローラミルが含まれる。分散機については、特開昭52−92716号公報及び国際公開第88/074794号パンフレットに記載がある。縦型又は横型の媒体分散機が好ましい。
分散は、適当な媒体(例、水、アルコール、シクロヘキサノン、2−メトキシー1−メチルエチル アセテート)の存在下で実施してもよい。分散用界面活性剤を用いることが好ましい。分散用界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(特開昭52−92716号公報及び国際公開第88/074794号パンフレットに記載)が好ましく用いられる。必要に応じてアニオン性ポリマー、ノニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤を用いてもよい。
【0054】
本発明の色素を適当な溶媒中に溶解した後、その溶液に貧溶媒を添加して、微粒子化し、必要に応じてその粉末を得てもよい。この場合も、上記の分散用界面活性剤を用いてもよい。あるいはpHを調整することによって溶解し、次にpHを変化させて色素の微粒子を析出させてもよい。この微粒子も上述した会合体色素であることが好ましい。
会合体色素が微粒子(または微結晶)である場合、平均粒径1000μm以下であることが好ましく、0.001μm〜100μmであることがより好ましく、0.005μm〜50μmであることが特に好ましい。(本発明において、平均粒径とは特に断わらない限り、体積平均粒径をいい、レーザー回折散乱法または動的光散乱法を用いて測定したものをいう。)。
【0055】
本発明の色素の分散性を向上させる目的で通常の顔料用分散剤や界面活性剤を添加することができる。これらの分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品:EFKA−745(商品名、エフカ社製))、ソルスパース5000(商品名、ゼネカ社製);オルガノシロキサンポリマーKP341(商品名、信越化学工業(株)社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(商品名、共栄社油脂化学工業(株)社製)、W001(商品名、裕商(株)社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、エマルゲンA60(商品名、花王(株)社製)等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(商品名、裕商(株)社製)、ドデシルベンゼンスルホン酸Na、デモールSNB(商品名、花王(株)社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上、商品名、森下産業(株)製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(商品名、サンノプコ(株)社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(商品名、ゼネカ(株)社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123(商品名、旭電化(株)社製)およびイソネットS−20(商品名、三洋化成(株)社製)が挙げられる。
【0056】
上記分散剤は、単独で用いてもよくまた少なくとも2種組み合わせて用いてもよい。上記分散剤の本発明の組成物中の添加量は、色素100質量部に対して1〜150質量部程度が好ましい。
【0057】
本発明の組成物は、褪色防止剤、酸化防止剤や紫外線防止剤を含んでもよい。褪色防止剤には、ハイドロキノン誘導体、ハイドロキノンジエーテル、フェノール誘導体、スピロインダン、メチレンジオキシベンゼン、クロマン、スピロクロマン、クマラン誘導体、ハイドロキノンモノエーテル、p−アミノフェノール誘導体およびビスフェノール誘導体が含まれる。ハイドロキノン誘導体については、米国特許3935016号、同3982944号の各明細書に記載がある。ハイドロキノンジエーテルについては、米国特許4254216号明細書、特開昭55−21004号公報に記載がある。フェノール誘導体については、特開昭54−145530号公報に記載がある。スピロインダン、メチレンジオキシベンゼンについては、英国特許2062888号、同2077455号の各明細書に記載がある。クロマン、スピロクロマン、クマラン誘導体については、米国特許3432300号、同3573050号、同3574627号、同3764337号の各明細書、特開昭52−152225、同53−17729号、同53−20327号、同61−90156号の各公報に記載がある。ハイドロキノンモノエーテル、p−アミノフェノール誘導体については、英国特許1347556号、同2066975号の各明細書、特公昭54−12337号、特開昭55−6321号の各公報に記載がある。ビスフェノール誘導体については、米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報に記載がある。
【0058】
金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60ー97353号公報記載の)や一重項酸素クウェンチャーを組成物に添加しても良い。一重項酸素クウェンチャーには、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報記載)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書記載)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報記載)および酸化防止剤(欧州特許820057A1号明細書記載)が含まれる。
【0059】
本発明の組成物は、前記の背景技術で述べた各用途に使用できる。
本発明の化合物を含む組成物を塗布などにより膜状とする場合の乾燥塗膜の厚さは0.1μm乃至1cmであることが好ましく、0.5μm乃至100μmであることがさらに好ましい。
【0060】
