説明

局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータの演算

【課題】古典的なアプローチより良好に同時に実行するロバスト検知において、空間信号の正確性パラメータの演算を提供する。
【解決手段】個々の空間信号の誤差ベクトルを測定するステップ(S10)と、個々の空間信号の誤差ベクトルをサービスエリアにマッピングするステップ(S12)と、経験的なサンプルセットを集積するステップ(S14)と、集積されたサンプルセットの推定の密度関数を処理するステップ(S16)と、ガリレオのオーバーバウンド検知において、又は、過剰質量を有する対のオーバーバウンドの検知において、密度関数を個々にオーバーバウンドするステップ(S18)と、既定された要件による最も悪い場合を選択するステップ(S20)と、の少なくとも1つを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、請求項1による、局所的(Regional)航法衛星システム又は全地球的航法衛星システム(Global Navigation Satellite System (GNSS))におけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータ(Signal−in−Space Accuracy (SISA) parameters)を演算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球的なナビゲーションのための衛星システムは、地球上の位置又は空中における位置を正確に決定することを可能にする。“ガリレオ”の名前で知られている、例えば実際に組み立てられた欧州の衛星ナビゲーションシステムなどの全地球的航法衛星システムは、複数の人工衛星と、制御システムと、を備える。
【0003】
全地球的航法衛星システムの正確性は、複数のパラメータに依存しており、それらのパラメータのうちの1つは、各人工衛星の軌道の認識の品質と、システム時間に対する人工衛星クロックの時間誤差とである。この品質は、空間信号の正確性(Signal−in−Space Accuracy (SISA))によって表現される。この記載がガリレオの全地球的航法衛星システムのフレームにおいて使用される空間信号の正確性に言及する一方、本願発明は、このシステムに限定されず、且つこの用語はそれどころか、一般的であるように理解される。特に、ナブスターと呼ばれるGPS衛星による全地球的航法衛星システムのための対応するパラメータは、利用者活動範囲誤差(User Range Error(URE))として言及される。
【0004】
空間信号の正確性は、全地球的航法衛星システムのナビゲーション信号の実際の品質を記載する先行パラメータであり、全地球的航法衛星システムによって定期的に放送されている。使用者が、重要な操作にとって部分的に等しいナビゲーション決定がこれに基づいている方法で、このパラメータを信頼するので、高い信頼性を有する限りなく小さな安全値(safe value)は、全てのナビゲーションサービスにとって必須である。高い信頼性はそれ故に、このパラメータにとって確保されなければならない。
【0005】
ガリレオプロジェクトの枠組み内で発達した古典的な空間信号の正確性の演算は、以下の2つのステップからなる。
(1)空間信号の誤差(Signal−in−Space Error (SISE))サンプルの測定
(2)生じた分布のオーバーバウンド
【0006】
しかしながら、この演算方法は、いくつかの欠点としている。
・誤差の測定が非常に保守的(conservative)である。
・測定手順に起因して、適切なオーバーバウンドを妨げる、基礎を成す確率密度における複数の特異点(双峰性(bi−modality))が存在する。
・オーバーバウンドの結果は、手動で又は不適当な方法によってのいずれか選択される、適用された構成パラメータに対して高い感応性を有する。
【0007】
確認された複数の脆弱性に起因して、最終的に要求された信頼性に到達することが不可能であるように非常に思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】SISA Computation Algorithms and their applicability for Galileo Integrity, Carlos Hernandez Medel, Laura Perea Virgili, Alvaro Mozo Garcia, Juan Ramon Martin Piedelobo and Miguel M. Romay Merino. Proceedings of the 15th International Technical Meeting of the Satellite Division of The Institute of Navigation (ION GPS 2002)
