説明

屈曲波音響装置と、その作成方法

音響装置と、その音響装置の作成方法である。その音響装置は、動作周波数範囲内に共鳴屈曲波モードを有する振動板(10)と、その振動板に繋がれた複数の電子機械トランスデューサ(12)とを含む。振動板領域に亘る正味の横モードの速度がゼロへと向かうように、少なくとも選択された数の共鳴屈曲波モードがバランスされ、かつ、共鳴屈曲波モードのバランシングを実質的に達成するよう、トランスデューサの配置と機械インピーダンスとは構成されている。選択した数の共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化される、複数の節グループ化地点が存在するように振動板のパラメータは構成されていてよい。各々のトランスデューサを、その複数の節グループ化地点のうちの1つに搭載してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウドスピーカーやマイクロフォンのような音響装置に関する。より詳細には、本発明は、ここに参照によって組み込まれる我々の国際出願WO2005/101899Aにおいて説明される、一般的な種類の音響装置に関する。そのような装置は、バランスモードラジエータ(balanced mode radiators)、又はイニシャルであるBMRとして知られている。
【0002】
背景技術
先行技術においては、ピストンのように振舞う、潜在的にモーダルな振動板の作成への数多くの取り組みがなされた。
1)選択したモードの節線上でドライブし、その特定のモードを鎮圧する(通常は最低モード)。
2)静電型スピーカー又は平面磁(Magneplanar)スピーカーの場合と同様、全体の範囲に亘って均一にドライブする。
3)2つのドライバを、特定の非対称の形に配置する(例えば松下の米国特許第4,426,556号(非特許文献2)を参照)。
【0003】
WO2005/101899A(非特許文献1)におけるBMRの教示は、ラジエータのモードが選択した次数に至るまで自由パネルにおけるそのモードと類似するように、モーダルなラジエータをバランスさせることを狙ったものである。このバランスは、トランスデューサのドライブ部についての位置及び質量と、少なくとも1つの機械インピーダンス手段(例えば質量体)とを適切に選択することによって達成される。
【背景技術】
【0004】
【非特許文献1】国際公開第WO2005/101899A号
【非特許文献2】米国特許第4,426,556号
【非特許文献3】国際公開第WO1997/09842号
【発明の開示】
【0005】
1つの態様からは、本発明は、所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有し、該動作周波数範囲内に共鳴屈曲波モードを有するような振動板と、前記振動板に繋がれ、前記振動板とエネルギーを交換するよう構成された、複数の電子機械トランスデューサと、を含み、前記動作周波数範囲内において少なくとも選択されたモードをバランスさせる方向へと向かうよう、前記振動板の前記面積に亘る正味の横モードの速度が少なくとも低減され、かつ、選択された共鳴屈曲波モードのバランシングを実質的に達成するよう、前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとが構成されていることを特徴とする、音響装置である。
【0006】
別の態様からは、本発明は、所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有する振動板を持つ音響装置を作成する方法であって、前記動作周波数範囲内に共鳴モードを持つよう、振動板パラメータを選択する段階と、複数の電子機械トランスデューサを、前記振動板とエネルギーを交換するよう、前記振動板に繋げる段階と、を含み、前記動作周波数範囲内において少なくとも選択されたモードをバランスさせる方向へと向かうよう、前記面積に亘る正味の横モードの速度が少なくとも低減され、かつ、選択された共鳴屈曲波モードのバランシングを実質的に達成するよう、前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとを選択することを特徴とする、方法である。
【0007】
WO2005/101899Aにおいて説明される通り、その面積に亘る正味の横モード速度は、横方向変位の二乗平均平方根(rms: root mean square)を計算することによって定量化できる。トランスデューサの位置と機械インピーダンスとは、正味の横モード速度が好ましくゼロに向かうような、位置と機械インピーダンスとである。円形の振動板に対する計算例が、WO2005/101899において説明されている。その面積に亘る正味の横モード速度をゼロに向かわせるということを達成するためには、相対的な平均変位は、rms横速度の25%未満であるか、又は、好ましくは18%未満であればよい。
【0008】
WO2005/101899Aにおいて更に説明されている通り、ゼロであるような正味の横モード速度のためには、振動板のモードは、「全体ボディ変位」または「ピストン」モードを除き、そのモードが平均変位ゼロを有する限りにおいて(すなわち、ジェネレータ平面より上方のモードの形によって囲まれる領域が、その平面より下方にある領域と釣り合う限りにおいて)、慣性バランスされる必要がある。
このことは、正味の加速度、及び軸上の圧力応答は、単に任意の周波数における運動のピストン構成要素だけによって決定されるということを意味する。
【0009】
WO2005/101899Aにおいては、正味の横モード速度をゼロへと向かわせるための種々の方法が説明されている。1つの方法は、ドライブポイントインピーダンスZmが、理想的な理論上の音響装置のモードに対して最大である位置を計算することを伴う。そのインピーダンスZmはモードについての和から計算されるので、位置の計算値は、その和に含めるモードの数に依存する。一般的には、その位置は考えている最高のモードの節に近接する傾向を持つであろうものの、しかしながら他モードの影響により、その一致は厳密ではないかもしれない。それ故、その位置は平均節位置と考えられる。
【0010】
本発明において、トランスデューサのドライブ部は、好ましくは平均節位置に搭載される。そのような位置は、例えば4番目のモードなど選択されたモードの節線上(又はその近く)にあってよく、それらはWO2005/101899Aにおいて説明されている。このようにして、選択したモードに至るまでのモードは、それらが鎮圧されるか否かに関わらずバランスされる。平均節位置においてドライブすれば、モードにおける振幅は穏やかになるが、しかしながらそのモードを鎮圧するには至らないかもしれない。モーダルな動作は、そのモードの出力を放射バランスに至らせるために、極めて重要である。
【0011】
複数(例えばn)のトランスデューサを、n番目のモードの平均節位置に各々搭載してよい。平均節位置へ搭載することにより、各々のモードにかけられる正味の力がゼロに接近するということが保証される。結果として起こる運動は、ピストンのそれに類似する。しかしながら、その装置は単なるピストンではなく、多くの最低次数モードが強くは励起されないような共鳴ラジエータである。その装置は従って、その放射が軸方向の周波数応答と、併せての電力(power)応答とにおいての大きなピークと下落とをもたらすという点に関して、ドライブされるモードが一般的にアンバランスであるような、ピストンからモーダルへの(piston to modal)遷移についての放射の問題への対処を試みるものである。
