説明

屋外設置形通信用設備

【課題】商用電源の消費電力を節約することができる屋外設置形通信設備を提供する。
【解決手段】商用電源501から直流電圧を得る第1の電源部5と太陽電池601の出力でバッテリ602を充電する第2の電源部6とを設け、ケース1内に収容された通信用の電子機器2を駆動する電源として第2の電源部6を優先的に使用することにより商用電源の消費電力を節約する。寒冷時にケース1内の温度が電子機器の最低動作保証温度を下回ることが事前に予測されたときに、第1の電源部5から電子機器に通電し、第2の電源部6を無負荷状態にすることにより、第2の電源部6ではバッテリ602の充電のみを行なわせる。ケース1内の温度が最低動作保証温度未満になったときにバッテリ602からヒータ4に通電してケース1内の温度を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信に用いる各種の電子機器をケース内に収容した構成を有する屋外設置形の通信用設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信に用いる電子機器をケース内に収容した構成を有する屋外設置形通信用設備として、移動体通信の基地局、マイクロ波通信回線の中継局、通信線路の途中に挿入される増幅器等を有する中継設備等の種々の設備が用いられている。この種の設備は、ほとんどの場合商用電源の出力を整流して得た直流電圧を電源電圧として動作するように構成されている。
【0003】
一般に通信用の電子機器を正常に動作させるためには、電子機器の周囲温度を所定の動作保証温度範囲に保つ必要がある。従って、寒冷地仕様の屋外設置形通信用設備においては、特許文献1に示されているように、ケース内を加熱するヒータを設けて、ケース内の温度が電子機器の最低動作保証温度を下回ったときにヒータに通電することによりケース内の温度を動作保証温度範囲に保つようにしている。
【0004】
この種のユニットにおいては、寒冷時にヒータに通電する必要があるため、商用電源の消費電力が多くなり、運転コストが高くなるのを避けられない。そこで、商用電源の他に太陽電池等の自然エネルギを利用した発電体と該発電体の出力で充電されるバッテリとを備えた自然エネルギ利用電源を設けて、自然エネルギ利用電源が十分な出力を発生する状態にあるときには自然エネルギ利用電源を商用電源よりも優先して使用することにより、消費電力の節約を図ることが考えられる。このような考え方自体は、特許文献2や特許文献3に示されているように既に知られている。
【特許文献1】特開2004−281993号公報
【特許文献2】特開平10−285825号公報
【特許文献3】特開2004−220521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信用の電子機器を収容したケース内を加熱するヒータを備えた寒冷地仕様の屋外設置形通信用設備において、商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する電源と、自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えた自然エネルギ利用電源とを設けて、自然エネルギ利用電源を優先的に用いて電子機器に電力を駆動するようにした場合には、自然エネルギ利用電源に常時負荷がかかっているため、ケース内の温度が電子機器の最低動作保証温度を下回った際に自然エネルギ利用電源のバッテリが相当に消耗した状態にあることが考えられる。
【0006】
ケース内の温度が通信用電子機器の最低動作保証温度を下回ったときに自然エネルギ利用電源のバッテリが消耗していると、自然エネルギ利用電源からヒータへの通電を短時間しか行なうことができないため、結局商用電源から通信用電子機器とヒータとの双方に電力を供給することが必要になり、商用電源の消費電力の節約を図ることができない。
【0007】
本発明の目的は、ヒータに通電する必要が生じたときに極力自然エネルギを利用した電源からヒータに通電することができるようにして、商用電源の消費電力の節約を図ることができるようにした寒冷地仕様の屋外設置形通信用設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケースと、ケース内に収容された通信用の電子機器と、ケース内を加熱するヒータと、通信用電子機器及びヒータに電源電圧を与える電源装置とを備えた屋外設置形通信用設備を対象とする。
【0009】
本発明においては、上記電源装置が、商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、ケース内の温度を検出する内部温度センサと、ケース内の温度が電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満に低下するか否かを事前に予測する温度予測手段と、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満の温度にまで低下することはないと予測されているときには第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして電子機器に通電し、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満の温度まで低下すると予測されたときにはケース内の温度が規定温度未満になるまでの間第2の電源部を無負荷状態にして第1の電源部から電子機器に通電し、ケース内の温度が規定温度未満の温度まで低下したときには第1の電源部から電子機器に通電するとともに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにしてケース内の温度が規定温度を超えるまでの間ヒータに通電するように電子機器及びヒータへの通電を制御する通電制御手段とを備えている。
