説明

岩盤浴装置

【課題】浴室における室温と湿度とが常時適切に制御され、ドアの開閉による突発的な温度低下にも即座に対応し得る岩盤浴装置を提供する。
【解決手段】加熱されることにより利用される岩盤浴ベッドが浴室に配置され、岩盤浴ベッドは、その加熱のために熱パイプまたは電気ヒーターが内装される蓄熱層の上に岩盤面層を設けた積層構造であって、その岩盤面層が4μm〜14μmの波長帯の遠赤外線を放射する自然の岩または石を素材として形成されている岩盤浴装置において、浴室内には、ボイラー等の加熱によって発生した生蒸気を噴霧する蒸気噴霧器と湿度センサーを具備し、湿度センサーが一定範囲以下の湿度の低下を検知して蒸気噴霧器が開に作動し、一定以上の湿度の上昇を検知して閉に作動するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴室に人が横になる岩盤を配列し、利用者が加熱された岩盤浴ベッドの上で温まるようにした岩盤浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
岩盤浴装置の由来は、温泉地において地熱により温まっている岩盤の上にござを敷き横になり身体を温めて露天の温浴をしていたことにあり、このような自然環境における岩盤との触れ合いにより健康の増進がなされ、また、様々な病気の治療や不調の改善がなされるが、その環境が山岳の遠隔地に限られることから、この自然環境にできるだけ近い施設を室内に再現し、気軽に利用できる岩盤浴施設がサウナ風呂のような大衆向けとして提供される。
【0003】
営業としての岩盤浴施設は、多数の岩盤浴ベットが配列される浴室の他に、休息室や男女別々の脱衣室(ロッカールーム)などがあり、玄関のホールから脱衣室、休息室、浴室に向かうように各部屋が配置されている。また、室内暖房の他に、浴室の床暖房や天井暖房のために一般的にボイラー室が具備される。
【0004】
岩盤には、自然から切り出したままの四角いプレートが好ましいと言えるが、コスト高となるため、自然に存在する石や岩を粉末または砂利状に粉砕し、それを練り込んだプレートが使用されることも多い。その自然の岩石には、一般的に4μm〜14μmの波長帯の遠赤外線を放射し又マイナスイオンの発生を促進するものとして特に有名なものが多用される。これには例えば、天照石(宮崎県)、原陽石(愛知県)、角閃石(岩手県)、トルマリン(ブラジル)、紫水晶(ブラジル)などがある。また、ラジウム等を含むために極微弱な放射線を放出する石(玉川温泉)も特にガン治療に有効とされる。
【0005】
上記波長帯の遠赤外線は、岩盤を温めることにより多量に発生し、身体の細胞に共振/共鳴現象を起こし、微弱なエネルギーにおいて身体を芯まで効率よく温めるので、老廃物を排出するために有効な発汗が促進され、また、血行が促進することから身体に良好に作用する。例えば、病後の疲労回復、神経痛やリューマチなどの神経系の疾患、胃弱などの消化器系の疾患等である。
【0006】
岩盤浴ベッドの構造については様々であるが、例えば、基板の上にコンクリートの蓄熱層を設け、その上に岩盤プレートを敷設したものが挙げられ、蓄熱層には、温水を通す熱パイプが配管され、或いは電気ヒーターが内装される(特許文献1)。そして、サーモスタットにより、岩盤プレートの露出面温度を例えば47°C〜50°C程度に保持される。また、室温が40°C〜45°Cにおいて湿度が65%〜95%程度に保たれる。この室温と湿度の制御については、床の下にはボイラで加熱される温水を通す熱パイプが配列されることによる床暖房を利用するものとして、床面に散水路が設けられ、散水路に散水しその際に発生する水蒸気と気化熱との相互作用によることが提案される(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−261547号公報
【特許文献2】特開2005−87651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の温湿度調整によれば、散水路に散水して発生する水蒸気により絶対湿度が上昇し、加えて、気化熱を床面から奪うことによる室温低下(もしくは室温のわずかの上昇)を伴って相対湿度が上昇する。したがって、温度と湿度との相関関係が逆関係となり非常に複雑で、自動制御においても適当な制御が困難であり、また、出入りのためのドアの開閉時に入ってくる隣室の空気により浴室の室温が突然低下したときに、それに対応する室温の復帰が遅れるだけでなく、この時も温度と湿度との逆相互関係が生じて制御が困難であった。
