説明

屏風型防虫薬剤放散体

【課題】容易に製造可能であって、不使用時には防虫薬剤の放散が抑制されると共に、防虫薬剤が直接人体に接触することもなく、使用時には広い蒸散面積で防虫薬剤を放散させることができ、しかもコンパクトに平面的に折畳み可能であるために携帯にも便利であるとともに、折り畳み数を調整することにより見かけ上同一サイズで薬剤放散面積を変化させることができる屏風型防虫薬剤放散体を提供する。
【解決手段】常温揮散性の殺虫・防虫成分を含有する防虫ネット面を3面以上有し、かつ各防虫ネット面が屏風型に折り畳み自在であるとともに、折り畳んだときの両外側面の防虫ネット面上に殺虫・防虫成分が非通過の保護層が設けられた屏風型の構造からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫効果が高く、携帯にも便利な改良された防虫薬剤放散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、常温揮散性(蒸散性)の殺虫・防虫成分(以下単に防虫薬剤ということもある)を含有させたシートや網状物(ネット)は防虫製品としてよく知られている。
【0003】
しかし、このような防虫シートや防虫ネット、とりわけ防虫ネットは蒸散面積が広く、単位面積あたりの防虫薬剤の蒸散量が高いため防虫効果には優れるが、そのままの状態では防虫ネットの人体への接触により防虫薬剤が人体表面に直接付着することがあるため、持ち運びに問題があり、そのまま携帯用として利用するには問題があった。
【0004】
また、防虫シートや防虫ネットなどの防虫基材を多数の通気孔を設けた樹脂製容器に収容したり、このような防虫基材を防虫薬剤非含有の網状の保護シートで挟持して、防虫シートや防虫ネットなどの防虫基材の人体への直接的な接触を防止し、これにより防虫薬剤が直接人体に付着することを防止する薬剤放散体が知られている。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3104770号公報
【0006】
しかし、前者の樹脂製容器においては製造・加工に手間がかかり、また、嵩張りすぎるため携帯には不便であり、不使用時には容器に収納しなければならないという煩わしさがあったり、薬剤放散面積が容器の大きさで制限され、また、後者の薬剤放散体は防虫基材と人体との直接接触は防止できるという利点は有しているが、薬剤放散面積は保護シートの面積とほぼ同じであって、薬剤放散面積を大きくすることはできず、適用場面に応じて薬剤放散面積をコントロールすることができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、容易に製造可能であって、不使用時には防虫薬剤の放散が抑制されると共に、防虫薬剤が直接人体に接触することもなく、使用時には広い蒸散面積で防虫薬剤を放散させることができ、しかもコンパクトに平面的に折畳み可能であるために携帯にも便利であるとともに、折り畳み数を調整することにより見かけ上同一サイズで薬剤放散面積を変化させることができる屏風型防虫薬剤放散体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の屏風型防虫薬剤放散体(以下、単に屏風型放散体と称することもある)は、常温揮散性の殺虫・防虫成分を含有する防虫ネット面を3面以上有し、かつ各防虫ネット面が屏風型に折り畳み自在であるとともに、折り畳んだときの両外側面の防虫ネット面上に殺虫・防虫成分が非通過の保護層が設けられてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の屏風型放散体は、容易に製造可能であって、不使用時には防虫薬剤の放散が抑制されると共に、防虫薬剤が直接人体に接触することもなく、使用時に薬剤を放散させることができ、しかもコンパクトに平面的に折畳み可能であるために携帯にも便利であるとともに、折り畳み数を調整することにより見かけ上同一サイズで薬剤放散面積を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の屏風型放散体は、常温揮散性の防虫薬剤を含有する防虫ネット面を3面以上有し、かつ各防虫ネット面が折り畳み自在であるとともに、折り畳んだときの両外側面の防虫ネット面上に殺虫・防虫成分が非通過の保護層が設けられた構造からなっている。
【0011】
本発明において、防虫ネット面(2)とは、防虫ネット(1)単独または支持枠などで周辺が支持されてなるが、不使用時にはこれを屏風型に折り畳んだり使用時はこれを広げる必要があることから、それ自体で自立性を有する事が好ましく、とりわけ不使用時に折り畳んだり、使用時にこれを広げる際の容易性などから、支持枠(3)などで支持された自立性の高い形状が特に好ましい。
【0012】