【0010】
上記のように構成すると、ケース内の温度が規定温度未満の温度まで低下すると予測されたときにケース内の温度が規定温度未満になるまでの間第2の電源部を無負荷状態として、該第2の電源部でもっぱらバッテリの充電を行なわせることができるため、ケース内の温度が規定温度未満になるまでの間に第2の電源部のバッテリに十分なエネルギを蓄えておくことができる。従って、ケース内の温度が規定温度未満になったときに、第2の電源部からヒータに、ケース内の温度を上昇させるために十分な時間通電することができ、商用電源の消費電力を節約することができる。
【0011】
上記温度予測手段は、ケース内の温度の変化の仕方からケース内の温度が規定温度未満に低下することを予測するように構成することができる。例えば、時間の経過に伴ってケース内の温度が規定温度に向けて低下し続ける傾向を見せたときに、ケース内の温度が規定温度よりも所定の温度だけ高い温度に設定された判定温度まで低下した時点でケース内の温度がまもなく規定温度未満の温度まで低下すると予測するようにすることができる。
【0012】
また内部温度センサの他に、ケース外の温度を検出する外部温度センサを設けるとともに、ケース外の温度が規定温度に等しいか、または規定温度よりも設定温度だけ高く設定された判定温度まで低下したか否かを判定するケース外温度判定手段を設けて、該判定手段によりケース外の温度が判定温度未満になったと判定されたときに、ケース内の温度がまもなく規定温度未満になると予測するようにすることもできる。
【0013】
本発明の好ましい態様では、ケース外の温度を検出する外部温度センサが設けられる。この場合、温度予測手段は、外部温度センサが検出しているケース外の温度を電子機器の最低動作保証温度に等しいかまたは該最低動作保証温度よりも設定温度だけ高く設定された判定温度と比較して、ケース外の温度が判定温度以上であるときにはケース内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度未満になることはないと予測し、ケース外の温度が判定温度未満になったときにまもなくケース内の温度が規定温度未満になると予測するように構成される。
【0014】
この場合、通電制御手段は、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満になることはないと予測されているときに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして電子機器に通電し、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満になると予測されたときにはケース内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度未満になるまでの間第2の電源部を無負荷状態にして第1の電源部から電子機器に通電し、ケース内の温度が規定温度未満であるときには第1の電源部から電子機器に通電するとともに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにしてケース内の温度が規定温度を超えるまでの間ヒータに通電するように構成される。
【0015】
本発明の好ましい態様では、上記電源装置に、商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、第1の電源部から電子機器に通電する状態と第2の電源部から電子機器に通電する状態とを切り換える第1の切換スイッチと、第1の電源部からヒータに通電する状態と第2の電源部からヒータに通電する状態とを切り換える第2の切換スイッチと、ケース内の温度を検出する温度センサと、ケース内の温度が電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満に低下するか否かを事前に予測する温度予測手段とが設けられる。
【0016】
この場合、通電制御手段は、温度予測手段によりケース内の温度が電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満の温度まで低下することはないと予測されているときに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして電子機器に通電し、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満の温度に低下すると予測されたときにはケース内の温度が規定温度未満になるまでの間第2の電源部を無負荷状態にして第1の電源部から電子機器に通電し、内部温度センサにより検出される温度が規定温度未満になったときには第1の電源部から電子機器に通電するとともに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにしてケース内の温度が規定温度を超えるまでの間ヒータに通電するように第1の切換スイッチ及び第2の切換スイッチを制御して電子機器及びヒータへの通電を制御する。
