屎尿処理を微生物の発酵能力を利用して行うトイレシステム
【課題】便槽(発酵槽)内で、微生物による屎尿処理の行なえるトイレの改良に関する。
【解決手段】撹拌手段を備えた閉空間を形成する便槽内に、初期始動時に好気性発酵微生物を植えつけた有機炭素含有量の多い炭素元、例えばオガクズを充填して発酵槽とし、このオガクズに屎尿が投下されると屎尿中の有機質及び窒素分を栄養源とする前記微生物の発酵によって前記屎尿を分解消滅させ、しかも分解によって発生する熱エネルギーをオガクズに作用させることにより屎尿中の水分を蒸発させ、前記オガクズをコンポスト化するようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクからの尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにした。
【解決手段】撹拌手段を備えた閉空間を形成する便槽内に、初期始動時に好気性発酵微生物を植えつけた有機炭素含有量の多い炭素元、例えばオガクズを充填して発酵槽とし、このオガクズに屎尿が投下されると屎尿中の有機質及び窒素分を栄養源とする前記微生物の発酵によって前記屎尿を分解消滅させ、しかも分解によって発生する熱エネルギーをオガクズに作用させることにより屎尿中の水分を蒸発させ、前記オガクズをコンポスト化するようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクからの尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屎尿処理を好気性微生物(発酵菌)による発酵能力を利用して行うようにしたトイレの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山や海の観光地における従来のトイレには、汲取式と水洗式とがあり、汲取式の場合は、屎尿を野外または海中投棄で処理し、水洗式の場合は下水処理場での浄化処理を行った上での放流かあるいは直接海中への放流を行なっていた。
前記浄化処理は、大量の水を使うばかりでなく、浄化に際して多くのエネルギーコストを必要としていた。また汲み取り式は屎尿による河川、湖沼及び海水の水質汚染を引き起こしていた。
【0003】
前記汲取式トイレの問題を改善するために、好気性微生物(発酵菌)による自然浄化作用を利用して屎尿を分解処理する試みが行われている。
この具体例としては、屎尿とオガ粉、粉砕籾殻やビートモス等との混合物を好気性微生物(発酵菌)によって分解し、発酵熱等によって水分を蒸発して、屎尿の容積を減少し、、一方、昇温によって大腸菌や寄生虫等を死滅させて、コンポスト(有機肥料)として有効利用しようとするものである。
【特許文献1】特開昭60−220198号公報
【特許文献2】特開昭60−241999号公報
【0004】
前記好気性微生物(発酵菌)の発酵メカニズムを利用したトイレをさらに効率よく行えるように改良したトイレが実用化されている。
即ち、便槽(発酵槽)内に、ら旋羽根を設け、ら旋羽根は正方向巻きのら旋羽根と逆方向巻きのら旋羽根とからなり、その中間部にら旋羽根の交さ部を設け、便槽(発酵槽)外にら旋羽根の駆動部を設け、便槽(発酵槽)内の下部に加熱手段を設け、便槽(発酵槽)上に、排気ファンを有する煙突、投入取り出し口、および便器を設け、便槽(発酵槽)内の空間部に加温器を設けたトイレである。
【特許文献3】特開平11−253353号
【0005】
前記トイレの実用化されている便槽(発酵槽)1(コスモ・エース工業株式会社製、コスモ・エースU−50型)は、便槽(発酵槽)1の有効容量が500リットルであり、外形寸法は、高さ1069mm、巾880mm、長さ1870mmであり、重量は220Kg、電気容量は、ヒータ480W、モーター200W、排気ファン17W、合計696Wである。
この具体例の平面図を図16、断面図を図17、側面図を図18、および配線系統図を図19に、それぞれ示す。
この便槽(発酵槽)1の上面部に、大便器、小便器および排気ファンを有する煙突を取り付けて、トイレ室を構成し、トイレ入り口に押しボタンスイッチまたは光センサーを取り付けて、利用者の使用回数をカウントするトイレシステムである。
また、システム制御盤から撹拌モーターへ4端子で接続されているのは、押しボタンスイッチ又はセンサーから使用の度に正逆が切り替えられてシステム制御盤のリモートスイッチに入力され、それに応じて撹拌モーターも正逆が切り替えられて回転するものである。
【0006】
前記トイレシステムを使用するに際しては、便槽(発酵槽)1にオガクズ5000リットルを初期投入する。オガクズの含水率10〜15%、比重0.6として、オガクズの重量は300Kg(実測値)になる。
このオガクズは、好気性微生物が、屎尿を分解する時に必要とする炭素元になる。
この炭素元に好気性微生物(発酵菌)を植え付ける。
利用者によりトイレが使用されるとカウントされ、、屎尿が便槽(発酵槽)1に入ると、スクリューが回転し、屎尿は初期セットのオガクズと混合される。
微生物の活動により、屎尿を分解する過程で発酵熱が発生し、便槽(発酵槽)1内の温度は60°Cから70°Cにまで上昇する。
この熱により、屎尿の水分は全て蒸発する。蒸発した水分は、排気ファンを有する煙突から排気される。
屎尿は95%以上が水分で、その水分の殆どが蒸発する。そして、残った屎尿の約5%の有機質は微生物によって分解される。
このようにして、屎尿は全て分解消滅する。
そして、好気性微生物は、屎尿とオガ粉とを分解し始め、尿は消滅し、オガ粉はコンポストになる。オガ粉のコンポスト化が進むと炭素元が不足するので、便槽(発酵槽)1の発酵維持のために、定期的に(使用状況に応じて、4ヶ月から6ヶ月に1回)新しいオガクズを約18リットル程度、便槽(発酵槽)1に補給する。
この時、コンポスト化した初期セットのオガ粉を同量取り出し口から取り出す。取り出したコンポストは、乾燥して無臭になっており、良質な堆肥として再利用できる。
【0007】
前記トイレシステムの1日の処理能力は、1台当り、常温25°で標準25リットルである。
標準、大人1人1回平均250mlの使用量として、1日100回使用可能である。
このトイレシステムは、カウンターにより制御し、使用者の使用回数をカウントして、100回でドアが自動的に閉まり使用できなくしてある。
その後、24時間経つと好気性微生物(発酵菌)の発酵により使用可能となり、自動的にドアが開けられるようになり、また使用できる。
【0008】
前記実用化されているトイレシステムを、寒冷地における観光地で使用することを前提として、以下のとおりシミュレーションを行った。
トイレ1台の処理能力は、気温5°として、気温が下がることにより、従来の実績から、18.38リットル/日とした。
便槽(発酵槽)1の発酵条件は、発酵槽におけるオガクズの水分率が60%以下である。
オガクズの水分率が60%を超えると、極端に発酵効率が落ちる。
モデル宿泊施設の収容人数を100人とし、大人1人1日2回使用するとし、さらに外部の利用者を考慮し、5台設置する。
5台設置時の総処理能力を1日当り92リットルとした。
また、3台、4台、および6台設置した場合も、同様に、比較のためにシミュレーションを行った。
観光シーズンを前提として、トイレ利用者数を下記のように想定し、処理状況をシミュレーションした。
1.7月上旬:収容人数の2倍
2.7月中旬:収容人数の4〜5倍
3.海の日前後:収容人数の8〜9倍
4.7月下旬:収容人数の20倍
5.8月上旬:収容人数の20倍
6.お盆の前後:収容人数の10〜12倍
7.その他の日:収容人数の2〜3倍
【0009】
前記シミュレーションの結果を表1として図4に示す。
図4に示す表1について、説明を付け加えると、左欄の「日数」における1から始まる数字は、7月1日からの経過日数である。
このシミュレーションにおいては、利用者の使用人数総数を、20,630人とした。
また、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは同じである。
表1において、実践で囲った範囲、即ち、利用日数30日から61日の期間は、発酵槽の水分率が60%を超えており、発酵条件(オガクズの水分率60%以下)を大きくはずれてしまっている。
これは観光シーズンのピーク時における利用者の尿が多いためである。
そして、5台の便槽(発酵槽)1の総処理能力(1日92リットル)を超えてくる日が何日もある。そのために、この期間は、使用できないトイレが何台も出てきてしまう。
【0010】
前記シミュレーション表1(図4)における便槽(発酵槽)1を5台設置時の使用日数における使用回数(使用人数)の推移を示すグラフを図6に示す。
また、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図7に示す。
前記図6および図7をまとめて、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフを図8に示す。
図7および図8を見れば、観光シーズンのピーク時において、発酵槽の水分率が60%を超え、この期間は、使用できないトイレが何台も出てきてしまうことが明らかである。
さらに、前記シミュレーション表1(図1)において、便槽(発酵槽)1を3台、4台、5台、および6台設置時の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図9に示す。また、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフを図10に示す。
