説明

尿路病原性菌株由来の抗原

【課題】病原性大腸菌株、特にExPEC株、より特別にはUPEC株に対する免疫処置における使用のためのさらなる抗原を提供すること。
【解決手段】本明細書において、病原性大腸菌株に特異的な免疫原性組成物中に含め得る種々の遺伝子を開示する。該遺伝子は尿路病原性菌株由来であるが、非病原性菌株には存在せず、そのコードタンパク質は、自身を免疫系に利用可能にする細胞部位を有する。本発明はまた、患者に、本発明の医薬組成物または免疫原性組成物を投与する工程を含む、患者の免疫応答を高めるための方法に関する。特定の一実施形態において、免疫応答は、ExPEC感染に対して防御的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用された全ての文献は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2005年2月18日に出願された米国仮出願第60/654,632号(この教示の全体が、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、大腸菌生物学の分野におけるものであり、特に、腸外病原性大腸菌(ExPEC)株に対する免疫処置における使用のための免疫原に関する。
【背景技術】
【0004】
大腸菌ほど多用途な微生物はほとんどない。哺乳動物の通常の腸内微生物叢の重要な一員である他、組換えDNA手法における宿主として広く利用されている。しかしながら、また、大腸菌は致死性の病原体でもあり得る。
【0005】
大腸菌株は、伝統的には、片利共生または病原性のいずれかに分類されており、病原性菌株は、さらに腸内または腸外株に下位分類されている。より細菌の分類学的手法、例えば、多座酵素電気泳動(MLEE)などでは、大腸菌は5つの系統発生的なグループ(A、B1、B2、DおよびE)に分類され、これらのグループ分けは、伝統的なものと適合しない。例えば、MLEEグループB1は片利共生および病原性菌株の両方を含み、グループDは腸内および腸外株の両方を含む。
【0006】
大腸菌の腸外病原性菌株(または「ExPEC」株[1](非特許文献1))は、MLEEグループB2およびDに分類され、尿路病原性(uropathogenic)(UPEC)株および髄膜炎/敗血症関連(MNEC)株の両方を含む。UPEC株は尿路感染(UTI)を引き起こし、膀胱炎の最も一般的な形態である。該病原性菌株はまた、腎盂腎炎(およびその合併症、例えば敗血症など)ならびにカテーテル関連感染を引き起こす。MNEC株は新生児髄膜炎を引き起こし(1000生児出生あたり0.1例)、その場合、死亡率は25〜40%の範囲であり、また、敗血症の症例の原因のほぼ1/6を担う。
【0007】
これまでのExPEC ワクチンの大部分は、細胞ライセートまたは細胞構造体を主成分としたものである。SOLCOUROVACTMは、6種類のExPEC株を含む10種類の異なる加熱殺菌された細菌を含むものであり、好成績のフェーズII臨床試験が、参考文献2(非特許文献2)において報告された。URO−V AXOMTMは、18種類の選択された大腸菌株の凍結乾燥細菌ライセートを含有する経口錠剤ワクチンである[3](非特許文献3)。Baxter Vaccinesでは、6〜10種の異なる株由来のピリ線毛を主成分とするUTIワクチンが開発されたが、この製品は禁止されている。MedImmuneでは、FimH付着因子複合体を主成分とするMEDI 516とよばれる製品が開発されたが[4](非特許文献4)、フェーズII臨床試験では、有効性が不充分なことが示された。さらに、このワクチンは、通常の腸内微生物叢内の非病原性FimH+ve株にも影響し得るリスクを伴い、このワクチンは、その膀胱特異的付着機構のため、UPEC株に対してのみ有効であり得、他のExPEC株は制御不能であり得ることが予測された。
【0008】
従って、改善されたExPECワクチンの必要性、例えば、粗製細胞ライセートからより明確な分子に向かって遊離(move away)させる必要性、およびワクチンに含めるのに適したさらなる抗原、特に、片利共生菌株にも同時に見られることなく、ExPEC臨床株間に広く見られる抗原を同定する必要性が存在する。
これらの必要性に取り組む方法の一例は参考文献5で報告され、その発明者らは、MLEEのB2およびD型のゲノム内に存在するが、MLEEのAおよびB1型には存在しない遺伝子を探した。サブトラクティブハイブリダイゼーションに基づくさらなる比較アプローチが、参考文献6および7に報告された。また、ExPEC株におけるビルレンス遺伝子が参考文献8において同定されている。参考文献9には、UPEC大腸菌株536内の4種類の病原遺伝子島の解析が開示されている。
参考文献10(特許文献1)では、UPEC(O6:K2:H1)株CFT073[11,12]のゲノム配列を用いて、非病原性大腸菌株には存在しない配列が同定された。参考文献13には、UPECである大腸菌ヒト腎盂腎炎の単離菌536(O6:K15:H31)と、株CFT073(UPEC)、EDL933(腸管出血性)およびMG1655(非病原性実験菌株)の配列データとのゲノム配列の比較が開示されている。病原性菌株のゲノム配列は、データベースにおいて受託番号AE005174、BA000007およびNC−004431で入手可能である。非病原性菌株由来の配列は、受託番号U00096にて入手可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0165870号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】RussoおよびJohnson J Infect Dis(2000)181:1753〜1754
【非特許文献2】Uehlingら、J Urol(1997)157:2049〜2052
【非特許文献3】Tammen Br J Urol(1990)65:6〜9
【非特許文献4】Langermannら、Science(1997)276:607〜611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、病原性大腸菌株、特にExPEC株、より特別にはUPEC株に対する免疫処置における使用のためのさらなる抗原を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明者らは、病原性大腸菌株に特異的な免疫原性組成物中に含め得る種々の遺伝子を同定した。該遺伝子は尿路病原性菌株(UPEC)由来であるが、非病原性菌株には存在せず、そのコードタンパク質は、自身を免疫系に利用可能にする細胞部位を有する.
一態様において、本発明は、(a)配列番号
【0013】
【化2】

【0014】
および599からなる群より選択されるアミノ酸配列;(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。特定の一実施形態において、本発明のこの態様のポリペプチドは、(a)の少なくとも1つのB細胞エピトープを含む断片を含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号22、120、219、221、305、371、400、489、555、565、597、598および599からなる群より選択されるアミノ酸配列;(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。特定の一実施形態において、本発明のこの態様のポリペプチドは、(a)の少なくとも1つのB細胞エピトープを含む断片を含む。
【0016】
本発明のポリペプチドは、医薬において、および患者の免疫応答を高めるための医薬の製造において使用され得る。
【0017】
本発明はまた、薬学的に許容され得る担体と混合された本発明のポリペプチドを含む医薬組成物に関する。本発明は、さらに、薬学的に許容され得る担体と混合された本発明の2種類以上のポリペプチドを含む医薬組成物に関する。特定の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ワクチンアジュバントをさらに含む。
【0018】
本発明はさらに、(a)配列番号からなる群より選択されるアミノ酸配列22、120、219、221、305、371、400、489、555、565、597、598および599;(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含む1種類以上のポリペプチドを発現または過剰発現する1種類以上の外膜小胞(OMV)を含む免疫原性組成物に関する。特定の一実施形態において、本発明のこの態様の免疫原性組成物は、(a)の少なくとも1つのB細胞エピトープを含む断片を含む1種類以上のポリペプチドを含む。
【0019】
本発明はまた、患者に、本発明の医薬組成物または免疫原性組成物を投与する工程を含む、患者の免疫応答を高めるための方法に関する。特定の一実施形態において、免疫応答は、ExPEC感染に対して防御的である。
本発明のさらなる態様を以下に記載する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)配列番号
【化1】


からなる群より選択されるアミノ酸配列;(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列、を含むポリペプチド。
(項目2)
(a)配列番号22、120、219、221、305、371、400、489、555、565、597、598および599からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または
(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列、
を含むポリペプチド。
(項目3)
前記断片が、(a)の少なくとも1つのB細胞エピトープを含む、項目1または2に記載のポリペプチド。
(項目4)
医薬における使用のための項目1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(項目5)
薬学的に許容され得る担体と混合された、項目1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
(項目6)
薬学的に許容され得る担体と混合された2種類以上の項目1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
(項目7)
ワクチンアジュバントをさらに含む、項目5または6に記載の組成物。
(項目8)
(a)配列番号22、120、219、221、305、371、400、489、555、565、597、598および599からなる群より選択されるアミノ酸配列;
(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または
(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列、
を含む1種類以上のポリペプチドを発現または過剰発現する1種類以上の外膜小胞(OMV)を含む免疫原性組成物。
(項目9)
前記断片が、(a)の少なくとも1つのB細胞エピトープを含む、項目8に記載の免疫原性組成物。
(項目10)
患者の免疫応答を高めるための医薬の製造における項目1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド、または項目8もしくは9に記載の免疫原性組成物の使用。
(項目11)
患者に、項目5〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物または項目8もしくは9に記載の免疫原性組成物を投与する工程を含む、患者の免疫応答を高めるための方法。
(項目12)
前記免疫応答がExPEC感染に対して防御的である、項目10に記載の使用または項目11に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、熱不活化CFT073での免疫処置の後、CFT073での抗原刺激後のマウスの生存%を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、病原性大腸菌株に特異的な免疫原性組成物中に含め得る種々の遺伝子と同定した。該遺伝子はUPEC株由来であるが、非病原性菌株には存在せず、そのコードタンパク質は、自身を免疫系に利用可能にする細胞部位を有する。
【0022】
ポリペプチド
本発明は、実施例に開示したアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。これらのアミノ酸配列を、配列表に配列番号1〜596および597〜599として示す。配列番号1〜596の好ましいサブセットを表2、3および5に示す。
【0023】
本発明はまた、実施例に開示したアミノ酸配列と配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。具体的な配列に依存するが、配列同一性の程度は、好ましくは、50%より大きい(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)。これらのポリペプチドには、ホモログ、オルソログ、対立遺伝子バリアントおよび変異型が含まれる。典型的には、2つのポリペプチド配列間の50%以上の同一性が、機能的等価性の表示とみなされる。ポリペプチド間の同一性は、好ましくは、ギャップ開始ペナルティ=12およびギャップ伸張ペナルティ=1のパラメータでアフィンギャップ検索を用い、MPSRCH プログラム(Oxford Molecular)において実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。
【0024】
これらのポリペプチドは、実施例の配列と比較したとき、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の同類アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸の関連する側鎖を有する別のものとの置換を含むものであり得る。遺伝子にコードされるアミノ酸は、一般的に、4つのファミリー:(1)酸性、すなわち、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩;(2)塩基性、すなわち、リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非電荷極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、場合によっては一緒に芳香族アミノ酸に分類される。一般に、これらのファミリー内での単一のアミノ酸の置換は、その生物学的活性に対して大きな効果はない。該ポリペプチドは、参照配列に対して1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)単一のアミノ酸の欠失を有するものであり得る。該ポリペプチドはまた、参照配列に対して1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)の挿入(例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸の各々)を含むものであり得る。
【0025】
好ましいポリペプチドとしては、脂質化された、外膜内に局在した、内膜内に局在した、またはペリプラズム内に局在したポリペプチドが挙げられる。特に好ましいポリペプチドは、これらのカテゴリーの1つより多くに分類されるもの、例えば、外膜内に局在した脂質化されたポリペプチドである。リポタンパク質は、シグナルペプチドの翻訳後プロセッシング後に脂質が共有結合するN末端システインを有するものであり得る。
【0026】
脂質化され得るポリペプチドは、配列番号:
【0027】
【化3】

