説明

屋外移動体の付着物除去装置

【課題】雨水等の状態のいかんにかかわらずそれらを効率的に除去して常に運転者の視界を確保できる屋外移動体の付着物除去方法及び装置を提供する。
【解決手段】このワイパー装置1は、自動車の運転室周りに配設され、雨水等が付着し得るフロントガラス106に、空気ジェット流Aを吹き付けて当該付着物を除去する装置であって、空気ジェット流Aをフロントガラス106に沿った平面内で吹き付けるとともに、その吹き付け方向を当該平面内で可変とする吹き付け方向可変機構6を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外移動体の付着物除去装置に関するものであって、特に自動車、電車、航空機、船舶等の乗り物のフロントガラス等に付着する雨水等の除去に好適である。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車では、雨中走行時等の運転者のフロントガラスを介しての視界を確保する必要があることから、例えば電動モータ駆動の払拭部材をフロントガラスの前面で左右揺動させることにより、払拭部材をフロントガラスに摩擦接触させて雨水等を払拭する払拭式ワイパーが装備されている。
【0003】
かかる払拭式ワイパーでは、払拭部材がフロントガラスの前面で左右揺動することから、運転者の視界を瞬時さえぎり、安全運転上好ましくない。このため、例えば特許文献1では、自動車の屋根の先端部に複数のノズル管を前後進可能に設置し、該ノズル管の前進時に自動車の前面ガラスに圧搾空気を吹き付けて該圧搾空気の圧力で雨水を飛散除去するエアーワイパーが提案されている。
【特許文献1】特開2005−289336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記払拭式ワイパーでは、フロントガラスと払拭部材とが摩擦接触し、払拭部材が次第に磨耗していくことから、その払拭部材の長期にわたる使用により払拭作用が発揮できなくなり、運転者の視界が確保されなくなるおそれがあった。また払拭部材でフロントガラスを傷めるといったトラブルを起こすおそれがあるため、一定期間ごとに払拭部材を交換する必要があり、特に払拭部材が入手困難なところで、当該トラブルを起こすと事故につながるおそれさえあった。さらにメカニズムが自動車本体の外部に露出しているため、駐車中に第三者が故意にそのメカニズムを破損するおそれもあった。
【0005】
一方、前記エアーワイパーでは、フロントガラスに対して非接触となっていることから前記払拭式ワイパーのような不具合はほぼ解消されるものの、前後進する複数のノズル管で運転者の視界を瞬時さえぎり、やはり安全運転上好ましくない。またガラス体やミラー体に付着する雨水等は、大粒の状態では自重により落下したり、あるいは走行風で飛散したりするのであるが、小粒の状態では表面張力でガラス体やミラー体に強力に張り付く性質があるため、空気ジェット流を一方から吹き付けただけでは、それを効率的に除去することは困難であった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、雨水等の状態のいかんにかかわらずそれらを効率的に除去して常に運転者の視界を確保できる屋外移動体の付着物除去方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(方法)は、屋外移動体の運転室周りに配設され、少なくとも雨水が付着し得るガラス体及びミラー体の少なくとも一部に、空気ジェット流を吹き付けて当該付着物を除去する方法であって、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿った平面内で吹き付けるとともに、その吹き付け方向を当該平面内で可変としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明のように、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の上下又は左右方向となす角度を変えて前記空気ジェット流を吹き付けることが好ましい。
【0009】
請求項3記載の発明のように、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の上下又は左右から交互に前記空気ジェット流を吹き付けることが好ましい。
【0010】
請求項4記載の発明のように、前記付着物の付着頻度に応じて前記空気ジェット流の吹き付け方向の変更タイミングを調整可能であることが好ましい。
【0011】
