説明

工作機械の送り案内機構

【課題】 工具支持部材が長手方向の一端に設けられた進退バーの回転を防止し、かつ進退バーを長手方向に安定して精度良く案内することができ、剛性が高く、工作機械に組込まれた場合に、その工作機械がコンパクトで加工精度を良くできる工作機械の送り案内機構を提供する。
【解決手段】 工具7を支持する工具支持部材2と、この工具支持部材2が長手方向の一端に設けられ、周面に長手方向に延びる被案内面8が周方向の3箇所以上に形成された進退バー3と、この進退バー3の各被案内面8が長手方向にそれぞれ滑り接触する3箇所以上の案内面を有するバー支持部材4と、進退バー3に連結部材20,21を介して連結された被案内体22、およびバー支持部材4を設けた部材14に設置された案内体23でなり、進退バー3からこの進退バー3の径方向に離れた位置で、進退バー3を前記長手方向に案内する直動転がり案内5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤等の工作機械に設けられ、工具を送り方向に案内する送り案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤は、ワークを支持して回転する主軸と、工具を支持する工具支持部材とを互いに相対移動させることで、ワークに対して工具で切削加工を行うが、主軸と工具支持部材の相対移動の形態は幾通りかある。例えば、特許文献1に記載の旋盤は、主軸は位置固定で、工具支持部材を主軸の軸心方向および軸心と直交する方向に移動させる形態である。
【0003】
上記形態の場合、例えば図7の簡略化して表した斜視図に示すように、主軸42の軸心方向(Z軸方向)に進退自在に進退バー3を設け、この進退バー3の先端に工具支持部材2が設けられる。進退バー3は、長手方向(Z軸方向)に垂直な断面の輪郭形状が円形の棒状であって、その外周面が円筒状の滑りガイド50によって長手方向に摺動自在に支持される。前記滑りガイド50は、主軸42の軸心と直交する水平方向(X軸方向)に移動可能な送り台51に設置されている。
【0004】
上記のように、円形の進退バー3を円筒状の滑りガイド50で案内する場合、進退バー3の回り止め措置が必要となる。回り止め措置の一例として、図8のように、進退バー3と一体に動作するガイドアーム52を主軸(図示せず)の軸心と直交する水平方向(X軸方向)に延ばして設け、このガイドアーム52の先端に設けた上下一対の被案内体53を、主軸の軸心方向(Z軸方向)に長い案内体54の上下両面にそれぞれ滑り接触させることで、進退バー3を主軸の軸心方向に案内する方式がある。この方式によると、進退バー3の回転防止だけでなく、切削加工時に生じる上下方向(Y軸方向)の主分力F1(図7)の一部を案内体54が受けるため、剛性を向上させられる。
【0005】
回り止め措置の異なる例として、進退バーの外周面に長手方向に延びる平面等からなる被案内面を形成し、この被案内面を滑りガイドで案内する構成がある(図示せず)。この構成の場合、進退バーの外周面が円形でないので、回転を生じさせずに進退バーを長手方向に案内することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−100804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、円形の進退バー3を円筒状の滑りガイド50で支持する構造では、滑りガイド50の内径は進退バー3の外径よりも若干大きくて、進退バー3と滑りガイド50との間に隙間がある。そのため、切削加工時に作用する上下方向(Y軸方向)の主分力F1(図7)や水平方向(X軸方向)の背分力F2(図7)により、滑りガイド50内で進退バー3が主軸42の軸心に垂直な直交2軸方向(X軸方向、Y軸方向)にわずかに変位する。より一層の加工精度の向上を図るには、進退バー3と滑りガイド50との間の隙間を無くすか、あるいは極力小さくすることが必要である。図8の構成の場合、一対の被案内部53で案内体54を上下から挟み込んで上記進退バー3の動きを抑えているため、ある程度の加工精度を得ることができるが、まだ改善の余地がある。
【0008】
また、進退バーの外周面に平面等の被案内面を形成した構成の場合、主分力F1や背分力F2に対抗して進退バーを安定して案内できるようにするには、進退バーの直径を大きくする必要があり、機械全体が大型化するという問題がある。
【0009】
この発明の目的は、工具支持部材が長手方向の一端に設けられた進退バーの回転を防止し、かつ進退バーを長手方向に安定して精度良く案内することができ、剛性が高く、工作機械に組込まれた場合に、その工作機械がコンパクトで加工精度を良くできる工作機械の送り案内機構を提供することである。