本発明の組成物は、さらにポリマーバインダーを含むのが好ましい。ポリマーバインダーとしては、天然ポリマー(例、ゼラチン、セルロース誘導体、アルギン酸)または合成ポリマー(例、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、水溶性ポリアミド)をポリマーバインダーとして用いることができる。親水性ポリマー(上記天然ポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポビニルアルコール、水溶性ポリアミド)が特に好ましい。
【0061】
本発明のフィルターは透明支持体を用いて作成してもよい。透明支持体はガラスまたは、ポリマーフイルムからなることが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースニトレート)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアリレート(例、ビスフェノールAとフタル酸の縮合物)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよびポリオキシエチレンが含まれる。セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の厚みは、5μm乃至5cm以下であることが好ましく、25μm乃至1cmであることがさらに好ましく、80μm乃至1.2mmであることが最も好ましい。この場合の組成物よりなる塗膜の厚さは前記のとおりである。
【0062】
透明支持体の波長400〜1100nmの光に対して透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0063】
透明支持体に、紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01乃至20質量%であることが好ましく、0.05乃至10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。
透明支持体に表面処理を施すことが好ましい。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火炎処理が好ましく、コロナ放電処理がさらに好ましい。
【0064】
また、本発明の近赤外吸収組成物は光硬化性組成物中、熱硬化性組成物中に一般式(1)から(5)で表される化合物を含んでなるものであってもよい。光硬化性組成物、熱硬化性組成物としてエチレン性不飽和基を持つ化合物を含む組成物が好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。また更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものが挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらにより限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
フィルターAの作成
本発明の例示化合物(1)0.25gおよび例示化合物(18)0.25gをH2O40mlに溶解し、酢酸カリウム0.28g添加し、析出した結晶をろ過した。その得られた結晶とエマルゲンA60(花王(株)社製)0.05g、ジルコニアビーズ(0.1mm)10g、蒸留水4.5gの混合物を、遊星型ボールミル(ドイツ フリッチュ社製)を用いて分散し分散物を得た。例示化合物(1)および(2)の平均粒径は0.20μmであった。
【0067】
4質量%ゼラチン水溶液2.0gに上記で得られた分散物0.6gを40℃にて加え、混合した。この液をガラス基板上にスピンコートし、乾燥厚さ2μmの赤外線吸収層を有する赤外吸収フィルターAを作成した。
フィルターBの作成
フィルターAの作成で使用した酢酸カリウムの変わりに塩化マグネシウム0.28gを用いた以外は、フィルターAと全く同様にして、分散物およびフィルターBを作成した。
フィルターC,Dの作成
例示化合物(1)及び(18)の代わりに例示化合物(1)0.5gを用いた以外はフィルターAと全く同様にして分散物およびフィルターCを作成した。例示化合物(1)及び(2)の平均粒径は0.21μmであった。例示化合物(18)0.5gを用いた以外はフィルターAと全く同様にしてフィルターDを作成した。
(実施例2)
フィルターEの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(2)、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(19)を用いた以外はフィルターAと全く同様にしてフィルターEを作成した。
フィルターFおよびGの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(2)0.5g、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(19)0.5gを用いた以外はフィルターC,Dと全く同様にしてフィルターFおよびGをそれぞれ作成した。
(実施例3)
フィルターHの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(31)、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(25)を用いた以外はフィルターAと全く同様にしてフィルターHを作成した。
フィルターIの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(31)、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(25)を用いた以外はフィルターBと全く同様にしてフィルターIを作成した。
フィルターJおよびKの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(31)、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(25)を用いた以外はフィルターC,Dと全く同様にしてフィルターJおよびKをそれぞれ作成した。
