説明

工作機械におけるワークの加工制御方法

【課題】 箱形状ワークの内部にある所要の加工箇所を、工具とワークの非加工部位との干渉を確実に回避しながら、効率的に加工する。
【解決手段】 NC装置によって制御軸駆動手段26を作動させて、回転テーブル9をB軸回りに回転させると共に、回転テーブル9と主軸ヘッド12とをX、Y、Z軸方向に相対移動させ、回転テーブル9上に固定された箱形状ワークMの内部の円弧状加工部を主軸ヘッド12の主軸13に装着した工具Tにより加工する際、箱形状ワークMの側面の開口部を通して工具Tの先端を円弧状加工部の加工開始点に位置させた後、回転テーブル9をB軸回りに回転させながら、回転テーブル9に対して主軸ヘッド12をX、Z軸方向に相対移動させて、工具Tの先端を、前記加工開始点から加工終了点まで前記円弧状加工部に沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形状ワークの内部に設けられた円弧状の被加工面や円弧状周縁を有する平面を、ワークと工具ホルダとの干渉を回避しながら的確に加工するための工作機械におけるワークの加工制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械において、切削加工に先立ち、ワーク形状計測器によりワークの形状を計測し、その形状の座標をワーク形状記憶器に記憶すると共に、工具形状と干渉を検知すべき機械部位の形状とを工具・機械形状記憶手段に記憶しておき、NCプログラムの移動指令に従って工具および干渉を検知すべき機械部位が移動した時に、ワーク形状と工具および前記機械部位とが干渉するか否かを干渉チェック器でチェックし、切削送りでワークと機械が干渉している場合には、アラームを発生させると共に機械を停止させて、ワークと機械との衝突を回避するようにした加工制御方法および装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−55407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記加工制御方法および装置においては、ワーク形状計測器がワークの外形の形状を計測するものであるので、ワークの外形を加工する場合には、ワークと工具および機械部位との干渉を検知して警報を発生したり、機械を停止させて、その干渉を避けることはできるが、前記ワーク形状計測器では箱形状ワークの内部にある加工箇所の形状までも計測することができないので、所要の加工箇所が箱形状ワークの内部にある場合には、ワークと工具または機械部位との干渉を回避しながら、適切に所要の加工箇所の加工を行うことができない上に、高価なワーク形状計測器を工作機械に付設しなければならない問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、箱形状ワークの内部にある所要の加工箇所を、工具とワークの非加工部位との干渉を確実に回避しながら、効率的に加工することができる工作機械におけるワークの加工制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の点を特徴としている。
すなわち、請求項1に係る工作機械におけるワークの加工制御方法は、架台上にB軸回りに旋回割出し可能に設けた回転テーブルと、支持部材に支持した主軸ヘッドとを備え、NC装置によって制御軸駆動手段を作動させて、前記回転テーブルをB軸回りに回転させると共に、前記回転テーブルと主軸ヘッドとをX、Y、Z軸方向に相対移動させ、前記回転テーブル上に固定されたワークを前記主軸ヘッドの主軸に装着した工具により加工する工作機械におけるワークの加工制御方法において、
前記ワークが上面が閉鎖され側面の一部に開口部が設けられ内部に円弧状加工部を有する箱形状ワークであって、該箱形状ワークに対して、前記開口部を通して工具の先端を前記円弧状加工部の加工開始点に位置させた後、前記回転テーブルをB軸回りに回転させながら、回転テーブルに対して主軸ヘッドをX、Z軸方向に相対移動させて、前記工具の先端を、前記加工開始点から加工終了点まで前記円弧状加工部に沿って移動させて前記ワークを加工することを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る工作機械におけるワークの加工制御方法は、請求項1に記載のワークの加工制御方法において、前記円弧状加工部の円弧の半径と、B軸を原点とする回転テーブル上の直角座標における前記円弧の中心の座標値と、前記円弧状加工部に沿って移動させる工具の先端の前記円弧の中心回りにおける移動角度