図9および図10を見れば、前記観光シーズンのピーク時においては、便槽(発酵槽)1を6台設けても、使用できないトイレが何台も出てきてしまうことが明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、前記した観光シーズンのピーク時における利用者数の増大によりトイレが使用できなくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大においても、トイレを使用可能とするため、便槽(発酵槽)1の発酵条件(水分率)を超えないように、別途、小便器を設けて、尿を溜めるタンクを設けることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の屎尿処理を好気性微生物の発酵能力を用いて行うトイレシステムは、別途、小便器を設け、その尿を一時的に貯めておく尿溜めタンクを設けたため、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大に対応できるので、トイレの設置台数を増やさなくてすむという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
観光シーズンのピーク時においても、トイレを使用可能とするという目的を、便槽(発酵槽)1の他に、別途、小便器を設け、さらに尿を溜める尿溜めタンクを設けることにより、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大による使用回数の増大に対応するために、便槽(発酵槽)1の設置台数を増やさずに実現した。
【実施例1】
【0015】
本発明システムに係る実施例1の概略図を図1に示す。便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)は、段落番号[0005]に記載したコスモ・エース工業株式会社製、コスモ・エースU−50型である。
この便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)は、図16、図17および図18に示すように、便槽(発酵槽)1、上蓋2、撹拌スクリュー3、減速機付撹拌モータ4、モータブラケット5、小スプロケット6、大スプロケット7、チェーンガイド8、チェーン9、および加温器10からなり、便槽(発酵槽)1の上面部に、大便器取付口、小便器取付口、排気口を有している。
そして、これらを制御する制御ユニットを有している。
また、便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の処理能力は、1台当り、常温25°で標準25リットル/日であることは、前記したとおりである。
便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の設置台数は任意であるが、実施例1においては、5台設けている。
そして、図8に示す大便器取付口に大便器を、排気口に排気ファン11を有する煙突(図示せず。)を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルター12(図示せず。)を設ける。排気ファンの排気量は、0.2〜0.4m3/分の範囲が適当であるが、実施例1においては、0.3m3/分に設定した。
しかし、小便器取り付け口には小便器を取り付けず、小便器は別途設け、小便器からの尿は別途設けた尿溜めタンクに溜め、尿溜めタンクからの配管を便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の小便器取付口に接続し、電磁弁V(AからE)を設ける。
このようにして、トイレ室を5部屋設け、各部屋には使用の回数を感知する光センサーPSを設ける。
各トイレ室の光センサーPSから制御ユニット(AからE)へは4端子で接続されており、制御ユニット(AからE)から減速機付撹拌モーター4へも4端子で接続されており(図参照)、光センサーPSからトイレ使用の度に正逆が切り替えられて制御ユニット(AからE)のリモートスイッチに入力され、それに応じて減速機付撹拌モータ4へも正逆が切り替えられて入力され、減速機付撹拌モータ4が正逆回転するものである。
別途設ける小便器の設置台数および尿溜めタンクの大きさは任意であるが、実施例1においては、小便器を3台設け、尿溜めタンクの容量は500リットルとした。
尿溜めタンクには、排気ファン11を有する煙突を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルター12を設ける。排気ファン11の排気量は1.0m3/分に設定している。
さらに、尿溜めタンクから定量ポンプPを使用し、配管を通し、各々電磁弁V(AからE)を介して便槽(発酵槽)1ユニットの小便器取付口に尿の一定量を送るようにしたものである。
実施例1において、定量ポンプPは1回250ccの定量を送るように設定してある。
この量は、大人1回の尿の平均量である。
そして、便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の制御ユニット(AからE)と、尿溜めタンクの定量ポンプPとの全体を制御するシステム制御装置とを有する。
【0016】
前記煙突の排気通路内に設ける消臭フィルター12について述べると、消臭フィルターは各種市販されており、これら公知の消臭フィルターで尿の臭気を除去できるものならいずれのものでも良いが、中でも酸化チタン光触媒系のものが長期間使用できるので好ましい。実施例1においては、光が無くとも特殊セラミックのエネルギー励起効果により、酸化チタンに触媒効果を起こさせ、暗所化でも酸化チタンの消臭効果を発揮させるコーティング剤が市販されているので、このコーティング剤を任意のフィルターに塗布したものを使用している。このコーティング剤の具体例は、共立産業株式会社が販売している消臭用エコガードである。この製品は、7種類の特殊セラミックと酸化チタンとバインダーとからなるものである。
前記コーティング剤とは相違するが、無光性光触媒に関する資料を以下に示す。
【特許文献4】特開2001−170499号
【0017】
さらに具体的に説明する。
本発明のトイレシステムは、観光シーズンのピーク時における尿を尿溜めタンクに一旦貯留し、負荷の少ない時期にこの尿を便槽(発酵槽)1に送り、処理することを特徴とするものである。
本発明のトイレシステムの尿処理装置が稼動すると、図1における便槽(醗酵槽)1(U−50)のNo.AからNo.Eまでの便槽(醗酵糟)1(U−50)において、1日の処理量がその処理能力を超えていない便槽(醗酵槽)1が自動的に選択され、その便槽(醗酵槽)1の電磁弁Vが自動的に開き、尿溜めタンクの定量ポンプPが稼動して、尿が便槽(醗酵槽)1に送入される。
定量ポンプPは、公知の定量移送型を使用する。
定量ポンプPの稼働時間と送入速度から送入尿の量が計算されて、送入量が便槽(醗酵槽)1の処理能力を超えると電磁弁が閉じられ、次の空いている便槽(醗酵槽)1を選択し、その電磁弁Vを開き同様な処理が繰り返される。
また、便槽(醗酵槽)1(U−50)No.AからNo.Eの各々には、使用回数を計測するカウンターCTの入力装置として光センサーPSが設けてあり、使用回数が設定値を超えると、トイレのドアーが自動的にロックするようになっている。
尿は1回の稼動時間で1人分の尿を便槽(醗酵槽)1に送るように設定し、稼動時間をタイマーのON、OFFでコントロールすることにより、上記カウンターに使用回数を加算する。
【0018】
具体的な運転方法は以下のとおりである。
便槽(醗酵槽)のNo.A〜No.Eで、まだ設定回数に到達していない若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁電磁弁V(AからE)が自動的に開かれ、上記で設定された方法で尿溜めタンクから定量ポンプPにより便槽(醗酵槽)1に尿が送られ、計測数が設定値を超えると、その便槽(醗酵槽)の電磁弁Vが閉じ、次に、まだ計測値が設定値に達していない次に若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁Vが開き、同様の運転が行われる。
尿溜めタンクが空になれば、定量ポンプPは、尿タンクに設けられたレベル計FLにより自動停止する。
【0019】
本発明のトイレシステムにおけるシステム制御装置のシーケンス図を図2に示す。
また、前記便槽(発酵槽)1(U−50)の各制御ユニット(AからE)は全て同じであるから、制御ユニットAのシーケンス図を図3に示す。
なお、図2および図3において、黒丸で表示されているリレー接点(A接点)は、通電時にOFFで、非通電時にONであり、また、白丸で表示されているリレー接点(B接点)は、通電時にONで、非通電時にOFFである。
また、図2に示される制御リレーRSA回路から制御リレーRSE回路は、それぞれ制御ユニットAから制御ユニットEに対応するものである。
なお、図2および図3における右端のRおよびSは、電圧が掛かっていることを示すものである。
以下に、図2および図3に示す本発明の尿処理システムのシーケンス図について説明する。
【0020】
1.初めに、尿処理システム(図2)の電源投入のために尿処理スイッチSS1を押す。