【0017】
本発明の他の好ましい態様では、電源装置に、商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、第1の電源部から電子機器に通電する状態と第2の電源部から電子機器に通電する状態とを切り換える第1の切換スイッチと、第1の電源部からヒータに通電する状態と第2の電源部からヒータに通電する状態とを切り換える第2の切換スイッチと、ケース内の温度を検出する内部温度センサと、ケース外の温度を検出する外部温度センサと、外部温度センサが検出しているケース外の温度を電子機器の最低動作保証温度に等しいかまたは該最低動作保証温度よりも設定温度だけ高く設定された判定温度と比較して、ケース外の温度が判定温度以上であるときにはケース内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度未満になることはないと予測し、ケース外の温度が判定温度未満になったときにまもなくケース内の温度が規定温度未満になると予測する温度予測手段とが設けられる。
【0018】
この場合、通電制御手段は、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満になることはないと予測されているときに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして電子機器に通電し、温度予測手段によりケース内の温度が規定温度未満になると予測されたときにはケース内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度未満になるまでの間第2の電源部を無負荷状態にして第1の電源部から電子機器に通電し、ケース内の温度が規定温度未満であるときには第1の電源部から電子機器に通電するとともに第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにしてケース内の温度が規定温度を超えるまでの間ヒータに通電するように第1の切換スイッチ及び第2の切換スイッチを制御することにより電子機器及びヒータへの通電を制御するように構成される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ケース内の温度が規定温度未満の温度まで低下することが事前に予測されたときに、ケース内の温度が規定温度未満になるまでの間第2の電源部を無負荷状態にして、該第2の電源部でもっぱらバッテリの充電を行なわせるようにしたため、ケース内の温度が規定温度未満になった時点で自然エネルギを利用する第2の電源部のバッテリを十分に充電された状態にすることができる。従って、ケース内の温度が規定温度未満になったときに第2の電源部からヒータに十分な時間通電することができ、商用電源の消費電力を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0021】
図1は本発明に係わる屋外設置形通信用設備の構成例を示したブロック図、図2は同屋外設置形通信用設備において通電制御手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【0022】
図1において、1は金属製のケースで、ケース1内には、通信用の電子機器2と、該通信用電子機器に与える一定の直流電源電圧を出力する定電圧電源回路3と、ヒータ4とが収容されている。電子機器2は、移動体通信の基地局、マイクロ波通信回線の中継局、CATVの伝送線路に設置される線路増幅器など、屋外に設置される通信用の設備を構成する電子回路の構成部品とその付属品とを含む。
【0023】
電子機器2を正常に動作させるためには、その周囲温度(ケース1内の温度)を使われている電子部品の動作保証温度範囲に保つ必要がある。ヒータ4は、寒冷時にケース内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度(例えば−15℃)を下回ったときにケース1内を加熱して、ケース内の温度を規定温度以上に保つために設けられている。ケース1内には、必要に応じて、夏期にケース内の温度が電子機器2の最高動作保証温度を超えるのを防ぐために、送風機や換気のための機構が設けられる。
【0024】
本発明に係わる屋外設置形通信用設備においては、電子機器2及びヒータ4に駆動電力を与える電源装置が、商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部5と、太陽熱、地熱、風力、波力等の自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部6と、第1の電源部5から電子機器2に通電する状態と第2の電源部6から電子機器2に通電する状態とを切り換える第1の切換スイッチ7と、第1の電源部5からヒータ4に通電する状態と第2の電源部6からヒータ4に通電する状態とを切り換える第2の切換スイッチ8、ケース1内の温度を検出する内部温度センサ9と、ケース1外の温度を検出する外部温度センサ10と、マイクロプロセッサを有する制御装置11とを備えている。