と、工具の半径と、工具の均等動作係数とを設定値として、該設定値にもとづいて、前記回転テーブルのB軸回りの回転角に対する、前記加工開始点から加工終了点に至るまで前記円弧状加工部に沿って工具が移動する機械系の直角座標におけるX−Z座標値の関係を求め、この関係にもとづいて求めた前記回転角とX,Z座標値に従って前記NC装置が前記制御軸駆動手段を作動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る工作機械におけるワーク加工制御方法によれば、回転テーブルと主軸ヘッドとのX,Z軸方向における相対的移動により、箱形状ワークの側壁部の一部に設けられた開口部を通して工具を箱形状ワークの内部にある円弧状加工部に沿って移動させて該円弧状加工部を加工する際に、回転テーブルをB軸回りに回転させることによって、箱形状ワークの非加工部位を工具から逃げる方向へ移動させることができるので、前記工具と前記非加工部位との干渉を確実に回避しながら加工を進めることができて、箱形状ワークの内部にある円弧状加工部を安全に、かつ効率的に加工することができる。しかも、従来のように、ワークと工具の干渉をチェックするために、加工に先だってワークの形状を計測する必要がないので、高価なワーク形状計測器を工作機械に付設しなくて済む利点がある。
【0008】
また、請求項2に係る工作機械におけるワークの加工制御方法によれば、回転テーブルのB軸回りの回転角と、機械系の直角座標におけるX−Z座標値との関係にもとづいて工具を加工開始点から加工終了点に至るまで円弧状加工部に正確に沿って工具を移動させることができ、工具と箱形状ワークの非加工部位との干渉を一層確実に回避することができると共に、円弧状加工部の加工を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る工作機械におけるワークの加工制御装置について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る工作機械におけるワークの加工制御装置1を示す。 この工作機械におけるワーク加工制御装置1は、横型マシニングセンタ等の工作機械2を制御するNC装置の機能の一部として構成されている。
前記工作機械2は、ベッド3上に支持されてZ軸サーボモータ4によってZ軸方向(図1で左右方向)に移動されるサドル5と、該サドル5上に支持されてX軸サーボモータ6によってZ軸に直角なX軸方向(図1で紙面に垂直な方向)に移動されるテーブルベース(架台)7と、該テーブルベース7上に支持されて、B軸サーボモータ8によってテーブルベース7の上面に垂直なB軸回りに旋回、割出可能な回転テーブル9と、前記ベッド3上に固定されたコラム(支持部材)10と、該コラム10に支持されY軸サーボモータ11によってX、Z軸に直角なY軸方向(図1で上下方向)に移動される主軸ヘッド12と、該主軸ヘッド12に軸回りに回転自在に支持され、主軸サーボモータ(図示せず)によって先端に装着された工具Tを回転させる主軸13とを備えている。前記回転テーブル9上にはワークMが直接または治具等を介して取り付けられるようになっている。
【0010】
前記ワーク加工制御装置1はマイクロプロセッサ14を備えており、このマイクロプロセッサ14にバス15を介してROM16、RAM17、不揮発性メモリ18、入力装置19、表示装置20がそれぞれ接続されている。さらに、前記マイクロプロセッサ14には、I/Oインタフェイス21を介して前記X軸、Y軸、Z軸、B軸サーボモータ6,11,4,8の回転を制御するX軸位置制御回路22、Y軸位置制御回路23、Z軸位置制御回路24、B軸位置制御回路25(制御軸位置制御回路)がそれぞれ接続されており、該X軸、Y軸、Z軸、B軸位置制御回路22,23,24,25が、前記各軸サーボモータ6,11,4,8に設けたエンコーダ等の位置検出器によって検出された移動位置信号にもとづいて、各軸サーボモータ6,11,4,8をフィードバック制御するようになっている。
前記各軸サーボモータ6,11,4,8と前記X軸,Y軸,Z軸,B軸位置制御回路22,23,24,25とによって、前記テーブルベース7(回転テーブル9)と主軸ヘッド12とを相対的にX,Y,Z軸方向x,y,zに移動させ、前記回転テーブル9をB軸回りに回転させる制御軸駆動手段26を構成している。
【0011】