2.制御ユニットAの制御リレーRSA回路(図2)のリレー接点R2A(A接点)は、制御ユニットA(図3)のカウンターCT回路が、制御ユニットAの処理能力を下回っているのでリレー回路R2がOFFであるから、図2のリレー接点R2A(A接点)はONになり、制御リレーRSA回路がONとなる。
また、制御リレーRSA回路がONになると、制御ユニットBの制御リレーRSB回路から制御ユニットEの制御リレーRSE回路までの各リレー接点RSA(A接点)がすべてOFFになる。
そのために、制御ユニットAが優先的に使用される。
3.次に、図2の制御ユニットAの制御リレーRSA回路がONとなるために、図3の制御ユニットAの尿制御タイマーTR4回路のリレー接点RSAがONになり、尿制御タイマーTR4が作動し、ON、OFFを繰り返す。
4.図3の尿制御タイマーTR4のONにより、リレーR4回路のリレー接点TR4がONになり、リレーR4回路がONになる。リレーR4回路がONになると、カウンターCT回路のリレー接点R4がONになる。カウンターCT回路のリレー接点R4がONになるたびにカウンターCTに数量が加算されていく。
5.また、リレーR4回路がONにより、尿バルブVA回路のリレー接点R4がONになり、尿バルブVAが開く。
6.また、同時に、リレーRA回路がONになるため、図2の尿タンクポンプP回路のリレー接点RAがONになり、尿処理システムのポンプPが稼動し、尿溜めタンクから醗酵槽1へ尿が送られる。
7.1回の稼動時間で送られる尿の量を1人1回の尿の量(250ml)に尿処理システムのポンプを調整する。
8.図3のカウンターCT回路は、トイレ室内に設けられた光センサーPS回路のリレー接点TR1からリレーR1回路を介して、リレー接点R1によりトイレ室内に入る人数もカウントする。
9.カウンターCT回路のリレー接点R4とリレー接点R1のONの合算が醗酵槽1の処理能力を超えると、カウンターCT回路のリレーR2回路がONになる。
10.リレーR2回路がONになると、警報灯L回路のリレー接点R2がONになり警報灯が点灯する。それと同時に、ドアー施錠LC回路のリレー接点R2がONになり、ドアー施錠LC回路のドアーロックが作動し、トイレのドアーをロックする。
11.なお、閉じ込み防止R3回路は、トイレ室内に閉じ込み防止スイッチSS2を設けた自己保持回路からなり、閉じ込み防止スイッチSS2を押すと、閉じ込み防止R3回路のタイマーTR3が作動すると同時に、閉じ込み防止R3回路のリレー接点R3がONになり、防止スイッチSS2を離しても閉じ込み防止R3回路は一定時間ONになる。閉じ込み防止R3回路のONにより、ドアー施錠回路LCのリレー接点R3(A接点)がOFFになり、ドア施錠が解除される。一方、一定時間後にタイマー回路TR3のONにより、閉じ込み防止R3回路のリレー接点TR3(A接点)がOFFになり、閉じ込み防止R3回路がOFFになるものである。
12.次いで、リレーR2回路がONになることにより、図2の制御リレーRSA回路のリレー接点R2A(A接点)がOFFになるために、制御リレーRSA回路がOFFになる。また同時に、尿制御タイマーTR4回路のリレー接点RSAがOFFになり、尿制御タイマーTR4が止まる。
13.図3の尿制御タイマーTR4がOFFになると、リレーR4回路のリレー接点TR4がOFFになって、リレー回路R4がOFFになり、尿バルブVA回路のリレー接点R4がOFFになる。そのために、この醗酵槽1に設置されている電磁弁VAが閉じ、リレーRAがOFFとなる。
14.図3のリレーRAがOFFとなるため、図2の尿タンクポンプP回路のリレー接点RAがOFFとなり、制御ユニットAの尿バルブVAに尿を送るポンプPが停止する。
15.以上のように、制御ユニットAが処理能力に達すると、図2の制御ユニットAの制御リレーRSA回路のリレー接点R2A(A接点)がOFFになり、制御リレーRSA回路がOFFになる。その結果、制御ユニットAは使用されなくなる。
16.一方、図2の制御リレーRSA回路がOFFになると、制御ユニットBの制御リレーRSB回路のリレー接点RSA(A接点)がONになる。そのために、次に、制御ユニットBが使用される。同様にして、制御ユニットC、D、Eを次々と選択していく。
17.そして、図2の尿タンクのレベル計FLで尿溜めタンクが空になると、尿タンクレベル計RL回路がONになり、尿タンクポンプP回路のリレー接点RL(A接点)がOFFになるため、ポンプPは停止する。
【0021】
本発明のトイレシステムを、寒冷地の観光地で使用することを前提として、シミュレーションを行った。その条件は、段落番号[0007]と同じであり、異なるところは、別途、設けた尿溜めタンクを使用して尿処理を行うことである。
即ち、観光シーズンのピーク時における尿を尿溜めタンクに一旦貯留し、負荷の少ない時期にこの尿を便槽(発酵槽)1に送り処理するものである。
尿処理は、大人1人当たりの尿量を0.25リットルとし、尿溜めタンクの容量は500リットルとした。
前記トイレシステムを使用して、段落番号[0007]と同じ条件で行ったシミュレーションの結果を表2として図5に示す。
この表2(図5)のシミュレーションにおいては、便槽(醗酵槽)1を3台から6台設置した場合についても比較のために表示している。
【0022】
前記表2(図5)について、説明を付け加えると、左欄の「日数」は7月1日からの経過日数であることは前記と同じである。また、利用者の使用人数総数を、20,630人としたことも前記表1の場合と同じである。
しかし、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは、尿溜めタンクを使用するかどうか出相違する。
即ち、尿溜めタンクの尿を全て便槽(発酵槽)1に送り、残量が0の場合は、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは同じである。
しかし、尿溜めタンクに尿を溜めておく場合は、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは相違する。
例えば、7月1日からの経過日数31日の場合、利用者の使用人数2000人に対して、尿溜めタンクに1500人分の尿量を溜めている(−1500と表示している。)ので、便槽(発酵槽)1の使用回数は500となる。
また、尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に尿を送る場合(+表示している。)は、利用者の使用人数に尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に尿を送る量を足した数値が使用回数になる。
この関係を前記使用日数における便槽(発酵槽)1の使用回数を示すグラフとして図11に示す。
【0023】
即ち、シミュレーションの概要は、以下のとおりである。
(1).7月31日(31日)の利用者の使用人数2000人分の内、1500人分の尿量を尿溜めタンクに溜め、8月1日(32日)から8月4日(35日)にかけて、毎日100人分の尿量を尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に送り、処理した。
(2).8月6日(37日)の利用者の使用人数2000人分の内、1500人分の尿量を尿溜めタンクに溜め、8月7日(38日)から8月14日(45日)にかけて、表に記載した人数分の尿量を尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に送り、処理した。
(3).8月15日(46日)の利用者の使用人数1260人分の内、860人分の尿量を尿溜めタンクに溜め、8月16日(47日)から9月1日(61日)にかけて、表に記載した人数分の尿量を尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に送り、尿溜めタンク内の尿の全量を便槽(発酵槽)1で処理した。
【0024】
前記表2(図5)において、便槽(発酵槽)1を5台設置した場合を見れば明らかなように、本発明のトイレシステムにおいて、尿溜めタンクによって尿処理を施すことにより、発酵槽水分率(%)は常に60%を下回っており、約20,630人の糞尿は、すべて完全に処理されている。
従来例の表1(図4)における便槽(発酵槽)1を5台設置時には、実践で囲った範囲、即ち、利用日数30日から61日の期間は、発酵槽水分率(%)が60%を超えており、発酵条件(オガクズの水分率60%以下)を大きくはずれてしまっていることと比較すれば、本発明のトイレシステムにおける尿溜めタンクを使用した尿処理システムの有効性は明らかである。
【0025】
さらに、本発明の効果を分かりや易くするために、前記シミュレーション表2(図5)における便槽(発酵槽)1を5台設置した際に、本発明の尿溜めタンクを使用した場合において、使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図12に示す。
また、前記図11および図12をまとめて、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数との関係を示すグラフを図13に示す。
すなわち、従来例の図6と本発明の図11、従来例の図7と本発明の図12、および従来例の図8と本発明の図13とを比較してみれば良く分かるように、本発明のトイレシステムは、利用者が増えて、使用回数が増えても、発酵槽水分率が60%を超えることが無く、良好な発酵条件を維持していることが明らかである。
【実施例2】
【0026】
