説明

屈曲ダクト

【課題】空気の吹出しを平均化(均一化)させ得るようにする。
【解決手段】第1ダクト部分10および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分20における屈曲部の内角側に、該第1ダクト部分10の外壁部と該第2ダクト部分20の外壁部とを空間的に連通するバイパス路30を設ける。これにより、第1ダクト部分10内へ流入した空気の一部を、分流空気として屈曲部を通過させずにバイパス路30を介して第2ダクト部分20内へ流出させ、屈曲部を介して第2ダクト部分20内へ流出した主流空気と共に後端開口22から吹出させることで、該後端開口22からの空気の吹出しを平均化させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲ダクトに関し、更に詳細には、第1ダクト部分および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分からなり、第1ダクト部分内へ流入した空気等の流体を第2ダクト部分の後端開口から吹出させる屈曲ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気等の種々流体を流通案内するため、様々な形態(形状、サイズ等)のダクトが提案されて実施に供されている。例えば図12は、車両内装部材であるインストルメントパネル等の内側に配設される屈曲ダクトDoを部分的に例示した斜視図であり、第1ダクト部分10および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分20とからなっている。すなわち屈曲ダクトDoは、前記第1ダクト部分10の先端開口12が図示しないエアコンユニットに連結されると共に、前記第2ダクト部分20の後端開口22が図示しないエアアウトレットに連結され、先端開口12から該第1ダクト部分10内へ流入した空気を、前記第2ダクト部分20の後端開口22から吹出(送出)させるようになる。
【0003】
ところで前述した屈曲ダクトDoでは、インストルメントパネルの内部構造等の規制から、第1ダクト部分10と第2ダクト部分20とが略直角に連設され、かつその屈曲部が急激に屈曲した形状となっている場合が多い。このため、ダクト内を流通する単位時間当りの空気量が増加してその流速が高まると、前述した屈曲部においての空気の流通および変向がスムーズにならず、第2ダクト部分20内ではその内側部分(内角側部分)において流通空気の剥離が起こって外側方向へ偏るようになり、これに起因して後端開口22における空気の吹出しが不均一となってしまうと共に圧力損失も増加する問題が発生する。そこで、第1ダクト部分10と第2ダクト部分20との屈曲部の曲率半径を大きくする形態(図14に例示)や、屈曲部の内部に流通空気の方向をスムーズに変更させるための整流板14を設ける形態(図15に例示)等が提案されている。このような屈曲ダクトに関する技術は、例えば特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】実開平6−85905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図14に例示した屈曲ダクトDoでは、第2ダクト部分20の延出長Lが規定されている場合、屈曲部の曲率半径を大きくすると該第2ダクト部分20の直線部分が殆どなくなるため、後端開口22から吹出す空気の吹出方向が斜め前方へ偏倚してしまい、該後端開口22の真正面へ平均的に吹出さなくなる問題を内在していた。一方、図15に例示した屈曲ダクトDoでは、整流板14の厚み分だけ屈曲部の内部断面積が減少してしまい、これに伴って流通抵抗が増加し易くなる問題を内在している。殊に、ブロー成形技術に基づいて成形される屈曲ダクトの場合では、前述した整流板14の形成幅が必然的に広くなってしまい、内部断面積の減少率が大きくなって流通抵抗の増加が一段と顕現してしまう。
【0005】
そこで本発明では、後端開口からの空気の吹出しを平均化(均一化)させ得るようにした屈曲ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
第1ダクト部分および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分からなり、前記第1ダクト部分内へ流入した空気等の流体を第2ダクト部分の後端開口から吹出させる屈曲ダクトにおいて、
