説明

岩盤用ドリルヘッド

【課題】岩盤層に削孔をする場合において、切削ビットで切削して出た切削土を円滑に排出して、削孔効率を向上する。
【解決手段】回転して岩盤に削孔するスクリュードリルの先端に装着する岩盤用ドリルヘッド1であって、軸心が回転中心2cとなるヘッドシャフト2と、該ヘッドシャフト2の外周面に配置され、前記回転中心2cから外方向に放射状にのびて先端の切削面11に複数の切削ビット20を備えた4枚の切削翼10を有し、これら切削翼10が、平面視十字状をなすように等間隔に配置されるとともに、切削翼10の高さ方向長さが径方向長さより短い低背切削翼で構成された岩盤用ドリルヘッド1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転して地盤に削孔するスクリュードリルの先端に装着するドリルヘッドであって、さらに詳しくは、岩盤層に削孔するための岩盤用ドリルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば杭等を造成するために、回転して地盤に削孔するスクリュードリルの先端に装着するドリルヘッドについて、従来から多く提案されている。
例えば、下記特許文献1の掘削機用オーガヘッドもその1つである。
【0003】
前記掘削機用オーガヘッドは、リーダを有する杭打ち機に備えたスクリュードリルの先端に装着するドリルヘッドであり、3枚のスクリュードリル翼の下端の切削面が回転方向に等間隔で底面視Y字状に配置されている。
【0004】
そして、各スクリュードリル翼の下端の切削面に切削ビットを装着し、さらに詳しくは、切削ビットの配置が底面渦巻き状となるように配置されている。
このように構成されたドリルヘッドを地盤に押し付けて回転することで削孔することができ、例えば、岩盤層に削孔する場合であっても、切削ビットを底面視渦巻き状となるように配置しているため、削孔断面の略全面を切削ビットで切削して削孔することができるとされている。
【0005】
しかし、前記掘削機用オーガヘッドは、3枚のスクリュードリル翼がスクリュードリルに連続するため、切削ビットで切削した切削土がとの間での接触抵抗により、特にドロドロになった切削土は円滑に排土されず、スクリュードリルの先端付近で排出されない切削土によって閉塞気味な状態となり、削孔速度が低下するといった問題があった。
【0006】
また、各スクリュードリル翼の切削面に配置した切削ビットは、切削する岩盤に圧力を集中する必要があるため、各スクリュードリル翼の切削面において適宜の間隔を隔てて配置する必要がある。しかし、スクリュードリルに付加された圧力を3枚のスクリュードリル翼に配置された切削ビットで受けるため、各切削ビットにかかる圧力が高く、耐久性が低くなるといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−58069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、例えば、岩盤層に削孔する場合であっても、切削ビットで岩盤に切削した切削土を円滑に排土できるような、削孔効率の高い岩盤用ドリルヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この本発明は、回転して岩盤に削孔するスクリュードリルの先端に装着する岩盤用ドリルヘッドであって、軸心が回転中心となるヘッドシャフトと、該ヘッドシャフトの外周面に配置され、前記回転中心から外方向に放射状にのびて先端の切削面に複数の切削ビットを備えた4枚の切削翼を有し、これら切削翼が、平面視十字状をなすように等間隔に配置されるとともに、切削翼の高さ方向長さが径方向長さより短い低背切削翼で構成された岩盤用ドリルヘッドである。
【0010】
岩盤とは、自然に生成された大量の岩石集合体、または岩石が分布している岩盤層のことである。詳しくは、マグマが冷え固まったり、火山活動で他の岩石などと混ざって固まったりした火成岩、水底や陸上に堆積したものが固結した堆積岩、熱や圧力をうけて構成鉱物や内部構造が変化した変成岩で構成される地層である。
【0011】
前記平面視十字状をなす4枚の切削翼は、1枚ずつ独立して形成した4枚の切削翼を平面視十字状に配置した切削翼や、2枚の切削翼を交差させて組み合わせ、あたかも4枚の切削翼を平面視十字状に配置したように見える切削翼であってもよい。