実施例1と同様にして、前記シミュレーション表2(図5)における便槽(発酵槽)1を3台、4台、および6台設置した場合について述べる。
便槽(発酵槽)1を3台設置した場合は利用日数30日から61日の期間が、便槽(発酵槽)1を4台設置した場合は利用日数38日から61日の期間が、それぞれ発酵槽水分率(%)が60%を超えており、発酵条件(60%以下)をはずれてしまっている。
しかし、便槽(発酵槽)1を5台および6台設置した場合は何の問題もない。
これは、本発明トイレシステムの処理能力と利用者の人数との関係を示すものである。
【0027】
本発明トイレシステムの処理能力と利用者の人数との関係を分かりや易くするために、前記シミュレーション表2(図5)における便槽(発酵槽)1を3台、4台、5台および6台設置した際に、本発明の尿溜めタンクを使用した場合において、使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図14に示す。
また、前記図11および図14をまとめて、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフを図15に示す。
そして、従来例の図9と本発明の図14、および従来例の図10と本発明の図15とを比較してみれば良く分かるように、本発明の尿溜めタンクを使用したトイレシステムは、従来例のトイレシステムを大幅に改良していることは明らかである。
【0028】
前記したグラフにより、観光地の宿泊施設等が、利用者数の予測に応じて、本発明のトイレシステムにおいて、便槽(発酵槽)1を何台設置すれば良いかを判断することができる。
なお、これはシミュレーションの1例なので、尿を尿溜めタンクに溜める量・時期、尿を処理する時期等を変えることにより、処理人数をさらに増加させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のトイレシステムは、小便器の設置台数および尿溜めタンクの量を適宜に選択することができるために、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大においてもトイレを使用可能とすることができ、また、煙突に消臭フィルターをを取付けることによって、周辺環境の保護が不可欠な海・山・公園の観光地にも適用できる。
また、洗浄水や薬品をいっさい使用しない清潔で快適なトイレシステムである。
さらに、便槽(発酵槽)1から取り出されたコンポストは、乾燥して無臭なので優れた堆肥として再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る尿処理システムの全体を示す概略説明図である。
【図2】本発明におけるシステム制御装置のシーケンス図である。
【図3】本発明の便槽(発酵槽)1制御ユニットAのシーケンス図である。
【図4】従来例の便槽(発酵槽)台数と発酵槽水分率(%)とを示す表1である。
【図5】本発明の便槽(発酵槽)台数と発酵槽水分率(%)とを示す表2である。
【図6】従来例における使用日数と使用回数との推移を示すグラフである。
【図7】従来例における使用日数と発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図8】従来例において使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフである。
【図9】従来例の便槽(発酵槽)1を3台から6台設置時の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図10】従来例の便槽(発酵槽)1を3台から6台設置時の使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフである。
【図11】実施例1の便槽(発酵槽)1の使用日数と使用回数を示すグラフである。
【図12】実施例1の便槽(発酵槽)1の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図13】実施例1の便槽(発酵槽)1の使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数との関係を示すグラフである。
【図14】実施例2の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図15】実施例2の使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数との関係を示すグラフである。
【図16】従来の便槽(発酵槽)の平面図である。
【図17】従来の便槽(発酵槽)の断面図である。
【図18】従来の便槽(発酵槽)の一部切り欠きの側面図である。
【図19】従来の便槽(発酵槽)の配線系統図である。
【符号の説明】
【0031】
1 便槽(発酵槽)
2 上蓋
3 撹拌スクリュー
4 減速機付撹拌モータ
5 モータブラケット
6 小スプロケット
7 大スプロケット
8 チェーンガイド
9 チェーン
10 加温器
11 排気ファン
12 消臭フィルター
CT カウンター
FL 尿タンクレベル計
L 警報灯
LC ドアー施錠ロック
P 定量ポンプ
PS 光センサー
R リレー
SS スイッチ
TR タイマー
VA〜VE 電磁弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、屎尿処理を好気性微生物(発酵菌)による発酵能力を利用して行うようにしたトイレの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山や海の観光地における従来のトイレには、汲取式と水洗式とがあり、汲取式の場合は、屎尿を野外または海中投棄で処理し、水洗式の場合は下水処理場での浄化処理を行った上での放流かあるいは直接海中への放流を行なっていた。
前記浄化処理は、大量の水を使うばかりでなく、浄化に際して多くのエネルギーコストを必要としていた。また汲み取り式は屎尿による河川、湖沼及び海水の水質汚染を引き起こしていた。
【0003】
前記汲取式トイレの問題を改善するために、好気性微生物(発酵菌)による自然浄化作用を利用して屎尿を分解処理する試みが行われている。
この具体例としては、屎尿とオガ粉、粉砕籾殻やビートモス等との混合物を好気性微生物(発酵菌)によって分解し、発酵熱等によって水分を蒸発して、屎尿の容積を減少し、、一方、昇温によって大腸菌や寄生虫等を死滅させて、コンポスト(有機肥料)として有効利用しようとするものである。
【特許文献1】特開昭60−220198号公報
【特許文献2】特開昭60−241999号公報
【0004】
前記好気性微生物(発酵菌)の発酵メカニズムを利用したトイレをさらに効率よく行えるように改良したトイレが実用化されている。
即ち、便槽(発酵槽)内に、ら旋羽根を設け、ら旋羽根は正方向巻きのら旋羽根と逆方向巻きのら旋羽根とからなり、その中間部にら旋羽根の交さ部を設け、便槽(発酵槽)外にら旋羽根の駆動部を設け、便槽(発酵槽)内の下部に加熱手段を設け、便槽(発酵槽)上に、排気ファンを有する煙突、投入取り出し口、および便器を設け、便槽(発酵槽)内の空間部に加温器を設けたトイレである。
【特許文献3】特開平11−253353号
【0005】
前記トイレの実用化されている便槽(発酵槽)1(コスモ・エース工業株式会社製、コスモ・エースU−50型)は、便槽(発酵槽)1の有効容量が500リットルであり、外形寸法は、高さ1069mm、巾880mm、長さ1870mmであり、重量は220Kg、電気容量は、ヒータ480W、モーター200W、排気ファン17W、合計696Wである。
この具体例の平面図を図16、断面図を図17、側面図を図18、および配線系統図を図19に、それぞれ示す。
この便槽(発酵槽)1の上面部に、大便器、小便器および排気ファンを有する煙突を取り付けて、トイレ室を構成し、トイレ入り口に押しボタンスイッチまたは光センサーを取り付けて、利用者の使用回数をカウントするトイレシステムである。
また、システム制御盤から撹拌モーターへ4端子で接続されているのは、押しボタンスイッチ又はセンサーから使用の度に正逆が切り替えられてシステム制御盤のリモートスイッチに入力され、それに応じて撹拌モーターも正逆が切り替えられて回転するものである。
【0006】
前記トイレシステムを使用するに際しては、便槽(発酵槽)1にオガクズ5000リットルを初期投入する。オガクズの含水率10〜15%、比重0.6として、オガクズの重量は300Kg(実測値)になる。
このオガクズは、好気性微生物が、屎尿を分解する時に必要とする炭素元になる。
この炭素元に好気性微生物(発酵菌)を植え付ける。
利用者によりトイレが使用されるとカウントされ、、屎尿が便槽(発酵槽)1に入ると、スクリューが回転し、屎尿は初期セットのオガクズと混合される。
微生物の活動により、屎尿を分解する過程で発酵熱が発生し、便槽(発酵槽)1内の温度は60°Cから70°Cにまで上昇する。
この熱により、屎尿の水分は全て蒸発する。蒸発した水分は、排気ファンを有する煙突から排気される。
屎尿は95%以上が水分で、その水分の殆どが蒸発する。そして、残った屎尿の約5%の有機質は微生物によって分解される。
このようにして、屎尿は全て分解消滅する。
そして、好気性微生物は、屎尿とオガ粉とを分解し始め、尿は消滅し、オガ粉はコンポストになる。オガ粉のコンポスト化が進むと炭素元が不足するので、便槽(発酵槽)1の発酵維持のために、定期的に(使用状況に応じて、4ヶ月から6ヶ月に1回)新しいオガクズを約18リットル程度、便槽(発酵槽)1に補給する。
