説明

屋根に載置する物品の取り付け台

【課題】瓦を支える屋根下地板等を傷つけたり、強度を低下させたりすることなく、更に物品の取り付け台を組み付ける作業も簡単に且つ短時間に行なえるようにする。
【解決手段】屋根瓦の下方の野地板上に固定されるベース部材と、ベース部材から立設されて屋根瓦を貫通して突出する支持具とからなり、ベース部材は、屋根瓦を葺設するために設けられる野地板を支える垂木間にわたって取り付けられる固定部が両端部に形成され、中央部分に屋根上に載置される支持具取り付け部が一体に形成されており、当該支持具取り付けには、前記固定部より高い位置に形成されるとともに、長円もしくは楕円からなる複数の支持具装着孔と、当該支持具装着孔に装着された支持具とを備え、前記固定部には複数の固定金具挿通孔を物品の取り付け台の長手方向に設けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋根上に設けられる物品の取り付け台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化の一因とされている炭酸ガスを抑制するために、例えば、天然ガス等の燃焼による給湯装置や、石油等の化石燃料を使用する火力発電を抑制するため、各家庭で太陽熱や太陽光を利用する給湯設備や発電装置が普及している。
こうした太陽熱や太陽光を利用する場合、その集熱器やソーラーパネル(太陽光発電部分)は屋根の上に載置固定されて使用されるのが一般的であった。
【0003】
そこで、こうした集熱器やソーラーパネルのように比較的重いものを屋根瓦の上面部分への載置する為の構造は特許文献1に示すように集熱部と貯湯部を棟の頂部を跨いだ状態に設けて両部分を棟越しカバーで連結したものが知られている。
上記公報のものでは、瓦の表面に載せ置くだけであることから地震や台風等では飛んだりずれ動いてしまう虞がある。
そこで、給湯装置の端部と屋根の端の屋根下地板部分とを番線で連結し固定するようにしている。
ところが、この番線で固定する作業が危険であるうえ、外観も悪く、番線の腐蝕も早いことから耐久性にも問題があった。
【0004】
そこで、かかる問題を解消するために本発明の出願人は、屋根下地板の上面に瓦を葺設し、葺設された瓦の上面に載置物を載置固定する部分の屋根瓦の構造として、屋根瓦を付設する屋根下地板に受け金具を立設し、該受け金具の上面部分に対面して葺設された瓦部分に受け金具及び/又は受け金具に固定される支持金具の挿通孔を穿設し、該挿通孔の上端部に雨水浸入防止手段を設けたことを特徴とする載置物を載置可能にしたものを先に提案している(特許文献2)。
【0005】
上記先の提案にかかるものでは、垂木に支えられた野地板(屋根下地板)に孔を開け、荷重分散具を貫通した螺子軸を野地板の下面側からナットで固定する構造であることから、物品の取り付け台を組み付ける場合、野地板を一旦めくり上げて作業をしなくてはならず、その作業に多大の手間と時間を要するうえ、野地板に孔を空けるために、その部分の強度が低下してしまう虞もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−41765号
【特許文献2】特開平7−247635号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を解決するために提案されたもので、瓦を支える野地板等を傷つけたり、強度を低下させたりすることなく、更に物品の取り付け台を組み付ける作業も簡単に且つ短時間に行なえるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる屋根に載置する物品の取り付け台は、屋根瓦の下方の野地板上に固定されるベース部材と、ベース部材から立設されて屋根瓦を貫通して突出する支持具とからなり、ベース部材は、屋根瓦を葺設するために設けられる野地板を支える垂木間にわたって取り付けられる固定部が両端部に形成され、中央部分に屋根上に載置される支持具取り付け部が一体に形成されており、当該支持具取り付けには、前記固定部より高い位置に形成されるとともに、長円もしくは楕円からなる複数の支持具装着孔と、当該支持具装着孔に装着された支持具を備え、前記固定部には複数の固定金具挿通孔を物品の取り付け台の長手方向に設けることにより、固定金具挿通孔に挿通する固定金具間距離を垂木間距離に合致させ、支持具を支持具装着孔の選択もしくは支持具装着孔内の移動により屋根瓦に穿設された貫通孔に合致可能に構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0009】
また、本発明にかかる屋根に載置する物品の取り付け台では、葺設された屋根瓦の角度と野地板の角度との角度差を調整する調整用座金を、支持具で支持された物品の下方に設けたことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の屋根に載置する物品の取り付け台によれば、垂木間の長さに合致する固定部の固定金具挿通孔に固定用金具を打ち込んでベース部材を野地板上にしっかりと固定する。
しかる後、支持具を屋根瓦に穿設された貫通孔に合致するように支持具取り付け部の支持具装着孔を移動させるだけで、物品の取り付け台の位置合わせができる。