【0008】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、浴室における室温と湿度とが常時適切に制御され、ドアの開閉による突発的な温度低下にも即座に対応し得る岩盤浴装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、加熱されることにより利用される岩盤浴ベッドが浴室に配置され、岩盤浴ベッドは、その加熱のために熱パイプまたは電気ヒーターが内装される蓄熱層の上に岩盤面層を設けた積層構造であって、その岩盤面層が4μm〜14μmの波長帯の遠赤外線を放射する自然の岩または石を素材として形成されている岩盤浴装置において、浴室内には、ボイラー等の加熱によって発生した生蒸気を噴霧する蒸気噴霧器と湿度センサーを具備し、湿度センサーが一定範囲以下の湿度の低下を検知して蒸気噴霧器が開に作動し、一定以上の湿度の上昇を検知して閉に作動するように構成したことを特徴とする岩盤浴装置を提供するものである。
【0010】
岩盤浴装置を上記のように構成したから、岩盤浴ベッドの上に横になるだけでその温浴の効果を受けられることはもちろん、浴室の湿度が所望する適正の範囲を下回ったときには、湿度センサーからの信号により蒸気噴霧器が開となって熱気の帯びた生蒸気を大量に噴出させながら、急激な温度上昇を伴いながら湿度を上昇させることができる。そして、一定の湿度に達したときに閉となって噴出が停止したときには、浴室は、高い温度により発汗がさらに促進される室内環境が実現している。
【0011】
また、蒸気噴霧器から噴出するときに水分子ないし粒子の擦れ合いから、マイナスイオンが発生しやすく、また、岩盤プレートによってもマイナスイオンが発生するが、浴室内の適正湿度において、マイナスイオンの空中での滞在時間が長くなると考えられ、マイナスイオンの効果も受けやすくなる。なお、マイナスイオンの効果としては、精神安定作用、自律神経調整作用、血液の浄化作用などが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、この発明の岩盤浴装置によれば、浴室における室温と湿度との調整が蒸気噴霧器から加熱された生蒸気を噴出することにより常時適切に制御され、しかも、生蒸気の大量放出により、ドアの開閉等による突発的な温度低下にも即座に対応し得るため、無理なく発汗を促進するのに適する室内環境の実現が容易であり、岩盤浴の健康効果が得られやすくなり、また、マイナスイオンの健康効果も受けやすくなるという優れた効果がある。
【0013】
また、請求項2によれば、乾燥した生蒸気を噴出することになるので、発汗の促進にさらに効果があり、また、発生したマイナスイオンの空中での滞在時間が長くなると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、岩盤浴装置を備えた施設の要部を示す平面図であって、休憩室1に隣接して、壁3で囲まれる複数の浴室5,5,・・が設けられ、外にはボイラー室7が設けられ、ボイラー8から蒸気パイプ9(図2)の配管がなされることによって、各浴室5に蒸気噴霧器11が一カ所又は数カ所に設けられ、それが床面に近い高さにおいて壁3から浴室5内に突出して具備される。そのため壁3には蒸気噴霧器11の取付口10が内装され(図1)、取付口10に接続する蒸気パイプ9には電磁弁12が設けられる。この電磁弁12は、浴室5に具備される湿度センサー29からの信号に基づいて開閉する。
【0016】
壁3で仕切られる各浴室5,5,・・には、2〜4個の岩盤浴ベッド13が配置され(2人室、3人室、4人室)、休憩室1からの出入口15が2人室と3人室では1ヵ所に、4人室では2ヵ所にそれぞれ設けられ、4人室では中央に間仕切17が開閉可能に設けられ、出入口15,15が別々となる2室に使用できるようにもなっている。また、各岩盤浴ベッド13,13の間には衝立19が設けられる。なお、壁3は断熱構造となっており、室内側には内装20が施される。
【0017】
岩盤浴ベッド13は、基板21の上にコンクリートの蓄熱層23を設け、その上に岩盤面層25が形成されたもので、その形成については、四角の岩盤プレートが敷き詰められる。また、蓄熱層23には熱パイプ27が蛇行状に内装される。また、これに代えて電気ヒーターを内装しても良い。また、熱パイプ27の場合であると、これに熱水又は蒸気が通されるが、これには上記のボイラー8を兼用することもできるし、全館暖房用の別途ボイラーによっても良い。
【0018】
岩盤面層25を構成する岩盤プレートについては、素材に4μm〜14μmの波長帯の遠赤外線やマイナスイオンを多く放出する岩または石が用いられる。この自然の岩を切り抜いて四角に形成したものを使用することが望ましいが、これらを粉砕して粉にしたものをコンクリートで練り固めたものも使用でき、また、その粉を水で練り固めて乾燥したものを焼成して岩盤プレートを製造することもできる。
【0019】
図2は、専用蒸気発生機としてのボイラー8からの配管が枝分かれすることによって、枝分かれした各蒸気パイプ9の先端に蒸気噴霧器11が取り付けられ、それが前記したように壁3から浴室5内に突出される状態の概略説明図である。蒸気噴霧器11は前記したように湿度センサー29からの信号に基づいて開閉するように、近くの蒸気パイプ9に電磁弁12が設けられる。なお、ボイラー室7においては減圧弁14が設けられる。
【0020】
