説明

嵌合蓋付き容器

【課題】容器本体に対する蓋の着脱が容易であるとともに、容器本体と蓋の隙間から液体が漏れるのを十分に防止できる嵌合蓋付き容器を提供すること。
【解決手段】本発明に係る嵌合蓋付き容器10は、開口部11aの周囲に設けられたフランジ12を有する容器本体11と、容器本体11に対して着脱自在でありフランジ12と嵌合する蓋15とを備える。フランジ12は開口部11aの全周にわたって開口部11aの外側に延びる上面12aを有するとともに、上面12aには開口部11aを囲むように溝12bが設けられている。フランジ12と蓋15が嵌合したとき、溝12bと蓋15の内面15aとによって開口部11aを囲む環状の空間S1が画成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、容器本体に対して着脱自在であり上記フランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー等の飲料を入れる容器には、容器本体に蓋を嵌合させるものが用いられてきた。図10に従来の嵌合蓋付き容器の一例を示す。同図に示す嵌合蓋付き容器90は、開口部91aの周囲に設けられたフランジ92を有する容器本体91と、容器本体91に対して着脱自在でありフランジ92と嵌合する蓋95とを備える。しかし、従来の容器にあっては、液体を収容した状態で傾けると、容器本体と嵌合蓋の隙間から液体が漏れるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、液漏れの防止を目的とした密封容器が開示されている。この文献に記載の容器は、開口部の周囲に嵌合凸条を周設した容器本体と、嵌合凸条に対応した嵌合凹条を周設した蓋とからなる。この容器は、いわゆる内外嵌合タイプであり、嵌合凸条の外壁外面において水平な線条溝を周設するとともに、嵌合凹条の外壁内面において内向きに水平な線条突起を周設し、容器本体に蓋を嵌着したときには線条溝内に線条突起が嵌入するよう形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の容器は、主に惣菜を収容することを想定して開発されたものであり、コーヒー等の液体を収容するには液漏れ防止性能が不十分である。例えば、購入した飲料のテイクアウト用に、これと同様の嵌合構造を有する容器を使用した場合、容器を袋などに入れて持ち運んでいる段階で飲料が漏れ出てしまうおそれがある。また、この容器は、液漏れを嵌合凸条の内側と外側の両方で防止する内外嵌合タイプであるため、嵌合強度が高くなりやすく、蓋の脱着する際の作業性が悪くなるという問題点もある。嵌合強度が高い容器は、蓋を開けるときに強い力を要するため、この力によって蓋が破壊されないように蓋の肉厚を厚くする必要があるなどの設計上の制約も生じる。
【0006】
そこで、本発明は、容器本体に対する蓋の着脱が容易であるとともに、容器本体と蓋の隙間から液体が漏れるのを十分に防止できる嵌合蓋付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、容器本体に対して着脱自在でありフランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器であって、フランジは開口部の全周にわたって開口部の外側に延びる上面を有するとともに、この上面には開口部を囲むように溝が設けられており、フランジと蓋が嵌合したとき、上記溝と蓋の内面とによって開口部を囲む環状の空間が画成されることを特徴とする嵌合蓋付き容器を提供する。
【0008】
この嵌合蓋付き容器によれば、フランジの上面に溝を設けたことで、液体を入れた容器本体に蓋を嵌めた状態で傾けても、容器本体と蓋の隙間から液体が漏れるのを十分に防止できる。このような効果が得られる主因は必ずしも明らかではないが、容器を傾けた際、液体がフランジと蓋の間の環状の空間に入り込むことによって生じる毛細管現象が関係していると本発明者らは推察する。図9の(b)に示すように、環状の空間内に液体が入ると毛細管現象によって液体が液面よりも上方向に引っ張られる。
【0009】
本発明の嵌合蓋付き容器は、上述の通り、容器本体のフランジの上面と蓋の内面との間で液漏れを十分に防止できるため、嵌合強度が高くなりやすい内外嵌合タイプの構成を採用する必要がない。このため、本発明によれば、液漏れ防止効果及び蓋の着脱作業の容易性の両方を高水準に達成することができる。
【0010】