【非特許文献2】GALILEO: Integrity Performance Assessment Results And Recommendations. Werner, Wolfgang | Zink, Theodor | Hahn, Jorg. ION GPS 2002: 15th International Technical Meeting of the Satellite Division of The Institute of Navigation; Portland, OR; USA; 24−27 Sept. 2002. 2002
【非特許文献3】Silverman, B.W.: Density Estimation for Statistics and Data Analysis. Chapman and Hall, London 1986
【非特許文献4】Turlach, B.A.: Bandwidth Selection in Kernel Density Estimation: A Review. C.O.R.E. and Institut de Statistique, Universite Catholique de Louvain, B−1348 Louvain−la−Neuve, Belgium
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に、古典的なアプローチより良好に同時に実行するロバスト検知(robust sense)において、空間信号の正確性パラメータの演算を提供することは、本願の目的である。
【0010】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる実施形態は、従属請求項によって示される。
【0011】
本願発明による空間信号の正確性パラメータを演算する方法は、以下の3つのステップのうちの1つ又は複数を備えてもよい。それらの3つのステップのうちの個々のステップは、主な限定を克服するように既に適している。
(1) 保守的ではなく、且つ複数の特異点を有することなく誤差分布に導く適合された方法で、基礎を成す空間信号の誤差サンプルの測定。
(2) 構成パラメータ(バンド幅)のデータ駆動型(自動的な)選択を使用して、ノンパラメトリックなアプローチ(non−parametric approach)によって、基礎を成す空間信号の誤差密度のための密度関数(density function)の推定。
(3) ガリレオ検知において、又は過剰質量検知(excess mass sense)を有する対のオーバーバウンド(paired overbounding)において、密度関数のオーバーバウンド(Overbounding)。
【0012】
該方法のステップ(1)は、保守性が依然として確実とされることができる間に、各性能マージンを調査することを可能にするより現実的な誤差分布(単峰性(unimodal))に導く。これによってアクセス可能にされた性能マージンは、5%〜10%までとされることができる。
【0013】
ステップ(2)は、基礎を成す誤差分布における複数の特異点に対してロバストな密度推定方針である。それ故に、ステップ(2)は、古典的なアプローチで発生した誤差分布に対して適用されることもできる。さらに、ステップ(2)の結果は、任意の構成パラメータに依存しない。それ故に、弱く位置調整された仮定(weakly justified assumptions)が必要ない。
【0014】
ステップ(3)は、推定された密度に対するオーバーバウンドする定義(overbounding definition)の正確な数値的適用である。これは、古典的なアプローチの場合と異なる。それ故に、提案された方針の結果の信頼性は、確実とされることができる。ステップ(2)内で、基礎を成すデータの専有の依存性は、バンド幅選択器の性質によって処理されることができる一方、古典的なアプローチはこれを扱うために大雑把な方法(a rule of thumb method)を適用する。
【0015】
「演算」との用語によって表現されるように、本願発明が技術的なプロセスに関連することに留意されるべきである。本願発明の技術的なプロセスは、全地球的航法衛星システムの軌道測定及び時間同期要素の中間結果を処理し、それらの結果から空間信号の正確性パラメータを演算する。該空間信号の正確性パラメータは、高精度で全地球的航法衛星システムにおける一体性リスク(integrity risk)を評価するために、全地球的航法衛星システムのレシーバー及び位置決め装置によって使用されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明の一の実施形態は、局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算する方法であって、