浴室5内の湿度と温度の制御について一例を説明すると、浴室5内の湿度が自然に発汗を促す、例えば、60〜80%に保たれるようにそれ以下の湿度を湿度センサー29が検知して蒸気噴霧器11から加熱された生蒸気が噴出されるので、室温の上昇を伴いながらそれに相応して湿度が上昇し、上記の範囲以上に湿度が上昇すると蒸気噴霧器11が停止する。そして、所望する一定の室温に至るまで生蒸気が浴室5に即座に導入される。図2において、16は余剰の水を流す雨水枡である。
【0021】
蒸気噴霧器11の種類については様々となり、市販の加湿器を使用することもできる。図3は、その一種として、騒音が比較的少なく乾燥蒸気を生成できる「減圧膨脹乾燥蒸気発生噴霧器」を示したものである。
【0022】
その構造については、(図1の取付口10に接続される)蒸気入り口35を有する筒形の減圧ハウジング33にノズル管37を突設したもので、減圧ハウジング33内にはハット形に形成された多数の仕切片39,39,・・を順々に重なるように内装することにより、その間に多数の主通過室41,41,・・を形成するとともに、減圧ハウジング33の内壁との間に多数の副通過室42,42,・・を形成し、仕切片39に設けられる通気穴や、減圧ハウジング33との間の隙間を蒸気が順次通ることにより減圧され、ほゞ大気圧に近い乾燥蒸気となってノズル管37から静かに放出される。ノズル管37には複数の噴出口49が上向きに設けられる。51はドレン抜き穴である
【0023】
なお、噴出口49から蒸気が噴出されるときにプラスイオンとマイナスイオンとが発生するが、乾燥蒸気の場合であると、その双方の結合(打ち消し)が生じがたいので、マイナスイオンの効果が比較的多く得られ、発汗が促進されることとも相まって、健康に良好に作用すると考えられる。
【0024】
上記構造の蒸気噴霧器11は、「ハイスチーマー」の名称でウエットマスター株式会社で製造・販売されており、室温の低下を招かないで加湿時間が早いという点で優れている。その他の蒸気式加湿器としての蒸気噴霧器も使用できる。これについては、単に蒸気を直接噴霧するノズル型であると、騒音が大きい欠点がある。また、減圧ハウジングの中に多孔内筒を内装した「簡易消音・膨脹型」を試作して実験した結果では、構造が簡単ではあるが、前記蒸気噴霧器11に匹敵する有効性が認められた。また、貯温水タンクにノズル管を直接的に接続し、タンク内に電気ヒーターを内装した「タンク付き型」であると、ボイラーから配管するという設備が省ける反面、立ち上がりが遅く加湿および室温の上昇に時間がかかる欠点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の岩盤浴装置の施設を間取りで示すとともに、一部岩盤浴ベッドを切欠してその構造も示す平面図である。
【図2】同岩盤浴装置におけるボイラーと蒸気噴霧器との間の配管を示す説明図である。
【図3】同岩盤浴装置に使用する蒸気噴霧器の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
5 浴室
8 ボイラー
9 配管の蒸気パイプ
11 蒸気噴霧器
13 岩盤浴ベッド
23 蓄熱層
25 岩盤面層
27 熱パイプ
29 湿度センサー
33 減圧ハウジング
37 ノズル管
41,42 通過室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることにより利用される岩盤浴ベッドが浴室に配置され、岩盤浴ベッドは、その加熱のために熱パイプまたは電気ヒーターが内装される蓄熱層の上に岩盤面層を設けた積層構造であって、その岩盤面層が4μm〜14μmの波長帯の遠赤外線を放射する自然の岩または石を素材として形成されている岩盤浴装置において、浴室内には、ボイラー等の加熱によって発生した生蒸気を噴霧する蒸気噴霧器と湿度センサーを具備し、湿度センサーが一定範囲以下の湿度の低下を検知して蒸気噴霧器が開に作動し、一定以上の湿度の上昇を検知して閉に作動するように構成したことを特徴とする岩盤浴装置。
【請求項2】
室外にボイラー室を設け、配管によりそれから導入される生蒸気の蒸気噴霧器は、生蒸気を導入する減圧ハウジングにノズル管を突出し、減圧ハウジング内に多数の通過室を設けてあって、生蒸気が各室を順次通過して減圧され乾燥した蒸気がノズル管から放出される形式の減圧膨脹乾燥蒸気発生噴霧器であることを特徴とする請求項1記載の岩盤浴装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−202925(P2007−202925A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27867(P2006−27867)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(500426353)ヤマサン食品工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】