本発明(装置)は、屋外移動体の運転室周りに配設され、少なくとも雨水が付着し得るガラス体及びミラー体の少なくとも一部に、空気ジェット流を吹き付けて当該付着物を除去する装置であって、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿った平面内で吹き付けるとともに、その吹き付け方向を当該平面内で可変とする吹き付け方向可変機構を具備したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6記載の発明のように、前記吹き付け方向可変機構は、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿うように案内する複数の案内羽と、隣り合う案内羽の一側同士及び他側同士をそれぞれ連結することにより各案内羽を同一方向に揺動させる平行リンクと、前記平行リンクを駆動する駆動源とを備えていることが好ましい。
【0013】
請求項7記載の発明のように、前記駆動源は、前記各案内羽の揺動方向と直角方向に設けられ前記平行リンクを進退駆動するラック及びピニオンと、前記ピニオンを回転駆動するモータとからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、ガラス体やミラー体に付着する雨水等は、大粒の状態では自重により落下したり、あるいは走行風で飛散したりするのであるが、小粒の状態では表面張力でガラス体やミラー体に強力に張り付く性質があるため、空気ジェット流を一方から吹き付けただけでは、それを効率的に除去することは困難である。
【0015】
そこで、請求項1,5に記載の発明によれば、前記空気ジェット流が前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿った平面内で吹き付けられるとともに、その吹き付け方向が当該平面内で可変とされたので、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の付着物が、その状態のいかんにかかわらず、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流で効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0016】
このため前記払拭式ワイパーのように、長期にわたる使用によって、運転者の視界が確保されなくなったり、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部を傷めるようになったりするといったトラブルを起こすおそれがなくなる。またメカニズムを屋外移動体に内蔵できるので、駐車中に第三者が故意にそのメカニズムを破損するおそれもなくなる。また前記エアーワイパーのように、前後進する複数のノズル管で運転者の視界を瞬時さえぎることもないから、常に運転者の視界が確保されるようになる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の上下又は左右方向となす角度が変えられて前記空気ジェット流が吹き付けられるので、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の付着物が、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流で効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の上下又は左右から交互に前記空気ジェット流が吹き付けられるので、この場合も前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の付着物が、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流で効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、前記付着物の付着頻度に応じて前記空気ジェット流の吹き付け方向の変更タイミングが調整可能とされるので、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の付着物が、前記付着物の付着頻度に応じたタイミングで吹き付け方向が変更される前記空気ジェット流でより効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、前記吹き付け方向可変機構は、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿うように案内する複数の案内羽と、隣り合う案内羽の一側同士及び他側同士をそれぞれ連結することにより各案内羽を同一方向に揺動させる平行リンクと、前記平行リンクを駆動する駆動源とを備えているので、簡単な構成で、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の付着物が、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流で効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、前記駆動源は、前記各案内羽の揺動方向と直角方向に設けられ前記平行リンクを進退駆動するラック及びピニオンと、前記ピニオンを回転駆動するモータとからなるので、さらに簡単な構成で、前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の付着物が、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流で効率的に吹き飛ばされるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るワイパー装置を搭載した自動車の全体構成を示す図、図2は本ワイパー装置の全体構成を模式的に示す説明図、図3は吹き付け方向可変機構の動作原理を示す説明図である。