前記屈曲部の内角側に、第1ダクト部分の外壁部と第2ダクト部分の外壁部とを空間的に連通するバイパス路を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る屈曲ダクトによれば、略直角に連設された第1ダクト部分と第2ダクト部分との屈曲部における内角側に、これら第1ダクト部分と第2ダクト部分とを空間的に連通するバイパス路を設け、第1ダクト部分内の空気の一部をバイパス路を介して第2ダクト部分内へ流出するようにしたことにより、該第2ダクト部分の後端開口からの空気等の流体の吹出しを平均化させ得るという有益な効果を奏する。また、バイパス路が所謂補強リブとしても機能するようになるため、ダクト全体の剛性向上が図られて屈曲方向への撓曲的な変形を好適に防止できる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明に係る屈曲ダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、後述する実施例では、図12に例示した従来の屈曲ダクトDoと基本形状を同一として例示し、該屈曲ダクトDoと同一部材、部位については同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0009】
図1は、好適実施例に係る屈曲ダクトの概略形状を示した斜視図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。本実施例の屈曲ダクトDnは、第1ダクト部分10および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分20とからなり、第1ダクト部分10の先端開口12から該第1ダクト部分10内へ流入した空気を、第2ダクト部分20の後端開口22から吹出させるようになっている。ここで、本願が定義する「略直角」とは、正しく90°である直角は勿論、直角より若干小さい角度(例えば80°程度)から、直角より若干大きい角度(100°程度)までを含むものとする。なお、第1ダクト部分10および第2ダクト部分20の太さは同一であって、両方の内部断面積(流通方向と交差する方向の断面積)W1およびW2も同じくなっている。
【0010】
そして本実施例の屈曲ダクトDnは、第1ダクト部分10と第2ダクト部分20との連設部分である屈曲部の内角側(狭角側)に、該第1ダクト部分10の外壁部と第2ダクト部分20の外壁部とを空間的に連通するバイパス路30を設けたことを特徴としている。これにより、前述した第1ダクト部分10内へ流入した空気の一部を、分流空気として屈曲部を通過させずにバイパス路30を介して第2ダクト部分20内へ流出させ、後端開口22からの空気の吹出しを平均化させ得るようにしたものである。すなわち、第1ダクト部分10から屈曲部を介して第2ダクト部分20へ流入した主流空気は、該第2ダクト部分20の外側方向へ偏って流通する傾向にあるため、バイパス路30を通った分流空気を該第2ダクト部分20の内側方向へ流出させることで、後端開口22の全域から空気を平均的に吹出させる(出口風速を均一化させる)構造である。
【0011】
ここでバイパス路30は、図1に例示したように、屈曲部の内角端32から第1ダクト部分10の上流側へ所定の距離Sだけ離間した位置において、第1ダクト部分10における内角側を指向した外壁部16に一端側が接続されていると共に、第2ダクト部分20における内角側を指向した外壁部26に他端側が接続されている。そして、第1ダクト部分10に対して入口角度R1で接続されている一方、第2ダクト部分20に対して出口角度R2で接続されており、第1ダクト部分10から第2ダクト部分20に向け斜めにかつ直線状に設けられている。
【0012】
また、バイパス路30の内部断面積(流通方向と交差する方向の断面積)W3は、第1ダクト部分10の内部断面積W1の1/5〜1/2倍の範囲で設定されている。更に、バイパス路30の幅Mは、第1ダクト部分10の側では該第1ダクト部分10の全幅N1と略同等であり、第2ダクト部分20の側では該第2ダクト部分20の全幅N2と略同等となっている。従って、本実施例の屈曲ダクトDnでは第1ダクト部分10の全幅N1と第2ダクト部分20の全幅20を同一としてあるため、バイパス路30の幅Mは一定となっている。なお、ここで定義する「同等」とは、同一であることは勿論、バイパス路30の幅Mの方が若干小さい場合も含むものとする。
【0013】
ここで前述した入口角度R1は、屈曲部の角度、第1ダクト部分10の内部断面積W1、バイパス路30の内部断面積W3、バイパス路30の幅M、先端開口12を介して第1ダクト部分10内へ流入する空気の単位時間当りの流量、等の種々条件を前提として決定される。具体的には、本願発明者が実施した実験の結果(後述)に基づき、入口角度R1が40〜60°の範囲に設定され、より好ましくは45〜60°程度に設定するのが望ましい。
【0014】
また前述した出口角度R2は、バイパス路30を直線状に設けた場合、屈曲部の内角と入口角度R1により決定され、該屈曲部の角度が直角(90°)であれば、必然的にR2=90−R1となる。従って出口角度R2は、入口角度R1が40°の場合は50°、入口角度R1が60°の場合は30°となり、該出口角度R2は50〜30°の範囲で設定されるようになる。
【0015】
