説明

尿pH値の検査ができる便器

【課題】健康管理に気を使う人や、家族に高尿酸血症者や痛風患者等を持つ家庭において、便器に向かって排尿するという行為だけで、尿pHの自己検査ができ、個人の健康管理の目安を提示する手段を提供することを課題とする。
【解決手段】便器6への排尿時に、尿の当たる便器の適当な位置に電気式pH計のセンサ10を仕込み、また、pHの計測の前処理として基準となる校正液の10への湿布手段7、8、9を有し、10に受けた尿のpH値を測定することによって、その酸性度から尿酸値を推測して尿を排泄した当人の健康度を視認性のよい位置に添え付けたモニタ4に表示するシステム本体3を持つ水洗式の便器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の尿のpH値によって推測される尿酸値をもとにした主に腎機能の健康管理の目安を提供する機能を付加した便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿のpH値は普段からの食生活と密接な関係があり、肉や魚を多く摂取する人の尿は強い酸性側に、野菜などのいわゆるアルカリ食品を摂取することで尿はアルカリ側に傾くことが知られており、健康を維持するためには尿酸の体外への排出を促進するpH6.2〜6.8の弱酸性尿を排尿していることが正常とされる。
【0003】
その理由は尿酸の尿への溶解度がpH5のとき150ミリグラム/リットルに比べ、pH7のとき1500〜2000ミリグラム/リットルとpH値が2違うだけで尿酸溶解度に10〜13倍もの差があるという事実にある。したがって、仮に通常の尿のpH値がpH4.6〜5.4と強めの酸性尿を排尿する人は高尿酸血症や痛風を引き起こす原因物質である尿酸を体外に排出する身体機能が低下している状態であり、そのほか、正常とされる弱酸性尿よりも酸性度の高い、あるいは逆にアルカリ度の高い尿は尿結石を形成しやすいこともわかってきている。
【0004】
ちなみに高尿酸血症とは尿のpH値が正常であれば排出されるべき尿酸が尿の強酸性化にともなって尿中に溶けきれず体内に蓄積されてしまい、血液中の尿酸の濃度が高いことを、痛風とは高尿酸血症が恒常的に続いた結果、尿酸が関節などで結晶化してその部位に激しい痛みを引き起こす病気を指し、尿結石は尿中の尿酸やカルシウム、マグネシウムを成分とする結晶が腎臓で結石となり、膀胱や尿道などにつまって排尿を阻害することや、排尿時に激しい痛みを伴うことがある。
【0005】
上記までの説明により、尿のpH値を測定し、尿酸値のコントロールを行うことは健康と体調を管理するうえでの意義があるが、現状では高尿酸血症者や痛風患者で悩む人を除いて一般ではそれほど関心を持たれていない。
【0006】
現状で尿のpH値を自己検査する方法として知られるものは、pH指示薬を濾紙に含浸させて乾燥させたpH試験紙というものを撥水性の高い台紙で作られたスティックの先端に貼り付けたpHスティックというものを使用するもので、該pHスティックのpH試験紙部分に直接尿をかけるか、または容器に採取した尿に浸して、pH試験紙の酸性度によって変化する色を付属の比色表と照らし合わせて判定する使い捨ての製品となっており、理化学機材の専門店で扱われる製品のため、一般的に入手し難いという問題がある。
【0007】
また、pH値を検査する方法としては他にセンサを用いて電気的にpH値を測定する計装ユニット型やハンディポータブル型のpH計を用いることもあるが、こちらは上下水道や汚水処理の管理を一例として、農業、畜産業、工業、医療現場と広範囲の産業分野で用いられるもので、計測するのに基準となる校正液が必要なこと、上記pHスティックに比べて測定時間がかかること、やはり理化学機材の専門店で扱われる機材なため一般的ではないといった問題もあることから、個人の尿検査で使用されることは無いと思われる。
【非特許文献1】メディカル百科事典 「尿pH」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、健康管理に気を使う人や、家族に高尿酸血症者や痛風患者等を持つ家庭において、便器に向かって排尿するという行為だけで、尿pHの自己検査ができ、これによって推測できる尿酸値による個人の健康管理の目安を提示するような手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水洗式の便器に電気式のpH計を組み合わせ、該pH計のセンサを便器の尿の当たる適当な位置に仕込み、該センサの計測時に基準となる校正液のタンクと、校正液のセンサへの湿布手段、操作スイッチ類、表示用のモニタを管理するシステムと計装を持つことによって、便器に向かって排尿するという行為だけで尿pH値の自己検査ができる手段を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の尿pH値の検査ができる便器は、上記の手段によって、便器に向かって排尿するという行為だけでセンサに受けた尿のpH値を測定し、その尿の酸性度から尿酸値を推測して尿を排泄した当人の主に腎機能の健康度をモニタに表示し、その情報を把握、あるいは記録することによって個人の健康を管理する手段を得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