【0028】
を含むものである。
【0029】
好ましいポリペプチドは表2、3および5に示したものであり、特に、表3に示したものである。
【0030】
本発明は、さらに、実施例に開示したアミノ酸配列の断片を含むポリペプチドを提供する。該断片は、該配列由来の少なくともn個の連続するアミノ酸を含むものであるのがよく、具体的な配列に依存するが、nは7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100またはそれ以上)である。該断片は、該配列の少なくとも1つのT細胞エピトープまたは、好ましくはB細胞エピトープを含むものであり得る。T−およびB−細胞エピトープは、実験的に(例えば、PEPSCAN[14,15]または同様の方法を用いて)同定され得るか、または予測され得る(例えば、Jameson−Wolf抗原性指数[16]、マトリックス系アプローチ[17]、TEPITOPE[18]、中性ネットワーク[19]、OptiMer & EpiMer[20,21]、ADEPT[22]、T部位[23]、親水性[24]、抗原性指数[25]または参考文献26に開示された方法などを用いて)。他の好ましい断片は、(a)本発明のポリペプチドのN末端シグナルペプチド、(b)該ポリペプチドであるが、そのN末端シグナルペプチドを含まないもの、(c)該ポリペプチドであるが、そのN末端アミノ酸残基を含まないものである。
【0031】
他の好ましい断片は、潜在的開始コドン(ATG、GTG、TTG)にコードされるアミノ酸で始まるものである。表示した開始コドンの下流の開始コドンにコードされるメチオニンで始まる断片は、本発明のポリペプチドである。
【0032】
他の好ましい断片は、本発明のポリペプチドと参考文献5、6、8、10および11のいずれかで同定されるポリペプチドに共通するものである。
【0033】
本発明のポリペプチドは、多くの様式で、例えば、化学合成(完全または一部)、プロテアーゼを用いた長鎖ポリペプチドの消化、RNAからの翻訳、細胞培養物(例えば、組換え発現による)からの精製によって、生物そのもの(例えば、細菌の培養後、または患者から直接)などから調製され得る。<40アミノ酸長のペプチドの作製のための好ましい方法はインビトロ化学合成を伴う[27,28]。tBocまたはFmoc[29]化学的性質に基づく方法などの固相ペプチド合成は、特に好ましい。酵素的合成[30]もまた、一部または全体において使用され得る。化学合成の代替法として、生物学的合成が使用され得、例えば、ポリペプチドは、翻訳によって生成され得る。これは、インビトロまたはインビボで行なわれ得る。生物学的方法は、一般に、L−アミノ酸を主体とするポリペプチドの作製に限定されるが、翻訳機構(例えば、アミノアシルtRNA分子)の操作を用いて、D−アミノ酸(または他の非天然アミノ酸、例えば、ヨードチロシンまたはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニンなど)の導入を可能にし得る[31]。しかしながら、D−アミノ酸を含める場合は、化学合成を使用することが好ましい。本発明のポリペプチドは、共有結合性の修飾をC末端および/またはN末端に有するものであり得る。
【0034】
本発明のポリペプチドは、種々の形態(例えば、天然、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化され、非脂質化され、リン酸化、非リン酸化、ミリストイル化、非ミリストイル化、単量体型、多量体型、微粒子状、変性型など)をとり得る。
【0035】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、精製された、または実質的に精製された形態で、すなわち、実質的に他のポリペプチドを含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)、特に、他のExPECまたは宿主細胞ポリペプチドを含まない形態で提供され、一般的に、少なくとも約50%純粋(重量基準で)、通常、少なくとも約90%純粋すなわち、組成物の約50%未満、より好ましくは、約10%未満(例えば、5%以下)が、他の発現ポリペプチドで構成されている。本発明のポリペプチドは、好ましくは、ExPECポリペプチドである。
【0036】
本発明のポリペプチドは、固相に結合させてもよい。本発明のポリペプチドは、検出可能な標識(例えば、放射能もしくは蛍光標識またはビオチン標識)を含むものであってもよい。
【0037】
用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸ポリマーをいう。該ポリマーは線状または分枝鎖であり得、修飾アミノ酸を含むものであってもよく、非アミノ酸によって分断されたものであってもよい。該用語はまた、天然で、または介在;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾(例えば、標識との成分コンジュゲーションなど)によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。また、該定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類縁体(例えば、非天然アミノ酸などが挙げられる)を含有するポリペプチド、ならびに当該技術分野で知られた他の修飾も包含される。ポリペプチドは、単鎖または会合鎖として存在し得る。本発明のポリペプチドは、天然状態でグリコシル化されたもの、または非天然状態でグリコシル化されたもの(すなわち、該ポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドに見られるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する)であり得る。
【0038】
本発明のポリペプチドは、少なくとも40アミノ酸長(例えば、少なくとも40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、350、400、450、500またはそれ以上)であり得る。本発明のポリペプチドは、500アミノ酸以下(例えば、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、350、400または450アミノ酸以下)であり得る。
【0039】
本発明は、配列−X−Y−または−Y−X−(式中、−X−は上記規定のアミノ酸配列である、および−Y−は上記規定の配列ではない)を含むポリペプチドを提供する、すなわち、本発明は融合タンパク質を提供する。ポリペプチドコード配列のN末端コドンがATGでない場合、該コドンはMet(コドンが開始コドンとして翻訳される場合に存在する)ではなく、該コドンの標準アミノ酸として翻訳される。
【0040】
本発明は、本発明の宿主細胞を、ポリペプチド発現を誘導する条件下で培養する工程を含む、本発明のポリペプチドの作製方法を提供する。
【0041】
本発明は、ポリペプチドの一部または全体が化学的手段を用いて合成される本発明のポリペプチドの作製方法を提供する。
【0042】
本発明は、本発明の2種類以上のポリペプチドを含む組成物を提供する。
【0043】
本発明はまた、式NH−A−[−X−L−]−B−COOH(式中、Xは上記の本発明のポリペプチドである、Lは任意選択のリンカーアミノ酸配列である、Aは任意選択のN末端アミノ酸配列である、Bは任意選択のC末端アミノ酸配列である、およびnは1より大きい整数である)で表されるハイブリッドポリペプチドを提供する。nの値は2〜xの間であり、xの値は、典型的には、3、4、5、6、7、8、9または10である。好ましくは、nは2、3または4である;より好ましくは2または3である;最も好ましくは、n=2である。各nの場合では、−X−は同じであっても異なっていてもよい。[−X−L−]の各nの場合では、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在しても存在しなくてもよい。例えば、n=2の場合、ハイブリッドは、NH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列(1つまたは複数)−L−は、典型的には、短鎖(例えば、20個以下、すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1のアミノ酸)である。例としては、クローニングを容易にする短鎖ペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわち、Gly(式中、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)、およびヒスチジンタグ(すなわち、His、式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の好適なリンカーアミノ酸配列は、当業者に自明である。−A−および−B−は任意選択の配列であって、典型的には、短鎖(例えば、40個以下、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1のアミノ酸)である。例としては、ポリペプチド輸送を指令するリーダー配列、またはクローニングもしくは精製を容易にする短鎖ペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグすなわち、His、式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の好適なN末端およびC末端アミノ酸配列は、当業者に自明である。
【0044】
種々の試験が、本発明のポリペプチドのインビボ免疫原性を評価するために使用され得る。例えば、該ポリペプチドは、組換えにより発現され得、患者に血清をイムノブロットによってスクリーニングするために使用され得る。ポリペプチドと患者の血清間の陽性反応は、患者が、対象のタンパク質に対して以前に免疫応答を表すことがあることを示す。すなわち、該タンパク質は免疫原である。この方法はまた、免疫優性タンパク質を同定するためにも使用され得る。
【0045】
抗体
本発明は、本発明のポリペプチドに結合する抗体を提供する。これは、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、任意の適当な手段(例えば、組換え発現)によって作製され得る。ヒト免疫系との適合性を増大させるため、該抗体をキメラまたはヒト化したものにしてもよく[例えば、参考文献32および33]、または完全ヒト抗体を使用してもよい。該抗体は、検出可能な標識(例えば、診断用アッセイのため)を含むものであり得る。本発明の抗体は、固相に結合させてもよい。本発明の抗体は、好ましくは中和抗体である。
【0046】
モノクローナル抗体は、これが使用される個々のポリペプチドの同定および精製に特に有用である。本発明のモノクローナル抗体はまた、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)などにおける試薬として使用され得る。これらの適用において、該抗体は、解析により検出可能な試薬、例えば、放射性同位体、蛍光分子または酵素などで標識され得る。上記の方法によって作製されるモノクローナル抗体はまた、本発明のポリペプチドの分子の同定およびキャラクタライゼーション(エピトープマッピング)に使用され得る。
【0047】
本発明の抗体は、好ましくは、大腸菌のExPEC株に特異的である、すなわち、他の細菌と比べて(例えば、非ExPEC大腸菌と比べて、および非大腸菌細菌と比べて)ExPEC大腸菌に優先的に結合する。より好ましくは、該抗体は、UPEC株に特異的である、すなわち、他のExPEC大腸菌などの他の細菌と比べてUPEC細菌優先的に結合する。
【0048】
本発明の抗体は、好ましくは、精製された、または実質的に精製された形態で提供される。典型的には、該抗体は、実質的に他のポリペプチドを含まない、例えば、90%未満(重量基準で)、通常60%未満、より通常では50%未満が他のポリペプチドで構成される組成物中に存在する。
【0049】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG、IgM すなわち、α、γまたはμ重鎖)であり得るが、一般的にはIgGである。IgGアイソタイプの中で、該抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスであり得る。本発明の抗体は、κまたはλ軽鎖を有するものであってもよい。
【0050】
本発明の抗体は、種々の形態、例えば、完全抗体、抗体断片(F(ab’)およびF(ab)断片など)、Fv断片(非共有結合ヘテロ二量体)、単鎖抗体(単鎖Fv分子(scFv)など)、ミニボディ、オリゴボディなどを採用し得る。用語「抗体」は、なんら特定の起源を示すものではなく、ファージディスプレイなどの非慣用的プロセスにより得られる抗体を含む。
【0051】
本発明は、(a)本発明の抗体を生物学的試料と、 抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;および(b)前記複合体を検出する工程を含む、本発明のポリペプチドの検出方法を提供する。
【0052】
本発明は、(a)本発明のポリペプチドを生物学的試料(例えば、血液または血清試料)抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;および(b)前記複合体を検出する工程を含む、本発明の抗体の検出方法を提供する。
【0053】
好ましい抗体は本発明のポリペプチドに、当該技術分野で知られた抗体よりも実質的に大きい親和性で結合する。好ましくは、親和性は、当該技術分野で知られた抗体よりも、少なくとも1.5倍、2倍、5倍 10倍、100倍、10倍、10倍、10倍、10倍など強力である。
【0054】
核酸
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本発明はまた、かかるヌクレオチド配列と配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。配列間の同一性は、好ましくは、上記のSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。
【0055】
本発明はまた、これらの核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。ハイブリダイゼーション反応は、種々の「ストリンジェンシー」条件下で行なわれ得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増大させる条件は、当該技術分野において広く知られ、公開されている[例えば、参考文献34の第7.52頁]。関連する条件の例としては(ストリンジェンシーが増大する順に)、25℃、37℃、50C、55℃および68℃のインキュベーション温度;10×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC(ここで、SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸バッファー)のバッファー濃度および他のバッファー系を用いたその同等濃度;0%、25%、50%および75%のホルムアミド濃度;5分〜24時間のインキュベーション時間;1、2回またはそれ以上の洗浄工程;1、2または15分間の洗浄インキュベーション時間;ならびに6×SSC、1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水の洗浄溶液が挙げられる。ハイブリダイゼーション手法およびその最適化は、当該技術分野で知られている[例えば、参考文献34〜37などを参照のこと]。
【0056】
ある一部の実施形態において、本発明の核酸は標的に、低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする;他の実施形態では、中程度ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする;好ましい実施形態では、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的な組は、50℃および10×SSCである。中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的な組は、55℃および1×SSCである。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的な組は、68℃および0.1×SSCである。
【0057】
これらの配列の断片を含む核酸もまた提供される。これは、該配列由来の少なくともn個の連続するヌクレオチドを含むものであるのがよく、具体的な配列に依存するが、nは、10またはそれ以上(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200またはそれ以上)である。好ましい断片は、本発明の核酸と参考文献5、6、8、10および11のいずれかで同定される核酸配列に共通するものである。
【0058】
本発明は、式5’−X−Y−Z−3’の核酸を提供し、式中、−X−は、x個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である;−Z−は、z個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である;−Y−は、(a)配列番号:1〜596の1つをコードする核酸配列の断片、(b)配列番号:597〜599の1つをコードする核酸配列の断片、または(c)(a)もしくは(b)の相補配列のいずれかからなるヌクレオチド配列である;および前記核酸5’−X−Y−Z−3’は、(i)配列番号:1〜596の1つをコードするか、もしくは配列番号:597〜599の1つをコードするいずれかの核酸配列の断片でもなく、(ii)(i)の相補配列でもない。−X−および/または−Z−部分は、プロモーター配列(もしくはその相補配列)を含み得る。
【0059】
本発明は、これらの配列に相補的な配列(例えば、アンチセンスもしくはプローブ検索用、またはプライマーとしての使用のため)を含む核酸を含む。
【0060】
本発明の核酸は、ハイブリダイゼーション反応(例えば、ノーザンもしくはサザンブロット、または核酸マイクロアレイもしくは「遺伝子チップ」)および増幅反応(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)ならびに他の核酸手法において使用され得る。
【0061】
本発明による核酸は、種々の形態(例えば、単鎖、二本鎖、ベクター、プライマー、プローブ、標識されたものなど)をとり得る。本発明の核酸は環状または分枝鎖であり得るが、一般的には線状である。特に指定または必要とされない限り、核酸を用いる本発明の任意の実施形態では、二本鎖形態および該二本鎖形態を構成する2つの相補的単鎖形態の各々の両方が使用され得る。プライマーおよびプローブは、一般的に単鎖であり、アンチセンス核酸である。
【0062】
本発明の核酸は、好ましくは、精製された、または実質的に精製された形態で提供される、すなわち、実質的に他の核酸を含まず(例えば、天然に存在する核酸を含まない)、特に、他のExPECまたは宿主細胞核酸を含まず、一般的に、少なくとも約50%純粋(重量基準で)、通常、少なくとも約90%純粋である。本発明の核酸は、好ましくはExPEC核酸である。
【0063】
本発明の核酸は、多くの様式で、例えば、全体または一部を化学合成(例えば、DNAのホスホロアミダイト合成)によって、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を用いて長鎖の核酸を消化することによって、短鎖の核酸またはヌクレオチドを連結する(例えば、リガーゼまたはポリメラーゼを使用)ことによって、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーなどから調製され得る。
【0064】
本発明の核酸は、固相(例えば、ビーズ、プレート、フィルター、膜、スライド、マイクロアレイ支持体、樹脂など)結合させ得る。本発明の核酸は、例えば、放射能もしくは蛍光標識またはビオチン標識で標識し得る。これは、核酸が検出手法において使用される場合、例えば、核酸がプライマーまたはプローブである場合、特に有用である。
【0065】
用語「核酸」は、一般的な意味において、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含み、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはこれらの類縁体が含まれる。DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドも含まれる。また、DNAまたはRNAの類縁体、例えば、修飾された主鎖(例えば、ペプチド核酸(PNA)もしくはホスホロチオエート)または修飾された塩基を含有するものなども含まれる。したがって、本発明は、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、DNA、cDNA、組換え核酸、分枝鎖核酸、プラスミド、ベクター、プローブ、プライマーなどを含む。本発明の核酸がRNAの形態を採用する場合、5’キャップを有していても、そうでなくでもよい。
【0066】
本発明の核酸は配列を含むものであるが、これはまた、非ExPEC配列(例えば、上記の式5’−X−Y−Z−3’の核酸において)を含んでいてもよい。これは、プライマーに特に有用であり、従って、これは、核酸標的に相補的な第1の配列および該核酸標的に相補的でない第2の配列を含むものであり得る。プライマーにおける任意のかかる非相補配列は、好ましくは、相補配列に対して5’である。典型的な非相補配列は、制限部位またはプロモーター配列を含む。
【0067】
本発明の核酸は、多くの様式で、例えば、化学合成(少なくとも一部分)によって、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を用いて長鎖の核酸を消化することによって、短鎖の核酸を連結する(例えば、リガーゼまたはポリメラーゼを使用)ことによって、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーなどから調製され得る。
【0068】
本発明の核酸は、ベクターの一部分、すなわち、1種類以上の細胞型の形質導入/トランスフェクションのために設計された核酸構築物の一部分であり得る。ベクターは、例えば、挿入されたヌクレオチドの単離、増殖および複製用に設計される「クローニングベクター」、宿主細胞内でのヌクレオチド配列の発現用に設計される「発現ベクター」、組換えウイルスまたはウイルス様粒子の生成もたらすために設計された「ウイルスベクター」、または1つより多くの型のベクターの属性を構成する「シャトルベクター」であり得る。好ましいベクターはプラスミドである。「宿主細胞」としては、外来核酸のレシピエントであり得る、または外レシピエントであった個々の細胞または細胞培養物が挙げられる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、該子孫は、自然的、偶発的または意図的な変異および/または変化により、必ずしも起源の親細胞と完全に同一(形態またはまたは全DNA相補鎖において)でなくてもよい。宿主細胞には、本発明の核酸を用いてインビボまたはインビトロでトランスフェクトまたは感染させた細胞が含まれる。
【0069】
核酸がDNAである場合、RNA配列の「U」はDNAの「T」で置き換えられることは認識されよう。同様に、核酸がRNAである場合、DNA配列の「T」はRNAの「U」で置き換えられることは認識されよう。
【0070】
用語「相補鎖」または「相補的」は、核酸に関して用いる場合、ワトソン−クリック塩基対合をいう。したがって、Cの相補鎖はGであり、Gの相補鎖はCであり、Aの相補鎖はT(またはU)であり、T(またはU)の相補鎖はAである。また、例えば、相補的なピリミジン(CまたはT)に対してI(プリンイノシン)などの塩基を使用することが可能である。該用語はまた方向を示し、5’−ACAGT−3’の相補鎖は、5’−TGTCA−3’ではなく5’−ACTGT−3’である。
【0071】
本発明の核酸は、例えば、ポリペプチドを産生させるため;生物学的試料中の核酸の検出のためのハイブリダイゼーションプローブとして;さらなる核酸コピーを生成させるため;リボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するため;単鎖DNAプライマーもしくはプローブとして;または三重鎖形成性オリゴヌクレオチドとして使用され得る。
【0072】
本発明は、核酸の一部または全体が化学的手段を用いて合成される本発明の核酸の作製方法を提供する。
【0073】
本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)およびかかるベクターで形質転換され宿主細胞を提供する。
【0074】
本発明はまた、ExPEC核酸配列内に含まれる鋳型配列の増幅のためのプライマー(例えば、PCRプライマー)を備えるキットを提供し、該キットは第1のプライマーおよび第2のプライマーを備え、ここで、第1のプライマーは前記鋳型配列に実質的に相補的であり、第2のプライマーは前記鋳型配列相補鎖に実質的に相補的であり、前記プライマーの実質的に相補性を有する部分は、増幅される鋳型配列の末端を規定する。第1のプライマーおよび/または第2のプライマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含んでいてもよい。
【0075】
本発明はまた、単鎖または二本鎖核酸(またはその混合物)内に含まれるExPEC鋳型核酸配列の増幅を可能にする第1および第2の単鎖オリゴヌクレオチドを備えるキットであって、(a)第1のオリゴヌクレオチドは、前記鋳型核酸配列に実質的に相補的なプライマー配列を含む;(b)第2のオリゴヌクレオチドは、前記鋳型核酸配列の相補鎖に実質的に相補的なプライマー配列を含む;(c)第1のオリゴヌクレオチドおよび/または第2のオリゴヌクレオチドは、前記鋳型核酸に相補的でない配列を含む;ならびに(d)前記プライマー配列は、増幅される鋳型配列の末端を規定するキットを提供する。特徴(c)の非相補配列(1つまたは複数)は、好ましくは、プライマー配列の上流(すなわち、5’側)である。これらの(c)配列の一方または両方は、制限部位[例えば、参考文献38]またはプロモーター配列[例えば、39]を含み得る。第1のオリゴヌクレオチドおよび/または第2のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含むものであってもよい。
【0076】
本発明は、(a)本発明による核酸プローブを生物学的試料と、デュプレックスを形成するハイブリダイズ条件下で接触させる工程;および(b)前記デュプレックスを検出する工程を含む、本発明の核酸の検出方法を提供する。
【0077】
本発明は、本発明による核酸を生物学的試料とハイブリダイズ条件下で接触させる工程を含む、生物学的試料(例えば、血液)中での検出方法を提供する。該方法は、核酸増幅(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)またはハイブリダイゼーション(例えば、マイクロアレイ、ブロット、溶液中でのプローブとのハイブリダイゼーションなど)を伴うものであり得る。臨床試料中でのExPECのPCR検出が報告されている[例えば、参考文献40を参照]。核酸に基づく臨床アッセイは、参考文献41に一般に記載されている。
【0078】
本発明は、核酸プライマーの伸長によって調製される標的配列の断片の調製方法を提供する。標的配列および/またはプライマーは本発明の核酸である。プライマー伸長反応は、核酸増幅(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)を伴うものであり得る。
【0079】
本発明による核酸増幅は、定量的および/またはリアルタイムであり得る。
【0080】
本発明のある特定の実施形態では、核酸は、好ましくは、少なくとも7ヌクレオチド長(例えば、
【0081】
【化4】