本発明の嵌合蓋付き容器は、フランジと蓋が嵌合したとき、フランジの上面と蓋の内面との間に開口部を囲む環状の空間が画成されることがポイントの一つである。従って、このような空間を画成できる構成であれば、フランジの上面に溝を設ける代わりに、以下の通り、蓋の内面に凹部を設けてもよい。
【0011】
本発明は、開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、容器本体に対して着脱自在でありフランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器であって、フランジは開口部の全周にわたって開口部の外側に延びる上面を有するとともに、蓋の内面には当該蓋の周縁部に沿って凹部が設けられており、フランジと蓋が嵌合したとき、上記上面と蓋の上記凹部とによって開口部を囲む環状の空間が画成されることを特徴とする嵌合蓋付き容器を提供する。
【0012】
更に、本発明は、フランジの上面に上記溝を設け且つ蓋の内面に上記凹部を設けた以下の構成であってもよい。
【0013】
本発明は、開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、容器本体に対して着脱自在でありフランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器であって、フランジは開口部の全周にわたって開口部の外側に延びる上面を有するとともに、この上面には開口部を囲むように溝が設けられ且つ蓋の内面には当該蓋の周縁部に沿って凹部が設けられており、フランジと蓋が嵌合したとき、フランジと蓋との間に開口部を囲む環状の空間が画成されることを特徴とする嵌合蓋付き容器を提供する。
【0014】
フランジと蓋が嵌合したとき、フランジの溝の位置と、蓋の凹部の位置とが一致するように、溝及び凹部をそれぞれ設ければ開口部を囲む環状の空間を一つ画成することができる。他方、フランジの溝の位置と、蓋の凹部の位置とがずれるように溝及び凹部をそれぞれ設け、両者が重ならないようにすれば開口部を囲む独立した環状の空間を複数画成することができる。独立した環状の空間が複数画成される容器は、液漏れをより一層高度に防止できる。
【0015】
本発明において、蓋は、フランジと蓋が嵌合したときに当該蓋の内面がフランジの上面と当接するとともに容器本体の開口部近傍の内壁と当接するように、段差が設けられていることが好ましい。蓋の内面と容器本体の開口部近傍の内壁とを当接させることで、液漏れをより一層高度に防止できる。
【0016】
フランジの上面の溝は、幅が0.1〜3mmであり且つ深さが0.1〜3mmであることが好ましい。蓋の内面の凹部は、幅が0.1〜3mmであり且つ深さが0.1〜3mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容器本体に対する蓋の着脱が容易であるとともに、容器本体と蓋の隙間から液体が漏れるのを十分に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係る嵌合蓋付き容器の第一実施形態を示す正面図である。
【図2】図2の(a)は、図1に示す嵌合蓋付き容器の端面図であり、図2の(b)は、図2の(a)の部分拡大図である。
【図3】図3の(a)は、本発明に係る嵌合蓋付き容器の第二実施形態を示す端面図であり、図3の(b)は、図3の(a)の部分拡大図である。
【図4】図4の(a)は、本発明に係る嵌合蓋付き容器の第三実施形態を示す端面図であり、図4の(b)は、図4の(a)の部分拡大図である。
【図5】図5の(a)は、本発明に係る嵌合蓋付き容器の第四実施形態を示す端面図であり、図5の(b)は、図5の(a)の部分拡大図である。
【図6】図6の(a)は、本発明に係る嵌合蓋付き容器の第五実施形態を示す端面図であり、図6の(b)は、図6の(a)の部分拡大図である。
【図7】図7の(a)及び(b)は、本発明の嵌合蓋付き容器に適用可能な嵌合構造の他の例をそれぞれ示す部分端面図である。
【図8】図8の(a)及び(b)は、本発明の嵌合蓋付き容器に適用可能な容器本体の他の例をそれぞれ示す端面図である。
【図9】図9の(a)は、図1に示す嵌合蓋付き容器の評価試験の様子を示す斜視図であり、図9の(b)は、図9の(a)の部分拡大図である。
【図10】図10の(a)は、従来の嵌合蓋付き容器の一例を示す端面図であり、図10の(b)は、図10の(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