個々の空間信号の誤差ベクトルを測定するステップと、
前記個々の空間信号の誤差ベクトルをサービスエリアにマッピングするステップと、
経験的な(empirical)サンプルセットを集積するステップと、
集積されたサンプルセットの推定の密度関数を処理するステップと、
ガリレオのオーバーバウンド検知(Galileo overbounding sense)において、又は、過剰質量を有する対のオーバーバウンド検知(sense of paired overbounding)で、前記密度関数を個々にオーバーバウンドするステップと、
既定された要件による最も悪い場合を選択するステップと、
の少なくとも1つを備える、ロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算する方法に関する。
【0017】
本願発明のさらなる実施形態は、上述したように本願発明による方法を実行するコンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行される場合に、局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータの演算を可能にするコンピュータプログラムに関する。該コンピュータプログラムは例えば、全地球的航法衛星システムの制御セグメント内の演算装置、例えば、ナブスターと称されるGPS衛星又は次回の欧州の全地球的航法衛星システムであるガリレオの制御セグメント内の演算装置に導入されてもよい。
【0018】
本願発明のさらなる実施形態によれば、本願発明のコンピュータプログラムを格納する記録キャリア、例えばコンパクトディスクROM(CD−ROM)、デジタルビデオディスク、メモリーカード、ディスケット、又は電気的なアクセスのためのコンピュータプログラムを格納するのに適した類似のデータキャリアが提供されてもよい。
【0019】
本願発明のさらなる実施形態は、本願発明の方法による局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算し、且つ局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるさらなる使用のための演算された空間信号の正確性パラメータを提供する装置を提供する。該装置は例えば、本願発明による方法を実施するためのコンピュータプログラムを格納するメモリと、格納されたコンピュータプログラムを実行することによって、古典的なアプローチより良好に同時に実施されるロバストな検知(robust sense)において、全地球的航法衛星システムの空間信号の正確性パラメータの制御セグメントの軌道測定及び時間同期処理の結果から演算することを可能にされるプロセッサと、を備えてもよい。該装置は例えば、ガリレオの制御セグメントなどの、全地球的航法衛星システムの制御システム内で適用されてもよい。
【0020】
本願発明におけるそれらの態様及び他の態様は、これ以降に記載された実施形態から明らかであり、且つ該実施形態を参照して明らかにされるであろう。
【0021】
本願発明は、例示的な実施形態を参照してこれ以降により詳細に記載されるであろう。しかしながら、本願発明は、それらの例示的な実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明による局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおける、ロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算する方法の一実施形態におけるフローチャートを示す図である。
【図2】空間時間予測誤差に対する異なる密度の値、空間信号の正確性の経過を有するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
空間信号の正確性を測定するための古典的な技術的方法は、多段階のアプローチである。詳細は異なる方針間で異なるけれども、それらの全ては典型的に、以下の高いレベルのステップを備える。
− 空間信号を介して放送されるべきパラメータとともに、ナビゲーションサービスを提供するために役立つ予測からの人工衛星の位置及び人工衛星のクロック誤差パラメータの抽出。
− 正確な解決方法(典型的には、後処理調整)からの人工衛星の位置及び人工衛星のクロック誤差パラメータの抽出。
− 予測された正確な軌道位置及び人工衛星のクロック誤差、すなわち4次元誤差ベクトルなどの予測に起因した軌道位置誤差及びクロック誤差において、関心のある共通のエポック(common epoch)の識別及び差異の測定。
− 方針的に依存的なマッピング(strategy dependent mapping)を介して、該誤差は、使用者に理解されるような誤差に変換される。これは、空間信号の誤差の1つのサンプルを付与する。
