説明

屋根および屋根の施工方法

【課題】樋の端部における止水性を確保し、かつ樋の取付剛性を高めることができる屋根および屋根の施工方法を提供すること。
【解決手段】パッキン16が樋部材11の端縁と連結板17とで挟持され、ビスの締め付けにより押圧状態で樋部材11に密接されるので、樋部材11の端部における止水性能を確保することができる。そして、連結板17をビスで締め付けるだけの簡単な作業でパッキン16を樋部材11に密接させることができるので、作業手間や時間が削減できるとともに、作業者の熟練度に関わらずに一定の止水性能が確保できる。さらに、連結板17の連結部172を介して樋部材11が側桁4に固定されるので、樋部材11の支持強度や剛性を高めることができ、風圧力等に対する樋部材11の変形を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根および屋根の施工方法に関し、詳しくは、水勾配を有して設置された屋根面材と、この屋根面材の水下側端縁に沿って設けられた樋部材とを備えた屋根、および屋根の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外テラスやカーポート、サンルーム、アプローチ等の屋外構造物に設置される屋根であって、屋根面材の水下側端縁に沿って樋を有する屋根構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された屋根構造は、支柱と、この支柱に支持された梁(前桁や側桁)と、この梁に支持された屋根体(屋根面材)とを備えて構成され、屋根面材の水下側端縁に沿って樋が設けられている。そして、樋は、上方に開口した断面略コ字形に形成された雨樋用凹部を有し、この雨樋用凹部の長手方向端部が止水機能を有した塞ぎ材で閉塞されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−249681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の屋根構造において、雨樋用凹部の端部を閉塞する塞ぎ材としてゴム等から形成された止水ブロックが用いられ、この止水ブロックを湿式のシーリング材等で雨樋用凹部に接着固定された止水構造が採用されているため、止水ブロックの接着固定作業に手間や時間を要したり、作業者の熟練度によって止水性能にばらつきが生じたりなどの不都合がある。また、従来の屋根構造における樋は、その長手方向に沿ったアタッチメントを介して前桁に支持されているものの、長手方向端部が側桁に支持されておらず、風圧力等の上下方向の力に対して撓みやすいという不都合もある。
【0005】
本発明の目的は、樋の端部における止水性を確保し、かつ樋の取付剛性を高めることができる屋根および屋根の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の屋根は、水勾配を有して設置された屋根面材と、この屋根面材の水下側端縁に沿って設けられた樋部材とを備えた屋根であって、前記樋部材の長手方向の少なくとも一端縁側には、前記屋根面材の側端縁を支持する側方支持材が位置しており、前記樋部材は、上方に開口した溝状の水受け部を有して形成されるとともに、当該樋部材における前記少なくとも一端縁側には、前記水受け部の側方を覆う水密材と、この水密材を当該樋部材の一端縁との間に挟持して固定する固定部材とが設けられ、前記固定部材は、前記樋部材の断面外形よりも外側に位置する連結部を有して形成され、この連結部が前記側方支持材に固定されていることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、樋部材の端縁と固定部材とで水密材を挟持して固定することで、水密材を樋部材に押圧状態で密接させることができ、樋部材の端部における止水性能を確保することができる。この際、固定部材の樋部材に対する固定方法としては、ビス等を螺合させたりピンや係合片等を係合させたりなど任意の方法が利用でき、従来のような湿式のシーリング材を用いる方法と比較して、作業手間や時間を削減することができるとともに、作業者の熟練度に関わらずに一定の止水性能が確保できる。