【0023】
図1に示すように、屋外移動体の一例としての自動車100では、前後左右に配置されたタイヤ101で支持される車体102の前部がエンジンルーム103、中央部が運転室104、後部がトランクルーム105に区画されている。
【0024】
運転室104の上部は、ガラス体としてのフロントガラス106と、左右ドアガラス107と、リアガラス108とで囲まれており、これらのガラスを介して運転者が着座した状態で外部を確認できるようになっている。また左右ドア109の適所には、ミラー体としてのドアミラー110がそれぞれ配置されており、運転者が着座した状態で、左右後方を容易に確認できるようになっている。このうちのフロントガラス106の上下には、本発明の特徴をなす付着物除去装置としてのワイパー装置1が備えられている。
【0025】
このワイパー装置1は、自動車100の運転室104のフロントガラス106に、空気ジェット流を吹き付けて付着物としての雨水、雪、塵埃等(以下、雨水等という。)を除去する装置であって、図2に示すように、エンジンルーム103の適所に開口された吸気口2と、吸気口2から空気を吸引するファン3と、ファン3で吸引された空気を所定の風速を有する前記空気ジェット流Aとなして案内するダクト4と、ダクト4で案内された空気ジェット流をそのダクト4の適所に開口された吹き出し孔5,5,・・・を介してフロントガラス106に沿った平面内で吹き付ける際に、その空気ジェット流Aの吹き付け方向を当該平面内で変更する吹き付け方向可変機構6,6とからなっている。ダクト4は、流路抵抗差による流量アンバランスを防ぐために、ファン3の出口直後でそれぞれ上下の吹き付け方向可変機構6,6に向かう枝管4a,4bに分岐し、この枝管4a,4bに、それぞれモータ駆動のダンパ4c,4dを設けるのが好ましい。
【0026】
ついで図2及び図3を参照して、本発明の特徴をなす吹き付け方向可変機構6,6について説明するが、これらは上下対称になっているので、以下ではその一方(下側)についてのみ詳述する。
【0027】
吹き付け方向可変機構6は、具体的には、空気ジェット流A(B,C)をフロントガラス106に沿うように案内する複数の案内羽7,7,・・・と、隣り合う案内羽7,7の基部(一側)同士及び中間部(他側)同士をそれぞれ連結することにより各案内羽7,7,・・・を同一方向に揺動させる平行リンク8と、この平行リンク8を駆動する駆動源、例えば各案内羽7,7,・・・の揺動方向と直角方向に設けられ平行リンク8を進退駆動するラック9及びピニオン10並びにこのピニオン10を回転駆動するモータ11と、コントローラ12とを備えている。
【0028】
図3において、案内羽7aは、案内羽7が上下方向にある場合(初期状態)を示し、案内羽7bは、案内羽7が上下方向に対して左側に傾斜した場合を示し、案内羽7cは、案内羽7が上下方向に対して右側に傾斜した場合を示している。案内羽7(7a,7b,7c)の基部83は、ダクト4の枝管4bに回転自在に軸支されている。案内羽7の中間部82(82a,82b,82c)は、リンク部材81(81a,81b,81c)の左側に回転自在に軸支されている。したがって、案内羽7,7,・・・と、ダクト4の枝管4bと、リンク部材81とで、前記枝管4bをベースとして、リンク部材81が平行移動するとともに、案内羽7,7,・・・が基部83回りに回動(揺動)する、いわゆる平行リンクが構成されている。
【0029】
このリンク部材81の前記回転方向(揺動方向)と直角方向の右側には、所定ピッチのラック9(9a,9b,9c)が歯切りされており、このラック9にモータ11で回転駆動されるピニオン10が噛合している。このピニオン10の歯幅Wは、リンク部材81の移動幅Lよりも大きくとっている。これにより、リンク部材81の平行移動があっても、ピニオン10がラック9に常に噛合するようになっている。
【0030】
コントローラ12は、例えばマイクロコンピュータからなり、吹き付け方向可変機構6を含むワイパー装置1の全体についての各種制御を行うものである。このために、コントローラ12は、図2に示すように、吹き付け方向可変機構6の後述する動作パターンP1,P2,P3を予め記憶させたメモリ13と、運転者の操作するスイッチ16、スイッチ15及びスイッチ16と、ソレノイド駆動のダンパ4c,4dとにそれぞれ電気的に接続されており、例えば運転者がスイッチ14をオン操作した場合には、メモリ13から動作パターンP1を読み出して、当該動作パターンP1によるファン3、モータ11,11の動作を実行し、運転者がスイッチ15をオン操作した場合には、メモリ13から動作パターンP2を読み出して、当該動作パターンP2によるファン3、ダンパ4c,4dの動作を実行し、運転者がスイッチ16をオン操作した場合には、メモリ13から動作パターンP3を読み出して、当該動作パターンP3によるファン3、モータ11,11、ダンパ4c,4dの動作を実行するようになっている。