− 単一の統計学的な処理の実現、すなわち単一のランダム変数の実現となるように仮定される、経験的な時間的に連続の空間信号の誤差(empirical time series of SISE)を構築するために、多くのそのようなエポックの集積。
− 方針的に依存的な方法(strategy dependent method)で、基礎を成すランダム変数の密度の推定。
− ガリレオの場合、ガウス分布によって推定された密度を特徴付けするために、確率検知(probability sense)におけるオーバーバウンド。
【0024】
背景技術において、以下の特殊性が存在する。
1) 使用者によって理解されるような誤差を測定するために、4次元ベクトル(3つの軌道方向及びクロック誤差)は、特定のエポックにとって最も悪い影響を導き出す方法(いわゆる、最も悪い使用者位置アプローチ(Worst User Location approach))で、サービスエリアに対して予測される。すべてのそのような誤差を集積する場合に、最も悪く影響された位置が誤差を駆動しており、且つそれ故に集積された誤差分布を駆動しているので、これは、非常に保守的な状況に導く。この保守性(conservativeness)は、背景技術における主な欠点である。
2) 最も悪い使用者位置アプローチの場合における軌道誤差及びクロック誤差の非常に限定された補償に起因して、誤差ゼロはほとんど得られず、ゼロ付近の誤差分布の確率密度においてギャップに導く。このギャップ(又は、双モジュール性(bi−modularity))は、誤差分布における特異点として理解されることができる。この特異点が現実的な場合を表しておらず、且つ(以下に記載されるように)特別な処置を必要とするので、背景技術におけるさらなる主な欠点として考慮される。
3) 密度推定のための方法は単純なヒストグラムに基づいており、該単純なヒストグラムは、手動で設定される構成パラメータを必要とするアプローチに基づいている。この方法において、それらは設定するのが非常に難しいが、最終的な結果に対する大きな影響を有する。これは、結果の要求された信頼性のための根拠を提供することをほとんど可能にしないので、先行技術のさらなる欠点である。
4) オーバーバウンドの方針は、誤差推定に強く関連される。分布における特異点に起因して、該方法は、それがそうしないと失敗するので、回避方法を必要とする。該回避方法は、該分布の内部の拒絶(rejection of the inner part)に基づいている。拒絶の閾値が、明らかに間違っているガウス性質を仮定している分布から導き出されるので、背景技術のさらなる欠点として考慮される。
【0025】
確認された複数の欠点に起因して、最終的に空間信号の正確性パラメータの要求された信頼性に到達することが不可能であるように非常に思われる。
【0026】
それ故に、本願発明は、先行技術において確認された複数の制限を克服する、空間信号の正確性パラメータの演算のための変更された方法を提案する。
【0027】
本願発明による変更された空間信号の正確性の演算方法は、4つのステップを備える。個々のステップのいくつかは既に、それ自体によって先行技術の主な限定を克服するために適している。
(1) より少ない保守的であり、且つ複数の特異点を有さない誤差分布、すなわち単峰性の確率密度に導く適合した方法で、基礎を成す空間信号の誤差サンプルの測定。
(2) 人工衛星から始め、且つ人工衛星及びサービスエリアによって付与された円錐で載置している複数の方向を離散化する。そのような方向ごとの、且つ人工衛星ごとの、且つおそらく他の格付け方法(classification method)による予測された誤差サンプルの集積。
(3) 必須の構成パラメータ(いわゆるバンド幅)のためのデータ駆動型(自動)選択器を使用してノンパラメトリックなアプローチによる、基礎を成す空間信号の誤差のランダム変数のための密度関数の推定。
(4) ガリレオ検知において、又は他の実施形態における、過剰質量(excess mass)を有する対のオーバーバウンドの検知においてのいずれかでの、関数のオーバーバウンド。
【0028】
空間信号の正確性パラメータの変更した演算の一実施形態が、ナビゲーションサービスのための各根拠を提供するために、誤差量の得られた経験的な分布において試みている現実のデータに適用されるように意図される一方、該方法はまた、他の実施形態において、シミュレーション又は理論的な分析によって部分的又は全体に発生したデータに適用されることができる。
【0029】
空間信号の正確性の変更された演算の詳細は、図1に関して以下に開示されており、図1には該方法のフローチャートを示す。
【0030】
空間信号の正確性の演算方法は、4次元誤差ベクトルが演算されるステップS10を備える。次いで、該方法は、以下に記載されたステップで進行する。
【0031】
ステップ(1) 空間信号の誤差の測定(図1におけるステップS12)
【0032】