【0012】
トランスデューサの配置は、振動板上において対称的かもしれないし、そうではないかもしれない。対称性の議論は、モーダルバランスの理論に基づいている。その振動板は、そのバランシング方法の対象となるモード軸を2以上有していてよい。例えば、長方形の振動板は、長い方の軸に対して対称的に配置された3つのトランスデューサと、もう1つの軸に対してのトランスデューサのペアとを、有してよい。
【0013】
追加的な実用的設計変数としては、幾つかの、又は全てのトランスデューサのドライブ強度、及び/又は質量を等しくしても、又は異なったものとしてもよいということがある。更に、トランスデューサの機械インピーダンスは、そのトランスデューサのドライブ力又は電力とは、程度の差はあれ独立に変えてよい。各々のトランスデューサの機械インピーダンスを、ドライブ位置における実効機械インピーダンスに適合させることができる。その適合した機械インピーダンスにおいては、機械的、電磁気的な減衰の性質、コンプライアンスの反映(reflected compliance)、ドライブ質量、及び利用可能なドライブ力が考慮に入れられるかもしれない。内在するピストン範囲の出力を良く予測するので、低い周波数においてはこの包括的アプローチが役に立つ。これは、従来の箱型ラウドスピーカを設計するために、従来のピストンドライバと共に用いられる、低周波数パラメータの方法と同等である。
【0014】
トランスデューサは慣性的であっても、接地されていてもよい。トランスデューサは、圧電型デバイスであっても、曲げ型デバイスであっても、又は可動コイル型デバイスであってもよい。
【0015】
WO2005/101899Aとは対照的に、実質的にトランスデューサのみの配置と機械インピーダンスとによって、モーダルなバランシングが達成される。好ましくは、全面的にトランスデューサの配置と機械インピーダンスとによって、そのようなバランシングを達成できる。言い換えれば、機械インピーダンス(例えば質量体)が不可欠というわけではない。そうは言うものの、振動板に対して選択した配置に機械インピーダンス構成要素を適用することによって幾らかの微調整をすることは、本発明の音響装置にとって有益かもしれない。それらは、ある範囲内での周波数応答、ないしは平均節の方法を通じては、その密度のせいで分解不可能であるようなより高い次数のモードへの周波数応答を切り取るために、用いられる。
【0016】
例えば、ある応用例においては、ある周波数範囲の、他の範囲に比してのレベルを調整することが有用であると分かるかもしれない。余りにも低過ぎる範囲での設計については、振動板に対して分布質量を、コンプライアントな中間層を介して適用し、調整してよい。中間層における減衰とコンプライアンスとを、分布質量と併せて設計することができる(平均節の方法の適用を妨げないためである)のであり、低周波数においては出力が低減し、一方で高周波数においては、そのコンプライアンスにより、その質量を切り離し、その範囲が影響を受けないよう留めることが可能となるような、振動板を備え付けることが可能である。こうして、幅広い範囲での平準化が機械的に達成される。
【0017】
別の例においては、複数のトランスデューサのうちの1以上を、パッシブ(即ち、電気信号の供給を受けない)なものとしてよいのであり、従ってその主要な質量の特徴のみが、モーダルなバランシングのために使われる。そのパッシブなトランスデューサは電気的に接続を断たれていてもよいし、又はアクティブな増幅器に接続されたままであってもよい。後者の場合においては、ドライブからパネルまでに幾らかの電磁気的な減衰が起こるであろう。
【0018】
2以上の信号チャネルを再生可能な装置に対しては、パッシブなトランスデューサとアクティブなトランスデューサとを組み合わせて用いるのが有益かもしれない。例えば、左右のチャネルを、パネル上での左手側と右手側の領域に向けてよい。より高い周波数においては、より高い次数の、個々のベースにより局在したモードために、トランスデューサはドライブされるかもしれない。より低い周波数においては、適切な信号加算によって、より低い次数の節線の平均的な集合の上を一斉に、同相で動く動作をさせるよう、トランスデューサを促すことができる。低周波数にバランスされたドライブと、間隔を空けての、高周波数におけるソースステレオ再生装置の合算された出力が、結果として得られる。
【0019】
変換中において振動板を動かすよう、トランスデューサを構成してよい。トランスデューサは、ドライブ部を形成するボイスコイルと磁石システムとを備える可動コイル型デバイスであってよい。弾力的吊り下げ装置によって、振動板を胴体に繋げてよい。磁石システムは胴体に接着してよい。
【0020】
吊り下げ装置のための適切な材料には、成形したゴム又は弾性ポリマー多孔性発泡性プラスチックが含まれる。設計において、振動板上における吊り下げ装置の物理的位置を、動作周波数範囲内全般に亘り最も良く適合するところを見つけるために調整してよい。加えて、又はその代わりに、その吊り下げ装置の振る舞いを(例えば、実効的な重心、減衰、及び剛性を突き止めるためにFEAを用いて)モデル化することができる。その性質は、振動板の周囲に関しての実効的、概念的位置における実効的集中定数として計算できる。トランスデューサの位置/質量は、吊り下げ装置の機械インピーダンス効果を相殺するように、それから調整することができる。
【0021】
本発明の3番目の態様によれば、所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有し、該動作周波数範囲内に共鳴モードを有するような振動板と、前記振動板に繋がれたドライブ部を有し、前記振動板とエネルギーを交換するよう構成された、少なくとも1つの電子機械トランスデューサと、を含み、選択した数の共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化される、複数の節グループ化地点が存在するように前記振動板のパラメータは構成され、前記少なくとも1つのトランスデューサと繋がっている前記ドライブ部は、該複数の節グループ化地点のうちの1つに搭載されることを特徴とする、音響装置、が与えられる。
【0022】
別の態様からは、本発明は、所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有する振動板を持つ音響装置を作成する方法であって、前記動作周波数範囲内に共鳴モードを持つよう、振動板パラメータを選択する段階と、少なくとも1つの電子機械トランスデューサのドライブ部を、前記振動板とエネルギーを交換するよう、前記振動板に繋げる段階と、を含み、選択した数の共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化する、複数の節グループ化地点が存在するように前記振動板のパラメータを選択し、前記少なくとも1つのトランスデューサの前記ドライブ部を、該複数の節グループ化地点のうちの1つに繋げることを特徴とする、方法である。
【0023】