【0082】
ヌクレオチド長またはそれ以上)である。本発明のある特定の実施形態では、核酸は、好ましくは、最大500ヌクレオチド長(例えば、
【0083】
【化5】

【0084】
ヌクレオチド長またはそれ以下)である。
【0085】
本発明のプライマーおよびプローブ、ならびにハイブリダイゼーションに用いられる他の核酸は、好ましくは、10〜30ヌクレオチド長(例えば、
【0086】
【化6】

【0087】
または30ヌクレオチド)である。
【0088】
小胞
参考文献42には、mltA(ムレイン溶解性トランスグリコシラーゼ)または大腸菌Tol−Pal複合体の1種類以上の成分[43]、例えば、tolA、tolQ、tolB、palおよび/またはtolRなどのノックアウトによる尿路病原性(UPEC)菌株からの小胞の調製が記載されている。これらの小胞は、小胞の表面上の防御的抗原の量および/または免疫利用可能性(immunoaccessibility)を増大させるため、細菌の染色体に対して1つ以上のさらなる遺伝子変更を行なうことにより、またはエピソーム性エレメント(例えば、発現ベクター)の挿入により改善され得る。
【0089】
かかる改善を得る方法の一例は、本発明のポリペプチドの発現を上方調節することである。標的タンパク質の発現を増大させるための多くの異なる遺伝子ストラテジーが、当該技術分野でよく知られており、大きく2つのカテゴリーに分類され得、一方は、内在遺伝子の発現を増大させるための染色体の修飾(例えば、野生型プロモーターのより強力なプロモーターとの置換え、天然リプレッサー遺伝子の不活性化など)に依存するものであり、他方は、エピソーム性エレメント(例えば、多コピー数のプラスミド、改変された標的遺伝子を保有するベクターなど)または染色体内への外来遺伝子の組込みによる組換え発現に基づくものである。これらのアプローチの各々の実際の例は、参考文献44〜50をみるとよい。
【0090】
小胞の免疫原性および選択性を増大させる別の様式は、免疫優性の非防御的抗原の発現を下方調節すること、または片利共生菌株に見られるタンパク質に相同なタンパク質を下方調節することである。さらなる改善は、LPSのリピドA部分の無毒化によって達成され得る。以前に、改善された小胞を他のグラム陰性病原体から作製するための同様の変更が報告されている(例えば、参考文献51および52を参照)。
【0091】
上記のすべてのストラテジーは単独または組合せのいずれかで、免疫原性組成物における使用のための改善された小胞を得るために使用され得る。本発明は、mltAおよび/またはそのTol−Pal複合体の成分のノックアウト、ならびに(i)本発明のポリペプチドをコードし、該ポリペプチドをコードする遺伝子と天然状態で関連しているプロモーターよりも高い発現レベルの該ポリペプチドをもたらすプロモーターの制御下にある染色体遺伝子;(ii)本発明のポリペプチドをコードする自己複製染色体外エレメント;および/または(iii)野生型LPSと比べて大腸菌LPSのリピドA部分の毒性を低減させる遺伝子修飾の1つ以上を有する病原性大腸菌細菌(特に、UPEC)を提供する。
【0092】
本発明はまた、かかる細菌培養することにより得られ得る小胞(例えば、細菌の培養中に培養培地中に放出される小胞など)を提供する。
【0093】
医薬組成物
本発明は、(a)本発明のポリペプチド、抗体、小胞および/または核酸;ならびに(b)薬学的に許容され得る担体を含む組成物を提供する。このような組成物は、例えば、免疫原性組成物、診断用試薬またはワクチンとして好適であり得る。本発明によるワクチンは、予防用(すなわち、感染を予防するため)または治療用(すなわち、感染を処置するため)であり得るが、典型的には、予防用である。
【0094】
特定の態様において、本発明は、1種類以上の本発明のポリペプチドを発現または過剰発現する1種類以上の外膜小胞(OMV)を含む免疫原性組成物を提供する。特定の一実施形態において、本発明は、(a)配列番号22、120、219、221、305、371、400、489、555、565、597、598および599からなる群より選択されるアミノ酸配列;(b)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または(d)(a)のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、(a)のアミノ酸配列由来の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含む1種類以上のポリペプチドを発現または過剰発現する1種類以上のOMVを含む免疫原性組成物を提供する。さらなる実施形態において、免疫原性組成物は、配列番号22、120、219、221、305、371、400、489、555、565、597、598および599からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも1つのB細胞エピトープを含むポリペプチドを含む。
【0095】
「薬学的に許容され得る担体」としては、それ自体は、該組成物を受ける個体に有害な抗体の生成を誘発しない任意の担体が挙げられる。好適な担体は、典型的には、大きな低速で代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース、トレハロース、ラクトース、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)などである。かかる担体は、当業者によく知られている。ワクチンはまた、水、生理食塩水、グリセロールなどの希釈剤を含有するものであり得る。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などを存在させてもよい。滅菌されたパイロジェンフリー、リン酸緩衝生理食塩水は典型的な担体である。薬学的に許容され得る賦形剤のさらなる論考は、参考文献296にて得られ得る。
【0096】
本発明の組成物は、特に、反復投与形式でパッケージングされる場合は、抗菌薬を含むものであり得る。
【0097】
本発明の組成物は、デタージェント、例えば、Tween 80などのTween(ポリソルベート)を含むものであってもよい。デタージェントは、一般的に、低レベル、例えば、<0.01%で存在させる。
【0098】
本発明の組成物は、等張性を与えるためのナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含むものであってもよい。10±2mg/ml NaClの濃度が典型的である。
【0099】
本発明の組成物は、一般的にバッファーを含む。リン酸バッファーが典型的である。
本発明の組成物は、特に、凍結乾燥される場合、または凍結乾燥された材料から再構成された材料を含む場合は、糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖(例えば、スクロースもしくはトレハロース)を、例えば15〜30mg/ml前後(例えば、25mg/ml)で含むものであり得る。凍結乾燥用の組成物のpHは、凍結乾燥前に6.1前後に調整され得る。
【0100】
本発明のポリペプチドは、他の免疫調節剤をともに投与され得る。特に、該組成物は、通常、ワクチンアジュバントを含む。アジュバントは、後にさらに記載するTH1アジュバントおよびTH2アジュバントからなる群の1種類以上から選択され得る。本発明の組成物に使用され得るアジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0101】
A. 無機質含有組成物
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した無機質含有組成物としては、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩類が挙げられる。本発明は、無機塩類、例えば、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩など[例えば、参考文献53の第8および9章を参照]、または異なる無機質化合物の混合物(例えば、リン酸塩と水酸化物アジュバントとの混合物、任意選択で、リン酸塩は過剰である)を含み、該化合物は、任意の適当な形態(例えば、ゲル、結晶質、非晶質など)をとり、該塩(1種または複数種)への吸着が好ましい。無機質含有組成物はまた、無機塩の粒子として製剤化され得る[54]。
【0102】
典型的なリン酸アルミニウムアジュバントは、非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、0.84〜0.92のPO/A1モル比を有し、0.6mg Al3+/mlで含まれる。低用量のリン酸アルミニウムによる吸着は、例えば、50〜100μg Al3+/コンジュゲート/用量が使用され得る。リン酸アルミニウムが使用され、抗原をアジュバントに吸着させないことが所望される場合、これは、遊離リン酸イオンを溶液中に含めること(例えば、リン酸バッファーの使用によって)により有利になる。
【0103】
リン酸アルミニウムの荷電ゼロ点(PZC)は、リン酸塩のヒドロキシルでの置換の程度に反比例し、この置換の程度は、沈殿による塩の調製に使用される反応体の反応条件および濃度に応じて異なり得る。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変更すること(より多くのリン酸塩=より多くの酸性PZC)、またはヒスチジンバッファーなどのバッファーを添加すること(PZCをより塩基性にする)により改変される。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは、一般的に、4.0〜7.0、より好ましくは5.0〜6.5、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0104】
本発明の組成物を調製するために使用されるアルミニウム塩の懸濁液は、バッファー(例えば、リン酸またはヒスチジンまたはTrisバッファー)を含有するものであり得るが、これは、常に必要であるわけではない。該懸濁液は、好ましくは滅菌され、パイロジェンフリーである。懸濁液は、例えば1.0〜20mM、好ましくは5〜15mM、より好ましくは約10mMの濃度で存在する遊離の水性リン酸イオンを含むものであり得る。該懸濁液はまた、塩化ナトリウムを含み得る。
【0105】
本発明では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの両方の混合物が使用され得る。この場合、水酸化物よりもリン酸アルミニウムが、例えば、少なくとも2:1、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比で多く存在し得る。
【0106】
アルミニウム塩は本発明のワクチンに、Al3+の用量が0.2〜1.0mg/用量となるように含め得る。
【0107】
B. 油状エマルジョン
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した油状エマルジョン組成物は、スクアレン−水エマルジョン、例えば、MF59(5%のスクアレン、0.5%のTween 80、0.5%のSpan 85、マイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤化)[参考文献53の第10章;また、参考文献55〜57、参考文献58の第12章も参照]などを含む。MF59は、FLUADTMインフルエンザウイルス三価サブユニットワクチンにおけるアジュバントとして使用される。該エマルジョンは、好都合には、クエン酸イオン、例えば、10mMクエン酸ナトリウムバッファーを含む。
【0108】
該組成物における使用のための特に好ましいアジュバントは、サブミクロン水中油型エマルジョンである。本明細書における使用に好ましいイサブミクロン水中油型エマルジョンは、任意選択で種々の量のMTP−PEを含有するスクアレン/水エマルジョン、例えば、4〜5%w/vスクアレン、0.25〜1.0%w/v Tween 80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)および/または0.25〜1.0% Span
85(トリオレイン酸ソルビタン)、ならびに任意選択でN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル(gluatminyl)−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリル(phosphophoryl)オキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含有するサブミクロン水中油型エマルジョンなどである。サブミクロン水中油型エマルジョン、その作製方法および該組成物における使用のためのムラミルペプチドなどの免疫賦活剤は、参考文献55および59〜60に詳細に記載されている。
【0109】
スクアレン、トコフェロールおよびTween 80のエマルジョンを使用してもよい。該エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水を含むものである得る。これはまた、Span 85(例えば、1%で)および/またはレシチンを含むものであり得る。このようなエマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTween 80を有するものであり得、スクアレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは、より安定なエマルジョンをもたらすため≦1である。かかるエマルジョンの一例は、Tween 80をPBSに溶解して2%溶液を得、次いで、この溶液の90mlを(5gのDL−α−トコフェロールと5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いで、混合物をマイクロフルイダイザーで処理することにより作製され得る。得られるエマルジョンは、例えば100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有するサブミクロン油滴を有するものであり得る。
【0110】
スクアレン、トコフェロールおよびTritonデタージェント(例えば、Triton X−100)のエマルジョンを使用してもよい。
【0111】
スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTM
L121」)のエマルジョンを使用してもよい。該エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)中にて製剤化され得る。このエマルジョンはムラミルジペプチド有用な送達媒体であり、「SAF−1」アジュバント[61](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)において、トレオニル−MDPとともに使用されている。これはまた、「AF」アジュバント[62](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)の場合のように、Thr−MDPなしで使用され得る。マイクロフルイダイザー処理が好ましい。
【0112】
完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。
【0113】
C. サポニン製剤[参考文献53の第22章]
サポニン製剤もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花にさえ見られる異種(heterologous)群のステロール配糖体およびトリテルペノイド配糖体である。バラ科キラヤ(Quillaia saponaria Molina)という樹木の樹皮から単離されたサポニンアジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(sarsaprilla)、Gypsophilla paniculata(brides veil)およびSaponaria officianalis(soap root)から市販品として入手され得る。サポニンアジュバント製剤としては、精製され製剤(例えば、QS21など)ならびに脂質製剤(例えば、ISCOMなど)が挙げられる。
【0114】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。これらの手法を用いて特別に精製された画分、例えば、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが同定されている。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の作製方法は、参考文献63に開示されている。サポニン製剤はまた、コレステロールなどのステロールを含むものであり得る[64]。
【0115】
サポニンとコレステロールの組合せが、免疫刺激複合体(ISCOM)[参考文献53の第23章]と呼ばれる特有の粒子を形成するために使用され得る。また、ISCOMは、典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質を含むものである。任意の既知のサポニンがISCOMに使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCの1つ以上を含むものである。ISCOMは、参考文献64〜66にさらに記載されている。任意選択で、ISCOMSは、さらなるデタージェント(1種類または複数種)を含まないものであってもよい[67]。
【0116】
サポニン系アジュバントの開発の概説は、参考文献68および69をみるとよい。
【0117】
D. ビロソームおよびウイルス様粒子
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLPs)もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般的に、任意選択でリン脂質と合わせた、または製剤化されたウイルス由来の1種類以上のタンパク質を含む。これらは、一般的に、非病原性で非複製性であり、一般的に、天然ウイルスのゲノムを全く含まない。ウイルス系タンパク質は、組換えにより産生されたもの、または完全体ウイルスから単離されたものであり得る。ビロソームまたはVLPにおける使用に適したこのようなウイルス系タンパク質としては、インフルエンザウイルス由来のタンパク質(例えば、HAまたはNAなど)、B型肝炎ウイルス由来(例えば、コアタンパク質またはキャプシドタンパク質など)、E型肝炎ウイルス由来、麻疹ウイルス由来、シンドビスウイルス由来、ロタウイルス由来、口蹄疫ウイルス由来、レトロウイルス由来、ノーウォークウイルス由来、ヒトパピローマウイルス由来、HIV由来、RNA−ファージ由来、Qβ−ファージ由来(例えば、外皮タンパク質など)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205 ファージ由来、およびTy由来(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)のタンパク質が挙げられる。VLPは、参考文献70〜75にさらに論考されている。ビロソームは、例えば、参考文献76にさらに論考されている。
【0118】
E. 細菌誘導体または微生物誘導体
本発明における使用に適したアジュバントとしては、細菌または微生物の誘導体、例えば、腸内細菌のリポ多糖(LPS)のの無毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体などが挙げられる。
【0119】
LPSの無毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAと4,5または6アシル化鎖とのの混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態は、参考文献77に開示されている。3dMPLのかかる「小粒子」は、0.22μm膜を通して滅菌濾過されるのに充分小さい[77]。他の無毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物、例えば、アミノアルキルグルコサミニドリン酸塩誘導体、例えば、RC−529などが挙げられる[78,79]。
【0120】
リピドA誘導体としては、OM−174などの大腸菌由来のリピドAの誘導体が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献80および81に記載されている。
【0121】
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシン連結された非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列)を含有するヌクレオチド配列が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0122】
CpGは、ヌクレオチド修飾/類縁体(例えば、ホスホロチオエート修飾など)を含むものであり得、二本鎖または単鎖であり得る。参考文献82、83および84には、可能な類縁体置換、例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンとの置換えが開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献85−90にさらに論考されている。
【0123】
CpG配列は、TLR9、例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなどに指向され得る[91]。CpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得るか(例えば、CpG−A ODNなど)、またはB 細胞応答の誘導により特異的であり得る(例えば、CpG−B ODNなど)。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献92〜94に論考されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0124】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識に利用可能となるように構築される。任意選択で、2つのCpG オリゴヌクレオチド配列を、その3’末端で結合し、「イムノマー(immunomer)」を形成させ得る。例えば、参考文献91および95〜97を参照のこと。
【0125】
他の免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、二本鎖RNA、またはパリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0126】
細菌のADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体は、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。好ましくは、該タンパク質は、大腸菌由来(大腸菌易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ毒素(「CT」)または百日咳毒素(「PT」)である。無毒化ADPリボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参考文献98に記載されており、非経口アジュバントとしての使用は参考文献99に記載されている。該毒素または類毒素は、好ましくは、AおよびB両方のサブユニットを含むホロ毒素の形態である。好ましくは、Aサブユニットは無毒化変異を含み、好ましくは、Bサブユニット変異されていない。好ましくは、該アジュバントは、無毒化LT変異型、例えば、LT−K63、LT−R72およびLT−G192などである。ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体、特に、LT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、参考文献100〜107をみるとよい。アミノ酸置換についての数値符号(numerical
reference)は、好ましくは、参考文献108に示されたADPリボシル化毒素のAおよびBサブユニットとのアラインメントに基づく。
【0127】
参考文献109に規定された式I、IIもしくはIIIの化合物またはその塩
【0128】
【化7】