【0031】
動作パターンP1は、フロントガラス106の上下方向となす角度を変えて空気ジェット流A,B,Cを吹き付けるものである。動作パターンP2は、フロントガラス106の上下から交互に空気ジェット流Aを吹き付けるものである。動作パターンP3は、雨水等の強さ(付着物の付着頻度)に応じて空気ジェット流A(B,C)の吹き付け方向の変更タイミングを調整するものであって、例えば雨が強い場合は、比較的迅速な変更タイミングをとし、雨が弱い場合は、比較的緩慢な変更タイミングとする。
【0032】
引き続いて、本ワイパー装置1の主として吹き付け方向可変機構6の動作を説明する。なお、初期状態では、吹き付け方向可変機構6の案内羽7,7,・・・は、図2に示すように、上下方向、ダンパ4c,4dは全開状態にあって、ファン3、モータ11,11はいずれも停止している。
【0033】
(動作パターンP1を選択する場合)
この場合には、運転者はスイッチ14をオン操作する。コントローラ12は、メモリ13から動作パターンP1を読み出し、この動作パターンP1に応じてまずファン3を起動するので、吸気口2から空気が吸引され、この吸引された空気が空気ジェット流となって、ダクト4の枝管4a,4bにそれぞれ供給される。このときには、案内羽7,7,・・・は、上下方向にあるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、上下方向となる(図3中のAで示す)。
【0034】
ついで、コントローラ12は、吹き付け方向可変機構6のモータ11,11を正転させる。すると、図3において、ピニオン10が例えば時計回り方向に回転し、ラック9が左側に移動する(9a→9b)。これに伴い、リンク部材81が平行移動する。
【0035】
すなわち、リンク部材81は、隣り合う案内羽7,7の基部83同士と中間部82同士とでそれぞれ回転自在に軸支されているので、案内羽7,7は基部83を中心として回動するとともに(82a→82b、7a→7b)、当該リンク部材81は左下側に平行移動する(81a→81b)。これにより、案内羽7,7,・・・は、上下方向に対して左側に傾斜した状態となるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、上下方向に対して左側に傾斜したものとなる(図3中のBで示す)。
【0036】
ついで、コントローラ12は、吹き付け方向可変機構6のモータ11,11を逆転させる。すると、図3において、ピニオン10が反時計回り方向に回転し、ラック9が右側に移動する(9b→9a→9c)。これに伴い、リンク部材81が平行移動する。
【0037】
すなわち、リンク部材81は、隣り合う案内羽7,7の基部83同士と中間部82同士とでそれぞれ回転自在に軸支されているので、案内羽7,7は基部83を中心として回動するとともに(82b→82a→82c、7b→7a→7c)、当該リンク部材81は中央上側を通過して右下側に平行移動する(81b→81a→81c)。これにより、案内羽7,7,・・・は、上下方向に一旦戻った後、さらに上下方向に対して右側に傾斜した状態となるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、上下方向に対して右側に傾斜したものとなる(図3中のCで示す)。
【0038】
ついで、コントローラ12は、吹き付け方向可変機構6のモータ11,11を再び正転させる。すると、図3において、ピニオン10が時計回り方向に回転し、ラック9が左側に移動する(9c→9a→9b)。これに伴い、リンク部材81が平行移動する。
【0039】
すなわち、リンク部材81は、隣り合う案内羽7,7の基部83同士と中間部82同士とでそれぞれ回転自在に軸支されているので、案内羽7,7は基部83を中心として回動するとともに(82c→82a→82b、7c→7a→7b)、当該リンク部材81は中央上側を通過して右下側に平行移動する(81c→81a→81b)。これにより、案内羽7,7,・・・は、上下方向に一旦戻った後、さらに上下方向に対して左側に傾斜した状態となるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、上下方向に対して左側に傾斜したものとなる(図3中のBで示す)。
【0040】
以下、繰り返す。このようにして、フロントガラス106の上下方向となす角度が変えられて空気ジェット流A,B,Cが吹き付けられるので、前記フロントガラス106に付着した雨水等が、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流A,B,Cで効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0041】