この方針は、このサービスエリアが十分にカバーされるように、サービスエリア内に指向している有限個の専用の方向(dedicated direction)に対して、4次元誤差ベクトルを予測することである。方向の数は、演算時間とサプリング密度との間のトレードオフによって任意に選択される。専用の方向の定義(definition)は、一度行われ、全ての演算のため固定した状態に保たれる。区別された3つの最適な基準座標系が存在しており、それらは、本願発明の異なる実施形態において適用されることができる。
(1)人工衛星固定座標系:これは、航法衛星のアンテナ(navigation satellite antenna)から見られるような基準座標系である。それは、人工衛星に固定される。
(2)軌道固定基準座標系1:この座標系は、「人工衛星−地球」ベクトル、該「人工衛星−地球」ベクトルに対して直交する人工衛星の「飛行方向」の正射影ベクトル、及び前述の2つのベクトルに対して直交する「横断飛行方向」ベクトル、によって定義される。
(3)軌道固定基準座標系2:この座標系は、「飛行方向」ベクトル、該「飛行方向」ベクトルに対して「人工衛星−地球」ベクトルの正投影ベクトル、及び前述した2つのベクトルに対して直交する「横断飛行方向」ベクトルによって定義される。
【0033】
ステップ(2) 複数のサンプルの集積(図1におけるステップS14)
【0034】
ステップ(1)において測定された単一のサンプルは、方向ごとに(且つ、必要に応じて複数の人工衛星が含まれる場合に、人工衛星ごとに)集積される。さらなる実施形態において、それらはまた、例えば人工衛星の食状態(eclipse condition)、クロックタイプ、信号タイプ、又は人工衛星の(構築された)グループ分けなどの専用の状態ごとに集積されることができる。その段階で、予測された誤差の拡大は、他の実施形態において、使用者に不明であるが、システムに知られている決定的な誤差部分を説明するために適用されることができ、さらなるロバスト性に導く。追加の決定的な誤差部分をカバーすることは、予測された誤差の誇張(inflation)として理解されることができる。該拡大は、以下のステップによって、例えば対のオーバーバウンドのために行われることができる。
1.各セットの集積された複数のサンプルのための平均を推定する。
2.推定された平均より本質的に小さい、該セットの全てのサンプルから、小さな決定的な誤差を反映している、専用の量(dedicated amount)を減算する。
3.推定された平均より本質的に大きい、該セットの全てのサンプルに同一量を加える。
【0035】
これは、双峰性の密度(bi−modal density)が生じる。該双峰性の密度は、その左側半分及び右側半分が中心から離れて移動される本来の単峰性の密度(uni−modal density)として理解されることができる。ガリレオのオーバーバウンドの場合における拡大は、同様に行われることができるが、それ自体による各移動を考慮することによって抽出された最も悪い情報を使用して、本来の密度を2つの部分に切断することなく行われることができる。
【0036】
ステップ(3) ノンパラメトリックな密度推定(図1におけるステップS16)
【0037】
ステップ(2)における複数のサンプルの集積から構成された各データセットは次いで、対応する基礎を成すランダム変数の確率密度の推定を導き出すために使用される。
【0038】
それらヒストグラムの推定器の間で、ノンパラメトリックな密度の推定のための様々な方法が存在する。最も有望な方法は、いわゆる「カーネル密度推定器(kernel density estimators)」に基づいている。それらは、以下で使用されるであろう。他の実施形態において、改善された「適応的カーネル密度推定器(adaptive kernel density estimators)」は、密度推定の尾部においてより良好な挙動を付与するので利用されることができる。それらの記述及び以下の定義は、例えば非特許文献3に見受けられることができる。
【0039】
カーネル密度推定器の定義
・・・Xは、確率密度pを有するランダム変数の実数値のサンプルとされる。カーネル関数Kは、実数値を用いた、負ではなく、1に対して積分する実数軸上で積分可能な関数とされる。それ故に、カーネル関数Kはそれ自体、確率密度関数である。常にそうではないが、カーネル関数Kは、対称関数とされるであろう。
【0040】
次いで、カーネル関数Kを有するカーネル密度推定器fは、以下の式によって定義される。
【0041】
【数1】

【0042】
上記の式において、hは、窓幅(window width)であり、平滑化パラメータ又はバンド幅とも称される。カーネル密度推定器fも確率密度関数であることは、容易に示されることができる。対応する期待値(expectation)及び分散(variance)は本質的には、バンド幅、サンプルの平均、及びカーネルKの期待値及び分散の関数として明確に計算されることができる。