前記ROM16には、工作機械2やその他を動作させるシステムプログラムが格納されており、このシステムプログラムに従って前記マイクロプロセッサ14が工作機械2やワーク加工制御装置1の全体の動作を制御するようになっている。また、RAM17は、前記マイクロプロセッサ14の作業領域として各種のデータの一時記憶等の処理に使用される。不揮発メモリ18には、前記回転テーブル9上に固定した箱形状ワークMを加工するための加工プログラムやその加工に必要な各種データ等が記憶されており、前記マイクロプロセッサ14は、さらに前記加工プログラムに従って各種のデータを用いて前記ワークMの加工に必要な工具Tの移動経路等を演算して求め、前記制御軸駆動手段26の動作を制御するようになっている。
【0012】
前記ワークMは、例えば、図2に示すように、底部27aと上部(上面)27bが閉鎖されており、側壁部(側面)27cの少なくとも1部が(図2では四角形箱部Maの左下角部に相当する部位が直角に切り欠かれて)開口された開口部27dを有する箱形状ワークとして形成されており、底部27aに設けたフランジ27eを介して前記回転テーブル9の上面9aに固定されるようになっている。
なお、前記上部27bが閉鎖されているとは、完全に閉鎖されている場合のほか、工具Tを移動させて加工を行う余地の無い程度に小さな開口部を有する場合も含むものであり、また、前記側壁部においても開口部27d以外の部分が同様に閉鎖されている。
前記ワークMの内部には、前記開口部27dに近接して、開口部27dの内角部27fに中心Cを有する平面視で半円弧状とされ、底部27aに対して垂直に形成された円弧壁27gが設けられ、該円弧壁27gに前記中心Cに軸心を有する略1/4の円弧面である第1加工部(円弧状加工部)28が設けられると共に、前記底部27aに外周輪郭部が前記中心Cに中心を有する円弧とされた半円形平面である第2加工部(円弧状加工部)29が設けられている。
【0013】
次に、前記工作機械におけるワーク加工制御装置1によって前記回転テーブル9上に固定した前記ワークMの加工制御方法について説明する。
前記ワークMは、図2(a)に示すように、前記開口部27dを工作機械2の主軸13側に向けた状態において、主軸13と回転テーブル9とをX,Z軸方向x,zに相対的に移動させて、主軸13に装着したエンドミル等の回転工具である工具Tによって前記円弧状の第1,第2加工部28,29を加工しようとすると、工具ホルダTaが前記開口部27dの主軸13側の外縁部に干渉してしまい、前記第1,第2加工部28,29の全面を加工することができない。そこで、主軸13と回転テーブル9とのX,Z軸方向x,zにおける相対的移動(以下、単に「工具TのX,Z軸移動」と称する)で工具ホルダTaがワークMに干渉する手前までを加工した後に、一旦工具Tを逃がして、図2(b)に示すように、回転テーブル9をB軸回りに所定角度だけ回転させ、再び、工具TのX,Z軸移動で加工をすることもできるが、この場合には、最初の加工と後の加工との接続部に段差が生じて加工面の精度が悪くなるおそれがある。
【0014】
そのため、本発明では、図3に示すように、前記回転テーブル9をB軸回りに回転させながら、工具TのX,Z軸移動により、前記箱形状のワークMの内部にある円弧状の第1、第2加工部28,29を、工具Tを前記開口部27dを通して工具ホルダTaがワークMの壁部に干渉することなく加工するようにしたものである。この場合、前記第1、第2加工部28,29の円弧に沿って工具Tを加工開始点E1から加工終了点E2まで移動させるために、前記回転テーブル9のB軸回りの回転に伴う第1、第2加工部28,29の円弧の位置変化に追従させて工具TをX,Z軸方向x,zに移動させる。この工具TのX,Z軸移動による移動軌跡は、前記工具Tとしてエンドミルを使用するならば、その先端(ボールエンドミルを使用するならば、その底刃の円弧の中心Tc(図4参照))が、加工開始点E1から加工終了点E2に向けてX,Z軸方向に徐々に位置を変化させて移動曲線Lを辿るものとなる。
【0015】
そこで、図4に示すように、前記回転テーブル9のB軸の中心Bを原点とする機械系(テーブルベース7)の直角座標軸をZ−X座標軸とし、B軸の中心Bを原点とする回転テーブル9(ワークM)上の直角座標軸をW−U座標軸として、前記回転テーブル9がB軸回りに回転(回転角β)したとき、この回転で位置変化するワークMの第1,第2加工部28,29の円弧に対して、加工開始点E1から加工終了点E2に向けて加工の進行方向へ追従する工具Tの先端のZ−X座標値(Z座標値Pz、X座標値Px)を求めることにより、前記移動曲線Lに沿った工具Tの移動を可能とする。
【0016】
前記回転テーブル9の回転角βに対する工具Tの先端のZ−X座標値(Z座標値Pz、X座標値Px)は、以下の演算式(1)〜(5)によって求めることができる。