【0012】
前記切削翼の高さ方向長さは切削翼の上面から下端までの高さとし、切削翼の下端は、切削翼におけるヘッドシャフトの外周面位置の下部分や、切削翼の最下端位置である回転中心部分とすることができる。
前記切削翼の径方向長さは、ヘッドシャフトの外周面から切削翼最外側部までの長さや、回転中心部分から切削翼最外側部までの長さとすることができる。
なお、径方向とは、平面視十字状をなすドリルヘッドが回転して削孔する際の円形の径方向であり、回転中心からの放射方向であることをいう。
【0013】
本発明の構成により、岩盤を削孔する場合であっても、切削ビットで岩盤を切削し、切削ビットで切削した切削土を円滑に排土することができる。
詳しくは、4枚の切削翼を平面視十文字状に配設するように回転方向に等間隔で配置したことにより、スクリュードリルの削孔圧力を4枚の切削翼で略均等に分散できる。したがって、削孔圧力が偏ったり、削孔方向が偏心したりすることなく安定して削孔することができる。
【0014】
また、4枚の切削翼を備えているため、スクリュードリルの削孔圧力を適度に切削対象である岩盤に付加して切削、削孔することができる。詳しくは、上述したように、スクリュードリルの削孔圧力は各切削翼に略均等に分散される。
【0015】
そのとき、例えば、3枚の切削翼を備えたドリルヘッドの場合、各切削翼が分担する削孔圧力は大きくなり、岩盤に付与する削孔圧力が大きく、削孔効率は向上する。しかし、各切削翼及び切削ビットにかかる負荷が大きく、耐久性が低下する。
【0016】
これに対し、例えば、5枚の切削翼を備えたドリルヘッドの場合、各切削翼が分担する削孔圧力は小さくなるため、各切削翼及び切削ビットにかかる負荷が小さくなり、耐久性が向上する。しかし、岩盤に付与する削孔圧力も小さくなり、削孔効率は低減する。
【0017】
そこで、ドリルヘッドに4枚の切削翼を備えたことにより、スクリュードリルの削孔圧力を適度に切削対象である岩盤に付加して切削、削孔するとともに、各切削翼にかかる削孔圧力による負荷も低減でき、削孔効率と耐久性を両立することができる。
【0018】
さらにまた、4枚の切削翼を平面視十文字状をなすように放射状に等間隔で配置したことにより、切削によって割れた岩盤や礫が出現した場合であっても、切削翼に引っかからず排出することができる。
【0019】
例えば、切削翼及び切削ビットの耐久性向上を図り、切削翼の枚数を増やすと、隣り合う切削翼の間隔が狭くなり、切削によって割れた岩盤や礫が出現した場合に切削翼に引っ掛かって排出できないおそれがある。
【0020】
逆に、切削によって割れた岩盤や礫の切削翼への引っ掛かりを防止すべく、切削翼の枚数を低減すると、一枚あたりの切削翼が分担する削孔圧力が増加し、切削する岩盤に付与される圧力が高まり、大きな塊状で割れて切削翼に引っ掛かる。
【0021】
このように、4枚の切削翼を平面視十文字状を形成するように回転方向に等間隔で配置したことにより、割れた岩盤の塊が大きくなりすぎず、切削によって割れた岩盤や礫が出現した場合であっても、切削翼に引っかからず排出することができ、効率のよい削孔を実現することができる。
【0022】
また、前記切削翼を高さ方向長さが径方向長さより短い低背切削翼で構成したことにより、高さ方向長さが径方向長さより長い切削翼と比べて排土時の抵抗が低くなり、この結果、切削土を円滑に排土することができる。
【0023】
詳しくは、切削翼の回転により、切削土は切削翼を越えて上方移動してスクリュードリルで搬送されて、地上に排出される。このとき、高さ方向長さが径方向長さより長い切削翼の場合、切削土が切削翼を越えて上方移動しにくいため、スクリュードリルで排出されない。つまり、切削速度より排土速度が遅く、切削速度と排土速度とのバランスが悪い場合、切削土が切削箇所にたまって閉塞気味な状態となり、削孔効率が悪くなる。
【0024】
これに対し、前記切削翼を高さ方向長さが径方向長さより短い低背切削翼で構成すると、切削土は容易に切削翼を越えて上方移動してスクリュードリルで排出されるため、切削土が切削箇所にたまることなく、切削速度と排土速度とのバランスを保つことができ、削孔効率を向上させることができる。