【0025】
図示の第1の電源部5は、商用電源501と該商用電源の出力を整流して一定の直流電圧を出力する整流電源回路502とからなっており、第2の電源部6は、太陽電池601と、該太陽電池の出力で図示しない充電回路を通して充電されるバッテリ602とからなっている。
【0026】
制御装置11は、マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより、外部温度センサ10から与えられるケース外の温度情報に基づいてケース1内の温度が電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満に低下することを事前に予測する温度予測手段11Aと、温度予測手段11Aによる予測結果と内部温度センサ9により検出されているケース内の温度とバッテリ602の充電状態とに応じて第1の切換スイッチ7及び第2の切換スイッチ8を制御して電子機器2及びヒータ4への通電を制御する通電制御手段11Bとを構成する。
【0027】
本実施形態で用いる温度予測手段11Aは、外部温度センサ10が検出しているケース外の温度を電子機器2の最低動作保証温度に等しいかまたは該最低動作保証温度よりも設定温度だけ高く設定された判定温度と比較して、ケース外の温度が判定温度以上であるときにはケース1内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度未満になることはないと予測し、ケース1外の温度が判定温度未満になったときにケース1内の温度が規定温度未満になると予測するように構成されている。ケース内の温度の規定温度は、電子機器の最低動作保証温度に等しく設定するか、または最低動作保証温度よりも若干高めに設定する。
【0028】
また通電制御手段11Bは、温度予測手段11Aによりケース1内の温度が規定温度未満になることはないと予測されているときに第1の電源部5及び第2の電源部6をそれぞれ電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして(第2の電源部6を用いることを優先して)電子機器2に通電し、温度予測手段11Aによりケース1内の温度が規定温度未満になると予測されたときにはケース1内の温度が最低動作保証温度に相当する規定温度未満になるまでの間第2の電源部6を無負荷状態にして第1の電源部5から電子機器2に通電し、ケース1内の温度が規定温度未満であるときには第1の電源部5から電子機器2に通電するとともに第1の電源部5及び第2の電源部6をそれぞれヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして(第2の電源部6を使用することを優先して)ケース1内の温度が規定温度を超えるまでの間ヒータ4に通電するように第1の切換スイッチ7及び第2の切換スイッチ8を制御して電子機器2及びヒータ4への通電を制御するように構成される。
【0029】
図示の例では、第1の切換スイッチ7と、第2の切換スイッチ8と、内部温度センサ9と、制御装置11とが、電子機器2、定電圧電源回路3及びヒータ4とともにケース1内に収容されている。第1及び第2の電源部5及び6はケース外に配置された電源ボックス12内に収容され、整流電源回路502及びバッテリ602のそれぞれの出力端子につながる配線がケース1内に導入されている。整流電源回路502及びバッテリ602のプラス側出力端子は第1及び第2の切換スイッチ7及び8を通して定電圧電源回路3またはヒータ4に接続され、整流電源回路502及びバッテリ602のマイナス側出力端子はケース1に接地されている。
【0030】
外部温度センサ10はケース1の外部に配置され、外部温度センサ10の出力を伝送する信号線がケース1内に導入されて、所定のインターフェース回路を通して制御装置11を構成するマイクロプロセッサに接続されている。またこの例では、バッテリ602の出力電圧の検出値がA/D変換器を通してマイクロプロセッサに入力されている。
【0031】
図示の例で用いている第1の切換スイッチ7は、固定接点7a及び7bと可動接点7cとを有し、可動接点7cは、電磁的に操作される図示しない操作機構により操作されて、固定接点7aに接触する第1の投入位置と、固定接点7a及び7bのいずれにも接触しない中立位置(オフ位置)と、固定接点7bに接触する第2の投入位置とに切り換えられる。固定接点7a及び7bは整流電源回路502のプラス側出力端子及びバッテリ602のプラス側出力端子にそれぞれ接続され、可動接点7cは定電圧電源回路3のプラス側入力端子に接続されている。
【0032】
同様に、第2の切換スイッチ8は、固定接点8a及び8bと可動接点8cとを有し、可動接点8cは、電磁的に操作される図示しない操作機構により操作されて、固定接点8aに接触する第1の投入位置と、固定接点8a及び8bのいずれにも接触しない中立位置(オフ位置)と、固定接点8bに接触する第2の投入位置とに切り換えられる。固定接点8a及び8bはそれぞれ整流電源回路502のプラス側出力端子及びバッテリ602のプラス側出力端子に接続され、可動接点8cはヒータ4の一端に接続されている。定電圧電源回路3のマイナス側入力端子及びヒータ6の他端はケース1に接地されている。
【0033】