【0129】
例えば、「ER 803058」、「ER 803732」、「ER 804053」、「ER 804058」、「ER 804059」、「ER 804442」、「ER 804680」、「ER 804764」、「ER 803022」または「ER 804057」、例えば、
【0130】
【化8】

【0131】
もまた、アジュバントとして使用され得る。
【0132】
F. ヒト免疫調節剤
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したヒト免疫調節剤としては、サイトカイン、例えば、インターロイキンなど(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[110]など)[111]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子ならびにマクロファージ炎症性タンパク質−1α(MIP−lα)およびMIP−1β[112]が挙げられる。
【0133】
G. 生体接着剤(bioadhesive)および粘膜接着剤(mucoadhesive)
生体接着剤および粘膜接着剤もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。好適な生体接着剤としては、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[113]または粘膜接着剤、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体などが挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る[114]。
【0134】
H. 微粒子
微粒子もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。生分解性で無毒性である材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)とポリ(ラクチド−コ−グリコリド)から形成される微粒子(すなわち、約100nm〜約150μmの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、最も好ましくは約500nm〜約10μmの直径の粒子)が好ましく、任意選択で、負電荷を有する表面(例えば、SDSで)または正電荷を有する表面(例えば、CTABなどのカチオン系デタージェントで)を有するように処理される。
【0135】
I. リポソーム(参考文献53の第13および14章)
アジュバントとしての使用に適したリポソーム製剤の例は、参考文献115〜117に記載されている。
【0136】
J. ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル製剤
本発明における使用に適したアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[118]。かかる製剤は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤を、オクトキシノール[119]ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルとの組合せで、またはエステル界面活性剤を少なくとも1つのさらなる非イオン系界面活性剤(例えば、オクトキシノールなど)[120]との組合せでさらに含む。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(oxytheylene)−8−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテルから選択される。
【0137】
K. ホスファゼン 例えば、PCPP
ホスファゼンアジュバントとしては、例えば、参考文献121および122に記載のようなポリ[ジ(カルボキシラートフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)が挙げられる。
【0138】
L. ムラミルペプチド
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0139】
M. イミダゾキノリン化合物.
イミダゾキノリンアジュバントとしては、Imiquimod(「R−837」)[123,124]、Resiquimod(「R−848」)[125]、およびこれらの類縁体;ならびにその塩(例えば、塩酸塩)が挙げられる。免疫刺激性イミダゾキノリンに関するさらなる詳細は、参考文献126〜130を見るとよい。
【0140】
N. チオセミカルバゾン化合物.
チオセミカルバゾン化合物、ならびに該化合物の製剤化、製造およびスクリーニング方法(すべて、本発明におけるアジュバントとしての使用に適する)の例としては、参考文献131に記載されたものが挙げられる。チオセミカルバゾンは、TΝF−αなどのサイトカインの産生ためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0141】
O. トリプタントリン化合物.
トリプタントリン化合物、ならびに該化合物の製剤化、製造およびスクリーニング方法(すべて、本発明におけるアジュバントとしての使用に適する)の例としては、参考文献132に記載されたものが挙げられる。トリプタントリン化合物は、TΝF−αなどのサイトカインの産生ためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0142】
P. ヌクレオシド類縁体
種々のヌクレオシド類縁体、例えば、(a)Isatorabine(AΝA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0143】
【化9】

【0144】
およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献133〜135に開示された化合物;(f)式:
【0145】
【化10】

【0146】
(式中:
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−NR、−OH、C1〜6アルコキシ、置換C1〜6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6〜10アリール、置換C6〜10アリール、C1〜6アルキルもしくは置換C1〜6アルキルである;
は、非存在であるか、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C6〜10アリール、置換C6〜10アリール、ヘテロシクリルもしくは置換ヘテロシクリルである;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−R、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキルであるか、もしくは一緒に結合してR4〜5のような5員環を形成する:
【0147】
【化11】

【0148】
(結合形成は、
【0149】
【化12】

【0150】
で示す結合においてなされる)
およびXは、各々独立して、N、C、OもしくはSである;
は、H、ハロ、−OH、C2〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、−OH、−NR、−(CH−O−R、−O−(C1〜6アルキル)、−S(O)もしくは−C(O)−Rである;
は、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリルもしくはR9aである、ここでR9aは:
【0151】
【化13】

【0152】
(結合形成は、
【0153】
【化14】

【0154】
で示す結合においてなされる)
である;
10およびR11は、各々独立して、H、ハロ、C1〜6アルコキシ、置換C1〜6アルコキシ、−NRもしくは−OHである;
各RおよびRは、独立して、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、−C(O)R、C6〜10アリールである;
各Rは、独立して、H、リン酸基、二リン酸基、三リン酸基、C1〜6アルキルもしくは置換C1〜6アルキルである;
各Rは、独立して、H、ハロ、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、置換C1〜6アルコキシ、−NH、−NH(C1〜6アルキル)、−NH(置換C1〜6アルキル)、−N(C1〜6アルキル)、−N(置換C1〜6アルキル)、C6〜10アリールもしくはヘテロシクリルである;
各Rは、独立して、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C6〜10アリール、置換C6〜10アリール、ヘテロシクリルもしくは置換ヘテロシクリルである;
各Rは、独立して、H、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、−C(O)R、リン酸基、二リン酸基、三リン酸基である;
各nは、独立して、0、1、2もしくは3である;
各pは、独立して、0、1もしくは2である)
を有する化合物;または(g)(a)〜(f)のいずれかの薬学的に許容され得る塩、(a)〜(f)のいずれかの互変異性体もしくは該互変異性体の薬学的に許容され得る塩が、アジュバントとして使用され得る。
【0155】
Q. リン酸基含有アクリル系主鎖に連結された脂質
リン酸基含有アクリル系主鎖に連結された脂質を含有するアジュバントとしては、TLR4アンタゴニストE5564[136,137]:
【0156】
【化15】

【0157】
が挙げられる。
【0158】
R. 小分子免疫増強物質(SMIP)
SMIPとしては:
・ N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ 1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−エニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ 1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
・ 1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
・ 2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノールである;
・ 酢酸2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エチル;
・ 4−アミノ−l −(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン;
・ N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・ 1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール;
・ 1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール;
・ N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
が挙げられる。
【0159】
S. プロテオソーム
アジュバントの一例は、第2のグラム陰性菌由来のリポ糖調製物と組合せて第1のグラム陰性菌から調製される外膜タンパク質プロテオソーム調製物であり、ここで、該外膜タンパク質プロテオソームと該リポ糖調製物は、安定な非共有結合性アジュバント複合体を形成する。かかる複合体としては、ナイセリア・メニンギティディス外膜およびリポ多糖類で構成された複合体「IVX−908」が挙げられる。これらは、インフルエンザワクチン用のアジュバントとして使用されている[138]。
【0160】
T. 他のアジュバント
免疫賦活剤として作用する他の物質は、参考文献53および58に開示されている。
さらに有用なアジュバント物質としては:
・ メチルイノシン5’−モノリンエステル(「MIMP」)[139]。
・ ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[140]、例えば、式:
【0161】
【化16】