選択されるモードは、例えば最初の2つ、ないしはそれ以上のモードのような、低周波数共鳴モードであってよい。このようにして、例えば4番目のモード等、選んだモードに至るまでの全てのモードについての節線上に、又はその近くに、トランスデューサを搭載してよい。あるいは、選択したモードには偶数又は奇数のモードのみが含まれてよいし、又は、動作周波数範囲内の全てのモードからの、任意の組み合わせを選択してもよい。
【0024】
「奇数」、「偶数」という用語は、モードの数を指すものである。(0,2)を含む数字によって節線の数を示す。(0,2)は、1つの方向には屈曲がなく、もう1つの方向には2つの節線があるため、第1共鳴屈曲波モードとして定義される。完全を期すために、(0,1)は物体「全体」ないしはピストンのモードであることに注意する。この表記法の結果として、奇数モードは反対称的であり、偶数モードは対称的ということになる。奇数と偶数のモードの組み合わせを適切に選択すれば、軸方向の周波数応答を改善できる。トランスデューサを、節グループ化地点を選択して配置することを通じて、全体ボディでの寄与をサポートできる可能性もある。すなわち、最も低い利用可能な周波数における準ピストン的な動作を促すということであって、それは最も幅広い周波数範囲を提供するためである。
【0025】
円形の振動板、又は、円形の振動板の中心を横切る区域として考えることができるビーム状振動板のように、対称的な物体に対しては、対称的なモードがバランスしているのであり、軸上での放射を起こさない。反対称的なモードはアンバランスであり、音響装置を設計するときにはよく検討しなければならない。そのような対称的な物体に対しては第1及び第2の偶数モードが同時に起こるのであり、従ってモードにおける放射をバランスするために、これらモードの両方についての節にトランスデューサを同時に搭載することができる。
【0026】
複数のトランスデューサ(例えばn)を用意し、その各々を、節グループ化地点に搭載してよい。トランスデューサの数を節グループ化地点の数に一致させてよい(例えばn箇所にn個のトランスデューサを配置してよい)。
【0027】
そのような位置のためのドライブは、それらのモードに対するモード放射のバランスをもたらし、従ってラジエータの軸上圧力応答を改善する傾向がある。言い換えれば、これらグループ化された位置はWO2005/101899Aにおいて教示される平均節位置に一致してよいが、必ずしも一致する必要はない。
【0028】
振動板のパラメータには、形状、サイズ(アスペクト比)、厚さ、曲げ剛性、表面面積密度、剛性率、異方性、曲率、及び減衰、が含まれる。振動板はパネルであってよいし、平面的でも、曲がっていても、くぼんでいてもよい。
【0029】
振動板は、長方形、円、又は他の規則的多角形など、規則的な形状を有してよい。あるいは、振動板はより複雑な幾何学的形状であってよく、その形状は、選択した節グループ化地点においてクラスタ化する節線の所望の位置に従って、又はその節線の所望の組み合わせに従って、選択されていてよい。振動板にはまた、インピーダンスを不連続にするために十分な深さを有する溝を与えてもよい。その不連続により、溝を越えての共鳴屈曲波振動の伝播は顕著に低減されるかもしれない。このようにして、形状を円や長方形等のより単純な形状へと、振動について分解(vibrationally resolved)することができる。
【0030】
振動板の厚さは一様であってよい。あるいは、例えば熱形成過程や真空成形の間での加熱や圧縮により全体に等高線やうねりを持たせて、振動板を成形することもできる。等高線やうねりによって節線が移動し、選択した節グループ化地点の位置が変わるか、又は選択された節グループ化地点においてクラスタ化される節線が変わるかもしれない。そのような等高線やうねりは、局所的な剛性の変動を利用したものである。
【0031】
主要な屈曲平面における局所的剛性を実質的に増加はさせないような、「I」形状での拡張を施すことで、振動板の局所的な厚さもまた増加するかもしれない。例えば相互成形(co−moulding)により、追加的な質量体(masses)を、振動板と共に一体的に形成することも可能である。「I」形状での拡張、及び/又は一体的な質量体によって、例えばより高次のモード等、他の振動モードを補い、バランスさせ、ないしは調整することができる。
【0032】
振動板を成形することは、シート又は複合材料から振動板を切り抜くことに優る、追加的な利点を与えるものである。例えば、より質の高い表面仕上げや、表面レリーフや装飾的アートワークを含む、商標や類似の潜在的識別表示の機会が与えられる。例えば、サラウンドサスペンション、及び/又はボイスコイル前部のような、スピーカー構成要素の正確な登録のための溝または出っ張りを、振動板に一体的に組み込むこともできる。ロック部材、成形されたフック、構成要素を捕らえるための先細った溝又はアンダーカットされた溝を、振動板に一体的に組み込むこともできる。
【0033】
スタイリングという理由から要求されるかもしれないような、複雑な幾何学構造が、標準的技法を用いてモデリング可能であるような規則的な形状として振舞うように、パラメータを組み合わせることができる。パラメータの組み合わせには、エリア質量、剛性又は溝の変動を含んでよい。例えば、成形された自動推進用部品(automotive trim)のサブ区域(「A」状の柱のためのカバーかもしれない)を、本発明がそれから適用されるような、より規則的な形状として、音響学的に振舞うように設計することができる。
【0034】
各々の実施形態においての音響装置として、トランスデューサが自身に加えられる電気信号に応答して振動板に屈曲波エネルギーを加えるよう構成され、そして振動板が放射領域に亘って音響サウンドを放射するよう構成されるような、ラウドスピーカーを用いてよい。あるいは、振動板上で音響サウンドが起こるときにその振動板が振動するよう構成され、そしてトランスデューサがその振動を電気信号に変換するよう構成されるような、マイクロフォンを音響装置として用いてよい。動作周波数範囲は、ピストンからモーダルへの遷移を包含するものであってよい。振動板パラメータを、動作周波数範囲内において、ピストン範囲の上に2以上の振動板モードが存在するようにとってよい。音響装置は、より低い周波数においてはピストンとして動作し、より高い周波数においては複雑なモーダルラジエータとして動作してよい。第1の共鳴又は全体ボディモードは、モーダルラジエータに対して知られている問題、すなわち、第1モードと新しい幾つかのモードの間での出力において大きなギャップがあることの結果として、より低い周波数においては遷移が困難であるということについての問題を、好ましくは解決するよう促される。
【0035】
装置のパラメータは、ピストン対モーダルでの出力における所望の割合を達成するよう、選択してよい。それは、高周波数における軸外への力という恩恵を与えるようなモーダルな振る舞いからの寄与である。後方チャネルを適用するために、又は、相関の弱い軸に関する出力において、より指向的ではない、周囲を取り巻くような音の広がりを提供することが所望されるようなサラウンドスピーカのためには、モーダルな寄与に比較してのピストン的な寄与を低減させることが所望される。そのような装置においては、軸上放射に対しての軸外放射の割合が改善される。トランスデューサを適切にスケーリングし配置することで、又は、周波数と共にドライブのフェーズを変えることによって、軸上ピストン構成要素における振幅を低減させることができる。