【0025】
前記切削翼については、その先端の切削面を、外方向ほど徐々に上昇する傾斜面で構成するとよい。上昇する傾斜面とは、先端と反対側の切削方向後方に向けて傾斜することの意味である。
外方向ほど徐々に上昇する前記傾斜面は、中心側から外方向に向かって傾斜する平面や曲面とすることができる。
【0026】
これにより、当該傾斜面で構成する切削面に配置した切削ビットにかかる負荷を均一化し、切削ビットの耐久性を向上することができる。
詳しくは、通常、径方向に適宜の間隔を隔てて配置した切削ビットは、回転中心からの距離が遠いほど回転移動距離が長くなり、切削負荷が高く、耐久性が低いとされている。
【0027】
そこで、スクリュードリルから付与され、切削対象である岩盤に切削圧力を付加する切削ビットを、外方向ほど徐々に上昇する傾斜面に配置したことにより、径方向に配置された切削ビットにおいて、回転中心からの距離に応じて切削ビットにかかる切削圧力を低減することができる。
【0028】
したがって、外側に比べて回転移動距離が少なく、移動距離による切削負荷の少ない中心側の切削ビットが切削圧力を多く負担し、回転移動距離が多く、移動距離による切削負荷の大きい径外側の切削ビットが負担する切削圧力を低減することで、径方向に配置した切削ビットの負担を均一化することができる。よって、各切削翼において径方向に適宜の間隔を隔てて配置した切削ビットの全体の耐久性を向上することができる。
【0029】
また、前記切削ビットについては、前記切削翼における切削面に配置した切削ビットを、平面視十字状に配置された4枚の切削翼のうち隣り合う切削翼における前記切削ビットに対して、径方向位置をずらして配置するとよい。
【0030】
より好ましくは、前記4枚の切削翼の切削ビットが、それぞれ軌道を異にする位置に備えられるよい。
【0031】
前記4枚の切削翼のうち隣り合う切削翼は、例えば、各切削翼が底面視上下左右なるように配置した場合において、上側切削翼あるいは下側切削翼に対する左側切削翼あるいは右側切削翼であり、また左側切削翼あるいは右側切削翼に対する上側切削翼あるいは下側切削翼のことをいう。
【0032】
前記4枚の切削翼のうち隣り合う切削翼における前記切削ビットの径方向位置をずらして配置するは、例えば、各切削翼が底面視上下左右なるように配置した場合において、4枚の切削翼における切削ビットの径方向位置を全てずらした配置や、上側切削翼及び下側切削翼並びに左側切削翼及び右側切削翼における切削ビットを同じ位置で配置、上側切削翼及び下側切削翼における切削ビットの径方向位置と左側切削翼及び右側切削翼における切削ビットの径方向位置とをずらした配置とすることができる。
【0033】
これにより、切削対象である岩盤に対して切削圧力を適度に付加できるように、所定の間隔を隔てて配置しながら、削孔断面に対する切削面積の割合を向上させ、削孔効率を向上させることができる。
詳しくは、各切削翼の切削面において切削ビットを径方向の位置を近づけて配置すると、各切削ビットが岩盤に付与する切削圧力が低下し、切削効率が低下する。
【0034】
これに対し、切削ビットの径方向の位置を所定の間隔で隔てて配置することで、各切削ビットが岩盤に付与する切削圧力があがる。しかし、所定の間隔で隔てて切削ビットを配置すると、削孔断面に対する切削面積の割合が減少し、削孔効率を向上することができない。
【0035】
そこで、4枚の切削翼のうち隣り合う切削翼における前記切削ビットに対して、径方向位置をずらして配置することによって、各切削ビットが岩盤に付与する切削圧力を向上させるとともに、削孔断面に対する切削面積の割合を増加させ、削孔効率を向上させることができる。
【0036】
また、前記切削翼については、その高さ方向長さに対する前記径方向長さの比を示す縦横比を1.2以上で構成することができる。
この構成により、切削土をより円滑に排土して削孔効率を向上することができる。
【0037】
さらに、前記ヘッドシャフトの外周に、中心が前記回転中心と一致する円筒状をなす推進ガイド部材が設けられた岩盤用ドリルヘッドであってもよい。この場合には、前記推進ガイド部材が、前記切削翼の外周位置に切削翼と一体に設けられるのが好ましい。
【0038】