なお、前述したバイパス路30を設けた本実施例の屈曲ダクトDnは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂素材からブロー成形技術に基づいて一体的に成形したり、または前述した樹脂素材からインジェクション成形技術に基づいて成形された複数のピースを組み合わせて形成することが可能である。何れの成形態様から成形された屈曲ダクトDnであっても、バイパス路30が所謂補強リブとしても機能するようになるため、ダクト全体の剛性向上が図られて屈曲方向への撓曲的な変形を好適に防止できる。また、第1ダクト部分10および第2ダクト部分20からなるダクト本体と、バイパス路30とを夫々別体に成形し、後工程においてダクト本体に対して該バイパス路30を組み付けるようにしてもよい。
【0016】
(実験例)
表1および図3〜図10は、バイパス路30を設けた本実施例の屈曲ダクトDnに関し、該バイパス路30の適正な配設態様(配設角度)を求めるべく本願発明者が行なった実験結果を示したものである。ここで本実験は、屈曲ダクトDnを、インストルメントパネル等の内側に配設されて、図示しないエアコンユニットから送出される調温空気をエアアウトレットへ案内する目的で使用することを前提としたもので、実験条件は実際の使用環境に近いものとして設定した。夫々の実験条件は、以下のようである。
【0017】
(a)第1ダクト部分10の諸寸法
・内部幅E1:70mm
・内部高さF1:70mm
・内部断面積W1:4900mm(70mm×70mm)
(b)第2ダクト部分20の諸寸法
・内部幅E2:70mm
・内部高さF2:70mm
(c)屈曲角度:90°(直角)
(d)屈曲部の内角端からの距離S:25mm
(e)バイパス路30の諸寸法
・内部断面積W3:1750mm(25mm×70mm)
(=第1ダクト部分10の内部断面積W1の約1/3)
・幅M:72mm(=第1ダクト部分10の全幅N1=第2ダクト部分20の全幅N2)
(f)空気流量:2m/min
【0018】
実験内容は、前述した実験条件のもとで、バイパス路30の入口角度R1および出口角度R2を変更させた合計6種類の屈曲ダクトDn1〜Dn6と、バイパス路30を設けずに屈曲部の内角面を斜状面40および湾曲面42とした2種類の屈曲ダクトDn7,Dn8に関し、後端開口22における出口最大風速Vmaxおよび圧力損失を測定するものである。そして評価判定としては、後端開口22において測定した出口最大風速Vmaxおよび圧力損失Poの各数値が、図12および図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの出口最大風速Vmaxおよび圧力損失Poよりも小さくなれば良いこととした。
【0019】
また、前述した第2ダクト部分20の後端開口22の開口面積が4900mm、空気流量が2m/minである場合、理論的な出口平均風速が6.80m/sとなるため、この出口平均流速よりも出口最大風速Vmaxの数値が大きくなっている部位は、空気が集中的に吹出していると判断し得る。そして、出口最大風速Vmaxの数値が大きい程に、後端開口22からの空気の吹出しに偏りが大きい(空気が集中的に吹出している)ことになり、バイパス路30が効果的に機能していないことを意味する。換言すると、出口最大風速Vmaxが出口平均流速に近い程に、後端開口22からの空気の吹出しが平均化されていることになる。
【0020】
【表1】

【0021】
先ず、入口角度R1=35°、出口角度R2=55°とした屈曲ダクトDn1の場合では、表1および図3に例示するように、出口最大風速Vmax=8.79m/s、圧力損失Po=15.9Paとなり、夫々の数値が図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)と略同じ結果となった。しかも図3から明らかなように、バイパス路30へ進入した分流空気は、第2ダクト部分20の外側方向へ勢いよく流出して、屈曲部を介して第2ダクト部分20へ流入した主流空気と合流してしまっている。従って、第2ダクト部分20の内側部分(内角側部分)では依然として流通空気の剥離現象が起こっており、後端開口22からの空気は平均的(均一的)に吹出していないことが判る。これは、第1ダクト部分10に対するバイパス路30の入口角度R1が小さすぎるため、空気が該バイパス路30へ進入し易くなっていて分流空気の流入量が多すぎると共に、減勢されることなく第2ダクト部分20内へ勢いよく流出しているためと推測される。また、第2ダクト部分20に対する出口角度R2が大きすぎるため、分流空気が第2ダクト部分20の内側方向へ流出し難くなっていることも原因と考えられる。すなわち、バイパス路30の入口角度R1を35°またはこれ以下に設定した場合では、バイパス路30を設けた効果が殆ど発現しておらず、該バイパス路30を設けた効果が低いと評価される。
【0022】
