説明

履物

【課題】 履物を履いて歩行している時に、履物内部での足裏の前方部分を積極的に乾燥させることができる履物を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る履物は、履物のソール構造体におけるヒール部分に、歩行に伴う履物の上下動作に応じて内部の体積が変動するピストン構造体を形成すると共に、前記ピストン構造体に、外部からの空気を取り入れることができる吸気通路と、ピストン構造体の内部の空気を排気可能な排気通路とを設け、前記排気通路の排気口を、ソール構造体における足裏の前方部分に相当する領域に形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、スリッパ及びサンダル等の履物に関し、特に、履物内部での足裏の通気性に優れた履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、日本は、土地柄非常に湿度が高いため、白癬菌による感染症、所謂、水虫が問題になっている。
【0003】
白癬菌は、湿度70%以上で、温度が15℃以上になると活発に増殖するため、この状態で皮膚に付着すると、皮膚に定着して増殖し、角質層の奥へ侵入していき、さまざまな水虫の病状として現れる。
【0004】
履物には、足の甲から踵まで足全体を覆うようにアッパーが構成された靴、足全体を覆わずに足の先端上面を覆うようにして引っ掛けて履くことができるように構成されたスリッパ、及び足全体を覆わずに紐やバンド等で足をソール構造体に止めるように構成されたサンダル等があるが、特に足全体をアッパーで覆う靴を履いている時の足指間の湿度は95%以上になるといわれ、温度は32℃以上にもなるといわれている。このように、靴を履いている時の足裏の前方部分、得に、足指間の環境は、白癬菌が増殖するのに非常に適した環境になっているので、特に問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
靴の内部の通気性をよくするために、靴のアッパーをメッシュで構成したり、アッパーに小孔を設けたりする等の工夫がなされているが、足裏の前方部分、特に、足指間の湿度を十分に下げることができるものはない。
【0006】
また、サンダルやスリッパは、靴とは異なり足全体を覆わないため、靴に比べると通気性がよいが、靴であろうが、サンダル又はスリッパであろうが、足裏は、常にソール構造体の内面に密着しているため、汗による湿度の上昇は避けられない。さらに、人間は、足の前方部分で地面を蹴るようにして歩くため、特に足裏の前方部分(特に、足指間に相当する領域)はソール内面との密着性が高く、かつ、汗もかきやすい。このため、上記した水虫の問題は、靴に限らず、サンダルやスリッパでも同様のことがいえる。
【0007】
発明者は、上記した従来の問題点に鑑みて、鋭意研究を重ね、履物を履いている時に足裏の前方部分を積極的に乾燥させる構造を持った履物がないことに着目し、本発明を発明するに至った。
本発明は、履物を履いて歩行している時に、履物内部での足裏の前方部分を積極的に乾燥させることができる履物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る履物は、履物のソール構造体におけるヒール部分に、歩行に伴う履物の上下動作に応じて内部の体積が変動するピストン構造体を形成すると共に、前記ピストン構造体に、外部からの空気を取り入れることができる吸気通路と、ピストン構造体の内部の空気を排気可能な排気通路とを設け、前記排気通路の排気口を、ソール構造体における足裏の前方部分に相当する領域に形成したことを特徴とする。
前記排気通路の排気口は、好ましくは、ソール構造体の足裏の前方部分における足指の付根に相当する領域、より好ましくは、足指の付根間に相当する領域に形成され得る。
また、前記排気口を、ソール構造体の足指の付根間に相当する領域に形成する場合、好ましくは、排気口は、各足指の付根間に相当する4箇所の領域に形成され得る。
好ましくは、前記ピストン構造体は、前記ヒール部分を、上下に二つに分割し、上側部分と下側部分との間に、上側部分と下側部分とを離す方向に付勢するスプリングを設けることで構成され得る。
前記ピストン構造体の吸気通路は、ソール構造体の上面又は側面から空気を取り込むように構成され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る履物は、履物のソール構造体におけるヒール部分に、歩行に伴う履物の上下動作に応じて内部の体積が変動するピストン構造体を形成すると共に、前記ピストン構造体に、外部からの空気を取り入れることができる吸気通路と、ピストン構造体の内部の空気を排気可能な排気通路とを設け、前記排気通路の排気口を、ソール構造体における足裏の前方部分に相当する領域に形成しているので、歩行に伴う履物の上下動作に応じてピストン構造体の体積が増加する時に、吸気通路を介して外部から空気がピストン構造体内に吸気され、逆にピストン構造体の体積が減少する時に、排気通路を介して足裏の前方部分に相当する領域に形成された排気口から空気が排気される。従って、湿気の原因となる汗をかきやすい歩行中に、足裏の前方部分に空気が積極的に送られることになるので、足裏の前方部分が積極的に乾燥させられ、湿度の上昇を避けることができる。
また、前記排気口を、足指の付根に相当する領域に形成した場合には、足裏の中でも汗による湿気が篭り易い足指の付根を積極的に乾燥させることができる。
さらに、前記排気口を、足指の付根間に相当する領域に形成した場合には、足裏の中でも、特に、汗によって湿度が高くなり易い足指の付根間を積極的に乾燥させることができる。
さらにまた、前記排気口を、各足指の付根間に相当する4箇所の領域に形成した場合には、特に、湿気が高くなり易い足指の付根間全てを積極的に乾燥させることができる。
【0010】
また、前記ヒール部分を、上下に二つに分割し、上側部分と下側部分との間に、上側部分と下側部分とを離す方向に付勢するスプリングを設けることでピストン構造体を形成することにより、歩行中、足を持ち上げている時には、前記スプリングの力によって上側部分と下側部分とが離されてピストン構造体の体積が増加されてピストン構造体内に外部から空気が取り入れられ、足を下げている時には、使用者の体重がヒール部分にかかるため前記スプリングの力に抗して上側部分と下側部分とが接近させられてピストン構造体の体積が減少し、ピストン構造体内の空気が排気通路を介して足指の付根間に相当する領域に形成された排気口から排気されるようになる。これにより、使用者は特別意識することなく普通に歩いているだけで、その歩行動作によって、足指の付根間に空気が供給され、湿気の上昇を抑えることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る履物の実施の形態を説明していく。