【0036】
低周波数まで伸びる装置のために、低周波数システム設計に関する通常のパラメータ、すなわちバスレフ(bass reflex)の備え付け、密閉したボックス、及び関連する手段を用いてパフォーマンスとパワー操作を最適化することができる。そのような性質は、要求される周波数範囲内でのモード放射をバランスさせるために用いられる尺度には本質的に依存しない。
【0037】
本発明における第1及び第2実施形態の任意の特徴を、第3及び第4の発明における任意の特徴と組み合わせてよい。
【0038】
これら発明からの任意の1つに従って装置を設計するに際して、一般に利用可能であるモーダルアナライザの1つ、又はFEAパッケージを入手すれば、設計者にとっては助けとなるであろう。それらは、モードの振る舞いと節線とを調査し、そして励起子と結果として生じる音響作用とを配置することを容易にするであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図面の詳細な説明
図1aは、共鳴屈曲波モードをサポートすることができる振動板10と、その振動板内で共鳴を励起するために、その上に対称的に搭載されたトランスデューサ12のペアとを含む、ラウドスピーカーを示す。振動板10は、ビーム形状パネルの形をとっている。トランスデューサはパネルの長軸に沿って配置されており、各々はパネルの短端から、パネル長の23%の距離にある。2つのトランスデューサは、第1及び第2のモードに対する節線に近接して、配置されている。
【0040】
この2モードの解決手段を有効なものとするためには、自由プレートとして振舞うように振動板を搭載する必要がある。従来のドライブユニットラジエータにおいては、中心においてと周辺においてとの両方に、機械の末端部が存在する。しかしながら、そのような末端部によって、モード放射の寄与は非常にアンバランスとなる。
【0041】
本発明においては、機械的な意味で動作が軽く、要求される放射バランスモードの振る舞いを邪魔しないような支持部品、及び吊り下げ部品を与えることができる。あるいは、これら部品は、バランスの取れた音響システムの一部を形作るよう、具体的に設計される。
【0042】
図1bの回路図に示されている通り、各々のトランスデューサ12は、対応する増幅器14に接続されており、その増幅器は対応する抵抗器16に接続されている。両方の増幅器14はまた、例えばインダクタのような低域通過フィルタに接続されていてもよい。その2つの分離されたトランスデューサは、左右の信号チャネルを構成する。低域通過フィルタによって、共鳴パネルの全幅に亘るソースの分離という要求を満たすための、両方のトランスデューサのより高い周波数での動作が保証される。これは、より複雑な高周波モードの分布は、励起子領域、幅広い指向性のポイントソースに対する音響学的近似、に局在する傾向があるためである。
【0043】
図2aは、振動板における細長い長方形の形状を除いては図1aのラウドスピーカーと一般的に類似している、ラウドスピーカーを示す。その振動板は、図1aにおけるビーム形状振動板に比較して、幅が拡大されている。トランスデューサ12は図1aにおけるのと同じ位置に搭載されており、ステレオ装置のために左右のチャネルを提供することができる。
【0044】
図1aと同様、2つのトランスデューサは、第1及び第2の自由共鳴モードについての節上に搭載される。その対称的な配置は、第2モーダル周波数に至るまでピストンと同等な動作を達成することにより、最初の2モードへのこの解決手段をもたらす。しかしながら、この振動板は、自由プレートと見なされなければならないのであり、その端が中心にある吊り下げ部品によって著しく抑制されてはならない。
【0045】
パネル材料が十分堅くない場合、トランスデューサを2つしか用いないのであれば、低周波数においてパネルのピストン運動は阻害される。1つの解決手段は、例えばハチの巣状の材料(Honipan HHM−PGP−2.2mm等)のような、著しく堅いパネル材料を用いることである。基本共鳴の周りでの反応が平滑化されるであろうし、移動質量が減ることにより効率が上がる。
【0046】
トランスデューサボイスコイルのサイズは、放射パネルの幅の実質的な割合に対応する。そのような場合、実際は2つのドライブに同等であるような、ドライブラインのペアとしてドライブを説明することができる。そのような狭いパネルに対しては、ボイスコイル直径、ドライブラインにおいて共有される有効質量、及び役立つようにバランスされたモード放射という、要求されている目標を達成するための、識別された節線をグループ化するための効果的な配置、を協調的に選定することが不可欠である。
【0047】
図2bにおいてのラウドスピーカーは図2aにおいてのそれと類似しているが、しかしながらそれは、振動板の中央に搭載された追加的トランスデューサ22を含んでいる。2つの最外部トランスデューサ12は、第1及び第2モードの節線に近接して配置されている。第3のトランスデューサ22は、第3モードの節に配置される。このようにして、3つのモードの解決手段が、3つのドライバだけを用いて設計された。トランスデューサの位置は、主要なもの、すなわち長さ、軸のみから訂正される。平均横速度がゼロへと向かう傾向をもたらすという要求は、この主要長軸に対して満たされる。
【0048】
ラウドスピーカーは、1つの音声チャネルを再生してよい。あるいは、2又は3の音声チャネルが再生されてもよい。2つの音声チャネルに対しては、振動板の端に近接して配置された2つの分離されたドライバによって図1aと同様な左右の信号チャネルを構成しつつ、高周波数において中央のトランスデューサを除去してよい。3チャネル装置に対しては、高周波数において選択的に、中央チャネル信号ソースによって、中央のトランスデューサ22もドライブされる。それによって、ダイアログ又は中央チャネル再生装置が形成される。
【0049】
上述の通り、図2bは主要長軸に対する3モードの解決手段である。図3aと図3bとは、4モードの解決手段に対するトランスデューサの位置24を示す。主要長軸に関しての位置が、図3aにおいて示されており、幅の軸に関しての位置は図3bに示されている。この解決手段は、対称的に置かれたトランスデューサペア2つを形成するような、4つのトランスデューサのみによって実現される。図3aにおいて示されている通り、トランスデューサの各々のペアは、短軸に対して平行であって、最も近い短端からはパネル長の23%のところにある線の上に、存在している。同様に、図3bにおいて示される各々の平行線は、最も近い長端からはパネル長の23%のところにある。トランスデューサの位置は、両方の軸について対称的である。その対称的な設計により低周波数においての良好な動的バランスが保たれるのであり、それによって、低周波数ピストン又は全体ボディ運動の範囲内でのパワー操作が改善される。
【0050】
図4は、円形状の振動板30に対する2モードの解決手段を示す。円状のドライブ32を有するトランスデューサが、第1及び第2のモードの節線上に搭載される。
【0051】