さらに、樋部材の断面外形よりも外側に位置する固定部材の連結部を側方支持材に固定することで、この固定部材を介して樋部材を側方支持材に支持させることができ、樋部材の支持強度や剛性を高めることで風圧力等に対する変形を防止することができる。このように樋部材端部の取付剛性を高めることで、繰り返しの変形による止水部の劣化を防止することができ、止水性能を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の屋根では、前記固定部材は、前記樋部材の反対側から当該固定部材を貫通する第1の固着具で当該樋部材の端縁に固定されるとともに、前記第1の固着具と反対側から当該固定部材の連結部を貫通する第2の固着具で前記側方支持材に固定されていることが好ましい。
このような構成によれば、第1の固着具を貫通させる側、つまり樋部材と反対側の固定部材の側面を側方支持材に当接させ、第1の固着具が側方支持材に覆われた状態で、その反対側から固定部材の連結部を貫通して第2の固着具を側方支持材に固着することで、固定作業を容易に実施することができ、作業性を向上させることができる。そして、第1の固着具が側方支持材に覆われることで、屋根の外観意匠性が良好にできる。
【0009】
さらに、本発明の屋根では、前記樋部材を挟んで前記屋根面材の反対側には、前記側方支持材と交差して連結される前方支持材が設けられ、この前方支持材の側面に直接または取付部材を介して前記樋部材が固定されていることが好ましい。
このような構成によれば、樋部材を前方支持材に固定することで、樋部材の支持強度および取付剛性をさらに高めることができる。
【0010】
一方、本発明の屋根の施工方法は、水勾配を有して設置される屋根面材と、この屋根面材の水下側端縁に沿って設けられる樋部材とを備えた屋根の施工方法であって、上方に開口した溝状の水受け部を有して形成された前記樋部材における少なくとも一端縁側に、前記水受け部の側方を覆う水密材を当接させるとともに、この水密材を挟んで当該樋部材の一端縁に固定部材を固定しておき、前記屋根面材の側端縁を支持する側方支持材に前記一端縁側を対向させて前記樋部材を配置するとともに、前記樋部材の断面外形よりも外側に位置する前記固定部材の連結部を前記側方支持材に固定することを特徴とする。
このような屋根によれば、前述と同様の効果、つまり樋部材の端部における止水性能を確保することができるとともに、作業手間や時間を削減しつつ作業者の熟練度に関わらずに一定の止水性能が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る屋根1を示す斜視図である。図2は、屋根1の要部を拡大して示す斜視図である。図3は、屋根1に設けられる樋10を示す分解斜視図である。図4は、樋10の取付手順を説明する斜視図である。
図1において、屋根1は、建物Sに隣接して設けられる屋外のテラスやポーチ、カーポート(車庫)、サンルーム、アプローチ等の空間上方を覆うものであって、地面から立設された2本の支柱2と、これらの支柱2間に架設される前方支持材としての前桁3、および支柱2と建物S間に架設される側方支持材としての一対の側桁(梁)4と、これらの側桁4および建物Sに支持される屋根面材5とを備えて構成されている。屋根面材5は、建物S側から前桁3側に向かって下り傾斜とされた水勾配を有して設置され、この水勾配に沿って水上側から水下側に延びる複数の垂木6と、これらの垂木6に側端縁が支持される複数のパネル材7(屋根ふき材)とを有して構成されている。そして、屋根面材5の水下側には、その端縁および前桁3に沿って樋10(図2)が設けられている。
【0012】
樋10は、図2に示すように、取付部材であるアタッチメント3Aを介して前桁3の側面に固定されたアルミ形材製の樋部材11を備えて構成されている。この樋部材11は、図3にも示すように、前桁3に沿った前面部12と、この前面部12に連続して水上側(図3の左側)に延びる底面部13と、この底面部13の水上側端部から立ち上がる背面部14と、上方に開口した溝状の水受け部15とを有して形成されている。そして、樋部材11の背面部14の上側を覆うようにして屋根面材5の水下側端縁が配置され、屋根面材5上を流れた雨水が水受け部15に落下するようになっている。なお、樋部材11の底面部13には、図示しない適宜な位置に排水孔が設けられており、適宜な縦樋等を介して水受け部15内部の水が排水できるようになっている。
【0013】