したがって、従来のように、瓦を支える野地板等を傷つけたり、強度を低下させたりすることなく、更に物品の取り付け台を組み付ける作業も簡単に且つ短時間に行なうことができる利点があり、設置作業を簡単に行なうことができる。
これにより、その作業の手間と時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
しかも、屋根下地板等に貫通孔を空ける必要がないために、野地板等の強度の低下を防止することができるという利点もある。
また、葺設された屋根瓦の角度と野地板の角度との角度さを調整する調整用座金を、支持具で支持された物品の下方に設けるようにしたものでは、屋根に重量のある物品をでも屋根瓦部分に偏荷重を与えたり残留応力を残したりすることなく載置することができるので、屋根や載置する物品の耐久性を向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる物品取り付け台を使用して家屋の屋根にソーラーパネルを取付けた状態の一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】本発明にかかる物品の取り付け台部分の部分拡大斜視図である。
【図3】本発明にかかる物品の取り付け台を使用して家屋の屋根にソーラーパネルを取付けた状態の縦断側面図である。
【図4】本発明にかかる物品の取り付け台の分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる板状部材上に設けられる物品の取り付け台及びその設置方法を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は家屋の屋根にソーラーパネルを設置した屋根部分の斜視図であって、図中符号1は一般なソーラーパネル(物品)2を支持する物品の取り付け台を全体的に示す。
この物品の取り付け台1は、屋根瓦3の下方の野地板4上に固定されるベース部材5と、ベース部材5から立設されて屋根瓦3を貫通して突出する支持具6を備えてなる。
【0015】
ベース部材5は、図2乃至図4に示すように、金属製板材を打抜き加工ならびにプレス加工により形成された、支持具取り付け部7と、この支持具取り付け部7の両端に一体に形成された固定部8とからなる。
上記支持具取り付け部7は、断面門形に形成されその上面には支持具6を装着するための長孔からなる支持具装着孔9が複数(図上3つ)穿設されている。
【0016】
支持具装着孔9に装着される支持具6は、特に図3および図4に示すように、金属板を矩形に形成した基板10と、この基板10から立ち上げられ上記支持具装着孔9を貫通して上方に立ち上がる螺子軸11と、この螺子軸11に螺合し、スプリングワッシャ12および矩形の固定用座金13を介して螺子軸11を支持具装着孔9に固定するナット14と、螺子軸11が、所定の瓦15に穿設された貫通孔16部分の雨仕舞いをするための封止部材17と、封止部材17の上方に突出する螺子軸11部分に装着された調整用座金18と、調整用座金18の上面に設置される枠取り付け部材19と、枠取り付け部材19および調整用座18を介して封止部材17を貫通孔16部分に押圧固定する固定用ナット20とで形成されている。
雨仕舞いをするための封止部材17は、上面部分が扁平な円板状の天板21に形成され、天板21の中央部分に螺子軸11が貫通する孔が形成されるとともに、天板21の周縁部分は下方に垂下された周壁が形成されている。
【0017】
上記調整用座金18は、図3に示すように、垂木23に支持されて張設された野地板4の角度と、隣接する瓦の端部同士が重なり合うようにして野地板4に葺設された後述するように、ソーラーパネル2を取り付ける部分の所定の瓦15の角度との差を調節するために設けられるもので中央部分に螺子軸11が貫通する貫通孔16が形成された略正方形の金属製の板材で一方の厚みが厚く、他方で薄くなるような傾斜面を有するように形成されている。因みに傾斜角度は凡そ5度にしてある。
また、上記枠取り付け部材19は、後述するように、野地板4の上面に取り付けられた物品の取り付け台1の複数の螺子軸11の上端部間にわたって取り付けられ、ソーラーパネ2ルの固定用枠24部分を載置して固定するためのもので、断面コ字型に形成され、その底辺には螺子軸11が挿通される長孔形状の挿通孔25が形成されている(図4参照)。
【0018】
そして、ソーラーパネル2は、図3に示すように、ソーラーパネル2の固定用枠24に掛合させた逆J型の取り付け金具26を、ボルト27を介して枠取り付け部材19に固定するようになっている(図3参照)。
上記物品の取り付け台1の固定部8は、支持具取り付け部7の両端部にこの支持具取り付け部7より低い位置に板状に形成され、この板状部分にビス等の打ち込み固定金具28が打ち込まれる複数の挿通孔29を穿設して形成されている。
【0019】
上記のように構成された屋根瓦3上に配設されるソーラーパネル2を固定するために、物品の取り付け台1を固定する手順を次に説明する。
先ず、ベース部材5の支持具取り付け部7に形成された支持具装着孔9を貫通させて、螺子軸11を上方に立ち上がるようにセットしておく。