2以上のモードについてのモーダルなバランシングを同時に達成するためには、選択されるモードは、同一の局所領域内で交差するか、又は殆ど交差するような節線を有するべきである。トランスデューサは、その局所領域に配置するべきである。大抵のモードは、振動板全体を横切って広がるような節線を、パネル上でその節線が交わる少なくとも1つの地点を与えつつ、有するであろうから、2つのモードの場合に対して上記の達成を図ることは容易である。図5aは、4つの位置33で交差するような、長方形パネル振動板における(0,2)と(2,0)の節線を示す。従って2モードの解決手段を実現するために、トランスデューサをこれらの位置における任意の1つに搭載してもよいし、又は全ての位置に搭載してもよい。節への指示である(0,2)と(2,0)とは、それぞれ長軸と短軸においての第1共鳴屈曲波モードを指している。各々のモードは2つの節線を有するのであり、そして対称的である。
【0052】
2を超えるモードを鎮圧するのはより困難である。図5bは、(1,1)から(0,3)までの9モードを示す。3つの節線が4つの離散した点34において交差しており、追加して2つの節線が、各々の交差点の近くを通過している。これら5つの節線が、こうして位置についてクラスタ化されるのであり、その位置を節グループ化地点と称してよい。そのグループ化地点は、パネル上に対称的に配置されている。パネル形状を適切に選択することにより、選択したモード群を鎮圧できるように、節線をクラスタ化、または脱クラスタ化することが可能である。トランスデューサに繋がっているドライブ部よりも小さい領域内部で節線が交わる場合、クラスタ化は密接して起こると考えられるし、その領域がより大きければ、クラスタ化は緩く起こると考えられる。
【0053】
図5bのパネルにおけるアスペクト比は4:3(長さ:幅)である。図5cから図5eにおいて、図5bにおけるパネルのバリエーションを示す。それらパネルは長方形ではないため、図5bにおいてのモード番号表記法は厳密には当てはまらないのではあるが、便宜上図5cから5eにおいて図5bにおけるのと同様のモード番号付けを用いる。図5cに示す通り、2つの長さの比が4:3.5になるようにと(すなわち一方の側が12.5%短くなるようにと)パネルの一方の側が先細りしており、この結果としてクラスタは実質的に、特に短い側と先細った側付近のグループ化節地点に対しては、密接なものとなる。ここでは、大体同一の地点36において5つのモードが交差していて、この交差点36の近くを更に2つのモードが通過している。従って、今は7つのモード(節線)が、この節グループ化地点に存在する。先細った側付近におけるもう一方の(すなわち長い側に近い)節グループ化地点38においても、5つのモードが近接してクラスタ化されており、クラスタ化が改善されている。図5bの実施形態とは対照的に、4つの地点はもはや対称的ではないし、そのクラスタ化も同一ではない。
【0054】
図5dにおいては、パネルの両側が細くなって、長さと幅の比が3.5:3である平行四辺形を形成している。5つの節線についての密接したクラスタを有する2つの地点40と、異なった形状の、しかしながら同様に密接な5つの節線についてのクラスタを有するもう一方の2つの地点42とを有するパネルの対角線について、何らかの対称性が存在する。
【0055】
図5eにおいては、パネルの両側が細くなって、比率4:3:3(長い側の長さ対、短い側の長さ対、幅)である台形を形成している。5つの節線についての密接したクラスタを有する、短い側に最も近接した2つの節グループ化地点44を有するパネルの短軸について、何らかの対称性が存在する。節グループ化地点46は長い側に近接し、著しく緩い。
【0056】
図6aにおいては、複雑な幾何学構造を有するパネル振動板50が示されている。第1の輪状モードと第1の横断モードという2つのモードについての節線52が示されている。節線は4つの交差点で交差するのであり、それは密集した交差点の2つのペアへとグループ化することができる。各々のペアは、そこにおいてトランスデューサ54をパネル振動板に繋げるような平均節位置を定める。交差点よりも、むしろその平均節位置に各々のトランスデューサ54を搭載することによって、各々のトランスデューサは両方の節線を補い、そして所望のモーダルなバランシングを達成するためにそのモードとより良く繋がる。
【0057】
図6bにおいては、パネル振動板上に第2の横断モードが示されている。第3の平均節位置を定める密集した交差点のペアにおいて、輪状モードはこの第2の横断モードと交差する。両方の節線を補うため、パネル50には追加的な質量体56が搭載される。2つのトランスデューサは、音響的応答において主要である第1の2モードを、バランスさせる。追加的質量体は第3のモードをバランスさせ、全体の集合体の動的なバランシングを助ける。
【0058】
図7aにおいては、別の複雑な形状をしたパネル振動板60が示されており、それはホラ貝の形をとっている。最初の12モードが、そのパネル上に示されている。WO97/09842(非特許文献3)において示されるタイプの先行技術の分散モードラウドスピーカーに対しては、最大限のモードカップリングのために、トランスデューサは空いている領域内に搭載されるであろう。しかしながら本発明においては、節線がクラスタ化されている節グループ化地点にトランスデューサを搭載する。
【0059】
図7bにおいては、最初の3モードのみを考慮することによって、トランスデューサの位置選択が簡素化されている。仮にトランスデューサを第1の2つの軸モードについての交差点62(小さい円で示されている)に搭載したとすれば、第1の(そして唯一の)放射モードはアンバランスとなるであろう。放射モードが再びバランスされるように、搭載をこれらの地点において行い、そして端にバランシング質量体を備え付けるのが、1つの解決手段であろう。
【0060】
2つの図を比較すると、図7aにおける節線のクラスタは、多くの場合において、図7bにおいて示されるモードの交差点に一致する。従って、この形状の質量中心64(星でマークされている)について正反対にある、そのような点のペアをドライブポイントとして用いることが、1つの代替的解決手段である。放射モードは、その節線上でドライブすることによりバランスされるであろう。2つの軸モードは、対称的な備え付けによりバランスされるであろう。ドライブポイントの正確な位置は、分析(例えば有限要素解析のように数値的な、又は系統だった測定による分析)と調整とによって決定することができる。推奨される出発点が、長方形と三角形とで指示されている。
【0061】
円と三角形を通過するモード形状の中心線の大変近くに、長方形がある。従って、マークされていない交差点の近くに追加的なバランシングポイントが要求されるかもしれない。これらによって、その長方形に近いドライブ質量体の影響がバランスされるであろう。
【0062】
この基本原理を、そのモーダルな振る舞いが、その複雑な形状にもかかわらず、より単純な集団へと解析的に分解できるような、より複雑な振動板形状へと拡張することができる。それらの集団は、内在する自由度又は実効的な振動軸に対応するであろう。音響パネルの設計者は、解く価値のあるモードの数と、意図した応用のために見込まれているコストと質とに従って採用された、複数の励起子を用いて、これらの軸の複数に対処することを選択してよい。
【0063】
その原理をそのままで用いてもよいし、又は、例えば分散モード(DM:distributed mode)技術等、他のモーダルパネル技術と併せて用いてもよい。
【0064】