(実施例4)
フィルターLの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(36)、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(39)を用いた以外はフィルターBと全く同様にしてフィルターLを作成した。
フィルターMおよびNの作成
例示化合物(1)の代わりに例示化合物(36)、例示化合物(18)の代わりに例示化合物(39)を用いた以外はフィルターC,Dと全く同様にしてフィルターMおよびNをそれぞれ作成した。
【0068】
(実施例5)
フィルターaの作成
例示化合物(1)の代わりに比較色素A、例示化合物(18)の代わりに比較色素Bを用いた以外はフィルターAと全く同様にしてフィルターaを作成した。
フィルターbおよびcの作成
例示化合物(1)の代わりに比較色素A、例示化合物(18)の代わりに比較色素B用いた以外はフィルターC,Dと全く同様にしてフィルターbおよびcをそれぞれ作成した。
比較例aおよびbは特開2002−90521に記載の色素である。
【0069】
【化13】

【0070】
(フィルターの評価)
作成した各フィルターについて、下記評価を行った。その結果を表1に示した。
<吸収>
UV−3100Pc(商品名、島津製作所社製)を用いて、フィルターの吸収極大波長(λmb)を測定した。また、HOまたはジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解した各色素の吸収極大波長(λma)を測定した(色素1mgを溶剤 100mlに溶解して測定した)。
【0071】
<耐熱性>
220℃に熱したホットプレート(柴田化学製NP−6型)上にフィルターをおき、70分放置した。加熱前後の画像濃度を上記3100PCを用いて測定し、加熱後濃度/加熱前濃度=色素残存率として評価した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から明らかなように、本発明のフィルターは少なくとも2種のシアニン色素を混合した組成物とすることでそれぞれの単独での吸収極大(λmax)の中間にλmaxを持ってくることが出来る。また、例示化合物を2種混合することで単独のものより熱安定性に優れたものとできた。さらに、特開2002−90521に記載の色素を用いた場合、混合しても中間の位置に吸収を持ってくることが出来なかった。また、溶液吸収より長波化しており色素が会合体を形成していることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】表1のフィルターAの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】表1のフィルターCの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】表1のフィルターDの吸収スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収極大波長の異なる少なくとも2種のシアニン化合物を含み、それぞれのシアニン化合物の吸収極大波長と異なる位置に吸収極大波長を有する近赤外吸収組成物であって、少なくとも1種が、下記一般式(1)で表わされるシアニン化合物であることを特徴とする近赤外吸収組成物。
【化1】

[式中、ZおよびZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群であり;RおよびRは、それぞれ独立に、脂肪族基であり;Lは、環を形成してもよい5あるいは7個のメチンからなるメチン鎖であり;aおよびbは、それぞれ独立に、0または1である。但し、分子内に少なくとも2個のアニオン性基を含む]。
【請求項2】
一般式(1)で表わされるシアニン化合物が一般式(2)または(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の近赤外吸収組成物。
【化2】

[式中、R〜Rは各々独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、RとRおよびRとRはお互いに結合して環を形成してもよい。R10およびR11は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。Rは一価の基を表し、Z3およびZ4のベンゼン環にはさらに別のベンゼン環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
【化3】

[式中、R12およびR13は各々独立に、置換基を有してもよい脂肪族基を表し、R14およびR15は水素原子またはお互いに連結して5または6員環を形成してもよい。R16は一価の基を表し、Z5およびZ6のベンゼン環にはさらに別のベンゼン環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。但し、分子内に2個のアニオン性基を含む]。
【請求項3】
色素が会合体を形成していることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外吸収組成物。
【請求項4】
近赤外吸収領域が、吸収波長700nm〜1100nmの領域であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外吸収組成物。
【請求項5】
シアニン化合物の固体微粒子分散体を含むことを特徴とする請求項1〜4のずれか1項に記載の近赤外吸収組成物。
【請求項6】
近赤外吸収フィルターであることを特徴とする請求項1〜5のずれか1項に記載の近赤外吸収組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−185161(P2009−185161A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25798(P2008−25798)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】