すなわち、図4に示すように、前記第1,第2加工部28,29の円弧の中心CのW軸,U軸座標値をそれぞれCw,Cu、第1,第2加工部28,29の円弧の半径をRw、工具Tにおける底刃の円弧の中心パスの半径(ボールエンドミルの場合)をRt(=Rw−Rn)、前記第1,第2加工部28,29円弧に沿って移動させる工具Tの先端の前記円弧の中心C回りにおける移動角度(W軸のプラス端を原点位置とし、αs(=270°)が加工開始位置(スタート位置)、αeが加工終了位置(エンド位置))をα、Z−X軸座標に対するW−U座標の回転角(機械のB軸と符号が逆、βsがスタート位置、βeがエンド位置)をβ、工具Tにおける底刃の円弧の中心のW軸,U軸座標値をそれぞれPw,Pu、工具Tの均等動作係数(工具Tに対し第1,第2加工部28,29の円弧に沿って均等な切削送りを与えるための係数)をK(K=βe−βs)/(αe−αs))と設定すると、
β=(α−αs)×K+βs ・・・(1)
Pw=Rt×cosα+Cw ・・・(2)
Pu=Rt×sinα+Cu ・・・(3)
Pz=Pw×cosβ−Pu×sinβ ・・・(4)
Px=Pw×sinβ+Pu×cosβ ・・・(5)
となる。
また、工具Tの加工戻りZ座標値Pzrと設定すると、
Pzr=−Pw×tanβ+(Cw+Ew)/cosβ ・・・(6)
となる。
【0017】
さらに、前記ワーク加工制御装置1の作用と共にワークMの加工制御方法について図5、図6にもとづいて具体的に説明する。なお、前記第1加工部28は工具Tとしてエンドミルを使用してその底刃で加工し、前記第2加工部29は工具Tとしてエンドミルを使用してその外周刃で加工するものとする。
工作機械2が作動を開始されると、NC装置によって加工プログラムが実行されて、予め入力装置19を介して前記不揮発メモリ18に記憶されていた工具TおよびワークMの第1、第2加工部28,29に係る前記データEw,Rw,Cu,Cw,αs,αe,βs,βe,Rn,BL(微小ブロック長)を前記マイクロプロセッサ14が読み込む(ステップS1)と共に、加工プログラムで指令されている工具Tの送り速度Fを読み込み(ステップS2)、マイクロプロセッサ14が処理に必要な各種変数の初期化を行い、かつワークMの加工開始に際して必要な初期設定値の計算を行う(ステップS3)。そして、計算された初期設定値に不都合なものが無いか否かをデータチェックを行い(ステップS4)、異常があれば表示装置20にアラーム表示をさせて(ステップS5)、工作機械2の動作を終了させる。前記ステップS4でデータチェックの結果が正常であれば、第1、第2加工部28,29の微小ブロック加工に対応するB軸の回転角β、XZ長さ、加工開始から加工終了までの加工回数の総数を計算する(ステップS6)。
【0018】
次に、マイクロプロセッサ14は工具Tの加工開始点E1(図3参照)を設定し(ステップS7)、インタフェイス21を介して前記制御軸駆動手段26に指令して、前記サドル5、テーブルベース7、回転テーブル9、主軸ヘッド12を移動させて、工具Tを加工開始位置に着け(ステップS8)、また、前記テーブルベース7に設けられている回転テーブル9のクランプ装置に指令して、該回転テーブル9のテーブルベース7に対する位置決め固定状態を解除(アンクランプ)させる(ステップS9)。そして、前記マイクロプロセッサ14は加工回数の現カウンタ値が前記ステップS6で求めた加工回数の総数に達しているか否かをチェックし(ステップS10)、前記現カウンタ値が加工回数の総数以上に達している場合には、前記クランプ装置に指令して回転テーブル9のテーブルベース7への位置決め固定(クランプ)を行わせて(ステップS11)、工作機械2の動作を終了させる。
【0019】
前記ステップS10で現カウンタ値が加工回数の総数に達していない場合には、次の微小ブロック加工に工具Tを移動させるために、前記演算式(1)〜(5)にもとづいて工具Tの先端のX,Z軸座標値Px,Pzと回転テーブル9の回転角βを計算した(ステップS12)後に、それらの計算値Px,Pz、βが微小ブロック加工に適合する移動量であるか否かをチェックし(ステップS13)、該移動量が適切でない(異常の)場合には表示装置20にアラーム表示をさせて(ステップS14)、工作機械2を現在位置を保持した状態として(ステップS15)、その動作を終了させる。前記ステップS13で微小ブロック加工用の移動量が適切(正常)であれば、工具Tが加工終了点E2(図3参照)の位置を超えるか否かをチェックし(ステップS16)、前記工具Tが加工終了点E2の位置を超える場合には、工具Tの次の移動点を加工終了点E2に設定する(ステップS17)。
【0020】