推進ガイド部材が、削孔時の前記回転中心のぶれを防止し、安定した削孔を実現する。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、例えば、岩盤層に削孔する場合であっても、切削ビットで岩盤を切削したときに出る切削土を円滑に排土して、削孔効率の高い岩盤用ドリルヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】岩盤用ドリルヘッドの斜視図。
【図2】岩盤用ドリルヘッドについての正面図及び側面図による説明図。
【図3】岩盤用ドリルヘッドの切削領域についての説明図。
【図4】他の例に係る岩盤用ドリルヘッドの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は岩盤用ドリルヘッド1の斜視図を示し、図2は岩盤用ドリルヘッド1についての正面図及び側面図による説明図を示し、図3は岩盤用ドリルヘッド1の切削領域についての説明図を示している。
【0042】
詳しくは、図2(a)は岩盤用ドリルヘッド1の正面図を示し、図2(b)は岩盤用ドリルヘッド1の左側面図を示している。
図3(a)は正面切削翼10aによる切削領域100aについて底面図によって示し、図3(b)は右切削翼10bによる切削領域100bについて底面図によって示している。
【0043】
図3(c)は背面切削翼10cによる切削領域100cについて底面図によって示し、図3(d)は左切削翼10dによる切削領域100dについて底面図によって示している。
さらに、図3(e)では、すべての切削翼10(10a,10b,10c,10d)による切削領域100について拡大底面図によって示している。
【0044】
なお、本実施例の説明において、便宜上、4枚の切削翼10を正面切削翼10a,右切削翼10b,背面切削翼10c及び左切削翼10dに設定するとともに、各切削翼10に装着した切削ビット20を正面切削ビット21,右切削ビット22,背面切削ビット23及び左切削ビット24に設定しているが、どれが正面、背面、右及び左であってもよい。
【0045】
岩盤用ドリルヘッド1は、図示しない杭打ち機に備えたスクリュードリルの先端に脱着可能に装着されるドリルヘッドであり、特に、岩盤削孔用のドリルヘッドである。
岩盤用ドリルヘッド1は、図1、図2、図3に示したように、図示省略する脱着手段によって、スクリュードリルに取り付けられるヘッドシャフト2と、ヘッドシャフト2の外周面2aにおいて、放射方向に等間隔で配置した4枚の切削翼10(10a,10b,10c,10d)と、各切削翼10の下面で構成する切削面11に、適宜の間隔を隔てて配置した切削ビット20(21,22,23,24)とで構成している。
【0046】
詳しくは、適宜の径の円柱状をなすヘッドシャフト2の下方の外周面2aに、平面視十字状となる配置で4枚の切削翼10を備えるとともに、4枚の切削翼10が交差する下端を回転中心2cとしている。ヘッドシャフト2の下端部(先端部)2bは、丸く尖った形状をなし、軸心が前記回転中心2cとなるものである。すなわち、その尖った先端が、前記回転中心2cとなる
なお、図示省略するが、回転中心2cには、岩盤を切削する際のベントナイト液等の削孔液を噴出させる削孔液噴出口を備えている。
【0047】
各切削翼10は、略水平な上面13と、略垂直な外側面12と、外方向ほど削孔方向後方に上昇する傾斜面で形成した前記切削面11とで構成する側面視略台形状に形成している。
【0048】
また、図2に示すように、切削翼10は、ヘッドシャフト2の外周面2a、詳しくは先端の前記下端部2bを除く部分から外側面12までの径方向長さW、すなわち上面13の長さが、回転中心2cから上面13までの高さ方向長さHより長い低背切削翼で構成している。詳しくは、切削翼10は、前記高さ方向長さHに対する前記径方向長さWの比を示す縦横比W/Hを1.2以上で構成している。
【0049】
また、上述したように、切削面11には、適宜の間隔を隔てて、超硬チップで構成した切削ビット20を配置している。なお、各切削翼10に装着した切削ビット20(21,22,23,24)の配置は、平面視十字状に配置された4枚の切削翼のうち隣り合う切削翼10における前記切削ビット20に対して、径方向位置をずらして設定している。