【0043】
カーネル関数の選択
一の実施形態において、エパネチニコフ(Epanechnikov)カーネル、双加重(Biweight)(四次式(Quartic))カーネル、三加重(Triweight)カーネル、ガウスカーネル、及びコサインカーネルとして有名なカーネルは、選択されることができ、例えば非特許文献3に見られる。他の実施形態において、我々は、カーネルKとして、いわゆるゼロを再度中心に配置された任意の次数のカーディナルBスプライン、例えば3次又は4次のカーディナルBスプラインを選択する。該任意の次数のカーディナルBスプラインは、以前のものと比較して、有望な性質を有するが、周知なカーネルによって分配(shared)されない。それらがある程度滑らかであり、有限の単純に接続された間隔の外側でゼロである。上述した全てのカーネルは、ガウスに似た形状の関数である。該カーネルの関連した性質は、対応する推定器によって引き継がれる。例えば、適切なカーネルを有する密度推定器はそれ自体、ある程度滑らかである。先行技術で使用されたヒストグラム推定器と対比して、原点の選択が存在しない。
【0044】
バンド幅の選択
不明なパラメータh又はバンド幅は、最適性基準(optimality criteria)を介して自動的に導き出されるであろう。様々な規則が、「最適な」バンド幅のデータ駆動型の(自動的な)選択のために存在する。異なる実施形態において使用される、より周知な例は、積分二乗誤差(integrated squared error (ISE))又は平均積分二乗誤差(mean integrated squared error (MISE))に基づく交差検定(Cross−Validation)であり、且つ漸近平均積分二乗誤差(asymptotic mean integrated squared errors (AMISE))を最小化することに基づくプラグイン方法である。これは、非特許文献4を参照する。以前のクラスに対応し、且つ空間信号の誤差の確率密度を推定するこの領域における良好な性能を示している、特別に知られている方法は、以下の通りである。
− 積分二乗誤差を最小化する最小二乗クロス・バリデーション(Least Squares Cross−Validation)
− 平均積分二乗誤差を最小化するバンド幅分解平滑化クロス・バリデーション(Bandwidth Factorised Smoothed Cross−Validation)
− 漸近平均積分二乗誤差に基づくパーク・アンド・マルーンプラグイン(Park & Marron Plug−In)及びシータ・アンド・ジョーンズプラグイン(Sheather & Jones Plug−In)
【0045】
ステップ(4) オーバーバウンド(図1におけるステップS18)。
【0046】
空間信号の正確性は、ステップ(3)の推定された密度を使用して計算されるであろう。
【0047】
ガリレオのオーバーバウンドの概念は、以下のように示される。
【0048】
【数2】

【0049】
基本的な処理は、以下の式に導く。
【0050】
【数3】

【0051】
今、不明な確率密度pのための適切なカーネル密度推定器fを使用して、組み込まれた積分は、正確に計算されることができる、すなわち数値的積分によって近似することなく、正確に計算されることができる。それ故に、空間信号の正確性は、積分
【0052】
【数4】

【0053】
が数値的な値になるように、L_0が任意の数である間隔[0、L_0]を離散化することによって、且つ式(*)における空間信号の正確性を表現する係数の対応する最大値のために探すことによって、かなりうまく近似されることができる。L=0の近接において、式(*)における分数は、分母を線形化することによって、その結果Lを相殺し、十分に近似されることができる。L=0である場合、式(*)の右側は、以下の式として読まれる。
【0054】
【数5】

【0055】
他の実施形態において、過剰質量を有する対のオーバーバウンドの概念のパラメータは類似して、導き出されることができる。
【0056】
次に続くステップS20において、最も悪い場合の方向は選択され、次いで、演算された空間信号の正確性パラメータは、さらなる処理のために、特に全地球的航法衛星システムにおいて放送するために出力される。
【0057】
先行技術に対する本願発明の利点は、以下の通りである。
‐ 本願発明の方法におけるステップ(1)は、各性能マージンを探索することを可能にするとともに、保守性が依然として確実とされることができる、より現実的な誤差(単峰性)に導く。それは図2に見られる。これによってアクセス可能とされる性能マージンは、5〜10%までとされることができる。
‐ ステップ(3)は、基礎を成す誤差分布における複数の特異点に対して、ロバストな密度推定方針である。それ故に、ステップ(3)は、古典的なアプローチで発生した双峰分布(bi−modal distribution)に適用されることができる。それは図2に見られる。