入口角度R1=40°、出口角度R2=50°とした屈曲ダクトDn2の場合では、表1および図4に例示するように、出口最大風速Vmax=8.60m/s、圧力損失Po=14.2Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)より良好な結果となり、バイパス路30を設けた効果が発現している。但し、図4から明らかなように、第2ダクト部分20の内側部分では依然として流通空気の剥離現象が起こっており、後端開口22から空気を平均的に吹出させる点においてはまだ多少の不満が残ると評価される。
【0023】
入口角度R1=45°、出口角度R2=45°とした屈曲ダクトDn3の場合では、表1および図5に例示するように、出口最大風速Vmax=8.52m/s、圧力損失Po=13.6Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)よりもかなり良好な結果となっている。しかも、入口角度R1=40°、出口角度R2=50°の場合よりも良好な結果となっており、バイパス路30を設けた効果が好適に発現している。また、図5から明らかなように、バイパス路30からの分流空気は第2ダクト部分20の内側方向へ流出するようになり、第2ダクト部分20の内側部分では流通空気の剥離現象が殆ど発生しておらず、後端開口22からは空気が平均的に吹出していると評価できる。
【0024】
入口角度R1=50°、出口角度R2=40°とした屈曲ダクトDn4の場合では、表1および図6に例示するように、出口最大風速Vmax=8.50m/s、圧力損失Po=13.5Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)よりは勿論、入口角度R1=45°、出口角度R2=45°の場合よりも更に良好な結果となっており、この場合でもバイパス路30を設けた効果が好適に発現している。また、図6から明らかなように、バイパス路30からの分流空気は第2ダクト部分20の内側方向へ流出するようになり、第2ダクト部分20の内側部分では流通空気の剥離現象が全く起こっておらず、前述した数値から判定すると、後端開口22からは均一的に空気が吹出していると評価できる。
【0025】
入口角度R1=60°、出口角度R2=30°とした屈曲ダクトDn5の場合では、表1および図7に例示するように、出口最大風速Vmax=8.58m/s、圧力損失Po=14.7Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)よりも良好となっており、バイパス路30を設けた効果は発現されているものの、前述した入口角度R1=50°、出口角度R2=40°の場合や、入口角度R1=45°、出口角度R2=45°の場合と比較すると若干効果が低下している。そして、図7から明らかなように、第2ダクト部分20の内側部分では空気の剥離現象が再び発生し始めている。しかし、前述した数値から判定すると、後端開口22からは比較的均一に空気が吹出していると評価できる。
【0026】
そして、入口角度R1=70°、出口角度R2=20°とした屈曲ダクトDn6の場合では、表1および図8に例示するように、出口最大風速Vmax=8.70m/s、圧力損失Po=17.3Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)よりもむしろ悪化している。これは図8から明らかなように、バイパス路30の入口角度R1が大きすぎて該バイパス路30へ空気が進入し難くなってしまい、このバイパス路30を介して第2ダクト部分20内へ流出する分流空気が微量であるためと推察される。従って、殆どの空気が主流空気となって第2ダクト部分20の外側方向へ集中して流出するようになり、該第2ダクト部分20の内側部分では従来の屈曲ダクトDoと同様に流通空気の剥離現象が起こってしまい、後端開口22からは空気が平均的に吹出していない。すなわち、バイパス路30の入口角度R1を70°またはこれ以上に設定した場合では、該バイパス路30を設けた効果が殆ど表れておらず、むしろバイパス路30を設けたことで圧力損失Poが増大するという悪影響を及ぼすことが判明した。
【0027】
一方、前述したバイパス路30を設けず、屈曲部の内角部に約45°の斜状面40を形成した屈曲ダクトDn7の場合では、表1および図9に例示するように、出口最大風速Vmax=8.54m/s、圧力損失Po=14.5Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDnの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)よりは改善されているものの、吹出しの均一性が悪化している。これは、図9から明らかなように、第1ダクト部分10の壁面と斜状面40との境界エッジ部分で、流通空気の剥離が発生して該斜状面40に沿って空気が流れていないため、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoと同様に第2ダクト部分20の外側方向から集中して空気が流出するためである。従って、該第2ダクト部分20の内側部分では依然として流通空気の剥離現象が起こってしまい、後端開口22からは空気が平均的に吹出さなくなっている。すなわち、屈曲部の内角側を斜状面40を設けた効果が殆ど発現されておらず、空気の平均的な吹出しを実現できないと評価できる。