この時、コンポスト化した初期セットのオガ粉を同量取り出し口から取り出す。取り出したコンポストは、乾燥して無臭になっており、良質な堆肥として再利用できる。
【0007】
前記トイレシステムの1日の処理能力は、1台当り、常温25°で標準25リットルである。
標準、大人1人1回平均250mlの使用量として、1日100回使用可能である。
このトイレシステムは、カウンターにより制御し、使用者の使用回数をカウントして、100回でドアが自動的に閉まり使用できなくしてある。
その後、24時間経つと好気性微生物(発酵菌)の発酵により使用可能となり、自動的にドアが開けられるようになり、また使用できる。
【0008】
前記実用化されているトイレシステムを、寒冷地における観光地で使用することを前提として、以下のとおりシミュレーションを行った。
トイレ1台の処理能力は、気温5°として、気温が下がることにより、従来の実績から、18.38リットル/日とした。
便槽(発酵槽)1の発酵条件は、発酵槽におけるオガクズの水分率が60%以下である。
オガクズの水分率が60%を超えると、極端に発酵効率が落ちる。
モデル宿泊施設の収容人数を100人とし、大人1人1日2回使用するとし、さらに外部の利用者を考慮し、5台設置する。
5台設置時の総処理能力を1日当り92リットルとした。
また、3台、4台、および6台設置した場合も、同様に、比較のためにシミュレーションを行った。
観光シーズンを前提として、トイレ利用者数を下記のように想定し、処理状況をシミュレーションした。
1.7月上旬:収容人数の2倍
2.7月中旬:収容人数の4〜5倍
3.海の日前後:収容人数の8〜9倍
4.7月下旬:収容人数の20倍
5.8月上旬:収容人数の20倍
6.お盆の前後:収容人数の10〜12倍
7.その他の日:収容人数の2〜3倍
【0009】
前記シミュレーションの結果を表1として図4に示す。
図4に示す表1について、説明を付け加えると、左欄の「日数」における1から始まる数字は、7月1日からの経過日数である。
このシミュレーションにおいては、利用者の使用人数総数を、20,630人とした。
また、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは同じである。
表1において、実践で囲った範囲、即ち、利用日数30日から61日の期間は、発酵槽の水分率が60%を超えており、発酵条件(オガクズの水分率60%以下)を大きくはずれてしまっている。
これは観光シーズンのピーク時における利用者の尿が多いためである。
そして、5台の便槽(発酵槽)1の総処理能力(1日92リットル)を超えてくる日が何日もある。そのために、この期間は、使用できないトイレが何台も出てきてしまう。
【0010】
前記シミュレーション表1(図4)における便槽(発酵槽)1を5台設置時の使用日数における使用回数(使用人数)の推移を示すグラフを図6に示す。
また、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図7に示す。
前記図6および図7をまとめて、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフを図8に示す。
図7および図8を見れば、観光シーズンのピーク時において、発酵槽の水分率が60%を超え、この期間は、使用できないトイレが何台も出てきてしまうことが明らかである。
さらに、前記シミュレーション表1(図1)において、便槽(発酵槽)1を3台、4台、5台、および6台設置時の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図9に示す。また、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフを図10に示す。
図9および図10を見れば、前記観光シーズンのピーク時においては、便槽(発酵槽)1を6台設けても、使用できないトイレが何台も出てきてしまうことが明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、前記した観光シーズンのピーク時における利用者数の増大によりトイレが使用できなくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大においても、トイレを使用可能とするため、便槽(発酵槽)1の発酵条件(水分率)を超えないように、別途、小便器を設けて、尿を溜めるタンクを設けることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の屎尿処理を好気性微生物の発酵能力を用いて行うトイレシステムは、別途、小便器を設け、その尿を一時的に貯めておく尿溜めタンクを設けたため、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大に対応できるので、トイレの設置台数を増やさなくてすむという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
観光シーズンのピーク時においても、トイレを使用可能とするという目的を、便槽(発酵槽)1の他に、別途、小便器を設け、さらに尿を溜める尿溜めタンクを設けることにより、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大による使用回数の増大に対応するために、便槽(発酵槽)1の設置台数を増やさずに実現した。
【実施例1】
【0015】
本発明システムに係る実施例1の概略図を図1に示す。便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)は、段落番号[0005]に記載したコスモ・エース工業株式会社製、コスモ・エースU−50型である。
この便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)は、図16、図17および図18に示すように、便槽(発酵槽)1、上蓋2、撹拌スクリュー3、減速機付撹拌モータ4、モータブラケット5、小スプロケット6、大スプロケット7、チェーンガイド8、チェーン9、および加温器10からなり、便槽(発酵槽)1の上面部に、大便器取付口、小便器取付口、排気口を有している。
そして、これらを制御する制御ユニットを有している。
また、便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の処理能力は、1台当り、常温25°で標準25リットル/日であることは、前記したとおりである。
便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の設置台数は任意であるが、実施例1においては、5台設けている。
そして、図8に示す大便器取付口に大便器を、排気口に排気ファン11を有する煙突(図示せず。)を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルター12(図示せず。)を設ける。排気ファンの排気量は、0.2〜0.4m3/分の範囲が適当であるが、実施例1においては、0.3m3/分に設定した。
しかし、小便器取り付け口には小便器を取り付けず、小便器は別途設け、小便器からの尿は別途設けた尿溜めタンクに溜め、尿溜めタンクからの配管を便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の小便器取付口に接続し、電磁弁V(AからE)を設ける。
このようにして、トイレ室を5部屋設け、各部屋には使用の回数を感知する光センサーPSを設ける。
各トイレ室の光センサーPSから制御ユニット(AからE)へは4端子で接続されており、制御ユニット(AからE)から減速機付撹拌モーター4へも4端子で接続されており(図参照)、光センサーPSからトイレ使用の度に正逆が切り替えられて制御ユニット(AからE)のリモートスイッチに入力され、それに応じて減速機付撹拌モータ4へも正逆が切り替えられて入力され、減速機付撹拌モータ4が正逆回転するものである。
別途設ける小便器の設置台数および尿溜めタンクの大きさは任意であるが、実施例1においては、小便器を3台設け、尿溜めタンクの容量は500リットルとした。
尿溜めタンクには、排気ファン11を有する煙突を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルター12を設ける。排気ファン11の排気量は1.0m3/分に設定している。
さらに、尿溜めタンクから定量ポンプPを使用し、配管を通し、各々電磁弁V(AからE)を介して便槽(発酵槽)1ユニットの小便器取付口に尿の一定量を送るようにしたものである。
実施例1において、定量ポンプPは1回250ccの定量を送るように設定してある。
この量は、大人1回の尿の平均量である。
そして、便槽(発酵槽)1ユニット(U−50)の制御ユニット(AからE)と、尿溜めタンクの定量ポンプPとの全体を制御するシステム制御装置とを有する。
【0016】