【0050】
詳しくは、正面切削翼10aには適宜の間隔を隔てて3つの正面切削ビット21(21a,21b,21c)を配置し、右切削翼10bには適宜の間隔を隔てて3つの右切削ビット22(22a,22b,22c)を配置している。
【0051】
背面切削翼10cには適宜の間隔を隔てて4つの背面切削ビット23(23a,23b,23c,23d)を配置し、左切削翼10dには適宜の間隔を隔てて4つの左切削ビット24(24a,24b,24c,24d)を配置している。
【0052】
各切削翼10の切削面11に装着した切削ビット20は、隣り合う切削翼10における切削ビット20に対して、径方向位置をずらして配置されている、すなわち、各切削ビット20は同心円上に配置されていない。
【0053】
換言すれば、前記4枚の切削翼の切削ビットが、それぞれ軌道を異にする位置に備えられている。
【0054】
切削翼10に装着した切削ビット20を回転中心2cからの距離Lが近い順位に並べると、左切削翼10dの左切削ビット24a,背面切削翼10cの背面切削ビット23a,右切削翼10bの右切削ビット22a,正面切削翼10aの正面切削ビット21a,左切削翼10dの左切削ビット24b,背面切削翼10cの背面切削ビット23b,右切削翼10bの右切削ビット22b,正面切削翼10aの正面切削ビット21b,左切削翼10dの左切削ビット24c,背面切削翼10cの背面切削ビット23c,右切削翼10bの右切削ビット22c,正面切削翼10aの正面切削ビット21c,左切削翼10dの左切削ビット24d,背面切削翼10cの背面切削ビット23dとなり、これらは全て回転中心2cからの距離Lが異なっている。
【0055】
なお、隣り合う切削翼10の切削ビット20同士の間隔pを切削ビット20の幅bよりわずかに大きく設定しており、同じ切削翼10における切削ビット20同士の間隔pは切削ビット20の幅bの4倍より大きくなる。
【0056】
このように構成された岩盤用ドリルヘッド1を削孔対象である岩盤に押し当てて、図示省略するスクリュードリルを介したオーガの回転によって、切削ビット20で岩盤を切削領域100で切削して、削孔することができる。
【0057】
詳しくは、正面切削ビット21で切削領域100aを切削し、右切削ビット22で切削領域100bを切削し、背面切削ビット23で切削領域100cを切削し、左切削ビット24で切削領域100dを切削するため、4枚の切削翼10が一回転することで切削領域100を切削することができる。
【0058】
このように、前記回転中心2cから外方向に放射状にのびて先端の切削面に複数のビットを備えた4枚の切削翼10を岩盤に押し付けて回転させることにより、切削ビット20が岩盤を切削し、切削ビット20で切削した切削土を円滑に排土することができる。
【0059】
前記効果について詳述すると、4枚の切削翼10を平面視十文字状をなすように回転方向に等間隔で配置したことにより、スクリュードリルの削孔圧力を4枚の切削翼10で略均等に分散できる。したがって、削孔圧力が偏ったり、削孔方向が偏心したりすることなく安定して削孔することができる。
【0060】
また、4枚の切削翼10を備えているため、スクリュードリルの削孔圧力を適度に切削対象である岩盤に付加して切削、削孔することができる。詳しくは、上述したように、スクリュードリルの削孔圧力は各切削翼10に略均等に分散される。
【0061】
そのとき、例えば、3枚の切削翼10を備えたドリルヘッドを想定すると、各切削翼10が分担する削孔圧力は4枚の場合に比して大きくなり、岩盤に付与する削孔圧力が大きく、削孔効率は向上する。しかし、切削翼の枚数が少ないぶん、各切削翼10及び切削ビット20にかかる負荷が大きく、耐久性が低下する。
【0062】
これに対し、例えば、5枚の切削翼10を備えたドリルヘッドを想定すると、各切削翼10が分担する削孔圧力は4枚の場合に比して小さくなるため、各切削翼10及び切削ビット20にかかる負荷が小さくなり、耐久性が向上する。しかし、切削翼の枚数が多いぶん、岩盤に付与する削孔圧力も小さくなり、削孔効率は低減する。
【0063】
このように、岩盤用ドリルヘッド1に外周面2aに等間隔で4枚の切削翼10を備えたことにより、スクリュードリルの削孔圧力を適度に切削対象である岩盤に付加して切削、削孔するとともに、各切削翼10にかかる削孔圧力による負荷も低減でき、削孔効率と耐久性を両立することができる。