‐ ステップ(3)の結果は、任意の構成パラメータに依存していない。それ故に、弱く位置調整された仮定が必要とされない。異なるカーネルの適用及び異なるバンド幅の選択器は、ロバスト性の記述をサポートする。
‐ シータ・アンド・ジョーンズプラグインと最小二乗クロス・バリデーションとの対比において、空間信号の正確性における相対変化は本質的に、先行技術の古典的なアプローチのための推定している密度において5%未満であり、本願明細書で提案されたアプローチのための推定している密度において2%未満である。
‐ ガウスカーネルと3次のカーディナルBスプラインとの対比において、空間信号の正確性における相対変化は、先行技術の古典的なアプローチのための推定している密度に対して0.4%未満であり、本願明細書で提案されたアプローチのための推定している密度において0.2%未満である。
‐ ステップ(4)は、推定された密度に対するオーバーバウンドする定義の正確な数値的適用である。これは、古典的なアプローチの場合と異なる。それ故に、提案された方針の結果の信頼性は、確実とされることができる。
‐ ステップ(3)内で、基礎を成すデータの専用の独立性は、バンド幅の選択器の性質によって処理される場合がある一方、先行技術のアプローチは、これを処理するために大雑把な方法を適用する。
【符号の説明】
【0058】
S10 4次元誤差ベクトルの演算
S12 空間信号の誤差の測定
S14 複数のサンプルの集積
S16 ノンパラメトリックな密度推定
S18 オーバーバウンド
S20 最も悪い場合の方向の選択

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算する方法であって、
個々の空間信号の誤差ベクトルを測定するステップ(S10)と、
前記個々の空間信号の誤差ベクトルをサービスエリアにマッピングするステップ(S12)と、
経験的なサンプルセットを集積するステップ(S14)と、
集積されたサンプルセットの推定の密度関数を処理するステップ(S16)と、
ガリレオのオーバーバウンド検知において、又は、過剰質量を有する対のオーバーバウンドの検知において、前記密度関数を個々にオーバーバウンドするステップ(S18)と、
既定された要件による最も悪い場合を選択するステップ(S20)と、
の少なくとも1つを備えることを特徴とする、ロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算する方法。
【請求項2】
前記個々の空間信号の誤差ベクトルをサービスエリアにマッピングするステップ(S12)は、前記サービスエリアが十分にカバーされるように、前記サービスエリア内に指向している有限個の専用の方向に対して4次元の個々の空間信号の誤差ベクトルを予測するステップを備え、
基準座標系は、予測のために使用されており、
前記使用された基準座標系は、
航法衛星のアンテナから見られるような基準座標系であり、且つ前記人工衛星に固定された人工衛星固定座標系と、
「人工衛星−地球」ベクトル、該「人工衛星−地球」ベクトルに対して直交して人工衛星の「飛行方向」の正射影ベクトル、及び前述の2つのベクトルに対して直交する「横断飛行方向」ベクトル、によって定義された第1の軌道固定基準座標系と、
「飛行方向」ベクトル、該「飛行方向」に対して「人工衛星−地球」ベクトルの正投影ベクトル、及び前述した2つのベクトルに対して直交する「横断飛行方向」ベクトル、によって定義された第2の軌道固定基準座標系と、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経験的なサンプルセットを集積するステップ(S14)は、方向ごとに、且つ複数の人工衛星が含まれる場合に人工衛星ごとに集積すること、又は、
専用の状態、特に人工衛星の食状態、クロックタイプ、信号タイプ、又は人工衛星の(構築された)グループ分けごとに集積されること、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記経験的なサンプルセットを集積するステップ(S14)は、過剰質量を有する対のオーバーバウンドのために、
集積された複数のサンプルの各セットのための平均を推定するステップと、
推定された平均より本質的に小さい、前記セットの全てのサンプルから、小さな決定的な誤差を反映している専用の量を減算するステップと、
推定された平均より推定的に大きい、本来のセットの全てのサンプルに同一量を加えるステップと、
を実行することによって、予測された誤差を拡大することをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記経験的なサンプルセットを集積するステップ(S14)は、ガリレオのオーバーバウンドのために、
集積された複数のサンプルの各セットの平均を推定するステップと、