図1,2を参照しながら、第一実施形態に係る嵌合蓋付き容器について説明する。図1に示す嵌合蓋付き容器(以下、単に「容器」という。)10は、開口部11aを有する容器本体11と、容器本体11に対して着脱自在の蓋15とを備える。容器本体11及び蓋15をなす材料としては、プラスチック、紙、発泡スチロールなどが挙げられる。これらの材料のうち、加工性や機械的強度、デザイン性等の観点から透明なプラスチック材料(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET))が好ましい。容器本体11の材料と蓋15の材料は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0020】
図2の(a)は、図1のII−II線における断面図である。図2の(a)に示す通り、容器本体11は、有底容器からなり、底部11bから上方の開口部11aに向けて径が拡大する胴部11cを有する。開口部11aの周囲には、開口部11aから略水平方向に延在するフランジ12が形成されている。フランジ12は蓋15の内面15aと当接する上面12aを有する。この上面12aは、容器本体11の上端をなしており、開口部11aの全周にわたって開口部11aから外側に延びている。なお、容器本体11の胴部11cは、上記の形状に限定されるものではない。
【0021】
フランジ12の上面12aには開口部11aを囲むように、開口部11aと同心円状の溝12bが設けられている。図2の(b)に拡大して示す通り、フランジ12と蓋15が嵌合したとき、溝12bと蓋15の内面15aとによって開口部11aを囲む環状の空間S1が画成される。より具体的には、環状の空間S1は、開口部11aの周りを一周するように連続的に画成される。なお、図2の(b)には、断面形状が円弧状の溝12bを図示したが、溝の断面形状はこれに限定されず、方形状や三角形状であってもよい。
【0022】
溝12bの上面12aにおける幅は、好ましくは0.1mm〜3mmであり、より好ましくは0.2mm〜2.5mmであり、更に好ましくは0.5mm〜2mmである。溝12bの幅が0.1mm未満であると液漏れ防止効果が不十分となりやすく、他方、3mm超とするにはこれに対応するサイズのフランジ12を要し、デザイン性が不十分となりやすい。
【0023】
溝12bの深さは、好ましくは0.1mm〜3mmであり、より好ましくは0.1mm〜1mmであり、更に好ましくは0.2mm〜0.5mmである。溝12bの深さが0.1mm未満であると液漏れ防止効果が不十分となりやすく、他方、3mm超とするにはこれに対応するサイズのフランジ12を要し、デザイン性が不十分となりやすい。
【0024】
フランジ12の上面12aと蓋15の内面15aは、溝12bの部分を除き、なるべく離間せずに当接していることが好ましい。容器10内に収容する液体の粘度等にもよるが、両者の離間距離は、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下である。
【0025】
蓋15は、容器本体11の開口部11aを覆う蓋本体部15bと、蓋本体部15bの周縁に設けられておりフランジ12が嵌め込まれる爪部15cとを有する。蓋15の内面15aの周縁部は、フランジ12の上面12aと当接する部分である。なお、容器10が冷えた飲料を収容するためのものである場合にあっては、蓋本体部15bの中央部にストローをさすための切込みを設けることが好ましい(図9参照)。
【0026】
蓋15の爪部15cは、蓋本体部15bの周縁部からその全周にわたって容器本体11の方向に延在している。爪部15cは、先端の内径がフランジ12の外径よりもやや大きくなっており、蓋15をフランジ12に装着しやすいようになっている。爪部15cの内面には、隆起部15dが周方向において一定の間隔で設けられている。容器本体11上に蓋15を載置して蓋15を下方に押すことで、蓋15の内面15aと隆起部15dとの間にフランジ12を嵌め込むことができる。
【0027】
本実施形態に係る容器10によれば、フランジ12の上面12aに溝12bを設けたことで、液体を入れた状態で容器10を傾けても、容器本体11と蓋15の隙間から液体が漏れるのを十分に防止できる。
【0028】
また、容器10は、フランジ12の上面12aと蓋15の内面15aとの間で液漏れを十分に防止するものであり、嵌合強度が高くなりやすい内外嵌合タイプの構成を採用していない。このため、容器10によれば、蓋15の着脱作業の容易性を高水準に達成することができる。