便器への排尿時に、尿の当たる便器の適当な位置に電気式pH計のセンサを仕込み、便器自体と該センサの洗浄のために水洗式であることと、該センサは清掃とメンテナンスのために着脱が容易な構造を持つこと、該センサでの計測時に基準となる校正液をセンサに湿布する装置を有し、手動操作しやすく視認しやすい適当な位置にスイッチ類と表示用のモニタと回路類を内蔵するシステム本体部を設置する形態であることによって実現する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の1実施例の構成図で男子小用便器をモデルとしており、1は洗浄液システムタンク、2は洗浄液の配管、3はpH計測システム本体を内蔵した筐体部で、4の表示用モニタと5の操作用スイッチ類といった計装を備えており、防湿、防滴、防塵構造が望ましい。そして6は便器、7はpH計測時の基準となる校正液のタンク、8は校正液を送り出すポンプ、9は校正液の吐出口、10はpH計のセンサであり、本発明は以上の如き部位で構成される。
【0013】
使用するための前処理として、PH値を計測する環境を整えるために軽く6を水洗浄すると同時に10も洗浄した後、7,8,9を介して校正液を10に湿布するが、この工程は毎排尿時に行う必要はなく、10の汚染状態を3内部のシステムで管理して4に表示され、必要時に5のスイッチのひとつを押すことで工程を実行できることが望ましい。
【0014】
また、特に10は再現性や計測の正確さを維持するために定期的に清掃やメンテナンスを行う必要があり、交換する可能性もあることから6より着脱が容易な構造であることが望ましい。
【0015】
そして尿のPH値の計測準備が整っている状態で10に尿があたるように排尿すると、センサが反応したpH値から尿酸値を計算して3内部で情報処理し、尿を排泄した当人のデータを4に表示するが、3のシステム次第で複数人のデータを個別に管理する機能を付けることも考えられる。後は計測後に6及び10を水洗浄する。
【0016】
なお、上記の使用動作の流れでは手動で操作する部分と3で操作を管理する部分が不明確な箇所があるが、これは本考案の実施規模の大きさによるものであり、設備しだいでは前処理工程と上記の一連の流れをすべて3内部のシステムで管理することも不可能ではないと思われる。
【0017】
もちろん、尿のpH値計測を行わない場合は便器として普通に使用できることとする。
【産業上の利用可能性】
【0018】
便器であるとともに、尿のpH値と尿酸値の自己検査による健康管理の一助となる健康器具として役立ち、一般家庭用としてはもちろん、スポーツ・フィットネス関連施設、温泉や大衆浴場、ホテルなどの宿泊施設など、何らかの形で健康と関係のある施設でひとつのサービスとして本発明を利用できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】尿pH値の検査ができる便器の実施方法を示した構成図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0020】
1 洗浄液システムタンク
2 洗浄液用配管
3 pH計測システム本体
4 情報表示用モニタ
5 操作用スイッチ類
6 便器
7 校正液タンク
8 校正液ポンプ
9 校正液吐出口
10 pH計測センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器への排尿時に、尿の当たる便器の適当な位置にpH値計測用のセンサを仕込み、該センサに受けた尿のpH値を電気的に測定することによって、その酸性度から尿酸値を推測して尿を排泄した当人の健康度を、該便器の視認性のよい位置に添え付けたモニタで表示するシステムと計装を有することと、pH計測の前処理として該センサによる計測の基準となる校正液の該センサへの湿布手段を有した水洗式の便器及び小便器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−77583(P2007−77583A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263250(P2005−263250)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(305004941)有限会社モデリングアート (8)
【Fターム(参考)】