(動作パターンP2を選択する場合)
この場合には、運転者はスイッチ15をオン操作する。コントローラ12は、メモリ13から動作パターンP2を読み出し、この動作パターンP2に応じてまずファン3を起動するので、吸気口2から空気が吸引され、この吸引された空気が空気ジェット流となって、ダクト4の枝管4a,4bにそれぞれ供給される。このときには、案内羽7,7,・・・は、上下方向にあるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、上下方向となる(図3中のAで示す)。
【0042】
その際、コントローラ12は、ダクト4の枝管4a内にあるダンパ4cを全閉状態とする。すると、図2における上側の空気ジェットAは吹き出されず、下側の空気ジェット流Aだけが吹き出す。
【0043】
ついで、コントローラ12は、ダクト4の枝管4a内にあるダンパ4cを全開状態に戻すとともに、枝管4b内にあるダンパ4dを全閉状態とする。すると、図2における下側の空気ジェット流Aの吹き出しがとまり、上側の空気ジェット流Aだけが吹き出す。
【0044】
ついで、コントローラ12は、ダクト4の枝管4a内にあるダンパ4cを全閉状態に戻し、枝管4b内にあるダンパ4dを全開状態とする。すると、図2における上側の空気ジェット流Aの吹き出しがとまり、下側の空気ジェット流Aだけが吹き出す。
【0045】
以下、繰り返す。このようにして、フロントガラス106の上下から交互に前記空気ジェット流Aが吹き付けられるので、この場合も前記フロントガラス106に付着した雨水等が、互いに異なる方向から作用する前記空気ジェット流Aで効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0046】
(動作パターンP3を選択した場合)
この場合には、運転者はスイッチ16をオン操作する。コントローラ12は、メモリ13から動作パターンP3を読み出し、この動作パターンP3に応じてファン3を起動するので、吸気口2から空気が吸引され、この吸引された空気が空気ジェット流となって、ダクト4の枝管4a,4bにそれぞれ供給される。このときには、案内羽7,7,・・・は、上下方向にあるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、上下方向となる(図3中のAで示す)。
【0047】
ついで、コントローラ12は、前記動作パターンP1における吹き付け方向可変機構6のモータ11,11の正転と逆転のタイミングを変更する。すると、図2における案内羽7,7,・・・は、上下方向に対して左右両側に傾斜した状態を変更タイミングで繰り返すこととなるので、吹き出し孔5,5,・・・から吹き出す方向は、同タイミングで上下方向に対して左右両側に繰り返し傾斜したものとなる(図3中のA,B,Cで示す)。
【0048】
あるいは、動作パターンP2におけるダクト4の枝管4a,4b内にそれぞれあるダンパ4c,4dの開閉タイミングを変更する。すると、図2における上下からの空気ジェット流Aが変更タイミングで交互に吹き出すこととなる。
【0049】
このようにして、フロントガラス106に付着する雨水等の強さに応じて前記空気ジェット流A(B,C)の吹き付け方向の変更タイミングが調整可能とされるので、前記フロントガラス106の付着物である雨水等が、前記付着物の付着頻度に応じたタイミングで吹き付け方向が変更される前記空気ジェット流A(B,C)でより効率的に吹き飛ばされるようになる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、空気ジェット流A(B,C)の吹き付け方向が可変とされたので、フロントガラス106の付着物である雨水等が、その状態のいかんにかかわらず、互いに異なる方向から作用する空気ジェット流A(B,C)で効率的に吹き飛ばされるようになる。このため前記払拭式ワイパーのように、長期にわたる使用によって、運転者の視界が確保されなくなったり、フロントガラス106を傷めるようになったりするといったトラブルを起こすおそれがなくなる。またメカニズムを車体102に内蔵できるので、駐車中に第三者が故意にそのメカニズムを破損するおそれもなくなる。また前記エアーワイパーのように、前後進する複数のノズル管で運転者の視界を瞬時さえぎることもないから、常に運転者の視界が確保されるようになる。
【0051】