【0029】
更に、容器10の材料としてプラスチック材料を使用し、例えば、圧空成形によって容器10を製造する場合、容器本体11にアンダーカットとなる部分がないため、成型の抜けが悪くなるといった問題が生じることもない。
【0030】
(第二実施形態)
図3に示す容器20は、開口部21a及びその周囲に設けられたフランジ22を有する容器本体21と、容器本体21に対して着脱自在の蓋25とを備える。容器20は、フランジの上面に溝を設ける代わりに蓋25の内面25aに凹部25bを設けた点において、第一実施形態に係る容器10と相違する。以下、この相違点について主に説明する。
【0031】
図3の(a)に示す通り、開口部21aの周囲には、開口部21aから略水平方向に延在するフランジ22が形成されている。フランジ22は蓋25の内面25aと当接する上面22aを有する。この上面22aは、容器本体21の上端をなしており、開口部21aの全周にわたって開口部21aから外側に延びている。
【0032】
蓋25は、容器本体21の開口部21aを覆う蓋本体部25cと、蓋本体部25cの周縁に設けられておりフランジ22が嵌め込まれる爪部25dとを有する。蓋25の内面25aの周縁部は、フランジ22の上面22aと当接する部分である。
【0033】
蓋25の内面25aには、周縁部に沿って凹部25bが設けられている。図3の(b)に拡大して示す通り、フランジ22と蓋25が嵌合したとき、フランジ22の上面22aと凹部25bとによって開口部21aを囲む環状の空間S2が画成される。より具体的には、環状の空間S2は、開口部21aの周りを一周するように連続的に画成される。なお、図3の(b)には、断面形状が円弧状の凹部25bを図示したが、凹部の断面形状はこれに限定されず、方形状や三角形状であってもよい。
【0034】
凹部25bの内面25aにおける幅は、好ましくは0.1mm〜3mmであり、より好ましくは0.2mm〜2.5mmであり、更に好ましくは0.5mm〜2mmである。凹部25bの幅を0.1mm未満とした場合には液漏れ防止効果が不十分となりやすく、他方、3mm超とするにはこれに対応するサイズのフランジ22を要し、デザイン性が不十分となりやすい。
【0035】
凹部25bの深さは、好ましくは0.1mm〜3mmであり、より好ましくは0.1mm〜1mmであり、更に好ましくは0.2mm〜0.5mmである。凹部25bの深さを0.1mm未満とした場合には液漏れ防止効果が不十分となりやすく、他方、3mm超とするにはこれに対応するサイズのフランジ22を要し、デザイン性が不十分となりやすい。
【0036】
本実施形態に係る容器20によれば、蓋25の内面25aに凹部25bを設けたことで、液体を入れた状態で容器20を傾けても、容器本体21と蓋25の隙間から液体が漏れるのを十分に防止できる。また、第一実施形態に係る容器10と同様、容器20は、嵌合強度が高くなりやすい内外嵌合タイプの構成を採用していない。このため、容器20によれば、蓋25の着脱作業の容易性を高水準に達成することができる。更に、本実施形態においては、容器本体21の形状が従来通りにできるため、容器本体21について成型の抜けが悪くなるという問題が生じることもない。
【0037】
(第三実施形態)
図4に示す容器30は、開口部11a及びその周囲に設けられたフランジ12を有する容器本体11と、容器本体11に対して着脱自在の蓋35とを備える。フランジ12と蓋35が嵌合したとき、フランジ12の上面12aの溝12bと蓋35の内面35aとによって開口部11aを囲む環状の空間S3が画成される。容器30は、蓋15の代わりに以下の構成の蓋35を備える点において、第一実施形態に係る容器10と相違する。
【0038】
すなわち、本実施形態における蓋35は段差36を有しており、フランジ12と蓋35が嵌合したときに蓋35の内面35aがフランジ12の上面12aと当接するとともに容器本体11の開口部11a近傍の内壁11dと当接する(図4の(b)参照)。段差36によって段落ちした部分を容器本体11の内壁11dと当接させることにより、蓋35が内容液から受ける圧力が内壁11dと蓋35とを密着させる方向に掛かるため、液漏れをより一層高度に防止できる。なお、第二実施形態と同様、フランジの上面に溝を設ける代わりに蓋の内面に凹部を設けてもよい。
【0039】
(第四実施形態)