なお本実施形態においては、切換スイッチ7及び8を有接点スイッチとしているが、これらの切換スイッチは電気的に制御が可能なスイッチであればよく、各切換スイッチは無接点スイッチであってもよい。例えば、切換スイッチ7は、可動接点7cと固定接点7aとにより構成されるスイッチに相当する一つの半導体スイッチと、可動接点7cと固定接点7bとにより構成されるスイッチに相当する一つの半導体スイッチとの2つの半導体スイッチにより構成することができる。
【0034】
上記温度予測手段11A及び通電制御手段11Bを構成するためにマイクロプロセッサに微小時間間隔で実行させるタスクのアルゴリズムの一例を図2に示した。このアルゴリズムによる場合には、先ずステップ001において外部温度センサ10が出力している温度の検出値Toutを読み込み、ステップ002において内部温度センサ9が出力している温度の検出値Tinを読み込む。次いでステップ003においてケース外の温度Toutを電子機器の最低動作保証温度に等しい温度または最低動作保証温度よりも若干(設定温度だけ)高く設定された判定温度Tsと比較し、Tout≧Tsであるときにステップ004に移行する。ステップ004ではバッテリの両端の電圧Vbをバッテリの充電状態を判定するための判定値Vbsと比較し、Vb≧Vbsであるとき(バッテリが十分に充電されているとき)にステップ005に移行して第1の切換スイッチ7の可動接点7cを固定接点7bに接触させ、第2の切換スイッチ8の可動接点8cを中立位置に位置させるように第1の切換スイッチ7及び第2の切換スイッチ8を制御することにより、第2の電源部6から電子機器2への通電を行なわせる。
【0035】
ステップ004でVb<Vbsであると判定されたとき(バッテリが消耗しているとき)には、ステップ006に移行して、第1の切換スイッチ7の可動接点7cを固定接点7aに接触させ、第2の切換スイッチ8の可動接点8cを中立位置に位置させるように第1及び第2の切換スイッチ7及び8を制御することにより第1の電源部5から電子機器2への通電を行なわせる。
【0036】
ステップ003においてTout<Tsである(ケース外の温度が判定温度Ts未満である)と判定されたときには、ケース1内の温度がまもなく電子機器2の最低動作保証温度に相当する規定温度未満になることが予測されるとして、ステップ007に移行し、第1の切換スイッチ7の可動接点7cを固定接点7aに接触させるように第1の切換スイッチ7を制御することにより第1の電源部5から電子機器2への通電を行なわせる。次いでステップ008において内部温度センサが検出しているケース内の温度Tinを最低動作保証温度に相当する規定温度Ts′と比較する。その結果、Tin<Ts′であると判定されたときにはステップ009に移行してバッテリの電圧Vbを判定値Vbsと比較し、Vb≧Vbsであとき(バッテリが十分に充電されているとき)にステップ010に移行して第2の切換スイッチ8の可動接点8cを固定接点8bに接触させるように第2の切換スイッチを制御することにより、第2の電源部5からヒータ4への通電を行なわせる。ステップ009において、Vb<Vbsであると判定されたとき(バッテリ602が消耗しているとき)には、ステップ011に移行して第2の切換スイッチ8の可動接点8cを固定接点8aに接触させるように第2の切換スイッチ8を制御することにより第1の電源部5からヒータへの通電を行なわせる。
【0037】
ステップ008において、Tin≧Ts′である(ケース内の温度が規定温度以上になった)と判定されたときには、第2の切換スイッチ8の可動接点8cを中立位置に戻すように第2の切換スイッチを制御することによりヒータ4への通電を停止させる。
【0038】
図2に示したアルゴリズムによる場合、ステップ001とステップ003とにより温度予測手段11Aが構成され、ステップ004ないし006とステップ007ないし012とにより通電制御手段11Bが構成される。
【0039】
ケース1内の温度が規定温度未満になることを予測するためにケース外の温度Toutに対して設定する判定温度Tsは、Tout≧Tsの条件が成立してから、ケース1内の温度が規定温度未満になるまでの時間が、バッテリ602の充電を十分に行なわせるために必要な時間以上の時間となるように設定する。即ち、ケース1の壁部の断熱効果が大きく、ケース外の温度が電子機器の最低動作保証温度以下になってからケース1内の温度が最低動作保証温度未満になるまでの間に長い時間がかかり、その間にバッテリ602を十分に充電することができる場合には、判定温度Tsを電子機器2の最低動作保証温度に等しく設定する。これに対し、ケース1外の温度が電子機器の最低動作保証温度以下になってからケース内の温度が最低動作保証温度未満に低下するまでの時間が比較的短く、その間にバッテリを十分に充電できないおそれがある場合には、判定温度Tsを電子機器の最低動作保証温度よりも設定温度だけ高く設定して、ケース内の温度が最低動作保証温度未満になるまでの時間を長くするようにしておく。
【0040】
上記の実施形態では、自然エネルギ利用発電体として太陽電池のみを用いているが、複数の自然エネルギ利用発電体を併用するようにしても良い。
【0041】
上記の実施形態において、電子機器2の基板にマイクロプロセッサが設けられている場合には、そのマイクロプロセッサを用いて制御装置11を構成することができる。
【0042】