そして、前記ステップS16で工具Tが加工終了点E2の位置を超えない場合と共に、前記マイクロプロセッサ14が前記制御軸駆動手段26に指令して、前記サドル5とテーブルベース7をX,Z軸移動させると共に回転テーブル9をB軸回りに回転させて、工具Tを回転させながら前記移動曲線L(図3参照)に沿って移動させて、次の微小ブロック加工の領域を加工する(ステップS18)。その際、マイクロプロセッサ14は前記加工回数の現カウンタに数値1を加算して(ステップS19)、ステップS10に戻って加工回数の現カウンタ値が加工回数の総数に到達したか否かをチェックし、以後、加工回数の現カウンタ値が加工回数の総数に到達するまで前記ステップS12〜S19の動作を総繰り返して行うことによって、前記ワークMの第1、第2加工部28,29の加工開始点E1から加工終了点E2まで前記移動曲線Lに沿って工具Tが移動され、該工具Tは、工具ホルダTaをワークMの非加工部に干渉することなく、円弧状加工部である前記第1、第2加工部28,29を円滑、確実に加工する。
【0021】
なお、工具Tが加工終了点E2に到達して第1、第2加工部28,29の加工を終了したときには、回転テーブル9がテーブルベース7にクランプされた後に、工具Tは前記演算式(6)によって求めた加工戻りZ軸座標値Pzrの位置に戻って、工作機械2の動作が停止される。前記第1加工部28のボールエンドミルによる加工の場合、加工開始点E1から加工終了点E2までの一工程の加工が終了すると、前記主軸ヘッド12の移動により工具Tが所定量だけY軸方向yにシフトされて、次工程の加工開始点E1に工具Tが着けられて同様に加工が継続されて、円弧面からなる加工面が形成されることとなる。
【0022】
前記のように、実施の形態に係る工作機械におけるワーク加工制御方法は、テーブルベース7上にB軸回りに旋回割出し可能に設けた回転テーブル9と、コラム10に支持した主軸ヘッド12とを備え、NC装置によって制御軸駆動手段26を作動させて、前記回転テーブル9をB軸回りに回転させると共に、前記回転テーブル9と主軸ヘッド12とをX、Y、Z軸方向x,y,zに相対移動させ、前記回転テーブル9上に固定されたワークを前記主軸ヘッド12の主軸13に装着した工具Tにより加工する工作機械におけるワークの加工制御方法において、
前記ワークが上面27bが閉鎖され側面の一部に開口部27dが設けられ内部に第1,第2加工部(円弧状加工部)28,29を有する箱形状ワークMであって、該箱形状ワークMに対して、前記開口部27dを通して工具Tの先端を前記第1,第2加工部28,29の加工開始点E1に位置させた後、前記回転テーブル9をB軸回りに回転させながら、回転テーブル9に対して主軸ヘッド12をX、Z軸方向x,zに相対移動させて、前記工具Tの先端を、前記加工開始点E1から加工終了点E2まで前記第1,第2加工部28,29に沿って移動させて前記ワークを加工する構成されている。
【0023】
したがって、実施の形態に係る工作機械におけるワーク加工制御方法によれば、回転テーブル9と主軸ヘッド12とのX,Z軸方向x、zにおける相対的移動により、箱形状ワークMの側壁部27cの一部に設けられた開口部27dを通して工具Tを箱形状ワークMの内部にある第1,第2加工部28,29に沿って移動させて該第1,第2加工部28,29を加工する際に、回転テーブル9をB軸回りに回転させることによって、箱形状ワークMの非加工部位を工具Tから逃げる方向へ移動させることができるので、前記工具Tと前記非加工部位との干渉を確実に回避しながら加工を連続的に進めることができて、箱形状ワークMの内部にある第1,第2加工部28,29を安全に、かつ効率的に加工することができる。しかも、従来のように、ワークと工具の干渉をチェックするために、加工に先だってワークの形状を計測する必要がないので、高価なワーク形状計測器を工作機械に付設しなくて済む利点がある。
【0024】
また、前記工作機械におけるワーク加工制御方法において、前記第1,第2加工部28,29の円弧の半径Rwと、B軸を原点とする回転テーブル9上の直角座標(W−U軸座標)における前記円弧の中心Cの座標値Cw,Cuと、前記第1,第2加工部28,29に沿って移動させる工具Tの先端の前記円弧の中心C回りにおける移動角度αと、工具Tの半径Rnと、工具Tの均等動作係数Kとを設定値として、該設定値にもとづいて、前記回転テーブル9のB軸回りの回転角βに対する、前記加工開始点E1から加工終了点E2に至るまで前記第1,第2加工部28,29に沿って工具Tが移動する機械系の直角座標(U−Z軸座標)におけるX−Z座標値Px.Pzの関係を求め、この関係にもとづいて求めた前記回転角βとX,Z座標値Px,Pzに従って前記NC装置が前記制御軸駆動手段26を作動させる構成とすると、回転テーブル9のB軸回りの回転角βと、機械系の直角座標におけるX−Z座標値Px,Pzとの関係にもとづいて工具Tを加工開始点E1から加工終了点E2に至るまで第1,第2加工部28,29に正確に沿って工具Tを移動させることができ、工具Tと箱形状ワークMの非加工部位との干渉を一層確実に回避することができると共に、第1,第2加工部28,29の加工を高精度に行うことができる。