【0028】
更に、前述したバイパス路30を設けず、屈曲部の内角部に曲率半径が比較的大きい湾曲面42を形成した屈曲ダクトDn8の場合では、表1および図10に例示するように、出口最大風速Vmax=8.37m/s、圧力損失Po=11.3Paとなり、図13に例示した従来の屈曲ダクトDoの数値(Vmax=8.71m/s、Po=15.3Pa)と比較して、出口最大風速Vmaxの低下が見られ、圧力損失Poも少なくなっている。これは、図10から明らかなように、湾曲面42に沿って流通空気が流れるようになるため、第2ダクト部分20の内側方向からも空気が吹出すようになるため、後端開口22からは空気が比較的平均して吹出すと推測される。しかしながら、後端開口22から吹出した直後の空気の拡散がかなり大きくなると共に、更には斜め前方へ偏倚して空気が吹出す傾向があるため、図14に例示した屈曲ダクトDoと同様の問題が発現している。
【0029】
従って、屈曲部の内角側に斜状面40または湾曲面42を形成して、該屈曲部の内部断面積を増大させたとしても、後端開口22からの空気の流出を好適に平均化させ得ないと共に、圧力損失の低減もあまり期待できないことが判明した。そして、屈曲部の内角側にバイパス路30を適切に設けることが、後端開口22からの空気の吹出しを平均化させるために有効かつ効果的かつであることが改めて明らかになった。
【0030】
以上の実験結果から、インストルメントパネル等の車両内装部材の裏側に配設されて乗員室内の空調に供される空気の案内を目的とした屈曲ダクトDnの場合は、前述したバイパス路30の配設態様を、入口角度R1=40〜60°の範囲に設定すると共に、出口角度R2=50〜30°の範囲に設定するのが望ましいことが判明した。また、より好ましくは、入口角度R1=45〜60°程度に設定すると、より一層の効果向上が期待できることも判明した。
【0031】
このように本実施例の屈曲ダクトDnでは、略直角に連設された第1ダクト部分10と第2ダクト部分20との屈曲部における内角側に、第1ダクト部分10と第2ダクト部分20とを空間的に連通するバイパス路30を設けたことにより、第1ダクト部分10内の空気の一部をバイパス路30を介して第2ダクト部分20内へ流出させるようにしたため、該第2ダクト部分20の後端開口22からの該空気の吹出しを平均化させ得る。そして、第1ダクト部分10に連設された入口角度R1を40〜60°に設定することにより、その効果を好適に発現させることが可能となる。
【0032】
図11(a)は、バイパス路30の形態を変更した変更例に係る屈曲ダクトDnの概略断面図である。前述した実施例の屈曲ダクトDnでは、バイパス路30を、第1ダクト部分10から第2ダクト部分20に向け直線状に設けた場合を例示したが、この変更例の屈曲ダクトDnでは、バイパス路30を、第1ダクト部分10から第2ダクト部分20に向け湾曲状に設けたものである。バイパス路30をこのような形態とした場合には、第1ダクト部分10からバイパス路30に対して空気等の流体が進入し易くなると共に、この分流した該流体を該バイパス路30から第2ダクト部分20の内側方向に沿って流出させ易くなる。
【0033】
また図11(b)は、バイパス路30の形態を更に変更した別変更例に係る屈曲ダクトDnの概略断面図である。この別変更例の屈曲ダクトDnでは、バイパス路30を、第1ダクト部分10に連結されている湾曲部分44と、第2ダクト部分20に連結されている直線部分46とから構成したものである。バイパス路30をこのような形態とした場合には、第1ダクト部分10からバイパス路30に対して空気等の流体が進入し易くなると共に、分流した該流体を第2ダクト部分20へ所要角度でスムーズに流出させることができる。なお図示省略するが、第1ダクト部分10に連結される側を直線部分とすると共に、第2ダクト部分20に連結される側を湾曲部分としてもよい。
【0034】
前述した実施例では、車両乗員室内に設置される屈曲ダクトにつき例示したが、本願が対象とする屈曲ダクトはこれに限定されるものではなく、様々な送風装置や流体機械等、種々分野で実施される全てのダクトが対象とされる。また、流通案内する流体も空気に限定されるものではなく、空気以外の種々の気体や、オイルまたは水等に代表される種々液体等を流通案内するダクトが対象とされる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る屈曲ダクトは、第1ダクト部分および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分とからなり、前記第1ダクト部分内へ流入した空気等の流体を第2ダクト部分の後端開口から送出させるものであって、種々の気体または液体を流通案内する屈曲ダクトが全て対象とされる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】好適実施例に係る屈曲ダクトの概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】バイパス路の入口角度を35°、出口角度を55°とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を図示した説明断面図である。