この発明の他の目的は、直動転がり案内を加工の邪魔にならないように設置することである。
この発明のさらに他の目的は、直動転がり案内の組立誤差や摩耗等による影響を進退バーの進退精度に与えないようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、上記送り案内機構を有し、コンパクトで加工精度が良い旋盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の工作機械の送り案内機機構は、工具を支持する工具支持部材と、この工具支持部材が長手方向の一端に設けられ、長手方向に垂直な断面の輪郭形状が略円形である棒状であって、周面に長手方向に延びる被案内面が周方向の3箇所以上に形成された進退バーと、この進退バーの前記各被案内面が前記長手方向にそれぞれ滑り接触する3箇所以上の案内面を有するバー支持部材と、前記進退バーに連結部材を介して連結された被案内体、および前記バー支持部材を設けた部材に設置された案内体でなり、前記進退バーからこの進退バーの径方向に離れた位置で、進退バーを前記長手方向に案内する直動転がり案内とを備える。
【0011】
この構成によると、進退バーの被案内面とバー支持部材の案内面とが滑り接触すると共に、直動転がり案内の被案内体と案内体とが転がり接触することにより、バー支持部材に対して進退バーが長手方向に案内される。進退バーの被案内面は周方向の3箇所以上に形成されており、これら3箇所以上の被案内面により進退バーの長手方向に垂直な直交2軸方向の位置が決められるため、進退バーを前記直交2軸方向に振れることなく、精度良く進退させることができる。また、直動転がり案内の被案内体と案内体は転がり接触するため、摩擦負荷が小さく、しかもその変動も小さい。そのため、進退バーを円滑に案内できる。進退バーの被案内面とバー支持部材の案内面とが常時接する状態に保持することにより、進退バーの回転を防止することができる。
【0012】
この工作機械の送り案内機構を設けた工作機械で切削加工を行う場合、加工時に生じる背分力は、工具支持部材から進退バーに伝わり、バー支持部材の案内面で受けられる。一方、主分力は、バー支持部材の案内面で受けられる他、直動転がり案内の案内体により補助的に受けられる。このように主分力をバー支持部材の案内面と直動転がり案内の案内体とで分散して受けることにより、剛性を向上させられる。前述した進退バーを精度良く進退させられることに加えて、上記の剛性を向上させられることにより、加工精度も向上する。また、剛性が高いと進退バーの直径を小さくすることが可能となり、全体をコンパクトにできる。
【0013】
この発明において、前記直動転がり案内は、前記進退バーに対して、前記工具支持部材に支持された工具によるワークへの加工点の反対側に位置しているのが望ましい。
この場合、直動転がり案内を、加工の邪魔にならないように設置できる。
【0014】
この発明において、前記連結部材と前記直動転がり案内の被案内体との前記径方向の相対移動を許容する相対移動許容機構を設けてもよい。
相対移動許容機構が設けられていると、組立誤差や摩耗等により案内体に対する被案内体の直進精度の低下があった場合でも、それが相対移動許容機構に吸収されるため、進退バーの進退精度に影響を与えない。
【0015】
この発明の旋盤は、上記いずれかの工作機械の送り案内機構を設けた旋盤であって、前記工具支持部材はタレット刃物台であり、前記バー支持部材は、ベッドに対して前記進退バーの長手方向と直交する方向に進退可能に設置され、前記工具により加工されるワークを支持する主軸が設けられている。
この構成によると、上記いずれかの工作機械の送り案内機構を設けたことにより、進退バーを精度良くかつ円滑に進退させることができて、剛性が高く、また進退バーの直径を小さくすることができるため、コンパクトで加工精度が良い旋盤とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の工具支持部材の送り案内装置は、工具を支持する工具支持部材と、この工具支持部材が長手方向の一端に設けられ、長手方向に垂直な断面の輪郭形状が略円形である棒状であって、周面に長手方向に延びる被案内面が周方向の3箇所以上に形成された進退バーと、この進退バーの前記各被案内面が前記長手方向にそれぞれ滑り接触する3箇所以上の案内面を有するバー支持部材と、前記進退バーに連結部材を介して連結された被案内体、および前記バー支持部材を設けた部材に設置された案内体でなり、前記進退バーからこの進退バーの径方向に離れた位置で、進退バーを前記長手方向に案内する直動転がり案内とを備えるため、進退バーの回転を防止し、かつ進退バーを長手方向に安定して精度良く案内することができ、剛性が高く、工作機械に組込まれた場合に、その工作機械がコンパクトで加工精度を良くできる。