【0025】
なお、前記実施の形態に係る工作機械におけるワークの加工制御方法においては、本発明を横型のマシニングセンタに適用した例を示したが、本発明は、これに限らず、テーブルベース等の架台上に、回転テーブルに代えて垂直面内で旋回割り出し可能なワーク支持台、治具等を備える場合には、縦型のマシニングセンタやその他の工作機械においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係る工作機械におけるワーク加工制御装置を示すブロック図である。
【図2】ワーク加工部と工具の移動関係を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る工作機械におけるワーク加工制御方法における工具の移動経路を示す説明図である。
【図4】同じくワーク加工制御方法における工具の移動位置の設定方法を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る工作機械におけるワーク加工制御方法を説明するフロー図(その1)である。
【図6】同じくフロー図(その2)である。
【符号の説明】
【0027】
1 ワーク加工制御装置
2 工作機械
4,6,8,11 Z,X,B,Y軸サーボモータ
5 サドル
7 テーブルベース(架台)
10 コラム(支持部材)
12 主軸ヘッド
13 主軸
14 マイクロプロセッサ
16 ROM
17 RAM
18 不揮発メモリ
19 入力装置
20 表示装置
26 制御軸駆動手段
27d 開口部
28,29 第1、第2加工部(円弧状加工部)
C 第1、第2加工部の円弧の中心
E1 加工開始点
E2 加工終了点
L 工具の移動曲線
T 工具
Ta 工具ホルダ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台上にB軸回りに旋回割出し可能に設けた回転テーブルと、支持部材に支持した主軸ヘッドとを備え、NC装置によって制御軸駆動手段を作動させて、前記回転テーブルをB軸回りに回転させると共に、前記回転テーブルと主軸ヘッドとをX、Y、Z軸方向に相対移動させ、前記回転テーブル上に固定されたワークを前記主軸ヘッドの主軸に装着した工具により加工する工作機械におけるワークの加工制御方法において、
前記ワークが上面が閉鎖され側面の一部に開口部が設けられ内部に円弧状加工部を有する箱形状ワークであって、該箱形状ワークに対して、前記開口部を通して工具の先端を前記円弧状加工部の加工開始点に位置させた後、前記回転テーブルをB軸回りに回転させながら、回転テーブルに対して主軸ヘッドをX、Z軸方向に相対移動させて、前記工具の先端を、前記加工開始点から加工終了点まで前記円弧状加工部に沿って移動させて前記ワークを加工することを特徴とする工作機械におけるワークの加工制御方法。
【請求項2】
前記円弧状加工部の円弧の半径と、B軸を原点とする回転テーブル上の直角座標における前記円弧の中心の座標値と、前記円弧状加工部に沿って移動させる工具の先端の前記円弧の中心回りにおける移動角度と、工具の半径と、工具の均等動作係数とを設定値として、該設定値にもとづいて、前記回転テーブルのB軸回りの回転角に対する、前記加工開始点から加工終了点に至るまで前記円弧状加工部に沿って工具が移動する機械系の直角座標におけるX−Z座標値の関係を求め、この関係にもとづいて求めた前記回転角とX,Z座標値に従って前記NC装置が前記制御軸駆動手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載の工作機械におけるワークの加工制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−301843(P2006−301843A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121002(P2005−121002)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】