図5に示す容器40は、開口部41a及びその周囲に設けられたフランジ42を有する容器本体41と、容器本体41に対して着脱自在の蓋15とを備える。フランジ42と蓋15が嵌合したとき、フランジ42の上面42aの溝42bと蓋15の内面15aとによって開口部41aを囲む環状の空間S4が画成される。容器40は、先端が丸まっているフランジ42を備える点において、第一実施形態に係る容器10と相違する。フランジ42の先端をカールさせることで、容器本体41は使用者が直接この部分に口をつけて飲料等を飲むのに適したものとなる。なお、第二実施形態と同様、フランジの上面に溝を設ける代わりに蓋の内面に凹部を設けてもよい。
【0040】
(第五実施形態)
図6に示す容器50は、開口部11a及びその周囲に設けられたフランジ12を有する容器本体11と、容器本体11に対して着脱自在の蓋55とを備える。フランジ12と蓋55が嵌合したとき、フランジ12の上面12aの溝12bと蓋55の内面55aとによって開口部11aを囲む環状の空間S5が画成される。容器50は、図6の(a)に示すように、蓋55の蓋本体部55bが上方に隆起したドーム形状である点において、第一実施形態に係る容器10と相違する。
【0041】
図6の(b)に示すように、フランジ12の溝12bが形成されている部分と蓋55の内面55aとが少なくとも当接していれば、液漏れ防止効果を高水準に達成することができる。従って、本発明において、フランジの上面と蓋の内面とがフランジの径方向の全体にわたって当接していなくてもよい。なお、第二実施形態と同様、フランジの上面に溝を設ける代わりに蓋の内面に凹部を設けてもよい。
【0042】
図7の(a)及び(b)は、本発明の嵌合蓋付き容器に適用可能な嵌合構造の他の例をそれぞれ示す部分端面図である。これらの図に示す嵌合構造においては、フランジ62の上面62aに溝62bが設けられており且つ蓋65の内面65aに凹部65bが設けられている。
【0043】
フランジ62と蓋65が嵌合したとき、フランジ62の溝62bの位置と、蓋65の凹部65bの位置とが一致するように、溝62b及び凹部65bをそれぞれ設ければ開口部61aを囲む環状の空間S6が画成される(図7の(a)参照)。他方、フランジ62の溝62bの位置と、蓋65の凹部65bの位置とがずれるように溝62b及び凹部65bをそれぞれ設け、両者が重ならないようにすれば開口部61aを囲む独立した2つの環状の空間S6a,S6bが画成される(図7の(b)参照)。2つの環状の空間が開口部の周りに画成される容器は、1つの空間が画成される容器と比較して液漏れをより一層高度に防止できる。なお、溝62bと凹部65bの容器の径方向(図7の(b)における左右方向)の位置関係は逆であってもよい。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、フランジの上面に複数の溝を同心円状に設けたり、蓋の内面に複数の凹部を同心円状に設けたりしてもよい。あるいは、これらの構成を組み合わせてもよい。また、溝及び凹部はフランジと同心円状でなくてもよく、フランジと比べて偏心した円でもよく、更には波状に蛇行していてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、フランジの上面が容器本体の上端をなしており、その位置に溝を有する容器本体を例示したが、図8に示すように、溝は容器本体の一番上の面以外の面に設けてもよい。図8の(a)に示す容器本体71は、フランジ72が開口部71aから略水平方向に延びた後に斜め下方に延びており、この斜め下方に延びた部分の上面72aに溝72bが設けられている。図8の(b)に示す容器本体81は、開口部81aの周囲であって容器本体81の上端よりも低い位置にフランジ82が形成されており、その上面82aに溝82bが設けられている。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
フランジと蓋の間の環状の空間が画成される嵌合蓋付き容器の液漏れ防止性能を確認するため、図1,2に示す容器10と同様の構成の容器(内容積375mL、PP製)を準備し、液漏れ試験を行った。容器内に270mLのコーヒー(常温)を入れ、図9の(a)に示すように、容器を約45°傾けた。この状態を24時間にわたって保持し、液漏れの有無を評価した。その結果、試験開始から24時間後でも液漏れは認められなかった。
【0047】
(実施例2)
図4に示す容器30と同様の構成の容器(内容積375mL、PP製)を準備し、この容器に対して実施例1と同様にして液漏れ試験を行った。その結果、試験開始から24時間後でも液漏れは認められなかった。