【0162】
(式中、Rは、水素、直鎖または分枝鎖、非置換または置換、飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含む群から選択される)
を有するもの、または薬学的に許容され得るその塩もしくは誘導体。例としては、限定されないが、カジュアリン(casuarine)、カジュアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カジュアリン、7−エピ−カジュアリン、3,7−ジエピ−カジュアリンなどが挙げられる。
・ ガンマイヌリン[141]またはその誘導体、例えば、アルガムリン(algammulin)。
・ 参考文献142に開示された化合物。
・ 参考文献143に開示された化合物、例えば、アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドラ(hydra)イソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[144,145]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[146]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物およびベンズアゾール化合物[147]。
・ ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[148]。
・ カチオン脂質と(通常、中性の)共脂質(co−lipid)、例えば、アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパナミニウム(propanaminium)ブロミド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「VaxfectinTM」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパナミニウムブロミド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)などとの製剤が挙げられる。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(syn−9−テトラデセネイルオキシ)−1−プロパナミニウム塩を含有する製剤が好ましい[149]。
【0163】
本発明はまた、上記に特定したアジュバント1種類以上の組合せを含み得る。例えば、以下の組合せ:(1)サポニンと水中油型エマルジョン[150];(2)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[151];(3)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(任意選択で、+ステロール)[152];(5)3dMPLと、例えばQS21および/または水中油型エマルジョンとの組合せ[153];(6)10%のスクアラン、0.4%のTween 80TM、5%のpluronic−ブロックポリマーL121およびthr−MDPを含有するSAF、マイクロフルイダイザー処理してサブミクロンエマルジョンにしたもの、またはボルテックスして大粒径エマルジョンを作製したもののいずれか(7)。2%のスクアレン、0.2%のTween 80ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、ジミコール酸トレハロース(TDM)および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)からなる群由来の1種類以上の細菌の細胞壁成分を含有するRibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem);(8)1種類以上の無機塩類(例えば、アルミニウム塩など)+LPSの無毒性誘導体(例えば、3dMPLなど);ならびに(9)1種類以上の無機塩類(例えば、アルミニウム塩など)+免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)が、本発明におけるアジュバント組成物として使用され得る。
【0164】
本発明の組成物は、好ましくは、尿路病原性感染に有効に対処するために、細胞媒介性免疫応答ならびに体液性免疫応答の両方を惹起する。この免疫応答は、好ましくは、長期持続性(例えば、中和)抗体およびUPEC関連抗原に曝露されると速やかに応答し得る細胞媒介性免疫を誘発する。
【0165】
一般的に、2つの型のT細胞、CD4およびCD8細胞が細胞媒介性免疫および体液性免疫を開始および/または増強するのに必要であると考えられている。CD8 T細胞はCD8コレセプターを発現し得、一般に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)とよばれる。CD8 T細胞は、MHCクラスI分子上に提示された抗原を認識(recognized)するか、またはこれと相互作用することができる。CD4 T細胞はCD4コレセプターを発現し得、一般に、Tヘルパー細胞とよばれる。CD4 T細胞は、MHCクラスII分子に結合された抗原性ペプチドを認識することができる。MHCクラスII分子と相互作用すると、CD4細胞は、サイトカインなどの因子を分泌し得る。このような分泌されたサイトカインは、B細胞、細胞傷害性T細胞、マクロファージ、および免疫応答を増強する他の細胞を活性化し得る。ヘルパーT細胞またはCD4細胞は、機能的に異なる2つのサブセット:TH1表現型およびTH2表現型にさらに分けることができ、これらは、そのサイトカインおよびエフェクター機能において異なる。
【0166】
活性化されたTH1細胞は、細胞性免疫を増強し(例えば、抗原特異的CTL産生の増大)、したがって、細胞内感染における応答において特に重要である。活性化されたTH1細胞は、IL−2、IFN−γおよびTNF−βの1種類以上を分泌し得る。TH1免疫応答は、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞およびCD8細胞傷害性T細胞(CTL)が活性化されることにより、局所炎症性反応をもたらし得る。TH1免疫応答はまた、IL−12によってB細胞およびT細胞の成長が刺激されることにより、免疫応答を拡張する機能を果たし得る。TH1に刺激されたB細胞は、IgG2aを分泌し得る。
【0167】
活性化されたTH2細胞は、抗体産生を増強し、したがって、細胞外感染における応答において特に重要である。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10の1種類以上分泌し得る。TH2免疫応答は、IgG1、IgE、IgAおよび記憶B細胞の産生をもたらし、将来的な防御をもたらし得る。
【0168】
免疫応答の増強としては、TH1免疫応答の増強およびTH2免疫応答の1つ以上が挙げられ得る。TH1免疫応答の増強としては、CTLの増加、TH1免疫応答と関連する1種類以上のサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γおよびTNF−β)の増加、活性化されたマクロファージの増加、NK活性の増大、またはIgG2a産生の増大の1つ以上が挙げられ得る。好ましくは、TH1免疫応答の増大としては、IgG2a産生の増大が挙げられる。TH2免疫応答の増強としては、TH2免疫応答と関連する1種類以上のサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10)の増大、またはIgG1、IgE、IgAおよび記憶B細胞産生の増大の1つ以上が挙げられ得る。好ましくは、TH2免疫応答の増大としては、IgG1産生の増大が挙げられる。
【0169】
TH1免疫応答は、TH1アジュバントを用いて惹起され得る。TH1アジュバントは、一般的に、アジュバントなしの抗原の免疫処置に比べて、IgG2a産生のレベルの増大を誘発する。本発明における使用に適したTH1アジュバントとしては、例えば、サポニン製剤、ビロソームおよびウイルス様粒子、腸内細菌のリポ多糖(LPS)の無毒性誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチドが挙げられ得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチド、例えば、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドなどは、本発明における使用に好ましいTH1アジュバントである。
【0170】
TH2免疫応答は、TH2アジュバントを用いて惹起され得る。TH2アジュバントは、一般的に、アジュバントなしの抗原の免疫処置に比べて、IgG1産生のレベルの増大を誘発する。本発明における使用に適したTH2アジュバントとしては、例えば、無機質含有組成物、油状エマルジョンならびにADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体が挙げられる。アルミニウム塩などの無機質含有組成物は、本発明における使用に好ましいTH2アジュバントである。
【0171】
好ましくは、本発明は、TH1アジュバントとTH2アジュバントの組合せを含む組成物含む。好ましくは、かかる組成物は、TH1の増強およびTH2応答の増強、すなわち、アジュバントなしの免疫処置と比べてIgG1の産生およびIgG2a産生の両方の増大を誘発する。さらにより好ましくは、TH1およびTH2アジュバントの組合せを含む組成物は、単一のアジュバントを用いた免疫処置と比べて(すなわち、TH1アジュバント単独を用いた免疫処置またはTH2アジュバント単独を用いた免疫処置と比べて)TH1の増加および/またはTH2免疫応答の増大を誘発する。
【0172】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答は、TH1応答の増強およびTH2応答の増強の一方または両方をもたらす。
【0173】
免疫応答の増強は、全身性免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答は、全身性免疫応答のの増強および粘膜免疫応答の増強の一方または両方をもたらす。好ましくは、粘膜免疫応答はTH2免疫応答である。好ましくは、粘膜免疫応答は、IgAの産生の増大を含む。
【0174】
水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムアジュバントの使用は、特に好ましく、抗原は、一般的に、これらの塩に吸着させる。リン酸カルシウムは別の好ましいアジュバントである。
【0175】
本発明の組成物のpHは、好ましくは6〜8、好ましくは約7である。安定なpHは、バッファーの使用によって維持され得る。組成物が水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジンバッファー[154]を用いることが好ましい。該組成物は、滅菌された、および/またはパイロジェンフリーであり得る。本発明の組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。
【0176】
該組成物は、バイアルにて提示され得るか、または充填済シリンジにて提示され得る。シリンジは、針が設けられたものであっても、そうでなくてもよい。シリンジは、単回用量の該組成物を含むものであるが、バイアルは、単回用量または反復用量を含むものであり得る。注射用組成物は、通常、液状の溶液または懸濁液である。あるいはまた、該組成物は、注射前に液状ビヒクル中で溶液または懸濁液にするための固体形態(例えば、凍結乾燥)にて提示され得る。
【0177】
本発明の組成物は、単位投与形態または反復形態にパッケージングされたものであり得る。反復投与形態には、バイアルが予め充填されたシリンジよりも好ましい。有効投薬用量は、常套的に確立され得るが、注射用組成物の典型的なヒト用量は0.5mlの容量を有する。
【0178】
本発明の組成物が使用前に即時調製され、(例えば、成分が凍結乾燥された形態で提示される)、キットとして提示される場合、キットは、2つのバイアルを含むものであり得るか、または1つの充填済シリンジおよび1つのバイアルを含む(シリンジの内容物は、注射前にバイアルの内容物を再活性化するために使用される)ものであり得る。
【0179】
したがって、本発明は、第1の成分および第2の成分を備えるキットであって、第1の成分が、1種類以上の本発明のポリペプチド、抗体、小胞および/または核酸を含み、第2の成分が、以下:患者への組成物の投与のための使用説明書、シリンジまたは他の送達デバイス、アジュバントおよび/または薬学的に許容され得る配合用溶液の1つ以上を含むキットを提供する。
【0180】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物が予め充填された送達デバイス(例えば、シリンジ)を提供する。
【0181】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原(1種類または複数種)、ならびに、必要に応じて任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」により、単回用量または一連の量の一部としてのいずれかでの個体への該量の投与が、処置または予防に有効であることが意図される。この量は、処置対象の個体の健康状態および体調、処置対象の個体の年齢、分類学上の群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの配合、処置する医師による病状の評価、ならびに他の関連要素に応じて異なる。該量は、常套的な試行により決定され得る比較的広い範囲に含まれ、各髄膜炎菌糖抗原/用量の典型的な量はlμg〜10mg/抗原であることが期待される。
【0182】
医薬的使用
本発明はまた、患者に、治療有効量の本発明の組成物投与することを含む、患者の処置方法を提供する。患者は、疾患自体のリスクがあり得るか、または妊娠女性であり得る(「母体免疫処置」[155])のいずれかである。
【0183】
本発明は、医薬(例えば、免疫原性組成物もしくはワクチンとして)または診断用試薬としての使用のための本発明の核酸、ポリペプチド、小胞または抗体を提供する。また、(i)ExPEC菌によって引き起こされる疾患および/または感染を処置または予防するため医薬;(ii)ExPEC菌に対して惹起される抗体もしくはその存在を検出するための診断用試薬;および/または(iii)ExPEC菌に対する抗体を惹起し得る試薬の製造における本発明の核酸、ポリペプチド、小胞または抗体の使用が提供される。前記ExPEC菌は、任意の血清型または菌株のものであり得る。好ましくは、ExPEC菌はUPEC菌株である。
【0184】
本発明は、菌血症、髄膜炎、尿路感染、腎盂腎炎および/または膀胱炎などの疾患の予防および/または処置に有用である。本発明は、尿路感染の処置に特に有用である。
【0185】
患者は、好ましくはヒトである。ヒトは、好ましくは、成人(例えば、年齢20〜55歳の間)である。また、小児または青年期の人を対象とするワクチンも、例えば、安全性、用量、免疫原性などを評価するために成人に投与され得る。女性患者は、好ましいサブセットであり、年齢が20〜55歳の性的に活発な女性は、特に好ましい患者群である。別の群の患者は、年齢が12〜20の女性である(特に、予防的使用のため)。
【0186】
他の考えられ得る患者動物としては、ExPECのキャリアであるイヌが挙げられる[156,157]。
【0187】
治療用処置の有効性を確認する方法の一例は、本発明の組成物の投与後の感染のモニタリングを伴う。予防用処置の有効性を確認する方法の一例は、投与後の投与されたポリペプチドに対する免疫応答のモニタリングを伴う。本発明の組成物の免疫原性は、これを試験被験体(例えば、年齢12〜16ヶ月の小児、または動物モデル、例えばマウスモデル)に投与し、次いで、標準的なパラメータ、例えば、IgGのELISA力価(GMT)を測定することにより測定され得る。このような免疫応答は、一般的に、組成物投与後の4週間前後に測定し、組成物の投与前に測定した値と比較する。組成物が用量で投与される場合、1回より多くの投与後測定が行なわれ得る。UTIの種々のマウスモデルが入手可能である[例えば、参考文献158および159〜160]。
【0188】
ポリペプチド抗原の投与は、免疫を誘発するための処置に好ましい方法である。本発明の抗体の投与は、別の好ましい処置方法である。この受動免疫処置方法は、新生児または妊娠女性に特に有用である。この方法では、典型的には、ヒト化された、または完全にヒトのモノクローナル抗体が使用される。
【0189】
本発明の組成物は、一般的に、患者に直接投与される。直接的送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内もしくは組織の間質腔に)によって、または経直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー剤)、経膣、経表面、経皮(transdermal)、皮膚貫通(transcutaneous)、鼻腔内、舌下、眼内、耳内(aural)、肺経由もしくは他の粘膜投与によって行なわれ得る。大腿部または上腕部への筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば、皮下注射針)を介するものであり得るが、無針注射も択一的に使用され得る。典型的な筋肉内用量は0.5mlである。
【0190】
本発明は、全身性および/または粘膜免疫を惹起するために使用され得る。好ましくは、全身性および/または粘膜免疫の増強は、TH1および/またはTH2免疫応答の増強に反映される。好ましくは、免疫応答の増強には、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの産生の増大が含まれる。
【0191】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは反復投与スケジュールであり得る。反復投与は、初回免疫処置スケジュールおよび/または追加免疫処置スケジュールにおいて使用され得る。初回免疫刺激投与スケジュールの後に追加免疫刺激投与スケジュールが行なわれ得、反復投与スケジュールでは、種々の用量が同じまたは異なる経路で投与され得、例えば、非経口初回免疫刺激および粘膜追加免疫刺激、粘膜初回免疫刺激および非経口追加免疫刺激などである。初回免疫刺激投与間の好適なタイミング(例えば、4〜16週間)および初回免疫刺激と追加免疫刺激間の好適なタイミングは、常套的に決定され得る。例えば、ワクチン接種の初回免疫刺激の過程は、1〜10の別々の投与を含むものであり得、その後、続いて他の用量が免疫応答を維持および/または強化するのに必要とされる時間間隔、例えば、1〜4ヶ月間隔で第2の投与として投与され、必要な場合は、続いて数ヵ月後に1回または複数の投与が行なわれる。
【0192】
細菌感染は、身体の種々の領域に影響を及ぼし、そのため組成物は種々の形態で調製され得る。例えば、組成物は、液状の溶液または懸濁液のいずれかとして注射用物質として調製され得る。注射前に液状ビヒクル中で溶液または懸濁液にするのに適した固体形態もまた、調製され得る(例えば、凍結乾燥された、または噴霧凍結乾燥された組成物)。組成物は、経表面的投与用、例えば、軟膏、クリーム剤または散剤として調製され得る。組成物は、経口投与用、例えば、錠剤またはカプセル剤として、スプレー剤として、またはシロップ剤として(任意選択で、フレーバー含有)として調製され得る組成物は、肺投与用、例えば、微粉末剤またはスプレー剤を用いて吸入剤として調製され得る。組成物は、挫剤またはペッサリーとして調製され得る。組成物は、経鼻、耳内または眼内投与用、例えば、スプレー剤、滴剤、ゲル剤または粉剤として調製され得る[例えば、参考文献161および162]。組成物は、組み合わされた組成物が、患者への投与直前に再構成されるように設計されたキットの形態であり得る。かかるキットは、液状形態の1種類以上の抗原および凍結乾燥された1種類以上の抗原を含むものであり得る。
【0193】
本発明の組成物は患者に、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、同じ診察(medical consultation)中、または医療従事者(healthcare professional)の訪問(visit)中)、例えば、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、コンジュゲートH.インフルエンザb型ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、不活化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、肺炎球菌コンジュゲートワクチン、髄膜炎菌コンジュゲートワクチンなどと実質的に同時に投与され得る。同様に、該組成物は患者に、抗生物質、特に、UPECに対して活性ならびに抗生物質化合物と実質的に同時に(例えば、同じ診察中または医療従事者の訪問中)投与され得る。
【0194】
本発明の組成物のさらなる抗原性成分
本発明はまた、本発明のポリペプチドおよび1種類以上の以下のさらなる抗原:
− N. メニンギティディス血清群A、C、W135および/またはY(好ましくは、4種類すべて)由来の糖抗原、例えば、血清群C由来の参考文献163に開示されたオリゴ糖または参考文献165のオリゴ糖[参考文献164もまた参照]など
− N.メニンギティディス血清群B由来の抗原、例えば、参考文献166〜174などに開示されたものなど
− ストレプトコッカス・ニューモニエ由来の糖抗原[例えば、175,176,177]
− A型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、不活化ウイルスなど[例えば、178,179]
− B型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、表面抗原および/またはコア抗原など[例えば、179,180]
− C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、181]
− HIV由来の抗原[182]
− ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイドなど[例えば、参考文献183の第3章]、例えば、CRM197変異型[例えば、184]
− 破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイドなど[例えば、参考文献183の第4章]
− 百日咳菌由来の抗原、例えば、百日咳ホロ毒素(PT)など、および百日咳菌由来線維状赤血球凝集素(FHA)、任意選択でまた、ペルタクチンならびに/または細胞凝集原2および3との組合せで [例えば、参考文献185および186]
− ヘモフィルス・インフルエンザB由来の糖抗原[例えば、164]
− ポリオ抗原(1種類または複数種)[例えば、187,188]、例えば、IPVなど
− 麻疹、流行性耳下腺炎および/または風疹抗原[例えば、参考文献183の第9章、10章および11章]
− 水痘抗原
− インフルエンザ抗原(1種類または複数種)[例えば、参考文献183の第19章]、例えば、血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質など(インフルエンザ抗原は、大流行の狭間(例年)の流感菌株由来のものであり得る。インフルエンザ抗原は、大流行の勃発を引き起こす可能性を有する菌株(すなわち、現在循環している菌株の血球凝集素と比べて新しい血球凝集素を有するインフルエンザ株、またはトリ被験体において病原性であり、ヒト集団に水平に伝染する可能性を有するインフルエンザ株、またはインフルエンザ株ヒトに対して病原性)由来のものであり得る。インフルエンザ抗原は、卵または細胞培養物中で増殖したウイルス由来のものであり得る。)
− モラクセラ・カタラーリス由来の抗原[例えば、189]
− ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群ストレプトコッカス)由来の糖抗原
− ストレプトコッカス・アガラクティエ由来のタンパク質抗原(B群ストレプトコッカス)[例えば、190〜195]
− 淋菌由来の抗原[例えば、196〜199]
− 肺炎クラミジア由来の抗原[例えば、参考文献200〜206]または肺炎クラミジア由来の抗原の組合せ[例えば、207]
− クラミジア・トラコマチス由来の抗原、またはC.トラコマチス由来の抗原の組合せ[例えば、208]
− ポルフィロモナス・ジンジバリス由来の抗原[例えば、209]
− 狂犬病抗原(1種類または複数種)[例えば、210]、例えば、凍結乾燥された不活化ウイルスなど[例えば、211、RabAvertTM
− パラミクソ・ウイルス、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV[212,213])および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[214])由来の抗原(1種類または複数種)
− バシラス・アンスラシス由来の抗原[例えば、215,216,217]
− 化膿連鎖球菌(A群ストレプトコッカス)由来の抗原[例えば、191,218,219]
− 黄色ブドウ球菌由来の抗原[例えば、220]
− フラビウイルスファミリー(フラビウイルス属)のウイルス、例えば、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、4つの血清型のテング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス由来の抗原など
− ぺスティウイルス抗原、例えば、ブタコレラ(classical porcine
fever)ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルスなど
− パルボウイルス抗原、例えば、パルボウイルスB19由来
− ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原[221]
を含む組成物を提供する。
【0195】
該組成物は、これらのさらなる抗原の1種類以上を含むものであり得る。
【0196】
別の実施形態において、本発明の抗原は、泌尿生殖器の疾患および/または性感染疾患に対して女性を保護するために設計されたワクチンにおける使用に適した1種類以上のさらなる非大腸菌抗原と組み合わされる。例えば、該抗原は、ストレプトコッカス・アガラクティエ、クラミジア・トラコマチス、淋菌、パピローマウイルスおよび単純ヘルペスウイルスからなる群由来の抗原と合わされ得る。ヒトパピローマウイルス抗原が使用される場合、HPV 16、HPV 18、HPV 6および/またはHPV 11の1種類以上に由来のものであり得る。
【0197】
好ましい淋菌性抗原としては、ngs13(OmpA)、OmpH、ngs576(ペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIアーゼ)タンパク質)、ngs41およびngs117の1種類以上が挙げられる。
【0198】
好ましいHPV抗原としては、HPV 16、HPV 18、HPV 6およびHPV
11の1種類以上が挙げられる。
【0199】
好ましいクラミジア・トラコマチス抗原としては、WO 05/002619に開示されたCT045、CT089、CT242、CT316、CT381、CT396、CT398、CT444、CT467、CT547、CT587、CT823、CT761の1種類以上およびこれらの抗原の特定の組合せが挙げられる。
【0200】
好ましい肺炎クラミジア抗原としては、WO 05/084306に開示されたCPnO324、Cpn0301、Cpn0482、Cpn0503、Cpn0525、Cpn0558、Cpn0584、Cρn0800、Cpn0979、Cpn0498、Cpn0300、Cpn0042、Cpn0013、Cpn450、Cpn0661、Cpn0557、Cpn0904、ClpnO795、Cpn0186およびCpn0604の1種類以上ならびにこれらの抗原の特定の組合せが挙げられる。
【0201】
好ましいGBS抗原としては、GBS80、GBS 104、GBS 59、GBS 67、GBS 322およびGBS 276の1種類以上が挙げられる。
【0202】
別の実施形態において、本発明の抗原の組合せは、高齢者または免疫障害の個体を保護するために設計されたワクチンにおける使用に適した1種類以上のさらなる非ExPEC抗原と合わされる。例えば、該抗原の組合せは、エンテロコッカス・フェカリス、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・エピデルミディス、シュードモナスエルギノーサ、レジオネラ・ニューモフィラ、リステリア・モノサイトゲネス、髄膜炎菌、インフルエンザ、およびパラインフルエンザウイルス(「PIV」)からなる群由来の抗原と合わされ得る。
【0203】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合は無毒化され得る(例えば、化学的および/または遺伝子学的手段による百日咳毒素の無毒化[186])。
【0204】
ジフテリア抗原を該組成物に含める場合、破傷風抗原および百日咳抗原もまた含めることが好ましい。同様に、破傷風抗原を含める場合、ジフテリアおよび百日咳抗原もまた含めることが好ましい。同様に、百日咳抗原を含める場合、ジフテリアおよび破傷風抗原もまた含めることが好ましい。従って、DTPの組合せが好ましい。
【0205】
糖抗原は、好ましくは、コンジュゲートの形態である。コンジュゲート担体タンパク質としては、細菌の毒素(例えば、ジフテリア類毒素または破傷風トキソイドなど)、N.メニンギティディス外膜タンパク質[222]、合成ペプチド[223,224]、熱ショックタンパク質[225,226]、百日咳タンパク質[227,228]、H.インフルエンザ由来のプロテインD[229,230]、サイトカイン[231]、リンホカイン[231]、H.インフルエンザタンパク質、ホルモン[231]、増殖因子[231]、C.ディフィシル由来のトキシンAまたはB[232]、鉄取込みタンパク質[233]、種々の病原体由来抗原由来の多数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質[234]、例えば、N19タンパク質[235]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[236]、ニューモリシン[237]などが挙げられる。好ましい担体タンパク質はCRM197タンパク質である[238]。
【0206】
該組成物中の抗原は、典型的には、各々少なくとも1μg/mlの濃度で存在させる。一般に、任意の所与の抗原の濃度は、該抗原に対して免疫応答を惹起する充分なものである。
【0207】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩に吸着させる。
【0208】
核酸免疫処置
上記の免疫原性組成物は、ポリペプチド由来の抗原UPECを含む。本発明の免疫原性組成物におけるタンパク質抗原の使用の代替として、該抗原をコードする核酸(好ましくは、例えば、プラスミドの形態のDNA)が、核酸免疫処置に基づく組成物、方法および使用を得るために使用され得る。核酸免疫処置は、現在、発展分野であり(例えば、参考文献239〜246などを参照)、多くのワクチンに適用されている。
【0209】
免疫原をコードする核酸は、患者への送達後にインビボで発現され、発現された免疫原が、次いで免疫系を刺激する。活性成分は、典型的には、(i)プロモーター;(ii)免疫原をコードし、プロモーターに作動可能に連結された配列;および任意選択で、(iii)選択可能なマーカーを含む核酸ベクターの形態をとる。好ましいベクターは、(iv)複製起点;および(v)(ii)の下流に、これに作動可能に連結された転写ターミネータをさらに含むものであり得る。一般に、(i)および(v)は真核生物系であり、(iii)および(iv)は原核生物系である。
【0210】
好ましいプロモーターは、ウイルス系プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のものである。ベクターはまた、プロモーターに加えて転写調節配列(例えば、エンハンサー)(これは、プロモーターと機能的に相互作用する)を含むものであり得る。好ましいベクターとしては、極初期CMVエンハンサー/プロモーターが挙げられ、また、より好ましいベクターとしては、CMVイントロンAが挙げられる。プロモーターは免疫原をコードする下流配列に、免疫原コード配列の発現がプロモーターの制御下となるように作動可能に連結されている。
【0211】
マーカーを使用する場合、これは、好ましくは微生物宿主(例えば、原核生物、細菌、酵母)内で機能を果たす。マーカーは、好ましくは、原核生物の選択可能なマーカー(例えば、原核生物のプロモーターの制御下で転写される)である。好都合には、典型的なマーカーは、抗生物質耐性遺伝子である
本発明のベクターは、好ましくは、自己複製性エピソームベクターまたは染色体外ベクター、例えば、プラスミドなどである。
【0212】
本発明のベクターは、好ましくは複製起点を含む。複製起点は、原核生物内で活性であるが、真核生物内ではそうでないことが好ましい。
【0213】
従って、好ましいベクターは、該ベクターの選択のための原核生物のマーカー、原核生物の複製起点を含むが、免疫原コード配列の転写を駆動するための真核生物のプロモーターは含まない。したがって、該ベクターは、(a)ポリペプチド発現なしで原核生物宿主内にて増幅および選択されるが、(b)増幅されることなく真核生物宿主内で発現される。この構成は、核酸免疫処置ベクターに理想的である。
【0214】
本発明のベクターは、コード配列の下流に真核生物の転写ターミネータ配列を含むものであり得る。これにより、転写レベルが増強され得る。コード配列がそれ自身のターミネータ配列を有するものでない場合、本発明のベクターは、好ましくはポリアデニル化配列を含む。好ましいポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモン由来のものである。
【0215】
本発明のベクターは、マルチクローニング部位を含むものであり得る。
【0216】
免疫原およびマーカーをコードする配列に加え、該ベクターは、第2の真核生物のコード配列を含むものであり得る。該ベクターはまた、免疫原として同じ転写物由来の第2の真核生物のポリペプチドの翻訳を可能にするため、前記第2の配列の上流に、IRESを含むものであり得る。あるいはまた、免疫原コード配列はIRESの下流に存在し得る。
【0217】
本発明のベクターは、非メチル化CpGモチーフ、例えば、2つの5’プリンと2つの3’ピリミジンに隣接する、グアノシンの前にシトシンを共通に有する非メチル化DNA配列を含むものであり得る。その非メチル化形態では、このようなDNAモチーフは、いくつかの型の免疫細胞の強力な刺激因子であることが示されている。
【0218】
ベクターは、標的化された様式で送達され得る。受容体媒介性DNA療法の手法は、例えば、参考文献247〜252に記載されている。核酸を含有する治療用組成物は、遺伝子療法プロトコルにおける局所投与では、DNAが約100ng〜約200mgの範囲で投与される。また、約500ng〜約50mg、約lμg〜約2mg、約5μg〜約500μg、約20μg〜約100μgの範囲の濃度のDNAも、遺伝子療法プロトコルにおいて使用され得る。作用の方法(例えば、コードされた遺伝子産物のレベルを増強または抑制するため)ならびに形質転換および発現の有効性などの要素は、最終的な有効性に必要とされる投薬量に影響を及ぼす考慮事項である。より広い組織面積にわたってより高い発現が所望され場合、より多くの量のベクターまたは同じ量が連続的投与プロトコルにおいて再投与されること、または種々の隣接もしくは近接する組織部分に数回投与することが、陽性治療成績を得るために必要とされる。すべての場合で、臨床試験における常套的な実験手法により、最適な治療用効果のための具体的な範囲が決定される。
【0219】
ベクターは、遺伝子送達媒体を用いて送達され得る。遺伝子送達媒体は、ウイルス系または非ウイルス系起源であり得る(一般的に、参考文献253〜256を参照)。
【0220】
所望の核酸の送達および所望の細胞内での発現のためのウイルス系ベクターは、当該技術分野で知られている。例示的なウイルス系ビヒクルとしては、限定されないが、組換えレトロウイルス(例えば、参考文献257〜267)、アルファウイルス系ベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林熱ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC
VR−1246)およびベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532);(これらのウイルスのハイブリッドまたはキメラもまた使用され得る)、ポックスウイルスベクター(例えば、痘疹、鶏痘、カナリア痘、アンカラ修飾ワクシニアなど)、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、参考文献268〜273参照)が挙げられる。死菌アデノウイルス[274]に連結させたDNAの投与もまた使用され得る。
【0221】
非ウイルス系送達媒体および方法もまた使用され得、限定されないが、死菌アデノウイルス単独に連結された、または連結されていないポリカチオン縮合DNA[例えば、274]、リガンド連結DNA[275]、真核生物の細胞送達媒体細胞[例えば、参考文献276〜280]および核酸電荷中和または細胞膜との融合が挙げられる。裸DNAもまた使用され得。例示的な裸DNAの導入方法は、参考文献281および282に記載されている。遺伝子送達媒体としての機能を果たし得るリポソーム(例えば、イムノリポソーム)は、参考文献283〜287に記載されている。さらなるアプローチは参考文献288および289に記載されている。
【0222】
使用に適したさらなる非ウイルス系送達としては、参考文献289に記載されたアプローチなどの機械的送達系が挙げられる。さらに、コード配列およびその発現産物は、光重合ヒドロゲル物質の堆積または電離放射線の使用[例えば、参考文献290および291]によって送達され得る。コード配列の送達に使用され得る遺伝子導入のための他の慣用的な方法としては、例えば、携帯型(hand−held)遺伝子導入粒子銃の使用[292]、または導入された遺伝子を活性化するための電離放射線の使用[290および293]が挙げられる。
【0223】
PLG{ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)} 微粒子を用いるDNAの送達、例えば、微粒子(これは、任意選択で、負電荷を有する表面を有するように処理される(例えば、SDSでの処理)か、または正電荷を有する表面を有するように処理される(例えば、CTABなどのカチオン系デタージェントでの処理))への吸着による送達は、特に好ましい方法である。
【0224】
一般
用語「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを含む「(comprising)」組成物は、排他的にXからなるものであり得るか、または何か他の要素を含む(include)もの、例えば、X+Yである得る。
【0225】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0226】
語句「実質的に」は、「全く」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まないものであり得る。必要に応じて、語句「実質的に」は、本発明の定義で省略されていることがある。
【0227】
配列表のアミノ酸配列におけるN末端残基は、対応するヌクレオチド配列の第1のコドンにコードされるアミノ酸で示されている。第1のコドンがATGでない場合、これは、該コドンが開始コドンである場合はメチオニンとして翻訳されるが、該配列が融合パートナーのC末端にある場合は、表示した非Metアミノ酸として翻訳されることは理解されよう。本発明では、任意の表示した非Met残基の代わりにN末端メチオニン残基(例えば、ホルミル−メチオニン残基)を有する配列表のアミノ酸配列の各々を具体的に開示し、これらを包含する。また、配列内の任意の内部メチオニン残基で始まる配列表のアミノ酸配列の各々を具体的に開示し、これらを包含する。
【0228】
上記の本文中に示すように、本発明の核酸およびポリペプチドは:
(a)配列表に開示する配列と同一(すなわち、100%同一)である;
(b)配列表に開示する配列と配列同一性を共有する;
(c)(a)または(b)の配列と比べて、離れた位置に存在し得るか、または連続的であり得る1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の単一のヌクレオチドまたはアミノ酸改変(欠失、挿入、置換)を有する;および
(d)配列表のある特定の配列と、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用い、開始点(N末端または5’)から末端(3’のC末端)に移動するx個の単量体(アミノ酸またはヌクレオチド)のウィンドウをアラインメントがp個の単量体(このとき、p>x)に拡張(extend)されるように移動させてアラインメントしたとき、p−x+1個のかかるウィンドウが存在し、各ウィンドウは、少なくともx−y個の同一のアラインメントされた単量体を有する(ここで:xは、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択される;yは、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択される;およびx・yが整数でない場合、ほぼその整数に近くなるように端数を切り上げる。好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォルトパラメータ(例えば、ギャップ開始ペナルティ=10.0およびギャップ伸長ペナルティ=0.5で、EBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用)を用いるNeedleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム[294]である。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージのニードルツール(needle tool)[295]において簡便に行なわれる)
配列を含むものであり得る。
【0229】
本発明の核酸およびポリペプチドは、これらの配列(a)〜(d)のN末端/5’および/またはC末端/3’に、さらなる配列をさらに有するものであり得る。
【0230】
本発明の実施においては、特に記載のない限り、当該技術分野の技量の範囲内である化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の慣用的な方法が用いられる。かかる手法は、文献に充分に説明されている。例えば、参考文献296〜303などを参照のこと。
【実施例】
【0231】
実験
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態または様式の実施例である。実施例は、例示の目的のためだけに提供され、本発明の範囲をなんら限定することは意図されない。
【0232】
使用した数値(例えば、量、温度など)に関して正確さが確保されるように努力したが、もちろん、いくらかの実験誤差および偏差は斟酌されたい。
【0233】
発明を実施するための形態
コンピュータに基づく比較用および予測用ツールを用い、
(a)少なくとも2つのUPEC株と共通するが、非病原性菌株には見られない、および
(b)表面会合または膜会合している
596個のポリペプチドを同定した。これらの596 ポリペプチドを表1に示し、そのアミノ酸配列を配列表に配列番号:1〜596として示す。表1にこれらの596個の配列の「gi」(GenInfo Identifier)受託番号を示し[11]、この情報を用いて、(a)該ポリペプチドの完全な配列データベースレコードおよび(b)大腸菌ゲノム内の対応するコード配列などの情報が検索され得る。例えば、NCBI Entrezシステム[304]は、「26111674」で照会(query)すると単一のレコードが得られ得[305]、該レコード内の「CDS」リンクをクリックすると、対応するコード配列が表示され得る[306]。
【0234】
本発明のポリペプチド配列は、既に公のデータベースで利用可能であるため、そのアノテーション(annotated)機能もまた利用可能である。該596個のポリペプチドの一部は、現在のアノテーションにおいて認識された機能をもたない(例えば、データベースにおいて「仮想タンパク質」と注釈が付けられている)。本発明者らは、これらのポリペプチドの基盤となる生物学的機能を解明していないが、本発明は、ここに、これらのポリペプチドの信頼性のある有用性、すなわち、本明細書に記載する免疫原性組成物を提供する。
【0235】
表4に、菌株MG1655[307]、W3110およびDH10Bについて非病原性K12配列の配列番号:1〜596との最も近いマッチングを報告する。
【0236】
表5は、2つの異なるUPECゲノム間で最も強いマッチングを有する414/596個のポリペプチドを示し、下線の配列番号は100%保存を有するものである。残りの182個のポリペプチドは、UPEC株間での保存がより弱く、そのため、表5のポリペプチドが好ましい(特に、下線のもの)。
【0237】
596個の配列のうち、156個を優先して選択した(表2)。表6に、これらの156個の配列に関する種々の情報を示す。
【0238】
66個のさらに好ましい抗原は、非病原性菌株が存在しない、表面会合している、少なくとも2つのUPEC株に存在する、およびこれまでに抗原として同定されていないため選択した(表3)。これらのうち19個を最初の研究用に選択した(表3において「+」を表示)。
【0239】
これらのポリペプチドをクローニングし、発現させ、精製する。精製した抗原を用いてマウスを免疫処置し、その血清をウエスタンブロット、ELISAおよびFACSによって解析し、インビトロおよびインビボ実験の両方においてさらに試験する。好適なインビトロ実験としては、抗体が、相補鎖媒介性細菌の死滅および/またはオプソニン食作用(opsonophagocytosis)活性を誘発する能力、または、ヒト上皮細胞(例えば、膀胱細胞内の)もしくは他の細胞株へのExPEC株(または精製抗原)の結合をブロックする能力、および/または脳微小血管内皮細胞(BMEC)への大腸菌細菌(例えば、K1菌株)の付着/侵入を阻害する能力を試験することが挙げられる。好適なインビボ実験としては、UTIのマウスモデル(成体マウス)における能動的および/または受動的全身性免疫処置ならびに抗原刺激、大腸菌K1株で抗原刺激した5日齢ラットにおける菌血症および髄膜炎に対する能動的または受動的免疫処置による防御、ならびにExPEC株での成体マウスの免疫処置および腹腔内感染が挙げられる。
【0240】
細菌のライフサイクルに対する該タンパク質の重要性は、同質遺伝子型ノックアウト変異型を創製することにより試験される。該変異型はまた、抗原によって惹起される血清が該抗原に特異的であることを確実にするために使用され得る。マイクロアレイを用いて発現パターンが試験される。保存および/または変異性は、多数の異なるExPEC株由来の遺伝子を配列決定することにより評価される。
【0241】
UPEC株に特異的であるが、非病原性菌株(片利共生および研究用菌株)には存在しない予測される表面露出タンパク質を選択するため、アッセイを行なった。選択したら、これらのタンパク質を発現させ、精製し、マウスを免疫処置するために使用する。
【0242】
参考文献43から、大腸菌のいずれかのtol−pal遺伝子における変異は、天然外膜タンパク質を含有する小胞の形成をもたらすことが知られている。UPEC株と非病原性菌株の小胞内に存在するタンパク質を比較することにより、潜在的に抗原として使用され得る小さな一群のタンパク質を選択することが可能である。
【0243】
片利共生および病原性大腸菌におけるλ red媒介性遺伝子操作
この方法は、野生型大腸菌株由来のtolR遺伝子を不活化するために使用される迅速なPCR系の方法である[308]。簡単には、第1の工程は、標的遺伝子(tolR)および耐性マーカーカセットの上流および下流の領域を独立して増幅することからなる。工程1で得られた2種類のPCR産物をABカセットの増幅産物生成体(producer)と等モル濃度で混合し、第2回目のPCR(スリーウェイ(three way)PCR)に供し、標的遺伝子に相同な500bp(またはそれ以上)の領域の上流および下流に隣接した耐性マーカーカセットを作製する。第3の工程では、大量(1μg)の所望の線状DNAを、λ−redコンピテント細胞内にエレクトロポレーションする。
【0244】
小胞の調製
1. TCAでの沈殿による小胞の調製
LB培地に、プレートで増殖させた菌体を播種し、穏やかな攪拌下で一晩37℃にてインキュベートした。この培養物を用いて、200mlのLBにOD600 0.1で播種した。菌体をOD600 0.4まで(または規定のとおりに)増殖させた。培養液を10分間、4000×gで遠心分離し、上清みを0.22mmフィルターに通して濾過して残留菌体除去した。
【0245】
また、同じ実験を、ジピリジル(0.25mM)をLB培地に添加することにより、鉄分制限条件でも行なった。
【0246】
培養上清みに、最終10%の溶液(100%(w/v)のTCA、0.4%(w/v)のデオキシコール酸)を添加することにより、沈殿を行なった。沈殿は、4℃で30分間進行させた。4℃において20000×gで10分間の遠心分離により沈殿物を回収した。ペレット状物質を10%TCA(w/v)1回および無水エタノールで2回洗浄した。このペレット状物質をspeed vacにより乾燥し、−20℃で保存した。
【0247】
野生型および変異型の菌株をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、これにより、変異型菌株の上清み中には野生株よりも多くのバンドが存在することを観察することができた。無作為に選出したバンドにより、上清み中のずべてのタンパク質が膜タンパク質であることが示された。
【0248】
2. 超遠心分離による小胞の調製
培養上清みを、200000×gで2時間、4℃において超遠心分離した。ペレット状物質をPBSで洗浄し、PBS中に再懸濁し、−20℃で保存した。
【0249】
3. 小胞のグアニジニウム変性
グアニジニウム変性の前に、小胞をエタノールで沈殿させた。PBS中の10μgのOMVは、低温無水エタノールを最終90%まで添加することにより沈殿させた。沈殿は、−20℃で20分間進行させた。13000×gでの10分間の遠心分離により沈殿物を回収した。ペレット状物質を、6Mグアニジニウム、15mM DTT、200mM Tris−HCl(pH8.0)を50mlで用いて再懸濁した。変性は、60℃で60分間進行させた。消化前、溶液を1.5M Tris(pH8.0)の溶液を用いて1/8に希釈し、5mgのトリプシンを該希釈溶液に添加した。消化を一晩37℃で進行させた。反応を、最終0.1%のギ酸を添加することにより停止させた。Oasis抽出カートリッジを用いてペプチドを抽出した。ペプチドを、MS−MSと合わせてLCによって解析した。
【0250】
4. 表面消化
5mgのトリプシンをPBS中の10mgの小胞に添加し、37℃で3時間インキュベートした。最終0.1%のギ酸を添加することにより停止させた。ペプチドを30Kda排除フィルターに通す濾過によって回収し、Oasis抽出カートリッジにより抽出した。ペプチドを、MSMSと合わせてLCを用いて解析した。
【0251】
小胞の解析
タンパク質の定量
タンパク質をBradford法により、BSAを標準として用いて定量した。
【0252】
SDS−PAGE
試料を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)4〜12%ポリアクリルアミドゲルにより、Mini−Protean II電気泳動装置を用いて解析した。試料をSDS試料バッファー(0.06 M Tris−HCl pH 6.8、10%(v/v)のグリセロール、2%(w/v)のSDS、5%(v/v)の2−メルカプトエタノール、10mg/mlのブロモフェノールブルー)中に懸濁し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(electrophoreis)の前に、100℃まで5分間加熱した。泳動後、ゲルをクマシーブルーで染色した。
【0253】
MALDI−TOF質量分析
タンパク質のバンドおよびスポットをゲルから切り出し、50mM重炭酸アンモニウム/アセトニトリル(50/50、v/v)で洗浄し、Speed−Vac遠心分離機(Savant)により乾燥させた。乾燥させたスポットを、5mM重炭酸アンモニウム、0.012mgの配列決定(sequencing)グレードのトリプシンを含有する溶液7〜1.0mlを添加することにより、37℃で2時間消化した。消化後、0.6mlを、予めスポットされた標的のマトリックス上に負荷し、風乾した。スポットを、70%エタノール、0.1%トリフルオロ酢酸の溶液0.6mlで洗浄した。ウルトラフレックスMALDI TOF質量分析計を用いて質量スペクトルを得た。スペクトルを、標的上に予めスポットされた標準の組合せを用いることにより外部較正(externally calibrate)した。タンパク質の同定を、Mascotプログラムを用いてコンピュータにより作製フィンガープリントにより、700〜3,000Daの質量範囲のペプチドの実験により作製したモノアイソトピックピークの自動および手動両方での比較によって行なった。
【0254】
2次元電気泳動
200mgの小胞をImmobiline再膨潤溶液(7M尿素、2Mチオ尿素、2%(w/v)CHAPS(2% w/v)ASB14、2%(v/v)IPGバッファーpH 3〜10NL、2mM TBP、65mM DTT)中に再懸濁し、7cmのImmobiline DryStrips(pH3〜10NL)上に一晩吸着させた。次いで、タンパク質を2D電気泳動によって分離させた。1次元では、IPGphor Isoelectric Focusing Unitを用い、逐次、150Vを35分間、500Vを35分間、1,000Vを30分間、2,600Vを10分間、3,500Vを15分間、4,200Vを15分間、最後に5,000Vを10kVhに達するまで印加することにより泳動させた。2次元では、ストリップを、4M尿素、2Mチオ尿素、30%のグリセロール、2%のSDS、5mM TBP、50Mm Tris HCl(pH8.8)、2.5%のアクリルアミドおよびブロモフェノールブルー0.2%中での2回の10分間のインキュベーションによって平衡化した。次いで、タンパク質を、直線4〜12%プレキャストポリアクリルアミドゲル上で分離させた。
【0255】
ゲルをコロイド状クマシーブルーで染色し、Personal Densitometer SIでスキャンした。画像をImage Master 2D Eliteソフトウエアを用いて解析した。
【0256】
ナノLC/MS/MS
ペプチドを、ナノスプレー供給源を備えたQ−ToF Micro ESI質量分析計に接続したCapLC HPLCシステム上でナノLCによって分離した。試料を、C18トラップカラム(300μm内径×5mm)を介してAtlantis C18 NanoEaseカラム(100μm内径×100mm)上に負荷した。ペプチドを、400nl/分の流速で0.1%ギ酸の溶液中、2%〜60%の95%ACNの50分間の勾配によって溶出した。溶出されたペプチドを、MassLynxソフトウエア、バージョン4.0を用いる自動データ依存収集(data−dependent acquisition)プログラムに供し、このとき、MSサーベイスキャンを用い、さらなるMS/MSフラグメンテーションのための、400〜2,000のm/z範囲を超える多電荷(multi−charged)ペプチドを自動的に選択した。3種類までの異なる成分を、MS/MSフラグメンテーションに同時に供した(where subjected)。データ収集後、個々のMS/MSスペクトルを合わせ、MassLynxによって平滑化(smooth)し、セントロイド処理(centroid)した。ペプチドの検索および同定は、認可バージョンのMASCOTを用いてバッチモードで行なった。MASCOT検索パラメータは、(1)種:ExPEC(2)誤切断の許容数(トリプシン消化の場合のみ):6;(3)可変翻訳後修飾:メチオニン酸化;(4)ペプチド許容誤差(tolerance):±500 ppm;(5)MS/MS許容誤差:±0.3Daおよび(6):ペプチド電荷:+1〜+4とした。先のプラットフォームに関して、MASCOT確率解析によって規定されるわずかに有意なヒットを考慮した。少なくとも1つのペプチドからのタンパク質同定の許容のスコアの閾値をMASCOTによって、トリプシン消化では18およびプロテイナーゼK消化では36と設定した。
【0257】
結果
上記の解析の結果、13個の好ましい抗原がCFT073株から同定された。すなわち:gi−26110866(配列番号489)、gi−26109898(配列番号597)、gi−26107513(配列番号120)、gi−26108604(配列番号598)、gi−26109137(配列番号305)、gi−26106493(配列番号22)、gi−26108194(配列番号221)、gi−26108192(配列番号219)、gi−26109931(配列番号400)、gi−26111428(配列番号565)、gi−26109835(配列番号371)、gi−26109866(配列番号599)およびgi−26111414(配列番号555)。これらを表7に示す。
【0258】
抗原の解析
全身感染のマウスモデル
病原性大腸菌株と非病原性大腸菌株間の比較ゲノム解析によって選択された多数の抗原をスクリーニングするため、古典的なビルレンスアッセイに基づいた防御モデルを確立した。また、択一的に使用され得る実験モデルとしては、参考文献158、159および160に概要が示されたものが挙げられる。
【0259】
実験モデル(免疫処置および感染)には、ビルレントCFT073大腸菌株の腹腔内接種によって抗原刺激された5週齢のCD1異系交配マウスを使用する。抗原刺激用量は、実験的に、細菌が、成体マウスの80%を72時間以内に致死させることができる量と決定されており、CFT073株では7×10cfu/マウスに相当する。
【0260】
免疫処置プロトコル
マウスは、フロイントアジュバントを用いて150μlのタンパク質溶液の皮下注射によって3回、以下の表に示したとおりに免疫処置する。
【0261】
【化17】