上記の実施形態では、外部温度センサ10を設けて、この外部温度センサの検出値からケース内の温度が電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度を下回ることを事前に予測するようにしたが、内部温度センサ9により検出されたケース内の温度の変化を見て、ケース内の温度が規定温度に向けて連続的に低下しているときに、ケース内の温度が規定温度未満になることを予測するようにしてもよい。
【0043】
また外部温度センサにより検出されているケース外の温度の変化とケース内温度センサにより検出されている温度の変化との双方からケース内の温度が規定温度未満になることを予測するようにしてもよい。例えば、ケース外の温度がある判定温度以下になり、かつケース内の温度が設定値以下になったときにケース内の温度が規定温度未満になることを予測するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】図1の実施形態において温度予測手段及び通電制御手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 ケース
2 通信用の電子機器
4 ヒータ
5 第1の電源部
501 商用電源
502 整流電源回路
6 第2の電源部
601 太陽電池
602 バッテリ
7 第1の切換スイッチ
8 第2の切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に収容された通信用の電子機器と、前記ケース内を加熱するヒータと、前記電子機器及びヒータに電源電圧を与える電源装置とを備えた屋外設置形通信用設備において、
前記電源装置は、
商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、
自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、
前記ケース内の温度を検出する内部温度センサと、
前記ケース内の温度が前記電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満に低下するか否かを事前に予測する温度予測手段と、
前記温度予測手段により前記ケース内の温度が前記規定温度未満の温度まで低下することはないと予測されているときには前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記電子機器に通電し、前記温度予測手段により前記ケース内の温度が規定温度未満の温度まで低下すると予測されたときに前記ケース内の温度が前記規定温度未満になるまでの間前記第2の電源部を無負荷状態にして前記第1の電源部から前記電子機器に通電し、前記ケース内の温度が前記規定温度未満になったときに前記第1の電源部から前記電子機器に通電するとともに前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記ヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記ケース内の温度が前記規定温度を超えるまでの間前記ヒータに通電するように前記電子機器及びヒータへの通電を制御する通電制御手段と、
を具備したことを特徴とする屋外設置形通信用設備。
【請求項2】
ケースと、前記ケース内に収容された通信用の電子機器と、前記ケース内を加熱するヒータと、前記電子機器及び前記ヒータに電源電圧を与える電源装置とを備えた屋外設置形通信用設備において、
前記電源装置は、
商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、
自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、
前記ケース内の温度を検出する内部温度センサと、
前記ケース外の温度を検出する外部温度センサと、
前記外部温度センサが検出しているケース外の温度を前記電子機器の最低動作保証温度に等しいかまたは該最低動作保証温度よりも設定温度だけ高く設定された判定温度と比較して、ケース外の温度が判定温度以上であるときには前記ケース内の温度が前記最低動作保証温度に相当する規定温度未満になることはないと予測し、前記ケース外の温度が前記判定温度未満になったときに前記ケース内の温度が規定温度未満になると予測する温度予測手段と、
前記温度予測手段により前記ケース内の温度が規定温度未満になることはないと予測されているときに前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記通信用電子機器に通電し、前記温度予測手段により前記ケース内の温度が前記規定温度未満になると予測されたときには前記ケース内の温度が前記最低動作保証温度に相当する規定温度未満になるまでの間前記第2の電源部を無負荷状態にして前記第1の電源部から前記電子機器に通電し、前記ケース内の温度が前記規定温度未満であるときには前記第1の電源部から前記電子機器に通電するとともに前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記ヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記ケース内の温度が前記規定温度を超えるまでの間前記ヒータに通電するように前記電子機器及びヒータへの通電を制御する通電制御手段と、