この装置のBMRラジエータに優る主な利点は以下の通りである。
1)BMRにより教示される全ての平均節位置を強制、すなわちドライブすることにより、BMRを超える出力を生み出す。
2)BMRに対するよりもその指向性は狭いではあろうが、このことはいくつかの状況においては利点となり得る。
【0065】
本発明に従った装置は、ピストンラウドスピーカー装置(そこにおいてモードが相殺されるピストンラウドスピーカーを含む)とは異なるのであり、それは例えば以下のような、複数の理由による。
a)それは、意図された共鳴モーダルラジエータである。
b)軸外モード放射の寄与を設計することにより、その装置が同等のサイズのピストン装置よりも優れた電力応答を有するように、設計構成がなされている。
c)主要な音声出力を維持するために本質的に一様な全体ボディ放射を残しながら、そのモード放射がバランスされることによって、平滑な軸方向周波数応答を有する。
d)共鳴するパネル上の平均節線の領域での複数のドライブによる手段を用いることにより、それによって全ての続いて起こる低次モードがグループとして処理されるような、高次モードから出発する、モードバランシング問題を解決するための規則的な設計手段が与えられる。
e)パネルを自由空間に自由に吊り下げるか、又は、軽い重量で吊り下げてもよい。後者の場合、前方と後方の放射の間に音響的なシール(seal)を与えることができる。
【0066】
対称的な配置を可能とすることにより、本発明に従った装置においては非対称を要求する先行技術の装置よりも低周波数の安定性が改善されているということは、追加的な利点である。
【0067】
添付図面において、本発明をその例示により図式的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1aは、本発明における第1及び第2の態様に従ったラウドスピーカーの第1実施形態の平面図である。図1bは、図1aの実施形態に関連した回路図である。
【図2】図2aと図2bとは、本発明の択一的実施形態の平面図である。
【図3】図3aと図3bとは、本発明の択一的実施形態の平面図である。
【図4】図4は、本発明の択一的実施形態の平面図である。
【図5】図5aから図5eは、本発明における第3及び第4の態様の概念を図解する。
【図6】図6aと図6bとは、複雑な形状をした実施形態の平面図である。
【図7】図7aと図7bとは、複雑な形状をした択一的実施形態の節線のマップを示す、平面図である。
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図3a】

【図3b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有し、該動作周波数範囲内に共鳴屈曲波モードを有するような振動板と、
前記振動板に繋がれ、前記振動板とエネルギーを交換するよう構成された、複数の電子機械トランスデューサと、
を含み、
前記動作周波数範囲内において少なくとも選択されたモードをバランスさせる方向へと向かうよう、前記振動板の前記面積に亘る正味の横モードの速度が少なくとも低減され、かつ、選択された共鳴屈曲波モードのバランシングを実質的に達成するよう、前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとが構成されていることを特徴とする、音響装置。
【請求項2】
前記トランスデューサは平均節位置に搭載される、請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記トランスデューサは前記振動板上で対称的に搭載される、請求項1又は2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記振動板は長方形の振動板であって、
長い方の軸について対称的に配置された3つのトランスデューサと、
短い方の軸について対称的に配置されたトランスデューサのペアと、
を含む、請求項3に記載の音響装置。
【請求項5】
前記トランスデューサのうちの少なくとも2つは異なったドライブ強度を有する、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項6】
各々のトランスデューサの前記機械インピーダンスは、ドライブ位置における実効機械インピーダンスに適合される、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項7】
前記トランスデューサは慣性的である、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項8】
前記トランスデューサは、圧電型デバイス、曲げ型デバイス、又は可動コイル型デバイスである、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項9】
質量を有して前記振動板に取り付けられたコンプライアントな中間層を含み、低周波数において出力が低減し、しかしながら高周波数においては出力が影響を受けないように該中間層の減衰とコンプライアンスとが構成されている、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項10】
前記振動板を胴体に繋げる弾力的吊り下げ装置を含む、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項11】
前記吊り下げ装置の機械インピーダンス効果を相殺するように前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとが構成されている、請求項10に記載の音響装置。
【請求項12】
選択された共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化される、複数の節グループ化地点が存在するように前記振動板のパラメータは構成されていて、各々のトランスデューサは、該複数の節グループ化地点のうちの1つに搭載される、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項13】
前記選択されたモードは低周波数共鳴モードである、請求項12に記載の音響装置。
【請求項14】
前記選択されたモードは、奇数モード及び偶数モードの任意の組み合わせ、又は、奇数モード又は偶数モードの任意の組み合わせである、請求項12に記載の音響装置。
【請求項15】
前記振動板のパラメータには、形状、サイズ、厚さ、曲げ剛性、表面面積密度、剛性率、異方性、曲率、及び減衰、が含まれる、請求項12から請求項14のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項16】
前記振動板は複雑な幾何学的形状を有し、該形状は、選択された節グループ化地点においてクラスタ化された節線の所望の位置に従って、又はその所望の組み合わせに従って選択されている、請求項12から請求項15のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項17】
前記振動板は溝を含み、それによって前記複雑な形状は規則的形状へと振動について分解される、請求項16に記載の音響装置。
【請求項18】