支持枠は防虫ネットに自立性が付与されれば特に限定されず、防虫ネットの左右両端部、上下両端部、あるいは縦または横方向の中央部分のみなど任意であるが、3面以上の防虫ネット面は折り畳み部を介して連続し、折り畳み可能であることが必要であるため、少なくともその左右両端部に支持枠を有することが好ましく、特に図1に例示されるように、各防虫ネットの全周辺部を支持するリング状の形状が高い自立性と折り畳み部が簡単に得られる点で好ましい。
【0013】
かかるリング状の支持枠としては、例えば平板状の支持板の中央部をくりぬいた形状の枠が挙げられる。
もちろん、このようなリング状の支持枠であっても、支持板の材質、厚さ、剛性などによって、防虫ネット面としての十分な自立性が得られない場合には、例えば中央部分に横方向あるいは縦方向など任意の方向と位置に補強のための補強枠(4)を追加的に設けてもよい。
【0014】
支持方法としては、防虫ネットと支持枠の重なる部分を縫製や接着などにより固定する方法が採用される。
【0015】
尚、防虫ネットを支持枠で固定する場合、外観の向上のために同一形状、大きさの二つの支持枠同士で防虫ネットの固定位置をサンドイッチ状に挟み込むように固定してもよい。
【0016】
防虫ネット面として、防虫ネットが支持枠で支持されている場合、支持枠の面積が大きすぎる場合には平面的に見た場合の防虫ネット部分の面積が相対的に小さくなって、殺虫・防虫効果が低下するため、支持枠の面積は防虫ネット面として自立し、折畳み可能な程度に少なくすることが好ましい。
【0017】
ここで、防虫ネットとしては棉、麻、羊毛などの各種天然繊維、アクリル、ポリエステルなどの各種合成繊維あるいはその混紡繊維などを原料としたネットのほか、熱可塑性樹脂を原料としたネットが挙げられるが、とりわけ熱可塑性樹脂から形成される樹脂製ネットが好適に使用される。
【0018】
かかる熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エチレンーメチルメタクリレート共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ナイロンなどのポリアミド樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などの熱可塑性樹脂やエチレンープロピレンーブタジエンなどオレフィン系エラストマーなどが例示され、ここでいう熱可塑性樹脂とはこのような熱可塑性樹脂やエラストマーを総称するものである。
【0019】
原料として熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂製ネットとしての柔軟性の調整、殺虫成分の含有率や蒸散速度の調整などを目的として、例えば低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを適宜の割合で混合したり、オレフィン系樹脂にエチレンーメタクリル酸メチル共重合体を混合するなど、前記熱可塑性樹脂を混合物として利用してもよい。
【0020】
防虫ネットへの防虫薬剤の配合は、防虫薬剤をアセトン、エタノール、エーテルなどの揮発性の有機溶媒にその濃度が1〜50重量%程度の範囲となるように溶解させ、この防虫薬剤溶液中にあらかじめ製造された各種基材からなるネットを含浸させる方法もあるが、長期間安定して防虫薬剤を蒸散させるには、原料として熱可塑性樹脂を使用し、該熱可塑性樹脂中に予め所定量の防虫薬剤を直接練りこみ、これを溶融紡糸法などの通常の方法で紡糸し、単繊維のままあるいはこれを撚って糸状にしたのちネット状に編んだり、前記防虫薬剤含有の熱可塑性樹脂組成物を回転ダイスを用いた押出成形法などによって直接ネット状に成形する方法が好ましい。
【0021】
防虫ネットの網の太さ、網目一個当りの面積(網目面積)、網目の形状などは特に制限されず任意であるが、一般的にはネットを構成する網糸の太さは0.01〜3mm程度、好ましくは0.05〜1mm程度であり、網目面積は網目一個当り0.5〜500mm、好ましくは5〜200mmの範囲であり、網目の形状としては長方形、正方形、菱形などの四角形、六角形、円形などが例示される。
【0022】
防虫ネット中に含有される常温揮散性の防虫薬剤としては殺虫剤あるいは防虫剤として公知のものが適用され、その量は、殺虫・防虫成分の種類、基材の種類、防虫ネットの形状、放散体として設定される予定使用期間など種々の条件によって異なるが、一般的には防虫ネット中の含量として0.5〜10重量%の範囲である。
【0023】
かかる目的で使用される常温蒸散性の防虫薬剤としては、例えばエンペントリン、トランスフルスリン、メトフルトリン(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)、プロフルトリン(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)などの常温蒸散性のピレスロイド化合物が挙げられ、これらの中でもメトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルスリンが好ましく使用される。
【0024】