前記煙突の排気通路内に設ける消臭フィルター12について述べると、消臭フィルターは各種市販されており、これら公知の消臭フィルターで尿の臭気を除去できるものならいずれのものでも良いが、中でも酸化チタン光触媒系のものが長期間使用できるので好ましい。実施例1においては、光が無くとも特殊セラミックのエネルギー励起効果により、酸化チタンに触媒効果を起こさせ、暗所化でも酸化チタンの消臭効果を発揮させるコーティング剤が市販されているので、このコーティング剤を任意のフィルターに塗布したものを使用している。このコーティング剤の具体例は、共立産業株式会社が販売している消臭用エコガードである。この製品は、7種類の特殊セラミックと酸化チタンとバインダーとからなるものである。
前記コーティング剤とは相違するが、無光性光触媒に関する資料を以下に示す。
【特許文献4】特開2001−170499号
【0017】
さらに具体的に説明する。
本発明のトイレシステムは、観光シーズンのピーク時における尿を尿溜めタンクに一旦貯留し、負荷の少ない時期にこの尿を便槽(発酵槽)1に送り、処理することを特徴とするものである。
本発明のトイレシステムの尿処理装置が稼動すると、図1における便槽(醗酵槽)1(U−50)のNo.AからNo.Eまでの便槽(醗酵糟)1(U−50)において、1日の処理量がその処理能力を超えていない便槽(醗酵槽)1が自動的に選択され、その便槽(醗酵槽)1の電磁弁Vが自動的に開き、尿溜めタンクの定量ポンプPが稼動して、尿が便槽(醗酵槽)1に送入される。
定量ポンプPは、公知の定量移送型を使用する。
定量ポンプPの稼働時間と送入速度から送入尿の量が計算されて、送入量が便槽(醗酵槽)1の処理能力を超えると電磁弁が閉じられ、次の空いている便槽(醗酵槽)1を選択し、その電磁弁Vを開き同様な処理が繰り返される。
また、便槽(醗酵槽)1(U−50)No.AからNo.Eの各々には、使用回数を計測するカウンターCTの入力装置として光センサーPSが設けてあり、使用回数が設定値を超えると、トイレのドアーが自動的にロックするようになっている。
尿は1回の稼動時間で1人分の尿を便槽(醗酵槽)1に送るように設定し、稼動時間をタイマーのON、OFFでコントロールすることにより、上記カウンターに使用回数を加算する。
【0018】
具体的な運転方法は以下のとおりである。
便槽(醗酵槽)のNo.A〜No.Eで、まだ設定回数に到達していない若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁電磁弁V(AからE)が自動的に開かれ、上記で設定された方法で尿溜めタンクから定量ポンプPにより便槽(醗酵槽)1に尿が送られ、計測数が設定値を超えると、その便槽(醗酵槽)の電磁弁Vが閉じ、次に、まだ計測値が設定値に達していない次に若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁Vが開き、同様の運転が行われる。
尿溜めタンクが空になれば、定量ポンプPは、尿タンクに設けられたレベル計FLにより自動停止する。
【0019】
本発明のトイレシステムにおけるシステム制御装置のシーケンス図を図2に示す。
また、前記便槽(発酵槽)1(U−50)の各制御ユニット(AからE)は全て同じであるから、制御ユニットAのシーケンス図を図3に示す。
なお、図2および図3において、黒丸で表示されているリレー接点(A接点)は、通電時にOFFで、非通電時にONであり、また、白丸で表示されているリレー接点(B接点)は、通電時にONで、非通電時にOFFである。
また、図2に示される制御リレーRSA回路から制御リレーRSE回路は、それぞれ制御ユニットAから制御ユニットEに対応するものである。
なお、図2および図3における右端のRおよびSは、電圧が掛かっていることを示すものである。
以下に、図2および図3に示す本発明の尿処理システムのシーケンス図について説明する。
【0020】
1.初めに、尿処理システム(図2)の電源投入のために尿処理スイッチSS1を押す。
2.制御ユニットAの制御リレーRSA回路(図2)のリレー接点R2A(A接点)は、制御ユニットA(図3)のカウンターCT回路が、制御ユニットAの処理能力を下回っているのでリレー回路R2がOFFであるから、図2のリレー接点R2A(A接点)はONになり、制御リレーRSA回路がONとなる。
また、制御リレーRSA回路がONになると、制御ユニットBの制御リレーRSB回路から制御ユニットEの制御リレーRSE回路までの各リレー接点RSA(A接点)がすべてOFFになる。
そのために、制御ユニットAが優先的に使用される。
3.次に、図2の制御ユニットAの制御リレーRSA回路がONとなるために、図3の制御ユニットAの尿制御タイマーTR4回路のリレー接点RSAがONになり、尿制御タイマーTR4が作動し、ON、OFFを繰り返す。
4.図3の尿制御タイマーTR4のONにより、リレーR4回路のリレー接点TR4がONになり、リレーR4回路がONになる。リレーR4回路がONになると、カウンターCT回路のリレー接点R4がONになる。カウンターCT回路のリレー接点R4がONになるたびにカウンターCTに数量が加算されていく。
5.また、リレーR4回路がONにより、尿バルブVA回路のリレー接点R4がONになり、尿バルブVAが開く。
6.また、同時に、リレーRA回路がONになるため、図2の尿タンクポンプP回路のリレー接点RAがONになり、尿処理システムのポンプPが稼動し、尿溜めタンクから醗酵槽1へ尿が送られる。
7.1回の稼動時間で送られる尿の量を1人1回の尿の量(250ml)に尿処理システムのポンプを調整する。
8.図3のカウンターCT回路は、トイレ室内に設けられた光センサーPS回路のリレー接点TR1からリレーR1回路を介して、リレー接点R1によりトイレ室内に入る人数もカウントする。
9.カウンターCT回路のリレー接点R4とリレー接点R1のONの合算が醗酵槽1の処理能力を超えると、カウンターCT回路のリレーR2回路がONになる。
10.リレーR2回路がONになると、警報灯L回路のリレー接点R2がONになり警報灯が点灯する。それと同時に、ドアー施錠LC回路のリレー接点R2がONになり、ドアー施錠LC回路のドアーロックが作動し、トイレのドアーをロックする。
11.なお、閉じ込み防止R3回路は、トイレ室内に閉じ込み防止スイッチSS2を設けた自己保持回路からなり、閉じ込み防止スイッチSS2を押すと、閉じ込み防止R3回路のタイマーTR3が作動すると同時に、閉じ込み防止R3回路のリレー接点R3がONになり、防止スイッチSS2を離しても閉じ込み防止R3回路は一定時間ONになる。閉じ込み防止R3回路のONにより、ドアー施錠回路LCのリレー接点R3(A接点)がOFFになり、ドア施錠が解除される。一方、一定時間後にタイマー回路TR3のONにより、閉じ込み防止R3回路のリレー接点TR3(A接点)がOFFになり、閉じ込み防止R3回路がOFFになるものである。
12.次いで、リレーR2回路がONになることにより、図2の制御リレーRSA回路のリレー接点R2A(A接点)がOFFになるために、制御リレーRSA回路がOFFになる。また同時に、尿制御タイマーTR4回路のリレー接点RSAがOFFになり、尿制御タイマーTR4が止まる。
13.図3の尿制御タイマーTR4がOFFになると、リレーR4回路のリレー接点TR4がOFFになって、リレー回路R4がOFFになり、尿バルブVA回路のリレー接点R4がOFFになる。そのために、この醗酵槽1に設置されている電磁弁VAが閉じ、リレーRAがOFFとなる。
14.図3のリレーRAがOFFとなるため、図2の尿タンクポンプP回路のリレー接点RAがOFFとなり、制御ユニットAの尿バルブVAに尿を送るポンプPが停止する。
15.以上のように、制御ユニットAが処理能力に達すると、図2の制御ユニットAの制御リレーRSA回路のリレー接点R2A(A接点)がOFFになり、制御リレーRSA回路がOFFになる。その結果、制御ユニットAは使用されなくなる。
16.一方、図2の制御リレーRSA回路がOFFになると、制御ユニットBの制御リレーRSB回路のリレー接点RSA(A接点)がONになる。そのために、次に、制御ユニットBが使用される。同様にして、制御ユニットC、D、Eを次々と選択していく。
17.そして、図2の尿タンクのレベル計FLで尿溜めタンクが空になると、尿タンクレベル計RL回路がONになり、尿タンクポンプP回路のリレー接点RL(A接点)がOFFになるため、ポンプPは停止する。
【0021】
本発明のトイレシステムを、寒冷地の観光地で使用することを前提として、シミュレーションを行った。その条件は、段落番号[0007]と同じであり、異なるところは、別途、設けた尿溜めタンクを使用して尿処理を行うことである。
即ち、観光シーズンのピーク時における尿を尿溜めタンクに一旦貯留し、負荷の少ない時期にこの尿を便槽(発酵槽)1に送り処理するものである。
尿処理は、大人1人当たりの尿量を0.25リットルとし、尿溜めタンクの容量は500リットルとした。
前記トイレシステムを使用して、段落番号[0007]と同じ条件で行ったシミュレーションの結果を表2として図5に示す。
この表2(図5)のシミュレーションにおいては、便槽(醗酵槽)1を3台から6台設置した場合についても比較のために表示している。
【0022】
前記表2(図5)について、説明を付け加えると、左欄の「日数」は7月1日からの経過日数であることは前記と同じである。また、利用者の使用人数総数を、20,630人としたことも前記表1の場合と同じである。
しかし、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは、尿溜めタンクを使用するかどうか出相違する。
即ち、尿溜めタンクの尿を全て便槽(発酵槽)1に送り、残量が0の場合は、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは同じである。