前記振動板は全体に等高線又はうねりを有し、それによって節線は移動され、前記節グループ化地点の位置を変えるか、又は前記節グループ化地点においてクラスタ化される節線を変える、請求項12から請求項17のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項19】
主要な屈曲平面における局所的剛性を実質的に増加はさせないような「I」形状での拡張を施すことで前記振動板の局所的な厚さが増加した、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項20】
前記動作周波数範囲にはピストンからモーダルへの遷移が包含される、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項21】
前記装置のパラメータは、ピストン対モーダルでの出力における所望の割合を達成するようなパラメータである、請求項20に記載の音響装置。
【請求項22】
前記音響装置はラウドスピーカーであって、少なくとも1つのトランスデューサが、該トランスデューサに加えられる電気信号に応答して前記振動板に対して屈曲波エネルギーを加えるよう構成され、前記振動板は放射領域に亘って音声を放射するよう構成される、上記請求項のうちのいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項23】
所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有する振動板を持つ音響装置を作成する方法であって、
前記動作周波数範囲内に共鳴モードを持つよう、振動板パラメータを選択する段階と、
複数の電子機械トランスデューサを、前記振動板とエネルギーを交換するよう、前記振動板に繋げる段階と、
を含み、
前記動作周波数範囲内において少なくとも選択されたモードをバランスさせる方向へと向かうよう、前記面積に亘る正味の横モードの速度が少なくとも低減され、かつ、選択された共鳴屈曲波モードのバランシングを実質的に達成するよう、前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとを選択することを特徴とする、方法。
【請求項24】
平均節位置に前記トランスデューサを搭載する段階を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記トランスデューサを前記振動板上に対称的に搭載する段階を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも2つのトランスデューサを異なったドライブ強度で繋げる段階を含む、請求項23から請求項25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
各々のトランスデューサの前記機械インピーダンスを、ドライブ位置における実効機械インピーダンスに適合させる段階を含む、請求項23から請求項26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
コンプライアントな中間層を前記振動板に取り付ける段階と、
低周波数において出力が低減し、しかしながら高周波数においては出力が影響を受けないよう、前記中間層の質量と、減衰と、コンプライアンスとを選択する段階と、
を含む、請求項23から請求項27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
弾力的吊り下げ装置を通じて前記振動板を胴体に繋げる段階を含む、請求項23から請求項28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
前記吊り下げ装置の機械インピーダンス効果を相殺するように前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとを選択する段階を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
共鳴モードの数を選択する段階と、
選択された数の共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化される、複数の節グループ化地点が存在するように、前記振動板のパラメータを選択する段階と、
各々のトランスデューサを、前記複数の節グループ化地点のうちの1つに搭載する段階と、
を含む、請求項23から請求項28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
低周波数共鳴モードを選択する段階を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
奇数モード及び偶数モードの任意の組み合わせ、又は、奇数モード又は偶数モードの任意の組み合わせを選択する段階を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記振動板のパラメータには、形状、サイズ、厚さ、曲げ剛性、表面面積密度、剛性率、異方性、曲率、及び減衰、が含まれる、請求項31から請求項33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
選択された節グループ化地点においてクラスタ化される節線の所望の位置、又はその所望の組み合わせを選択する段階と、
前記所望の位置又は前記所望の組み合わせをもたらすような、前記振動板のための複雑な幾何学的形状を選択する段階と、
を含む、請求項31から請求項34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
前記複雑な形状を規則的形状へと振動について分解するために、溝を前記振動板に作る段階を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記振動板に全体的に等高線又はうねりを与えることにより、前記振動板における節線を移動させる段階を含み、それによって、選択された節グループ化地点の位置が変わるか、又は選択された節グループ化地点においてクラスタ化される節線が変わる、請求項31から請求項36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
ピストン対モーダルでの出力における所望の割合を達成するように前記装置のパラメータを選択する段階を含む、請求項23から請求項28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有し、該動作周波数範囲内に共鳴モードを有するような振動板と、
前記振動板に繋がれた、前記振動板とエネルギーを交換するよう構成された、少なくとも1つの電子機械トランスデューサと、
を含み、
選択された数の共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化する、複数の節グループ化地点が存在するように前記振動板のパラメータは構成され、前記少なくとも1つのトランスデューサは、該複数の節グループ化地点のうちの1つに搭載されることを特徴とする、音響装置。
【請求項40】
前記選択されたモードは低周波数共鳴モードである、請求項39に記載の音響装置。
【請求項41】
前記選択されたモードは、奇数モード及び偶数モードの任意の組み合わせ、又は、奇数モード又は偶数モードの任意の組み合わせである、請求項39に記載の音響装置。