【0262】
血液試料を、最初の免疫処置の前日(免疫前血清)、第34日および第48日(抗原刺激の前日)に採取する。免疫処置動物由来の血清を、ウエスタンブロットおよびELISAによって試験し、抗体力価を測定する。
【0263】
抗原刺激
第48日目に、大腸菌CFT073株を、LB寒天プレート上に凍結ストックから画線培養し、インキュベーター内で一晩(ON)37℃にてインキュベートする。第49日目、ONプレート培養物を用いて50mlのLB培地に、O.D.600=0.1を有するように播種し、1.5時間37℃で攪拌下にて、菌体培養液がCFT073株に関して7×10cfu/mlに相当するO.D.600=0.6に達するまで増殖させる。培養液を遠心分離し、ペレット状物質を同じ用量の生理溶液中に再懸濁し、抗原刺激に未希釈で使用する。標準的なプレート計測法を用いて培養物をプレーティングし、イノキュラムを確認する。7×l0 CFT073菌体を含有する細胞懸濁液100μlを、1ml容シリンジを用いて対照および免疫処置マウスの腹腔内内に注射する。感染の24、48および72時間後の各動物群の死亡数を記録する。
【0264】
ワクチン接種による防御を、抗原刺激から72時間のマウスのワクチン接種群における生存と対照群における生存との比較によって評価する。対照に対する生存のパーセントを、式:
(ワクチン群における生存割合−対照群における生存割合)/対照群における生存割合
を用いて計算する。
【0265】
結果
免疫処置は、熱不活化CFT073を用いて行なった。図1においてわかるように、CFT073での抗原刺激後のマウスの生存%は、熱不活化CFT073での免疫処置後に増加している。
【0266】
免疫処置試験
抗原は、組み合わせて本発明の組成物が得られるように選択する。BALB/cマウスを9つの群に分け、以下のとおりに免疫処置する。
【0267】
【化18】