しかし、尿溜めタンクに尿を溜めておく場合は、利用者の使用人数と、便槽(発酵槽)1の使用回数とは相違する。
例えば、7月1日からの経過日数31日の場合、利用者の使用人数2000人に対して、尿溜めタンクに1500人分の尿量を溜めている(−1500と表示している。)ので、便槽(発酵槽)1の使用回数は500となる。
また、尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に尿を送る場合(+表示している。)は、利用者の使用人数に尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に尿を送る量を足した数値が使用回数になる。
この関係を前記使用日数における便槽(発酵槽)1の使用回数を示すグラフとして図11に示す。
【0023】
即ち、シミュレーションの概要は、以下のとおりである。
(1).7月31日(31日)の利用者の使用人数2000人分の内、1500人分の尿量を尿溜めタンクに溜め、8月1日(32日)から8月4日(35日)にかけて、毎日100人分の尿量を尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に送り、処理した。
(2).8月6日(37日)の利用者の使用人数2000人分の内、1500人分の尿量を尿溜めタンクに溜め、8月7日(38日)から8月14日(45日)にかけて、表に記載した人数分の尿量を尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に送り、処理した。
(3).8月15日(46日)の利用者の使用人数1260人分の内、860人分の尿量を尿溜めタンクに溜め、8月16日(47日)から9月1日(61日)にかけて、表に記載した人数分の尿量を尿溜めタンクから便槽(発酵槽)1に送り、尿溜めタンク内の尿の全量を便槽(発酵槽)1で処理した。
【0024】
前記表2(図5)において、便槽(発酵槽)1を5台設置した場合を見れば明らかなように、本発明のトイレシステムにおいて、尿溜めタンクによって尿処理を施すことにより、発酵槽水分率(%)は常に60%を下回っており、約20,630人の糞尿は、すべて完全に処理されている。
従来例の表1(図4)における便槽(発酵槽)1を5台設置時には、実践で囲った範囲、即ち、利用日数30日から61日の期間は、発酵槽水分率(%)が60%を超えており、発酵条件(オガクズの水分率60%以下)を大きくはずれてしまっていることと比較すれば、本発明のトイレシステムにおける尿溜めタンクを使用した尿処理システムの有効性は明らかである。
【0025】
さらに、本発明の効果を分かりや易くするために、前記シミュレーション表2(図5)における便槽(発酵槽)1を5台設置した際に、本発明の尿溜めタンクを使用した場合において、使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図12に示す。
また、前記図11および図12をまとめて、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数との関係を示すグラフを図13に示す。
すなわち、従来例の図6と本発明の図11、従来例の図7と本発明の図12、および従来例の図8と本発明の図13とを比較してみれば良く分かるように、本発明のトイレシステムは、利用者が増えて、使用回数が増えても、発酵槽水分率が60%を超えることが無く、良好な発酵条件を維持していることが明らかである。
【実施例2】
【0026】
実施例1と同様にして、前記シミュレーション表2(図5)における便槽(発酵槽)1を3台、4台、および6台設置した場合について述べる。
便槽(発酵槽)1を3台設置した場合は利用日数30日から61日の期間が、便槽(発酵槽)1を4台設置した場合は利用日数38日から61日の期間が、それぞれ発酵槽水分率(%)が60%を超えており、発酵条件(60%以下)をはずれてしまっている。
しかし、便槽(発酵槽)1を5台および6台設置した場合は何の問題もない。
これは、本発明トイレシステムの処理能力と利用者の人数との関係を示すものである。
【0027】
本発明トイレシステムの処理能力と利用者の人数との関係を分かりや易くするために、前記シミュレーション表2(図5)における便槽(発酵槽)1を3台、4台、5台および6台設置した際に、本発明の尿溜めタンクを使用した場合において、使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフを図14に示す。
また、前記図11および図14をまとめて、同様に、使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフを図15に示す。
そして、従来例の図9と本発明の図14、および従来例の図10と本発明の図15とを比較してみれば良く分かるように、本発明の尿溜めタンクを使用したトイレシステムは、従来例のトイレシステムを大幅に改良していることは明らかである。
【0028】
前記したグラフにより、観光地の宿泊施設等が、利用者数の予測に応じて、本発明のトイレシステムにおいて、便槽(発酵槽)1を何台設置すれば良いかを判断することができる。
なお、これはシミュレーションの1例なので、尿を尿溜めタンクに溜める量・時期、尿を処理する時期等を変えることにより、処理人数をさらに増加させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のトイレシステムは、小便器の設置台数および尿溜めタンクの量を適宜に選択することができるために、観光シーズンのピーク時における利用者数の増大においてもトイレを使用可能とすることができ、また、煙突に消臭フィルターをを取付けることによって、周辺環境の保護が不可欠な海・山・公園の観光地にも適用できる。
また、洗浄水や薬品をいっさい使用しない清潔で快適なトイレシステムである。
さらに、便槽(発酵槽)1から取り出されたコンポストは、乾燥して無臭なので優れた堆肥として再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る尿処理システムの全体を示す概略説明図である。
【図2】本発明におけるシステム制御装置のシーケンス図である。
【図3】本発明の便槽(発酵槽)1制御ユニットAのシーケンス図である。
【図4】従来例の便槽(発酵槽)台数と発酵槽水分率(%)とを示す表1である。
【図5】本発明の便槽(発酵槽)台数と発酵槽水分率(%)とを示す表2である。
【図6】従来例における使用日数と使用回数との推移を示すグラフである。
【図7】従来例における使用日数と発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図8】従来例において使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフである。
【図9】従来例の便槽(発酵槽)1を3台から6台設置時の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図10】従来例の便槽(発酵槽)1を3台から6台設置時の使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数(使用人数)との関係を示すグラフである。
【図11】実施例1の便槽(発酵槽)1の使用日数と使用回数を示すグラフである。
【図12】実施例1の便槽(発酵槽)1の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図13】実施例1の便槽(発酵槽)1の使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数との関係を示すグラフである。
【図14】実施例2の使用日数における発酵槽水分率(%)の推移を示すグラフである。
【図15】実施例2の使用日数における発酵槽水分率(%)と使用回数との関係を示すグラフである。
【図16】従来の便槽(発酵槽)の平面図である。
【図17】従来の便槽(発酵槽)の断面図である。
【図18】従来の便槽(発酵槽)の一部切り欠きの側面図である。
【図19】従来の便槽(発酵槽)の配線系統図である。
【符号の説明】
【0031】
1 便槽(発酵槽)
2 上蓋
3 撹拌スクリュー
4 減速機付撹拌モータ
5 モータブラケット
6 小スプロケット
7 大スプロケット
8 チェーンガイド
9 チェーン
10 加温器
11 排気ファン
12 消臭フィルター
CT カウンター
FL 尿タンクレベル計
L 警報灯
LC ドアー施錠ロック
P 定量ポンプ
PS 光センサー
R リレー
SS スイッチ
TR タイマー
VA〜VE 電磁弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌手段を設けた閉空間を形成する便槽内に有機炭素含有量の多い炭素元を所定量充填し、この炭素元に初期始動時に好気性発酵微生物を植えつけて発酵槽とし、便槽(発酵槽)内に投下する屎尿を前記微生物の発酵能力を利用して、屎尿中の有機物質および窒素分を分解消滅させて熱エネルギーに変換して、この熱エネルギーを炭素元に及ぼすことで屎尿中の水分を蒸発させ、前記炭素元をコンポスト化することを特徴とする屎尿処理を好気性微生物による発酵能力を利用して行うようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクからの尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたことを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