【図4】バイパス路の入口角度を40°、出口角度を50°とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図5】バイパス路の入口角度を45°、出口角度を45°とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図6】バイパス路の入口角度を50°、出口角度を40°とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図7】バイパス路の入口角度を60°、出口角度を30°とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図8】バイパス路の入口角度を70°、出口角度を20°とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図9】バイパス路を設けず、屈曲部の内角側を斜状面とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図10】バイパス路を設けず、屈曲部の内角側を湾曲面とした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図11】変更例に係る屈曲ダクトの説明断面図であって、(a)は、バイパス路を湾曲状とした形態を例示し、(b)はバイパス路を、湾曲部分および直線部分とから形成した形態を例示している。
【図12】従来の屈曲ダクトを例示した概略斜視図である。
【図13】図12に例示した屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図14】屈曲部の曲率半径を大きくした屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【図15】屈曲部の内部に整流板を設けた屈曲ダクトの空気吹出し態様を示した説明断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 第1ダクト部分
20 第2ダクト部分
22 後端開口
30 バイパス路
N1 全幅(第1ダクト部分10の)
N2 全幅(第2ダクト部分20の)
M 幅(バイパス路30の)
R1 入口角度
R2 出口角度
W1 内部断面積(第1ダクト部分10の)
W3 内部断面積(バイパス路30の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ダクト部分(10)および略直角に屈曲してこれに連設される第2ダクト部分(20)からなり、前記第1ダクト部分(10)内へ流入した空気等の流体を第2ダクト部分(20)の後端開口(22)から吹出させる屈曲ダクトにおいて、
前記屈曲部の内角側に、第1ダクト部分(10)の外壁部と第2ダクト部分(20)の外壁部とを空間的に連通するバイパス路(30)を設けた
ことを特徴とする屈曲ダクト。
【請求項2】
前記バイパス路(30)は、前記第1ダクト部分(10)に対して40〜60°の入口角度(R1)で接続される一方、前記第2ダクト部分(20)に対して50〜30°の出口角度(R2)で接続される請求項1記載の屈曲ダクト。
【請求項3】
前記バイパス路(30)の内部断面積(W3)は、前記第1ダクト部分(10)の内部断面積(W1)の1/5〜1/2倍に設定されている請求項1または2記載の屈曲ダクト。
【請求項4】
前記バイパス路(30)は、前記第1ダクト部分(10)から第2ダクト部分(20)に向け直線状に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の屈曲ダクト。
【請求項5】
前記バイパス路(30)は、前記第1ダクト部分(10)から第2ダクト部分(20)に向け湾曲状に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の屈曲ダクト。
【請求項6】
前記バイパス路(30)の幅(M)は、第1ダクト部分(10)側では該第1ダクト部分(10)の全幅(N1)と略同一であり、第2ダクト部分(20)側では該第2ダクト部分(20)の全幅(N2)と略同一である請求項1〜5の何れかに記載の屈曲ダクト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−125575(P2006−125575A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317009(P2004−317009)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】