説明

屋根材の施工構造

【課題】
施工の手間を軽減し、また、屋根材の外観を損なうことがなく、さらに、高級感を発現させることができる屋根材の施工構造を提供する。
【解決手段】
複数枚の屋根材1を屋根下地2に敷設して形成される屋根材1の施工構造に関する。最も軒側に敷設される屋根材1aと屋根下地2との間にスタータ部材3を設ける。最も軒側に敷設される屋根材1aの軒側端面4とスタータ部材3の軒側端面5と略面一に合致させる。スタータ部材3に広小舞と面戸の機能を付加することができる。厚物の屋根材1を施工したような外観となる。屋根材1とスタータ部材3とを別々に形成することにより、屋根材1の表面にシワなどの成形不良が発生しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の屋根材を屋根下地に敷設して形成される屋根材の施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数枚の屋根材を野地等の屋根下地の上に敷設して屋根を形成することが行われているが、厚型瓦などの厚物の屋根材の場合、最も軒側に位置する一段目の屋根材は広小舞などの部材を屋根下地の軒先に取り付けてから施工するようにしている。広小舞は、各段の屋根材を少しずつ下段の屋根材と重ねてラップさせるため、施工のスタート時に敷設される最も軒側に位置する一段目の屋根材の勾配を調整するために設けられるものである。また、屋根材が和型や波形の場合、軒先部において、屋根材の裏面と屋根下地もしくは広小舞との間に隙間が生じることがあり、この隙間に鳥やコウモリなどが入り込んで巣を作り、糞害を生じるおそれがあった。そこで、面戸や漆喰などで上記の隙間を埋める必要があった。図5(a)(b)は従来の屋根の軒構造を示すものであり、屋根下地50の上にZ型の軒先水切り51を設け、その上に広小舞52を取り付けると共に広小舞52の上に軒先面戸53を配設し、さらに軒先面戸53の上に屋根材54の軒側端部が載置されるものである。このように施工手順としては、軒先水切り51、広小舞52、軒先面戸53となり、施工工程が多いために施工に時間がかかるという問題があった。そこで、特許文献1の発明では、図6(a)(b)に示すように、屋根材54の裏面に鳥よけのための軒面戸55を一体に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−62113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この軒面戸55には広小舞の機能がないため、別途、広小舞52を敷設する必要があり、また、軒面戸55を一体に成形することにより、窯業系屋根材のプレス成形による特性上、軒面戸55の高さ寸法が大きい場合などでは、その位置において屋根材54の表面にシワが発生しやすく、外観を損なうおそれがあった。さらに、屋根材54の軒側端部と屋根下地50との間に大きな隙間が目立って形成されてしまうため、高級感が少ないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、施工の手間を軽減し、また、屋根材の外観を損なうことがなく、さらに、高級感を発現させることができる屋根材の施工構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る屋根材の施工構造は、複数枚の屋根材1を屋根下地2に敷設して形成される屋根材1の施工構造において、最も軒側に敷設される屋根材1aと屋根下地2との間にスタータ部材3を設けると共に、最も軒側に敷設される屋根材1aの軒側端面4とスタータ部材3の軒側端面5と略面一に合致させて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、スタータ部材3に広小舞と面戸の機能を付加することができ、広小舞と面戸とを不要にして部品点数の減少により、施工性を高めることができるものである。また、最も軒側に敷設される屋根材1aの軒側端面4とスタータ部材3の軒側端面5と略面一に合致させることにより、厚物の屋根材1を施工したような外観となり、高級感を付与することができるものである。さらに、屋根材1とスタータ部材3とを別々に形成することにより、屋根材1の表面にシワなどの成形不良が発生しにくくなり、外観の低下を防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)は同上の屋根材の一例を示す斜視図、(b)は同上のスタータ部材を示す斜視図である。
【図3】同上の分離前のスタータ部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は裏面図、(d)は上方斜視図、(e)は側面図、(f)は下方斜視図である。
【図4】同上の概略の斜視図である。
【図5】従来例を示し、(a)は断面図、(b)は施工途中の斜視図である。
【図6】他の従来例を示し、(a)は屋根材の裏面斜視図、(b)は施工状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
本発明は、複数枚の屋根材1、1…とスタータ部材3とを屋根下地2に施工することにより形成することができる。
【0011】
屋根材1としてはセメントなどの水硬性材料を主成分とする窯業系のものを使用することができるが、これに限定されるものではない。また、図2(a)に示すように、屋根材1は上側に凹曲した一対の凹曲部10、10を横方向に連設して形成されている。また、屋根材1の棟側端部及び両側端部には釘打ち固定部11が設けられている。さらに、図1のように、屋根材1の軒側端部の裏面には横方向に長い軒側脚部12が突設されていると共に屋根材1の棟側端部の裏面には横方向に長い棟側脚部13が突設されている。
【0012】