【0017】
前記直動転がり案内を、前記進退バーに対して、前記工具支持部材に支持された工具によるワークへの加工点の反対側に位置した場合は、直動転がり案内を加工の邪魔にならないように設置することができる。
【0018】
前記連結部材と前記直動転がり案内の被案内体との前記径方向の相対移動を許容する相対移動許容機構を設けた場合は、直動転がり案内の組立誤差や摩耗等による影響を進退バーの進退精度に与えない。
【0019】
この発明の旋盤は、上記いずれかの工作機械の送り案内機構を搭載し、前記工具支持部材はタレット刃物台であり、前記バー支持部材は、ベッドに対して前記進退バーの長手方向と直交する方向に進退可能に設置され、前記工具により加工されるワークを支持する主軸を設けたため、コンパクトで加工精度が良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態にかかる工作機械の送り案内機構の斜視図である。
【図2】同工作機械の送り案内機構の正面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】同工作機械の送り案内機構の直動転がり案内の破断正面図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】同工作機械の送り案内機構を設けた旋盤の斜視図である。
【図7】旋盤の一例を簡略化して表した斜視図である。
【図8】従来の工作機械の送り案内機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この工作機械の送り案内機構1は、工作機械の工具支持部材を定められた送り方向(Z軸方向)に案内するためのものであって、図1および図2に示すように、工具支持部材2と、この工具支持部材2が長手方向(Z軸方向)の一端に設けられた進退バー3と、互いにZ軸方向に離れて位置し、進退バー3を直接に案内支持する一対のバー支持部材4と、進退バー3から水平な径方向(X軸方向)に離れた位置で進退バー3を案内する直動転がり案内5とを備える。
【0022】
工具支持部材2は、多角形をした外周部に複数の工具ホルダ6を有するタレット刃物台であり、各工具ホルダ6にそれぞれ工具7が装着される。図示例のように工具支持部材2と別に工具ホルダ6を設けずに、工具支持部材2の一部である工具装着部(図示せず)に工具7を装着するようにしてもよい。工具支持部材2は、進退バー3に対して進退バー3の中心軸O回りに旋回自在に設けられており、図示しない割出駆動機構により、前記中心軸O回りに旋回させることで、各工具ホルダ6に装着された複数の工具7のうちの任意の工具7が定められた加工位置Pに割り出される。加工位置Pに割り出された工具7の刃部の位置が、加工時におけるワークへの加工点Qとなる。なお、図1では、一つの工具ホルダ6および工具7のみが図示されている。
【0023】
進退バー3は、長手方向(Z軸方向)に垂直な断面の輪郭形状が略円形である棒状であって、外周面の4箇所に長手方向に延びる被案内面8が形成されている。この例では、被案内面8は平面からなる。4箇所の被案内面8のうち2箇所の被案内面8は、荷重を受ける側に配置されている。この実施形態の場合、進退バー3は水平に設置されており、進退バー3の重量がかかる下側に2箇所の被案内面8が配置されている。下側2箇所の被案内面8が互いになす角度θは、例えば80°とされている。残りの2箇所の被案内面8は、進退バー3の中心軸Oに対して、下側2箇所の被案内面8と対向する位置にある。
【0024】
一対のバー支持部材4は、進退バー3の前記各被案内面8がZ軸方向にそれぞれ滑り接触する4箇所の案内面9を有する。この例では、案内面9は平面からなる。図3に示すように、案内面9は、バー支持部材本体4Aとは別体である案内面形成部材10に形成されている。この案内面形成部材10は、バー支持部材4に固定の径方向位置調整部材11と、それぞれのZ軸方向に傾斜したテーパ面10a,11aで互いに接している。径方向位置調整部材11のねじ孔11bに螺合した調整ねじ12の螺合位置を変更することにより、前記テーパ面10a,11aが互いに接した状態のまま、案内面形成部材10がZ軸方向に移動して、バー支持部材本体4aに対する案内面形成部材10の径方向位置が変わる。それにより、案内面9の径方向位置が調整される。つまり、被案内面8と案内面9の当り具合が調整される。
【0025】
図2に示すように、前記径方向位置調整部材11は、バー支持部材4の内周に形成された取付凹部18に嵌め込んで、円周方向に移動しないように取付けられている。また、各バー支持部材4は外周面が円筒状であって、共通の設置枠14の円形孔15に嵌め込んで設置されている。
【0026】