図1は、本発明に係る履物の概略上面図、図2は図1におけるA−A断面図である。
図面に示すように、この実施例に係る履物はサンダルである。
このサンダルは、ソール構造体1に、足を止めるためのバンド2を設けて成る。
前記ソール構造体1は、上側部分3と、下側部分4とから成る。
図面に示すように、下側部分4は、そのヒール部分4aが下方に傾斜するように形成されている。そして、下側部分4は、この傾斜した部分によって、上側部分3と結合した時に、上側部分3と下側部分4との間に所定の体積の空間Sを生じさせる。
また、下側部分3と上側部分4との間にはスプリング5が設けられている。
前記スプリング5は、下側部分3と上側部分4とが相互に離れるように、これらの部分3及び4を付勢する。
上記した空間Sとスプリング5とによって本発明に係るピストン構造体は構成されている。
図3は、上側部分4の裏面図である。
図1〜図3に示すように、上側部分4には、上下方向に貫通する4つの吸気通路6が設けられている。これら吸気通路6は、上方が上側部分4の上面(即ち、大気中)に開口し、下方がピストン構造体の空間Sに開口している。
図中、符号7は、吸気通路6の空間S側の開口に設けられた逆止弁であり、この逆止弁7は、空間Sの体積が減少する時に空間Sの空気が吸気通路6から漏れることを防止する。
また、上側部分4には、一方がピストン構造体の空間Sに開口し、他方が足指の付根間に相当する領域に開口している排気通路8が形成されている。
この排気通路8は、ピストン構造体側の上流部分8aと、上流部分8aから分岐して各足指の付根間に伸びる4本の下流部分8bとから成る。
上流部分8aには、逆止弁9が設けられており、この逆止弁9は、空間Sの体積が増加する時に排気通路8から空間Sへ空気が入るのを防止する。
【0012】
以下、上記したように構成されたサンダルの作用について、図4を参照しながら簡単に説明していく。
使用者がサンダルを履いて普通に立っている状態では、図4(a)に示すように、使用者の体重によってスプリング5の力に抗して上側部分8aが下側部分8bに接近するように押し下げられ空間Sの体積は最小になっている。
使用者が、歩行のために足を上げると、図4(b)に示すように、スプリング5の力によって、下側部分8bが上側部分8aから離れる方向に押されて、空間Sが広がる。そして、空間Sが広がる時の負圧により逆止弁7が開いて吸気通路6から空間Sに空気が吸引される。
次いで、図4(c)に示すように使用者が足を下げると、使用者の体重によって、スプリング5の力に抗して上側部分8aが下側部分8bに接近するように押し下げられ空間Sの体積が減少する。そして、空間Sの体積が減少する時の圧力によって、逆止弁9が開いて、空間S内の空気が排気通路8を介して足指の付根間の開口から排気される。
上記したように、使用者の歩行に伴う足の上げ下げによって、空間S及びスプリング5から成るピストン構造体が動作して、足指の付根間に空気が送られる。
【0013】
以上説明した実施例では、サンダルを例に挙げて本発明に係る履物を説明しているが、本発明に係る履物の種類は本実施例に限定されることなく、靴又はスリッパにも適用できることは勿論である。
また、以上説明した実施例では、排気通路の排気口を、各足指の付根間に相当する領域に開口させているが、排気口を開口させる領域は、本実施例に限定されることなく、足裏の前方部分であれば、どの位置でもよく、例えば、足指の付根全体に空気を供給するように設けてもよく、任意の足指の付根間に空気を供給するように設けてもよい。尚、この明細書において、「足裏の前方部分」とは、ソール構造体のヒール部分に相当する領域より前側の部分を意味している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る履物の概略上面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】上側部分4の裏面図である。
【図4】(a)〜(c)は歩行に伴う履物の動きを示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ソール構造体
2 バンド
3 上側部分
4 下側部分
4a ヒール部分
5 スプリング
6 吸気通路
7 逆止弁
8 排気通路
8a 上流部分
8b 下流部分
9 逆止弁
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物のソール構造体におけるヒール部分に、歩行に伴う履物の上下動作に応じて内部の体積が変動するピストン構造体を形成すると共に、
前記ピストン構造体に、
外部からの空気を取り入れることができる吸気通路と、
ピストン構造体の内部の空気を排気可能な排気通路と
を設け、
前記排気通路の排気口を、ソール構造体における足裏の前方部分に相当する領域に形成した
ことを特徴とする履物。
【請求項2】
前記排気通路の排気口を、ソール構造体の足裏の前方部分における足指の付根に相当する領域に形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記排気通路の排気口を、ソール構造体の足裏の前方部分における足指の付根間に相当する領域に形成した
ことを特徴とする請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記排気通路の排気口を、ソール構造体の足裏の前方部分における各足指の付根間に相当する4箇所の領域に形成した
ことを特徴とする請求項3に記載の履物。
【請求項5】
前記ヒール部分を、上下に二つに分割し、上側部分と下側部分との間に、上側部分と下側部分とを離す方向に付勢するスプリングを設けることでピストン構造体が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の履物。
【請求項6】
前記ピストン構造体の吸気通路が、ソール構造体の上面又は側面から空気を取り込むように構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−42107(P2010−42107A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207319(P2008−207319)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(508243835)
【Fターム(参考)】