【0268】
マウスは、2週間隔で免疫処置する。最後の免疫処置から2〜3週間後、すべてのマウスに適切なUPEC株で抗原刺激する。粘膜免疫処置(例えば、鼻腔内)を用いる場合、動物モデルには抗原刺激もまた粘膜経由で行ない、粘膜免疫原の防御効果を試験する。抗原刺激の直前、マウスから採血し、投与された抗原に対する力価を測定する。
【0269】
マウスの抗原刺激のため、ビルレント細菌を適切な培地中で増殖させる。菌体を遠心分離によって回収し、再懸濁し、抗原刺激イノキュラム用に連続希釈する。BALB/cマウスに抗原刺激し、曝露後30日間、毎日観察する。
【0270】
全IgGおよびIgG1/IgG2Aサブタイプが種々の免疫処置レジメンによるマウス血清中において、ELISAアッセイを用いて、完全菌体および精製され組換えタンパク質において測定され得る。さらにまた、免疫処置マウスから単離された脾臓細胞および/またはPBMCにおける抗原特異的CD4+およびCD8+Th細胞の評価が、マルチパラメータFACS解析によって行なわれ得、抗原特異的T−細胞のサイトカイン発現プロフィールが評価され得る。特に、IFN−γおよびIL−5の産生は、精製抗原でのT細胞のインビトロ刺激後に測定され得る。また、各抗原/ワクチン製剤で免疫処置したマウス由来の脾細胞および/またはPBMCを、最後の免疫処置の投与の10〜12日後に回収し、UPEC菌で刺激してもよい。刺激の4時間後、続く12時間の間ブレフェルジンAを細胞に添加し、サイトカイン分泌をブロックする。その後、細胞を固定し、抗体で染色し、IFN−γおよびIL−5を発現するUPEC特異的T細胞を検出する。
【0271】
T細胞は末梢血リンパ球(PBL)から、当業者に知られたさまざまな手順によって単離され得る。例えば、T細胞集団はPBLの集団から、アクセサリー細胞およびB細胞の除去によって「富化」されたものであり得る。特に、T細胞の富化は、抗MHCクラスIIモノクローナル抗体を用いた非T細胞の排除によって行なわれ得る。同様に、他の抗体を用いて特定の集団の非T細胞を枯渇させ得る。例えば、抗Ig抗体分子を用いてB細胞を枯渇させ得、抗MacI抗体分子を用いてマクロファージを枯渇させ得る。
【0272】
T細胞は、当業者に知られた手法によって、いくつかの異なる下位集団にさらに分画され得る。2つの主な下位集団が、細胞表面マーカーCD4およびCD8示差発現に基づいて単離され得る。例えば、上記のようなT細胞の富化後、CD4+細胞を、CD4に特異的な抗体を用いて富化させ得る。該抗体は、磁気ビーズなどの固相にカップリングさせてもよい。逆に、CD8+細胞を、CD4に特異的な抗体の使用(CD4+細胞を除去するため)によって富化させ得るか、または固相にカップリングさせたCD8抗体の使用によって単離し得る。UPEC感染患者由来のCD4リンパ球を、形質導入の前または後にエキソビボで拡張してもよい。
【0273】
T細胞の精製後、精製されたT細胞を、リンパ球の増殖および活性化を促進する種々のサイトカイン、例えば、限定されないが、rIL−2、IL−10、IL−12およびIL−15で予備刺激する。
【0274】
UPEC特異的T細胞は、上記の免疫原性ポリペプチドによって活性化され得る。UPEC特異的T細胞は、CD8+またはCD4+であり得る。UPEC特異的CD8+ T細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり得、これは、MHCクラスI分子と複合体を形成した上記のポリペプチドまたはその断片のいずれかを提示するUPEC感染細胞を死滅させ得る。クラミジア特異的CD8+ T細胞は、例えば、51Cr放出アッセイによって検出され得る。51Cr放出アッセイでは、UPEC特異的CD8+ T細胞が、これらのエピトープの1種類以上を提示する標的細胞を溶解する能力が測定される。IFNγなどの抗ウイルス系因子を発現するUPEC特異的CD8+ T細胞もまた本明細書において想定され、また、免疫学的方法によって、好ましくは、上記のUPECポリペプチドの1種類以上でのインビトロ刺激後、IFN−γまたは同様のサイトカインに関する細胞内染色によって検出され得る。UPEC特異的CD4+ T細胞は、リンパ増殖アッセイによって検出され得る。リンパ増殖アッセイでは、UPEC特異的CD4+ T細胞が、上記のポリペプチドの1種類以上
に応答して増殖する能力が測定される。
【0275】
本発明は、一例として記載したにすぎず、本発明の範囲および精神の範囲内に留まる
変形がなされ得ることは理解されよう。
【0276】
(表1−599個の病原性E.coli配列)
【0277】
【表1−1】