前記セットの複数のサンプルのために前記空間信号の正確性パラメータを計算するステップと、
前記セットの全てのサンプルから、小さな決定的な誤差を反映している専用の量を減算し、次いで、このうちの最も悪い値及び先の計算された正確性パラメータを取って、前記空間信号の正確性パラメータを計算するステップと、
本来のセットの全てのサンプルに同一量を加え、次いで、このうちの最も悪い値及び先の計算された正確性パラメータを取って、空間信号の正確性パラメータを計算するステップと、
を実行することによって、予測された誤差を拡大することをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
集積された前記サンプルセットの推定の密度関数を処理するステップ(S16)は、カーネル密度推定器又は適応的カーネル密度推定器方法を適用することによって、対応する基礎を成すランダム変数の確率密度の推定を導き出すステップを備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カーネルkが、エパネチニコフカーネル、双加重(四次式)カーネル、三加重カーネル、ガウスカーネル、及びコサインカーネルから構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項6に記載の演算する方法。
【請求項8】
前記カーネルkが、ゼロを再度中心に配置された任意の次数のカーディナルBスプライン、例えば3次又は4次のカーディナルBスプラインから構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項6に記載の演算する方法。
【請求項9】
前記バンド幅hが、
積分二乗誤差ISE又は平均積分二乗誤差MISEのいずれかを最小化することに基づくクロス・バリデーション、又は漸近平均積分二乗誤差AMISEを最小化することに基づくプラグイン方法、
積分二乗誤差を最小化する最小二乗クロス・バリデーション、
平均積分二乗誤差を最小化するバンド幅分解平滑化クロス・バリデーション、及び
パーク・アンド・マーロンプラグイン及びシータ・アンド・ジョーンズプラグイン、
から構成されるグループから最適に選択された基準を介して、自動的に導き出されることを特徴とする請求項6、7、又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガリレオのオーバーバウンド検知において、前記密度関数を個々にオーバーバウンドするステップ(S18)は、
以下の式
【数1】

を使用して空間信号の正確性パラメータを近似するステップを備え、
該式において、カーネル密度推定器fは、不明な確率密度pのために使用され、且つ積分
【数2】

が数値的になるように、L_0が任意の数である間隔[0、L_0]を離散化し、
式(*)における空間信号の正確性を表現する係数の対応する最大値は探られ、L=0の近接において、式(*)における分数は、L=0の周りで分母を線形化することによって近似されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法を実行するコンピュータプログラムであって、
コンピュータによって実行される場合に、局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算することを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載されたコンピュータプログラムを格納する記録キャリア。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に従って、局所的航法衛星システム又は全地球的航法衛星システムにおけるロバストで改善された空間信号の正確性パラメータを演算する装置であって、
前記局所的航法衛星システム又は前記全地球的航法衛星システムにおいて、さらなる使用のための演算された前記空間信号の正確性パラメータを提供する、空間信号の正確性パラメータを演算する装置。
【請求項14】
ナビゲーション信号のための比較可能な品質表示器が使用される場合に、地球全体のナビゲーションシステム、又は局所的なナビゲーションシステム、又は必要な人工衛星を利用していないナビゲーションシステムに適用される請求項1〜10のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−53040(P2012−53040A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−173748(P2011−173748)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(500466717)アストリウム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (34)
【Fターム(参考)】