【0048】
(比較例1)
図10に示す従来の容器90と同様の構成の容器(内容積375mL、PP製)を準備し、この容器に対して実施例1と同様にして液漏れ試験を行った。その結果、試験開始から5分後には容器本体と嵌合蓋の隙間から液漏れが発生した。
【0049】
上記実施例1,2及び比較例1に係る容器は、蓋の着脱作業の容易性についても特に問題はなく、また着脱を5回繰り返しても蓋の爪部が破損することはなかった。
【符号の説明】
【0050】
10,20,30,40,50,90…嵌合蓋付き容器
11,21,41,71,81,91…容器本体
11a,21a,41a,61a,71a,81a,91a…開口部
11d…容器本体の内壁
12,22,42,62,72,82,92…フランジ
12a,22a,42a,62a,72a,82a…フランジの上面
12b,42b,62b,72b,82b…フランジの溝
15,25,35,55,65,95…蓋
15a,25a,35a,55a,65a…蓋の内面
25b,65b…蓋の内面の凹部
36…蓋の段差
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S6a,S6b…空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、前記容器本体に対して着脱自在であり前記フランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器であって、
前記フランジは前記開口部の全周にわたって前記開口部の外側に延びる上面を有するとともに、前記上面には前記開口部を囲むように溝が設けられており、
前記フランジと前記蓋が嵌合したとき、前記溝と前記蓋の内面とによって前記開口部を囲む環状の空間が画成されることを特徴とする嵌合蓋付き容器。
【請求項2】
開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、前記容器本体に対して着脱自在であり前記フランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器であって、
前記フランジは前記開口部の全周にわたって前記開口部の外側に延びる上面を有するとともに、前記蓋の内面には当該蓋の周縁部に沿って凹部が設けられており、
前記フランジと前記蓋が嵌合したとき、前記上面と前記蓋の前記凹部とによって前記開口部を囲む環状の空間が画成されることを特徴とする嵌合蓋付き容器。
【請求項3】
開口部の周囲に設けられたフランジを有する容器本体と、前記容器本体に対して着脱自在であり前記フランジと嵌合する蓋とを備えた嵌合蓋付き容器であって、
前記フランジは前記開口部の全周にわたって前記開口部の外側に延びる上面を有するとともに、前記上面には前記開口部を囲むように溝が設けられ且つ前記蓋の内面には当該蓋の周縁部に沿って凹部が設けられており、
前記フランジと前記蓋が嵌合したとき、前記フランジと前記蓋との間に前記開口部を囲む環状の空間が画成されることを特徴とする嵌合蓋付き容器。
【請求項4】
前記蓋は、前記フランジと前記蓋が嵌合したときに当該蓋の内面が前記フランジの前記上面と当接するとともに前記容器本体の開口部近傍の内壁と当接するように、段差が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の嵌合蓋付き容器。
【請求項5】
前記溝は、幅が0.1mm〜3mmであり且つ深さが0.1mm〜3mmであることを特徴とする請求項1又は3に記載の嵌合蓋付き容器。
【請求項6】
前記凹部は、幅が0.1mm〜3mmであり且つ深さが0.1mm〜3mmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の嵌合蓋付き容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−255896(P2011−255896A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129161(P2010−129161)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000116828)旭化成パックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】