【0278】
【表1−2】

【0279】
【表1−3】

【0280】
【表1−4】

【0281】
(表2−156個の好ましい抗原)
【0282】
【表2】

【0283】
(表3−66個の好ましい抗原)
【0284】
【表3−1】

【0285】
【表3−2】

【0286】
(表4−K12ヒット)
【0287】
【表4−1】

【0288】
【表4−2】

【0289】
【表4−3】

【0290】
【表4−4】

【0291】
【表4−5】

【0292】
【表4−6】

【0293】
【表4−7】

【0294】
【表4−8】

【0295】
【表4−9】

【0296】
【表4−10】

【0297】
【表4−11】

【0298】
【表4−12】

【0299】
空欄は、この株において10%を超える同一性のヒットがないことを示す。
【0300】
(UPEC間で最も強いヒットを有する配列番号)
【0301】
【表5】

【0302】
【表6−1】

【0303】
【表6−2】

【0304】
【表6−3】

【0305】
【表6−4】

【0306】
欄:
・ PSORT:PSORTアルゴリズムによって予測される位置。I=内膜;O=外膜;P=ペリプラズム
・ LP:星印は、リポタンパク質を示す
・ TMD:膜貫通ドメインの数
・ Top hit:特許データベースにおいて最も近いマッチング
・ HitLen:最も近いマッチングの長さ
・ e:BLAST解析における「期待」値
・ 同一性:アラインメントの長さ全体における同一残基の数、およびアラインメントの長さ
・ クエリー%/標的%:ExPECまたはデータベース配列の観点(perspective)からの配列同一性%
【0307】
【表7】

【0308】
欄:
・ PSORT:PSORTアルゴリズムによって予測される位置。I=内膜;O=外膜;P=ペリプラズム;C=細胞質
・ TMD:膜貫通ドメインの数
・ %ID:アラインメントの長さ全体における同一残基のパーセント。
【0309】
参考文献(これらの内容は、参考として本明細書に援用される)
【0310】
【化19】

【0311】
【化20】

【0312】
【化21】

【0313】
【化22】

【0314】
【化23】

【0315】
【化24】

【0316】
【化25】

【0317】
【化26】

【0318】
【化27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−111782(P2012−111782A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−57239(P2012−57239)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【分割の表示】特願2007−556382(P2007−556382)の分割
【原出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(506361100)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】