直動転がり案内5は、進退バー3に連結部材20,21を介して連結された被案内体22と、設置枠14に設置されZ軸方向に延びる案内体23とでなる。図4および図5に示すように、案内体23に被案内22が跨った形態であり、被案内体22の内側面と案内体23の外側面のそれぞれにガイド溝22a,23aが形成されており、これらガイド溝22a,23a間をボールからなる転動体24が転動するようになっている。つまり、被案内体22は案内体23に、転動体24を介して転がり案内される。この例では、複数本のガイド溝22a,23aが上下に並べて設けられている。被案内体22は、ガイド溝22aに連続して無端の循環路を形成する戻り経路22bを有しており、転動体24は、被案内体22の進退に伴って上記循環路を循環移動する。各ガイド溝22aのZ軸方向の両端には、ガイド溝22a,23aから転動体24が抜けるのを防ぐ抜け止め部材25が設けられている。
【0027】
図1、図2において、前記連結部材20は、基端が進退バー3に固定され、先端側がX軸方向へほぼ水平に延びるアーム状であり、その先端部が、断面形状が略長方形のスライド部20aとなっている。また、前記連結部材21は、底面に前記被案内体22が固定されたブロック状であり、中央部に前記スライド部20aがスライド自在に挿通された貫通孔21aを有している。これにより、両連結部材20,21は、互いのY軸方向およびZ軸方向の位置関係は変えずに、互いのX軸方向の相対位置が変更可能である。言い換えると、連結部材20のスライド部20aと連結部材21の貫通孔21aとで構成される相対移動許容機構27により、連結部材20と直動転がり案内5の被案内体22とは、互いにX軸方向すなわち進退バー3の径方向の相対移動が許容されている。
【0028】
送り案内機構1の設置枠14の上には、進退バー3をZ軸方向に進退させる送り駆動機構30が設置されている。この実施形態の送り駆動機構30は、ボールねじ機構を用いたものであり、Z軸方向に沿って延びるねじ軸31と、このねじ軸31が螺合するナット32と、前記ねじ軸31を回転させるモータ33とを有し、前記ナット32が連結部材34を介して進退バー3に固定されている。モータ33によりねじ軸31を回転させると、ナット32およびそれに固定された進退バー3がZ軸方向に進退する。なお、図1は送り駆動機構30の上側を覆うカバー(図示せず)を取外した状態を表している。
【0029】
また、設置枠14の下部には、断面形状が逆U字形でX軸方向に延びる被案内体36が設けられている。この被案内体36は、送り案内機構1と送り駆動機構30とでなる切削装置37が旋盤等の工作機械に組込まれた場合に、工作機械側の案内体と組み合わされて、切削装置37をX軸方向に送るX軸案内機構として構成される。
【0030】
図6は、上記切削装置37が設けられた工作機械を示す。この工作機械40は平行2軸旋盤であって、X軸方向に並ぶ互いに独立した2つのベッド41を備え、各ベッド41上に、Z軸方向に延びる主軸42と、上記切削装置37とがそれぞれ設置されている。各ベッド41は、床面Fに設けた共通のベース台43の上に設置されている。
【0031】
各主軸42は、ベッド41上に設置された主軸台44に回転自在に支持され、その先端にワーク(図示せず)を把持するチャック42aを有する。主軸42は、主軸台44に設置された主軸モータ45により回転駆動される。各主軸台44は、各ベッド41上における互いの隣接側の端部に配置されている。
【0032】
切削装置37は、その直動転がり案内5が、進退バー3に対して、工具支持部材2に支持された工具7(図1)によるワークへの加工点Q(図1)の反対側に位置するように設置されている。つまり、直動転がり案内5は、進退バー3に対して主軸42の反対側に位置する。各切削機構37は、X軸案内機構47によりX軸方向に案内され、X軸移動駆動機構48の駆動によりX軸方向に移動可能である。X軸移動機構47は、ベッド41上にX軸方向に設けられた案内体49と、この案内体48に沿って移動自在な前記送り案内機構1の被案内体36とでなる。X軸移動機構47は、例えば前記直動転がり案内5と同様に、被案内体36が案内体49に、転動体(図示せず)を介して転がり案内される構成とされる。また、X軸移動駆動機構48は、例えば前記送り駆動機構30と同様に、ボールねじ機構を用いた構成とされる。
【0033】
この構成の送り案内機構1は、進退バー3の被案内面8とバー支持部材4の案内面9とが滑り接触すると共に、直動転がり案内5の被案内体22と案内体23とが転がり接触することにより、バー支持部材4に対して進退バー3が長手方向(Z軸方向)に案内される。進退バー3の被案内面8は周方向の4箇所に形成されており、これら4箇所の被案内面8により進退バー3の長手方向(Z軸方向)に垂直な直交2軸方向(X軸方向、Y軸方向)の位置が決められるため、進退バー3を前記直交2軸方向に振れることなく、精度良く進退させることができる。調整ねじ12の操作で案内面形成部材10の径方向位置が変えることにより、被案内面8と案内面9の当り具合の調整が可能である。