なお、上記実施形態では、屋外移動体としての自動車を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、例えば電車、航空機、船舶等のあらゆる乗り物等の屋外移動体に適用できる。またガラス体としてのフロントガラス106に限定されず、同じくガラス体としてのリアガラス108や、ミラー体としてのドアミラー110にも適用できるし、さらには通常の払拭式ワイパーと組み合わせ適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、吹き付け方向可変機構6を上下に配置したが、左右に配置してもよいし、上下左右の両側に配置してもよい。その場合は、吹き付け方向可変機構6の動作についても、上下左右の両側を同時に動作させてもよいし、相互に動作させてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ダクト4の枝管4a,4b内にそれぞれモータ駆動のダンパ4c,4dを設けたが、ファン3を枝管ごと設けてもよい。その場合には、各ファン3を交互にオン・オフするだけで動作パターンP2を実現できる。
【0054】
また、上記実施形態では、吹き付け方向可変機構6として、モータ11,11で駆動されるラックアンドピニオン機構とリンク機構とを例示したが、モータ11,11に代えてソレノイド、エアーシリンダ等を使用してもよいし、ラックアンドピニオン機構とリンク機構とに代えてギア機構等を使用してもよいのはもちろんである。
【0055】
また、上記実施形態では、動作パターンP1,P2,P3を個別に説明したが、これらの全部又は一部を組み合わせた動作パターンを実行することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るワイパー装置を搭載した自動車の全体構成を示す図である。
【図2】本ワイパー装置の全体構成を模式的に示す説明図である。
【図3】吹き付け方向可変機構の動作原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
100 自動車(屋外移動体の一例)
101 タイヤ
102 車体
103 エンジンルーム
104 運転室
105 トランクルーム
106 フロントガラス(ガラス体)
107 ドアガラス
108 リアガラス
109 ドア
110 ドアミラー〈ミラー体〉
1 ワイパー装置(付着物除去装置)
2 吸気口
3 ファン
4 ダクト
4a,4b 枝管
4c,4d ダンパ
5 吹き出し孔
6 吹き付け方向可変機構
7 案内羽(平行リンク)
8 リンク部材(平行リンク)
9 ラック(駆動源)
10 ピニオン(駆動源)
11 モータ(駆動源)
12 コントローラ
13 メモリ
14,15,16 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外移動体の運転室周りに配設され、少なくとも雨水が付着し得るガラス体及びミラー体の少なくとも一部に、空気ジェット流を吹き付けて当該付着物を除去する方法であって、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿った平面内で吹き付けるとともに、その吹き付け方向を当該平面内で可変としたことを特徴とする屋外移動体の付着物除去方法。
【請求項2】
前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の上下又は左右方向となす角度を変えて前記空気ジェット流を吹き付けることを特徴とする請求項1記載の屋外移動体の付着物除去方法。
【請求項3】
前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部の上下又は左右から交互に前記空気ジェット流を吹き付けることを特徴とする請求項1又は2記載の屋外移動体の付着物除去方法。
【請求項4】
前記付着物の付着頻度に応じて前記空気ジェット流の吹き付け方向の変更タイミングを調整可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の屋外移動体の付着物除去方法。
【請求項5】
屋外移動体の運転室周りに配設され、少なくとも雨水が付着し得るガラス体及びミラー体の少なくとも一部に、空気ジェット流を吹き付けて当該付着物を除去する装置であって、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿った平面内で吹き付けるとともに、その吹き付け方向を当該平面内で可変とする吹き付け方向可変機構を具備したことを特徴とする屋外移動体の付着物除去装置。
【請求項6】
前記吹き付け方向可変機構は、前記空気ジェット流を前記ガラス体及びミラー体の少なくとも一部に沿うように案内する複数の案内羽と、隣り合う案内羽の一側同士及び他側同士をそれぞれ連結することにより各案内羽を同一方向に揺動させる平行リンクと、前記平行リンクを駆動する駆動源とを備えていることを特徴とする請求項5記載の屋外移動体の付着物除去装置。
【請求項7】
前記駆動源は、前記各案内羽の揺動方向と直角方向に設けられ前記平行リンクを進退駆動するラック及びピニオンと、前記ピニオンを回転駆動するモータとからなることを特徴とする請求項6記載の屋外移動体の付着物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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