樋部材11の長手方向両端部には、水受け部15の側方を覆うシート状の水密材であるパッキン16と、このパッキン16を樋部材11の端縁との間に挟持して固定する固定部材である連結板17とが設けられている。パッキン16は、ブチルゴムなどの弾性材料から成形され、樋部材11の断面外形である前面部12、底面部13および背面部14を包含する大きさ、すなわち水受け部15の側方全体を覆って樋部材11の端縁に当接可能に形成されている。連結板17は、アルミやステンレス等からなる金属製板材であって、樋部材11の断面外形を包含しパッキン16と略同一の大きさを有する連結板本体171と、この連結板本体171に連続し樋部材11の背面部14よりも水上側に延びた連結部172とを有して形成されている。なお、連結部17としては、水上側に延びたものに限らず、樋部材11の底面部13よりも下方に延びかつ側桁4の下面に沿って折れ曲がったものや、上方に延びて側桁4の側面に沿ったものなど、任意の方向に延びて連結部17を形成してもよい。
【0014】
連結板17は、図3に示すように、樋部材11の反対側から当該連結板17を貫通する第1の固着具としての4本のビス18で樋部材11の端縁に固定され、このビス18を締め付けることでパッキン16を樋部材11に押圧状態で密接させるようになっている。一方、連結板17の連結部172は、図2に示すように、ビス18と反対側(樋部材11の側)から当該連結部172を貫通する第2の固着具としての2本のビス19で側桁4に固定されている。以上のように、樋部材11は、その長手方向に沿った複数箇所でアタッチメント3Aを介して前桁3に固定されるとともに、パッキン16および連結板17を介して側桁4に固定されるようになっている。なお、連結板17と側桁4との間に弾性材からなり止水性能を有したスペーサ(不図示)を介挿してもよく、このようなスペーサを設ければ、樋部材11の両端部にパッキン16および連結板17を固定した状態の連結板17外面間の距離が、側桁4間の距離よりも若干短い場合、つまり製品の公差や加工誤差がある場合でも、この距離の差をスペーサによって調整して樋部材11をがたつきなく固定することができる。また、ビス19の頭部は、キャップ等で覆われることが好ましく、ビス19の締め付け後に、キャップを連結板17の連結部172に取り付けてビス19の頭部を隠蔽することで、ビス孔の止水性を確保するとともに外観が良好にできる。
【0015】
次に、図2〜図4に基づいて、樋部材11の取付手順について説明する。
先ず、図3に示すように、樋部材11の長手方向端部にパッキン16および連結板17を固定する。この固定作業は、工場で実施してもよいし、建設現場における地上で実施してもよく、つまり高所である支柱2上端の前桁3および側桁4位置で実施する必要がない。さらに、従来のような湿式のシーリング材を用いなくても、スクリュードライバ等の工具を用いた比較的簡単な作業でパッキン16および連結板17が固定できるようになっている。
そして、図4に示すように、前記支柱2に前桁3および側桁4を架設した状態において、前桁3の側面にアタッチメント3Aを取り付け、このアタッチメント3Aに前記パッキン16および連結板17を固定した樋部材11の前面部12を係止させるとともに、前面部12およびアタッチメント3Aを貫通するビスで樋部材11を前桁3に固定する。
このように前桁3に樋部材11を固定した後に、図2に示すように、樋部材11に沿った位置からビス19を連結板17の連結部172に貫通させ、このビス19を側桁4に螺合して連結板17を側桁4に固定する。この際、必要に応じて連結板17と側桁4との間に前記スペーサを介挿してから、ビス19の固着作業を実施するようにしてもよい。
以上で屋根1における樋部材11の取り付けが完了する。この後、図2に示すように、連結板17の連結部172の側方を覆うようにして端部の垂木6を樋部材11および側桁4に支持させ、他の垂木6も取り付けるとともに、これらの垂木6にパネル材7を取り付けて屋根面材5を形成して屋根1の施工が完了する。
【0016】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、パッキン16が樋部材11の端縁と連結板17とで挟持され、ビス18の締め付けにより押圧状態で樋部材11に密接されるので、樋部材11の端部における止水性能を確保することができる。この際、連結板17をビス18で締め付けるだけの簡単な作業でパッキン16を樋部材11に密接させることができるので、従来のような湿式のシーリング材を用いる方法と比較して、作業手間や時間が削減できるとともに、作業者の熟練度に関わらずに一定の止水性能が確保できる。
【0017】
(2)さらに、連結板17の連結部172を介して樋部材11が側桁4に固定されるので、前桁3のみに支持させる場合と比較して、樋部材11の支持強度や剛性を高めることで風圧力等に対する樋部材11の変形を防止することができる。このように樋部材11端部の取付剛性が高められることで、繰り返しの変形による止水部分(パッキン16)の劣化を防止することができ、止水性能を向上させることができる。