スタータ部材3は屋根材1と同様の材料で形成された窯業系のものを用いることができる。また、図2(b)に示すように、スタータ部材3は上側に凹曲した一対の載置凹部14、14を横方向に連設して形成されている。また、スタータ部材3の棟側端部には釘打ち固定部15が設けられている。さらに、スタータ部材3の裏面には、軒棟方向の略中央部において、横方向に長い中央支持脚部16が設けられており、スタータ部材3の軒側端面5の下端は中央支持脚部16の下端と略同等の高さ位置に形成されている。また、図3(c)(e)に示すように、スタータ部材3の裏面には、棟側端部において、中央支持脚部16よりも高さ寸法の短い棟側支持脚部17が設けられている。なお、中央支持脚部16と棟側支持脚部17の下端には切欠き19a、19bが形成されており、施工状態において屋根下地2との間に隙間を形成して水抜き孔や通気口として効果を発揮する。また、棟側支持脚部17の切欠き19bよりも中央支持脚部16の切欠き19aを幅狭に形成して、強風時の雨水の吹き込みを抑制できるようにしている。更に、棟側支持脚部17の切欠き19bと中央支持脚部16の切欠き19aとは軒棟方向に僅かに通る位置に形成されており、これにより、切欠き19aと切欠き19bとを軒棟方向で完全には重ならないようにして、ややずらした位置に形成し、強風時の雨水の吹き込みを抑制するとともに水抜きにも支障が生じ難いようにしている。
【0013】
尚、スタータ部材3の製造時においては、図3(a)〜(f)に示すように、一対のスタータ部材3、3が連なった状態で成形されるものである。この一対のスタータ部材3、3は、棟側端部同士が接合した状態で一体化されており、また、一対のスタータ部材3、3の間にはV溝状の割溝18が設けられている。そして、施工現場等でハンマー等を用いて割溝18の部分を軽く叩くことにより一つずつのスタータ部材3に分割して使用するものである。
【0014】
そして、本発明の屋根材1の施工構造は以下のようにして形成することができる。まず、屋根下地2の軒側端部にZ型などの軒先水切り20を突出して取り付ける。ここで、屋根下地2としては、垂木21の上に合板などの野地板22を配設し、野地板22の上にアスファルトルーフィングなどの防水シートを敷設して形成されるものを例示することができる。尚、図1中の符号23は鼻隠し板である。
【0015】
次に、屋根下地2の軒側端部にスタータ部材3を載置する。このとき、屋根下地2の軒側先端にスタータ部材3の中央支持脚部16の軒側側面を一致させるようにして複数個のスタータ部材3を屋根下地2の横方向(軒棟方向(屋根勾配の方向)と直交する方向)に並べて配設し、釘打ち固定部15の箇所に釘29を打ち込んで屋根下地2に固定する。このように施工することで、スタータ部材3は中央支持脚部16と棟側支持脚部17とを屋根下地2に載置し、中央支持脚部16よりも先端部分を屋根下地2の軒側端面から外側(軒先側)に所定長さ突出させて固定することが容易にできるものである。なお、スタータ部材3の中央支持脚部16のより位置決めする際の基準としては、屋根下地2の軒先先端だけでなく、軒先水切り51上に設けられる位置決めマークや野地上に付される罫書き線などを採用することもできるものである。
【0016】
次に、最も軒側に位置する屋根材1aを敷設する。この場合、屋根材1aの軒側略半分(側端部の釘打ち固定部11よりも軒側)の凹曲部10を上記のスタータ部材3の載置凹部14の上に載置し、屋根材1aの棟側脚部13は屋根下地2の上に載置する。また、スタータ部材3の軒側端面5と屋根材1aの軒側端面4とを略面一になるように合致させる。さらに、スタータ部材3の軒側端面5の上端と、屋根材1の軒側端面4の下端とを同一形状とすることで、スタータ部材3の軒側端面5の上端と屋根材1aの軒側端面4の下端とを隙間なく密着させることができ、スタータ部材3と屋根材1aとの間から雨水が浸入するのを抑制できるとともに、軒先に厚み感を付与して意匠性を向上することができる。なお、スタータ部材3の軒側端面5は前垂れ状に垂下形成されており、その下端は施工状態において略水平直線形状で、軒先で略一直線に揃うようになり、スッキリとした軒先の収まりとなるものである。この後、釘打ち固定部11の箇所に釘30を打ち込んで屋根材1aを屋根下地2に固定する。このようにして複数枚の屋根材1aを屋根下地2の軒側端部の横方向に敷設することができる。
【0017】
次に、最も軒側に位置する屋根材1aの棟側に複数枚の屋根材1を順次敷設する。この場合、軒棟方向に隣接する屋根材1、1は、軒側の屋根材1の棟側端部の上に、棟側の屋根材1の軒側端部を載置して重ね合わせるようにする。また、軒棟方向と直交する方向に隣接する屋根材1、1は側端部同士を重ね合わせるようにする。このようにして複数枚の屋根材1を屋根下地2の上に縦横に敷設することによって、図1、4に示すような屋根を形成することができるものである。
【0018】
本発明では、広小舞の代わりにスタータ部材3を用いて、最も軒側に敷設される屋根材1aの勾配を調整すると共に、面戸を用いずに、最も軒側に敷設される屋根材1aとスタータ部材3との間に隙間が形成されないように密着することができ、広小舞と面戸の一体化により施工の手間を軽減することができるものである。また、スタータ部材3は屋根材1と別体に形成されているため、屋根材1の成形時にシワなどの成形不良が生じにくくなり、屋根材1の外観低下を防止することができるものである。さらに、最も軒側に敷設される屋根材1aの軒側端面4とスタータ部材3の軒側端面5と略面一に合致させることにより、厚物の屋根材1を施工したような外観となり、高級感を付与することができるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 屋根材
1a 屋根材
2 屋根下地
3 スタータ部材
4 軒側端面
5 軒側端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の屋根材を屋根下地に敷設して形成される屋根材の施工構造において、最も軒側に敷設される屋根材と屋根下地との間にスタータ部材を設けると共に、最も軒側に敷設される屋根材の軒側端面とスタータ部材の軒側端面と略面一に合致させて成ることを特徴とする屋根材の施工構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196409(P2010−196409A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44503(P2009−44503)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】