請求項1記載の撹拌手段をそれぞれが反巻き方向にら旋を形成する2個のら旋羽根を対向させて形成し、しかも対向部位のそれぞれのら旋羽根端末を両羽根の交さ点より延出するように構成したことを特徴とする、屎尿処理を好気性微生物による発酵能力を利用して行なうようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクから尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたトイレシステム。
【請求項3】
請求項1および請求項2記載の閉空間を形成する便槽(発酵槽)内において、空気を流出入する空間部に、前記空気を加温器を介して加温するようにしたことを特徴とする屎尿処理を好気性微生物による発酵能力を利用して行うようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクから尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたトイレシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3において、尿溜めタンクに排気ファンを有する煙突を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルターを設け、便槽(発酵槽)にも排気ファンを有する煙突を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルターを設けたことを特徴とする、尿溜めタンクから尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたトイレシステム。
【請求項5】
便槽内に、正方向巻きのら旋羽根と逆方向巻きのら旋羽根とからなり、その中間部にら旋羽根の交さ部を有する撹拌部を設け、便槽外にら旋羽根の駆動部を設け、便槽内の下部に加熱手段を設け、便槽内の空間部に加温器を設け、便槽上に、排気ファンを有する煙突、投入取り出し口、および大便器を設け、便槽内に有機炭素含有量の多い物質を所定量充填して発酵槽とし、駆動部は左右交互運転させることにより、所定量充填物を発酵槽内で軸方向に往復移動させ、投入された屎尿の滞留時間を大きくさせるものであり、
一方、別途設けた複数の小便器と、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクとを設け、尿溜めタンクからの配管を複数の便槽(発酵槽)に便槽(発酵槽)毎に電磁弁を介して接続し、尿溜めタンクからポンプを通して一定量を送るトイレシステムにおいて、
複数の便槽(発酵槽)には使用回数を計測するカウンターを設け、使用回数が設定値を超えると、トイレのドアーが自動ロックするようにし、
小便器から尿溜めタンクに溜められた尿は、定量ポンプP1回の稼動時間で1人分の尿を便槽(醗酵槽)1に送るように設定し、稼動時間をタイマーのON、OFFでコントロールすることにより、上記カウンターに使用回数を加算し、
複数の便槽(醗酵槽)で、まだ設定回数に到達していない若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁が自動的に開かれ、上記で設定された方法で尿溜めタンクから便槽(醗酵槽)1に尿が送られ、計測数が設定値を超えると、その便槽(醗酵槽)の電磁弁が閉じ、次にまだ計測値が設定値に達していない次に若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁が開き、同様の運転がなされ、尿溜めタンクが空になれば、定量ポンプPは尿タンクに設けられたレベル計により自動停止することを特徴とする
請求項1から請求項4に記載されたトイレシステムおいて、尿を一時的に貯める尿溜めタンクから、尿を便槽(発酵槽)内に送る制御方法。
【請求項1】
撹拌手段を設けた閉空間を形成する便槽内に有機炭素含有量の多い炭素元を所定量充填し、この炭素元に初期始動時に好気性発酵微生物を植えつけて発酵槽とし、便槽(発酵槽)内に投下する屎尿を前記微生物の発酵能力を利用して、屎尿中の有機物質および窒素分を分解消滅させて熱エネルギーに変換して、この熱エネルギーを炭素元に及ぼすことで屎尿中の水分を蒸発させ、前記炭素元をコンポスト化することを特徴とする屎尿処理を好気性微生物による発酵能力を利用して行うようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクからの尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたことを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
請求項1記載の撹拌手段をそれぞれが反巻き方向にら旋を形成する2個のら旋羽根を対向させて形成し、しかも対向部位のそれぞれのら旋羽根端末を両羽根の交さ点より延出するように構成したことを特徴とする、屎尿処理を好気性微生物による発酵能力を利用して行なうようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクから尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたトイレシステム。
【請求項3】
請求項1および請求項2記載の閉空間を形成する便槽(発酵槽)内において、空気を流出入する空間部に、前記空気を加温器を介して加温するようにしたことを特徴とする屎尿処理を好気性微生物による発酵能力を利用して行うようにしたトイレにおいて、別途、小便器を設け、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクを設け、尿溜めタンクから尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたトイレシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3において、尿溜めタンクに排気ファンを有する煙突を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルターを設け、便槽(発酵槽)にも排気ファンを有する煙突を取り付け、煙突の排気通路内に消臭フィルターを設けたことを特徴とする、尿溜めタンクから尿を前記便槽(発酵槽)内に制御して導くようにしたトイレシステム。
【請求項5】
便槽内に、正方向巻きのら旋羽根と逆方向巻きのら旋羽根とからなり、その中間部にら旋羽根の交さ部を有する撹拌部を設け、便槽外にら旋羽根の駆動部を設け、便槽内の下部に加熱手段を設け、便槽内の空間部に加温器を設け、便槽上に、排気ファンを有する煙突、投入取り出し口、および大便器を設け、便槽内に有機炭素含有量の多い物質を所定量充填して発酵槽とし、駆動部は左右交互運転させることにより、所定量充填物を発酵槽内で軸方向に往復移動させ、投入された屎尿の滞留時間を大きくさせるものであり、
一方、別途設けた複数の小便器と、更に小便器からの尿を一時的に貯める尿溜めタンクとを設け、尿溜めタンクからの配管を複数の便槽(発酵槽)に便槽(発酵槽)毎に電磁弁を介して接続し、尿溜めタンクからポンプを通して一定量を送るトイレシステムにおいて、
複数の便槽(発酵槽)には使用回数を計測するカウンターを設け、使用回数が設定値を超えると、トイレのドアーが自動ロックするようにし、
小便器から尿溜めタンクに溜められた尿は、定量ポンプP1回の稼動時間で1人分の尿を便槽(醗酵槽)1に送るように設定し、稼動時間をタイマーのON、OFFでコントロールすることにより、上記カウンターに使用回数を加算し、
複数の便槽(醗酵槽)で、まだ設定回数に到達していない若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁が自動的に開かれ、上記で設定された方法で尿溜めタンクから便槽(醗酵槽)1に尿が送られ、計測数が設定値を超えると、その便槽(醗酵槽)の電磁弁が閉じ、次にまだ計測値が設定値に達していない次に若い順番の便槽(醗酵槽)1の電磁弁が開き、同様の運転がなされ、尿溜めタンクが空になれば、定量ポンプPは尿タンクに設けられたレベル計により自動停止することを特徴とする
請求項1から請求項4に記載されたトイレシステムおいて、尿を一時的に貯める尿溜めタンクから、尿を便槽(発酵槽)内に送る制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−212125(P2006−212125A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26199(P2005−26199)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(598039862)コスモ・エース工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(598039862)コスモ・エース工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]