ここで、螺子軸11をセットする上記支持具装着孔9は、貫通孔16を設けた所定の瓦15の貫通孔16が位置するであろうと思われる部分の支持具装着孔16である。
【0020】
次に、ソーラーパネル2を物品の取り付け台2で支持する部分の瓦を取り外して当該部分の野地板4を露出させる。
野地板4が露出すると、この野地板4を垂木23に止めている釘(図示せず)がライン状に露出しているので、野地板4の上面から垂木23の配置位置を認識することができる。
斯くして認識できた上下の垂木23の位置に、取り付け部7の両端部の固定部に形成されている複数の挿通孔29を選択し、その垂木23の位置に合致する部分の挿通孔29に打ち込み、ベース部材5を野地板4部分にしっかりと固定する。
【0021】
次に、あらかじめ貫通孔16が設けられた所定の瓦15の貫通孔16に、ベース部材5の支持具取り付け部7から立ち上げられた螺子軸11を貫通させて、露出している野地板4部分を塞ぐ。
そして、所定の瓦15の貫通孔16から突出する螺子軸11に、封止部材17を挿通し、この封止部材17の上方に調整用座金18を装着した後、枠取り付け部材19の長孔形状の挿通孔25を貫通した螺子軸11にワッシャ30を介して固定用ナット20を螺締すると、枠取り付け部材19は野地板4および垂木23にしっかりと固定される。
【0022】
こうした上記作業を適宜繰り返すことにより、ソーラーパネル2を設置する所望の場所に複数の物品の取り付け台1の屋根への取り付けが完了する。
斯くして屋根瓦3上に設置された物品の取付け台1に、ソーラーパネル2の固定用枠24を逆J型の取り付け金具26を係合させ、ボルト27を枠取り付け部材19の上辺に固定すると、ソーラーパネル2の取り付けが完了する。
【0023】
尚、上記実施の形態では、支持具装着孔9を長円で形成するようにしてあるがこうしたものに限られず、楕円形状にすることも可能である。
また、上記実施の形態では、物品の取り付け台1の固定部8の板状部分に形成するビス等の打ち込み固定金具28を挿通する挿通孔29を、図上2列の複数の円孔を穿設して形成するようにしてあるが、これを長孔にしてもよいことはもちろんのことである。
【0024】
さらに上記実施の形態では、物品の取り付け台1を設置する部分の所定の瓦15に、あらかじめ貫通孔16が設けられたものを使用するようにしてあるが、こうしたものに限られず、該当する所定の瓦に現場で貫通孔を形成するようにしてもよいことは言うまでもないことである。
加えて、上記実施の形態では、屋根瓦3上に設置する物品をソーラーパネル2にしてあるが、図示は省略したが、このソーラーパネル2に代えて温水形成用の集熱器は勿論のこと、ベランダ等の重量物の取り付け用ベース部材にすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1・・・物品の取り付け台
2・・・ソーラーパネル(物品)
3・・・屋根瓦
4・・・野地板
5・・・ベース部材
6・・・支持具
7・・・支持具取り付け部
8・・・固定部
9・・・支持具装着孔
10・・・基板
11・・・螺子軸
12・・・スプリングワッシャ
13・・・固定用座金
14・・・ナット
15・・・所定の瓦
16・・・貫通孔
17・・・封止部材
18・・・調整用孔
19・・・枠取り付け部材
20・・・固定用ナット
21・・・天板
22・・・周壁
23・・・垂木
24・・・固定用枠
25・・・挿通孔
26・・・取り付け金具
27・・・ボルト
28・・・固定金具
29・・・挿通孔
30・・・ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根瓦の下方の野地板上に固定されるベース部材と、ベース部材から立設されて屋根瓦を貫通して突出する支持具とからなり、ベース部材は、屋根瓦を葺設するために設けられる野地板を支える垂木間にわたって取り付けられる固定部が両端部に形成され、中央部分に屋根上に載置される支持具取り付け部が一体に形成されており、当該支持具取り付けには、前記固定部より高い位置に形成されるとともに、長円もしくは楕円からなる複数の支持具装着孔と、当該支持具装着孔に装着された支持具を備え、前記固定部には複数の固定金具挿通孔を物品の取り付け台の長手方向に設けることにより、固定金具挿通孔に挿通する固定金具間距離を垂木間距離に合致させ、支持具を支持具装着孔の選択もしくは支持具装着孔内の移動により屋根瓦に穿設された貫通孔に合致可能に構成したことを特徴とする屋根に載置する物品の取り付け台。
【請求項2】
葺設された屋根瓦の角度と野路板の角度との角度さを調整する調整用座金を、支持具で支持された物品の下方に設けたことを特徴とする請求項1に記載の屋根に設置する物品の取り付け台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236590(P2011−236590A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107301(P2010−107301)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(391063651)株式会社アルプス (3)
【Fターム(参考)】