を具備したことを特徴とする屋外設置形通信用設備。
【請求項3】
ケースと、前記ケース内に収容された通信用の電子機器と、前記ケース内を加熱するヒータと、前記電子機器及び前記ヒータに電源電圧を与える電源装置とを備えた屋外設置形通信用設備において、
前記電源装置は、
商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、
自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、
前記第1の電源部から前記電子機器に通電する状態と前記第2の電源部から前記電子機器に通電する状態とを切り換える第1の切換スイッチと、
前記第1の電源部から前記ヒータに通電する状態と前記第2の電源部から前記ヒータに通電する状態とを切り換える第2の切換スイッチと、
前記ケース内の温度を検出する温度センサと、
前記ケース内の温度が前記電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満に低下するか否かを事前に予測する温度予測手段と、
前記温度予測手段により前記ケース内の温度が前記電子機器の最低動作保証温度に相当する規定温度未満の温度まで低下することはないと予測されているときには前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記電子機器に通電し、前記温度予測手段により前記ケース内の温度が規定温度未満の温度に低下すると予測されたときには前記ケース内の温度が前記規定温度未満になるまでの間前記第2の電源部を無負荷状態にして前記第1の電源部から前記電子機器に通電し、前記ケース内の温度が前記規定温度未満になったときには前記第1の電源部から前記電子機器に通電するとともに前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記ヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記ケース内の温度が前記規定温度を超えるまでの間前記ヒータに通電するように前記第1の切換スイッチ及び第2の切換スイッチを制御して前記電子機器及びヒータへの通電を制御する通電制御手段と、
を具備したことを特徴とする屋外設置形通信用設備。
【請求項4】
ケースと、前記ケース内に収容された通信用の電子機器と、前記ケース内を加熱するヒータと、前記電子機器及び前記ヒータに電源電圧を与える電源装置とを備えた屋外設置形通信用設備において、
前記電源装置は、
商用電源の出力を整流して得た直流電圧を出力する第1の電源部と、
自然エネルギを利用して発電する自然エネルギ利用発電体と該発電体の出力により充電されるバッテリとを備えて該バッテリの両端の直流電圧を出力する第2の電源部と、
前記第1の電源部から前記電子機器に通電する状態と前記第2の電源部から前記電子機器に通電する状態とを切り換える第1の切換スイッチと、
前記第1の電源部から前記ヒータに通電する状態と前記第2の電源部から前記ヒータに通電する状態とを切り換える第2の切換スイッチと、
前記ケース内の温度を検出する内部温度センサと、
前記ケース外の温度を検出する外部温度センサと、
前記外部温度センサが検出しているケース外の温度を前記電子機器の最低動作保証温度に等しいかまたは該最低動作保証温度よりも設定温度だけ高く設定された判定温度と比較して、ケース外の温度が判定温度以上であるときには前記ケース内の温度が前記最低動作保証温度に相当する規定温度未満になることはないと予測し、前記ケース外の温度が前記判定温度未満になったときに前記ケース内の温度が規定温度未満になると予測する温度予測手段と、
前記温度予測手段により前記ケース内の温度が規定温度未満になることはないと予測されているときに前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記電子機器用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記電子機器に通電し、前記温度予測手段により前記ケース内の温度が前記規定温度未満になると予測されたときには前記ケース内の温度が前記規定温度未満になるまでの間前記第2の電源部を無負荷状態にして前記第1の電源部から前記電子機器に通電し、前記ケース内の温度が前記規定温度未満であるときには前記第1の電源部から前記電子機器に通電するとともに前記第1の電源部及び第2の電源部をそれぞれ前記ヒータ用の補助電源及び主電源として主電源の出力が不足する場合にのみ補助電源を用いることにして前記ケース内の温度が前記規定温度を超えるまでの間前記ヒータに通電するように前記第1の切換スイッチ及び第2の切換スイッチを制御して前記電子機器及びヒータへの通電を制御する通電制御手段と、
を具備したことを特徴とする屋外設置形通信用設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−11960(P2007−11960A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195034(P2005−195034)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】