本発明の屏風型放散体は、このような防虫ネット面を3つ以上有し、しかもそれぞれのネット面が連結され、かつそれぞれの防虫ネット面が連結部を介して折り畳み可能な構造となっており、図1では防虫ネット面が3つの場合を例示している。
【0025】
上記において、連結部の構造は任意であるが、独立した各防虫ネット面の支持枠の外周部同士を隣接させ、当該隣接部を可撓性を有するある接着テープなどを用いて接続させたり、複数の防虫ネット面を連続した同一基材からなる支持枠で構成し、その折り畳み部に相当する位置に細い切り込み(5)などを入れ、この切り込み部を支点として折り畳み可能とする方法などが挙げられる。
【0026】
本発明の屏風型放散体はまた、上記した3面以上の防虫ネット面を折り畳んだときの両外側面の防虫ネット面上に殺虫・防虫成分が非通過の保護層(6)が設けられており、その結果、屏風型放散体の両外側は、その内側に防虫ネット面が、外部側には保護層が設けられた多層構造となっている。
図1の例においては、左の外側層においては防虫ネット面の保護層はその正面に見えるが
防虫ネット面は図面上見えず、右の外側層においては防虫ネット面は見えるが保護層は反対側(裏面)に存在するため図面上は見えない。
【0027】
この保護層は、屏風型放散体を折り畳んだ状態、すなわち非使用時には折り畳まれた防虫ネット面を両外側面から挟み込む状態になっているため、防虫ネット面が直接ヒトに接触することを防止し、また内部の防虫ネットからの防虫薬剤の蒸散を遮断したり抑制する役目を果たしている。
【0028】
このため、当該保護層は防虫薬剤が非通過の材料からなり、該材料としては紙、一般的なプラスチックフィルム、プラスチックシートなどが挙げられる。
かかる材料において、例えば材料が紙である場合、紙としての種類などには特に限定されないがその厚みを調整することにより非通過性とすることができ、プラスチックフィルム、プラスチックシートにおいても同様である。
【0029】
尚、この保護層は基本的には上記したように非使用時において防虫ネットがヒトに接触することを防止したり、該保護層からの防虫薬剤の蒸散を抑制するためのものであるが、非使用時においても若干の防虫薬剤が蒸散しても特に問題とならないような場合には、図2に示されるように、意匠性の観点から、防虫ネットが直接にヒトに接触しないように、ヒトの指先などが入らない程度の大きさ、形状の穴(7)を任意の場所に1ないし2個以上設けても良く、このときの穴の深さは保護層を貫通していても、その表層部のみであってもよい。
勿論、この保護層表面には前記穴部等の有無にかかわらず、印刷模様その他の適宜の装飾を施していても何ら差し支えない。
【0030】
保護層と防虫ネット面との接合は、防虫ネット面が防虫ネットのみからなる場合には、防虫ネットの全面またはその周辺部など適宜の個所を防虫ネットが保護層から剥離しない程度に保護層の裏面側に接着剤を用いたりホットメルト法により直接接合すればよい。
また、防虫ネットが支持枠で支えられている場合には、支持枠部を保護層の裏面側と接着剤等を用いて接合すればよく、接合方法自体は防虫ネット、支持枠、保護層などに使用される材料の性質に応じて任意の方法が採られる。
【0031】
かくして、本発明の屏風型放散体は、使用に際してこれを屏風型に展開した場合には、両外側面の部分では保護層を設けた裏面側の防虫ネットの片面から防虫薬剤が放散するとともに中央部の防虫ネット面ではその表裏両面から防虫薬剤が放散されて防虫効果が発揮され、一方、非使用時にはこれを折り畳むことにより、防虫ネットは両外側面の保護層にはさまれて防虫薬剤の放散が抑制され、また防虫ネット面が直接ヒトに接触しないため携帯にも非常に便利となり、しかも単に屏風型に開くか閉じると言う極めて操作が簡単であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明放散体の例を概略図で示したものである。
【図2】本発明放散体の他の例を概略図で示したものである。
【符号の説明】
【0033】
1 防虫ネット面
2 防虫ネット
3 支持枠
4 補強枠
5 切り込み
6 保護層
7 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性の殺虫・防虫成分を含有する防虫ネット面を3面以上有し、かつ各防虫ネット面が屏風型に折り畳み自在であるとともに、折り畳んだときの両外側面の防虫ネット面上に殺虫・防虫成分が非通過の保護層が設けられてなることを特徴とする屏風型防虫薬剤放散体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−118889(P2008−118889A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304899(P2006−304899)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(390000527)住化ライフテク株式会社 (54)
【Fターム(参考)】