【0064】
さらにまた、4枚の切削翼10を平面視十文字状を形成するように回転方向に等間隔で配置したことにより、切削によって割れた岩盤や礫が出現した場合であっても、切削翼10に引っかからず排出することができる。
【0065】
例えば、切削翼10及び切削ビット20の耐久性向上を図るべく、切削翼10の枚数を5枚や6枚に増やすと、隣り合う切削翼10の間隔が狭くなり、切削によって割れた岩盤や礫が出現した場合に切削翼10に引っ掛かって排出できない。
【0066】
逆に、切削によって割れた岩盤や礫の切削翼10への引っ掛かりを防止すべく、切削翼10の枚数を3枚や2枚に低減すると、一枚あたりの切削翼10が分担する削孔圧力が増加し、切削する岩盤に付与される圧力が高まり、大きな塊状で割れて切削翼10に引っ掛かる。
【0067】
このように、4枚の切削翼10を平面視十文字状を形成するように回転方向に等間隔で配置したことにより、割れた岩盤を塊形状が大きくなりすぎず、切削によって割れた岩盤や礫が出現した場合であっても、切削翼10に引っかからず排出することができ、効率のよい削孔を実現することができる。
【0068】
また、切削翼10の切削面11を、外方向ほど徐々に上昇する傾斜面で構成しているため、当該傾斜面で構成する切削面11に配置した切削ビット20にかかる負荷を均一化し、切削ビット20の耐久性を向上することができる。
【0069】
詳しくは、通常、径方向に適宜の間隔を隔てて配置した切削ビット20は、回転中心2cからの距離Lが遠いほど回転移動距離が長くなり、切削負荷が高くなって耐久性が低い。
【0070】
そこで、スクリュードリルから付与され、切削対象である岩盤に切削圧力を付加する切削ビット20を、外方向ほど徐々に上昇する傾斜面で構成した切削面11に配置したことにより、径方向に配置された切削ビット20において、回転中心2cからの距離Lに応じて切削ビット20にかかる切削圧力を低減している。
【0071】
したがって、径外側に比べて回転移動距離が少なく、移動距離による切削負荷の少ない中心側の切削ビット20が切削圧力を多く負担し、回転移動距離が多く、移動距離による切削負荷の大きい径外側の切削ビット20が負担する切削圧力を低減することで、径方向に配置した切削ビット20の負担を均一化することができる。よって、各切削翼10において径方向に適宜の間隔を隔てて配置した切削ビット20の全体の耐久性を向上することができる。
【0072】
また、前記切削翼10における切削面11に配置した切削ビット20を、平面視十字状に配置された4枚の切削翼10のうち隣り合う切削翼10における前記切削ビット20に対して、径方向位置をずらして配置しているため、切削対象である岩盤に対して切削圧力を適度に付加できるように、所定の間隔pを隔てて配置しながら、削孔断面に対する切削面積の割合を向上させ、削孔効率を向上している。
【0073】
詳しくは、各切削翼10の切削面11において切削ビット20を径方向の位置を近づけて配置すると、各切削ビット20が岩盤に付与する切削圧力が低下し、切削効率が低下する。
【0074】
これに対し、切削ビット20の径方向の位置を所定の間隔で隔てて配置することで、各切削ビット20が岩盤に付与する切削圧力が増加する。しかし、所定の間隔で隔てて切削ビット20を配置したことで、削孔断面に対する切削面積の割合が減少し、削孔効率を向上することができない。
【0075】
そこで、4枚の切削翼10のうち隣り合う切削翼10における前記切削ビット20に対して、径方向位置をずらして配置することによって、各切削ビット20が岩盤に付与する切削圧力を向上するとともに、図3(e)に示すように、削孔断面のほぼ全断面を切削領域100としているため、削孔効率を向上することができる。
【0076】
また、切削翼10を、高さ方向長さHより径方向長さWが長く、高さ方向長さHに対する径方向長さWの比を示す縦横比W/Hを1.2以上で構成しているため、切削土をより円滑に排土することができる。
【0077】