【請求項42】
前記振動板のパラメータには、形状、サイズ、厚さ、曲げ剛性、表面面積密度、剛性率、異方性、曲率、及び減衰、が含まれる、請求項39から請求項41のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項43】
前記振動板は複雑な幾何学的形状を有し、該形状は、選択された節グループ化地点においてクラスタ化された節線の所望の位置に従って、又はその所望の組み合わせに従って選択されている、請求項39から請求項42のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項44】
前記振動板は溝を含み、それによって前記複雑な形状は規則的形状へと振動について分解される、請求項43に記載の音響装置。
【請求項45】
前記振動板は全体に等高線又はうねりを有し、それによって節線は移動され、前記節グループ化地点の位置を変えるか、又は選択された節グループ化地点においてクラスタ化される節線を変える、請求項39から請求項44のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項46】
前記動作周波数範囲にはピストンからモーダルへの遷移が包含される、請求項39から請求項45のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項47】
前記振動板の前記面積に亘る正味の横モードの速度がゼロへと向かうよう、共鳴屈曲波モードがバランスされ、かつ、該共鳴屈曲波モードのバランシングを全面的に達成するよう、前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとが構成されている、請求項39から請求項46のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項48】
前記トランスデューサは平均節位置に搭載される、請求項47に記載の音響装置。
【請求項49】
前記振動板を胴体に繋げる弾力的吊り下げ装置を含む、請求項47又は48に記載の音響装置。
【請求項50】
前記吊り下げ装置の機械インピーダンス効果を相殺するように前記トランスデューサの配置と機械インピーダンスとが構成されている、請求項49に記載の音響装置。
【請求項51】
前記トランスデューサのうちの少なくとも2つは異なったドライブ強度を有する、請求項39から請求項50のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項52】
各々のトランスデューサの機械インピーダンスは、ドライブ位置における実効機械インピーダンスに適合される、請求項39から請求項51のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項53】
質量を有して前記振動板に取り付けられたコンプライアントな中間層を含み、低周波数において出力が低減し、しかしながら高周波数においては出力が影響を受けないように該中間層の減衰とコンプライアンスとが構成されている、請求項39から請求項52のいずれか1つに記載の音響装置。
【請求項54】
所定の面積と所定の動作周波数範囲とを有する振動板を持つ音響装置を作成する方法であって、
前記動作周波数範囲内に共鳴モードを持つよう、振動板パラメータを選択する段階と、
少なくとも1つの電子機械トランスデューサを、前記振動板とエネルギーを交換するよう、前記振動板に繋げる段階と、
を含み、
選択した数の共鳴モードの節線が、そこにおいて、又はその周辺でクラスタ化する、複数の節グループ化地点が存在するように前記振動板のパラメータを選択し、前記少なくとも1つのトランスデューサを、該複数の節グループ化地点のうちの1つに繋げることを特徴とする、方法。
【請求項55】
低周波数共鳴モードを選択する段階を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
奇数モード及び偶数モードの任意の組み合わせ、又は、奇数モード又は偶数モードの任意の組み合わせを選択する段階を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記振動板のパラメータには、形状、サイズ、厚さ、曲げ剛性、表面面積密度、剛性率、異方性、曲率、及び減衰、が含まれる、請求項54から請求項56のいずれか1つに記載の方法。
【請求項58】
節グループ化地点の所望の位置、又は、節グループ化地点においてクラスタ化される節線の所望の組み合わせを選択する段階と、
前記所望の位置又は前記所望の組み合わせをもたらすような、前記振動板のための複雑な幾何学的形状を選択する段階と、
を含む、請求項54から請求項57のいずれか1つに記載の方法。
【請求項59】
前記複雑な形状を規則的形状へと振動について分解するために、溝を前記振動板に作る段階を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記振動板に全体的に等高線又はうねりを与える段階を含み、それによって、前記節グループ化地点の位置が変わるか、又は選択された節グループ化地点においてクラスタ化される節線の位置が変わる、請求項54から請求項59のいずれか1つに記載の方法。
【請求項61】
ピストン対モーダルでの出力における所望の割合を達成するように前記装置のパラメータを選択する段階を含む、請求項54から請求項60のいずれか1つに記載の方法。
【請求項62】
各々のトランスデューサの機械インピーダンスを、ドライブ位置における実効機械インピーダンスに適合させる段階を含む、請求項54から請求項61のいずれか1つに記載の方法。
【請求項63】
コンプライアントな中間層を前記振動板に取り付ける段階と、
低周波数において出力が低減し、しかしながら高周波数においては出力が影響を受けないよう、前記中間層の質量と、減衰と、コンプライアンスとを選択する段階と、
を含む、請求項23から請求項62のいずれか1つに記載の方法。
【請求項64】
弾力的吊り下げ装置を通じて前記振動板を胴体に繋げる段階を含む、請求項54から請求項63のいずれか1つに記載の方法。
【請求項65】
前記吊り下げ装置の機械インピーダンス効果を相殺するように前記トランスデューサの位置と機械インピーダンスとを選択する段階を含む、請求項64に記載の方法。

【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5Dd】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2009−524317(P2009−524317A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550845(P2008−550845)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000157
【国際公開番号】WO2007/083127
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507384629)ニュー トランスデューサーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】