【0034】
進退バー3の被案内面8およびバー支持部材4の案内面9は平面であり、両面8,9が常時接する状態に保持されているため、進退バー3の回転を防止することができる。被案内面8および案内面9は、進退バー3の回転を防止することができる形状であればよく、平面でなくてもよい。また、この実施形態では、進退バー3の被案内面8およびバー支持部材4の案内面9を周方向の4箇所に設けたが、3箇所であってもよく、あるいは5箇所以上であってもよい。要は、3箇所以上であればよい。
【0035】
直動転がり案内5の被案内体22と案内体23とは転動体24を介して転がり接触するため、摩擦負荷が小さく、しかもその変動も小さい。そのため、進退バー3を円滑に案内できる。また、連結部材20と直動転がり案内5の被案内体22とのX軸方向の相対移動を許容する相対移動許容機構27が設けられているため、直動転がり案内5において、組立誤差や摩耗等により案内体23に対する被案内体22の直進精度の低下があった場合でも、それが相対移動許容機構27に吸収されるため、進退バー3の進退精度に影響を与えない。
【0036】
工作機械40で切削加工を行う場合、加工で生じるX軸方向の背分力は、バー支持部材4の各案内面9で受けられる。一方、Y軸方向の主分力は、バー支持部材4の案内面9で受けられる他、直動転がり案内5の案内体23により補助的に受けられる。このように主分力をバー支持部材4の案内面9と直動転がり案内5の案内体23とで分散して受けることにより、剛性を向上させられる。また、それにより進退バー3の直径を小さくすることが可能となり、全体をコンパクトにできる。
【0037】
この実施形態の場合、直動転がり案内5が進退バー3に対して、ワークへの加工点Qの反対側に位置しているため、直動転がり案内5を加工の邪魔にならないように設置できる。
【0038】
この送り案内機構1を設けた工作機械40は、送り案内機構1により進退バー3を、切削加工における切込み方向であるX軸方向およびその直交方向であるY軸方向に振れることなく、工具37の送り方向であるZ軸方向に精度良くかつ円滑に進退させることができ、しかも剛性が高いため、加工精度が良い。また、送り案内機構1の剛性が高く、進退バー3の径を小さくすることができるので、機械全体をコンパクトにできる。
【符号の説明】
【0039】
1…送り案内機構
2…工具支持部材
3…進退バー
4…バー支持部材
5…直動転がり案内
7…工具
8…被案内面
9…案内面
20,21…連結部材
22…被案内体
23…案内体
27…相対移動許容機構
40…工作機械
42…主軸
Q…加工点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を支持する工具支持部材と、
この工具支持部材が長手方向の一端に設けられ、長手方向に垂直な断面の輪郭形状が略円形である棒状であって、周面に長手方向に延びる被案内面が周方向の3箇所以上に形成された進退バーと、
この進退バーの前記各被案内面が前記長手方向にそれぞれ滑り接触する3箇所以上の案内面を有するバー支持部材と、
前記進退バーに連結部材を介して連結された被案内体、および前記バー支持部材を設けた部材に設置された案内体でなり、前記進退バーからこの進退バーの径方向に離れた位置で、進退バーを前記長手方向に案内する直動転がり案内とを備えた、
工作機械の送り案内機構。
【請求項2】
前記直動転がり案内は、前記進退バーに対して、前記工具支持部材に支持された工具によるワークへの加工点の反対側に位置する請求項1記載の工作機械の送り案内機構。
【請求項3】
前記連結部材と前記直動転がり案内の被案内体との前記径方向の相対移動を許容する相対移動許容機構を設けた請求項1または請求項2記載の工作機械の送り案内機構。
【請求項4】
前請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の工作機械の送り案内機構を設けた旋盤であって、前記工具支持部材はタレット刃物台であり、前記バー支持部材は、ベッドに対して前記進退バーの長手方向と直交する方向に進退可能に設置され、前記工具により加工されるワークを支持する主軸を設けた旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86194(P2013−86194A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226416(P2011−226416)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】