詳しくは、切削翼10の回転により、切削土が切削翼10を越えて上方移動してスクリュードリルで搬送されて、地上に排出される。このとき、高さ方向長さHが径方向長さWより長い切削翼10の場合、切削土が切削翼10を越えて上方移動できないため、スクリュードリルで排出されない。このように、切削速度より排土速度が遅く、切削速度と排土速度とのバランスが悪い場合、切削土が切削箇所にたまって閉塞気味な状態となり、削孔効率が悪くなる。
【0078】
これに対し、前記切削翼10を高さ方向長さHが径方向長さWより短い低背切削翼で構成したことにより、切削土が切削翼10を越えて上方移動してスクリュードリルで排出されるため、切削土が切削箇所にたまることなく、切削速度と排土速度とのバランスを保つことができ削孔効率が向上する。したがって、効率のよい削孔を実現することができる。
【0079】
次に、前記効果を確認すべく切削翼10の装着枚数についての効果確認試験を行った結果について説明する。
効果確認試験では、下記表1に示すように、岩盤用ドリルヘッド1における切削翼10の枚数をパラメータとして、同条件で削孔した際の結果を比較した。
【0080】
なお、切削翼10の枚数は、2枚、3枚、4枚、5枚及び6枚の切削翼10を備えた岩盤用ドリルヘッド1についての削孔状況により判断するが、それぞれは回転方向に均等に配置されている。
【0081】
【表1】

このような効果確認試験の結果、前記表1に示すように、切削速度(つまり、切削効率)と、大きな塊の排出と、切削翼10や切削面11の耐久性を判断した結果、切削翼10の装着枚数を4枚に設定することで、切削速度と、大きな塊の排出と、切削翼10や切削面11の耐久性のバランスがよく、円滑に切削できることが確認できた。
【0082】
続いて、切削翼10の縦横比W/Hについての効果確認試験を行った結果について説明する。
効果確認試験は、下記表2に示すように、岩盤用ドリルヘッド1における切削翼10の縦横比W/Hをパラメータとして、同条件で削孔した際の結果を比較した。
なお、切削翼10の縦横比W/Hは、0.8、1.0、1.2及び1.4の4種類の切削翼10についての削孔状況により判断した。
【0083】
【表2】

このような効果確認試験の結果、前記表2に示すように、高さ方向長さHが径方向長さWより長い(縦横比W/H=0.8)、切削ビット20による切削量に対して切削土の排出が少なく、岩盤用ドリルヘッド1部分における排出不足により閉塞状態になりやすい。高さ方向長さHと径方向長さWとが同じ場合、切削ビット20による切削量と切削土の排出量とが同程度となる。したがって、粘性が高い等のその他の要因が絡むと岩盤用ドリルヘッド1部分での排出不足による閉塞状態になりやすい。
【0084】
これに対して、径方向長さWが高さ方向長さHより長い(縦横比W/H=1.2以上)になると、切削ビット20による切削量に対して切削土の排出量が多くなるため、排出量不足に基づく岩盤用ドリルヘッド1部分での閉塞状態にならず、円滑に切削・削孔できることが確認できた。
【0085】
図4は、他の例に係る岩盤用ドリルヘッド1を示す斜視図であり、この図に示すように、岩盤用ドリルヘッド1は、ヘッドシャフト2の外周に、中心が前記回転中心2cと一致する円筒状をなす推進ガイド部材30が設けられた構成である。推進ガイド部材30は、前記切削翼10の外側面12の高さと同じ高さに形成され短円筒状、もしくはリング状で、切削翼10の外周位置である外側面12において切削翼10と一体に設けられている。
【0086】
そして、推進ガイド部材30の先端の下端面31には、複数の切削ビット32が間隔をあけて備えられている。
【0087】
なお、推進ガイド部材30の高さは、前記外側面12の高さよりも高くても低くても良い。このとき、推進ガイド部材30の下端面31を切削翼10よりも突出させることもできる。
【0088】
このような推進ガイド部材30が設けられた岩盤用ドリルヘッドでは、推進ガイド部材30の中心がヘッドシャフト2の回転中心2cと一致するとともに、切削方向に沿って所定の高さを有する形態であるので、前記のように切削方向が偏心したりすることがないのと相俟って、切削時に岩盤用ドリルヘッドがぶれることはなく、より一層安定した切削作業を可能にすることができる。また、切削が安定して行えるので、スクリュードリルとの接続部分などに余分な負荷をかけずにすむという利点も得られる。
【0089】