【0018】
(3)また、連結板17が樋部材11と反対側からのビス18で樋部材11に固定され、このビス18と反対側からのビス19で連結部172が側桁4に固定されるので、連結板17の固定作業を容易にでき、作業性を向上させることができるとともに、ビス18が側桁4に覆われることにより、屋根1の外観意匠性を良好にすることができる。また、ビス19や連結部172が端部の垂木6に覆われて見えなくなることで、屋根1の外観がさらに良好にできる。
【0019】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、建物Sに隣接したテラス等に設置される屋根1について説明したが、本発明の屋根としては、テラス等に限らず、任意の場所に設置されるものでよく、また支柱に支持されたものに限らず、外壁面等から片持ち状に突出した庇等に用いられる屋根であってもよい。
また、前記実施形態では、一対の側桁4(側方支持材)間に渡って樋部材11が設けられていたが、これに限らず、樋部材11の一端縁側のみに側桁4(側方支持材)が設けられていてもよく、この場合には、樋部材11の他端縁側に外壁等が配置されていてもよく、また樋部材11の他端縁側に他の樋部材が連続して設けられていてもよい。
さらに、前記実施形態の屋根1では、樋部材11がアタッチメント3Aを介して前桁3(前方支持材)に固定されていたが、本発明において、樋部材は前方支持材に支持されたものに限られない。すなわち、屋根面材の水下側端縁に樋部材が支持されていてもよく、また側方支持材によってのみ樋部材が支持されていてもよい。
【0020】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る屋根を示す斜視図である。
【図2】前記屋根の要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】前記屋根に設けられる樋を示す分解斜視図である。
【図4】前記樋の取付手順を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1…屋根、3…前桁(前方支持材)、3A…アタッチメント(取付部材)、4…側桁(側方支持材)、5…屋根面材、11…樋部材、15…水受け部、16…パッキン(水密材)、17…連結板(固定部材)、172…連結部、18…ビス(第1の固着具)、19…ビス(第2の固着具)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水勾配を有して設置された屋根面材と、この屋根面材の水下側端縁に沿って設けられた樋部材とを備えた屋根であって、
前記樋部材の長手方向の少なくとも一端縁側には、前記屋根面材の側端縁を支持する側方支持材が位置しており、
前記樋部材は、上方に開口した溝状の水受け部を有して形成されるとともに、当該樋部材における前記少なくとも一端縁側には、前記水受け部の側方を覆う水密材と、この水密材を当該樋部材の一端縁との間に挟持して固定する固定部材とが設けられ、
前記固定部材は、前記樋部材の断面外形よりも外側に位置する連結部を有して形成され、この連結部が前記側方支持材に固定されている屋根。
【請求項2】
前記固定部材は、前記樋部材の反対側から当該固定部材を貫通する第1の固着具で当該樋部材の端縁に固定されるとともに、前記第1の固着具と反対側から当該固定部材の連結部を貫通する第2の固着具で前記側方支持材に固定されている請求項1に記載の屋根。
【請求項3】
前記樋部材を挟んで前記屋根面材の反対側には、前記側方支持材と交差して連結される前方支持材が設けられ、この前方支持材の側面に直接または取付部材を介して前記樋部材が固定されている請求項1または請求項2に記載の屋根。
【請求項4】
水勾配を有して設置される屋根面材と、この屋根面材の水下側端縁に沿って設けられる樋部材とを備えた屋根の施工方法であって、
上方に開口した溝状の水受け部を有して形成された前記樋部材における少なくとも一端縁側に、前記水受け部の側方を覆う水密材を当接させるとともに、この水密材を挟んで当該樋部材の一端縁に固定部材を固定しておき、
前記屋根面材の側端縁を支持する側方支持材に前記一端縁側を対向させて前記樋部材を配置するとともに、前記樋部材の断面外形よりも外側に位置する前記固定部材の連結部を前記側方支持材に固定する屋根の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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