また、推進ガイド部材30が4枚の切削翼10と一体であるので、切削翼10の固定強度を高めることもできる。
【0090】
なお、推進ガイド部材30は、切削翼10と別に設けることも可能である。
【0091】
以上、本発明の構成と、前記の一実施形態の構成との対応において、切削翼は、切削翼10,正面切削翼10a,右切削翼10b,背面切削翼10c,左切削翼10dに対応し、以下同様に、
切削ビットは、切削ビット20,正面切削ビット21,右切削ビット22,背面切削ビット23,左切削ビット24に対応するも、前記構成に限定するものではない。
【0092】
例えば、岩盤用ドリルヘッド1で切削する対象を岩盤としたが、火成岩、堆積岩、変成岩で構成される地層や、巨礫を含む砂礫層をであってもよい。
また、平面視十字状に配置した4枚の切削翼10を備えた岩盤用ドリルヘッド1について説明したが、略ホームベース状の2枚の切削翼を直交させて組み合わせて構成してもよい。
【0093】
さらにまた、切削翼10の高さ方向長さHを、回転中心2cから上面13までの高さとしたが、外側面12の長さや、上面13から切削翼10における外周面2a位置の下部分までの高さとしてもよく、径方向長さWを回転中心2cから外側面12までの長さとしてもよい。
また、切削翼10の切削面11を、例えば、上下方に向かって突出する湾曲面で形成してもよい。
【0094】
さらに、推進ガイド部材30の下端面31は前記例のように面一ではなく、たとえば波型に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…岩盤用ドリルヘッド
2…ヘッドシャフト
2a…外周面
2c…回転中心
10…切削翼
10a…正面切削翼
10b…右切削翼
10c…背面切削翼
10d…左切削翼
11…切削面
20…切削ビット
21…正面切削ビット
22…右切削ビット
23…背面切削ビット
24…左切削ビット
30…推進ガイド部材
p…間隔
H…高さ方向長さ
W…径方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して岩盤に削孔するスクリュードリルの先端に装着する岩盤用ドリルヘッドであって、
軸心が回転中心となるヘッドシャフトと、
該ヘッドシャフトの外周面に配置され、前記回転中心から外方向に放射状にのびて先端の切削面に複数の切削ビットを備えた4枚の切削翼を有し、
これら切削翼が、平面視十字状をなすように等間隔に配置されるとともに、
切削翼の高さ方向長さが径方向長さより短い低背切削翼で構成された
岩盤用ドリルヘッド。
【請求項2】
前記切削翼の先端の切削面を、外方向ほど徐々に上昇する傾斜面で構成した
請求項1に記載の岩盤用ドリルヘッド。
【請求項3】
前記切削翼における切削面に配置した切削ビットを、平面視十字状に配置された4枚の切削翼のうち隣り合う切削翼における前記切削ビットに対して、径方向位置をずらして配置した
請求項1又は請求項2に記載の岩盤用ドリルヘッド。
【請求項4】
前記4枚の切削翼の切削ビットが、それぞれ軌道を異にする位置に備えられた
請求項1又は請求項2に記載の岩盤用ドリルヘッド。
【請求項5】
前記切削翼における前記高さ方向長さに対する前記径方向長さの比を示す縦横比を1.2以上で構成した
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の岩盤用ドリルヘッド。
【請求項6】
前記ヘッドシャフトの外周に、中心が前記回転中心と一致する円筒状をなす推進ガイド部材が設けられた
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の岩盤用ドリルヘッド。
【請求項7】
前記推進ガイド部材が、前記切削翼の外周位置に切削翼と一体に設けられた
請求項6に記載の岩盤用ドリルヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−21466(P2011−21466A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85991(P2010−85991)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(309012306)
【Fターム(参考)】